JP3968648B2 - 吸音材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軽量で厚みが薄いにも関わらず吸音性および制振特性にすぐれた吸音材に関する。詳しくは、500Hz〜4000Hzでの吸音特性にすぐれた吸音材に関する。さらには、広い温度域での成型時の絞り部での変形が大きくても千切れることのない成形性の良い吸音材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車や建築用途などの吸音材として短繊維不織布が広く用いられている。吸音性能を高くするために、繊維径を細くして空気の通過抵抗を大きくしたり、目付を大きくするなどの方法が採られてきた。その結果、高い吸音性能を求められる場合には、繊維径が15μm程度と比較的細い繊維を用い、目付が500〜5000g/cm2の厚くて重い短繊維不織布が用いられている。
極細繊維を含む不織布は優れた吸音特性やフィルター性、遮蔽性などのすぐれた特性があり多くの用途に利用されてきたが、強度が弱かったり、形態安定性が悪いなどの問題があり、その改善のために別の不織布と積層複合化して用いられてきた。この際に不織布を積層一体化する方法として、スプレーや転写などでバインダーとなる樹脂あるいは熱融着繊維などを用いていた。しかしながら、これらの方法では、乾燥あるいは樹脂の融解接着の目的で熱処理を行うことが必要であり、排気ガスにようる環境汚染の問題や省エネルギーの観点からあまり好ましい物でなかった。また、バインダー樹脂が不織布間の界面で皮膜を形成し、吸音性が低下するなどの問題もあった。
【0003】
一方、極細繊維不織布と長繊維不織布を積層一体化する方法は通称S/M/Sなどの名前で知られる、スパンボンド不織布(S)の間に極細繊維であるメルトブローン不織布(M)を積層して熱エンボス法で接合する方法が知られている。しかしながら、これらの不織布は、ボリューム感に欠け、硬い風合いとなっており用途が制限されてしまうという問題点があった。
また、コフォームと呼ばれる、メルトブローン不織布の内部に20〜30μm前後の短繊維を吹き込んで複合化した不織布も商品化されており、優れた吸音性能を示すといわれている。
【0004】
さらに、自動車内装材は電気製品などに組み込まれる吸音材は立体成型を行われる事が少なくないが、成型時の絞りが深いと絞り部での変形が大きく吸音材の変形が追随できなくて千切れるという問題があった。
また、吸音性能を上げるために極細の繊維を使うと、比表面積が増加するために燃焼しやすいという問題もあった。特に、極細繊維がメルトブロー法によって作られた物である場合はポリプロピレンが一般的であり素材の観点からさらに燃焼しやすいという問題があり、モーターなどの発熱体に接触する用途では安全の問題上適用しにくいのが現状である。
【0005】
近年、自動車用途を中心として小型化や軽量化が進むにつれて、従来の高目付の吸音材を用いて重量則で遮音する手法がとりにくくなってきたために低周波数域で吸音性能の高い軽量の不織布が求められている。しかしながら、従来の不織布の厚みを大きくして低周波数域での吸音率を高くすると、高周波数域で吸音性能が低下するという問題を生じた。また、多孔質の吸音材表面にフィルム状のシートを貼り合わせると、500〜1000Hzの低周波数域での吸音性能を著しく改善することも確認されているが、2000Hz以上の高周波数域での吸音性能低下が大きいという問題が生じた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低周波数域でも吸音性能が高く、薄くて軽量な形態安定性の良い吸音材を、安価に提供することを目的とする。特に、自動車関連では、燃費向上や快適性改善のため、軽量で優れた吸音材が要求されており、その要望に応える事も目的とする。成型時の絞り部での変形が大きくても千切れることのない成形性の良い吸音材に関する。また、必要により難燃性の吸音材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる問題を解決するために以下の手段をとる。
