JP3705982B2 - リン酸塩回収方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、汚泥等を焼却処理した際に排出される焼却灰や焼却飛灰中に含まれるリン酸根をリン酸化合物として回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年において、都市下水または産業排水処理場での残渣物として生じる汚泥等の処理は、関係当事者にとっては重要な問題となっており、また、生活水準の向上と工業生産の増加とによりその量はさらに著しく増加するという傾向にある。前記汚泥等の大部分は、焼却され焼却灰や焼却飛灰となり、そのまま投棄処分とされているのが現状である。また、前記投棄処分とされた焼却灰等には、五酸化二リン(P25)を主成分とするリン酸根を含有しているため、前記リンが焼却灰から溶け出て海や湖へ流れ込んだ場合、藻が大発生し、海や湖の富栄養化の原因となり、深刻な問題を引き起こすことがある。
【0003】
一方、リンは、その使用方法によっては有用な物質であり、現在農作物の肥料の製造や、医薬品の製造をする際の原料として用いられている。しかしながら、我が国はリンの全量を輸入に頼っていることも現状である。
【0004】
従って、汚泥等の焼却灰に含まれるリン酸根を回収し、肥料等として再利用することが従来から望まれていた。
【0005】
特開平9−77506号には、下水汚泥焼却灰からのリン酸回収方法が開示されているが、コスト的に大きな問題があった。また、特開平10−101332号にも、酸処理による焼却灰からのカルシウム、リン、金属の分別回収方法が開示されているが、効率・コスト的に実用化は難しい状態である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、汚泥等の焼却灰等からリンを低コストで回収・再利用するための方法を提供することを主目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために請求項1において、リン酸根を含む焼却灰および/または焼却飛灰に酸を含む溶液を加えてpHを1.6以下とすることにより、前記酸を含む溶液中に前記灰中のリン酸根を溶解させる溶解工程と、前記酸を含む溶液中の不溶性残渣を分離する残渣分離工程と、前記不溶性残渣を分離した溶液にアルカリ成分を加え、pHが1.8〜2.2の範囲内となるように調整するアルカリ成分投入工程とを有し、鉄化合物を投入する鉄化合物投入工程を前記アルカリ成分投入工程前のいずれかの工程で行い、さらに前記アルカリ成分投入工程後にリン酸鉄を回収する回収工程を有することを特徴とするリン酸塩回収方法を提供する。
【0008】
本発明の方法においては、まず酸を含む溶液を加えてpHを1.6以下とすることにより、焼却灰や焼却飛灰中に含まれているリン酸根を上記溶液中に溶解させる。次いで酸を含む溶液中の不溶性残渣を取り除いた後、アルカリ成分を加えてpHを1.8〜2.2の範囲内となるようにする。この際鉄化合物をアルカリ成分投入工程前のいずれかの時期に投入する。このように鉄化合物が加えられ、かつリン酸根が溶解する溶液のpHを上述したように1.8〜2.2の範囲内とすることにより、リン酸鉄のみが沈殿し、ゲル化するためその後の取扱が非常に困難となるリン酸アルミニウムが析出しない。したがって、その後の回収工程において、リン酸鉄のみを容易にかつ高純度で回収することができる。
【0009】
このように本発明のリン酸塩の回収方法においては、リン酸塩をリン酸鉄の形で容易にかつ高純度で得られるので、これらのリンを肥料等として再利用することが可能である。また、従来汚泥等の焼却灰等が投棄処分された際に問題となっていたリンによる環境汚染(河川の富栄養化等)を解決することができる。
【0010】
上記本発明のリン酸塩回収方法においては、請求項2に記載するように、不溶性残渣を分離する残渣分離工程の前に鉄化合物混入工程を行ってもよく、また請求項3に記載するように、不溶性残渣を分離する残渣分離工程の後に鉄化合物投入工程を行ってもよい。
【0011】
残渣分離工程前に鉄化合物混入工程を行う場合は、請求項2に記載するように、投入する鉄化合物の量が前記灰中に含まれるリン酸根の理論反応当量の0.75倍以上であるようにすることが好ましい。不溶性残渣に含まれるリン酸根の影響により、リン酸鉄として回収できるのは、リン酸根の理論反応当量の0.75程度となるからである。
【0012】
また、残渣分離工程の後に鉄化合物投入工程を行う場合は、請求項3に記載するように、不溶性残渣を分離した溶液中のリン酸根の理論反応当量と同等以上の鉄化合物を投入することが好ましい。この場合は、不溶性残渣の影響がないからである。
【0013】
また、請求項4に記載するように、前記焼却灰および/または焼却飛灰が、下水汚泥を焼却した際に排出される灰であることが好ましい。下水汚泥には、リンを多く含む家庭からの排水中の汚泥を含み、さらには例えば田畑で使用された肥料中のリンが下水に侵入する等することからリンが多量に含まれているためである。また、下水処理の際等に排出される下水汚泥はそのかなりの量が焼却されており、この焼却の際に排出される焼却灰や焼却飛灰からリンを回収することにより、廃棄物の再利用を図ることができるからである。
【0014】
