JP2003303449A - 光メモリ素子 - Google Patents

光メモリ素子

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JP2003303449A
JP2003303449A JP2002104153A JP2002104153A JP2003303449A JP 2003303449 A JP2003303449 A JP 2003303449A JP 2002104153 A JP2002104153 A JP 2002104153A JP 2002104153 A JP2002104153 A JP 2002104153A JP 2003303449 A JP2003303449 A JP 2003303449A
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optical memory
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layer
resin
core
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JP2002104153A
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Hiroshi Ishihara
啓 石原
Satoshi Ezaki
聡 江崎
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Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 読取装置の小型化、低消費電力化を実現しな
がら、再生光がコア層の情報領域の全域に同時に入射す
るようにし、正確な再生像が得られるようにする。 【解決手段】 コア層3と、コア層の両面に積層された
クラッド層2とを備え、コア層とクラッド層との界面の
少なくとも一方に情報用凹凸部6を有する光導波路部材
232を1個又は複数個有してなる積層体に、情報用凹
凸部の情報を再生する再生光をコア層へ導入するための
入射端面を形成してなる光メモリ素子であって、曲げ剛
性が0.294N・m2以下である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光導波路デバイス
を用いて構成される光メモリ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、予め所定の散乱光を生じるように
パターンが刻まれた平面型(カード型)の光導波路中に
光を導入し、光導波面の外部に画像を結像させる技術が
提案されている(IEEE Photon.Technol.Lett.,vol.9,p
p.958-960,JULY1997 等参照)。即ち、例えば図9に模
式的に示すように、光導波路として機能するように屈折
率や膜厚を調整されたコア(層)101と、このコア層
101を挟む形でその両側(両面部)に設けられた(第
1,第2の)クラッド(層)102とをそなえて成るカ
ード型のスラブ型光導波路デバイス100において、コ
ア層101とクラッド層102との界面に微細な凹凸が
存在していた場合、コア層(光導波路)101にレンズ
103を介して光(入射光,再生光,レーザ光)を導入
すると、導入光の一部がその凹凸部分で散乱し、散乱光
がクラッド層102を通じて外部に出てくる。
【0003】従って、光導波面(光導波路101)から
所定距離に特定の画像が結像するような光の散乱強度と
位相とを計算し、その計算に応じた微細な凹凸パターン
(情報用凹凸部,情報記録用凹凸)を予めコア層101
に刻み込んでおけば、光導波面の外部に所望の画像を結
像させることができる。つまり、コア層101は情報の
記録層として機能することになる。
【0004】そして、例えば、光導波面の外部に出てき
た散乱光を上記所定距離に設置したCCD受像機104
により受光して、結像画像を2次元のディジタルパター
ン〔例えば、明暗の2値のパターン、もしくは、明度
(グレイスケール)による多値のパターン等〕化してデ
ィジタル信号化すれば、既存のディジタル画像処理装置
(図示省略)で結像画像に対し所望の画像処理を実施す
ることができる。
【0005】また、例えば図10に模式的に示すよう
に、上記のクラッド層102とコア層101とを繰り返
し積層して、光導波路(記録層)101を複数個積層し
た場合、或る光導波路101で散乱した光は、別の光導
波路101を横切ることになるが、通常、コア層101
とクラッド層102の屈折率差が極めて小さいので、そ
の散乱光が別の光導波路101に形成された凹凸で再散
乱することは殆ど無く、結像画像が乱れることは無い。
従って、積層数に比例して数多くの画像やパターンを結
像できることになる。
【0006】つまり、光導波路デバイス100はその積
層数に比例した容量を有する光メモリ素子(ROM等の
記録媒体)として使用できるのである。なお、この光メ
モリ素子は、理論上では、1層で約1ギガバイト程度の
容量をもたせることができ、100層程度まで積層する
ことが可能であるといわれており、将来的には、動画像
の記録等に十分対応できる大容量ROMとして使用され
ることが有望視されている。
【0007】また、コア層及びクラッド層を樹脂製にす
ることで、上記の凹凸パターンを簡易に形成できるよう
にして、限られた体積でより大容量の情報を保持できる
光メモリ素子を容易、且つ、安価に実現できるようにす
ることも提案されている(特願平11−131512
号、特願平11−131513号)。ここで、光メモリ
素子に記録されている情報を再生する際には、上述のよ
うに、入射光(入射レーザ光)をコア層に導入するが、
入射レーザ光の横幅(入射横幅,再生光照射領域の横方
向の幅)が狭すぎると、凹凸パターンの形成されている
情報領域の一部のみに入射レーザ光が導入され、他の部
分には入射レーザ光が導入されないことになり、結局、
情報領域に記録されている情報の一部だけしか再生され
ないことになる。このため、入射レーザ光の横幅は、情
報領域の幅よりも広くする必要がある。
【0008】一方、入射レーザ光の縦幅(入射縦幅,再
生光照射領域の縦方向の幅)が広いと(縦方向に厚みが
あると)、隣接する複数のコア層間に同時に入射レーザ
光が入射してしまうことになる。このため、入射レーザ
光の縦幅は、隣接するコア層にかからないように、でき
るだけ狭くする必要がある。そこで、一般に、入射レー
ザ光のスポット形状は、縦幅をできるだけ狭くした非常
に横長の長楕円形状とされる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、一般に、光
メモリ素子を樹脂により作製する場合、樹脂としては、
紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂というような硬化性樹
脂が用いられる。このような硬化性樹脂は硬化収縮とい
う性質を有するため、基体上に、硬化性樹脂からなるコ
ア層及びクラッド層を積層させていく際に、硬化収縮に
よってコア層やクラッド層に内部応力が生じ、反りや撓
みが生じてしまうことになる。
【0010】また、ユーザによる取扱時に、光メモリ素
子4が撓んでしまったり、反ってしまったりする場合も
考えられる。従来は、情報領域の幅が比較的狭かったた
め、たとえ光メモリ素子(特にコア層)に反りやたわみ
が生じていたとしても、光メモリ素子に記録されている
情報を再生するにはそれほど大きな問題ではなかった。
【0011】しかしながら、最近では、情報量を上げる
ために、光メモリ素子の情報領域を広げたいとの要望が
あり、光メモリ素子に記録される情報量を多くすべく、
凹凸パターンの形成される情報領域の幅を広げるように
なってきている。特に、情報領域の幅が広い方が、一度
に読み込み可能なデータ量が多くなるため、より実用的
なメモリを実現できることになる。
【0012】このように、情報領域の幅を広げると、当
然のことながら、従来のように情報領域の幅が狭い場合
と比べて、光メモリ素子(特にコア層)に反りやたわみ
が問題となって、再生を行なうことが難しくなる。つま
り、光メモリ素子(特にコア層)に反りやたわみがある
と、入射レーザ光の横幅が十分に広くなっていたとして
も、凹凸パターンの形成されている情報領域の全域に同
時に入射レーザ光を入射させることができなくなる。こ
の場合、情報領域の一部のみに入射レーザ光が導入さ
れ、他の部分には入射レーザ光が導入されないことにな
り、結局、再生像が正しく再生されないことになる。
【0013】特に、上述のように、光メモリ素子に記録
されている情報を再生する際には、入射レーザ光が隣接
するコア層に入らないように、入射レーザ光の縦方向の
幅を狭くしてあるため、光メモリ素子(特にコア層)に
反りやたわみがある場合には、情報領域の全域に同時に
入射レーザ光を入射させるのはより難しく、再生像が正
しく再生されない可能性が高い。
【0014】ところで、このような光メモリ素子に記録
されている情報を読み取るためには、光メモリ素子を読
取装置(再生装置)内にクランプした状態で、所望のコ
ア層に対して入射レーザ光を入射させることが考えられ
る。このため、反りや撓みが生じている光メモリ素子に
記録されている情報を読み取る場合には、反りや撓みの
方向とは逆方向にクランプ力を作用させることで、光メ
モリ素子を平坦化した状態で所望のコア層に入射レーザ
光を入射させることが考えられる。
【0015】しかしながら、光メモリ素子を平坦化する
のに、大きなクランプ力が必要となると、読取装置の小
型化、低消費電力化を図るのが難しくなる。このため、
読取装置の小型化、低消費電力化を実現するために、光
メモリ素子を、例えば49N以下のクランプ力で平坦化
できるように構成するのが好ましい。
【0016】本発明は、このような課題に鑑み創案され
たもので、読取装置の小型化、低消費電力化を実現しな
がら、再生光をコア層の情報領域の全域に同時に入射さ
せることができ、正確な再生像が得られるようにした、
光メモリ素子を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】このため、本発明の光メ
モリ素子は、コア層と、コア層の両面に積層されたクラ
ッド層とを備え、コア層とクラッド層との界面の少なく
とも一方に情報用凹凸部を有する光導波路部材を1個又
は複数個有してなる積層体に、情報用凹凸部の情報を再
生する再生光をコア層へ導入するための入射端面を形成
してなる光メモリ素子であって、曲げ剛性が、0.29
4N・m2以下であることを特徴としている(請求項
1)。
【0018】また、本発明の光メモリ素子は、コア層
と、コア層の両面に積層されたクラッド層とを備え、コ
ア層とクラッド層との界面の少なくとも一方に情報用凹
凸部を有する光導波路部材を1個又は複数個有してなる
光導波路積層体に、情報用凹凸部の情報を再生する再生
光をコア層へ導入するための入射端面を形成してなる光
メモリ素子であって、弾性係数が、9.8×109Pa
以下であることを特徴としている(請求項2)。
【0019】好ましくは、コア層及びクラッド層を硬化
樹脂からなるものとする(請求項3)。特に好ましく
は、硬化樹脂は紫外線硬化樹脂とする(請求項4)。ま
た、光導波路積層体に薄膜基体を積層して光メモリ素子
とするのも好ましい(請求項5)。また、薄膜基体は樹
脂とするのが好ましい(請求項6)。特に、光導波路積
層体を薄膜基体で挟んで光メモリ素子とするのが好まし
い(請求項7)。
【0020】特に、光導波路積層体の曲げ剛性が、0.
