JP3704273B2 - 車輌用内装表皮材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車、鉄道車輌等の車輌の座席シート用表皮材、自動車のドア部内装表皮材等の車輌用内装表皮材及びその製造方法に関する。
【0002】
なお、この明細書において、「伸度」とはJIS L1095−1999の9.5(単糸引張強さ及び伸び率)で規定される試験法(試験機の種類:定速伸長形)で引張試験を行った時の切断時の伸び率(%)のことを意味するものである。
【0003】
【従来の技術】
自動車等の車輌の座席シート用表皮材は、一般に乗降の際の摩擦や接触等によってその表面に糸切れや糸抜けが生じることがあり、特に乗降者の着衣や持ち物等に比較的鋭利な部分があってそれに接触等した場合には糸切れや糸抜けが生じやすいことから、このような座席シート用表皮材としては糸切れや糸抜けが生じ難いものであることが要求されるが、従来このような要求に応えるものとして平織等からなる織物地の表面に樹脂をコーティングしたものが公知である。
【0004】
一方、特開平11−350297号公報には、織物の構成糸の少なくとも一部を、芯部の融点が高く鞘部の融点が低いものとなされたポリエーテルエステル系芯鞘型複合弾性糸で構成し、熱処理によって鞘部を溶融させて織物組織内で接する他の糸と熱融着させたものが記載されている。このような構成とすれば、鞘部の熱融着によって隣接する他の糸や交錯する他の糸と融着されるので、糸切れ防止性、糸抜け防止性に優れたものとなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者の従来技術では、表面の樹脂コーティングによって表層全体が硬くなってしまい、シート表皮材としての風合いやドレープ性が顕著に低下するという難点があった。
【0006】
また、後者の技術では、芯鞘型複合弾性糸の表層の全てが熱融着性の鞘部で覆われているために、熱処理後の織物において芯鞘型複合弾性糸は隣接する他の糸と全面的に融着されて芯鞘型複合弾性糸の周辺部が硬いものとなってしまい、即ちある程度の領域をもって硬い部分が生じてしまい、これにより織物全体として伸びが得られない、しわが発生しやすいという問題があった。
【0007】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、風合い、ドレープ性に優れると共に、伸び特性が良好で、しわの発生もなく、糸切れ・糸抜け防止性に優れ、かつ裁断時の端面からの糸のほつれを防止することのできる車輌用内装表皮材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者は鋭意研究の結果、織組織の構成糸の少なくとも一部に、熱融着糸と特定の伸び特性を有するストレッチ糸とが合撚された複合糸、又は特定の伸び特性を有するストレッチ糸の周囲に熱融着糸が捲回された複合糸を用いた構成とし、かつ加熱により熱融着糸が融着処理されたものとすることにより、上記所望の車輌用内装表皮材が得られることを見出すに至り、この発明を完成したものである。
【0009】
即ち、この発明に係る車輌用内装表皮材は、織組織からなる車輌用内装表皮材において、前記織組織の構成糸の少なくとも一部が、ポリエステル系熱融着糸と伸度が20〜150%の範囲にあるポリエステル系ストレッチ糸とが合撚されてなる合撚複合糸で構成され、前記熱融着糸が加熱により融着処理され、前記織組織の裏面に裏打ち層が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
また、この発明の別の車輌用内装表皮材は、織組織からなる車輌用内装表皮材において、前記織組織の構成糸の少なくとも一部が、伸度が20〜150%の範囲にあるポリエステル系ストレッチ糸の周囲にポリエステル系熱融着糸が捲回状態に巻き付けられた捲回複合糸で構成され、前記熱融着糸が加熱により融着処理され、前記織組織の裏面に裏打ち層が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
上記いずれの車輌用内装表皮材も、融着処理によって熱融着糸が隣接する他の糸や交錯する他の糸と融着されているので、糸切れ及び糸抜け防止性に優れると共に、裁断時の端面からの糸ほつれの発生も防止される。また、熱融着糸とストレッチ糸とが合撚された合撚複合糸、又はストレッチ糸の周囲に熱融着糸が捲回された複合糸を用いているので、熱融着糸の融着時に隣接する他の糸と全面的に融着されることがなく、部分的に融着されるものとなる。このように融着が部分的になされるので、複合糸の周辺が硬くなることがなく、かつストレッチ糸本来の伸縮性も殆ど損なわれることがなく、ひいては優れた風合いやドレープ性が確保されると共に、織物全体として十分な伸びも得られるし、しわの発生も防止される。更に、ストレッチ糸として伸度が上記特定範囲にあるものを用いているので、部分的融着が施されても複合糸として十分な伸び特性を保持し、ひいては表皮材として優れた風合いが確保されると共に優れた伸びも確保され得る。即ち、この発明は、融着が部分的になされることによる効果と、複合糸を構成するストレッチ糸として上記特定のものを用いることによる効果とが相乗的に相俟って、優れた風合いやドレープ性の確保、十分な伸びの確保及びしわ発生の防止が可能となったものである。更に、前記織組織の裏面に裏打ち層が設けられているので、形態安定性を向上できると共に裁断性にも優れたものとなし得る。