さらに、請求項5に記載するように、本発明においては前記アルカリ成分が、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩からなる群から選択される1もしくは2以上の混合物であることが好ましい。前記アルカリ成分は、溶液のpHを1.8〜2.2に調整するために用いられるものであるから、アルカリ性を示すものであれば、基本的にはいかなるものであってもよいが、入手が容易であり、またある程度の純度が確保されている等の理由から上記のようなアルカリ成分を用いることが好適である。
【0015】
また、請求項6に記載するように、前記記鉄化合物が、3価の鉄から成る鉄化合物であることが好ましい。3価の鉄イオン(Fe3+)は、リン酸イオン(PO4 3-)と反応し、非常に安定した化合物(リン酸鉄・FePO4)を形成し粉体(固体)となるので、前記沈殿物を溶液から分離する際分離回収しやすいからである。
【0016】
さらに、本発明では請求項7に記載するように、請求項1から6までのうちのいずれかの請求項に記載のリン酸塩回収方法により回収されたリン酸鉄に、アルカリ水溶液を投入して、pHを3.0以上にするpH調整工程と、前記pH調整工程後の溶液にリン酸鉄中に含まれる鉄分を除去するために硫化水素ガスを流入する硫化水素流入工程と、硫化水素流入工程により沈殿した硫化鉄を除去することにより、リン酸溶液を得るリン酸溶液回収工程と、を少なくとも行うことにより、リン酸根をリン酸溶液として回収することを特徴とするリン酸塩回収方法をも提供する。
【0017】
請求項1から6までのいずれかの請求項に記載するリン酸塩回収方法は、汚泥中のリンを主にリン酸鉄として回収する方法であるが、前記請求項7に記載する方法は、リン酸鉄から鉄を除去しリン酸溶液として回収する方法である。
【0018】
このような方法においては、請求項1から6までのいずれかの請求項に記載するリン酸塩回収方法により回収されたリン酸鉄にアルカリ水溶液を投入し、pHを3.0以上にした後、硫化水素ガスを流入することにより、リン酸鉄を形成していた鉄イオンと、硫化水素ガスを形成していた硫化物イオンとが結合し硫化鉄として沈殿するするため鉄を除去することができる。そして沈殿物(硫化鉄)を除去することにより、リン酸溶液として回収することが可能である。リン酸根中のリンをリン酸溶液として回収することで、例えば、後述する肥料として有用なリン酸カルシウム等の様々なリン酸化合物を形成することができ好ましい。
【0019】
また、請求項8に記載するように、請求項7に記載するpH調整工程を行い、その後硫化水素流入工程を行う場合において、硫化水素ガスを流入している間においても、pHを3.0以上に調整するためにアルカリ水溶液を投入することも可能である。
【0020】
本発明では、硫化水素ガスを流入することによってリン酸鉄中の鉄を除去するが、その際鉄を除去しやすいように、硫化水素ガスを流入する前にアルカリ水溶液によりpHを調整する。ここで、硫化水素ガスを流入して硫化鉄を沈殿せしめた場合、同時にリン酸も生成するため、溶液のpHは徐々に酸性側にシフトしてしまう。そして、溶液が酸性側へシフトすると、硫化鉄の生成が阻害され、効率よく鉄を除去することができない場合がある。係る場合に請求項8に記載するように硫化水素ガスを流入し続けながらもアルカリ水溶液によりpHを3.0以上に維持することにより、生成したリン酸によって溶液のpHが低下するのを防止することができ、鉄を除去するに当たり効率よく除去することができるので好ましい。
【0021】
ここで、請求項9に記載するように、前記請求項7または請求項8に記載の方法において投入されるアルカリ水溶液が、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、または水酸化アンモニウムからなる群から任意に選択される1もしくは2以上の混合物であることが好ましい。
【0022】
pH調整工程において投入されるアルカリ水溶液は、溶液のpHを3.0以上にするために使用するものであるためアルカリ性を呈するものであればいかなるものであってもよいが、水酸化ナトリウム等は、安価であり、また入手し易いため好ましい。
【0023】
また、請求項10に記載するように、請求項7から請求項9のいずれかに記載のリン酸塩回収方法により回収されたリン酸溶液に、リン酸と結合してリン酸塩を形成する化合物を混入する化合物混入工程と、リン酸と前記化合物とにより生じたリン酸塩を回収するリン酸塩回収工程と、を少なくとも行うことを特徴とするリン酸塩回収方法をも提供する。
【0024】
請求項7から請求項9のいずれかに記載した発明により回収したリン酸溶液に、適当な化合物を投入することにより、当該化合物とリン酸とが反応し、その結果リン酸化合物としてリンを回収することができる。つまり、請求項1から記載する一連の発明により、リン酸根を含む焼却灰および/または焼却飛灰中からリン酸鉄としてリンを回収することもでき、またリン酸溶液としてリンを回収することもでき、更にリン酸鉄以外のリン酸化合物として回収することも可能である。よって、回収したリンの用途により、その回収方法を選択することができ好ましい。
【0025】
