JP3702476B2 - 化学発光測定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ペルオキシダーゼの酵素活性を、増感剤の存在下での化学発光により測定する化学発光測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、放射性同位元素を用いる測定方法に代わって、化学発光を用いる方法が普及し始めている。化学発光を用いる方法では、測定対象物質の増減に応じて変化する標識物質として、化学発光基質又は酵素を使用する方法がある。しかし、発光の持続性に起因する測定装置の汎用性や測定精度の点で、酵素を標識する方法が優れた方法である。標識する酵素にも種々あるがペルオキシダーゼが多く利用されており、ペルオキシダーゼを標識物質とする系において、ルミノールなどの化学発光基質と酸化剤の存在下で生じる化学発光を測定する方法が主に用いられている。この反応を増感剤を用いて増感する方法が感度の良い方法として知られており、種々の増感剤が開発されている(Methods in Enzymology,Vol.133,p.331-353,1986、特開平2−291299号公報、特開昭59−171839号公報、特表昭59−500252号公報、特表平1−503730号公報等)。
また、試薬に防腐効果を付与し、保存安定性を高めるために、防腐剤を用いることが知られている。防腐剤としては、一般にアジ化ナトリウム、チメロサール等が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アジ化ナトリウムはペルオキシダーゼを阻害する傾向にあり、また、チメロサールは有機水銀化合物のため環境汚染の問題がある。
一般に、化学発光反応を利用する測定方法が適用される分析対象物質は超微量であることが多々有り、従来の方法で充分ということはなく、さらに高感度でかつ安定な測定ができる測定方法の開発が望まれている。
本発明はこれらの課題を解決するものであり、特定の化合物を存在させることにより、防腐効果の付与とともに、特に高感度でかつ安定な測定ができ環境汚染等の問題のない簡便で精度の良い化学発光測定方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、ペルオキシダーゼの酵素活性を、化学発光基質、反応増感剤及び酸化剤を用いる化学発光により測定する方法であって、反応時にイソチアゾリン化合物、ピリジニウムハロゲン化合物、アンモニウムハロゲン化合物、ハロゲン化ジオキサイド化合物、パラベン誘導体及びチオピロリン誘導体から選択される1種以上の化合物を存在させることを特徴とする化学発光測定方法に関する。
【0005】
本発明の化学発光測定方法は、増感剤の存在下に、ペルオキシダーゼの触媒作用により化学発光基質及び酸化剤を反応させ、生じた発光を検出・定量する方法であれば特に限定するものではない。ペルオキシダーゼは一般に標識物質として用いられるが、非標識体のまま用いることもできる。例えば、標識酵素として用いる特異的結合反応として、一抗体免疫分析法、二抗体免疫分析法、競合分析法、サンドイッチ法、ホモジーニアス法、ヘテロジーニアス法、ウェスタン分析法、DNAプローブ法等の各種分析法に利用できる。
【0006】
本発明で用いられるペルオキシダーゼは特に限定するものではないが、西洋ワサビペルオキシダーゼの塩基性アイソザイムが増感剤との組合せにより、高い特異発光量が得られる点から好適である。西洋ワサビペルオキシダーゼの塩基性アイソザイムにはB、C、D及びEの各型が知られているが、これらの中ではC型がRZ値(ヘミンとタンパク質の比を示す)及び酵素活性の点で最も好ましい。これは、例えば東洋紡(株)から市販され入手可能である。
【0007】
化学発光反応に用いる化学発光基質としては、ルミノール類、ロフイン、ルシゲニンなどがあるが、ルミノール類が好ましく、具体的には、ルミノール、イソルミノール、N−エチルイソルミノール、N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノールヘミサクシミド、N−(6−アミノヘキシル)−N−エチルイソルミノール等が挙げられる。中でも、ルミノール又はイソルミノールが安定性や発光量子収率の点で好ましく、特にルミノールが好ましい。ルミノールは、通常入手できる試薬グレードのものには製造原料であるヒドラジン及び硫化物イオンが混入している場合が多いので、再結晶を繰り返し、精製したものを用いるのが好ましい。
【0008】
化学発光に用いる酸化剤としては、過酸化水素、過硼素酸塩、過酸化尿素などが好ましいものとして挙げられるが、特に過酸化水素が取扱いやすさの点で好ましい。
