JP3579604B2 - 柔軟性に優れた粘着テープ用基布 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂フラットヤーンと合成樹脂フィラメントの交織からなる織布にラミネート加工を施した粘着テープ用基布に関する。
【0002】
【従来の技術】
合成樹脂繊維を用いた一般的な織物分野において、フラットヤーンとモノフィラメントを交織したものは多く存在する。例えば、経糸にモノフィラメント、緯糸にフラットヤーンを用いてラッセル編や絡み織りによる農業用遮光ネットは公知であるし、その他にも実公昭54−43177号公報ではアルミニウム蒸着層を有するテープヤーンを経糸とし、モノフィラメントを緯糸として製織した遮光布が開示され、実公平5−38132号公報では緯糸にフラットヤーン、経糸にもモノフィラメントを用いた織布を基材とした植生用袋体が開示されている。これらの交織布は、経緯の目合いを調整し、織布としての通気性や透水性を確保するために繊維形状を特定しているものである。
【0003】
従来、粘着テープ用基布の分野の織物としてはレーヨンスフ紡績糸からなる織布が広く使用されてきた。これは、レーヨンスフ紡績糸を用いた基布は、嵩高性があり、優れた風合いと適度な柔軟性を有しているために、ラミネートフィルムの貼着対象物の角面への貼付性も良好であったからである。ところがその反面、湿潤時には大幅に強力が低下するという欠点があった。
【0004】
このような欠点を解消するために、耐水性に優れた熱可塑性樹脂からなる織布が用いられるようになり、例えば特公平1−41189号公報には、経糸および緯糸に熱可塑性樹脂からなるフラットヤーンを用いた基布が提案されている。このような基布においては、通常幅方向に対する手切性を良好にするため、経糸のデニールを小さくするとともに厚みをできるだけ低下させ、ラミネート層熱溶着時の熱劣化によりさらに強度を低下させるなどの改良がなされている。しかしながら、このような基布では緯糸に1〜2mm幅のフラットヤーンが用いられラミネート層に堅固に固定されているため織布の柔軟性が劣るうえ、基布としての厚みが薄すぎてボリューム感に欠け風合いに劣るという問題があった。
【0005】
一方、特開平5−78630号公報には、高密度ポリエチレンからなるモノフィラメントを経糸および緯糸に用いた基布が開示されており、特開平4−356573号公報には、経糸に多孔質ポリオレフィン系モノフィラメントを用い、緯糸にポリオレフィン系モノフィラメントを用いた基布が開示されている。しかしながら、これらのような基布では、経糸および緯糸にモノフィラメントが用いられているために嵩高性は付与されるものの、経糸および緯糸に用いられたモノフィラメントの厚みに起因する剛性のため柔軟性に劣るうえに、経糸に用いられたモノフィラメントの厚みのためにラミネート層熱溶着時の熱劣化により経糸の強度を低下させるという効果に劣るとともに、モノフィラメントはフラットヤーンに比較してラミネート層との溶着面積が小さく、その結果基布とラミネート層との溶着が十分でなく粘着テープを幅方向へ手で切断しようとすると基布とラミネート層が剥離し、切断の負荷が経糸の1本ずつに確実に掛かりにくいという不都合もあり、幅方向の手切れ性が不十分になるという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するために、織布表面にラミネート加工を施して、通気性や透水性を必要としない粘着テープ分野において、ラミネート加工を施しても、柔軟性、嵩高性を有して風合いにすぐれ、かつ幅方向の手切れ性にすぐれた粘着テープ用基布を提供することを目的に、織物から根本的に見直そうとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決する手段として、経糸をポリオレフィンフラットヤーン、緯糸をポリオレフィンモノフィラメントで構成した織布の少なくとも片面にポリオレフィン層を積層してなることを特徴とする粘着テープ用基布を提供して、上記課題を解消する。ここで、上記ポリオレフィンモノフィラメントが発泡ポリオレフィンモノフィラメントであるのが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の粘着テープ用基布において、経糸をポリオレフィンフラットヤーンで構成した理由は、経糸にポリオレフィンフラットヤーンを用いることにより経方向の柔軟性を付与すること、経糸のポリオレフィンフラットヤーンのデニールを小さくするとともに厚みをできるだけ低下させ、ラミネート層熱溶着時の熱劣化によりさらに強度を低下させること、および経糸のポリオレフィンフラットヤーンとラミネート層との溶着を良好にして粘着テープを幅方向へ手で切断しようとするとき経糸とラミネート層が堅固に固定されて、切断の負荷が経糸の1本ずつに確実に掛かるようにすること等により幅方向の手切れ性を良好にするためである。
【0009】
そして、緯糸をポリオレフィンモノフィラメントで構成した理由は、嵩高性を付与することによりボリューム感がでて風合いにすぐれること、モノフィラメントである緯糸とラミネート層とはさほど堅固に溶着が行われないので、経糸および緯糸がフラットヤーンの場合よりも柔軟性にすぐれること等により幅方向の手切れ性に干渉することなく本発明の目的である柔軟性、嵩高性を付与することができるものである。このポリオレフィンモノフィラメントは発泡モノフィラメントであるのが好ましい。発泡モノフィラメントの詳細については後述する。