さらに、請求項11に記載するように、前記請求項10に記載の方法において、前記化合物混入工程において混入する化合物が、リン酸カルシウムを形成することができるカルシウム化合物、リン酸マグネシウムを形成することができるマグネシウム化合物、または、アンモニア水溶液もしくはアンモニアガス、からなる群から選択される1もしくは2以上の混合物であることが好ましい。
【0026】
本発明により回収したリン酸塩は、肥料としての使用に適しているが、日本の土壌は、そのほとんどが酸性土壌であり、酸性土壌でリン酸塩の肥料を用いる場合は、リン酸鉄をリン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、またはリン酸アンモニウムとして用いる方がより肥料として適しているからである。
【0027】
【発明の詳細な説明】
(第1実施形態)
以下、本発明のリン酸塩回収方法について、リン酸根中のリンをリン酸鉄として回収する方法について各工程ごとに説明する。
【0028】
まず、焼却灰等に含まれるリン酸根を溶解させる溶解工程について説明する。本発明の溶解工程においては、リン酸根を含む焼却灰および/または焼却飛灰(以下、焼却灰等とする場合がある。)に酸を含む溶液を加えてpHを1.6以下にすることにより、上記酸を含む溶液中に前記灰中のリン酸根を溶解させる。
【0029】
本発明でいうリン酸根とは、将来リン酸、もしくはリン酸化合物になり得る化合物つまりリン元素(P)を含む化合物の総称であり、特にその化学構造等を限定されるものではない。例えば、焼却灰等には、リン元素(P)は五酸化二リン(P25)として多く含まれている。
【0030】
また本発明を適用する焼却灰および/または焼却飛灰としては特に限定されるものではなく、リン酸根を含むものであればいかなるものであってもよい。中でも、下水処理場等から排出される下水汚泥を焼却処理した際の焼却灰・焼却飛灰は、リンを多量に含むことから特に好ましく適用される。すなわち、このような下水汚泥は家庭から排出される下水の汚泥を含むものであるので、例えば洗剤等に含まれるリン等を多量に含み、さらには田畑等に用いられた肥料からのリンが下水中に侵入等する。したがって、このような下水汚泥には多量にリンが含まれており、本発明に好適に適用されるのである。またこのような下水汚泥は使い道が無く投棄処分されていたためその再利用が図れる点でも好ましい。
【0031】
この溶解工程においては、酸を含む溶液中にリン酸根を溶解させる。すなわち、酸を含む溶液を焼却灰等に加えることにより、焼却灰等に固体として含まれるリン酸根をこの酸を含む溶液中に溶解・抽出するためである。この工程で用いることができる酸としては、特に限定されるものではなく、いかなる酸であってもよい。中でも塩酸、硝酸、硫酸等は、入手が容易であり、また比較的安価であることから好適である。
【0032】
本発明の溶解工程においては、前記酸を含む溶液のpHを1.6以下とする。これは、pHが1.6より大きい値の場合では、焼却灰等に含まれるリン酸根が完全に溶解しないため効率的にリン酸塩の回収を行うことができないからである。なお、本工程においてpHは1.6以下であれば特に限定されるものではないが、pHを下げるためには、多量の酸を必要とするため、そのコストを考えるとpHは1.4〜1.6程度が好適である。
【0033】
次に、上記溶解工程で酸を含む溶液に溶解しなかった不溶性残渣を分離する残渣分離工程について説明する。
【0034】
焼却灰等には様々な金属や化合物が含まれており、上記のように酸によりpHを1.6以下としても、溶解しない不溶性の残渣が残る。このような不溶性残渣は後述する回収工程でリン酸鉄を回収する際に問題となることから予め除去する必要がある。したがって、本発明においては溶解工程の後に残渣分離工程を行うようにしたのである。
【0035】
また、上記不溶性残渣の分離方法は、特に限定されるものではなく、例えば最も一般的に用いられる方法として、濾過等を挙げることができる。
【0036】
本発明のリン酸塩回収方法においては、上述した残渣分離工程の後に、不溶性残渣が分離された溶液にアルカリ成分を加え、pHを1.8〜2.2の範囲内に調整するアルカリ成分投入工程を行うのであるが、本発明においては、このアルカリ成分投入工程前のいずれかの工程で、鉄化合物を投入する鉄化合物投入工程を行う必要がある。
【0037】
本発明における鉄化合物投入工程とは、焼却灰中に含まれるリン酸塩を分離回収が容易なリン酸鉄として回収するために、上記リン酸根が溶解している酸を含む溶液中に鉄化合物を投入することにより、鉄イオンを供給することを目的として行われるものである。
【0038】
この鉄化合物投入工程としては、上述したようにアルカリ成分投入工程前であればいかなる時期であってもよいが、具体的には前記残渣分離工程前に行う場合と、残渣分離工程後に行う場合とを挙げることができる。
【0039】
以下、鉄化合物投入工程を残渣分離工程前に行う場合と、鉄化合物投入工程を残渣分離工程後に行う場合とに分けて説明する。
【0040】
まず、鉄化合物投入工程を残渣分離工程前に行う場合について、図1に示すフローチャートを用いて説明する。図1に示すように、まずリン酸根を含む焼却灰等に酸を含む溶液および鉄化合物を加えpHを1.6以下に調整することにより、焼却灰等中に含まれているリン酸根を溶解する。
【0041】
焼却灰中のリン酸根を溶解させるために加えられる酸は、特に限定されるものではなく、上記で説明したものであればいかなるものであってもよい。
