JP3705083B2 - 光メモリ素子の製造方法及び光メモリ素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光メモリ素子の製造方法及び光メモリ素子に関し、特に、光導波路デバイスを用いた光メモリ素子の製造方法及び光メモリ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、予め所定の散乱光を生じるようにパターンが刻まれた平面型の光導波路中に光を導入し、光導波面の外部に画像を結像させる技術が提案されている(IEEE Photon. Technol. Lett., Vol.9, pp.958-960, July 1997等参照)。
即ち、例えば、図7に模式的に示すように、光導波路として機能するように、屈折率や膜厚を調整されたコア層101と、このコア層101を挟む形でその両側(両面部)に設けられた(第1、第2の)クラッド層102とを備えてなるカード型スラブ型光導波路デバイス100において、コア層101とクラッド層102との界面に微細な凹凸が存在していた場合、コア層(光導波路)101にレンズ103を介して光(レーザ光)を導入すると、導入光の一部がその凹凸部分で散乱し、散乱光がクラッド層102を通じて外部に出てくる。
【0003】
従って、光導波面(光導波路101)から所定距離に特定の画像が結像するような光の散乱強度と位相とを計算し、その計算に応じた微細な凹凸パターンを予めコア層101に刻み込んでおけば、光導波面の外部に所望の画像を結像させることができる。つまり、コア層101は情報の記録層として機能することになる。
【0004】
そして例えば、光導波面の外部に出てきた散乱光を上記所定距離に設置したCCD受像機104により受光して、結像画像を2次元のディジタルパターン(例えば明暗の2値パターン、もしくは明度(グレイスケール)による多値のパターン等)化してディジタル信号化すれば、既存のディジタル画像処理装置(図示省略)で結像画像に対し、所望の画像処理を実施することができる。
【0005】
また、例えば、上記のクラッド層102/コア層101/クラッド層102を繰り返し積層して、光導波路(記録層)101を複数個積層した場合、或る光導波路101で散乱した光は、別の光導波路101を横切ることになるが、通常、コア層101とクラッド層102の屈折率差が極めて小さいので、その散乱光が別の光導波路101に形成された凹凸で再散乱することは殆ど無く、結像画像が乱れることはない。従って、積層数に比例して数多くの画像やパターンを結像できることになる。
【0006】
つまり、光導波路デバイス100はその積層数に比例した容量を有する光メモリ素子(ROM等の記録媒体)として使用できるのである。なお、この光メモリ素子は、理論上では、1層で約1ギガバイト程度の容量を持たせることができ、100層程度まで積層することが可能であるといわれており、将来的には動画像の記録等に十分対応できる大容量ROMとして使用されることが有望視されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来、光導波路デバイス100のコア層101における上記の微細な凹凸パターンは、例えば、次のような手法で形成される。即ち、まず(第1の)クラッド層102となる平板状のガラス等の上にフォトレジストを塗布し、光あるいは電子線等の露光とその現象によりそのガラス(クラッド層102)上に、結像させたい像に応じたピット(凹凸パターン)を形成する。
【0008】
その後、その凹凸パターン上にコア層101を形成する。これにより、凹凸パターンの形成されたコア層101が作製され、このコア層101上にさらに第2のクラッド層102を形成することにより、1層分の光導波路デバイス(光メモリ素子)100が作製される。
これを繰り返すことによって、多層構造の光メモリ素子(以下、「多層光メモリ」ということがある。)が作製される。
【0009】
しかしながら、このような露光と現像とを用いた手法では、1層分の光メモリ素子100の作製に非常に時間及びコストがかかってしまうので、大容量の多層光メモリを作成するには、膨大な時間とコストがかかるという課題がある。
そこで、コア層及びクラッド層を樹脂製にすることで、上記の凹凸パターンを簡易に形成できるようにして、光メモリ素子を容易かつ安価に実現できるようにすることが求められている。
【0010】
本発明者は先に、特願平11−351541号において、基体上に、クラッド層とコア層からなり、かつ両層の界面に凹凸が設けられてなる樹脂製クラッド/コア部材が多層に積層された光メモリ素子を提案している。例えば、基体である樹脂フィルムの一面に、クラッド層/コア層/クラッド層/コア層/クラッド層の順に積層され、両層の界面には情報に応じた微細な凹凸部が設けられている。
【0011】
このような積層体を作製する方法として例えば、基体上にクラッド剤を塗布して硬化し、コア剤を塗布してスタンパから凹凸を転写したのち硬化し、クラッド剤を塗布して硬化することを繰り返すことが考えられる。しかし本法では、(1)クラッド剤やコア剤の硬化収縮による反りが蓄積され、基体が樹脂フィルムや薄い樹脂基板だと反りを抑えられず、硬質基板の使用が不可欠である、(2)硬質基板を用いると曲げが行えずスタンパからの剥離が困難である、といった問題がある。
【0012】
これを解決するために、特願平11−351541号では以下のような光メモリ素子の製造方法を提案している。
まず、表面に凹凸形状を有するスタンパ上に硬化性樹脂材からなるコア剤を塗布し硬化させて樹脂製の第1コア層を形成する工程と、第1コア層上に硬化性樹脂材からなるクラッド剤を塗布し硬化させて樹脂製の第1クラッド層を形成する工程と、第1クラッド層上に硬化性樹脂材からなるクラッド剤を介して樹脂製フィルム部材を貼着する工程と、クラッド剤を硬化させて樹脂製の第2クラッド層を形成する工程と、スタンパから上記のコア層、クラッド層及び樹脂製フィルム部材を一体に分離する工程とにより、フィルム部材上にクラッド/コア部材が1層分形成される。
【0013】