【0010】
ポリオレフィンの種類は特に限定されないが、具体的には延伸効果にすぐれた高密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好適に使用され、さらに直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体、プロピレン−エチレン共重合体などを適宜配合してもよい。
【0011】
経糸のポリオレフィンフラットヤーンの太さは、50〜150デニール(以下、dと記載する)が好ましく、70〜100dがより好ましい。また、厚みは10〜60μmが好ましく、20〜50μmがより好ましい。太さが50d未満、厚みが10μm未満では、引張強力が弱くなり、粘着テープとして実用上問題となる。太さが150dを超え、厚みが60μmを超えると、後述するラミネート時の熱劣化による強力低下効果が十分でなく、その結果幅方向の手切れ性が低下する。
【0012】
経糸のポリオレフィンフラットヤーンの伸びは特に限定されないが、10〜30%が好ましく、15〜25%がより好ましい。伸びが10%未満では経方向の切断が起こりやすく、30%を超えると手切れ時に容易に伸びて手切れ性が低下して好ましくない。
【0013】
緯糸のポリオレフィンモノフィラメントの太さは、250〜800dが好ましく、300〜500dがより好ましい。太さが250d未満ではラミネート時の熱劣化による強力低下効果が大きくなり、粘着テープの横方向切断の際に経糸とともに緯糸も切断し縦裂けの原因となるので好ましくない。太さが800dを超えると、柔軟性に劣り本発明の目的の達成が困難となる。
【0014】
緯糸のポリオレフィンモノフィラメントの伸びは特に限定されないが、10%以上であるのが好ましい。伸びが10%未満では緯糸の切断が起こりやすく、実用上問題となる。
【0015】
緯糸として用いられるポリオレフィンモノフィラメントは、発泡モノフィラメントであることが好ましい。モノフィラメントが発泡体であることにより、柔軟性、嵩高性がより効果的に付与される。発泡倍率は1.1〜5.0倍の範囲が好ましく、1.1〜3.0倍がより好ましい。発泡倍率が1.1倍未満では発泡体としての効果が少なく、5.0倍を超えると強力が低下して好ましくない。
【0016】
上記発泡モノフィラメントを得る方法としては、特に限定されるものではなく公知の発泡方法がいずれも採用できる。具体的には、熱分解型発泡剤を予めポリオレフィンに練込んでおき、発泡剤が分解する以上の温度で加熱してモノフィラメントを成形すると同時に発泡させて発泡モノフィラメントを形成する。熱分解型発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド等が挙げられる。
【0017】
このようにして得られたフラットヤーンおよびモノフィラメントを各々経糸および緯糸として織成して織布を形成するが、その打込密度は、単糸繊度によるが、経糸が30〜60本/インチが好ましく、緯糸が10〜20本/インチが好ましい。経糸が30本/インチ未満では、経方向の強力が弱くなりすぎて好ましくなく、60本/インチを超えると柔軟性が低下して好ましくない。また、緯糸が10本/インチ未満では、緯方向の強力が弱くなりすぎて好ましくなく、20本/インチを超えると柔軟性が低下して好ましくない。
【0018】
こうして構成された織布の少なくとも片面には、ポリオレフィン層を積層して粘着テープ用基布とする。積層する方法としては、押出ラミネート法による熱溶着法であることが重要である。その理由は、熱溶着の際に加えられた熱により、経糸であるフラットヤーンに熱劣化を生じさせて強力を低下させ、幅方向の手切れ性を良好にするためである。
【0019】
ポリオレフィン層の厚みは、15〜80μmが好ましく、25〜50μmがより好ましい。厚みが15μm未満ではラミネート時に経糸に加える熱量が少なく熱劣化による強力低下が不十分となり好ましくなく、80μmを超えるとシート状となって粘着テープの手切れ性が悪化し、柔軟性を失うことが予想される。
【0020】
ラミネート時の押出温度は、280〜340℃が好ましく、290〜320℃がより好ましい。押出温度が280℃未満では、経糸への熱劣化が不十分となるとともに、ポリオレフィン層と織布との接着性が不十分となり、340℃を超えると経糸への熱劣化が過剰となるとともに織布の収縮が増加し好ましくない。
【0021】
粘着テープ用基布において手切れ性を向上させるためには織布とポリオレフィン層との接着性が良好であることが重要で、織布とポリオレフィン層が堅固に接着し、手切れ応力が作用したときに経糸の逃げがなく、経糸1本ずつ順次に手切れ応力が作用することにより最も良好な手切れ性が得られる。
【0022】