【0042】
鉄化合物を加えるのは、焼却灰等に含有されている鉄化合物の量は微量であるため効率よく溶液中のリン酸イオン(PO4 3-)を全てリン酸鉄として回収することができないためである。
【0043】
ここで、加えられる鉄化合物は特に限定されるものではなくいかなるものであってもよい。一般的に鉄の化合物は、その化合物を形成している鉄の価数により2価の鉄化合物と3価の鉄化合物とに大別することができる。本発明の方法では、2価の鉄化合物として例えば、硫酸第1鉄(FeSO4)や塩化第1鉄(FeCl2)等を用いることができ、また3価の鉄化合物として例えば、硫酸第2鉄(Fe2(SO43)や塩化第2鉄(FeCl3)等を用いることができる。その中でも、溶液中のリン酸イオン(PO4 3-)とリン酸鉄を形成した際、そのリン酸鉄の安定性、回収のしやすさ等から本発明の鉄化合物混入工程で混入する鉄化合物は3価の鉄化合物であることが好ましく、中でも塩化第2鉄(FeCl3)が特に好適に用いられる。
【0044】
また、鉄化合物投入工程を残渣分離工程前に行う場合(図1参照)、前記鉄化合物混入工程で加えられる鉄化合物の量は、焼却灰等中に含まれるリン酸根の理論反応当量の0.75倍以上であることが好ましい。これは実験により決定した値であり、鉄化合物がリン酸根の理論反応当量の0.75倍以上存在していれば、この後のアルカリ成分投入工程でリンと鉄化合物とが錯体を形成することができるからである。ここで、通常ではリン酸根の理論反応当量と同量の鉄化合物が必要であるように考えることもできるが、汚泥の焼却灰等には、リン酸根以外にも3価の鉄を含め、様々な金属が含有されており、これらの金属もリンと錯体を形成するため、加える鉄化合物の量はリン酸根の理論反応当量の0.75倍以上であれば足りるからである。
【0045】
次に、図1に示すように残渣分離工程を行う。この工程は、上述した溶解工程により焼却灰等を溶解した際、未だ溶解せずに溶液中に固体として残っている不溶性の残渣を分離するための工程である。なお前記不溶性の残渣には本発明における目的回収物であるリン酸塩の素となるリン酸根が多量に含まれているわけではないので除去してよい。
【0046】
次に、本発明の方法は、前記不溶性残渣を分離した溶液にアルカリ成分を加え、pHが1.8〜2.2の範囲になるように調整するアルカリ成分投入工程を行う。
【0047】
アルカリ成分を加える理由は、前記溶解工程で1.6以下に調整されているpHを上げて、pHが1.8〜2.2の範囲内となるようにするためである。
【0048】
ここで、溶液のpHの下限を1.8とした理由について説明する。
【0049】
まず、上述したようにリン酸根は、pHが1.6以下になると溶解する。溶解したリン酸根は、溶液中ではリン酸イオン(PO4 3-)として存在することになり、前記リン酸イオン(PO4 3-)は、同じく溶液中に存在する3価の鉄イオン(Fe3+)と反応し、リン酸鉄(FePO4)を形成することになる。
【0050】
しかしながら、リン酸鉄(FePO4)の溶解度にはpH依存性があり、pHが1.6では沈殿を生じないが、アルカリ成分を加えて徐々にpHを上げていくと、徐々に沈殿し始める。前記リン酸鉄(FePO4)が析出し始めるpHは、約1.7であり、効率よくリン酸鉄を回収するためにはpHは、1.8以上必要である。このため、溶液のpHの下限を1.8と定めた。
【0051】
次に、溶液のpHの上限を2.2とした理由について説明する。汚泥焼却灰の中にはリン以外にも、鉄(Fe)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)等の様々な金属が含まれており、それぞれの金属が本発明の方法により、リン酸イオン(PO4 3-)と反応し、溶液中でリン酸塩を形成することが可能である。ここで、最終的にリンを回収することが目的であればいかなる金属との塩であっても基本的にはよいのであるが、しかしながら、鉄(Fe)とリン酸イオンとで形成されるリン酸鉄は、固体であるため沈殿した際に回収が容易であるのに対し、例えば、アルミニウム(Al)とリン酸イオン(PO4 3-)とで形成されるリン酸アルミニウムは、その形状がゲル状でありその沈殿物を効率よく回収することはできない。
【0052】
従って、リン酸塩を回収する場合、リン酸鉄として回収することが好ましい。ここで、それぞれの金属とリン酸イオン(PO4 3-)とで形成されるリン酸塩の溶解度のpH依存性を考えると、リン酸鉄のみが沈殿するpHの上限は2.2であり、これ以上のpHではリン酸アルミニウムが沈殿してしまうことが実験結果により明らかにされている。このためpHの上限を2.2と定めた。
【0053】
ここで、図2に各リン酸塩の単一系での計算により求めた溶解度のpH依存性を示す。
【0054】
単一系とは、溶液内に一種類の金属(例えば、Fe、Alなど)のみが存在している状態をいい、図2に示された曲線は、それぞれの金属のリン酸塩の溶解度曲線である。リン酸鉄(FePO4)とリン酸アルミニウム(AlPO4)の溶解度の差からもリン酸鉄(FePO4)の方がよりpHの低い値で沈殿することが分かる。
【0055】
なお、図2中のリン酸鉄(FePO4)が沈殿するpHは、上述した本発明の場合とかなり異なる値を示している。これは、図2は単一系での計算上の溶解度を示したものであるのに対し、本発明の場合は、汚泥等を用いることから様々な金属が含まれている等の条件面で大きな差異があるためであると考えられる。
