JP3705419B2 - 軽量吸音材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軽量で厚みが薄いにも関わらず吸音性および制振特性にすぐれた吸音材に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車や建築用途などの吸音材として短繊維不織布が広く用いられている。吸音性能を高くするために、繊維径を細くして空気の通過抵抗を大きくしたり、目付を大きくするなどの方法が採られてきた。その結果、高い吸音性能を求められる場合には、繊維径が15ミクロン程度と比較的細い繊維を用い、目付が500〜5000g/cm2の厚くて重い短繊維不織布が用いられている。
極細繊維を含む不織布はすぐれた吸音特性やフィルター性、遮蔽性などのすぐれた特性があり多くの用途に利用されてきたが、強度が弱かったり、形態安定性が悪いなどの問題があり、その改善のために別の不織布と積層複合化して用いられてきた。この際に不織布を積層一体化する方法として、スプレーや転写などでバインダーとなる樹脂あるいは熱融着繊維などを用いていた。しかしながら、これらの方法では、乾燥あるいは樹脂の融解接着の目的で熱処理を行うことが必要であり、排気ガスによる環境汚染の問題や省エネルギーの観点からあまり好ましい物でなかった。また、バインダー樹脂が不織布間の界面で皮膜を形成し、吸音性が低下するなどの問題もあった。
一方、極細繊維不織布と長繊維不織布を積層一体化する方法は、スパンボンド不織布の間に極細繊維であるメルトブローン不織布を積層して熱エンボス法で接合する方法(通称S/M/Sなどの名前で呼ばれる)が知られている。しかしながら、これらの不織布は、ボリューム感に欠け、硬い風合いとなってしまうので用途が制限されてしまうという問題点がある。
また、コフォームと呼ばれる、メルトブローン不織布の内部に20〜30ミクロン前後の短繊維を吹き込んで複合化した不織布も商品化されているが、形態安定性や成形加工性が悪い点が問題である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、吸音性能が高く、薄くて軽量で形態安定性の良い吸音材を、安価に提供することを目的とする。特に、自動車関連では、燃費向上や快適性改善のため、軽量で優れた吸音材が要求されており、その要望に応える事も目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる問題を解決するために以下の手段をとる。第一の発明は、繊維径が6ミクロン以下の極細繊維を含み目付が20〜100g/m2のメルトブローン不織布と、繊維径が7〜40ミクロンで目付が50〜2000g/m2、厚み5〜30mmで、かつ目付15〜100g/m 2 のスパンボンド不織布の基布入り短繊維不織布とが積層一体化され、かつ前記メルトブローン不織布の外側に短繊維のループを有してなることを特徴とする軽量吸音材である。
【0005】
第二の発明は、第一の発明において、短繊維不織布が繊維長が50〜150mmの短繊維よりなる不織布であって、ニードルパンチ法により積層一体化されたことを特徴とする軽量吸音材である。
【0006】
第三の発明は、第一の発明あるいは第二の発明に記載の吸音材において、基布が15〜50g/m2のポリエステルスパンボンド不織布であることを特徴とする軽量吸音材である。
【0007】
第四の発明は、短繊維不織布が5〜20ミクロンの短繊維を重量分率で10〜40%と20〜30ミクロンの短繊維を重量分率で60〜90%含有することを特徴とする第一の発明〜第三の発明のいずれかに記載の軽量吸音材である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる不織布は、少なくとも2種以上の不織布が接合一体化されていることが必要である。通気性などをコントロールするために極細繊維を含む不織布層にフィルムや強度の高いスパンボンド不織布などを積層する事も望ましい形態のひとつである。また、織布や織物と複合化するのも使用形態により好ましい。さらに、該複合不織布の外側に色や模様のついた意匠性のある表層不織布を貼り付けても良く、車両内装材や建築材の防音材として好適に用いることが可能である。
【0009】