274N・m2以下であることが好ましい(請求項
8)。また、光導波路積層体の弾性係数が、9.8×1
9Pa以下であることが好ましい(請求項9)。ま
た、コア層及び/又はクラッド層が、硬化後の破断伸度
が10〜500%の範囲内であるオリゴマーを含有する
硬化性樹脂を硬化させてなることが好ましい(請求項1
0)。特に、クラッド層が、硬化後の破断伸度が10〜
500%の範囲内であるオリゴマーを含有する硬化性樹
脂を硬化させてなることが好ましい(請求項11)。
【0021】さらに、コア層及び/又はクラッド層が、
ウレタン結合を有するオリゴマーを含有する硬化性樹脂
を硬化させてなることが好ましい(請求項12)。特
に、クラッド層が、ウレタン結合を有するオリゴマーを
含有する硬化性樹脂を硬化させてなることが好ましい
(請求項13)。また、光導波路積層体中に含まれるウ
レタン結合の量が、0.1〜10重量%の範囲内である
ことが好ましい(請求項14)。特に、クラッド層中に
含まれるウレタン結合の量が、0.1〜10重量%の範
囲内であることが好ましい(請求項15)。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、図面により、本発明の実施
の形態について説明する。本発明の一実施形態にかかる
光メモリ素子(光メモリ,多層光メモリ)について、図
1〜図8を参照しながら説明する。本実施形態にかかる
光メモリ素子は、図2に示すように、コア層3と、コア
層3の両面に積層されたクラッド層2とを備え、コア層
3とクラッド層2との界面の少なくとも一方に情報用凹
凸部6を有する光導波路部材232に、情報用凹凸部
(凹凸パターン)6の情報を再生する再生光をコア層3
に導入するための入射端面7を形成してなる。なお、光
メモリ素子4は、1個又は複数個の光導波路部材232
を積層させてなる積層体を備えるものとして構成され
る。図2では、2個の光導波路部材232を積層させて
なる積層体を備える光メモリ素子4を示している。
【0023】特に、正確な再生像が得られるようにする
ためには、再生光が、再生対象とするコア層3の情報用
凹凸部6が形成されて情報が記録されている情報領域
(情報記録領域,データ領域)の全域に渡って同時に入
射されるようにすることが必要である。このためには、
光メモリ素子4の入射端面7におけるコア層3(特にコ
ア層の情報領域)の「撓み量」が所定の条件を満たすよ
うにすれば良いことがわかった。
【0024】具体的には、コア層3の情報用凹凸部6が
形成されている情報領域の入射端面7での撓み量が、下
記式(1)によって表される条件を満たすものとすれば
良い(図1参照)。 Δt≦d−t ・・・(1) Δt:コア層3の情報領域の入射端面7での撓み量 d:再生光の縦方向の幅(再生光幅) t:コア層3の情報領域における厚さ(コア厚) より好ましくは、下記式(2)によって表される条件を
満たすものとする。
【0025】 Δt≦(d−t)×0.9 ・・・(2) さらに、より好ましくは、下記式(3)によって表され
る条件を満たすものとする。 Δt≦(d−t)×0.8 ・・・(3) なお、少なくとも再生装置(ドライブ)に光メモリ素子
4をクランプした状態で、上記式(1)によって表され
る条件を満たせば良いが、好ましくは水平面上に静置
し、クランプ力等の力が加えらない状態で上記式(1)
によって表される条件を満たすようにすれば良い。
【0026】ここで、「撓み量」とは、図1に示すよう
に、コア層3の情報領域の幅における再生光(入射ビー
ム,入射光)の縦方向(垂直方向)に沿うコア層3の広
がり幅を示すものである。つまり、再生光の入射方向か
ら見た場合、コア層3の情報領域を両端支持はりとみな
せる場合、「撓み量」は、この両端支持はりとしてのコ
ア層3の情報領域の撓みの大きさ(コア層3の情報領域
の中央部の変位量)を示すものである。
【0027】なお、ここでは、撓み量Δtが、上記式
(1)によって表される条件を満たすようにしている
が、これは、所定の面を基準面としたときに、情報領域
の幅内において、コア層3の上側(もしくは下側)の境
界面の基準面に対して垂直な方向への変位量が、再生光
の縦方向(垂直方向)の幅d以下であるという条件を満
たすことを意味する。
【0028】ここで、上記基準面には、その面を基準と
したときにコア層3の撓み量が最小となる面を用いる。
つまり、基準面は3次元座標系中に定義できる面であれ
ば良く、基準面としては様々な面を用い得るが(例えば
仮想面であっても良い)、撓み量は基準面の角度によっ
て異なる値を示すので、本実施形態では、この撓み量が
最小値を示すような基準面を、コア層3の撓み量を測定
する基準面とする。そして、その基準面に対応する撓み
量を、コア層3の撓み量と定義する。なお、再生光は、
この基準面に対して平行に入射されるものとする。
【0029】この場合、再生光は、基準面に対して垂直
な方向に厚みを有するものとなるため、この再生光の垂
直方向への厚みを、再生光の縦方向の幅と定義する。こ
の再生光の縦方向の幅dとしては、例えば、再生光の強
度分布の半値幅の値を用いれば良い。なお、上記の定義
に従えば、コア層3が傾いている場合には傾きがないも
のとして「撓み量」を考えることができる。
【0030】このように、本実施形態では、コア層3の
情報領域の撓み量(反り量)と再生光(入射レーザ光)
の照射領域との関係が特定範囲内になるようにし、再生
光が、再生対象とするコア層3の情報領域の全域に渡っ
て同時に入射されるようにして、正確な再生像が得られ
るようにしている。ところで、上述のコア層3の情報領
域の撓み量は、光メモリ素子4の最上面(又は最下面)
の撓み量によって規定することができる。これは、一般
に、光メモリ素子4の最上面や最下面は、コア層3と平
行になるように作製されるためである。このため、入射
端面でのコア層3の「撓み量」は、光メモリ素子4の最
上面(又は最下面)の撓み量に相当すると考えることが
できる。
【0031】そこで、光メモリ素子4の最上面(又は最
下面)の情報用凹凸部6が形成されている情報領域幅に
対応する幅の入射端面7での撓み量が、下記式(4)に
よって表される条件を満たせば、上記式(1)の条件を
満たしているものと考えることができる。 Δtx≦d−t ・・・(4) Δtx:最上面(又は最下面)の情報領域幅に対応する
幅の入射端面での撓み量d:再生光の縦方向の幅(再生
光幅) t:コア層の情報領域における厚さ(コア厚) ところで、一般に、情報領域の幅が狭い(例えば1mm
幅)光メモリ素子4を作製する場合、上記式(1)の条
件を満たすことは容易であるが、情報領域の幅が広い
(例えば5mm幅,1cm幅)光メモリ素子4を作製す
ると、上記式(1)の条件を満たすことは困難である。
【0032】これは、光メモリ素子4をある一定の曲率
で撓ませたと仮定すると、情報領域幅が狭い(例えば1
mm幅)場合には、情報領域幅における撓み量はそれほ
ど大きくならず、上記式(1)の条件を満たすものとす
ることは容易で、正確な再生像が得られるが、情報領域
幅が広い(例えば5mm幅以上)場合には、情報領域幅
における撓み量が大きくなってしまい、上記式(1)の
条件を満たすことが困難であるため、再生光をコア層3
の情報領域の全域に渡って同時に入射させることができ
ず、正確な再生像が得られないことになることを意味し
ている。
【0033】しかしながら、情報領域幅が広い方が一度
に読み込むことのできるデータ量が多くなるため、より
実用的なメモリを実現できることになる。このため、情
報領域幅が5mm以上というように情報領域幅の広い光
メモリ素子4を作製する場合に、上記式(1)の条件を
満たすようにすることが非常に重要となる。なお、情報
領域幅に上限はないが、例えば100mm程度とすれば
良い。
【0034】上述のように、より実用的なメモリを実現
するために光メモリ素子4の情報領域幅を広くする場
合、正確な再生像が得られるようにするためには、「撓
み量」が上記式(1)の条件を満たすように光メモリ素
子4を作製すれば良いことになるが、さらに、光メモリ
素子4を、容易、かつ、安価に作製するためには、コア
層3及びクラッド層2を樹脂製とするのが好ましい。
【0035】しかしながら、一般に、光硬化性樹脂や熱
硬化性樹脂といった硬化性樹脂は、硬化収縮という性質
を有する。このため、図3に示すように、基体5上に硬
化性樹脂からなるコア層3とクラッド層2を積層して光
メモリ素子4を作製する場合、コア層3やクラッド層2
の積層数を増やしていくにつれて、硬化収縮による樹脂
の内部応力のために、光メモリ素子4が一方向に反って
しまう傾向がある。このように反ってしまうと、コア層
3の撓み量が上記式(1)の条件を満たさなくなってし
まう。
【0036】また、ユーザによる取扱時に、光メモリ素
子4が撓んでしまったり、反ってしまったりする場合も
考えられ、このような場合にも、コア層3の撓み量が上
記式(1)の条件を満たさなくなってしまう。これを解
決するためには、基体5の強度を上げて、光メモリ素子
4の反りを抑える方法があるが、そのためには、基体5
の厚さを1〜3mmと厚くしたり、材質としてガラスや
シリコンといった硬質材料を用いたりすることが必要に
なる。これでは、光メモリ素子4の厚さが厚くなった
り、重量が増えたりしてしまうため、実用的な光メモリ
素子4を作製することが困難になってしまう。
【0037】一方、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹
脂を用いる場合に、硬化収縮の大きいアクリル系モノマ
ーではなく、硬化収縮の比較的小さいエポキシ系モノマ
ーを用いる方法も考えられる。しかし、硬化収縮の比較
的小さいエポキシ系モノマーは、非常に高価であり、光
メモリ素子4の製造コストが高くなってしまう。
【0038】また、たとえエポキシ系モノマーを用いた
としても、硬化収縮量はゼロにはならない。一方、図3
に示すように、基体5上にコア層3やクラッド層2を積
層させて、一方の側だけに基体5のある非対称構造の光
メモリ素子4を作製する場合には、わずかな内部応力で
も反ってしまう。このため、非対称構造の光メモリ素子
4を作製する場合には、たとえエポキシ系モノマーを用
いたとしても、反りを安定して抑えるのは困難である。
【0039】このため、本実施形態では、読取装置(再
生装置)を用いて、反りや撓みが生じている光メモリ素
子4に記録されている情報を読み取る場合に、読取装置
のクランプ機構によって、反りや撓みの方向とは逆方向
にクランプ力を作用させて、光メモリ素子4を平坦化す
ることで、上記式(1)の条件を満たすようにしてい
る。
【0040】しかしながら、光メモリ素子4を平坦化す
るのに、大きなクランプ力が必要となると、読取装置の
小型化、低消費電力化を図るのが難しくなる。このた
め、本実施形態では、読取装置の小型化、低消費電力化
を図り、実用的な読取装置を実現するために、光メモリ
素子4を、実用的なクランプ力で平坦化できるように、
十分な柔軟性を有するものとして構成している。
【0041】ここで、実用的なクランプ力とは、好まし
くは49N以下、より好ましくは9.8N以下、特に好
ましくは1.96N以下とする。一方、媒体としての光
メモリ素子4をクランプするためには最低限0.009
8N以上、より好ましくは0.049N以上のクランプ
力は必要である。本実施形態では、光メモリ素子4の曲
げ剛性が所定値以下になるように構成している。
【0042】具体的には、光メモリ素子4の曲げ剛性
が、0.294N・m2以下になるようにするのが好ま
しい。より好ましくは、0.098N・m2以下とす
る。さらに好ましくは、0.049N・m2以下とす
る。なお、曲げ剛性とは、光メモリ素子4の入射端面に
おけるコア層3の撓み量を減少させる方向に光メモリ素
子4を曲げる場合の曲げ剛性をいう。
【0043】ここでは、光メモリ素子4の柔軟性を、光
メモリ素子4の曲げ剛性によって定義しているが、これ
に限られるものではなく、光メモリ素子4の弾性係数に
よって定義することもできる。この場合、光メモリ素子
4の弾性係数が所定値以下になるように構成すれば良
い。具体的には、光メモリ素子4の弾性係数(ヤング
率)が、9.8×109Pa以下になるようにするのが
好ましい。より好ましくは、4.9×109Pa以下と
する。さらに好ましくは、3.4×109Pa以下とす
る。
【0044】一方、一方向に光メモリ素子4が反る際に
は、一方の側が伸展し、他方の側が圧縮することになる
ため、撓み方向(曲げ方向)の応力に対する強度(曲げ
強度)は特に重要ではないが、圧縮・引張方向の応力に
対する強度(引張強度,圧縮強度)は重要である。一般
に、光メモリ素子4は、撓み方向の応力に対する強度は
弱いものの、圧縮・引張方向の応力に対する強度は強い
と考えられるが、好ましくは、光メモリ素子4の弾性係
数(ヤング率)は9.8×107Pa以上(より好まし
くは4.9×108Pa以上)とするのが望ましい。
【0045】ここで、曲げ剛性や弾性係数の測定方法と
しては、公知の測定方法が適宜用いられるが、例えば以
下のような方法によって測定することができる。つま