【0056】
本発明で使用することができるアルカリ成分は、特に限定されるものではなくいかなるものでもよい。中でも、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩からなる群から選択される1もしくは2以上の混合物であることが好ましく、例えば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)等を好適に用いることができる。
【0057】
次に、前記アルカリ性分投入工程を行うことにより析出したリン酸鉄を回収するためのリン酸鉄回収工程を行う。
【0058】
ここで、リン酸鉄の回収方法は特に限定されるものではなく、例えば濾過等を行うことにより回収することができる。
【0059】
次に、鉄化合物投入工程を残渣分離工程後に行う場合について図3を用いて説明する。
【0060】
図1に示す例と同様に、まずリン酸根を含む焼却灰等に酸を含む溶液を加えpHを1.6以下に調整することにより、焼却灰等中に含まれているリン酸根を溶解する。ここで、この溶解工程において前記図1に示す例における溶解工程と異なる点は、図1に示す例における溶解工程では、焼却灰等中に含まれているリン酸根を溶解する際に鉄化合物も加えたが、図3に示す方法では、鉄化合物は残渣分離工程後に加えるためここでは加えないことである。
【0061】
なお、酸の種類等他の条件については、上述した図1に示す例と同様であるのでここでは説明を省略する。
【0062】
次に、図3に示すように残渣分離工程を行う。この工程は、上述した溶解工程により焼却灰等を溶解した際、未だ溶解せずに溶液中に固体として残っている不溶性の残渣を分離するための工程であり、図1に示した残渣分離工程と同様にして行われる。
【0063】
次に残渣分離工程により不溶性残渣が取り除かれた溶液に、鉄化合物を加える鉄化合物投入工程を行う。鉄化合物を加えるのは、上述した図1に示す例と同様に焼却灰等に含有されている鉄化合物の量は微量であるため効率よく溶液中のリン酸イオン(PO4 3-)を全てリン酸鉄として回収するためである。
【0064】
また、前記図1に示す例では、鉄化合物がリン酸根の理論反応量の0.75倍以上とすることが好ましいのに対し、図3に示す方法では、鉄化合物がリン酸根の理論反応量以上とすることが好ましい。この理由は以下に示すとおりである。
【0065】
前記図1に示す例では、上述したように不溶性残渣を分離する前、つまり不溶性残渣がまだ溶液中に含まれている状態で鉄化合物を混入するため、不溶性残渣にリン酸根が取り込まれる分だけ鉄化合物の量が少なくて済むのに対し、図3に示す方法では、不溶性残渣分離工程後に鉄化合物を混入するため、リン酸根が不溶性残渣中に取り込まれることがなく、リン酸根の理論反応量以上の鉄化合物が必要となる。
【0066】
ここで、加える鉄化合物等の他の条件については前記図1に示す例の場合と同様であるのでここでは説明を省略する。
【0067】
次に、図3に示す方法では、鉄化合物投入工程が終了した溶液にアルカリ成分を加えpHが1.8〜2.2の範囲になるように調整するアルカリ成分投入工程を行った後、回収工程によりリン酸鉄を回収する。これらのアルカリ成分投入工程及び回収工程は、上述した図1に示す例と同様に行われる。
(第2実施形態)
次に、前述してきた方法により回収したリン酸鉄をリン酸溶液または鉄以外のリン酸化合物とすることにより、リン酸根中のリンを回収する方法について図4のフローチャート図を用いて各工程毎に説明する。
【0068】
まず、pH調整工程について説明する。
【0069】
pH調整工程は、前述してきた方法(図1、図3参照)により回収したリン酸鉄にアルカリ水溶液を投入して、溶液のpHを3.0以上にする工程であり、これは、このあとに硫化水素流入工程を行い鉄を除去する際に、系中のほとんどの鉄を除去できるように(溶液中に鉄を残さないため)に行うものである。
【0070】
pH調整工程で用いるアルカリ水溶液は、特に限定されることはなく溶液のpHを3.0以上にすることができればいかなるアルカリ水溶液であってもよい。中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化アンモニウムからなる群から任意に選択される1または2以上の混合物が好ましい。これらのアルカリ水溶液は比較的安価であり、また入手が容易であるからである。
【0071】
また、このpH調整工程は次に行う硫化水素流入工程中においても行うことが好ましい。後述するが硫化水素流入工程において鉄を硫化鉄として沈殿せしめる際に、同時にリン酸が生じるため、溶液のpHは酸性側にシフトすることとなるので、これを防止するために硫化水素流入工程中においてもアルカリ水溶液を投入して、pHを調整することが好ましい。ここで、硫化水素流入工程中のアルカリ水溶液をつかったpHの調整方法であるが、本発明は特に限定するものではなく、硫化水素流入工程中1回だけ行うことも可能であり、また複数回に分けて行うことも可能であり、また硫化水素流入工程中継続して行うことも可能である。
【0072】
次に硫化水素流入工程について説明する。
【0073】