【0012】
また、上記後者の捲回複合糸を用いた構成では、ストレッチ糸自体は特に撚りがかけられているものでないから該ストレッチ糸本来の伸縮特性が十分に発揮されるものとなし得て、風合いやドレープ性を一層向上させることができる利点がある
【0013】
上記織組織が、空隙部を介して互いに離間して配置された表側織組織と裏側織組織とからなる袋状二重組織部を少なくとも一部に備えた織組織であり、表側織組織の構成糸の少なくとも一部が前記複合糸で構成され、前記熱融着糸が加熱により融着処理されている構成を採用する場合には、袋状二重組織部を備えることによって意匠性を向上できると共に該袋状二重組織部において一層柔らかい風合いが付与されるものとなるのであるが、袋状二重組織部の表側織組織の構成糸の少なくとも一部が上記複合糸で構成され、かつその熱融着糸が加熱により融着処理されているので、このような袋状二重組織部を有する構成であっても、上述した作用によって、風合い、ドレープ性に優れると共に、伸び特性が良好で、しわの発生もなく、糸切れ・糸抜け防止性に優れ、かつ裁断時の端面からの糸のほつれを防止することのできる車輌用内装表皮材となし得る。
【0014】
上記袋状二重組織部の空隙部にストレッチ糸等からなる挿入糸が配置されているのが、一層柔らかい風合いを付与できると共に十分なボリューム感が得られる点で、好ましい。
【0015】
複合糸における熱融着糸の繊度は30〜200デシテックスであり、ストレッチ糸の繊度は50〜2000デシテックスであるのが、好ましい。熱融着糸の繊度が上記範囲にあるので融着部における融着を確実なものとなし得ると共に、ストレッチ糸の繊度が上記範囲にあるので部分的融着部による悪影響を受けることなくそれ本来の良好な伸縮特性が十分に発揮されるものとなる。
【0016】
複合糸における熱融着糸/ストレッチ糸の重量比は1/1〜1/10の範囲とするのが好ましい。このような構成比率とすれば、風合い、ドレープ性を十分に確保しつつ、糸切れ・糸抜け防止性を一層向上し得る。
【0017】
複合糸の撚り回数又は捲回数は100〜800回/100cmであるのが、ストレッチ糸本来の伸縮特性が十分に発揮され得る状態となしつつ、融着による接着力をより向上し得て糸切れ・糸抜け防止性を一層向上させることができる。
【0018】
この発明に係る車輌用内装表皮材の製造方法は、構成糸の少なくとも一部が、ポリエステル系熱融着糸と伸度が20〜150%の範囲にあるポリエステル系ストレッチ糸とが合撚されてなる合撚複合糸で構成された織組織を加熱することによって前記熱融着糸の融着処理を施す工程と、前記融着処理後の織組織の裏面に裏打ち層を形成する工程とを包含することを特徴とするものである。
【0019】
また、この発明の別の車輌用内装表皮材の製造方法は、構成糸の少なくとも一部が、伸度が20〜150%の範囲にあるポリエステル系ストレッチ糸の周囲にポリエステル系熱融着糸が捲回状態に巻き付けられた捲回複合糸で構成された織組織を加熱することによって前記熱融着糸の融着処理を施す工程と、前記融着処理後の織組織の裏面に裏打ち層を形成する工程とを包含することを特徴とするものである。
【0020】
先に裏打ち層の形成を行うとその際の熱によって熱融着糸の融着が一部不十分な形で起こる可能性があり、良好な部分的融着をなし得ないことがあるが、上記いずれの製造方法も先に融着処理を施した後に裏打ち層の形成を行うものであるから、熱融着糸の良好な部分的融着を行わせることができる。
【0021】
上記融着処理時の加熱温度は80〜180℃の範囲にあるのが、熱融着糸の部分的融着を良好な状態でかつ確実に行わせることができる点で、好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
この発明に係る車輌用内装表皮材の第1実施形態を図1に示す。この車輌用内装表皮材(1)は、朱子織りで織成された織組織(4)の裏面に裏打ち層(5)が形成されたものであり、該織組織(4)の緯糸(16)の一部が、伸度が20〜150%の範囲にあるストレッチ糸(11)の周囲に1本の熱融着糸(10)が捲回状態に巻き付けられた捲回複合糸(3)(図4参照)で構成され、かつ熱融着糸(10)が加熱により融着処理されてなるものである。
【0023】
また、図2に示す第2実施形態に係る車輌用内装表皮材(1)は、経糸(15)と緯糸(16)が飛びの長い形態で(多数本の緯糸又は経糸を跨いでから緯糸又は経糸と交絡する態様で)織成された織組織(4)の裏面に裏打ち層(5)が形成されたものであり、該織組織(4)の緯糸(16)の一部及び経糸(15)の一部が、伸度が20〜150%の範囲にあるストレッチ糸(11)の周囲に1本の熱融着糸(10)が捲回状態に巻き付けられた捲回複合糸(3)(図4参照)で構成され、かつ熱融着糸(10)が加熱により融着処理されてなるものである。