次に、同様にしてスタンパ上に第一コア層、第一クラッド層を形成したのち、クラッド剤を介して、上記で得られたクラッド/コア部材が1層分形成されたフィルム部材を貼着し、クラッド剤を硬化させ、全てをスタンパから剥がす。これによりフィルム部材上にクラッド/コア部材が2層分形成される。
これを繰り返して基体にクラッド/コア部材を積層し、多層光メモリ素子を作製できる。これによれば、(1)各層の硬化収縮による反りが蓄積しにくく、また、基体の両側に交互に積層する等の製造方法の工夫で反りが抑制できるため、樹脂フィルムの使用が可能である、(2)曲げが容易な樹脂フィルムを用いるためスタンパを用いた実用的なプロセスを作ることができる、という利点がある。
【0014】
しかしながら、さらなる検討によれば、多層光メモリ素子を作製する際には、各部材の貼合せ(ラミネート)時に生じる接着層の膜厚ムラが、導入光の導波の品質を下げてしまうため、メモリ素子の出力信号のノイズ増大という悪影響を与え、また、総膜厚の不均一の原因となるという問題があることが分かった。
上記問題点に鑑み、本発明は、小型大容量であってノイズが少なく信頼性の高い光メモリ素子を、さらに容易かつ安価に提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1の光メモリ素子の製造方法は、基体の少なくとも一面に、樹脂製クラッド層と樹脂製コア層からなりかつ両層の界面に凹凸部が設けられてなる樹脂製クラッド/コア部材が、互いに接して2以上積層されてなる光メモリ素子の製造方法であって、
表面に凹凸形状を有するスタンパ上に硬化性樹脂材からなるコア剤を塗布し硬化させて樹脂製の第1コア層を形成する第1工程と、
該第1コア層上に硬化性樹脂材からなる第1クラッド剤を塗布し硬化させて樹脂製の第1クラッド層を形成する第2工程と、
該第1クラッド層上に該第1クラッド剤より粘度の低い第2クラッド剤を塗布したのち、半硬化又は乾燥させる第3工程と、
該半硬化又は乾燥させた第2クラッド剤を介して樹脂製基体層となる樹脂製フィルム部材を貼着する第4工程と、
該第2クラッド剤を硬化させて樹脂製の第2クラッド層を形成する第5工程と、
該スタンパから上記のコア層、クラッド層及び樹脂製フィルム部材を一体に分離する第6工程とを含むことを特徴とする。
【0016】
ここで、樹脂製フィルム部材とは、樹脂フィルムのみでもよいし、樹脂フィルムにクラッド/コア部材が1層以上積層されたものでもよい。
本発明の請求項2の光メモリ素子の製造方法は、前記請求項1の方法において、上記第3工程において第2クラッド剤が、第1クラッド剤を溶剤で希釈したものであることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項3の光メモリ素子の製造方法は、前記請求項1の方法において、上記第3工程において第2クラッド剤が、第1クラッド剤とは異なる硬化性樹脂材からなることを特徴とする。
本発明の請求項4の光メモリ素子は、基体の少なくとも一面に、樹脂製クラッド層と樹脂製コア層からなりかつ両層の界面に凹凸部が設けられてなる樹脂製クラッド/コア部材が、互いに接して2以上積層されてなる光メモリ素子であって、各樹脂製クラッド層が複数層からなり、該複数層の各々の層は硬化性樹脂材からなるクラッド剤を硬化させてなり、該複数層の各々の層を形成するクラッド剤は互いに粘度が異なることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項5の光メモリ素子は、前記請求項4の素子において、基体の一面に上記樹脂製クラッド/コア部材が2以上積層されてなり、かつ該基体の他の一面に、該積層された樹脂製クラッド/コア部材と同等の収縮率を有する樹脂層が設けられてなることを特徴とする。
本発明の請求項6の光メモリ素子は、前記請求項4の素子において、基体の一面に上記樹脂製クラッド/コア部材が2以上積層されてなり、かつ該基体の他の一面に、樹脂製クラッド層が設けられてなることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項7の光メモリ素子は、前記請求項4の素子において、基体の両面に、上記樹脂製クラッド/コア部材が2以上積層されてなることを特徴とする。
本発明の光メモリ素子は、コア層とその両面部に積層されるクラッド層とがいずれも樹脂製なので、従来のようにフォトレジストの露光と現像とを用いることなく、スタンパの転写により凹凸のついたコア層を簡単に形成することができる。従って、個々の光導波部材を極めて容易に短期間で大量生産することが可能となり、この光導波部材を多層に積層した多層構造の光メモリ素子を容易かつ安価に得ることができる。
【0020】
また、クラッド層がその両側のコア層のクラッド層を兼ね、さらに各光導波部材間の接着剤及び基体を不要としたので、多層光メモリの厚みをさらに薄くして小型化を図ることができる。
本発明の光メモリ素子の製造方法(請求項1)によると、基体とクラッド/コア部材との接着に粘度の低い第2クラッド剤を用いたので、接着層を薄くでき接着による膜厚変動を抑えられ、均一な膜厚を有する光メモリを得ることができる。従って、導入光を高品質を保ったまま長く導波することができ、ノイズが小さく信頼性の高い光メモリ素子を得ることができる。
【0021】
また、第1クラッド層上に塗布し半硬化又は乾燥させたのち基体を貼着したので、接着層のフローアウト(端面からのはみ出し)が抑えられることから、洗浄作業やローラーでの余分な剤の押出し作業が不要となり、光メモリ素子を容易かつ安価に得ることができる。そして、連続工程での製造にも適している。
第2クラッド剤は、第1クラッド剤と硬化後の屈折率が同じだが粘度の低い他の硬化性樹脂材からなるものとしてもよいし、第1クラッド剤を溶剤で希釈したものとしてもよい。前者なら塗布後に半硬化させ、後者なら塗布後に乾燥させて所望の固さとしたのち樹脂製フィルム部材を貼着する。
【0022】
好ましくは、第2クラッド剤の粘度を100cps以下と低くすることで、接着層を薄くでき接着による膜厚変動を抑えられ、均一な膜厚を有する光メモリを得ることができる。