本発明の方法では、pH調整工程後の溶液に硫化水素を流入する硫化水素流入工程を行う。これは、リン酸塩中に含まれる鉄を沈殿、除去するために行う工程である。前記pH調整工程により溶解したリン酸鉄は、その溶液中では鉄イオン(Fe3+)とリン酸イオン(PO4 3-)となっている。このような状態で、硫化水素ガス(H2S)を流入することにより、溶液中の鉄イオン(Fe3+)は、鉄イオン(Fe2+)に還元され、硫化水素ガス(H2S)中の硫黄(S2-)と結合し、硫化鉄(FeS)となり沈殿するため、溶液中から鉄を除去することができる。
【0074】
本発明の方法では、続いて硫化水素流入工程により生じた沈殿物(硫化鉄)を除去するための鉄分離工程を行う。
【0075】
本工程で用いる方法は特に限定するものではなく、沈殿物である硫化鉄を溶液内から除去することができる方法であれば、いかなる方法であってもよい。例えば、ろ過法や沈降分離法などが一般的であり、また簡便であることなどの理由より好ましい。
【0076】
前述までの工程(鉄分離工程)を行うことにより、リン酸根中のリンをリン酸溶液として回収することができる。
【0077】
また、リン酸根中のリンを鉄以外のリン酸化合物として回収する場合には、前記鉄分離工程を経た溶液(リン酸溶液)に、リン酸と結合してリン酸塩を形成する化合物を混入する化合物混入工程を行う。
【0078】
鉄を除去した後の溶液(リン酸溶液)中には鉄イオンと分離したリン酸イオンが存在しており、前記リン酸イオンは、化合物混入工程により混入された化合物と結合することによりリン酸塩を形成する。ここで、混入される化合物は以下に挙げるものが好ましい。
1)リン酸カルシウムを形成することができるカルシウム化合物、
2)リン酸マグネシウムを形成することができるマグネシウム化合物、
3)リン酸アンモニウムを形成することができるアンモニア化合物もしくはアンモニアガス、
からなる群から選択される1もしくは2以上の混合物。
【0079】
また上記1)に記載のカルシウム化合物の中でも、酸化カルシウム(CaO)、炭酸カルシウム(CaCO3)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、塩化カルシウム(CaCl2)が特に好ましく、上記2)に記載のマグネシウム化合物の中では、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、塩化マグネシウム(MgCl2)が特に好ましい。そして、上記3)に記載のアンモニア化合物の中では、水酸化アンモニウム(NH4OH)、塩化アンモニウム(NH4Cl)が好ましい。
【0080】
上記1)〜3)の化合物が好ましい理由は、リン酸と反応した時に生じるリン酸塩(リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、またはリン酸アンモニウム)は、これらを肥料として用いる場合に特に好ましいからである。
【0081】
また、前記のpH調整工程で使用したアルカリ水溶液が水酸化アンモニウムである場合は、溶液中にアンモニウムイオンが存在しているため、リン酸塩を形成させるために混入する化合物もアンモニア化合物(またはガス)であることが好ましい。溶液中にアンモニウムイオンが存在している分、混入するアンモニア水溶液の量を節約することができるからである。
【0082】
本発明の方法では、上述してきた各工程によりリン酸化合物を効率よく回収することができる。また、最終的なリン酸化合物の回収方法は、特に限定されるものではなく、リン酸鉄を回収する場合と同様の方法(例えば、ろ過等)を用いることができる。
【0083】
上述してきたリン酸塩回収方法は、本発明の方法の一例であり、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものはいかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0084】
本発明の方法により回収したリン酸鉄等は、農作物の肥料の製造や医薬品の製造等に使用することができる。
【0085】
【実施例】
本発明ではいくつかの数値限定をしているが、以下にその数値限定の根拠ともなる実施例を示す。
【0086】
(実施例1)
表1は、ホッパー灰を硫酸を用いてそれぞれpH1.6および2.0で溶解した際の溶液に含まれる成分を示すものである。
【0087】
【表1】
Figure 0003705982
【0088】
表1に示されたように、pHが2.0の場合は溶液中に溶けた五酸化二リン(P25)は1.89gであるのに対し、pHが1.6の場合は溶液中に溶けた五酸化二リン(P25)は11.8gである。このことから焼却灰等に含まれるリン酸根を溶解するためにはpHを1.6以下とする必要があることが分かる。
【0089】
(実施例2)
本実施例では、まず下水汚泥の焼却飛灰を硫酸で溶解したのち、三価の鉄化合物として塩化鉄(FeCl3)を投入し、不溶性残渣を分離した後、アルカリ成分として水酸化ナトリウム(NaOH)を投入することにより溶液のpHを調整して、各pHごとの沈殿(リン酸鉄)生成を確認した。また、沈殿を生成させたときの条件としては、温度は常温であり、反応時間(沈殿生成を確認するまでの時間)は1時間とし、前記反応時間中はマグネチックスターラーで撹拌し続けた。
【0090】
以下の表2にその結果を示す。