り、短冊状のサンプルの一端を固定した状態で、反対側
の他端にサンプルと垂直な方向に力を加える。そして、
サンプルの撓みと加えた力との関係に基づいて、曲げ剛
性を求めることができる。さらに、求められた曲げ剛性
の値と、サンプルの断面形状とに基づいて、弾性係数を
求めることができる。
【0046】ここでは、媒体としての光メモリ素子4
を、光導波路部材232を積層させてなる積層体を備え
るものとして説明しているが、より詳細には、後述する
ように、積層体に基体(薄膜基体)を積層させたものと
して構成される。このため、ここでは、光メモリ素子4
の曲げ剛性や弾性係数として、積層体と基体とを備える
光メモリ素子4全体の曲げ剛性や弾性係数の値を示して
いる。
【0047】なお、光メモリ素子4の全体が、上記の曲
げ剛性の条件のみを満たすものとして構成しても良い
し、上記の弾性係数の条件のみを満たすものとして構成
しても良いが、最も好ましくは、上記の曲げ剛性の条件
と上記の弾性係数の条件の双方を満たすものとして構成
する。ところで、後述するように、積層体に積層される
基体(薄膜基体)としては、樹脂フィルムを用いること
で、十分な柔軟性を得ることができるのに対し、コア層
及びクラッド層からなる積層体(光導波路部材)は、硬
化樹脂からなり、一般に硬化樹脂は硬いため、この積層
体が十分な柔軟性を有するように構成することが、光メ
モリ素子4全体を十分な柔軟性を有するものとして構成
するのに必要な条件となる。
【0048】具体的には、積層体(光導波路部材)の曲
げ剛性は、0.274N・m2以下になるようにするの
が好ましい。より好ましくは、0.0882N・m2
下とする。さらに好ましくは、0.0441N・m2
下とする。また、積層体の弾性係数は、9.8×109
Pa以下になるようにするのが好ましい。より好ましく
は、4.9×109Pa以下とする。さらに好ましく
は、3.4×109Pa以下とする。
【0049】一方、一方向に積層体が反る際には、一方
の側が伸展し、他方の側が圧縮することになるため、撓
み方向(曲げ方向)の応力に対する強度(曲げ強度)は
特に重要ではないが、圧縮・引張方向の応力に対する強
度(引張強度,圧縮強度)は重要である。一般に、積層
体は、撓み方向の応力に対する強度は弱いものの、圧縮
・引張方向の応力に対する強度は強いと考えられるが、
好ましくは、積層体の弾性係数(ヤング率)は9.8×
107Pa以上(より好ましくは4.9×108Pa以
上)とするのが望ましい。
【0050】なお、積層体とは、コア層3とクラッド層
2とを積層させてなる。このため、ここでは、積層体の
曲げ剛性や弾性係数として、コア層3とクラッド層2と
を積層させてなる積層体全体の曲げ剛性や弾性係数の値
を示している。なお、積層体の全体が、上記の曲げ剛性
の条件のみを満たすものとして構成しても良いし、上記
の弾性係数の条件のみを満たすものとして構成しても良
いが、最も好ましくは、上記の曲げ剛性の条件と上記の
弾性係数の条件の双方を満たすものとして構成する。
【0051】本実施形態では、コア層3及びクラッド層
2を、例えばアクリル系硬化樹脂やエポキシ系硬化樹脂
のような硬化樹脂[例えば紫外線(UV光)を照射する
ことにより硬化する紫外線硬化樹脂(UV樹脂,光硬化
樹脂)や熱硬化樹脂等]により構成している。例えば、
アクリル系光硬化樹脂(アクリル系硬化樹脂),エポキ
シ系光硬化樹脂(エポキシ系硬化樹脂),チオール系光
硬化樹脂(チオール系硬化樹脂)などが好ましい。
【0052】なお、コア層3の材料としては、塗布時に
は液体で、その後、硬化させることのできる樹脂を用い
れば良い。また、クラッド層2の材料としては、透明で
屈折率がコア材3よりも僅かに小さい物質(樹脂)であ
り、後述する樹脂フィルムとの接着性に優れるものを用
いれば良い。但し、コア層3やクラッド層2としては、
後述するように、スタンパによる転写を行なう場合に
は、光硬化性樹脂を用いるのが好ましい。
【0053】ところで、上述のような曲げ剛性又は弾性
係数の条件を満たす光メモリ素子4(光導波路部材,積
層体)を実現するためには、十分な柔軟性を有するオリ
ゴマーを含有する硬化性樹脂を硬化させることで、コア
層3やクラッド層2を構成するのが好ましい。ここで、
コア層3やクラッド層2を形成する材料(原料)として
の硬化樹脂の柔軟性は、例えば引張破断伸度等によって
評価することができる。この引張破断伸度は、引張試験
機を用いて、短冊状のサンプルを引っ張り、引っ張り前
のサンプル長さに対する破断直前の長さの割合を求める
ことによって得られる。
【0054】この引張破断伸度によって評価する場合、
オリゴマーを含有する硬化樹脂として、硬化後の破断伸
度(引張破断伸度)が10〜500%の範囲内(即ち、
10%以上500%以下)であることを特徴とするオリ
ゴマーを含有する硬化樹脂を用いれば、上述のような曲
げ剛性又は弾性係数の条件を満たす光メモリ素子4(光
導波路部材,積層体)を実現することができる。
【0055】つまり、硬化後の破断伸度が10%以上で
あることを特徴とするオリゴマーを含有する硬化樹脂を
用いれば、上述のような曲げ剛性又は弾性係数の条件を
満たす光メモリ素子4(光導波路部材,積層体)を実現
することができる。また、硬化後の破断伸度が500%
以下であることを特徴とするオリゴマーを含有する硬化
樹脂を用いれば、上述のような曲げ剛性又は弾性係数の
条件を満たす光メモリ素子4(光導波路部材,積層体)
を実現することができる。
【0056】ここで、オリゴマーの破断伸度は、より好
ましくは50〜200%の範囲内とし、更に好ましくは
50〜150%の範囲内とする。つまり、オリゴマーの
破断伸度は、より好ましくは50%以上とする。また、
オリゴマーの破断伸度は、より好ましくは200%以下
とし、さらに好ましくは150%以下とする。これは、
オリゴマーの破断伸度が上記の範囲を外れて、その値が
大きいと(即ち、200%よりも大きいと)、表面硬度
が小さくなりすぎて変形しやすくなるため好ましくない
からである。一方、上記の範囲を外れて、その値が小さ
いと(即ち、50%よりも小さいと)、柔軟性が不足し
てしまうため好ましくないからである。
【0057】特に、コア層3やクラッド層2に用いて好
適な柔軟な性質を有する材料としては、例えばウレタン
結合を有する原料、具体的にはウレタン(メタ)アクリ
レートオリゴマー等のウレタン結合を有するオリゴマー
を含有する硬化樹脂が挙げられる。一般に、ウレタン
(メタ)アクリレートオリゴマーは、高い柔軟性と強度
を持ち、硬化時の体積収縮率が小さいものが多いため、
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを原料の一つ
として配合した組成物(コア材3やクラッド材2として
用いられる硬化性樹脂)を硬化させてなる硬化膜(コア
層3やクラッド層2)に柔軟性を付与することが可能と
なる。
【0058】ここで、ウレタン(メタ)アクリレートオ
リゴマーは、例えばポリイソシアネート化合物、ポリオ
ール化合物及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物
を反応させることによって得られる。ポリイソシアネー
ト化合物としては、例えばベンゼンジイソシアネート、
ベンゼントリイソシアネート、キシレンジイソシアネー
ト、メチレンビス(フェニルイソシアネート)、テトラ
メチルキシレンジイソシアネート、ヘキサンジイソシア
ネート、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス
(フェニルイソシアネート)などの水添化合物等が挙げ
られる。
【0059】ポリオール化合物としては、例えばエチレ
ングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコー
ル等のアルキルジオール、ポリ(エチレンオキサイド)
ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加
物等のポリエーテルジオール、ポリ(カプロラクトン)
ジオール、ポリ(カーボネート)ジオール等のポリエス
テルジオール等が挙げられる。
【0060】水酸基含有(メタ)アクリレート化合物と
しては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート
及びそのオリゴマー、ヒドロキシプロピル(メタ)アク
リレート及びそのオリゴマー、ペンタエリスリトールト
リアクリレート等が挙げられる。また、組成物(コア材
3やクラッド材2に用いられる硬化性樹脂)に含有され
るウレタン結合の量は、好ましくは0.1〜10重量%
の範囲内(即ち、0.1重量%以上10重量%以下)、
より好ましくは0.5〜5重量%の範囲内(即ち、0.
5重量%以上5重量%以下)、さらに好ましくは0.5
〜3重量%の範囲内(即ち、0.5重量%以上3重量%
以下)とする。
【0061】つまり、組成物に含有されるウレタン結合
の量は、好ましくは0.1重量%以上とし、より好まし
くは0.5重量%以上とする。一方、組成物(コア材3
やクラッド材2)に含有されるウレタン結合の量は、好
ましくは10重量%以下とし、より好ましくは5重量%
以下とし、さらに好ましくは3重量%以下とする。これ
は、ウレタン結合の量がこれら範囲から外れて、その量
が小さいと(即ち、0.1重量%よりも小さいと)、材
料の耐光性が低下したり、粘度が増加したり、ゲル化し
たりしやすくなるなど、材料の品質が損なわれたり、作
業性が損なわれたりしてしまうことになるため、好まし
くないからである。
【0062】ここで、組成物(コア材3やクラッド材2
に用いられる硬化性樹脂)に含有されるウレタン結合の
定量には、公知の分析法が適宜用いられるが、例えば窒
素元素分析法を用いることができる。つまり、組成物試
料を反応炉中で800℃にて熱分解して気化させ、生成
した気体中に含まれる一酸化窒素を化学発光法にて測定
する方法を採用することができる。この方法によって、
ウレタン結合を構成する窒素原子の定量ができ、それを
もとにウレタン結合量を算出することができる。ウレタ
ン結合以外に窒素原子を含む官能基ないし分子構造が存
在するかどうかの確認及び定量は、例えば赤外吸収スペ
クトル法、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法
(熱分解GC/MS法)などを組み合わせて行なうこと
ができる。
【0063】本実施形態では、コア層3及びクラッド層
2のいずれも硬化樹脂によって構成される。コア層3の
膜厚は、再生光の導波条件を満たすように薄くする必要
がある一方、クラッド層2の膜厚は、層間クロストーク
を抑えるために、比較的厚く成膜する必要がある。例え
ば、コア層3の厚さを2μmとし、クラッド層2の厚さ
を15μmとする。
【0064】このため、積層体(光導波路部材)の機械
的な特性は、クラッド層2の機械特性によって殆ど決定
されてしまうから、上記の樹脂の条件は、クラッド層2
を形成する硬化樹脂のみに適用しても良い。つまり、ク
ラッド層2のみを、硬化後の破断伸度が10〜500%
の範囲内であるオリゴマーを含有する硬化性樹脂を硬化
させて形成すればよい。また、クラッド層2のみを、ウ
レタン結合を有するオリゴマーを含有する硬化性樹脂
(例えばウレタンアクリレートオリゴマーなど)を硬化
させて形成すれば良い。この場合、クラッド層2に含ま
れるウレタン結合の量が0.1〜10重量%の範囲内に
なるようにするのが好ましい。
【0065】したがって、本実施形態では、光メモリ素
子4が上述のように構成されているため、光メモリ素子
4を平坦化するのに実用的なクランプ力を作用させれば
良くなる。このため、読取装置の小型化、低消費電力化
を実現しながら、再生光をコア層の情報領域の全域に同
時に入射させることができ、正確な再生像が得られるよ
うになる。
【0066】ところで、本実施形態では、コア層3の反
りや撓み(撓み量)をできるだけ小さくするために、光
メモリ素子4を、樹脂製コア層3と樹脂製クラッド層2
とを積層させてなる積層体(光導波路部材232)の両
面(上下面)に薄膜基体5を設け、薄膜基体5で挟み込
んだ構造(サンドイッチ構造)としている。このため、
本実施形態では、光メモリ素子[積層型(平面型)の光
メモリ素子;積層導波路型ホログラム素子,MWH素
子]4を、図4に示すように、樹脂製コア層3と、樹脂
製コア層3の両面に積層された樹脂製クラッド層2とか
らなり、樹脂製コア層3と樹脂製クラッド層2との界面
の少なくとも一方に再生像を得るための情報を含む情報
用凹凸部6を有する光導波路部材232を1個又は複数
個(ここでは2個)有してなる積層体を、薄膜基体(基
体)5,5′により挟み込んだサンドイッチ構造として
いる。
【0067】なお、情報用凹凸部6は、強度,位相,角
度などに関する情報を含むものとして構成される。情報
用凹凸部6は、例えば強度情報と位相情報とを含むもの
である場合もあるし、強度情報と角度情報とを含むもの
である場合もあるし、強度情報のみを含むものである場