第一の発明は、繊維径が1〜25μmの繊維を主体とする目付が20〜200g/m2で、かつ平面部面積の5〜80%が圧着された不織布と、繊維径が7〜50μm、目付が50〜2000g/m2、厚みが4〜50mmの短繊維不織布とが積層一体化されていることを特徴とする吸音材である。
【0008】
第二の発明は、第一の発明において、圧着された不織布のフラジール通気度が0.05〜100cm3/cm2・秒であることを特徴とする吸音材である。
【0009】
第三の発明は、第一又は第二の発明において、繊維径が6μm以下の極細繊維を含む目付が20〜200g/m2不織布が圧着不織布と短繊維不織布の間に挿入されていることを特徴とする吸音材である。
【0010】
そして第四の発明は、第一〜三の発明の何れかにおいて、圧着された不織布と短繊維不織布がニードルパンチ法により積層一体化されていることを特徴とする吸音材である。
【0011】
第五の発明は、第一〜四の何れかの発明において、圧着された不織布が伸度30%以上の長繊維不織布であることを特徴とする吸音材である。
【0012】
また、第六の発明は、第五の発明において、長繊維不織布が芯鞘型複合繊維、ポリトリメチレンテレフタレートを主体とする繊維、ハードセグメントとソフトセグメントを有するブロック共重合ポリエステル繊維のいずれかにより構成されていることを特徴とする吸音材である。
【0013】
さらには、第七の発明は、周波数500Hzでの吸音率が20%以上であり、かつ2000Hzと4000Hzの吸音率がともに80%以上であることを特徴とする第一〜六の発明の何れかに記載の吸音材である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明における吸音材は、少なくとも2種の不織布が積層一体化されていることが必要である。
【0015】
本発明において積層一体化される一方の側の不織布は、繊維径が1〜25μmの繊維を主体とする目付が20〜200g/m2であり、平面部面積の5〜80%が圧着された不織布である。この不織布はより細い繊維をより多く含むほど吸音性能が上がり好ましい。不織布全体が極細繊維のみで構成されていてもよいが、極細繊維の含有率は、60%以上であることが好ましく、含有率が小さすぎると極細繊維特性による効果が得られにくくなる。繊維径は、好ましくは1〜15μmであり、より好ましくは1.5〜10μm前後である。
【0016】
圧着された不織布を構成する繊維は、長繊維でも短繊維でもよいが、繊維のランダム配列が可能で生産コストの安いメルトブロー法やスパンボンド法により得られる長繊維不織布が特に好ましい。メルトブローン不織布は強度が弱いので、スパンボンド不織布など補強用不織布と接合したり、積層工程で同時に3層以上の不織布を積層するのも好ましい。この際、耐摩耗性にすぐれたスパンボンド不織布が使用時に表層側になるように設置することが好ましい。メルトブローン不織布とスパンボンド不織布のエンボス加工積層不織布はS/M/SやS/Mなどの名称で呼ばれ市販されており、これらを用いるのも好ましい態様である(Sはスパンボンド不織布を、Mはメルトブロー不織布を表す)。
【0017】
また、前記の圧着された不織布の圧着部面積は、平面部面積の5〜80%である事が必要である。圧着された面積がこの範囲であることにより、低周波数域の吸音率と高周波数域の吸音率を高く設定することが可能となる。圧着部の面積が5%より小さいと低周波数域の吸音率を高くすることが困難になる。一方、圧着部面積が80%を超えると高周波数域での吸音率が低下する傾向になる。圧着部面積は、好ましくは10〜70%、特に好ましくは20〜50%である。本発明者らの検討の結果、目付の小さい不織布ほど圧着面積を広くすることが好ましい。ここで圧着部とは、熱エンボスロールや超音波ウェルダーなどにより不織布の密度を上げた部分のことを意味するが、樹脂などを用いて不織布表面を部分的に通気度が異なるように加工しても同様の効果を得ることができる場合をも含む。
【0018】
前記の圧着された不織布は、フラジール通気度が0.05〜100cm3/cm2・秒であることが好ましく、より好ましくは1〜70cm3/cm2・秒であり、特に好ましくは5〜50cm3/cm2・秒である。