【0091】
【表2】
Figure 0003705982
【0092】
表2に記された凡例は以下の通りである。
−:沈殿未生成。
△:沈殿は生成したが、翌日観察したところ消失。(翌日まで撹拌し続けた。)
○:沈殿生成。
【0093】
表2から、アルカリ成分として使用した水酸化ナトリウムの濃度が10%、20%のどちらの場合であっても、pHが1.6以下では沈殿物が生成されず、よってリン酸鉄の回収は不可能であることが分かる。また、pHが1.7の場合であるが、10%の水酸化ナトリウムを使用した場合は、沈殿が不完全であることが分かり、効率よく確実に沈殿物つまりリン酸鉄を回収するためには、pHは1.8以上であることが好ましいことが分かる。
【0094】
(実施例3)
さらに、本実施例では、上記実施例1により生成した沈殿物(pH2.0で沈殿したもの。)の成分を調べた。その結果を以下の表3に示す。
【0095】
【表3】
Figure 0003705982
【0096】
表3から、沈殿成分の大半がリン及び鉄であり、アルミニウム成分はほとんど含まれていないことが分かる。したがって、本発明が比較的純度よくリン酸根をリン酸鉄として回収できることが分かる。
【0097】
(実施例4)
本発明では、一度回収したリン酸鉄を懸濁液とした後に、硫化水素ガスを流入することにより、リン酸鉄中の鉄を硫化鉄として沈殿させて、当該溶液から鉄を回収する鉄分離工程を行う。本実施例では、硫化水素ガスを流入することにより硫化鉄が生成し鉄を分離することができるか否かについて確認するため、以下の実験を行った。
【0098】
▲1▼上記第1実施形態を行うことにより、リン酸鉄(固体)を得、このリン酸鉄を蒸留水に分散せしめてリン酸鉄を含有する溶液を生成した。
【0099】
▲2▼前記溶液を図5に示すように吸収ビン1に入れ硫化水素ガス流入管2より硫化水素ガスを溶液中に流入した。なお、この際溶液はマグネットスターラ3により常に撹拌し続けた。また、図中の符号4は、回転子であり、符号5はガスの排気管、符号6は散気球である。
【0100】
▲3▼実験条件は、使用したリン酸鉄(固体):20g、蒸留水:200ml、pHを調整するためのNaOH(pH4に調整)とにより、リン酸鉄を含有する溶液を生成した。また、使用した硫化水素ガスは、硫化水素ガスと窒素ガスの混合ガスを用い、その割合は硫化水素ガス10%、窒素ガス90%である。
【0101】
▲4▼以上に挙げた実験手順及び実験条件によ窒素ガスの流入時間を1時間、3時間、5時間として実験を行った。以下の表4にその結果を示す。
【0102】
【表4】
Figure 0003705982
【0103】
表4からも分かるように、何れの場合も硫化鉄(FeS)が生成していることが明らかである。また、硫化水素ガス流入後15分足らずで溶液が黒色に変色したことが確認できた(この時の溶液のpHは3.5であった。)。さらに表4より反応時間は1時間で十分なことも明らかになった。
【0104】
(実施例5)
本発明では、一度回収したリン酸鉄からリン酸根を再度溶解してリン酸カルシウム等を形成するが、リン酸鉄中の鉄を硫化鉄として沈殿させ、リン酸根を遊離させる際にpHを3.0以上とする。本実施例では、リン酸鉄を含む懸濁液に種々の濃度の硫化水素ガスを流入し硫化鉄が効率よく生成するpHを決定するための実験を行った。以下に実験の方法及び結果を記す。
【0105】
<実験方法>
実験は上記実施例4に示した実験装置を用いて行った。またリン酸鉄を含む懸濁液の成分は、リン酸鉄;20g、蒸留水;200mlとした。そして、前記懸濁液に流入する硫化水素ガスの濃度は、硫化水素ガスと窒素ガスとを混合することにより生成し、それぞれ100%、10%、1%、0.1%、0.01%の5種類の硫化水素ガスを用意した。前記リン酸鉄を含む懸濁液は白色であり、硫化水素ガスを流入することにより硫化鉄が生成すると溶液の色は黒色に変化するので、溶液の色により容易に硫化鉄の生成を確認することが可能である。
【0106】
前記5種類の硫化水素ガスを懸濁液に流入しながら、NaOH液を徐々に加えて、懸濁液のpHを増加させていき、懸濁液が白色から黒色に変化する時の懸濁液のpHを測定した。本実験で測定したpHが各濃度の硫化水素ガスにおける硫化鉄を効率よく生成するpHとなる。
【0107】
<実験結果>
実験結果を図6に示す。
【0108】
図6からも分かるように、懸濁液に流入する硫化水素ガスの濃度が低くなればなるほど、懸濁液の色が白色から黒色へ変化するpH、つまり硫化鉄を効率よく生成するpHは高くなることが分かった。
【0109】
本実験結果より、懸濁液のpHと、流入する硫化水素ガスの濃度(X%とする)との関係を実験式として求めると、
(懸濁液のpH)=4.0−0.5logX
となる。したがって、本発明では、硫化水素流入工程で流入される硫化水素ガスの濃度を予め測定しておき上記実験式に代入することにより、硫化鉄を効率よく生成するためにpH調整工程で調整すべきpHの値を求めることができる。
【0110】
しかしながら、前記の実験式で算出するpHの値は、本実験方法より明らかなように、不純物が一切含まれていない懸濁液を使用して求めた値であり、従って算出したpHの値は、効率よく硫化鉄を生成するための参考値である。よって、本発明の方法のpH調整工程においてpHを3.0以上とすれば、たとえ上記実験式により求めたpH値と異なったpHであっても、その後に行う硫化水素流入工程により硫化鉄は沈殿除去することは可能である。ただし、効率よく硫化鉄を生成するには上記の実験式により求めたpH以上に調整することが好ましく、上記式を用いて表すと、