合もある。また、再生像とは、このような情報用凹凸部
6からの散乱光によって形成される光の濃淡であれば良
く、どのような像であっても良い。
【0068】このような構造とすれば、コア層3やクラ
ッド層2の材料として硬化収縮する硬化樹脂を用いた場
合にも、光メモリ素子4の反り(撓み)を小さくするこ
とができ、品質の高い光メモリ素子4を作製できること
になる。特に、硬化収縮の大きいアクリル系モノマーを
用いた場合にも、光メモリ素子4の反り(撓み)を小さ
くすることができ、品質の高い光メモリ素子4を安価に
作製できることになる。また、光メモリ素子4の構造は
対称構造(上下対称構造)であるため、エポキシ系モノ
マーを用いた場合にも、反りを安定して抑えることがで
きることになる。
【0069】また、このような構造によれば、基体が薄
膜状であっても光メモリ素子4の反り(撓み)を抑える
ことができるため、上記式(1)の条件を満たすものと
することができる。上述したように、光メモリ素子4の
情報領域幅が狭い場合には、コア層3の撓み(反り)を
特に考慮しなくても、コア層3の撓み量が上記式(1)
の条件を満たすものとすることができる場合が多いた
め、このようなサンドイッチ構造とすることが、光メモ
リ素子4(コア層3)の撓み量が上記式(1)の条件を
満たすようにするために大きな意味を持つのは、情報領
域幅が広い(5mm以上;例えば5mm幅,1cm幅)
の光メモリ素子4を作製する場合である。
【0070】ここで、上述のようなサンドイッチ構造と
した場合、一方向に光メモリ素子4が反る際には、一方
の薄膜基体5(又は5′)が伸展し、他方の薄膜基体
5′(又は5)が圧縮することになるため、薄膜基体
5,5′としては、撓み方向(曲げ方向)の応力に対す
る強度(曲げ強度)は特に重要ではないが、圧縮・引張
方向の応力に対する強度(引張強度,圧縮強度)は重要
である。
【0071】一般に、膜厚の薄い薄膜基体5,5′は、
撓み方向の応力に対する強度は弱いものの、圧縮・引張
方向の応力に対する強度は強いため、薄膜基体5,5′
であれば十分に反りを抑えることが可能であると考えら
れるが、好ましくは、薄膜基体5としては、弾性係数
(ヤング率)が9.8×107Pa以上(より好ましく
は4.9×108Pa以上)の材料を用いるのが望まし
い。また、薄膜基体5,5′としては、再生光波長に対
して透明のものを用いる。
【0072】具体的には、薄膜基体5,5′としては、
例えば樹脂フィルム,ガラス,誘電体などを用い得る
が、可撓性がある方が製造上好ましいので、樹脂フィル
ムを用いるのが好ましい。樹脂フィルムとしては、ポリ
カーボネート,アートン(JSR社製)などの非晶質ポ
リオレフィン,PET(ポリエチレンテレフタレー
ト),PEN(ポリエチレンナフタレート)等の光学特
性に優れる(PENはさらに耐熱性にも優れる)熱可塑
性の樹脂フィルムを用いるのが好適(特に、上記のPE
TやPENはいずれも均一な厚みのフィルムを得られや
すいので好適)である。
【0073】これらの樹脂フィルムによって薄膜基体
5,5′を構成すれば、圧縮・引張方向の応力に対する
強度は十分であるからである。これにより、薄くて軽
い、実用的な光メモリ素子4を作製できることになる。
なお、薄膜基体5,5′は、樹脂フィルムに限られるも
のではなく、積層体(光メモリ素子10)の反り(撓
み)を抑えることができる(曲げを保持できる)基体と
して機能しうる材料によって構成されれば良く、例えば
ガラスなど各種の材料を用いることができる。
【0074】但し、製造工程上、貼着(ラミネート)を
行うなど柔軟性が要求される場合は、樹脂製とするのが
好ましい。各種の硬化性樹脂を塗布後硬化させたり、樹
脂を溶剤に溶かして塗布し乾燥させたりして樹脂製薄膜
基体としてもよいが、樹脂フィルムを用いると、スタン
パに対する貼着、剥離を繰り返して行ないやすく、生産
性、作業性の点で好ましい。
【0075】また、光メモリ素子4の全体の厚さを薄く
し、携帯性の優れたものとするためには、基体5,5′
の膜厚はできるだけ薄い方が好ましい。このため、基体
5,5′の厚さは500μm以下とするのが好ましく、
より好ましくは250μm以下、特に好ましくは100
μm以下である。ただし、光メモリ素子4の反りを抑え
るような強度を確保するためには、10μm以上(より
好ましくは20μm以上)の厚さが必要になると考えら
れる。要するに、基体5,5′の厚さは、10μm〜5
00μm(10μm〜250μm,10μm〜100μ
m,20μm〜500μm,20μm〜250μm,2
0μm〜100μm)の範囲内とするのが好ましい。
【0076】特に、基体5,5′を樹脂フィルムとする
場合には、上述のようなポリカーボネート等の樹脂フィ
ルムを熱延伸、或いは溶媒キャスト等の方法で、例えば
10μm以上(より好ましくは20μm以上)500μ
m以下の厚さにすれば良い。さらに、基体5,5′の屈
折率は、コア3やクラッド2の屈折率にできるだけ近い
方が望ましい。これは、基体5,5′の屈折率と、積層
体を構成するコア3やクラッド2の屈折率との間に大き
な差があると、基体5,5′と積層体との界面で出力光
(信号光)が反射等して、信号光(出力光)の光量が低
下してしまうし、S/Nも低下してしまうからである。
【0077】このため、積層体を構成するコア3又はク
ラッド2の屈折率と、基体5,5′を構成する材料の屈
折率との差は、いずれも0.2以下であることが望まし
い。つまり、コア3と基体5,5′との屈折率差が0.
2以下であり、かつ、クラッド2と基体5,5′との屈
折率差が0.2以下であることが好ましい。ところで、
上述のような薄膜基体5,5′によって挟み込んだサン
ドイッチ構造の光メモリ素子4を作製するには、第1の
薄膜基体5上に、樹脂製クラッド層2と樹脂製コア層3
とを順に積層した後で、その上に第2の薄膜基体5′を
設けることになる。
【0078】この場合、第2の薄膜基体5′を設ける前
は、第1の薄膜基体5上に樹脂からなるコア層3やクラ
ッド層2が積層させている非対称構造であるため、一方
向に反り易い状態になっている。第2の薄膜基体5′を
設ける前に反った状態になっていた場合に、反った状態
のままで第2の薄膜基体5′を設けてしまうと、反った
状態が保たれてしまい、たとえサンドイッチ構造にした
としても、反った状態の光メモリ素子4になってしま
う。これでは、たとえサンドイッチ構造にしたとして
も、光メモリ素子4の撓み量は上記式(1)の条件を満
たさないものとなってしまう。
【0079】そこで、光メモリ素子4の撓み量が上記式
(1)の条件を満たすようにするためには、サンドイッ
チ構造の光メモリ素子4を作製する光メモリ素子作製プ
ロセスを、例えば光透過性スタンパを用いた光メモリ素
子作製プロセスとするのが好ましい。なお、光メモリ素
子作製プロセスはこれに限られるものではない。ここ
で、光透過性スタンパの構成及び作製方法について、図
5及び図6を参照しながら説明する。
【0080】光透過性スタンパ13は、後述するように
光メモリ素子4を製造する際にコア材又はクラッド材を
硬化させるために照射する光(例えば紫外線)を透過し
うるものとして構成される。この光透過性スタンパ(光
メモリ素子作製用スタンパ)13は、例えば図5に示す
ように、表面に結像させたい画像(情報)に応じた所望
の凹凸パターン(凹凸形状;ピット)を刻まれたスタン
パ面を有するスタンパ層としてのクラッド層10と、接
着層としてのコア層11と、ベース(基体,ベース層,
基体層)としての樹脂フィルム(樹脂フィルム層,樹脂
製基体層,ベースフィルム層)12とを備える3層構造
となっており、クラッド層10にコア層11を介して樹
脂フィルム12が接着されて構成される。
【0081】このように、本実施形態では、光透過性ス
タンパ13を、クラッド層10、コア層11及び樹脂フ
ィルム12により構成し、可撓性を有するフィルム状ス
タンパ(フィルムスタンパ)として構成している。ここ
では、クラッド層10,コア層11及び樹脂フィルム1
2は、いずれも、使用光波長域[光メモリ素子を製造す
る際にコア材やクラッド材を硬化させるために照射する
光(例えば紫外線)の波長域]において透明のもの(即
ち、光を透過できるもの)を用いている。このため、ク
ラッド層10を光透過性クラッド層(例えば紫外線透過
性クラッド層)、コア層11を光透過性コア層(例えば
紫外線透過性コア層)、樹脂フィルム12を光透過性樹
脂フィルム(例えば紫外線透過性樹脂フィルム)とい
う。
【0082】このうち、クラッド層10を形成するクラ
ッド材としては、紫外線(UV光)を照射することによ
り硬化する紫外線硬化性樹脂材(UV樹脂材,光硬化性
樹脂材)を使用し、表面に結像させたい画像(情報)に
応じた所望の凹凸パターン(凹凸形状;ピット)を形成
された金属製スタンパ(例えばニッケル製スタンパ)1
のスタンパ面(凹凸パターン,凹凸形状)上に、この紫
外線硬化性樹脂材を塗布した後、紫外線を照射して完全
に硬化させることで樹脂製のクラッド層10を形成す
る。
【0083】樹脂フィルム(ベースフィルム)12とし
ては、例えば、ポリカーボネート,アートン(JSR株
式会社製,登録商標)などの非晶質ポリオレフィンや、
PET(ポリエチレンテレフタレート),PEN(ポリ
エチレンナフタレート)等の光学特性に優れる(PEN
はさらに耐熱性にも優れる)熱可塑性の樹脂フィルム1
2が好適(特に、上記のPETやPENはいずれも均一
な厚みのフィルムを得られやすいので好適)である。特
に、アートンよりも剛性のあるPETやポリカーボネー
トが好ましい。
【0084】また、ここでは、樹脂フィルム12とし
て、枚葉のフィルムを用いているが、連続フィルムを用
いても良い。つまり、フィルム上へのクラッド材、コア
材のダイコータ,マイクログラビア,バーコータ等によ
る塗布、スタンパを加圧した状態でのコア材,クラッド
材の硬化等のプロセスを組み合わせることにより、基体
としての樹脂フィルム上にコア層及びクラッド層を積層
させて、光透過性スタンパ13を作製しても良い。
【0085】コア層11は、クラッド層10と樹脂フィ
ルム12とを接着する接着剤として機能するものであ
り、紫外線硬化樹脂材(光硬化樹脂材)から成るコア材
により形成される。このようにしているのは、コア材1
1は後述の光メモリ素子の材料として用いられるもので
あるため、材料を共用化でき、また、光硬化樹脂や熱硬
化樹脂等からなるコア材11は樹脂フィルム12との接
着性に優れており、好適であるからである。
【0086】なお、ここでは、コア層(コア材)11や
クラッド層(クラッド材)10という用語を用いている
が、これらは単に後述するような光メモリ素子を構成す
るコア層(コア材)やクラッド層(クラッド材)と同様
の樹脂を用い、光メモリ素子を製造する場合と同様の方
法で塗布したり、硬化させたりするようにして、材料や
製造設備を共用しているため、便宜上、このような用語
を用いているにすぎず、光メモリ素子のように所定の屈
折率のコア層(コア材)及びクラッド層(クラッド材)
を用いることを意味するものではない。
【0087】また、ここでは、クラッド層10に金属性
スタンパ1の凹凸パターンを転写し、接着剤としてのコ
ア材11を介して樹脂フィルム12に接着しているが、
これに限られるものではなく、クラッド層10に金属性
スタンパ1の凹凸パターンを転写し、接着剤としてのク
ラッド材を介して樹脂フィルム12に接着しても良いし
(この場合、クラッド層と樹脂フィルムとの2層構造と
なる)、また、コア層に金属性スタンパ1の凹凸パター
ンを転写し、接着剤としてのクラッド材を介して樹脂フ
ィルムに接着しても良いし、さらに、コア層に金属性ス
タンパ1の凹凸パターンを転写し、接着剤としてのコア
材を介して樹脂フィルムに接着しても良い(この場合、
コア層と樹脂フィルムとの2層構造となる)。
【0088】また、コア材11やクラッド材10は、塗
布時には液体で(流動性があり)、その後、硬化させる
ことのできる樹脂であれば何でも良く、上述の紫外線硬
化樹脂以外の光硬化樹脂や熱を加えることで硬化する熱
硬化樹脂等の所望の硬化樹脂を適用してもよい。また、
熱溶融樹脂を用いても良い。特に、金属製スタンパ1に
よる転写を行なうクラッド材(クラッド層)10は、屈
折率が特定値のものを用いる必要はなく、上記の紫外線
硬化性樹脂を適用するのが好ましく、例えば、アクリル
系,エポキシ系,チオール系の各樹脂などがよい。
【0089】一方、接着剤(接着層)としてのコア材
(コア層)11は、屈折率が特定値のものを用いる必要
はなく、使用光波長域で透明で、且つ、接着後に簡単に
剥がれないものであれば、どのようなものを適用しても
良い。例えば、光硬化型,熱硬化型,室温硬化型,ホッ
トメルト型,2液混合型等の各種の型の接着剤が適用可
能であり、材質としては、アクリル系,エポキシ系,シ
アノアクリレート系,ウレタン系,オレフィン系等があ
る。但し、樹脂フィルムやクラッド層との材質を考慮し
て接着相性の良い組み合わせを選定するのが好ましい。
【0090】さらに、光透過性スタンパ13を保持する
基体を樹脂フィルム12により構成しているのは、金属