【0019】
また、該不織布は、分割繊維あるいは海島型繊維を用いて得られる極細繊維を用いるのも好ましい形態の一つである。分割繊維は予め分割しておいたものを使用しても良いし、ニードルパンチや水流交絡法などを用いた積層加工の際に分割を同時に行っても良い。
【0020】
さらに、該不織布の目付は、20〜200g/m2不織布である。目付が20g/m2より小さくなると、極細繊維の持つ吸音効果があまり期待できなくなる。一方、目付が200g/m2を超えると、短繊維不織布との複合化する際に皺が入ったり、接合力が弱いという問題が生じる場合がある。また、目付を大きくしすぎても目的とする吸音性などの改善効果があまり変わらず、コスト削減や軽量化などの観点からはあまり好ましくない。
【0021】
該不織布を構成する繊維素材としては、特に限定されるものではないが、伸度の高い芯鞘型複合繊維、ポリトリメチレンテレフタレートを主体とする繊維あるいはハードセグメントとソフトセグメントを有するブロック共重合ポリエステル繊維が、不織布の深絞り成形時の変形追随性などの観点からより好ましい。さらに、極細繊維に積層される短繊維不織布と類似の素材であることがリサイクルしやすく特に好ましい。一方、複数の素材よりなる繊維を混合しても問題はない。メルトブロー法による極細繊維の場合は、繊維が長繊維であり切断面がほとんどないことから素材としてエラストマーを用いることが好ましい。
【0022】
極細繊維不織布をニードルパンチ法により他の不織布と積層する際にニードルにより多数の針の通過跡である孔があいてしまう場合には、その孔を空気がチャンネリングして吹き漏れてしまい吸音率が低下するという問題が生じるが、エラストマーであれば変形して元に戻るため孔のサイズが小さく、吸音率がほとんど低下することがないので好ましい。したがって、エラストマーの場合は、突き刺し密度を高くすることで積層体の剥離強度を高くすることが可能となり、形態安定性を高くすることが可能である。
【0023】
次に、他方の圧着された不織布と積層される短繊維不織布は、繊維径が7〜50μmであり、好ましくは7〜20μmである。繊維径が7μmより細いことは直接大きな問題を引き起こすことはないが、カード機からの紡出性など生産性の点であまり好ましくない。また、繊維径が7μmより大幅に小さいと、本発明における積層効果が小さくなる。また、不織布が毛羽立ちやすいなど別の問題を生じる場合がある。一方、繊維径が50μmより太いと、吸音性能に対する寄与が小さくなる傾向がある。
【0024】
該短繊維不織布の目付は、50〜2000g/m2の短繊維不織布である。目付が50g/m2より小さいと積層効果が小さく、不織布の嵩高性や風合いの点で好ましくない。一方、2000g/m2より大きい目付であると、厚みが大きくなりすぎたり、重さが重くなるため好ましくない。また、該短繊維不織布の厚みは4〜50mmである。厚みが4mmより薄いと吸音性能が低下する傾向がある。厚みが大きいほど低い周波数の吸音率を高くすることが可能となるが、50mmを超えると嵩張るため余り好ましくない。厚みが5〜20mmである場合、ハンドリングやコストパフォーマンスの観点から好ましい。
【0025】
該短繊維不織布の繊維長さは、38〜150mmが好ましく、より好ましくは50〜150mmである。本発明者らの検討の範囲では、繊維長が長いほど優れた吸音率を示した。ただし、繊維長が長すぎるとカードからの紡出性が悪くなる問題点が認められた。短繊維は単一成分でも良いが、2種類以上の混合物や複数成分の複合繊維でも良い。不織布の堅さを調整するために重量分率で30%程度以下であれば、さらに太い繊維を混合しても特性はあまり変化しない。太い繊維が多すぎると不織布風合いが硬くなりすぎるなどの問題を生じやすくなる。融点の異なる熱融着性繊維を用いることも寸法安定性を改善する観点から好ましい。
【0026】
短繊維不織布の重量ベースの充填密度は、嵩高性の観点から0.005〜0.3g/cm3であることが好ましい。充填密度が小さすぎると形態安定性が悪くなる傾向がある。充填密度が0.3g/cm3より大きくなると吸音性は悪くなる傾向がある。
【0027】