【0024】
従来、朱子織りによる織組織の裏面に裏打ち層を単に形成しただけのものでは、朱子織り組織が、緯糸は表面側に多く露出する一方、経糸は裏面側に多く露出する組織構造であるために、裏面側の裏打ち層が緯糸に付着する面積が非常に少なくなり、従って糸切れ・糸抜け防止性に劣るという問題があり、一方経糸と緯糸が飛びの長い形態で織成された織組織の裏面に裏打ち層を単に形成しただけのものでは、経糸と緯糸のいずれも長い飛び箇所において裏打ち層が付着しないために、やはり糸切れ・糸抜け防止性に劣るという問題があったのであるが、上記第1実施形態及び第2実施形態の構成によれば、次のような作用によって、風合い、ドレープ性を何ら損なうことなく、糸切れ・糸抜け防止性を十分に確保することができたものである。
【0025】
即ち、第1実施形態では、緯糸(16)の一部として用いられている捲回複合糸(3)の熱融着糸(10)が、融着処理によってこれと並んで隣接する他の緯糸や交錯する経糸と融着されるので、糸切れ及び糸抜け防止性に優れたものとなし得ると共に、裁断時の端面からの糸のほつれも効果的に防止される。また、第2実施形態では、緯糸(16)の一部および経糸(15)の一部として用いられている捲回複合糸(3)の熱融着糸(10)が、融着処理によってこれと並んで隣接する他の緯糸又は経糸や、これと交錯する経糸又は緯糸と融着されるので、糸切れ及び糸抜け防止性に優れたものとなし得ると共に、裁断時の端面からの糸のほつれも効果的に防止される。
【0026】
かつ、上記複合糸としては、ストレッチ糸(11)の周囲に熱融着糸(10)が捲回状態に巻き付けられた捲回複合糸(3)を用いているので、熱融着糸(10)の融着時に隣接する他の糸と全面的に融着されることがなく、部分的に融着されるものとなる。このように融着が部分的になされるので、捲回複合糸(3)の周辺が硬くなることがなく、またストレッチ糸(11)本来の伸縮性も殆ど損なわれることがなく、ひいては風合いやドレープ性に優れると共に、織物全体として十分な伸びも得られるし、しわの発生も効果的に防止される。
【0027】
更に、ストレッチ糸(11)として伸度が20〜150%の範囲にあるものを用いているので、該ストレッチ糸(11)の周囲に熱融着糸(10)が捲回された態様で部分的融着が施されても複合糸(3)として十分な伸び特性を保持し、ひいては表皮材(1)として優れた風合いを確保できると共に優れた伸びも確保することができる。
【0028】
加えて、織組織(4)の裏面に裏打ち層(5)が設けられているので、形態安定性に優れると共に、裁断性も良好である。
【0029】
なお、図1及び図2においては、構成の理解を容易ならしめるために、敢えて緯糸(16)間及び経糸(15)間の間隔をあけて模式図を記載しているが、実際には緯糸(16)同士および経糸(15)同士の間隔は接触し合う程度に詰まっているか若しくは相互に接触している。以下の図3(イ)においても同様である。
【0030】
図3にこの発明に係る車輌用内装表皮材の第3実施形態を示す。この車輌用内装表皮材(1)は、空隙部(20a)を介して互いに離間して配置された表側織組織(21)と裏側織組織(22)とからなる袋状二重組織部(20)を備えた織組織(4)の裏面に裏打ち層(5)が形成されると共に、前記空隙部(20a)にストレッチ糸からなる挿入糸(23)が配置されたものであり、前記袋状二重組織部(20)の表側織組織(21)を構成する緯糸(16)として、伸度が20〜150%の範囲にあるストレッチ糸(11)の周囲に1本の熱融着糸(10)が捲回状態に巻き付けられた捲回複合糸(3)(図4参照)が用いられ、かつ熱融着糸(10)が加熱により融着処理されてなるものである。前記袋状二重組織部(20)を構成する表側織組織(21)と裏側織組織(22)は、いずれも朱子織りで織成されたものである。また、織組織(4)全体は、表側の経緯糸と裏側の経緯糸とが任意の位置で表裏交替して接結される風通織りによるものである。
【0031】
従来、袋状二重組織部を備えた織組織の裏面に裏打ち層を単に形成しただけのものでは、裏面側の裏打ち層が表側織組織の構成糸に付着することが殆どなく、特に空隙部に挿入糸が配置された構成である場合には全く付着せず、従って糸切れ・糸抜け防止性に劣るという問題があったのであるが、上記第3実施形態の構成によれば、次のような作用によって、風合い、ドレープ性を何ら損なうことなく、糸切れ・糸抜け防止性を十分に確保することができる。
【0032】