さらに、本発明の光メモリ素子(請求項4)によると、クラッド層を、層を構成する樹脂材が各々異なる複数層からなるものとしたので、接着に用いるクラッド層には接着に適した性質を持たせて接着層を薄くできるため、接着による膜厚変動を抑えられ、均一な膜厚を有する光メモリを得ることができる。部材と部材のあいだの接着も接着に適したクラッド剤により行えるので同様の効果が得られる。従って、導入光を高品質を保ったまま長く導波することができ、ノイズが小さく信頼性の高い光メモリ素子を得ることができる。また、接着層のフローアウト(端面からのはみ出し)が抑えられることから、洗浄作業やローラーでの余分な剤の押出し作業が不要となり、光メモリ素子を容易かつ安価に得ることができる。そして、連続工程での製造にも適している。
【0023】
本発明の光メモリ素子(請求項5、6)によると、基体の両面部において、コア/クラッド部材による収縮力と樹脂層の収縮力とが同等に働くので、基体の両面部間の収縮バランスが確保されて、基体ひいては多層光メモリの反曲を最小限に抑制することができる。また、収縮バランスをとるための樹脂層が1層なので、多層光メモリの小型化にも寄与する。好ましくは該樹脂層としてクラッド層を用いる。
【0024】
本発明の光メモリ素子(請求項7)によると、基体層の両面部において、樹脂製のコア/クラッド部材による収縮力がそれぞれ同等に働くので、樹脂製基体層の両面部間の収縮バランスが確保されて、樹脂製基体層ひいては光メモリ素子の反曲を最小限に抑制することができる。また基体の両面に光導波部材を積層するため、多層光メモリの厚みをさらに薄くして小型化を図ることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
前述の通り、多層光メモリ素子を作製する際には、各部材の貼合せ(ラミネート)時に生じる接着層の膜厚ムラが、導入光の導波の品質を下げてしまうため、メモリ素子の出力信号の読み出しに悪影響を与える。また、総膜厚の不均一の原因ともなる。
【0026】
前述の製造法においては、基体と部材、部材と部材を貼着する際に接着層の役割を果たすのは第2クラッド層である。本発明者らの検討によれば、ラミネート時の膜厚ムラ発生には、接着層の膜厚と固さが大きく影響することが分かった。膜厚ムラを抑えるためには、接着層の膜厚を薄くするほうがよい。また、接着層の固さを、ラミネート圧力によって膜厚変動が殆ど生じない程度に固く、かつラミネート時に気泡が巻きこまれない程度に柔らかいように調整する。
【0027】
鋭意検討の結果、基体と部材、部材と部材の接着を粘度の低い第2のクラッド剤により行うことで、接着層の膜厚と固さを適切にできることが分かった。粘度の低い第2クラッド剤を接着剤として塗布することで、薄い接着層を得ることができる。第2クラッド剤は、第1クラッド剤と硬化後の屈折率が同じだが粘度の低い他の硬化性樹脂材からなるものとしてもよいし、第1クラッド剤を所望の溶剤で希釈したものとしてもよい。
【0028】
ただしそのままでは粘度が低いために、接着層の固さが不十分となり、ラミネート圧力により膜厚変動が生じやすい。そこで、本発明では、ラミネート前に紫外線照射によりコア層を予め或る程度硬化させ(不完全に硬化させる、以下では半硬化と称する。)るか、又は乾燥により溶剤を蒸発させて適度な固さとした後に、ラミネートを行う。
【0029】
良好なラミネートを行うためには、接着層となるコア剤の固さが、ラミネート時に気泡が混入しない程度に柔らかく、かつラミネート圧力によるコア層の膜厚変動が殆どなくフローアウト(端部からの接着剤のはみ出し)が発生しない程度に固くする。
さて、光メモリ素子として機能させる導波条件を満たすために、コア層は0.5〜3μm程度の薄い膜厚とする必要がある。そして、コア剤は硬化後に目的とする薄い膜厚になるように塗布する。一方、クラッド層このような制限はないが、コア層間のクロストークを抑えるために、膜厚を5〜100μm、好ましくは10μm前後にする。そのため、通常、クラッド剤の粘度はコア剤に比べてかなり高い。第1クラッド剤の粘度は100cps(cps:centi poise)以上が好ましい。コア剤の粘度は100cps以下が好ましく、より好ましくは50cps以下である。
【0030】
本発明においては、第2クラッド剤の粘度を、第1クラッド剤の粘度より低くする。通常は、1/2〜1/10程度の粘度にする。好ましくは、第2クラッド剤の粘度を100cps以下と低くする。より好ましくは50cps以下である。これにより接着層を薄くでき接着による膜厚変動を抑えられ、均一な膜厚を有する光メモリを得ることができる。
より具体的に説明する。
【0031】
例えば、第2クラッド剤を、第1クラッド剤と硬化後の屈折率が同じだが粘度の低い他の硬化性樹脂材からなるものとし、塗布後に半硬化させ、所望の膜厚と固さとしたのち樹脂製フィルム部材を貼着する。紫外線硬化性樹脂を用いた場合、半硬化させるための紫外線照射量が大きすぎると接着層が固すぎて気泡が生じノイズの原因となり、小さすぎるとフローアウトが生じるため、使用する樹脂に応じた最適な紫外線照射量を選択する。最適な照射量は、クラッド剤樹脂、ラミネート条件(圧力、速度、基板とフィルムの角度など)により異なる。
【0032】
或いは、第2クラッド剤を、クラッド剤を溶剤に希釈し粘度を低く調整したものとし、塗布後に乾燥させて溶剤を蒸発させ、所望の膜厚と固さとしたのち樹脂製フィルム部材を貼着する。希釈溶剤としてはトルエン、キシレン等が挙げられる。溶剤選択の要件としては、樹脂が溶解すること、スピンコート中に蒸発しない程度に沸点が高く、かつ乾燥が容易な程度に低いこと、などが挙げられる。乾燥条件としては例えば80度で30分程度が考えられる。
【0033】
本発明においては、第1クラッド剤をある膜厚(10μm程度)だけ塗布、硬化させた後にその上に数μm厚の薄さで第2のクラッド剤を塗布し、これを接着層として用いてラミネートを行う。つまり、最初に予め硬化させておくクラッド剤と、その後に接着層として塗布するクラッド剤とを合わせた膜厚が、目的とするクラッド層の膜厚になるように設計する。
【0034】