短繊維不織布の素材は、天然繊維であっても合成繊維であっても良いが、親水性の繊維を用いる場合は水がかからないように注意する必要がある。これは、水で不織布の空孔が詰まると吸音性能が低下する場合があるためである。また、環境問題の観点からリサイクル不織布である反毛などを用いることも可能である。
【0028】
また、本発明において、前記の圧着された不織布と短繊維不織布との間に、繊維径が6μm以下の極細繊維を含む目付が20〜200g/m2不織布を挿入させることは、吸音性や形態安定性を向上させる点で好ましい。
【0029】
前記の各不織布を積層一体化する方法は、特に限定されず、接着剤や接着パウダーなどを使用して接着することも可能であるが、ニードルパンチ法により一体化することが好ましい。ニードルパンチ法は、基本的には日本繊維機械学会不織布研究会編集の「不織布の基礎と応用」などで詳細に解説されている方法を採用することができる。
一般的に、不織布を積層する際には、ニードルにより多数の針の通過跡である孔があいてしまう問題があるが、本発明においては、驚くべきことに、ニードルパンチ法であっても、前記の不織布同士を複合化する際には、均一な極細繊維不織布に穴が開いてしまうことが抑制でき、吸音性能やフィルター性能などが低下する問題を防止できるのである。
【0030】
本発明においてニードルパンチ加工を行う際には、38番手より細いニードル(針)を用いることが好ましく、特に好ましくは40〜42番手である。ニードルは、短繊維不織布側から入り、極細繊維を含む不織布の外側に短繊維のループを生じさせることが好ましい。極細繊維を含む不織布は、繊維が他の物に引っかかったり、ニードルで切断されたりして毛羽立ちやすい欠点を有するが、短繊維のループは、極細繊維を含む不織布の表面毛羽立ちを防止したり、クッション層の役割を果たし、極細繊維不織布層にかかる外力を緩和することができるため、積層体の破壊の防止に役立つ。また、伸度が30%より高い別の不織布やフィルムなどと積層する際に、該短繊維のループと積層相手の第3の素材とを接着すると、曲げや引っ張りなどの外力がかかったときに極細繊維を含む不織布が破壊されるのを防止することが可能になる。
【0031】
短繊維のループを適切なループの大きさとするためには、ニードルパンチの針深度は15mm以下であることが好ましい。それ以上では、極細繊維不織布を針および短繊維が貫通するときの衝撃で極細繊維不織布が破れたり、貫通した後の針穴が大きくなりすぎることがある。針深度は、ニードルのバーブの位置にもよるが5mm以上であることが、不織布の交絡を増やして剥離を防止する上で好ましい。刺孔密度は30〜200本/cm2であることが好ましい。刺孔密度が30本/cm2より小さいと不織布の剥離の問題が生じやすく、250本/cm2より大きいと刺孔による開口総面積が大きすぎたり、極細繊維を含む不織布の破れや破壊を生じやすくあまり好ましくない。
【0032】
本発明の前記不織布が積層された吸音材は、破断伸度は30%以上あることが好ましく、より好ましくは50%以上、特に好ましくは100%以上である。30%未満の破断伸度の場合は、成型時の変形に追随できず、極細繊維層などで破壊が起こり吸音率が著しく低下してしまうことがある。また、破断伸度は30%以上であると、加工工程で変形性があるため、応力のコントロール不良などで切断されるなどの問題を回避することが容易になる。積層体の成形温度は室温から200℃前後での加工が考えられるが、本発明の要件を充足していれば問題となることはほとんどない。本発明の吸音材の構成要素では圧着部を有する不織布は伸度が小さくなるため、該不織布単体の伸度は30%以上になるように設定することが好ましい。
【0033】
更なる吸音材の毛羽防止や形態安全性改善などの目的のために、前記の吸音材にさらに積層するものとして特に好適であるのは、繊維径が5〜20μm、目付が20〜250g/m2の長繊維不織布である。
【0034】