即ち、表側織組織(21)の緯糸(16)として用いられている捲回複合糸(3)の熱融着糸(10)が、融着処理によってこれと並んで隣接する他の緯糸(捲回複合糸)やこれと交錯する経糸(非熱融着糸)と融着されるので、糸切れ及び糸抜け防止性に優れたものとなし得ると共に、裁断時の端面からの糸のほつれも効果的に防止される。かつ、上記複合糸として、ストレッチ糸(11)の周囲に熱融着糸(10)が捲回状態に巻き付けられた捲回複合糸(3)を用いているので、熱融着糸(10)の融着時に隣接する他の糸(捲回複合糸である緯糸)や経糸と全面的に融着されることがなく、部分的に融着されるものとなる。このように融着が部分的になされるので、捲回複合糸(3)の周辺が硬くなることがなく、またストレッチ糸(11)本来の伸縮性も殆ど損なわれることがなく、ひいては風合いやドレープ性に優れると共に、織物全体として十分な伸びも得られるし、しわの発生も効果的に防止される。
【0033】
更に、ストレッチ糸(11)として伸度が20〜150%の範囲にあるものを用いているので、該ストレッチ糸(11)の周囲に熱融着糸(10)が捲回された態様で部分的融着が施されても複合糸(3)として十分な伸び特性を保持し、ひいては表皮材(1)として優れた風合いを確保できると共に優れた伸びも確保することができる。
【0034】
加えて、織組織(4)の裏面に裏打ち層(5)が設けられているので、形態安定性に優れると共に、裁断性も良好である。
【0035】
また、袋状二重組織部(20)の空隙部(20a)にストレッチ糸からなる挿入糸(23)が配置されているので、一層柔らかい風合いを付与できると共にボリューム感も十分に備えたものとなし得る。また、前記熱融着糸(10)がこの挿入糸(23)に対しても融着するので、糸切れ及び糸抜け防止性をより向上させることができる。
【0036】
なお、上記第1〜第3のいずれの実施形態においても、捲回複合糸(3)としては、図4に示すような、ストレッチ糸(11)の周囲に1本の熱融着糸(10)が捲回状態に巻き付けられたものを用いているが、特にこのような構成のものに限定されるものではない。例えば図5(イ)に示すように、ストレッチ糸(11)の周囲に2本の熱融着糸(10)(10)が相互に交絡する態様で捲回された構成であっても良いし、あるいは図5(ロ)に示すように、ストレッチ糸(11)の周囲に、1本の熱融着糸(10)と1本の非熱融着糸(30)が相互に交絡する態様で捲回された構成であっても良い。また、ストレッチ糸(11)の周囲に捲回する熱融着糸(10)の本数は特に限定されるものではなく、3本以上であっても良い。ただ、5本以上捲回すると、部分的融着ではあっても全面的融着に近似した融着態様となる上にコスト増大を招くので、好ましくない。
【0037】
また、上記第1〜第3のいずれの実施形態においても、複合糸として捲回複合糸(3)を用いているが、該捲回複合糸(3)に代えて、熱融着糸(10)と伸度が20〜150%の範囲にあるストレッチ糸(11)とが合撚されてなる合撚複合糸(2)(図6参照)を用いても良い。この合撚複合糸(2)を用いた場合にも融着が部分的になされるので、前述した捲回複合糸(3)の場合と同様の作用によって、風合い、ドレープ性に優れると共に、伸び特性が良好で、しわの発生もなく、糸切れ・糸抜け防止性に優れ、かつ裁断時の端面からの糸のほつれを防止できる車輌用内装表皮材(1)を得ることができる。
【0038】
更に、上記第1〜第3のいずれの実施形態においても、織組織(4)の構成糸の一部を捲回複合糸(3)で構成するものとしているが、織組織(4)の構成糸(経糸・緯糸)の全てを捲回複合糸(3)又は合撚複合糸(2)で構成するものとしても良い。
【0039】
また、織組織(4)の織構造は、特に限定されず、例えば平織り、朱子織り、綾織り、変化組織等を採用できる。また、織組織(4)は、風通織り等の2重組織などの多層組織に構成されていても良い。
【0040】
この発明において、複合糸(2)(3)を構成するストレッチ糸(11)としては、前述したように、伸度が20〜150%の範囲にあるものを用いる必要があるが、中でも60〜80%の範囲のものを用いるのが、表皮材(1)として一層優れた風合いを得ることができる点で、好ましい。
【0041】
融着糸(10)及びストレッチ糸(11)の素材としては、リサイクル性に優れて環境保全の要請にも十分に応えることができる点で、ポリエステル系のものを採用する。
【0042】
この発明において、合撚複合糸(2)又は捲回複合糸(3)における熱融着糸(10)の繊度は30〜200デシテックスの範囲とし、ストレッチ糸(11)の繊度は50〜2000デシテックスの範囲とするのが好ましい。熱融着糸(10)の繊度が30デシテックス未満では各融着部における融着が不十分なものとなり易く、糸切れ・糸抜け防止性が低下するので好ましくないし、一方繊度が200デシテックスを超えると織物としての伸び特性、風合い、ドレープ性が低下する傾向にあるので好ましくない。また、ストレッチ糸(11)の繊度が50デシテックス未満では部分的融着部からの悪影響を受けやすくそれ本来の良好な伸縮特性が得られ難くなるので好ましくないし、一方繊度が2000デシテックスを超えるとこの太さに対応して熱融着糸の使用量も増やさなければならずコスト増大を招来するので好ましくない。
【0043】