第2クラッド剤として第1クラッド剤と硬化後の屈折率が同じだが粘度の低い他の硬化性樹脂材からなるものを用いると、形成されるクラッド層は、層を構成する樹脂材が各々異なる複数層からなるものなる。このとき、接着に用いるクラッド層には接着に適した性質を持たせて接着層を薄くできるため、接着による膜厚変動を抑えられ、均一な膜厚を有する光メモリを得ることができる。部材と部材のあいだの接着も接着に適したクラッド剤により行えるので同様の効果が得られる。
【0035】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明を行う。
[第1実施形態の説明]
まず、第1実施形態の光メモリ素子とその製造方法について、図1及び図2に示す模式的側面図を用いて説明する。
図1に、基体の一面に、樹脂製クラッド層と樹脂製コア層からなり、かつ両層の界面に凹凸部が設けられて成る樹脂製クラッド/コア部材が、2以上積層されてなる光メモリ素子を示す。なお、光メモリ素子の最上層に積層される部材は、樹脂製クラッド/樹脂製コア部材ではなく、パターンのないスタンパ上で硬化させたクラッド層単層からなる部材が好ましい。
【0036】
始めに、図2(A)に示すように、表面に結像させたい画像(情報)に応じた所望の凹凸パターン(凹凸形状;ピット)の刻まれたスタンパ1上に、所定の膜厚となるようにコア剤(液状コア樹脂)2を塗布する。このコア剤2には、本実施形態では、紫外線(UV光)を照射することにより硬化する紫外線硬化性樹脂剤から成るものを使用し、このようにスタンパ1へ塗布した後、紫外線を照射して完全に硬化させることで樹脂製のコア層2を形成する。
【0037】
次に、このようにコア剤2を完全硬化させた後、図2(B)に示すように、その上に、コア層2よりも屈折率の小さい紫外線硬化性樹脂剤から成るクラッド剤(液状クラッド樹脂)3を塗布し、紫外線照射により硬化させてコア層2よりも屈折率の小さい樹脂製クラッド層3aを形成する。
その後、図2(C)に示すように、上記のクラッド層3a上に、クラッド剤3aを溶剤で希釈し粘度を小さくした第2のクラッド剤3bを塗布し、乾燥させて溶剤を蒸発させ、その上から基体となる樹脂フィルム(樹脂製フィルム部材)4を、例えばローラ等を用いて加圧しながら貼着(ラミネート)していく。つまり、クラッド層3aに第2のクラッド剤3bを介して樹脂フィルム4をラミネートする。
【0038】
かかる状態で、紫外線を照射してクラッド剤3bを硬化させれば、クラッド層3aと同じ材質のクラッド層3bが形成されると共に、樹脂フィルム4の接着が行われる。ここで、クラッド層3a,3bはいずれも同じクラッド剤から成るので、1層分のクラッド層3として機能する。
そして、図2(D)に示すように、スタンパ1から、上記のコア層2とクラッド層3(3a,3b)と樹脂フィルム4とを一体に剥離(分離)する。
【0039】
次に、図2(E)に示すように、次層の所望の凹凸パターンが刻まれたスタンパ1’上に同様にコア層2’、クラッド層3a’をそれぞれ塗布、紫外線照射による硬化により形成する。
その後、図2(F)に示すように、上記クラッド層3a’上に、クラッド剤3a’を溶剤で希釈したクラッド剤3b’を塗布し乾燥後、その上から、上記部材234を貼着する。紫外線照射により、クラッド剤3b’を完全硬化した後、図2(G)に示すように、スタンパ1’から、上記のコア層2’とクラッド層3’(3a’、3b’)と部材234とを一体に剥離する。
【0040】
以上のプロセスを繰り返すことにより、図1に示すような、基体の少なくとも一面に、樹脂製クラッド層と樹脂製コア層からなり、かつ両層の界面に凹凸部が設けられて成る樹脂製クラッド/樹脂製コア部材が、互いに接して2つ以上積層されてなる光メモリ素子が形成される。なお、光メモリ素子の最上層に積層される部材は、樹脂製クラッド/樹脂製コア部材ではなく、パターンのないスタンパ上で硬化させたクラッド部材が好ましい。
【0041】
第1実施形態の製造方法によると、基体とクラッド/コア部材との接着に比較的粘度の低いクラッド剤を用いたので、接着層を薄くでき接着による膜厚変動を抑えられ、均一な膜厚を有する光メモリを得ることができる。また、クラッド層に気泡が混入することもない。従って、導入光を高品質を保ったまま長く導波することができ、出力信号のノイズが小さく信頼性の高い光メモリ素子を得ることができる。
【0042】
また、薄く塗布し乾燥させたのち基体を貼着したので、接着層のフローアウト(端面からのはみ出し)が抑えられることから、洗浄作業やローラーでの余分な剤の押出し作業が不要となり、光メモリ素子を容易かつ安価に得ることができる。
そして、洗浄作業が不要で、ローラーでの余分な剤の押し出しがないため、枚用フィルムのみならず、連続フィルムを用いた連続工程での製造にも適している。
【0043】
[第2実施形態の説明]
次に、第2実施形態の光メモリ素子とその製造方法について、図3及び図4に示す模式的側面図を用いて説明する。
図3に、基体の一面に上記樹脂製クラッド/コア部材が2以上積層されてなり、かつ該基体の他の一面に、該積層された樹脂製クラッド/コア部材と同等の収縮率を有する樹脂層が設けられてなる光メモリ素子を示す。
【0044】
始めに、図4(A)に示すように、表面に結像させたい画像(情報)に応じた所望の凹凸パターン(凹凸形状;ピット)の刻まれたスタンパ1上に、所定の膜厚となるようにコア剤(液状コア樹脂)2を塗布する。このコア剤2には、本実施形態では、紫外線(UV光)を照射することにより硬化する紫外線硬化性樹脂剤から成るものを使用し、このようにスタンパ1へ塗布した後、紫外線を照射して完全に硬化させることで樹脂製のコア層2を形成する。
【0045】
次に、このようにコア剤2を完全硬化させた後、図4(B)に示すように、その上に、コア層2よりも屈折率の小さい紫外線硬化性樹脂剤から成るクラッド剤(液状クラッド樹脂)3を塗布し、紫外線照射により硬化させてコア層2よりも屈折率の小さい樹脂製クラッド層3aを形成する。