化学発光反応に用いる増感剤は、増発光効果や発光持続性効果のあるものであれば特に限定するものではないが、p−ヨードフェノール、p−ブロムフェノール、フェノールインドール、4−[4′−(2′−メチル)チアゾリル]フェノール、4−(4′−チアゾリル)フェノール、4−[4′−(2′−(3′−ピリジル))チアゾール]フェノール、4−(2′−チエニル)フェノール、4−[2′−(4′−メチル)チアゾリル]フェノール、フェノチアジン−N−プロピルスルフォネート又はフェノールインドフェノール等のフェノール誘導体、6−ハイドロキシベンゾチアゾール、4−(4−ハイドロキシフェニル)チアゾール等のチアゾール誘導体、3−(10−フェノチアジル)−プロピルスルホン酸塩、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、ジエチルアニリンなどが好ましいものとして用いられる。中でも好ましいものは、4−[4′−(2′−メチル)チアゾリル]フェノール、4−(4′−チアゾリル)フェノール、4−[4′−(2′−(3′−ピリジル))チアゾール]フェノール、4−(2′−チエニル)フェノール、4−[2′−(4′−メチル)チアゾリル]フェノール、フェノチアジン−N−プロピルスルフォネート又はフェノールインドフェノールであり、特に好ましいものは、S/N比(シグナルとノイズの比)が高い点で4−[4′−(2′−メチル)チアゾリル]フェノールである。
【0009】
本発明において使用される化合物(I)は、一般に防腐剤として用いられている、イソチアゾリン化合物(イソチアゾリン、その誘導体、それらのハロゲン化物等)、ピリジニウムハロゲン化合物(アルキルピリジニウムハライド等)、アンモニウムハロゲン化合物(モノ、ジ、トリ、テトラアルキル置換アンモニウムハライド等)、ハロゲン化ジオキサイド化合物(ジオキサン又はその誘導体のハロゲン化物、アルキレングリコール又はその誘導体のハロゲン化物等)、パラベン誘導体(パラオキシ安息香酸エステル類等)及びチオピロリン誘導体(ハロゲン化チオピロリン誘導体等)であり、これらは単独で又は2種以上を併用して使用できる。これらは防腐効果の他に、発光の持続安定性の効果を付与できるものであり、これらを反応時に存在させることにより、安定でより高感度な測定が可能となる。
具体的化合物としては、イソチアゾリン化合物として5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、ピリジニウムハロゲン化合物としてヘキサデシルピリジニウムクロリド、アンモニウムハロゲン化合物としてトリメチル−テトラデカン−アンモニウムブロマイド、トリメチル−ヘキサデカン−アンモニウムブロマイド、ハロゲン化ジオキサイド化合物として5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、パラベン誘導体としてメチルパラベン(パラオキシ安息香酸メチル)、チオピロリン誘導体としてメチルクロロチオピロリン等が好ましいものとして挙げられる。
この中で、ピリジニウムハロゲン化合物及びアンモニウムハロゲン化合物が発光の持続安定性の効果が高いので好ましく、特にヘキサデシルピリジニウムクロリド、トリメチル−テトラデカン−アンモニウムブロマイドが発光の持続安定性の効果が特に高いので好ましい。
【0010】
本発明の測定方法に用いる試薬には、緩衝液として、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド緩衝液、ホウ酸緩衝液、グリシン緩衝液、アンモニウム緩衝液等が好ましいものとして含まれる。これらの緩衝液の組み合わせは任意に選択することができ、それぞれの濃度とpHにより最終反応液のpHや塩濃度を調整し最適反応条件にすることができる。
最終反応液の好ましいpHは8〜10である。このpHが低すぎると感度が低下しやすく、高すぎるとブランクが高くなりすぎる。
【0011】
試薬中の各成分の濃度は、使用する成分の種類等により相違するが、最終反応液中の濃度が以下に示す範囲に入るように調整するのが好ましい。
最終反応液中の酸化剤(例えば過酸化水素)濃度は0.1〜10mMの範囲が好ましく、これより少ないと基質不足により感度が低下する傾向にあり、多すぎると酵素活性を阻害し感度が低下する傾向にある。
化学発光基質(例えばルミノール)の最終反応液中の濃度は0.1〜100mMの範囲が好ましく、この範囲を外れると感度が低下する傾向にある。
【0012】
反応増感剤の濃度は、使用する物質、測定するペルオキシダーゼの濃度範囲等で最適濃度が違ってくるので、特に制限されるものではないが一般に最終反応液中に1μM〜1M程度の濃度で使用される。例えばp−ヨードフェノールの場合は0.01〜10mMの範囲が好ましく、4−〔4′−(2′−メチル)チアゾリル〕フェノールの場合は0.001〜10mMの範囲で使用するのが好ましい。各反応増感剤の濃度がこの範囲を外れると増感効果が低下する傾向にある。
前記化合物(I)の濃度も使用する物質により最適濃度が相違するが、通常、最終反応液中に0.00001〜1%(w/v)、特に0.001〜1%(w/v)の範囲で使用するのが好ましい。化合物(I)が少なすぎると防腐効果及び発光減衰を抑える効果が低下する傾向にあり、多すぎると発光を阻害する傾向にある。
本発明に用いる測定試薬は、測定精度を向上させるため、さらに蛋白成分や界面活性剤等を含有してもよい。
【0013】
本発明の測定方法を適用できる測定対象物は、ペルオキシダーゼを直接測定すること又は標識酵素として用いて測定することにより、測定できるものであれば特に制限されるものではない。例えば、酵素免疫測定法に用いることにより、pg/mlオーダーまでの高感度測定が可能となるので、成長ホルモン(GH)、エンドセリン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、遊離サイロキシン4(FT4)等のペプチドホルモン、サイトカイン等の微量生体成分などの測定方法として適用できる。
【0014】
【実施例】
実施例1 化合物(I)の添加による発光持続性の検討