前記複合糸(2)(3)における熱融着糸(10)/ストレッチ糸(11)の重量比は、1/1〜1/10の範囲とするのが好ましい。熱融着糸(10)の重量比率が上記下限より小さくなると、糸切れ・糸抜け防止性が低下する上に、裁断時の端面からの糸ほつれの防止性も低下するので好ましくない。一方熱融着糸(10)の重量比率が上記上限より大きくなると、部分的融着ではあっても全面的融着に近似した融着態様となるために、風合い、ドレープ性が低下する上に、織物としての伸び特性も低下し、更にしわも発生し易くなるので、好ましくない。
【0044】
前記合撚複合糸(2)における撚り回数及び前記捲回複合糸(3)における捲回数はいずれも100〜800回/100cmとするのが望ましい。100回/100cm未満では融着力が低下して、糸切れ・糸抜け防止性を十分に確保できなくなるので、好ましくない。また800回/100cmを超えるとストレッチ糸(11)本来の優れた伸縮特性を十分に発揮させることが困難となって、織物としての風合い、ドレープ性、伸び特性が低下するので、好ましくない。
【0045】
前記複合糸(2)(3)の繊度としては80〜2200デシテックス(T)の範囲に設定されるのが好ましく、また車輌用内装表皮材(1)を構成する経糸(15)としては50〜2000デシテックス、同緯糸(16)としては50〜2000デシテックスの範囲に設定されて、経密度16〜300本/インチ、緯密度16〜200本/インチに織成されるのが、好ましい。
【0046】
更に、この発明の車輌用内装表皮材(1)を構成する糸全体に占める前記複合糸(2)(3)の割合は5〜50重量%の範囲に設定するのが好ましい。5重量%未満では糸切れ・糸抜け防止性が低下する恐れがあるので好ましくないし、一方50重量%を超えても複合糸(2)(3)の使用量の増大に伴ってコスト増大を来すだけであるので好ましくない。中でも、前記割合は7〜20重量%の範囲に設定するのがより望ましい
【0047】
前記裏打ち層(5)としては、特に限定されるものではないが、例えば樹脂組成物又はゴム組成物で形成されたものや、織布、フェルト、ウレタン発泡シート等が挙げられる。
【0048】
前者の樹脂組成物又はゴム組成物で裏打ち層(5)を形成する場合、その形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えばローラーコーティング法、転写法、スプレー法等が挙げられ、中でも生産性、コストの観点からローラーコーティング法を用いて塗布形成するのが好ましい。
【0049】
また、後者の織布、フェルト、ウレタン発泡シート等で裏打ち層(5)を形成する場合には、織組織(4)の裏面に接着剤を用いて貼着する方法(接着ラミネート法)、裏打ちする(積層する)もの(フェルト、ウレタン発泡シート等)を炎で溶解させて織組織(4)の裏面に融着させる方法(フレームラミネート法)、裏打ちするもの(織布、フェルト等)をミシン等によって織組織(4)の裏面に縫合一体化させる方法等が好適に採用される。
【0050】
前記樹脂組成物の樹脂成分としては、アクリル系、ウレタン系、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の樹脂を挙げることができる。また、ゴム組成物のゴム成分としては、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、MBR(メチルメタクリレート−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、あるいは天然ゴム等が挙げられる。
【0051】
また、裏打ち層(5)の乾燥重量は、50〜150g/m2とするのが好ましい。50g/m2未満では裁断性が低下するので、好ましくない。また150g/m2を超えると表皮材の重量を増大させるし、風合いも硬くなるので好ましくない。中でも、裏打ち層(5)の乾燥重量は60〜80g/m2とするのがより好ましい。
【0052】
この発明の車輌用内装表皮材(1)は、次のような製造方法によって製造するのが好ましい。即ち、まず構成糸の少なくとも一部が、ポリエステル系熱融着糸と伸度が20〜150%の範囲にあるポリエステル系ストレッチ糸とが合撚されてなる合撚複合糸で構成された織組織、又は構成糸の少なくとも一部が、伸度が20〜150%の範囲にあるポリエステル系ストレッチ糸の周囲にポリエステル系熱融着糸が捲回状態に巻き付けられた捲回複合糸で構成された織組織を製作し、該織組織を加熱して前記熱融着糸の融着処理を行う。次いで、この融着処理後の織組織の裏面に裏打ち層を形成させる。
【0053】
裏打ち層(5)形成工程を行う前に熱融着糸の融着処理を行うので、熱融着糸の部分的融着を良好な状態で行わせることができ、ひいては糸切れ・糸抜け防止性により優れた車輌用内装表皮材(1)を製造することができる。なお、先に裏打ち層形成を行ってから熱融着糸の融着処理を行うものとしても良いが、この場合には裏打ち層(5)形成の際の熱によって熱融着糸の融着が一部不十分な形で起こる可能性があり、続いて融着処理を行っても良好な部分的融着をなし得ないことがあるので、好ましくない。
【0054】
融着処理時の加熱温度は80〜180℃の範囲とするのが好ましい。このような温度範囲に設定すれば、熱融着糸の部分的融着を良好な状態でかつ確実に行わせることができる。