その後、図4(C)に示すように、上記のクラッド層3a上に、クラッド剤3aを溶剤で希釈し粘度を小さくした第2のクラッド剤3bを塗布し、乾燥させて溶剤を蒸発させ、その上から基体となる樹脂フィルム(樹脂製フィルム部材)4を、例えばローラ等を用いて加圧しながら貼着(ラミネート)していく。つまり、クラッド層3aに第2のクラッド剤3bを介して樹脂フィルム4をラミネートする。
【0046】
かかる状態で、紫外線を照射してクラッド剤3bを硬化させれば、クラッド層3aと同じ材質のクラッド層3bが形成されると共に、樹脂フィルム4の接着が行われる。ここで、クラッド層3a,3bはいずれも同じクラッド剤から成るので、1層分のクラッド層3として機能する。
そして、図4(D)に示すように、樹脂フィルム4上に、クラッド剤5を塗布し、紫外線照射により硬化させる。そして、図4(E)に示すように、スタンパ1から、上記のコア層2とクラッド層3(3a,3b)と樹脂フィルム4とクラッド層5とを一体に剥離(分離)する。
【0047】
次に、図4(F)に示すように、次層の所望の凹凸パターンが刻まれたスタンパ1’上に同様にコア層2’、クラッド層3a’をそれぞれ塗布、紫外線照射による硬化により形成する。
その後、図4(G)に示すように、上記クラッド層3a’上に、クラッド剤3a’を溶剤で希釈したクラッド剤3b’を塗布し乾燥後、その上から、上記部材2345を貼着する。紫外線照射により、クラッド剤3b’を完全硬化させる。そして図4(H)に示すように、スタンパ1’から、上記のコア層2’とクラッド層3’(3a’、3b’)と部材2345とクラッド層5’とを一体に剥離する。
【0048】
以上のプロセスを繰り返すことにより、図3に示すような、基体の一面に、樹脂製クラッド層と樹脂製コア層からなりかつ両層の界面に凹凸部が設けられて成る樹脂製クラッド/コア部材が互いに接して2以上積層されてなり、該樹脂基体の他の一面にクラッド層が設けられてなる光メモリ素子が形成される。
第2実施形態の製造方法によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0049】
さらに、一般に硬化樹脂は硬化時に収縮するため、樹脂フィルムの一方の側だけにコア/クラッド部材を積層していくと、光メモリ素子がカール(反曲)してしまう。そこで、本実施形態の様に、フィルムの一面にコア/クラッド部材を積層し、もう一面にクラッド剤を積層することにより、フィルムの両側の収縮がバランスし、素子のカールを抑えることができる。
【0050】
なお、フィルムの、コア/クラッド部材を積層する面と反対側に積層する樹脂は、樹脂製クラッド/樹脂製コア部材と同等の収縮率を有する樹脂であれば必ずしもクラッド剤である必要はない。ただし、材料選択の容易性を考えればクラッド剤を用いるのが望ましい。
[第3実施形態の説明]
次に、第3実施形態の光メモリ素子とその製造方法について、図5及び図6に示す模式的側面図を用いて説明する。
【0051】
図5に、基体の両面に、樹脂製クラッド層と樹脂製コア層からなりかつ両層の界面に凹凸部が設けられて成る樹脂製クラッド/コア部材が、2以上積層されてなる光メモリ素子を示す。
始めに、図6(A)に示すように、表面に結像させたい画像(情報)に応じた所望の凹凸パターン(凹凸形状;ピット)の刻まれたスタンパ1上に、所定の膜厚となるようにコア剤(液状コア樹脂)2を塗布する。このコア剤2には、本実施形態では、紫外線(UV光)を照射することにより硬化する紫外線硬化性樹脂剤から成るものを使用し、このようにスタンパ1へ塗布した後、紫外線を照射して完全に硬化させることで樹脂製のコア層2を形成する。
【0052】
次に、このようにコア剤2を完全硬化させた後、図6(B)に示すように、その上に、コア層2よりも屈折率の小さい紫外線硬化性樹脂剤から成るクラッド剤(液状クラッド樹脂)3を塗布し、紫外線照射により硬化させてコア層2よりも屈折率の小さい樹脂製クラッド層3aを形成する。
その後、図6(C)に示すように、上記のクラッド層3a上に、クラッド剤3aを溶剤で希釈し粘度を小さくした第2のクラッド剤3bを塗布し、乾燥させて溶剤を蒸発させ、その上から基体となる樹脂フィルム(樹脂製フィルム部材)4を、例えばローラ等を用いて加圧しながら貼着(ラミネート)していく。つまり、クラッド層3aに第2のクラッド剤3bを介して樹脂フィルム4をラミネートする。
【0053】
かかる状態で、紫外線を照射してクラッド剤3bを硬化させれば、クラッド層3aと同じ材質のクラッド層3bが形成されると共に、樹脂フィルム4の接着が行われる。ここで、クラッド層3a,3bはいずれも同じクラッド剤から成るので、1層分のクラッド層3として機能する。
そして、図6(D)に示すように、スタンパ1から、上記のコア層2とクラッド層3(3a,3b)と樹脂フィルム4とを一体に剥離(分離)する。
【0054】
次に、図6(E)に示すように、次層の所望の凹凸パターンが刻まれたスタンパ1’上に同様にコア層2’、クラッド層3a’をそれぞれ塗布、紫外線照射による硬化により形成する。
その後、図6(F)に示すように、上記クラッド層3a’上に、クラッド剤3a’を溶剤で希釈したクラッド剤3b’を塗布し乾燥後、その上から、上記部材234を上下反転させ、樹脂フィルム4がクラッド剤3b’に接するように貼着する。紫外線照射により、クラッド剤3b’を完全硬化した後、図2(G)に示すように、スタンパ1’から、上記のコア層2’とクラッド層3’(3a’、3b’)と部材432とを一体に剥離する。
【0055】
以上のプロセスを繰り返すことにより、図5に示すような、基体の両面に、樹脂製クラッド層と樹脂製コア層からなり、かつ両層の界面に凹凸部が設けられて成る樹脂製クラッド/コア部材が、互いに接して2以上積層されてなる光メモリ素子が形成される。
第3実施形態の製造方法によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0056】
さらに、一般に硬化樹脂は硬化時に収縮するため、樹脂フィルムの一方の側だけにコア/クラッド部材を積層していくと、光メモリ素子がカール(反曲)してしまう。そこで、本実施形態の様に、フィルムの両面にコア/クラッド部材を積層することによって、フィルムの両側の収縮がバランスし、光メモリ素子のカールを抑えることができる。