以下に該長繊維不織布の特性について説明する。繊維径が5μm未満であると形態安定性などの改善効果が小さく好ましくない。20μmを超えると不織布の斑が目立ちやすい。目付に関しては、20g/m2未満では地合の斑が目立ちやすく、ニードルパンチで積層しても繊維の絡み点が少ないために簡単に剥離してしまうという問題を生じやすい。一方、目付が250g/m2を超えると、軽量化を目的とした本発明の趣旨と合致せず好ましくない。積層される不織布の表面には、色付けをしたり模様をプリントして意匠性を持たせることが好ましい。これにより、建築構造物や自動車内装材に用いられる吸音材として視覚的に周囲と違和感なく調和させることが可能となる。繊維の素材としては、伸度が25%以上あれば特に限定されないが、熱可塑性エラストマーや複屈折率が0.08より小さいポリエステル系繊維が好ましい。
【0035】
さらに、貼り合わせる長繊維不織布は、難燃タイプの物が好ましい。ハロゲンを含まない、リン系の難燃剤を塗布あるいは難燃成分の共重合を行うことが好ましい。他の成分が多少燃えやすい傾向であっても、表層に難燃層がくることで通常の難燃基準に合格することが比較的容易に達成できる。
【0036】
本発明においては、短繊維不織布と極細繊維を含む不織布との積層は、極細繊維を含む不織布の形態安定性の悪さ(へたりやすかったり、毛羽立ちやすい、嵩高性維持に問題を生じやすいなど)を改善したり、高いクッション性、制振性を得るなどの目的で実施される。また、吸音材は一般的に厚みが大きいほど高い性能を得ることが可能と考えられ、厚みをコントロールする目的でも積層を行う効果が大きい。吸音性能向上に貢献する細い繊維と形態安定性改善に貢献する太い繊維を適当な割合で組合わせることで吸音性能が高く、かつ形態安定性のよい吸音材を設計することが可能である。
なお、本発明においては、圧着された不織布は吸音材の音源側に配置することが必要である。
【0037】
また、本発明における吸音材は、さらに通気性などをコントロールするために極細繊維を含む不織布層にフィルムなどを積層する事も望ましい形態のひとつである。また、織布や織物と複合化するのも使用形態により好ましい。さらに、該複合不織布の外側に色や模様のついた意匠性のある表層不織布を貼り付けても良く、車両内装材や建築材の防音材として好適に用いることが可能である。
【0038】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって説明する。なお、評価法は以下の方法を採用した。
【0039】
(平均繊維径):
走査型電子顕微鏡写真で、繊維側面を20本以上測定して、その平均値から計測した。極細繊維不織布がメルトブロー法の場合は、繊維径のバラツキが大きいため100本以上を測定して平均値を採用した。
【0040】
(目付および充填密度):
不織布を20cm角に切り出してその重量を測定した値を1m2あたりに換算して目付とした。充填密度は、不織布の目付を20g/cm2の荷重下での厚みで割った値を求めて、g/cm3に単位換算して求めた。
【0041】
(剥離):
複合した不織布を手で90度前後折り曲げる動作を20回繰り返して、剥離が生じるかどうかを目視で評価した。
【0042】
(破断伸度):
不織布を長さ20cm幅5cmの矩形に切り出した。室温25℃下で、試長10cm、クロスヘッド10cm/分で低速伸長引っ張り測定をした場合の破断伸度を求めた。
【0043】
(吸音率):
JIS A−1405に準じて、垂直入射法吸音率を求めた。500Hz、2000Hzと4000Hzの値を代表値として用いた。
【0044】
(フラジール通気度):
JIS L−1096の6.27.1(A法)により測定した。
【0045】
実施例1
平均繊維径14μm、目付60g/m2のポリエステルス製スパンボンド不織布(東洋紡績株式会社製エクーレ6501B、圧着部面積22%、フラジール通気度40cm3/cm2・秒)の上に、平均繊維径14μm、繊維長51mm、捲縮数12個/2.54cmの短繊維よりなる目付300g/m2、厚み20mmの熱融着繊維を30重量パーセント含むポリエチレンテレフタレート製サーマルボンド短繊維不織布を重ねて、40番手のニードルを用いて、刺孔密度50本/cm2、針深度10mmでニードルパンチ積層加工を実施して厚みが15mmになるように調整した後、熱融着繊維の融点より30℃高い温度で熱接着により一体化した。吸音材を20回程度折り曲げても剥離の問題は生じなかった。吸音率は、500Hzで32%、2000Hzと4000Hzでそれぞれ93%、99%と高く良好であった。