【0055】
なお、熱融着糸(10)とこれ以外の他の非熱融着糸(ストレッチ糸も含む)との融点差は100℃以上とするのが好ましい。融点差が100℃未満では熱融着糸(10)の融着処理の際に非熱融着糸が一部溶融等により形態変化や物性変化を生じる恐れがあるので好ましくない。
【0056】
なお、上記製造方法は好適な一例を示したに過ぎず、この発明に係る車輌用内装表皮材(1)は、上記製造方法で製造されたものに何ら限定されるものではなく、他の製造方法で製造されたものであっても良い。
【0057】
この発明の車輌用内装表皮材(1)は、自動車、鉄道車輌等の車輌の座席シート用表皮材、自動車のドア部内装表皮材等として用いられるが、風合い、ドレープ性に優れる上に糸切れ・糸抜け防止性にも優れることから、このような性能を特に強く求められる自動車、鉄道車輌等の車輌の座席シート用表皮材として特に好適である。
【0058】
【実施例】
次に、この発明の具体的実施例について説明する。
【0059】
<実施例1>
下記仕様により図1に示すような朱子織り組織からなる車輌の座席シート用表皮材を織成した。なお、織組織を織成し、先に熱融着糸の融着処理を行ったのち、裏打ち層の形成をローラーコーティング法により行った。
【0060】
経密度:101本/インチ
緯密度:78本/インチ(非熱融着糸52本/インチ、捲回複合糸26本/インチ)
経糸:167デシテックスのポリエステルフィラメント糸
緯糸(非熱融着糸):550デシテックスのポリエステルフィラメント糸
緯糸(熱融着糸を有する捲回複合糸):伸度が60%である220デシテックスのストレッチ糸(ポリエステル、融点250℃)の周囲に、55デシテックスの熱融着糸(ポリエステル、融点100℃)が2本捲回状態に巻き付けられた330デシテックスの捲回複合糸(捲回数600回/100cm、熱融着糸/ストレッチ糸の重量比は1/2)
織組織全体に占める複合糸の割合:8.8重量%
融着処理条件:150℃×3分
裏打ち層形成時の温度:130℃
裏打ち層:アクリル系樹脂
<実施例2>
下記仕様により図2に示すような経糸及び緯糸の飛びの長い組織からなる車輌の座席シート用表皮材を織成した。なお、織組織を織成し、先に熱融着糸の融着処理を行ったのち、裏打ち層の形成をローラーコーティング法により行った。
【0061】
経密度:35本/インチ(非熱融着糸28本/インチ、捲回複合糸7本/インチ)
緯密度:35本/インチ(非熱融着糸28本/インチ、捲回複合糸7本/インチ)
経糸(非熱融着糸)および緯糸(非熱融着糸):1100デシテックスのポリエステルフィラメント糸
緯糸(熱融着糸を有する捲回複合糸)および経糸(熱融着糸を有する捲回複合糸):伸度が40%である900デシテックスのストレッチ糸(ポリエステル、融点270℃)の周囲に、150デシテックスの熱融着糸(ポリエステル、融点110℃)が捲回状態に巻き付けられた1050デシテックスの捲回複合糸(捲回数400回/100cm、熱融着糸/ストレッチ糸の重量比は1/6)
織組織全体に占める複合糸の割合:24重量%
融着処理条件:130℃×3分
裏打ち層形成時の温度:170℃
裏打ち層:アクリル系樹脂
<実施例3>
下記仕様により図3に示すような風通織り組織からなる車輌の座席シート用表皮材を織成した。なお、織組織を織成し、先に熱融着糸の融着処理を行ったのち、裏打ち層の形成をローラーコーティング法により行った。
【0062】
経密度:126本/インチ
緯密度:60本/インチ(非熱融着糸30本/インチ、捲回複合糸30本/インチ)
経糸:330デシテックスのポリエステルフィラメント糸
緯糸(非熱融着糸):220デシテックスのポリエステルフィラメント糸
緯糸(熱融着糸を有する捲回複合糸):伸度が70%である240デシテックスのストレッチ糸(ポリエステル、融点260℃)の周囲に、80デシテックスの熱融着糸(ポリエステル、融点120℃)が捲回状態に巻き付けられた320デシテックスの捲回複合糸(捲回数800回/100cm、熱融着糸/ストレッチ糸の重量比は1/3)
挿入糸:500デシテックスのポリエステルフィラメント糸
織組織全体に占める複合糸の割合:16.5重量%
融着処理条件:150℃×3分
裏打ち層形成時の温度:150℃
裏打ち層:アクリル系樹脂
<比較例1>
実施例1の構成において、緯糸の構成糸を全て非熱融着糸(550デシテックスのポリエステルフィラメント糸)として、捲回複合糸を用いない構成とした以外は、実施例1と同様にして表皮材を得た。
【0063】
<比較例2>
実施例1の構成において、捲回複合糸に代えて、330デシテックスの熱融着糸(ポリエステル、融点110℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして表皮材を得た。
【0064】
<比較例3>
比較例1の表皮材の上面側にウレタン樹脂をスプレー法によりコーティング(20g/m2)することによって、表皮材を得た。
【0065】
上記のようにして製造された各表皮材に対して、下記評価法により評価を行った。
【0066】