【0057】
なお、片面に樹脂製コア/クラッド部材を複数積層したのち他面への積層を行ってもよいが、両面に1部材ずつ交互に設けていくと、カール(反曲)をより抑えることができ好ましい。
また、以上説明した第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態の光メモリ素子同士をさらに、接着剤により積層することによっても、さらに多層の光メモリ素子として機能する素子を得ることができる。接着剤としては、例えば硬化後にクラッド層として機能するクラッド剤を使用すればよい。
【0058】
或いは本発明の光メモリ素子は、必要に応じて他の機能を有する層を積層したり、間に挟んだりしてもよい。
以上の説明において、コア剤には、塗布時には液体で、その後、硬化させることのできる樹脂であればどのような樹脂を適用してもよいが、好適な物質としては、例えば、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等が挙げられる。ただし、上述のごとくスタンパによる転写を行なう場合には、光硬化性樹脂を適用するのが好ましく、例えば、アクリル系,エポキシ系,チオール系の各樹脂などが好ましい。
【0059】
また、上記のクラッド剤は、透明で屈折率がコア剤よりも僅かに小さい物質(樹脂)であれば何でも良いが、各種樹脂製のクラッド剤を塗布すると簡便である。光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等から成るクラッド剤は樹脂フィルムとの接着性に優れ、好適である。
また、コア剤、クラッド剤の塗布方法には、例えば、スピンコート法,ブレードコート法,グラビアコート法,ダイコート法等があるが、塗布膜厚と均一性を満足すればどのような塗布方法を用いてもよい。
【0060】
本発明において、基体は、光メモリ素子を保持する基体として機能する物質であれば樹脂、金属など各種のものが用いられるが、製造工程上、貼着(ラミネート)を行うなど柔軟性が要求される場合は、樹脂製の基体とするのが好ましい。各種の硬化性樹脂を塗布後硬化させたり、樹脂を溶剤に溶かして塗布し乾燥させたりして樹脂製基体としてもよいが、樹脂フィルムを用いると、スタンパー上への貼着、剥離を繰り返して行いやすく、生産性、作業性の点で好ましい。
【0061】
樹脂フィルムには、具体的には、ポリカーボネート,アートン(JSR社製)などの非晶質ポリオレフィン,PET(ポリエチレンテレフタレート),PEN(ポリエチレンナフタレート)等の光学特性に優れる(PENはさらに耐熱性にも優れる)熱可塑性の樹脂フィルムが好適(特に、上記のPETやPENはいずれも均一な厚みのフィルムを得られやすいので好適)で、これらのいずれかを熱延伸或いは溶媒キャスト等の方法で、例えば100μm以下の厚さにしたものがよい。
【0062】
また、一般に樹脂フィルムは、その製造工程で、無機粒子等の光学的には散乱体として機能するものがフィルム内に混入される。フィルム内の散乱体による光の散乱が信号の読み取りに際し問題になる場合、フィルムの片面にのみコア/クラッド部材が積層されている態様であれば、フィルムとして遮光性フィルムを用いるか、もしくはフィルムとコア/クラッド部材の間に遮光膜を設けることが好ましい。これにより、樹脂フィルム内への光の伝搬、もしくはフィルム内での散乱光の信号光への干渉を防ぐことができる。
【0063】
基体そのものを遮光性とすることが、光メモリ素子の小型化が図れ、製造工程も簡素化できるためより好ましい。
上記遮光性フィルム及び遮光膜としては、例えばカーボンを樹脂中に練りこんだり、色素を添加したりして作製したPETフィルムなどが挙げられる。なお、該遮光フィルムまたは該遮光膜が作用する波長域については、再生に用いる導入光の波長を遮光することができれば十分であり、可視光域全てを遮光する必要はない。遮光性能については、フィルム厚さ方向で、90%以上の光を遮断することができればよいが、99%以上の光を遮断することができればより望ましい。
【0064】
なお、コア層,クラッド層の膜厚については、コア層,クラッド層が光導波路として機能するだけの膜厚であればよく、例えば、使用光波長域が可視光の波長域であれば、コア層はおおよそ0.5〜3.0μm程度になると考えられる。この場合、クラッド層の膜厚に関しては特に制限は無いが、全体の厚みを薄くすることを考慮すれば、100μm以下にするのが好ましい。あえて下限を規定するなら、0.1μm以上になると思われる。
【0065】
また、上記では、樹脂フィルムとして、枚葉のフィルムを用いた方式を説明したが、本発明は連続フィルムによる実施にも適している。フィルム上へのクラッド、コア剤のダイコーター、マイクログラビア、バーコータ等による塗布、スタンパを加圧した状態でのコア、クラッド剤の硬化、等のプロセスを組み合わせることにより、基体上にコア/クラッド部材を積層した構造体を作製することができる。また、スタンパとしてロールに巻き取り可能な形に加工したロールスタンパを用いることにより、スタンパからの転写プロセスの生産性を向上させることも可能である。
【0066】
上述のごとく構成された光メモリ素子では、例えば、或る光導波路のコア層に光を入力すると、その入力光が界面の凹凸部分で散乱し、その散乱光は上下方向のそれぞれに伝搬してゆき最終的に光メモリ素子の両面部から外部へ放出される。
以上のように、本実施形態によれば、積層されたコア層とクラッド層とがいずれも樹脂製で、しかも、凹凸の形成されるコア層(コア剤)に光や熱等で硬化しうる硬化性樹脂を用いているので、従来のようにフォトレジストの露光,現像処理等を用いなくても、スタンパからの転写によって、コア層とクラッド層との界面に容易に所望形状の凹凸を形成することが可能になる。
【0067】
また、クラッド層の膜厚を例えば10μm程度にすることによって、100層積層時にも素子の膜厚を1mm程度に抑えることが可能となり、多層構造の実用的な光メモリ素子を製造することが可能となる。従って、多層構造の光メモリ素子の大量生産が可能になり、光メモリ素子を従来よりも容易に(短期間で)且つ安価に提供することができる。