本発明で用いられる繊維径が6ミクロン以下の極細繊維を含み目付が20〜100g/m2のメルトブローン不織布は、極細繊維を重量で10%以上含有されていることが好ましい。不織布全体が極細繊維のみで構成されていてもよいが、含有率が小さすぎると極細繊維特性による効果が得られにくく好ましくない。極細繊維の繊維径は5ミクロン以下が好ましく、特に好ましくは、0.5〜4ミクロン以下であり、最も好ましくは1.5〜3ミクロン前後である。メルトブロー法は、繊維のランダム配列が可能で生産コストの安いため極細繊維の製造に好適に利用される。
【0010】
メルトブローン不織布は強度が弱いので、スパンボンド不織布など補強用不織布と接合した不織布を用いたり、積層工程で同時に3層以上の不織布を積層するのも好ましい。この際、耐摩耗性にすぐれたスパンボンド不織布が使用時に表層側にくるように設置することが好ましい。メルトブロー不織布とスパンボンド不織布のエンボス加工積層不織布はS/M/SやS/Mなどの名称で呼ばれ市販されておりこれらを用いるのも好ましい(Sはスパンボンド不織布を、Mはメルトブロー不織布を表す)。
【0011】
極細繊維を含む不織布は、目付は20〜100g/m2とする。目付が20g/m2より小さくなると、極細繊維の持つ吸音効果があまり期待できない。一方、目付が100g/m2を超えると、短繊維不織布との複合化する際に皺が入ったり、接合力が弱いという問題が生じる場合がありあまり好ましくない。また、目付をあまり大きくしすぎても目的とする吸音性などの改善効果があまり変わらず、コスト削減や軽量化などの観点からあまり好ましくない。
【0012】
極細繊維を含む不織布を構成する素材は、特に限定はされないが、ポリプロピレンかポリブチレンテレフタレートが好ましい。好ましくは、極細繊維に積層される短繊維不織布と類似の素材であることがリサイクルしやすく特に好ましい。一方、複数の素材よりなる繊維が混合されていても問題はない。素材がエラストマーの場合は、成形加工がしやすく、またニードルパンチ積層加工を行う際には、突き刺し密度を高くとってもあまり性能低下がなく、突き刺し密度を高くすることで積層体の界面の剥離強度を高くすることが可能となり形態安定性を高くすることが可能ある。
【0013】
次に、極細繊維を含む不織布に積層される短繊維不織布は、繊維径が7〜40ミクロンであり、好ましくは7〜20ミクロンである。繊維径が7ミクロンより細いことは直接大きな問題を引き起こす訳ではないが、カード機からの紡出性などの生産性を考えるとあまり好ましくない。また、繊維径が7ミクロンより大幅に小さいと、本発明による積層効果が小さくなる。また、不織布が毛羽立ちやすいなど別の問題を生じる場合がある。一方、繊維径が40ミクロンより太いと、吸音性能に対する寄与が小さくなりあまり好ましくない。
【0014】
本発明において、短繊維の不織布を極細繊維を含む不織布と積層するのは、極細繊維を含む不織布がへたり易く形態安定性が低い、毛羽立ち易い、嵩高性の維持に問題を生じやすいなどの問題点を改善するため及び高いクッション性、制振性を得るなどの目的で実施される。また、吸音材は一般的に厚みが大きいほど高い性能を得ることが可能と考えられ、厚みをコントロールする目的でも積層を行う。吸音性能向上に貢献する細い繊維と形態安定性改善に貢献する太い繊維を適当な割合で混合使用することで吸音性能が高く、かつ形態安定性のよい吸音材を設計することが可能である。好ましくは、繊維径5〜20ミクロンの短繊維が重量分率で10〜40%と繊維径20〜30ミクロンの短繊維が重量分率で60〜90%混合使用することで、嵩高性と適切な通気抵抗を得ることが可能である。
【0015】
本発明における短繊維不織布の目付は、50〜2000g/m2であり、好ましくは100〜2000g/m2である。目付が50g/m2より小さいと積層効果が小さく不織布の嵩高性や柔らかい風合いの点であまり好ましくない。一方、2000g/m2より大きい目付であると厚みが大きくなりすぎてスペースをとったり、重さが重くなるため好ましくない。
【0016】
短繊維の繊維長さは38〜150mmが好ましく、特に好ましくは50〜150mmである。本発明者らの検討の範囲では、繊維長が長いほど優れた吸音率を示した。ただし、繊維長が長すぎるとカードからの紡出性が悪くなり好ましくなかった。短繊維は単一成分でも良いが、2種類以上の混合物や複数成分の複合繊維でも良い。融点の異なる熱融着性繊維を10〜50重量%混合して用いることも寸法安定性や成形性を改善する観点から好ましい。
