JP3701056B2 - 高温用容器内壁の耐火物の築造方法 - Google Patents
高温用容器内壁の耐火物の築造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば製鉄所における転炉の内壁に内張される耐火物の築造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、高温用容器、例えば混銑車の内張りには、アルミナ・炭化珪素・カーボンれんがが使用されるが、築造に際してれんが間にモルタルを使用して一定の厚みの目地が確保されるように築造される。また、溶鋼鍋にはマグネシヤ・カーボンれんがやアルミナれんが等を使用するが、水平目地にはモルタルを目地材として使用する。転炉の場合はマグネシア・カーボンれんがの膨脹代を取ることなく、空目地で積んでいくか、若しくはれんがの膨張代として、れんが間に鉄板やボール紙を挿入して築造されている。
【0003】
特開平4−66612号公報においては、転炉型溶融還元炉のれんが積みに際して、れんが寸法の0.1〜0.4%の割合でれんが目地を設けておき、そこに高温で消失するスペーサーを挿入して築造する方法が開示されている。かかるスペーサーとして、厚紙、アルミ板、木板等を使用している。
【0004】
また、混銑車の湯当たり部等では最近築造方法の省力化を図るために、不定形耐火物の大型プレキャストブロックを機械積みすることも行われている。この場合一層の省力化を目指して不定形耐火物ブロックの大型化が行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これら従来から行われている各種築炉方法において、目地を用いない築造方法でも、従来は特に大きな問題が生じなかった。しかし、最近になって、従来よりも高温で精錬が行われるようになり、そのためれんが自体も充填性の高いものが使用され、その熱膨張による応力によりれんがが機械的スポーリングを起こすという問題が生じてきた。とくに、不定形耐火物ブロックが大型化された場合には、この機械的スポーリングは大きな問題となっている。
【0006】
目地材としてモルタルが使用される場合、そのモルタル施工は築炉作業者の経験と勘により一定の均一な厚みとなるよう施工するのが一般的であるが、モルタルの厚みはどうしても不均一となりやすい。
【0007】
アルミナ・炭化珪素・カーボンれんがを用いた混銑車ではれんがの膨張代は小さいものの、目地厚みが設計より小さいとれんがの競り割れが生じ、逆に目地が大きいと加熱・冷却のサイクルにより目地が開き、地金差しや目地部が先行溶損し、しかも、通常使用されているモルタルとカーボン質れんがとは接着力が少ないため、目地が開くとれんがが抜け落ちるという問題があった。
【0008】
転炉の内壁の築造においてはマグネシア・カーボンれんがの膨脹代吸収のためにれんが間に鉄板を挿入するが、鉄板は800℃位までは収縮性を発揮しない。
しかし、1400℃以上の高温においては上記鉄板が酸化されてFe203が生じ、耐火物と反応し、耐火物に悪影響を及ばす問題がある。
【0009】
他方、ボール紙は常温でもそれ自身ある程度の膨張吸収性を有しており、これが炭化する際にはさらに収縮するが、その膨張吸収効果は高々500℃までである。従って鉄板あるいはボール紙はいずれも広い温度範囲で膨張を吸収できるものではない。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、カーボン含有れんが又はカーボン含有不定形耐火物ブロックで転炉内壁を築造する際に、低温度域から比較的高温の範囲までの広い範囲においてれんが若しくは不定形耐火物ブロックの膨脹代を吸収し、さらに熱間でれんがやブロック同志を接着することができる高温用容器内壁の耐火物の築造方法を提供しようとするものである。
【0011】
すなわち、本発明者らは高温用容器の内壁に耐火物を築造するに際し、れんが若しくは不定形耐火物ブロック間にエクスパンドメタルを挿入することによりれんがの膨脹代を吸収し、併せてれんがを接着させるような築造方法を知見したものである。
【0012】
発明の第1の態様は、下記の工程を備えた転炉の絞り部の内張り耐火物の築造方法である。
(a)所定の形状を備えた、マグネシア・カーボンれんがを用意し、
(b)前記れんがで転炉の絞り部の内張りを築造するに際し、アルミニウム製またはアルミニウム合金製であって板厚方向に伸縮可能な段差を有するエクスパンドメタルを前記れんが間に挿入し、前記れんがの膨張代を吸収する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明において、所定の形状を備えたカーボン含有耐火物れんが又は不定形耐火物ブロックはマグネシア・カーボンれんがである。