製スタンパ1上への貼着、剥離を行ないやすく、生産
性、作業性の点で好ましいからであるが、樹脂フィルム
12に限られるものではなく、例えば各種の硬化性樹脂
を塗布後硬化させたり、樹脂を溶剤に溶かして塗布し、
乾燥させたりして、樹脂製基体を構成しても良い。
【0091】また、ここでは、クラッド層10、コア層
11及び樹脂フィルム12により構成される光透過性ス
タンパ13をフィルム状のものとして構成しているが、
必ずしもフィルム状のものである必要はなく、例えばフ
ィルム状のものよりも厚さが厚いプレート状のもの(プ
レート状スタンパ,プレートスタンパ)であっても良
く、その厚さは特に問題とならない。
【0092】このように、光透過性スタンパ13は、光
メモリ素子を製造する際にコア材又はクラッド材を硬化
させるために照射する光(例えば紫外線)を透過できる
ものであれば、その材料や厚さ等は上述のものに限られ
ない。例えば、光メモリ素子を製造する際にコア材又は
クラッド材を硬化させるために照射する紫外線(UV
光)を透過するものとしては、樹脂のほか、ガラスや石
英などもあり、これらを材料として光透過性スタンパ1
3を構成しても良い。但し、光メモリ素子の製造工程
上、光透過性スタンパ13の貼着(ラミネート)を行な
う必要がある等、光透過性スタンパ13に柔軟性が要求
される場合や光メモリ素子の製造工程と同様の工程によ
り光透過性スタンパ13を製造する場合には、光透過性
スタンパ13は樹脂製とするのが好ましい。
【0093】また、本実施形態では、後述するように、
コア材11及びクラッド材10として紫外線硬化樹脂を
用いるため、光透過性スタンパ13は少なくとも紫外線
を透過しうる紫外線透過性スタンパであれば良い。ま
た、本実施形態では、光透過性スタンパ(フィルムスタ
ンパ,プレートスタンパ)13を平面状とした平面状ス
タンパとして用いているが、これに限られるものではな
く、例えば可撓性のあるフィルム状の光透過性スタンパ
をロールに巻き付けることによりロール状としたロール
状スタンパ(ロールスタンパ)として用いても良い。こ
のようにロールスタンパとすれば、スタンパからの転写
プロセスの生産性を向上させることができるようにな
る。
【0094】次に、このように構成される光透過性スタ
ンパ13の製造方法について説明する。まず、図6
(A)に示すように、結像させたい画像(情報)に応じ
た所望の凹凸パターン(凹凸形状;ピット)を転写しう
るように、凹凸パターンを表面に刻まれた金属製スタン
パ(例えばニッケル製スタンパ等,原盤,硬質スタン
パ)1の凹凸パターンを有するスタンパ面上に、所定の
膜厚(例えば約6μm)となるようにクラッド材(液状
クラッド樹脂)10を塗布して、完全に硬化させる。こ
のようにしてクラッド材10を完全硬化させると、表面
に凹凸パターンを有する金属製スタンパ1から凹凸パタ
ーンが転写されて、凹凸パターンを有する樹脂製のクラ
ッド層(スタンパ層)10が形成される(転写工程)。
なお、クラッド層10として機能する所望の樹脂材を溶
媒に溶解したものを塗布・乾燥させる手法を採っても良
い。また、この凹凸パターンは、実際には、例えばCD
(コンパクトディスク)におけるピットのように平面上
に散在している。
【0095】その後、図6(B)に示すように、その表
面上に、所定の膜厚(例えば完全硬化時に約1.8μ
m)となるように、接着剤として機能しうる紫外線硬化
性樹脂材(光硬化性樹脂材)から成るコア材(液状コア
樹脂,液状光硬化性樹脂)11を塗布し、不完全硬化さ
せる。なお、コア層11として機能する所望の樹脂材を
溶媒に溶解したものを塗布・乾燥させる手法を採っても
良い。
【0096】ここで、不完全硬化とは、塗布されたコア
材の全体を不完全に硬化させることをいう。このよう
に、コア材11を不完全硬化させることで、コア材11
を塗布することにより形成される塗布膜の粘度を上げ
て、後述するように樹脂フィルム12をラミネート(貼
着)する際に、コア材11により形成される接着層の膜
厚変動が生じないようにしているのである。
【0097】なお、ここでは、後述するように、塗布さ
れたコア層11の表面上に樹脂フィルム12をラミネー
トする際に接着層の膜厚変動が生じないように、コア材
11を不完全硬化させているが、コア材11を不完全硬
化させるのは必須でなく、この工程は省略することもで
きる。例えば、コア層11上に樹脂フィルム12をラミ
ネートする際には、ローラによって樹脂フィルム12を
加圧することでコア層11上にラミネートしていくが、
樹脂フィルム12がローラによって加圧される直前ま
で、樹脂フィルム12が接着層としてのコア層11と接
しないように樹脂フィルム12を保持する保持機構を設
ければ、コア材11を不完全硬化させなくても接着層の
膜厚変動を生じさせないようにしながら、コア層11上
に樹脂フィルム12をラミネートすることができる。
【0098】なお、コア材11やクラッド材10の塗布
方法には、例えば、スピンコート法,ブレードコート
法,グラビアコート法,ダイコート法等があるが、塗布
膜厚と均一性を満足すればどのような塗布方法を用いて
もよい。次に、このコア層11の表面上に、例えば図6
(B)に示すように、気泡が入らないようにベース(基
体)としての樹脂フィルム(樹脂製フィルム部材,ベー
スフィルム)12をローラ等で加圧しながら載置する。
つまり、クラッド材10にコア材11を介して樹脂フィ
ルム12を貼着(ラミネート)する。
【0099】次いで、図6(B)に示すように、上述の
ように樹脂フィルム12を貼着した状態で、樹脂フィル
ム12側(金属製スタンパ1の反対側)から紫外線を照
射してコア材11を完全に硬化させれば、樹脂製のコア
層11が形成されるとともに、樹脂フィルム12とクラ
ッド層10とがコア層11を介して接着される。このよ
うに、凹凸パターンを転写されたクラッド層10に樹脂
フィルム12を接着する工程を、接着工程という。
【0100】そして、図6(C)に示すように、金属製
スタンパ1からコア層11とクラッド層10と樹脂フィ
ルム12とを一体として剥離(分離)し(分離工程)、
図6(D)に示すように、樹脂フィルム12を樹脂製基
体層とし、その上に樹脂製のコア層11、さらにその上
に金属製スタンパ1の凹凸パターン(以下、単に「凹
凸」ともいう)を転写(形成)した樹脂製のクラッド層
10が積層された、光メモリ素子製造用の光透過性スタ
ンパ(ここでは、フィルムスタンパ)13が作製され
る。
【0101】本実施形態では、さらに、図6(D)に示
すように、金属製スタンパ1の凹凸パターンを転写した
樹脂製のクラッド層10の凹凸パターンを有する面に対
して、紫外線を照射して、さらに硬化させることで、ク
ラッド層2に形成される凹凸パターン(凹凸形状;ピッ
ト)の接着性をより低下させるようにしている(これを
オーバキュア処理という)。好ましくは、例えば約12
0℃程度の高温処理を行なう。この高温処理時間は、約
1時間程度とするのが好ましい。これにより、さらに接
着性を低下させることができる(これもオーバキュア処
理という)。このようなオーバキュア処理を行なうこと
で、光メモリ素子を構成するコア材又はクラッド材から
の光透過性スタンパ13の剥離性を向上させるようにし
ている。
【0102】次に、このようにして作製される光透過性
スタンパ13を用いて、薄膜基体として樹脂フィルム5
を用いた場合の光メモリ素子の作製プロセス(光メモリ
素子の製造方法)について説明する。本光メモリ素子作
製プロセスの概略を説明すると、本プロセスでは、まず
ガラス等の基板(≠基体)上に薄膜基体5を設け、その
上に樹脂製コア層3と樹脂製クラッド層2を積層させて
いく。最後に、その上に薄膜基体5を設けて、サンドイ
ッチ構造を完成した状態で、基板から薄膜基体5にサン
ドイッチされた構造の光メモリ素子4を剥離する。
【0103】以下、光メモリ素子作製プロセスについ
て、図7(A)〜(E)を参照しながら、さらに詳述す
る。始めに、図7(A)に示すように、光メモリ素子作
製用ベース基板21上に、所定の膜厚(例えば完全硬化
時に約5μm)となるようにクラッド材(液状クラッド
樹脂)2Xを塗布する。
【0104】このクラッド材2Xとしては、本実施形態
では、紫外線(UV光)を照射することにより硬化する
紫外線硬化性樹脂材(UV樹脂材,光硬化性樹脂材)か
ら成るものを使用し、このように光メモリ素子作製用ベ
ース基板21の表面上へ塗布した後、紫外線を照射して
完全に硬化させることで樹脂製のクラッド層2Xを形成
する。なお、クラッド層2Xとして機能する所望の樹脂
材を溶媒に溶解したものを塗布・乾燥させる手法を採っ
ても良い。
【0105】ここでは、光メモリ素子作製用ベース基板
21として、例えば数mm厚のガラス基板,ポリカーボ
ネートからなる基板,アートン(JSR株式会社製)な
どの非晶質ポリオレフィンからなる基板等の硬質基板
(例えば厚さ約0.1mm〜約3mm程度、好ましくは
約1mm程度)を用いる。このような硬質基板を用いて
いるのは、以下の理由による。
【0106】つまり、後述するように、基板21上に樹
脂製コア層3や樹脂製クラッド層2を積層させていく間
は、サンドイッチ構造が構成されないので、コア層3や
クラッド層2を構成する樹脂中の内部応力が基板を一方
向に反らせる方向に働くことになる。この場合、基板2
1の強度が十分でない場合には、基板21に反りが生じ
てしまい、この反りが大きくなると、樹脂の塗布や樹脂
フィルムの貼付等のプロセスが行なえなくなる。
【0107】また、基板21が反った状態のまま薄膜基
体5を設けてサンドイッチ構造を完成させ、これを基板
21から剥離させると、サンドイッチ構造の光メモリ素
子4を作製できるものの、反りが保たれたままの状態と
なってしまう。このため、樹脂製コア層3と樹脂製クラ
ッド層2の積層を行っている間も基板21の反りを抑え
るべく、基板21として硬質基板を用いているのであ
る。
【0108】これにより、硬質基板21の強度によっ
て、樹脂製コア層3や樹脂製クラッド層2の積層を行っ
ている間も、クラッド材やコア材としての紫外線硬化性
樹脂材が硬化時に収縮し、基板21の反り(反曲,カー
ル)が生じるのを抑えることができる。この結果、光メ
モリ素子4の撓み量を上記式(1)の条件を満たすよう
なサンドイッチ構造の光メモリ素子4を作製でき、実用
的なメモリを得ることが可能となる。
【0109】一方、上述のように硬質基板21を用いる
ことができるのは、以下の理由による。つまり、基板
は、最終的には光メモリ素子4から外されてしまうもの
であるため、基板の厚さや重さは、光メモリ素子4の厚
みや重さに影響を与えることはない。従って、厚さや重
さのある基板21を用いたとしても、光メモリ素子4の
実用性を失うことないため、基板として、反りが発生し
ないだけの十分な強度を持つものとすることが可能であ
る。
【0110】また、金属性スタンパを用いる場合に、ベ
ース基板を硬質基板とすると、金属性スタンパを曲げる
(撓ませる)のが難しいため、金属製スタンパからクラ
ッド層及びコア層からなる積層体を剥離(分離)させる
のが困難である。このため、ベース基板として硬質基板
を用いることはできなかったが、本実施形態では、柔軟
性(可撓性)のある光透過性の樹脂スタンパ(フィルム
スタンパ)13を用いるため、積層体からのスタンパ1
3の剥離(分離)は容易であるから、ベース基板として
硬質基板を用いるのが可能になったのである。
【0111】なお、光メモリ素子作製用ベース基板21
は、クラッド材2やコア材3として用いられる紫外線硬
化性樹脂材に紫外線を照射した際の紫外線硬化性樹脂の
収縮に耐え、クラッド層2やコア層3が反らないだけの
強度を備えるものであれば良い。次に、このようにクラ
ッド材2Xを完全硬化させた後、図7(A)に示すよう
に、その表面上に、紫外線硬化性樹脂材(光硬化性樹脂
材)から成るコア材(液状コア樹脂)3Xaを所定の膜
厚(完全硬化時に約1.8μm程度)になるように塗布
した後、紫外線を照射して不完全硬化させる。なお、コ
ア層3Xaとして機能する所望の樹脂材を溶媒に溶解し
たものを塗布・乾燥させる手法を採っても良い。
【0112】ここで、不完全硬化とは、塗布された全コ
ア材の半分程度を硬化させることをいう。このように、
コア材3Xaを不完全硬化させることで、コア材3Xa
を塗布することにより形成される塗布膜の粘度を上げ
て、後述するようにベースフィルムをラミネート(貼
着)する際に、コア材3Xaにより形成される接着層の
膜厚変動が生じないようにしているのである。
【0113】なお、ここでは、後述するように、塗布さ
れたコア層3Xaの表面上に樹脂フィルム5をラミネー
トする際に接着層の膜厚変動が生じないように、コア材
3Xaを不完全硬化させているが、コア材3Xaを不完
全硬化させるのは必須でなく、この工程は省略すること
もできる。例えば、コア層3Xa上に樹脂フィルム5を
ラミネートする際には、ローラによって樹脂フィルム5
を加圧することでコア層3Xa上にラミネートしていく
が、樹脂フィルム5がローラによって加圧される直前ま
で、樹脂フィルム5が接着層としてのコア層3Xaと接
しないように樹脂フィルム5を保持する保持機構を設け