ポリオレフィン層は織布の少なくとも片面に積層することによって本発明の粘着テープ用基布となるが、両面積層の方がより好ましい。即ち、両面にポリオレフィン層を熱溶着することにより、織布の経糸の熱劣化を一層促進すると共に、経糸を両面のポリオレフィン層に堅固に固定することになり、粘着テープの横方向切断の際の負荷が経糸1本ずつに確実に作用し、手切れ性をさらに良好にすることができるためである。また、両面にポリオレフィン層を設けることにより、粘着テープが幅方向にカールすることを防止することもできる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。なお、試験方法は以下の規定に準拠して行った。
【0024】
試験方法
1 厚み:JIS−P8118準拠
2 坪量:JIS−P8118準拠
3 引張強力:JIS−Z1524準拠
4 引張伸び:JIS−Z1524準拠
5 引裂強力:JIS−P8116準拠
6 柔軟性:掌で握りしめた感触で、◎:非常に良好、○:良好、△:やや不良、×:不良
7 嵩高性:掌で握りしめた感触で、◎:非常に良好、○:良好、△:やや不良、×:不良
【0025】
実施例1
高密度ポリエチレン(MFR=0.7g/10min.、密度=0.957g/cm3)を用いて、単糸繊度80d、厚み20μmのフラットヤーンを形成した。また、高密度ポリエチレン(MFR=0.7g/10min.、密度=0.957g/cm)90重量%、低密度ポリエチレン(MFR=2.0g/10min.、密度=0.924g/cm)10重量%からなる組成物を用いて、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを練り込み、溶融紡糸することで発泡倍率1.2倍、単糸繊度350dの発泡モノフィラメントを得た。
【0026】
このフラットヤーンを経糸として46本/インチの打込密度で、発泡モノフィラメントを緯糸として15本/インチの打込密度で平織の織布を形成した。この織布の両面に低密度ポリエチレン(MFR=8.0g/10min.、密度=0.917g/cm)を押出温度300℃で各30μmの厚みで低密度ポリエチレン層を積層し、粘着テープ用の基布を得た。評価結果を表1に示す。
【0027】
実施例2
モノフィラメント紡糸の際に発泡剤を配合しなかった他は実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0028】
実施例3
織布の片面にのみ低密度ポリエチレン層を積層した他は実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0029】
比較例
高密度ポリエチレン(MFR=0.7g/10min.、密度=0.957g/cm)を用いて、単糸繊度80d、厚み20μmのフラットヤーンを形成した。また、高密度ポリエチレン(MFR=0.7g/10min.、密度=0.957g/cm)90重量%、低密度ポリエチレン(MFR=2.0g/10min.、密度=0.924g/cm)10重量%からなる組成物を用いて、単糸繊度350dのフラットヤーンを得た。この80dのフラットヤーンを経糸として46本/インチの打込密度で、350dのフラットヤーンを緯糸として15本/インチの打込密度で平織の織布を形成した他は実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
Figure 0003579604
【0031】
表1の結果より、緯糸にモノフィラメントを使用した本実施例の粘着テープ用基布は、緯糸にフラットヤーンを使用した比較例と比べ、物性的には同等であるにも拘わらず、柔軟性や嵩高性で優るものであることが確認できた。また緯糸モノフィラメントとして、発泡モノフィラメントを使用したものは、さらに高い評価が得られるものであった。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の粘着テープ用基布は、経糸をポリオレフィンフラットヤーン、緯糸をポリオレフィンモノフィラメントで構成した織布の少なくとも片面にポリオレフィン層を積層して構成される。経糸にフラットヤーンを用いることにより経方向の柔軟性を付与し、また同程度のデニールでも厚みが薄いことで、ラミネート層熱溶着時の熱劣化により適度な強度低下を生じ、さらにラミネート層との溶着を良好にして、粘着テープを幅方向へ切断する際の負荷が経糸の1本ずつに確実に掛かることで手切れ性を良好にする。そして、緯糸にポリオレフィンモノフィラメントを用いることにより、粘着テープとしての長さ方向の強力や幅方向の手切れ性に干渉することなく、基材としての嵩高性を付与することによりボリューム感がでて風合いや柔軟性に優れたものとなる。その結果、粘着テープの貼着対象物として角部を有する面への貼付性も良好なものとして使用範囲を拡大できるのである。

Claims (2)

  1. 経糸を太さ70〜100デニールのポリオレフィンフラットヤーン、緯糸を太さ250〜800デニールのポリオレフィンモノフィラメントで構成した織布の少なくとも片面に厚さ25〜50μ m ポリオレフィン層を積層してなることを特徴とする柔軟性に優れた粘着テープ用基布。
  2. 緯糸のポリオレフィンモノフィラメントが発泡ポリオレフィンモノフィラメントであることを特徴とする請求項1に記載の柔軟性に優れた粘着テープ用基布。
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