【0068】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、その要旨を超えない限り適用可能である。
(実施例1)
表面に画像情報に応じた凹凸形状を有する、金属ニッケルからなるスタンパ上に、コア層となるアクリル系紫外線硬化樹脂(屈折率n=1.49)を塗布した後、紫外線を照射して硬化させ、1.8μm厚のコア層を形成した。このコア層上に、アクリル系紫外線硬化樹脂からなるクラッド剤(屈折率n=1.49、粘度250cps)を塗布した後、紫外線を照射して硬化させ、14μm厚の第1クラッド層を形成した。
【0069】
このクラッド層上に、該クラッド剤をトルエンで希釈し(トルエン2gとクラッド剤10gを混合)粘度34cpsとなるように調整した塗布液を塗布した後、80℃30分間の条件で乾燥させ、2μm厚とした。
この上から厚さ100μmのアートンフィルム部材(ジェイ・エス・アール社製)を、ゴムローラーで圧着しながら、ゆっくりと貼着した。この上から紫外線を照射してクラッド剤を完全に硬化させ、フィルム部材をコア/クラッド層と接着した。そして、スタンパからコア層とクラッド層とアートンフィルムとを一体に分離した。(これを第1部材と呼ぶ。)なお、形成したコア層、クラッド層の屈折率はそれぞれ1.52、1.51であった。
【0070】
次に、パターンのないスタンパ上に、同様にして14μm厚の第1クラッド層を形成し、上記と同様にクラッド剤をトルエン希釈して粘度34cpsになるように調整した塗布液をその上から塗布、乾燥させ、2μm厚とした。この上から第1部材を貼着した。クラッド剤を紫外線を照射して硬化させた後、スタンパから、クラッド層と第1部材とを一体に分離し光メモリ素子を作製した。
【0071】
上記工程中において、ゴムローラーを用いてフィルム部材を貼着する際に、クラッド剤がスタンパとフィルムの界面からフローアウトすることはなかった。またクラッド層への気泡の混入も観察されなかった。
これを、ダイシングソーを用いて、縦約2cm、横約3cmの大きさに切断し、このサンプルの所定の方向からレーザー光を導入し評価を行った。レーザー光は、波長が680nm、強度が約5mWの半導体レーザーで、レンズを組み合わせて光束が縦が約10μm、横が約1cmに絞って、この光束がコア層に入るように調整を行った。この結果、レーザー光はコア層内を伝播し、凹凸によってわずかに散乱された光はコア層と垂直方向に透過して、結像した。この像を光学顕微鏡を介して観察し、所期の画像(テストパターン)であることを確認した。また、出力信号を測定したところ、14dBと良好なS/Nが得られた。
【0072】
(比較例1)
表面に画像情報に応じた凹凸形状を有する、金属ニッケルからなるスタンパ上に、コア層となるアクリル系紫外線硬化樹脂(屈折率n=1.49)を塗布した後、紫外線を照射して硬化させ、1.8μm厚のコア層を形成した。
このコア層上に、アクリル系紫外線硬化樹脂からなるクラッド剤(屈折率n=1.49)を塗布した後、紫外線を照射して硬化させ、14μm厚のクラッド層を形成した。このクラッド層上にクラッド剤を10μm厚程度に塗布した後、厚さ100μmのアートンフィルム(日本合成ゴム社製)を、ゴムローラーで圧着しながら、ゆっくりと貼着した。このとき、ゴムローラーの圧力により、スタンパとフィルムの界面から、クラッド剤の多量のフローアウトが見られ、クラッド剤の厚みは2μm程度となった。フローアウトしたクラッド剤を除去後、この上から紫外線を照射して、フィルム部材をコア/クラッド層と接着した。
【0073】
さらに該フィルム部材の上にクラッド剤を塗布した後、紫外線を照射して硬化させ、14μm厚のクラッド層を形成した。そして、スタンパからコア層とクラッド層とアートンフィルムとクラッド層とを一体に分離した。(これを第1部材と呼ぶ。)
なお、形成したコア層、クラッド層の屈折率はそれぞれ1.53、1.52であった。
【0074】
次に、次層の凹凸パターンを有するスタンパ上に、同様に1.8μm厚のコア層、14μm厚のクラッド層を形成した。そして該クラッド層上にクラッド剤を10μm厚程度に塗布した後、上記工程と同様に圧着しながら第1部材を貼着した。さらに第1部材上に14μm厚のクラッド層を設け、スタンパから、コア層とクラッド層と第1部材とクラッド層とを一体に分離した。(これを第2部材と呼ぶ。)
この工程をもう一度繰り返した。(この結果得られた部材を第3部材と呼ぶ。)
次に、パターンのないスタンパ上に、14μm厚のクラッド層を形成し、該クラッド層上にクラッド剤を10μm厚程度に塗布した後、上記工程と同様に圧着しながら第3部材を貼着し、さらに該第3部材上に14μm厚のクラッド層を設けた。最後に、スタンパから、クラッド層と第3部材とクラッド層とを一体に分離し、光メモリ素子を作製した。
【0075】
以上の工程の結果、アートンフィルムの一方の面上に、3層の1.8μm厚のコア層がそれぞれ19μm厚のクラッド層に挟まれた構造が構成された。また、アートンフィルムの他の面上には、収縮バランス用に合計56μm厚のクラッド層が設けた。
これを、ダイシングソーを用いて、縦約2cm、横約3cmの大きさに切断し、このサンプルの所定の方向からレーザー光を導入し評価を行った。
【0076】
レーザー光は、波長が680nm、強度が約5mWの半導体レーザーで、レンズを組み合わせて光束が縦が約10μm、横が約1cmに絞って、この光束がコア層に導入されるように調整を行った。
上記工程中において、ゴムローラーを用いてフィルム部材を貼着する際に、いずれも、クラッド剤がスタンパとフィルムの界面から多量にフローアウトした。
【0077】
【発明の効果】
以上記述したように、本発明の光メモリ素子の製造方法(請求項1)によると、基体とクラッド/コア部材との接着に粘度の低い第2クラッド剤を用いたので、接着層を薄くでき接着による膜厚変動を抑えられ、均一な膜厚を有する光メモリを得ることができる。従って、導入光を高品質を保ったまま長く導波することができ、ノイズが小さく信頼性の高い光メモリ素子を得ることができる。
【0078】