<糸切れ・糸抜け防止性評価法>
各表皮材を直径120mmの大きさに裁断すると共にその中心部に6mm径の穴を開けてテーバー式スクラッチテスターのターンテーブル(40)上に接着固定する。固定された表皮材(1)の上面にタングステンカーバイド製のカッター(41)の刃先をすくい角(θ)30°で接触させ(図7参照)、1.96Nの荷重がかかった状態で1回転させて、表皮材の表面の状態を観察する。観察の結果、糸切れ及び糸抜けがなく、傷による毛羽立ちもなく、織組織からの糸のループ状突出箇所が10以下であるものを合格とした。
【0067】
<裁断時の糸ほつれ発生防止性の評価法>
上記糸切れ・糸抜け防止性評価において表皮材を裁断した時に、その裁断端面からの糸のほつれの発生の有無を調べ、ほつれの全くないものを「○」、ほつれの殆どないものを「△」、ほつれ発生が多いものを「×」として示した。
【0068】
<風合い評価法>
表皮材の表面を手でさするように触れた際の感触で評価した。即ち、硬さ感が全くなく非常に滑らかな柔らかい感触で風合いに優れるものを「○」、硬さ感が僅かに感じられるものの、相対的に風合いの良好なものを「△」、硬さ感があって柔らかい感触が乏しく風合いに劣るものを「×」として示した。
【0069】
<ドレープ性評価法>
JIS L1096の6.19.1のA法(45°カンチレバー法)に準拠して曲げ長さを求めた。即ち、各表皮材から幅25mm、長さ200mmの試験片を経方向及び緯方向に平行に切り出し、この試験片を裏打ち層側を下にして、一端が45度の斜面をもつ水平台の水平面の上に載せ、該試験片を10mm/秒の速度で45度斜面側に押し出す。押し出してから試験片の先端が斜面に接した時の他端の位置をスケールによって読み、この時までに試験片が移動した長さ(mm)を曲げ長さとし、これをドレープ性評価の指標とした。
【0070】
<表皮材の伸び特性試験法(円形モジュラス試験法)>
各表皮材から直径300mmの大きさで円形試験片を2枚切り出し、うち1枚はつかみ治具で試験片を固定した時の上下一対のつかみ治具を結ぶ方向が試験片の縦方向に沿う方向になるようにし、他の1枚は試験片の横方向に沿う方向になるようにして、定速度伸長型の引張り試験機で測定する(つかみ間隔200mm)。このときの初荷重は1.96Nとする。引張速度200mm/分で20%伸長時まで引張り、荷重−伸長曲線を求める。この荷重−伸長曲線から5%伸長時の荷重(N/25.4mm)を読みとる。縦方向、横方向ともにそれぞれ3枚の試験片について試験を行い、その平均値を算出して測定値とした。
【0071】
【表1】
Figure 0003704273
【0072】
表1から明らかなように、この発明の実施例1〜3の表皮材は、糸切れ・糸抜け防止性に優れるのみならず、風合いやドレープ性にも優れており、さらに伸び特性が良好で、裁断時の端面からの糸ほつれの発生もないことを確認し得た。
【0073】
これに対して、比較例1では、風合いに優れるものの、糸切れ・糸抜け防止性や糸ほつれ防止性に劣っていた。また比較例2、3では、糸切れ・糸抜け防止性に優れるものの、風合いやドレープ性に劣っていた。
【0074】
【発明の効果】
この発明の車輌用内装表皮材は、融着処理によって熱融着糸が隣接する他の糸や交錯する他の糸と融着されているので、糸切れ及び糸抜け防止性に優れると共に、裁断時の端面からの糸ほつれも防止できる。また、合撚複合糸又は捲回複合糸を用いているので、熱融着糸の融着時に隣接する他の糸と全面的に融着されることがなく、部分的に融着されるものとなる。このように融着が部分的になされるので、優れた風合いやドレープ性を確保できると共に、表皮材として十分な伸びを確保できるし、しわの発生も防止できる。また、ストレッチ糸として伸度が上記特定範囲にあるものを用いているので、部分的融着が施されても優れた風合い、ドレープ性及び伸びを確保できる。更に、織組織の裏面に裏打ち層が設けられているので、表皮材としての形態安定性を向上させることができると共に、裁断性も一層向上させることができる。
【0075】
織組織が、空隙部を介して互いに離間して配置された表側織組織と裏側織組織とからなる袋状二重組織部を少なくとも一部に備えた織組織であり、表側織組織の構成糸の少なくとも一部が前記複合糸で構成され、前記熱融着糸が加熱により融着処理されている場合には、上記効果に加えて、袋状二重組織部を有することで意匠性を向上できると共に一層柔らかい風合いを付与させることができる。
【0076】
袋状二重組織部の空隙部にストレッチ糸等からなる挿入糸が配置されている場合には、風合いやボリューム感をより一層向上させることができる。
【0077】
複合糸における熱融着糸の繊度が30〜200デシテックスであり、ストレッチ糸の繊度が50〜2000デシテックスである場合には、部分的融着部における融着を確実になし得て十分な糸切れ・糸抜け防止性を確実に享受できると共に、表皮材としての伸びも一層向上させることができる。
【0078】
複合糸における熱融着糸/ストレッチ糸の重量比が1/1〜1/10の範囲にある場合には、風合い、ドレープ性を十分に確保しつつ、糸切れ・糸抜け防止性を一層向上させることができる。