れば、コア材3Xaを不完全硬化させなくても接着層の
膜厚変動を生じさせないようにしながら、コア層3Xa
上に樹脂フィルム5をラミネートすることができる。
【0114】次いで、このようにしてコア材3Xaを不
完全硬化させた後、図7(A)に示すように、コア材3
Xaの表面上に、薄膜基体(ベース)となる樹脂フィル
ム(樹脂製フィルム部材,ベースフィルム)5を、気泡
が入らないように例えばローラ等を用いて加圧しながら
貼着(ラミネート)していく。つまり、クラッド層2X
にコア材3Xaを介して樹脂フィルム5を貼着(ラミネ
ート)する。
【0115】かかる状態で、紫外線をさらに照射してコ
ア材3Xaを完全硬化させれば、樹脂製のコア層3Xa
が形成されるとともに、樹脂フィルム5とコア層3Xa
とが接着される。ここで、樹脂フィルム5は、使用光波
長域(コア層3を導波させるレーザ光の波長域)で透明
で(散乱光を透過でき)、光学的な特性や膜厚の均一
性,力学的な強度などが許す限り、できるだけ薄い方が
良い。これは、上記の凹凸で散乱した散乱光を最終的に
外部へ放出できるようにするためと、最終的に製造され
る光メモリ素子4′の厚さを薄くするためであるが、本
実施形態では、それだけでなく、樹脂フィルム5とクラ
ッド層2Xとの間にあるコア材3Xa内に気泡を入りに
くくするためでもある。
【0116】即ち、コア材3Xaの塗布されたクラッド
層2X上に樹脂フィルム5を貼着する工程で、樹脂フィ
ルム5の厚みが薄いと柔軟性(可撓性)に優れるため、
樹脂フィルム5を曲げながら少しずつ接触させてゆくこ
とによって、載置面積をゆっくりと増加させることが可
能になり、クラッド材2X内に気泡が混入してその部分
の屈折率や膜厚が変化してしまう等の影響を抑止するこ
とができるのである。
【0117】このため、樹脂フィルム5には、例えば、
ポリカーボネート,アートン(JSR株式会社製)など
の非晶質ポリオレフィンや、PET(ポリエチレンテレ
フタレート),PEN(ポリエチレンナフタレート)等
の光学特性に優れる(PENはさらに耐熱性にも優れ
る)熱可塑性の樹脂フィルム5が好適(特に、上記のP
ETやPENはいずれも均一な厚みのフィルムを得られ
やすいので好適)で、これらのいずれかを熱延伸或いは
溶媒キャスト等の方法で、例えば100μm以下の厚さ
にしたものがよい。
【0118】これ以上厚さが厚いと、樹脂フィルム5の
柔軟性(可撓性)が乏しくなり樹脂フィルム5をコア材
3Xa上に載置する際に気泡が混入しやすくなってしま
う。逆に、樹脂フィルム5の厚みが極端に薄い場合、例
えば1μmよりも薄いような場合は、クラッド層2及び
コア層3からなる積層体を光メモリ素子作製用ベース基
板21から剥離(分離)する際に、樹脂フィルム5が積
層体を保持する機能を果たし得なくなることがあるので
好ましくない。
【0119】なお、上述の工程では、光メモリ素子作製
用ベース基板21上に、クラッド層2Xを形成し、これ
にコア材3Xaを介して樹脂フィルム5を貼着している
が、これに限られるものではなく、光メモリ素子作製用
ベース基板21上に、クラッド層2Xを形成し、これに
接着剤として機能するクラッド材を介して樹脂フィルム
5を貼着しても良い。この場合、光メモリ素子作製用ベ
ース基板21上に、クラッド層を介して樹脂フィルム5
が積層されることになる。また、光メモリ素子作製用ベ
ース基板21上に、コア層を形成し、これに接着剤とし
て機能するクラッド材を介して樹脂フィルム5を貼着し
ても良い。この場合、光メモリ素子作製用ベース基板2
1上に、コア層、クラッド層を介して樹脂フィルム5が
積層されることになる。さらに、光メモリ素子作製用ベ
ース基板21上に、コア層を形成し、これに接着剤とし
て機能するコア材を介して樹脂フィルム5を貼着しても
良い。この場合、光メモリ素子作製用ベース基板上に、
コア層を介して樹脂フィルム5が積層されることにな
る。なお、これらは、いずれも光メモリ素子作製用ベー
ス基板上に、基体としての樹脂フィルム5を接着するも
のであるため、これらを基体接着工程という。
【0120】ここで、接着剤(接着層)としてのコア材
(コア層)又はクラッド材(クラッド層)は、屈折率が
特定値のものを用いる必要はなく、樹脂フィルム5や光
メモリ素子作製用ベース基板21の材質を考慮して接着
相性の良い組み合わせを選定すれば良い。このため、例
えば、光硬化型,熱硬化型,室温硬化型,ホットメルト
型,2液混合型等の各種の型の接着剤が適用可能であ
り、材質としては、アクリル系,エポキシ系,シアノア
クリレート系,ウレタン系,オレフィン系等を用いるこ
とができる。
【0121】次に、図7(B)に示すように、上述の樹
脂フィルム5上に、所定の膜厚(例えば完全硬化時に約
1.8μm)となるように、紫外線硬化性樹脂材からな
るコア材(液状コア樹脂)3Xbを塗布した後、紫外線
を照射して完全に硬化させることで樹脂製のコア層3X
bを形成する。なお、上述の2つのコア層3Xa,3X
bは、後述するコア層3と異なり凹凸パターンが設けら
れておらず、専らクラッド層2Xと樹脂フィルム5との
間の接着のために用いられ、情報再生層としては機能し
ない。また、上述のクラッド層2Xも、後述するクラッ
ド層2と異なり光導波路デバイスを構成するものではな
く、専ら光メモリ素子作製用ベース基板としてのガラス
基板21等とコア層3Xaとの接着のために用いられて
いる。
【0122】次いで、図7(C)に示すように、このコ
ア層3Xbの表面上に、所定の膜厚(例えば、完全硬化
時に約15〜約20μm)となるようにクラッド材(液
状クラッド樹脂)2を塗布する。このクラッド材2とし
ては、本実施形態では、紫外線(UV光)を照射するこ
とにより硬化する紫外線硬化性樹脂材(UV樹脂材)か
ら成るものを使用し、コア層3Xbの表面上に塗布した
後、紫外線を照射して完全に硬化させることで樹脂製の
クラッド層2を形成する。なお、クラッド層2として機
能する所望の樹脂材を溶媒に溶解したものを塗布・乾燥
させる手法を採っても良い。
【0123】このようにクラッド材2を完全硬化させた
後、図7(C)に示すように、その表面上に、クラッド
層2よりも屈折率の大きい紫外線硬化性樹脂材から成る
コア材(液状コア樹脂)3を所定の膜厚(完全硬化時に
約1.8μm程度)になるように塗布した後、紫外線を
照射して不完全硬化させる。なお、コア層3として機能
する所望の樹脂材を溶媒に溶解したものを塗布・乾燥さ
せる手法を採っても良い。
【0124】ここで、不完全硬化とは、塗布された全コ
ア材の半分程度を硬化させることをいう。このように、
コア材3を不完全硬化させることで、コア材3を塗布す
ることにより形成される塗布膜の粘度を上げて、後述す
るように光透過性スタンパ13をラミネート(貼着)す
る際に、コア材3により形成される接着層の膜厚変動が
生じないようにしているのである。
【0125】なお、ここでは、後述するように、塗布さ
れたコア層3の表面上に光透過性スタンパ13をラミネ
ートする際に接着層の膜厚変動が生じないように、コア
材3を不完全硬化させているが、コア材3を不完全硬化
させるのは必須でなく、この工程は省略することもでき
る。例えば、コア層3上に光透過性スタンパ13をラミ
ネートする際には、ローラによって光透過性スタンパ1
3を加圧することでコア層3上にラミネートしていく
が、光透過性スタンパ13がローラによって加圧される
直前まで、光透過性スタンパ13が接着層としてのコア
層3と接しないように光透過性スタンパ13を保持する
保持機構を設ければ、コア材3を不完全硬化させなくて
も接着層の膜厚変動を生じさせないようにしながら、コ
ア層3上に光透過性スタンパ13をラミネートすること
ができる。
【0126】次いで、このようにしてコア材3を不完全
硬化させた後、図7(C)に示すように、その表面上
に、結像させたい画像(情報)に応じた所望の凹凸パタ
ーン(凸形状;ピット)を表面に刻まれた光透過性スタ
ンパ(フィルムスタンパ,樹脂製スタンパ)13を載置
する。かかる状態で、図7(D)に示すように、ラミネ
ートされた光透過性の樹脂製スタンパ13の裏面側(樹
脂フィルム12側,凹凸パターンを有する面の反対側)
から紫外線を照射して、この光透過性スタンパ13を透
過した紫外線によってコア材3を一部不完全硬化させ
る。
【0127】ここで、一部不完全硬化とは、コア材の一
部のみが完全には硬化せずに不完全に硬化することをい
い、例えば空気に触れているために硬化の遅いコア層の
エッジ部のみが完全には硬化せずに不完全に硬化する状
態をいう。このように、コア層3を完全硬化させずに一
部不完全硬化としているのは、光透過性スタンパ13を
ラミネートした状態でコア層3を完全に硬化させてしま
うと、コア層3から光透過性スタンパ13を剥離させる
ことができなくなるからである。
【0128】次に、図7(E)に示すように、光透過性
の樹脂製スタンパ13を光メモリ媒体用ベース基板21
上に積層された積層体のコア層3から剥離(分離)した
後、光透過性の樹脂製スタンパ13の凹凸パターン(以
下、単に「凹凸」ともいう)が転写(形成)された樹脂
製のコア層3に対して紫外線を照射して、コア層3を完
全硬化させる。これにより、光メモリ媒体用ベース基板
21上に樹脂製のクラッド層2、さらにその上に光透過
性の樹脂製スタンパ13の凹凸パターンを転写された樹
脂製のコア層(記録層,光導波路)3が積層される。な
お、この凹凸パターンは、実際には、例えばCD(コン
パクトディスク)におけるピットのように平面上に散在
している。
【0129】次に、コア層3の表面上に、所定の膜厚
(例えば、完全硬化時に約15〜約20μm)となるよ
うに、コア層3よりも屈折率の小さい紫外線硬化性樹脂
材からなるクラッド材(液状クラッド樹脂)2を塗布し
た後、紫外線を照射して完全に硬化させることで樹脂製
のクラッド層2を形成する。以後、上述と同様の処理
(図7(C)〜(E)に示す処理)を繰り返すことで、
光メモリ素子作製用ベース基板21上に、例えば基体と
しての樹脂フィルム等を介在させることなく、コア層3
及びクラッド層2を連続して所望の積層数(例えば10
0層程度)になるまで積層する。
【0130】なお、上述のように、基体としての樹脂フ
ィルム5上にクラッド層2及びコア層3を順次積層して
所望の積層数を有する積層体を形成する工程を、積層体
形成工程という。ところで、本実施形態では、図8
(A)に示すように、上述のようにして所望の積層数だ
け積層させた後、最後に積層したクラッド層2(最上層
のクラッド層2d)の表面上に、所定の膜厚(例えば完
全硬化時に約1.8μm)となるように、紫外線硬化性
樹脂材からなるコア材(液状コア樹脂)3Xcを塗布し
た後、紫外線を照射して不完全硬化させる。
【0131】なお、ここでは、後述するように、塗布さ
れたコア層3Xcの表面上に樹脂フィルム5′をラミネ
ートする際に接着層の膜厚変動が生じないように、コア
材3Xcを不完全硬化させているが、コア材3Xcを不
完全硬化させるのは必須でなく、この工程は省略するこ
ともできる。例えば、コア層3Xc上に樹脂フィルム
5′をラミネートする際には、ローラによって樹脂フィ
ルム5′を加圧することでコア層3Xc上にラミネート
していくが、樹脂フィルム5′がローラによって加圧さ
れる直前まで、樹脂フィルム5′が接着層としてのコア
層3Xcと接しないように樹脂フィルム5′を保持する
保持機構を設ければ、コア材3Xcを不完全硬化させな
くても接着層の膜厚変動を生じさせないようにしなが
ら、コア層3Xc上に樹脂フィルム5′をラミネートす
ることができる。
【0132】次いで、このようにしてコア材3Xcを不
完全硬化させた後、図8(A)に示すように、コア材3
Xcの表面上に、基体(ベース)となる樹脂フィルム
(樹脂製フィルム部材,ベースフィルム)5′を、気泡
が入らないように例えばローラ等を用いて加圧しながら
貼着(ラミネート)する。かかる状態で、紫外線をさら
に照射してコア材3Xcを完全硬化させれば、樹脂製の
コア層3Xcが形成されるとともに、樹脂フィルム5′
とコア層3Xcとが接着される。
【0133】その後、このようにして作製される光メモ
リ素子(即ち、紫外線硬化樹脂層としてのクラッド層2
及びコア層3を積層した積層体を樹脂フィルム5,5′
で挟んだ構造体)は、図8(B)に示すように、これら
の樹脂フィルム5,5′によって支持しながら、積層体
と樹脂フィルム5,5′を一体として光メモリ素子作製
用ベース基板21から剥離(分離)する。なお、このよ
うに、光メモリ素子作製用ベース基板21から基体とし
ての樹脂フィルム5,5′と積層体とを一体として分離
する工程を、積層体分離工程という。
【0134】そして、このようにして光メモリ素子作製
用ベース基板21から剥離した光メモリ素子4′に入射
端面を形成し、さらに保護フィルムを貼ったり、樹脂コ
ートしたりする等の工程を経て、例えば光メモリカード
等の光メモリ媒体が作製される。以上の説明において、
コア材3、クラッド材2の塗布方法には、例えば、スピ
ンコート法,ブレードコート法,グラビアコート法,ダ
イコート法等があるが、塗布膜厚と均一性を満足すれば