【0014】
また、カーボン含有不定形耐火物ブロックとは上記のようなカーボン質材料とその他の耐火材料成分を含有する不定形耐火材料をあらかじめ一定の形状をしたブロック状に流し込み等の方法を用いて成形したプレキャストブロックで、高温用容器内壁の築造にあたっては、このブロックを積み上げるものである。
【0015】
本発明においては上記不定形耐火物ブロック間若しくはれんがとれんがとの間に伸縮性ある金属材料を挿入することが特徴である。ここで挿入するとは、結果として不定形耐火物ブロック間又はれんが間に挿入された状態を意味する。従って、施工時においては伸縮性ある金属材料をブロック又はれんがの面に配置、あるいはセットする等種々の施工態様かある。
【0016】
伸縮性ある金属材料としてはエクスパンドメタルである。このエクスパンドメタルはJIS−G3351に規定されているような薄板若しくは中厚板をダイヤモンド・メッシュ状に伸展したもので、その形状は図1に示す通りである。
【0017】
エクスパンドメタルの厚さは、図1のdで与えられるが、メタル加工時の刻み幅(w/2)のメッシュ寸法(1)により自由に調節することが可能であり、形状的な可縮率((d−t)/d(%))は任意に設定が可能である。エクスパンドメタルは厚み方向に段差を有している。
【0018】
エクスパンドメタル自体の板厚は0.1〜2mmのものが望ましい。この厚さが0・1mm未満ではエクスパンドメタルの加工に際し強度が不足し、また、取扱に不便だからである。
【0019】
他方、エクスパンドメタルの厚みは任意に設定できるので、2mmを超えるのものを使用してもよいが、現状のれんがや不定形耐火物ブロックの寸法等を考慮すると、その必要性は少ない。
【0020】
加工後のエクスパンドメタルの厚み(図1のd)は使用するれんがや不定形耐火物ブロックの材質、寸法にもよるが、0.2〜5mmが好ましい。0.2mm未満では耐火物の種類にもよるが、一般に膨脹代を吸収できなく、5 mmを超えると目地部が厚くなりすぎ、地金差しの原因となる。なお、一般にれんがの場合膨張代は0.2〜3mmである。
【0021】
エクスパンドメタルの金属材料は、アルミニウム又はアルミニウム合金である。アルミニウムは容器が高温になった場合においてカーボン質耐火物との間で反応が生じ、れんが若しくは不定形耐火物ブロック間を接着させる効果があるためである。
【0022】
本発明における耐火物の築造方法は、れんが若しくは不定形耐火物ブロック間に所定の厚みに調整したエクスパンドメタルを挟みながら行うことができる。れんが若しくは不定形耐火物ブロック間にモルタルを使用する築造では、モルタルの代替としてエクスパンドメタルのみを使用するか、エクスパンドメタルのメッシュの間にモルタルを埋め込む形で、エクスパンドメタルとモルタルとを併用することも可能である。
【0023】
特に、溶銑鍋や混銑車等に使用するアルミナ・炭化珪素・カーボンれんがに本発明を適用すれば、目地厚みが一定な築造が可能となり、エクスパンドメタルによるれんがの接着効果と合わせて、部分的な目地の先行溶損やれんがの抜け落ち防止にも著しい効果がある。
【0024】
エクスパンドメタルはそれ自体構造的に収縮が可能であり、れんがが例えばマグネシア・カーボンれんがの場合に、れんがの膨脹を吸収することができる。エクスパンドメタルは、またその厚みを自由にコントロールすることが可能であり、れんがの種類に応じその膨脹量に合わせてその厚みを調整できるとともに、目地部の厚さを厳密に膨脹代とすることも可能である。
【0025】
更に、エクスパンドメタルがアルミニウム又はアルミニウム合金の場合にはこれらの金属自体も延性を有し、これによって膨脹を吸収することもできる。エクスパンドメタルがアルミニウム又はアルミニウム合金である時は500℃〜700℃の範囲において溶融し、より高温ではれんが中の炭素質材料と反応して炭化アルミニウムを生成する。さらには、酸化されたアルミニウム又はアルミニウム合金はアルミナを形成し、マグネシアと反応してスピネルを形成し、隣接するれんが同志を接着する作用がある。
【0026】
かかる作用により目地部が開くことなく、れんがが滑って抜け落ちることが防止される。また、熱間においてれんが同志が接着すると、アルミナ・炭化珪素・カーボンれんがの場合の目地部の溶損を押さえることも可能となる。
【0027】
伸縮性ある金属材料として、エクスパンドメタルは容易に入手できる材料である。
【0028】
【実施例】
実施例1
図2に転炉の築造の状況を示す。転炉において、鱗状黒鉛を18重量%含有するマグネシア・カーボンれんがで内張り築造する場合、転炉の絞り部のワークれんが2(寸法長さ720mm×高さ120〜150mm×巾(図2の奥行き方向)150mm)の間に、0.2mm厚の金属アルミニウムからなる厚さ0.5mm、開口率約82%のエクスパンドメタル4を挟みながら築造を行った。