【0017】
短繊維不織布の厚みは吸音性能と深く関係するが、本発明の構成では、5〜30mmであることが好ましい。厚みが大きすぎると形態安定性が悪くなりあまり好ましくない。厚みが小さすぎると吸音性は悪くなる方向にあり本発明の目的を満足することが難しくなる。
【0018】
本発明の短繊維不織布は基布が挿入されていることが必要である。前述の通り、厚みの大きい不織布は、吸音性能を高くすることが可能となるが形態安定性が低下しやすい。そこで、目付が15〜100g/m2の目付の基布を導入することで形態安定性が改善される。基布の素材や構成は特に限定されないが、強力の高い織布やスパンボンド不織布が好ましい。特に、経済性の観点から目付が15〜50g/m2のスパンボンド不織布を用いることが好ましい。基布の挿入位置は特に限定されないが、不織布の中央付近に挿入されるのが一般的である。基布と短繊維不織布は、接着剤、接着性繊維、ニードルパンチ法などの方法により一体化されるのが普通である。
【0019】
不織布の積層一体化方法はニードルパンチ法により一体化する事とが好ましい。ニードルパンチ法は不織布加工方法として一般的に実施されており、詳細は日本繊維機械学会不織布研究会編集の「不織布の基礎と応用」などで詳細に解説されている。このニードルパンチ法を用いて不織布を複合化することは公知であるが、極細繊維で目が均一化された不織布と繊維径が比較的太い嵩高の短繊維をニードルパンチ機で複合化すると極細繊維不織布に穴が開いて、吸音性能やフィルター性能などが低下して極細繊維特性が得にくいと考えられていたためか、発明者の知る限りでは、市場にその商品を見つけることができない。
【0020】
ニードルパンチ加工を行う際には、38番手より細いニードル(針)を用いることが好ましく、特に好ましくは40〜42番手である。ニードルは、短繊維不織布側から入り、極細繊維含有不織布の外側に、短繊維のループを生じさせる。極細繊維を含む不織布は、繊維が他の物に引っかかったり、それにより切断されたりして毛羽立ちやすいが、短繊維のループが極細繊維を含む不織布の表面毛羽立ちを防止したり、クッション層になって、極細繊維含有不織布層にかかる外力を緩和することで破壊の防止に役立つことが判明した。
【0021】
また、伸度が25%より高い別の不織布やフィルムなどと積層する際に、該ループと積層相手の第3の素材を接着することで、曲げや引っ張りなどの外力がかかったときに極細繊維を含む不織布の破壊されるのを防止することが可能となることも判明した。適切なループの大きさを形成するために、ニードルパンチの針深度は15mm以下であることが好ましい。それ以上では、極細繊維不織布を針および短繊維が貫通するときの衝撃で不織布が破れたり、貫通した後の針穴が大きくなりすぎることが多くなりあまり好ましくない。
【0022】
針深度は、ニードルのバーブの位置にもよるが5mm以上であることが、不織布の交絡を増やして剥離を防止する上で好ましい。刺孔密度は30〜200本/cm2であることが好ましい。刺孔密度が30本/cm2より小さいと不織布の剥離の問題が生じやすく、250本/cm2より大きいと刺孔による開口総面積が大きすぎたり、極細繊維を含む不織布の破れや破壊を生じやすくあまり好ましくない。
【0023】
吸音材表面の毛羽防止や形態安全性改善などの目的に、前記の第一から第四の発明のいずれかに記載の吸音材に積層する相手として特に好適であるのは、繊維径が5〜20ミクロンで目付が20〜250g/m2の長繊維不織布である。該長繊維不織布の繊維径が5ミクロン未満であると形態安定性などの改善効果が小さく好ましくない。20ミクロンを超えると不織布の斑が目立ちあまり好ましくない。目付に関しては、20g/m2未満では地合の斑が目立ち好ましくなく、ニードルパンチで積層しても繊維の絡み点が少ないために簡単に剥離してしまうという問題を生じる。一方、目付が250g/m2を超えると軽量化を目的とした本発明の趣旨と合致せず好ましくない。
【0024】