どのような塗布方法を用いてもよい。
【0135】なお、クラッド層2は上記説明のように1
層として形成しても良いが、膜厚を安定させるために2
層に分けて形成しても良い。このように、本実施形態で
は、積層されたコア層3とクラッド層2とがいずれも樹
脂製で、しかも、凹凸の形成されるコア層(コア材)3
に光や熱等で硬化しうる硬化性樹脂を用いているので、
従来のようにフォトレジストの露光,現像処理等を用い
なくても、スタンパからの転写によって、コア層3とク
ラッド層2との界面に容易に所望形状の凹凸部6を形成
することが可能になる。
【0136】ここで、このようにして作製される光メモ
リ素子4には、情報記録領域(即ち、樹脂製コア層3と
樹脂製クラッド層2との両層の界面に設けられる情報用
凹凸部6が形成されている領域)に記録されている情報
を読み出すための入射光(再生光)を樹脂製コア層3へ
導くための入射端面(入射光導入端面)が形成される。
【0137】ここでは、円形スタンパを用いて作製され
る光メモリ素子4から所望の大きさになるように切り出
した個々の光メモリ素子4の90度(光導波路部材32
3の表面とのなす角度が90度)の端面を入射端面(9
0度入射端面)としている。なお、入射光を樹脂製コア
層3へ導くための入射端面は、これに限られるものでは
なく、種々のものが考えられる。例えば、光メモリ素子
4の一方の端面を45度(光導波路部材の表面とのなす
角度が45度)に切断し、必要に応じて反射膜を形成し
てミラー端面(傾斜端面,マイクロミラー)とし、この
ミラー端面を入射端面(45度入射端面)としても良
い。この場合、光メモリ素子4の表面に対して垂直な方
向から、この45度入射端面に向かって光を入射させ、
45度入射端面で反射させて入射光を樹脂製コア層3へ
と導くことになる。
【0138】このようにして作製された光メモリ素子4
では、例えば、光導波路としてのコア層3に入射端面を
介して光を導入すると、その導入光が界面の凹凸部分で
散乱しながら伝播する。このときの散乱光は導入光に対
して上下方向(交差する方向)のそれぞれに伝搬(透
過)していき、最終的に光メモリ素子の両面部から外部
へ放出され、凹凸パターンに応じた画像が結像すること
になる。
【0139】なお、コア層3,クラッド層2の膜厚につ
いては、コア層3,クラッド層2が光導波路として機能
するだけの膜厚であればよく、例えば、使用光波長域が
可視光の波長域であれば、コア層3はおおよそ0.5〜
3.0μm程度になると考えられる。この場合、クラッ
ド層2の膜厚に関しては特に制限は無いが、全体の厚さ
を薄くすることを考慮すれば、100μm以下にするの
が好ましい。あえて下限を規定するなら、0.1μm以
上になると思われる。
【0140】また、光メモリ素子4の厚さは、強度を得
るために約0.3mm以上とするのが好ましい。より好
ましくは約0.5mm以上とする。ただし、光カード等
の光メモリ(情報記録媒体)としての携帯性を考慮すると
約5mm以下とするのが好ましい。より好ましくは約3
mm以下とする。さらに、コア層3の積層数は、光メモ
リ素子4の記録容量を上げるためにはできるだけ多く積
層するのが好ましく、例えば10層以上積層するのが好
ましい。ただし、あまり多く積層すると厚くなりすぎ、
素子も反りやすくなってしまうため、例えば200層以
下とするのが好ましい。
【0141】また、上述のものでは、薄膜基体としての
樹脂フィルム5として、枚葉のフィルムを用いた方式を
説明したが、連続フィルムによる実施も可能である。フ
ィルム上へのコア、クラッド材のダイコータ、マイクロ
グラビア、バーコータ等による塗布、スタンパを加圧し
た状態でのコア、クラッド材の硬化等のプロセスを組み
合わせることにより、支持体上にクラッド/コア部材を
積層した構造体を作製することができる。また、スタン
パとしてロールに巻き取り可能な形に加工したロールス
タンパを用いることにより、スタンパからの転写プロセ
スの生産性を向上させることも可能である。
【0142】したがって、本実施形態にかかる光メモリ
素子によれば、コア層3の撓み量が小さくなり、より確
実に再生光をコア層3の情報領域の全域に同時に入射さ
せることができるようになるため、正確な再生像が得ら
れるという利点がある。なお、上述の実施形態では、コ
ア層3に光透過性スタンパ13をラミネートして凹凸パ
ターンを転写(これをコア転写,コア層転写法という)
しているが、これに限られるものではなく、クラッド層
2に光透過性スタンパ(樹脂スタンパ,フィルムスタン
パ)をラミネートして凹凸パターンを転写(これをクラ
ッド転写,クラッド層転写法という)するようにしても
良い。
【0143】このクラッド転写により製造された光メモ
リ素子によって出力される画像を、コア転写により製造
された光メモリ素子によって出力される画像と比べる
と、クラッド転写により製造された光メモリ素子の出力
画像ではホログラムの虚像が観察されず(例えば像が2
重に見える現象がなくなる)、画質が優れたものとな
る。
【0144】ここで、コア層の方がクラッド層よりも薄
いため、ラミネート時に膜厚変動しにくく、ラミネート
条件を広く選べるという点では、上述の実施形態におけ
るコア転写の方が好ましい。しかし、ラミネート条件を
最適なものとすれば、クラッド層転写方法によっても良
好な転写を行なえるようになる。
【0145】このため、このようにしてラミネート条件
を設定すれば、クラッド層の厚さが厚くても薄くても
(厚さにかかわらず)、良好な転写を行なえるため、ク
ラッド層は厚いまま転写することもできるし、又は、ま
ず所定の厚さのクラッド層を硬化させた上に、転写用に
薄くクラッド材を塗布し、この薄く塗布されたクラッド
材に転写することもできることになる。
【0146】
【実施例】[実施例1]まず、以下のように、クラッド
材の調製を行った。ウレタンアクリレートオリゴマー
(1分子あたりのウレタン結合:約14個、破断伸度:
90%)を40重量部、トリメチロールプロパントリア
クリレート(共栄社製)20重量部、1,6−ヘキサン
ジオールジアクリレート(共栄社製)40重量部、2−
ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−
オン(チバガイギー社製ダロキュア1173)7重量部
をフラスコ中にてラボミキサーを用いて均一に混合し
て、クラッド材として用いる組成物を得た。
【0147】なお、破断伸度は、引張試験機を用いて、
20℃,65%RH、引張速度10mm/分にて測定し
た。組成物全体に対するウレタン結合量を窒素元素分析
法によって測定したところ、1.1重量%であった。こ
れは、硬化後も同様である。次に、以下のように、コア
材の調製を行った。トリメチロールプロパントリアクリ
レート(共栄社製)20重量部、ビスフェノールFエト
キシ変性ジアクリレート(日本化薬社製;カヤラッドR
−712)20重量部、ジシクロペンタジエニルジアク
リレート20重量部、1,6−へキサンジオールジアク
リレート(共栄社製)40重量部、2−ヒドロキシ−2
−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバガイ
ギー社製ダロキュア1173)7重量部をフラスコ中に
てラボミキサーを用いて均一に混合して、コア材として
用いる組成物を得た。
【0148】表面に画像情報に応じた凹凸形状を有す
る、金属ニッケルからなるスタンパ上に、上記クラッド
材(屈折率=1.49)を塗布した後、紫外線を800
mJ/cm2照射して硬化させ、5μm厚のクラッド層
を形成した。このクラッド層上に、上記コア材(屈折率
n=1.49)を塗布した後、厚さ100μmのアート
ンフィルム部材(ジェイエスアール株式会社製)を、ゴ
ムローラで圧着しながら、ゆっくりと貼着した。この上
から紫外線を800mJ/cm2照射して硬化させ、
1.8μm厚のコア層を形成し、フィルム部材をコア/
クラッド層と接着した。
【0149】そして、スタンパからクラッド層とコア層
とアートンフィルムとを一体に分離し、光透過性スタン
パを作製した。次に、1.6mm厚のガラス基板上に上
記クラッド材であるアクリル系紫外線性硬化樹脂(屈折
率n=1.49)を塗布した後、紫外線を800mJ/
cm2照射して硬化させ、5μm厚のクラッド層を形成
した。
【0150】このクラッド層上に、アクリル系紫外線硬
化性樹脂からなる上記コア材(屈折率n=1.49)を
塗布した後、厚さ100μmのアートンフィルム部材
(ジェイエスアール株式会社製)を、ゴムローラで圧着
しながら、ゆっくりと貼着した。この上から紫外線を8
00mJ/cm2照射して、フィルム部材をコア/クラ
ッド層と接着した。
【0151】このフィルム部材上に、アクリル系紫外線
硬化性樹脂からなる上記コア材(屈折率n=1.49)
を塗布した後、紫外線を2400mJ/cm2照射して
硬化させ、1.8μm厚のコア層を形成した。その上
に、アクリル系紫外線硬化性樹脂からなる上記クラッド
材(屈折率n=1.49)を塗布した後、紫外線を80
0mJ/cm2照射して硬化させ、5μm厚のクラッド
層を形成した。
【0152】さらに、アクリル系紫外線硬化性樹脂から
なる上記クラッド材(屈折率n=1.49)を塗布した
後、光透過性スタンパを、転写面がクラッド材に接する
向きに、ゴムローラで圧着しながら、ゆっくりと貼着し
た。この上から、紫外綿を10mJ/cm2照射して、
クラッド層を部分的に不完全に硬化(一部不完全硬化)
させた後、光透過性スタンパのみを剥離した。
【0153】その後、さらに紫外線を800mJ/cm
2照射して、クラッド層を完全に硬化させた。この結
果、12μm厚のクラッド層が形成された。このクラッ
ド層上に、アクリル系紫外線硬化性樹脂からなる上記コ
ア材(屈折率n=1.49)を塗布した後、紫外線を2
400mJ/cm2照射して硬化させ、1.8μm厚の
コア層を形成した。なお、形成したコア層、クラッド層
の屈折率はそれぞれ1.52,1.51であった。
【0154】次に、上記クラッド材であるアクリル系紫
外線硬化性樹脂(屈折率n=1.49)を塗希した後、
紫外線を800mJ/cm2照射して硬化させ、12μm
厚のクラッド層を形成した。最後に、ガラス基板からア
ートンフィルム上に構成された1層構造の積層体(光導
波路部材)を剥離して、光メモリ素子を作製した。
【0155】これを、ダイシングソーを用いて、縦2c
m、横2cmの大きさに切断し、このサンプルの所定の
方向からレーザ光を導入し、評価を行った。ここでは、
レーザ光は、波長が680nm、強度が約5mWの半導
体レーザで、レンズを組み合わせて光束を縦が5μm、
横が約1cmに絞って、この光束がコア層に入るように
調整を行った。各層でデータが描画されている領域の幅
は26.5mmであった。
【0156】まず、サンプルを平坦にするためのクラン
プ機構は用意せずに、測定を行なった。その結果、サン
プルの反りが大きく、データ描画領域幅に渡って、コア
層にレーザ光を入射させることができず、レーザ光が入
射したコア部に対応する画像(所期の画像の一部)しか
観察することができなかった。コア層の撓み量を測定し
たところ、2300μmであった。入射レーザ幅が4μ
m、コア厚が1.8μmであるため、許容されるコア層
の撓み量は2.2μmである。測定結果より、コア層の
撓み量が許容範囲に収まっていないことが分かる。
【0157】次に、クランプ機構により、0.196N
のクランプ力を加え、サンプルを平坦にし、コア層の撓
み量を小さく抑えた状態で読み取りを行った。その結
果、レーザ光はコア層内を伝播し、凹凸によってわずか
に散乱された光はコア層と垂直方向に透過して、結像し
た。この像を直接CCD上に投影して観察し、所期の画
像(テストパターン)であることを確認した。コア層の
撓み量を測定したところ、1.2μmであった。クラン
プ機構により、コア層の撓み量が許容範囲内に収まった
ことが分かる。
【0158】この光メモリ素子の曲げ剛性を測定したと
ころ、7.25×10-6N・m2であった。また、弾性
係数は、2.25×109Paであった。さらに、アー
トンフィルムの弾性係数の値2.16×109Paを用
いて計算により求めた、光導波路部材(積層体)の曲げ
剛性は3.7×10-6N・m2、弾性係数が1.86×
109Paであった。 [実施例2]まず、実施例1と同様にして、クラッド
材、コア材の調整を行なった。
【0159】表面に画像情報に応じた凹凸形状を有す
る、金属ニッケルからなるスタンパ上に、上記クラッド
材(屈折率n=1.49)を塗布した後、紫外線を80
0mJ/cm2照射して硬化させ、5μm厚のクラッド
層を形成した。このクラッド層上に、上記コア材(屈折
率n=1.49)を塗布した後、厚さ100μmのアー
トンフィルム部材を、ゴムローラで圧着しながら、ゆっ
<りと貼着した。
【0160】この上から紫外線を800mJ/cm2
射して硬化させ、1.8μm厚のコア層を形成し、フィ
ルム部材をコア/クラッド層と接着した。そして、スタ
ンパからクラッド層とコア層とアートンフィルムとを一
体に分離し、光透過性スタンパを作製した。次に、1.