【0029】
なお、このときの目地代の比率は0.41〜0.67%である。通常は、膨脹吸収代として厚さ2mmのボール紙をれんが4枚に1枚の割合で使用してきた。従来、ボール紙を使用していた場合は、2000〜2500チャージから炉口れんがの脱落は始まり、3000チャージまでに、傾斜部のれんがが3〜5段脱落していた。
【0030】
本願発明の築造方法、即ち、れんが間にエクスパンドメタルを挿入して築造した場合では、3400チャージの炉止めまでに炉口れんがの脱落ははとんどなかった。これはエクスパンドメタルが有効にせり力を吸収し、かつ、熱間でれんが間を強固に接着したためと推定される。従来と比較し、脱落したれんがの補修のために吹付けた補修材の使用量は1炉代当たり70%減少した。
【0031】
参考例1
従来、溶銑鍋のスラグライン部にはカーボン10wt%、炭化珪素5wt%であるアルミナ・炭化珪素・カーボンれんがを使用している。この日地部にはアルミナ・カーボン質のモルタルを使用して、目地厚み2mmを基準として築造していたが、300チャージ使用した鍋では2〜3鍋毎に1鍋の割合で目地部の溶損が発生し、れんがの抜け落ちが発生し、炉寿命が低下し補修のための吹付材の使用量が増加していた。図3に溶銑鍋の築造状況を示す。
【0032】
この日地部に0.5mm厚の金属アルミニウムからなる厚さ(d)2mm、開口率約75%のアルミニウムのエクスパンドメタルを挿入し、さらにそのメッシュ間隙にアルミナ・カーボン質のモルタルを塗り込んで築炉した。築造の状態を、れんがの寸法(厚さ150mm×高さ140〜150mm×巾(図3で奥行き方向)230mm)とともに図3に示す。
【0033】
その結果、鍋寿命は従来の300チャージ(10個の鍋の平均)から380チャージ(5個の鍋の平均)に伸び、補修のための吹付材料原単位は0.12kg/鋼t(10個の鍋の平均値)から0.02kg/鋼t(5個の鍋の平均値)に減少した。
【0034】
参考例2
溶銑鍋炉床の湯当たり部はれんがを使用すると目地部の先行溶損が大きいので、従来はカーボン5重量%、炭素珪素8重量%、残部アルミナのアルミナ・炭化珪素・カーボン質のプレキャストブロックで上面150×300mm、下面155×310mm、厚さ350mmのものを使用していた。
【0035】
築炉の省力化のためにブロックの大きさを上面450×300mm、下面463×310mm、厚さ350mmのものに変更したところ、使用時の熱膨張による機械的スポーリングを押さえるには目地厚みを4mmとする必要が生じた。
【0036】
しかし、上記のような大型のブロックを使用すると、均一な目地厚みを確保することが難しく、局部的な目地の先行溶損が多発し、従来のブロックでは平均300ch(n=10)あった寿命が240ch(n=5)に低下した。しかし、この日地部に1.5mm厚の金属アルミニウム板を加工した厚さ4mmのエクスパンドメタルを挿入し、メッシュ間隙にアルミナ・カーボン質のモルタルを使用して施工した。その結果、炉床の寿命は平均280ch(n=8)まで向上した。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、特にれんが若しくは不定形耐火物ブロックの間に伸縮可能な金属材料であるアルミニウム又はアルミニウム合金よりなるエクスパンドメタルを挿入して築造することにより、れんが若しくは不定形耐火物ブロックの膨脹代を吸収し、若しくはれんがや不定形耐火物ブロック間の目地の開きを防止することができる。そのため、高温用容器の寿命を大幅に延長することできると共に、補修の回数、補修材料の原単位を低下させることができる。また、そのため、技術的及び経済的効果は著しいものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 エクスパンドメタルの形状の概略を示す図である。
【図2】 転炉絞り部における本発明のれんがの築造方法の概略を示す図である。
【図3】 溶銑鍋のスラグライン部における本発明によるれんがの築造方法を示す図である。
Claims (1)
- 下記の工程を備えた転炉の絞り部の内張り耐火物の築造方法。
(a)所定の形状を備えた、マグネシア・カーボンれんがを用意し、
(b)前記れんがで転炉の絞り部の内張りを築造するに際し、アルミニウム製またはアルミニウム合金製であって板厚方向に伸縮可能な段差を有するエクスパンドメタルを前記れんが間に挿入し、前記れんがの膨張代を吸収する。
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