積層される不織布の表面には、色付けをしたり模様をプリントして意匠性を持たせることが好ましい。これにより、建築構造物の吸音材や自動車内装材に用いられる吸音材として視覚的に周囲と違和感なく調和させることが可能となる。繊維の素材としては、伸度が25%以上あれば特に限定されないが、熱可塑性エラストマーや複屈折率が0.08より小さいポリエステル系繊維が得に好ましい。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によって説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。なお、実施例における測定及び評価法は以下の方法によった。
【0026】
(平均繊維径):走査型電子顕微鏡写真で、繊維側面を20本以上測定して、その平均値から計測した。極細繊維不織布がメルトブロー法の場合は、繊維径のバラツキが大きいため100本以上を測定して平均値を採用した。
【0027】
(目付および充填密度):不織布を20cm角に切り出してその重量を測定した値を1m2あたりに換算して目付とした。充填密度は、不織布の目付を20g/cm2の荷重下での厚みで割った値を求めて、g/cm3に単位換算して求めた。
【0028】
(耐剥離性):複合した不織布を手で90度前後折り曲げる動作を20回繰り返して、剥離が生じるかどうかを目視で評価した。
【0029】
(吸音率):JIS A−1405に従って、垂直入射法吸音率%を求めた。代表値として1000Hzと2000Hzの値の平均値を用いた。
【0030】
【実施例1】
平均繊維径3ミクロン、目付100g/m2のポリブチレンテレフタレート製メルトブローン不織布Aの上に、平均繊維径14ミクロン、繊維長51mm、捲縮数12個/インチの短繊維30重量パーセントと平均繊維径25ミクロン、繊維長51mm、捲縮数12個/インチの嵩高短繊維70重量パーセントを混合して作られた目付125g/m2、充填密度0.06g/cm3のポリエチレンテレフタレート製ニードルパンチ不織布2枚の間に平均繊維径3ミクロン、目付15g/m2を挟んでニードルパンチ法により一体化された3層構造の不織布Bを重ねて、40番手のニードルを用いて刺孔密度50本/cm2、針深度10mmでニードルパンチ積層加工を実施した。吸音材を20回程度折り曲げても剥離の問題は生じず、吸音率も72%と高く良好であった。
【0031】
【実施例2】
実施例1において、メルトブローン不織布層側に平均繊維径14ミクロン、目付30g/m2の東洋紡績社製難燃ポリエステルスパンボンド不織布(ハイム)をニードルパンチ法の積層時に一緒に積層した。作成した不織布を20回程度折り曲げても剥離の問題は生じず、吸音率も75%と高く良好であった。表面を指でこすっても全く毛羽立たず形態安定性に非常に優れていた。トムソン刃により打ち抜き加工を実施したところ複雑な形状でもきれいに打ち抜くことができた。
【0032】
【比較例1】
平均繊維径14ミクロン、繊維長51mm、捲縮数12個/インチの短繊維を用いて、目付500g/m2、厚み10mmの不織布を作成した。吸音率を測定したところ36%と低く問題であった。また、トムソン刃により打ち抜き加工を実施したところ不織布が歪んできれいに打ち抜くことができず問題であった。
【0033】
【発明の効果】
本発明の吸音材は、吸音性能が高く、薄くて軽量で、成形加工性が良く、かつ形態安定性にすぐれるため、産業上の広い用途で吸音材として好適に使用される。

Claims (4)

  1. 繊維径が6ミクロン以下の極細繊維を含み目付が20〜100g/m2のメルトブローン不織布と、繊維径が7〜40ミクロンで目付が50g/m2以上であり、厚み5〜30mmで、かつ目付15〜100g/m2のスパンボンド不織布の基布入り短繊維不織布とが積層一体化され、かつ前記メルトブローン不織布の外側に短繊維のループを有してなることを特徴とする目付が240g/m 2 以下の軽量吸音材。
  2. 請求項1において、短繊維不織布が繊維長50〜150mmの短繊維よりなる不織布であって、ニードルパンチ法により積層一体化されていることを特徴とする軽量吸音材。
  3. 請求項1あるいは2に記載の軽量吸音材において、基布が目付15〜50g/m2のポリエステルスパンボンド不織布であることを特徴とする軽量吸音材。
  4. 短繊維不織布が繊維径5〜20ミクロンの短繊維を重量分率で10〜40%、繊維径20〜30ミクロンの短繊維を重量分率で60〜90%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の軽量吸音材。
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