(調整すべきpH)≧4.0−0.5logX
と表すことができる(Xは硫化水素ガスの濃度(%)とする。)。
【0111】
【発明の効果】
上述のような本発明のリン酸塩回収方法により、汚泥等の焼却灰等の廃棄物から農作物の肥料の製造や医薬品の製造に有用なリンをリン酸化合物として低コストで回収・再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を示すフローチャート図である。
【図2】様々なリン酸塩の単一系での溶解度曲線を示す図である。
【図3】本発明の方法を示すフローチャート図である。
【図4】本発明の方法を示すフローチャート図である。
【図5】実施例で用いた実験装置の概略断面図である。
【図6】実施例5で行った実験の結果を示す図である。
【符号の説明】
1…吸収ビン、
2…硫化水素ガス流入口、
3…マグネットスターラ、
4…回転子、
5…ガス排気管、
6…散気球。

Claims (11)

  1. リン酸根を含む焼却灰および/または焼却飛灰に酸を含む溶液を加えてpHを1.6以下とすることにより、前記酸を含む溶液中に前記灰中のリン酸根を溶解させる溶解工程と、
    前記酸を含む溶液中の不溶性残渣を分離する残渣分離工程と、
    前記不溶性残渣を分離した溶液にアルカリ成分を加え、pHが1.8〜2.2の範囲内となるように調整するアルカリ成分投入工程と、
    を有し、
    鉄化合物を投入する鉄化合物投入工程を前記アルカリ成分投入工程前のいずれかの工程で行い、さらに前記アルカリ成分投入工程後にリン酸鉄を回収する回収工程を有することを特徴とするリン酸塩回収方法。
  2. 前記不溶性残渣を分離する残渣分離工程の前に鉄化合物混入工程を行い、かつ、投入する鉄化合物の量が前記灰中に含まれるリン酸根の理論反応当量の0.75倍以上であることを特徴とする請求項1記載のリン酸塩回収方法。
  3. 前記不溶性残渣を分離する残渣分離工程の後に鉄化合物混入工程を行い、かつ、投入する鉄化合物の量が前記不溶性残渣を分離した溶液中のリン酸根の理論反応当量と同等以上であることを特徴とする請求項1記載のリン酸塩回収方法。
  4. 前記焼却灰および/または焼却飛灰が、下水汚泥を焼却した際に排出される焼却灰および/または焼却飛灰であることを特徴とする請求項1から請求項3までの内のいずれかの請求項に記載のリン酸塩回収方法。
  5. 前記アルカリ成分が、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩からなる群から選択される1もしくは2以上の混合物であることを特徴とする請求項1から請求項4までの内のいずれかの請求項に記載のリン酸塩回収方法。
  6. 前記鉄化合物が、3価の鉄から成る鉄化合物であることを特徴とする請求項1から請求項5までのうちのいずれかの請求項に記載のリン酸塩回収方法。
  7. 請求項1から6までのうちのいずれかの請求項に記載のリン酸塩回収方法により回収されたリン酸鉄に、アルカリ水溶液を投入して、pHを3.0以上にするpH調整工程と、
    前記pH調整工程後の溶液に、リン酸鉄中に含まれる鉄分を除去するために硫化水素ガスを流入する硫化水素流入工程と、
    硫化水素流入工程により沈殿した硫化鉄を除去することにより、リン酸溶液を得るリン酸溶液回収工程と、
    を少なくとも行うことにより、リン酸根をリン酸溶液として回収することを特徴とするリン酸塩回収方法。
  8. 請求項7に記載するpH調整工程を行い、その後硫化水素流入工程を行う場合において、
    硫化水素ガスを流入している間においても、pHを3.0以上に調整するためにアルカリ水溶液を投入することを特徴とする請求項7に記載するリン酸塩回収方法。
  9. 請求項7または請求項8に記載するリン酸回収方法において投入されるアルカリ水溶液が、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、または水酸化アンモニウムからなる群から任意に選択される1もしくは2以上の混合物であることを特徴とする請求項7または請求項8記載のリン酸塩回収方法。
  10. 請求項7から請求項9のいずれかに記載のリン酸塩回収方法により回収されたリン酸溶液に、リン酸と結合してリン酸塩を形成する化合物を混入する化合物混入工程と、
    リン酸と前記化合物とにより生じたリン酸塩を回収するリン酸塩回収工程と、
    を少なくとも行うことを特徴とするリン酸塩回収方法。
  11. 前記化合物混入工程において混入する化合物が、
    リン酸カルシウムを形成することができるカルシウム化合物、
    リン酸マグネシウムを形成することができるマグネシウム化合物、
    または、リン酸アンモニウムを形成することができるアンモニア化合物もしくはアンモニアガス、
    からなる群から選択される1もしくは2以上の混合物であることを特徴とする請求項10に記載のリン酸塩回収方法。
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