6mm厚のガラス基板上に上記クラッド材であるアクリ
ル系紫外線硬化性樹脂(屈折率n=1.49)を塗布し
た後、紫外線を800mJ/cm2照射して硬化させ、
5μm厚のクラッド層を形成した。
【0161】このクラッド層上に、アートンフィルム部
材(ジェイエスアール株式会社製)をゴムローラで圧着
しながら、ゆっくりと貼着した。この上から紫外線を8
00mJ/cm2照射して、フィルム部材をコア/クラ
ッド層と接着した。このフィルム部材上に、アクリル系
紫外線硬化性樹脂からなる上記コア材(層折率n=1.
49)を塗布した後、紫外線を2400mJ/cm2
射して硬化させ、1.8μm厚のコア層を形成した。
【0162】その上に、アクリル系紫外線硬化性樹脂か
らなる上記クラッド材(屈折率n=1.49)を塗布し
た後、光透過性スタンパを、転写面がクラッド材に接す
る向きに、ゴムローラで圧着しながら、ゆっくりと貼着
した。この際、ゴムローラとガラス基板との距離が一定
になるように制御し、クラッド厚が均一になるように調
整した。
【0163】この上から、紫外線を10mJ/cm2
射して、クラッド層を部分的に不完会に硬化(一部不完
全硬化)させた後、光透過性スタンパのみを剥離した。
その後、さらに紫外線を800mJ/cm2照射して、
クラッド層を完全に硬化させた。この結果、15μm厚
のクラッド層が形成された。このクラッド層上に、アク
リル系紫外線硬化性樹脂からなるコア材(屈折率n=
1.49)を塗布した後、紫外線を2400mJ/cm
2照射して硬化させ、1.8μm厚のコア層を形成し
た。なお、形成したコア層、クラッド層の屈折率はそれ
ぞれ1.52,1.51であった。この工程を25回繰
り返すことにより、25層の多層構造の積層体を作製し
た。
【0164】次に、上記クラッド材であるアクリル系紫
外線硬化性樹脂(屈折率n=1.49)を塗布した後、
紫外線を800mJ/cm2照射して硬化させ、15μ
m厚のクラッド層を形成した。このクラッド層上に、ア
クリル系紫外線硬化性樹脂からなる上記コア材(屈折率
n=1.49)を塗布した後、厚さ100μmのアート
ンフィルム部材(ジェイエスアール株式会社製)を、ゴ
ムローラで圧着しながら、ゆっくりと貼着した。この上
から紫外線を800mJ/cm2照射して、フィルム部
材をコア/クラッド層と接着した。
【0165】最後に、ガラス基板から、アートンフィル
ムに挟まれた25層構造の積層体を剥離し、光メモリ素
子を作製した。これを、ダイシングソーを用いて、縦2
cm、横2cmの大きさに切断し、このサンプルの所定
の方向からレーザ光を導入して、評価を行った。ここで
は、レーザ光は、波長が680nm、強度が約5nWの
半導体レーザで、レンズを組み合わせて光束を縦が4μ
m、横が約1cmに絞って、この光束がコア層に入るよ
うに調整を行った。各層でデータが描画されている領域
の幅は3mmであった。
【0166】まず、サンプルを平坦にするためのクラン
プ機構は用意せずに、コア層の撓み量を測定したとこ
ろ、125μmであった。入射レーザ幅が4μm、コア
厚が1.8μmであるため、許容されるコア層の撓み量
は2.2μmである。測定結果より、コア層の撓み量が
許容範囲に収まっていないことが分かる。次に、クラン
プ機構によりサンプルに、0.196Nのクランプ力を
加えて、コア層の撓み量を小さく抑えた状態で、測定を
行った。この結果、レーザ光はコア層内を伝播し、凹凸
によってわずかに散乱された光はコア層と垂直方向に透
過して、結像した。この像を直接CCD上に投影して観
察し、所期の画像(テストパターン)であることを確認し
た。
【0167】また、レーザ光を導入するコア層を変える
ことによって、25層あるコア層に記録されたこれらの
画像が互いに影響を与えることなく、それぞれ独立に読
み出せることを確認した。コア層の撓み量を測定したと
ころ、1.2μmであった。クランプ機構により、コア
層の撓み量が許容範囲内に収まったことが分かる。この
光メモリ素子の曲げ剛性を測定したところ、5.096
×10-4N・m2であった。また、弾性係数は、2.0
6×109Paであった。さらに、アートンフィルムの
弾性係数の値2.16×109Paを用いて計算により
求めた、積層体(光導波路部材)の曲げ剛性は1.08
×10-4N・m2、弾性係数は1.86×109Paであ
った。
【0168】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の光メモリ
素子によれば、読取装置の小型化、低消費電力化を実現
しながら、再生光をコア層の情報領域の全域に同時に入
射することができ、正確な再生像が得られるようになる
という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる光メモリ素子のコ
ア層の撓み量を説明するための模式図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる光メモリ素子の構
成を説明するための模式図である。
【図3】樹脂製の光メモリ素子を作製する場合の課題を
説明するための模式図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる光メモリ素子の全
体構成を説明するための模式図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる光透過性スタンパ
の全体構成を示す模式的断面図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる光透過性スタンパ
の製造方法を示す模式的断面図であって、(A)はクラ
ッド層及びコア層を形成する工程、(B)は樹脂フィル
ムを接着する工程、(C)は光透過性スタンパを剥離
(分離)する工程、(D)はオーバキュア処理を行なう
工程をそれぞれ示している。
【図7】本発明の一実施形態にかかる光メモリ素子の製
造方法を示す模式的断面図であって、(A)は光メモリ
素子作製用ベース基板上に樹脂フィルムを接着する工
程、(B)は樹脂フィルム上にコア層を形成する工程、
(C)はコア層上にクラッド層及びコア層を形成する工
程、(D)は光透過性スタンパから凹凸パターンを転写
する工程、(E)は光透過性スタンパを剥離(分離)す
る工程をそれぞれ示している。
【図8】本発明の一実施形態にかかる光メモリ素子の製
造方法により製造される光メモリ素子の全体構成を示す
模式的断面図であって、(A)は光メモリ素子作製用ベ
ース基板上に形成した状態、(B)は光メモリ素子作製
用ベース基板から剥離(分離)した状態をそれぞれ示し
ている。
【図9】従来の光メモリ素子の動作原理を説明するため
の模式的斜視図である。
【図10】従来の光メモリ素子の動作原理を説明するた
めの模式的斜視図である。
【符号の説明】
1 金属製スタンパ(硬質スタンパ) 2 クラッド層(クラッド材) 2X クラッド層(接着層) 3 コア層(コア材,記録層,光導波路) 3Xa,3Xb,3Xc コア層(接着層) 232 光導波路部材(1層分の光メモリ素子,積層
体) 4 光メモリ素子(スラブ型光導波路デバイス) 5,5′ 樹脂フィルム(基体、薄膜基体) 6 情報用凹凸部 7 入射端面 10 クラッド層(クラッド材,スタンパ層) 11 コア層(コア材,接着層,接着剤) 12 樹脂フィルム(基体,基体層) 13 光透過性スタンパ(光メモリ素子作製用スタン
パ) 21 光メモリ素子作製用ベース基板(ベース材)

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コア層と、前記コア層の両面に積層され
    たクラッド層とを備え、前記コア層と前記クラッド層と
    の界面の少なくとも一方に情報用凹凸部を有する光導波
    路部材を1個又は複数個有してなる積層体に、前記情報
    用凹凸部の情報を再生する再生光を前記コア層へ導入す
    るための入射端面を形成してなる光メモリ素子であっ
    て、 曲げ剛性が、0.294N・m2以下であることを特徴
    とする、光メモリ素子。
  2. 【請求項2】 コア層と、前記コア層の両面に積層され
    たクラッド層とを備え、前記コア層と前記クラッド層と
    の界面の少なくとも一方に情報用凹凸部を有する光導波
    路部材を1個又は複数個有してなる光導波路積層体に、
    前記情報用凹凸部の情報を再生する再生光を前記コア層
    へ導入するための入射端面を形成してなる光メモリ素子
    であって、 弾性係数が、9.8×109Pa以下であることを特徴
    とする、光メモリ素子。
  3. 【請求項3】 前記コア層及び前記クラッド層が、硬化
    樹脂からなることを特徴とする、請求項1又は2記載の
    光メモリ素子。
  4. 【請求項4】 前記硬化樹脂が、紫外線硬化樹脂である
    ことを特徴とする、請求項3記載の光メモリ素子。
  5. 【請求項5】 前記光導波路積層体に薄膜基体が積層さ
    れてなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1
    項に記載の光メモリ素子。
  6. 【請求項6】 前記薄膜基体が、樹脂からなることを特
    徴とする、請求項5記載の光メモリ素子。
  7. 【請求項7】 前記光導波路積層体を、前記薄膜基体で
    挟んでなることを特徴とする、請求項5記載の光メモリ
    素子。
  8. 【請求項8】 前記光導波路積層体の曲げ剛性が、0.
    274N・m2以下であることを特徴とする、請求項5
    記載の光メモリ素子。
  9. 【請求項9】 前記光導波路積層体の弾性係数が、9.
    8×109Pa以下であることを特徴とする、請求項5
    記載の光メモリ素子。
  10. 【請求項10】 前記コア層及び/又は前記クラッド層
    が、硬化後の破断伸度が10〜500%の範囲内である
    オリゴマーを含有する硬化性樹脂を硬化させてなること
    を特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の光
    メモリ素子。
  11. 【請求項11】 前記クラッド層が、硬化後の破断伸度
    が10〜500%の範囲内であるオリゴマーを含有する
    硬化性樹脂を硬化させてなることを特徴とする、請求項
    1〜9のいずれか1項に記載の光メモリ素子。
  12. 【請求項12】 前記コア層及び/又は前記クラッド層
    が、ウレタン結合を有するオリゴマーを含有する硬化性
    樹脂を硬化させてなることを特徴とする、請求項1〜1
    1のいずれか1項に記載の光メモリ素子。
  13. 【請求項13】 前記クラッド層が、ウレタン結合を有
    するオリゴマーを含有する硬化性樹脂を硬化させてなる
    ことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記
    載の光メモリ素子。
  14. 【請求項14】 前記光導波路積層体中に含まれるウレ
    タン結合の量が、0.1〜10重量%の範囲内であるこ
    とを特徴とする、請求項12又は13記載の光メモリ素
    子。
  15. 【請求項15】 前記クラッド層中に含まれるウレタン
    結合の量が、0.1〜10重量%の範囲内であることを
    特徴とする、請求項12又は13記載の光メモリ素子。
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