【0079】
複合糸の撚り回数又は捲回数が100〜800回/100cmである場合には、表皮材としての伸びを十分に確保しつつ、糸切れ・糸抜け防止性をより一層向上させることができる。
【0080】
また、この発明に係る製造方法によれば、裏打ち層形成を行う前に熱融着糸の融着処理を行うので、熱融着糸の部分的融着を良好な状態で行わせることができ、ひいては上記構成の車輌用内装表皮材として、糸切れ・糸抜け防止性により優れたものを製造できる利点がある。
【0081】
融着処理時の加熱温度が80〜180℃の範囲にある場合には、良好な状態での部分的融着を確実に行うことができるので、糸切れ・糸抜け防止性をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態に係る車輌用内装表皮材の一部を示す図であって、(イ)は一部を拡大して示す模式的斜視図(但し裏打ち層は省略)、(ロ)は同じく模式的断面図である。
【図2】 この発明の別の実施形態に係る車輌用内装表皮材の一部を示す図であって、(イ)は一部を拡大して示す模式的斜視図(但し裏打ち層は省略)、(ロ)は同じく模式的断面図である。
【図3】 更に他の実施形態に係る車輌用内装表皮材の一部を示す図であって、(イ)は一部を拡大して示す模式的斜視図(但し裏打ち層は省略)、(ロ)は同じく模式的断面図である。
【図4】 捲回複合糸の一例を示す斜視図である。
【図5】 捲回複合糸の他の例を示す斜視図である。
【図6】 合撚複合糸を示す斜視図である。
【図7】 糸切れ・糸抜け防止性評価法の説明図である。
【符号の説明】
1…車輌用内装表皮材
2…合撚複合糸
3…捲回複合糸
4…織組織
5…裏打ち層
10…熱融着糸
11…ストレッチ糸
20…袋状二重組織部
20a…空隙部
21…表側織組織
22…裏側織組織
23…挿入糸

Claims (11)

  1. 織組織からなる車輌用内装表皮材において、
    前記織組織の構成糸の少なくとも一部が、ポリエステル系熱融着糸と伸度が20〜150%の範囲にあるポリエステル系ストレッチ糸とが合撚されてなる合撚複合糸で構成され、前記熱融着糸が加熱により融着処理され、前記織組織の裏面に裏打ち層が設けられていることを特徴とする車輌用内装表皮材。
  2. 織組織からなる車輌用内装表皮材において、
    前記織組織の構成糸の少なくとも一部が、伸度が20〜150%の範囲にあるポリエステル系ストレッチ糸の周囲にポリエステル系熱融着糸が捲回状態に巻き付けられた捲回複合糸で構成され、前記熱融着糸が加熱により融着処理され、前記織組織の裏面に裏打ち層が設けられていることを特徴とする車輌用内装表皮材。
  3. 前記裏打ち層は樹脂組成物又はゴム組成物で形成され、該裏打ち層の乾燥重量が50〜150g/m 2 である請求項1または2に記載の車輌用内装表皮材。
  4. 前記織組織が、
    空隙部を介して互いに離間して配置された表側織組織と裏側織組織とからなる袋状二重組織部を少なくとも一部に備えた織組織であり、
    前記表側織組織の構成糸の少なくとも一部が前記複合糸で構成され、前記熱融着糸が加熱により融着処理されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の車輌用内装表皮材。
  5. 前記袋状二重組織部の空隙部にストレッチ糸等からなる挿入糸が配置されている請求項4に記載の車輌用内装表皮材。
  6. 前記複合糸における熱融着糸の繊度が30〜200デシテックスであり、ストレッチ糸の繊度が50〜2000デシテックスである請求項1〜5のいずれか1項に記載の車輌用内装表皮材。
  7. 前記複合糸における熱融着糸/ストレッチ糸の重量比が1/1〜1/10の範囲にある請求項1〜6のいずれか1項に記載の車輌用内装表皮材。
  8. 前記複合糸の撚り回数又は捲回数が100〜800回/100cmである請求項1〜7のいずれか1項に記載の車輌用内装表皮材。
  9. 構成糸の少なくとも一部が、ポリエステル系熱融着糸と伸度が20〜150%の範囲にあるポリエステル系ストレッチ糸とが合撚されてなる合撚複合糸で構成された織組織を加熱することによって前記熱融着糸の融着処理を施す工程と、
    前記融着処理後の織組織の裏面に裏打ち層を形成する工程とを包含することを特徴とする車輌用内装表皮材の製造方法。
  10. 構成糸の少なくとも一部が、伸度が20〜150%の範囲にあるポリエステル系ストレッチ糸の周囲にポリエステル系熱融着糸が捲回状態に巻き付けられた捲回複合糸で構成された織組織を加熱することによって前記熱融着糸の融着処理を施す工程と、
    前記融着処理後の織組織の裏面に裏打ち層を形成する工程とを包含することを特徴とする車輌用内装表皮材の製造方法。
  11. 前記融着処理時の加熱温度が80〜180℃の範囲にある請求項9または10に記載の車輌用内装表皮材の製造方法。
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