ストリップ型黒色マイクロウェル(NUNC社製)にペルオキシダーゼ溶液(西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼC型をPBS(Phosphate Buffer Saline)溶液に溶解、濃度100pg/ml)を5μl入れる。次に1mM過酸化水素及び化合物(I)(下記物質を下記濃度で含む)を含有する発光液A(10mMりん酸緩衝液pH7)100μlと、0.16mM 4−[4′−(2′−メチル)チアゾリル]フェノール及び10mM ルミノールを含有する発光液B(200mMほう酸緩衝液pH10)100μlを分注する。撹拌混合し、化学発光測定装置(コロナ電気(株)製、MLR-100)を用いて、5分後の化学発光量を測定した。
化合物(I)として5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物(混合重量比は前者:後者=2.3:0.7、合計で0.00015%(w/v)、図1のA)、ヘキサデシルピリジニウムクロリド(0.05%(w/v)、図1のB)、トリメチル−テトラデカン−アンモニウムブロマイド(0.025%(w/v)、図1のC)及びメチルパラベン(0.1%(w/v)、図1のD)を発光液Aに添加したときの発光の時間変化は図1のようになり、発光の減衰が低減できることが確認された。
また、防腐剤としてアジ化ナトリウム0.1%(w/v)を用いたところ、発光反応が充分に観察されず、チメロサール0.01%(w/v)を用いたところ、発光の減衰の低減は全く認められなかった。
【0016】
実施例2 酵素免疫測定法への応用
本化学発光測定方法の酵素免疫測定法への応用として血清中の成長ホルモン(GH)の測定を検討した。
抗GHモノクローナル抗体を感作したストリップ型黒色マイクロウェル(NUNC社製)に血清25μlとビオチン化抗GHヒツジ抗体溶液100μlを分注し、60分間室温で攪拌しながらインキュベーションした。0.05%(v/v)ツィーン20含有PBSで4回洗浄した後、ストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼ溶液を100μl分注し、10分間室温で攪拌しながらインキュベーションした。0.05%(v/v)ツィーン20含有PBSで4回洗浄した後、実施例1と同様の発光液A(トリメチル−テトラデカン−アンモニウムブロマイドを0.025%(w/v)で含むもの)と発光液Bを100μlずつ分注した。撹拌混合し、化学発光測定装置(コロナ電気(株)製、MLR-100)を用いて、5分後の化学発光量を測定した。血清の代わりに濃度既知の標準血清を用いて検量線を求めたところ良好な検量線が得られた(図2)。また、同一検体を繰り返し11回測定し、同時再現性を求めた結果、表1のように良好な再現性が得られた。
【0017】
【表1】
Figure 0003702476
【0018】
【発明の効果】
本発明の化学発光測定方法は、化学発光時の発光の減衰が遅延されるので、簡便で精度が良く安定な測定をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の測定方法における化合物(I)(防腐剤)の添加による発光の減衰の低減の効果を示すグラフである。なお、1ルミカウントの発光量は1.2×10-16Wである。
【図2】 本発明の実施例におけるGH定量用の検量線を示すグラフである。なお、1ルミカウントの発光量は1.2×10-16Wである。

Claims (7)

  1. ペルオキシダーゼの酵素活性を、ルミノール類、反応増感剤及び酸化剤を用いる化学発光により測定する方法であって、反応時にイソチアゾリン化合物、ピリジニウムハロゲン化合物、アンモニウムハロゲン化合物、及びパラベン誘導体から選択される1種以上の化合物(I)を存在させることを特徴とする化学発光測定方法。
  2. ルミノール類がルミノール又はイソルミノールである請求項1記載の化学発光測定方法。
  3. 酸化剤が過酸化水素、過硼素酸塩又は過酸化尿素である請求項1又は2記載の化学発光測定方法。
  4. 反応増感剤がフェノール誘導体、チアゾール誘導体、3−(10−フェノチアジル)−プロピルスルホン酸塩、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸又はジフェニルアニリンである請求項1〜3のいずれかに記載の化学発光測定法。
  5. 反応増感剤が4−[4′−(2′−メチル)チアゾリル]フェノール、4−(4′−チアゾリル)フェノール又は4−[4′−(2′−(3′−ピリジル))チアゾール]フェノール、4−(2′−チエニル)フェノール、4−[2′−(4′−メチル)チアゾリル]フェノール、フェノチアジン−N−プロピルスルフォネート又はフェノールインドフェノールである請求項4記載の化学発光測定方法。
  6. 化合物(I)がピリジニウムハロゲン化合物又はアンモニウムハロゲン化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の化学発光測定方法。
  7. 化合物(I)がヘキサデシルピリジニウムクロリド又はトリメチル−ヘキサデカン−アンモニウムブロマイドである請求項6に記載の化学発光測定方法。
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