【0046】
実施例2
実施例1において、ポリエステル製スパンボンド不織布を平均繊維径12μmの芯成分がハードセグメントとソフトセグメントを有するブロック共重合ポリエステルエラストマー(東洋紡績株式会社製ペルプレンP40B)で、かつ芯成分がポリトリメチレンテレフタレートの複合繊維スパンボンド不織布に変更し(目付60g/m2、フラジール通気度35cm3/cm2・秒)、かつサーマルボンド短繊維不織布との間にペルプレンP40B製のメルトブローン不織布(平均繊維径2.5μm、目付50g/m2)を挟み込んで実施例1と同様に積層した。作成した積層不織布を20回程度折り曲げても剥離の問題は生じなかった。吸音率は、500Hzで55%、2000Hzと4000Hzでそれぞれ100%、99%と高く良好であった。表面を指でこすっても全く毛羽立たず、形態安定性に非常に優れていた。また積層不織布の破断伸度は57%であった。成形温度140℃で最大成形絞り深さが約80%の成形は、全く問題なく成形できた。
【0047】
比較例1
厚み30μmの低密度ポリエチレン製フィルムを実施例1で用いたサーマルボンド短繊維不織布と積層して吸音材を作成した。吸音率は、500Hzで24%、2000Hzと4000Hzでそれぞれ85%、39%であった。高周波数域での吸音性能が低く問題であった。成形温度140℃で最大成形絞り深さが約80%の成形は、温度が高すぎてフィルムが溶解するため100℃で成形したが、フィルムが破れてしまい問題であった。
【0048】
比較例2
平均繊維径14μm、繊維長51mm、捲縮数12個/2.54cmの短繊維よりなる目付500g/m2のポリエチレンテレフタレート製短繊維不織布を40番手のニードルを用いて、表と裏の両方からそれぞれ刺孔密度30本/cm2、針深度10mmでニードルパンチ加工して、厚み10mmの不織布を得た。該不織布は、実施例1に比べて目付が高いにもかかわらず、吸音率を測定したところ、500Hzで12%、2000Hzと4000Hzでそれぞれ50%、78%と低く問題であった。特に低周波数での性能が低く問題であった。成形温度140℃で最大成形絞り深さが約80%の成形は、問題なく成形できた。
【0049】
【発明の効果】
本発明の吸音材は、低周波数域でも吸音性能が高く、薄くて軽量な形態安定性の良い吸音材となる。また、素材を選定することで良好な成型性を示す。特に、自動車用途で燃費向上や快適性改善のため、軽量で優れた成形性吸音材として利用できる。その他産業上の広い用途で吸音材として好適に使用することができる。
Claims (6)
- 繊維径が1〜25μmの繊維を主体とする目付が20〜200g/m2 で、かつ平面部面積の5〜80%が圧着されたスパンボンド不織布と、繊維径が7〜50μm、目付が50〜2000g/m2、厚みが4〜50mmの短繊維不織布とがニードルパンチ法により積層一体化されており、前記圧着されたスパンボンド不織布が音源側に配置されていることを特徴とする吸音材。
- 請求項1において、圧着された不織布のフラジール通気度が0.05〜100cm3/cm2・秒であることを特徴とする吸音材。
- 請求項1又は2において、繊維径が6μm以下の極細繊維を含む目付が20〜200g/m2 不織布が圧着不織布と短繊維不織布の間に挿入されていることを特徴とする吸音材。
- 請求項1〜3の何れかにおいて、圧着された不織布が伸度30%以上のスパンボンド不織布であることを特徴とする吸音材。
- 請求項4において、スパンボンド不織布が芯鞘型複合繊維、ポリトリメチレンテレフタレートを主体とする繊維、ハードセグメントとソフトセグメントを有するブロック共重合ポリエステル繊維のいずれかにより構成されていることを特徴とする吸音材。
- 周波数500Hzでの吸音率が20%以上であり、かつ2000Hzと4000Hzの吸音率がともに80%以上であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の吸音材。
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