また、第1クラッド層上に塗布し半硬化又は乾燥させたのち基体を貼着したので、接着層のフローアウト(端面からのはみ出し)が抑えられることから、洗浄作業やローラーでの余分な剤の押出し作業が不要となり、光メモリ素子を容易かつ安価に得ることができる。そして、連続工程での製造にも適している。
第2クラッド剤は、第1クラッド剤と硬化後の屈折率が同じだが粘度の低い他の硬化性樹脂材からなるものとしてもよいし、第1クラッド剤を所望の溶剤で希釈したものとしてもよい。前者なら塗布後に半硬化させ、後者なら塗布後に乾燥させて所望の固さとしたのち樹脂製フィルム部材を貼着する。
【0079】
好ましくは、第2クラッド剤の粘度を100cps以下と低くすることで、接着層を薄くでき接着による膜厚変動を抑えられ、均一な膜厚を有する光メモリを得ることができる。
さらに、本発明の光メモリ素子(請求項4)によると、クラッド層を、層を構成する樹脂材が各々異なる複数層からなるものとしたので、接着に用いるクラッド層には接着に適した性質を持たせて接着層を薄くできるため、接着による膜厚変動を抑えられ、均一な膜厚を有する光メモリを得ることができる。部材と部材のあいだの接着も接着に適したクラッド剤により行えるので同様の効果が得られる。従って、導入光を高品質を保ったまま長く導波することができ、ノイズが小さく信頼性の高い光メモリ素子を得ることができる。また、接着層のフローアウト(端面からのはみ出し)が抑えられることから、洗浄作業やローラーでの余分な剤の押出し作業が不要となり、光メモリ素子を容易かつ安価に得ることができる。そして、連続工程での製造にも適している。
【0080】
本発明の光メモリ素子(請求項5、6)によると、基体の両面部において、コア/クラッド部材による収縮力と樹脂層の収縮力とが同等に働くので、基体の両面部間の収縮バランスが確保されて、基体ひいては多層光メモリの反曲を最小限に抑制することができる。また、収縮バランスをとるための樹脂層が1層なので、多層光メモリの小型化にも寄与する。好ましくは該樹脂層としてクラッド層を用いる。
【0081】
本発明の光メモリ素子(請求項7)によると、基体層の両面部において、樹脂製のコア/クラッド部材による収縮力がそれぞれ同等に働くので、樹脂製基体層の両面部間の収縮バランスが確保されて、樹脂製基体層ひいては光メモリ素子の反曲を最小限に抑制することができる。また基体の両面に光導波部材を積層するため、多層光メモリの厚みをさらに薄くして小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態としての光メモリ素子の構造を説明するための模式的側面図である。
【図2】 A〜Gはいずれも、本発明の第1実施形態としての光メモリ素子の製造方法を説明するための模式的側面図である。
【図3】 本発明の第2実施形態としての光メモリ素子の構造を説明するための模式的側面図である。
【図4】 A〜Hはいずれも、本発明の第2実施形態としての光メモリ素子の製造方法を説明するための模式的側面図である。
【図5】 本発明の第3実施形態としての光メモリ素子の構造を説明するための模式的側面図である。
【図6】 A〜Gはいずれも、本発明の第3実施形態としての光メモリ素子の製造方法を説明するための模式的側面図である。
【図7】 従来の光メモリ素子の動作原理を説明するための模式的斜視図である。
【符号の説明】
1、1’ スタンパ
2、2’ コア剤(液状コア樹脂;コア層)
3、3a、3b、3’、3a’、3b’ クラッド剤(液状クラッド樹脂;クラッド層)
4 樹脂フィルム(基体)
5、5’ クラッド剤(液状クラッド樹脂;クラッド層(収縮バランス用))
234、432、2345 積層体
100 光導波路デバイス
101 コア層(記録層)
102 クラッド層
103 レンズ
104 CCD受像器
Claims (7)
- 基体の少なくとも一面に、樹脂製クラッド層と樹脂製コア層からなりかつ両層の界面に凹凸部が設けられてなる樹脂製クラッド/コア部材が、互いに接して2以上積層されてなる光メモリ素子の製造方法であって、
表面に凹凸形状を有するスタンパ上に硬化性樹脂材からなるコア剤を塗布し硬化させて樹脂製の第1コア層を形成する第1工程と、
該第1コア層上に硬化性樹脂材からなる第1クラッド剤を塗布し硬化させて樹脂製の第1クラッド層を形成する第2工程と、
該第1クラッド層上に該第1クラッド剤より粘度の低い第2クラッド剤を塗布したのち、半硬化又は乾燥させる第3工程と、
該半硬化又は乾燥させた第2クラッド剤を介して樹脂製基体層となる樹脂製フィルム部材を貼着する第4工程と、
該第2クラッド剤を硬化させて樹脂製の第2クラッド層を形成する第5工程と、
該スタンパから上記のコア層、クラッド層及び樹脂製フィルム部材を一体に分離する第6工程とを含むことを特徴とする、光メモリ素子の製造方法。 - 第3工程において、第2クラッド剤が、第1クラッド剤を溶剤で希釈したものである、請求項1に記載の光メモリ素子の製造方法。
- 第3工程において、第2クラッド剤が、第1クラッド剤とは異なる硬化性樹脂材からなる、請求項1に記載の光メモリ素子の製造方法。
- 基体の少なくとも一面に、樹脂製クラッド層と樹脂製コア層からなりかつ両層の界面に凹凸部が設けられてなる樹脂製クラッド/コア部材が、互いに接して2以上積層されてなる光メモリ素子であって、各樹脂製クラッド層が複数層からなり、該複数層の各々の層は硬化性樹脂材からなるクラッド剤を硬化させてなり、該複数層の各々の層を形成するクラッド剤は互いに粘度が異なることを特徴とする光メモリ素子。
- 基体の一面に該樹脂製クラッド/コア部材が2以上積層されてなり、かつ該基体の他の一面に、該積層された樹脂製クラッド/コア部材と同等の収縮率を有する樹脂層が設けられてなる請求項4に記載の光メモリ素子。
- 基体の一面に該樹脂製クラッド/コア部材が2以上積層されてなり、かつ該基体の他の一面に、樹脂製クラッド層が設けられてなる請求項4記載の光メモリ素子。
- 基体の両面に、該樹脂製クラッド/コア部材が2以上積層されてなる請求項4記載の光メモリ素子。
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