JP3693134B2 - 印字装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印字ヘッドを搭載したキャリッジを印字方向へ駆動させて印字する印字装置に関し、特に複数行印字における各印字行の印字開始位置が印字方向に異なる場合でも、キャリッジの駆動開始直後の速度変動による印字位置の位置ズレを確実に解消するようにしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、印字ヘッドを搭載したキャリッジをキャリッジ駆動モータで印字方向に駆動しながら複数行の印字を行うようにした、所謂シリアルプリンタにおいては、印字行の印字を終了したキャリッジを、行間値分の用紙送りを実行した後に、所定の印字開始位置へ移動(キャリッジリターン)させるのではなく、次行の印字開始位置へ最短距離で直接移動させて次行を印字方向へ印字することで、印字処理を高速化するようにした印字装置が種々提案されている。
【0003】
例えば、特公昭60─25273号公報には、印字行の印字を終了したキャリッジを、次行の左端と右端のうち最短距離になる一方の端位置へ移動させ、一方の端から他方の端へ向け印字するようにした印字装置が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
シリアルプリンタなどの印字装置においては、一般的に、キャリッジは、ガイドロッドで印字方向へ移動可能に支持されるとともに、ワイヤやタイミングベルトを介してキャリッジ駆動モータにより、往復駆動するように構成されていることから、停止状態のキャリッジを急激に加速して駆動した直後には、キャリッジとガイドロッドとの移動摩擦やキャリッジ自体の質量により、ワイヤやタイミングベルトに張力が作用して延びが生じることから、実施形態に係る図3に示すように、キャリッジの駆動開始直後に発生する速度変動は、加速に要する加速区間Uと、加速終了後の速度不安定区間Vとを加えた速度変動区間Tに亙って収束するようになり、それ以後において定速駆動される。
【0005】
そこで、前述したように、特公昭60─25273号公報に記載の印字装置におていは、印字処理の高速化の為に、印字を終了したキャリッジを次行の最短距離に位置する左端又は右端位置へ移動させることから、キャリッジの速度変動区間が各印字行における印字開始直後に夫々含まれるだけでなく、駆動機構のバックラッシュにより、複数行の各印字位置に相互にズレが生じる。特に、縦罫線を印字した場合、不連続になる。
【0006】
そこで、従来の印字装置では、複数行を左から右への一方向のみで印字することで、上記問題を解消するようにしているが、まだ十分に印字位置のズレを解消するには至っていない。即ち、実施形態に係る図5に示すように、複数の印字行LD1〜3の先頭位置PSがそれぞれ異なるとき、それぞれの先頭位置よりも加速区間だけ左側からキャリッジの移動を開始する。この場合、それぞれのキャリッジの加速時の速度変動は、図3に実線および破線で示すように、それぞれの開始位置に応じて横へずれた状態で現れる。図3のA位置で印字されるデータがあるとき、実線で示す速度変動の場合にはキャリッジはオーバーシュートし、破線の場合にはアンダーシュートしており、印字時の速度が異なることになる。
【0007】
インクジェット式印字ヘッドやドットインパクト式印字ヘッドの場合、印字ヘッドからインクや印字ピンが飛翔して印字するため、A位置で印字信号を出力してもキャリッジの速度が異なると、印字位置がずれる。したがって、複数行を一方向のみで印字しても、十分に印字位置のズレを解消できない。特にインクジェット式印字ヘッドのように印字するドット径が小さく高解像度の印字をするものではその位置ズレによる影響が大きく、また印字速度が高速になれば一層顕著に現れる。
【0008】
さらに上記の問題を解消するには、キャリッジの速度変動が完全に収束した後、全ての行の印字を開始するようにしたり、行の長短に拘わらず全ての行のキャリッジの移動開始点をキャリッジの移動範囲の最左端にするなどの方法が考えられるが、前者の方法では、印字行の長さに対してキャリッジの移動範囲を十分に大きくしなければならず、印字装置が大きくなる。また後者の方法では、印字データのない部分でもキャリッジを移動させなければならず、全体としての印字時間が多くかかり、いずれも現実的ではない。
本発明の目的は、印字装置を小型化し、また印字時間を少なくする一方、複数行の任意の印字位置の位置ズレを解消し得るような印字装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の印字装置は、印字ヘッドを搭載したキャリッジと、そのキャリッジを移動駆動するキャリッジ駆動手段とを備え、印字データに基づいてキャリッジを印字方向に移動させながら記録媒体に印字する印字装置において、印字データに基づいて各印字行の印字開始位置を求める印字開始位置決定手段と、印字開始位置決定手段で求めた印字開始位置が、所定の基準位置を基準としてキャリッジの駆動開始直後のキャリッジの速度変動が収束していない速度変動区間内か否かを判定する駆動開始位置判定手段と、駆動開始位置判定手段の判定結果を受け、印字開始位置が速度変動区間内のときには所定の基準位置からキャリッジの移動を開始して印字するようにキャリッジ駆動手段を制御し、印字開始位置が速度変動区間外のときには印字開始位置よりも速度変動区間だけ基準位置寄りの位置からキャリッジの移動を開始して印字するようにキャリッジ駆動手段を制御する駆動開始位置設定手段とを備えたものである。
【0010】
印字開始位置決定手段は、印字に供する印字データに基づいて、各印字行の印字開始位置を求め、駆動開始位置判定手段は、印字開始位置演算手段で求めた印字開始位置が、所定の基準位置を基準としてキャリッジの駆動開始直後のキャリッジの速度変動が収束していない速度変動区間内か否かを判定する。そして、駆動開始位置設定手段は、駆動開始位置判定手段の判定結果を受け、印字開始位置が速度変動区間内のときには、所定の基準位置からキャリッジの移動を開始して印字するようにキャリッジ駆動手段を制御する。
【0011】
即ち、各印字行における印字開始位置が印字方向に異なる場合でも、キャリッジはキャリッジ駆動手段により、各印字行の印字毎に、所定の基準位置から印字方向へ移動を開始することにより、キャリッジの移動開始時に発生する速度変動が各行において一致することになり、速度変動区間内に印字するデータでも、複数印字行の印字位置に位置ズレが生じることがない。従って、複数の印字行により印字した縦罫線が直線状に揃うことになる。しかも、速度変動区間内で印字を開始するから、基準位置に近い位置に印字領域をおくことができる。
【0012】
また、駆動開始位置設定手段は、判定結果を受けて、印字開始位置が速度変動区間外のときには、印字開始位置よりも速度変動区間だけ基準位置寄りの位置からキャリッジの移動を開始して印字するようにキャリッジ駆動手段を制御するので、印字行はキャリッジの移動開始時に発生する速度変動が収束した定速状態で印字されることになり、所定の基準位置からキャリッジを移動させて印字した印字行に対して印字位置に位置ズレが生じないのはもちろん、印字開始位置よりも速度変動区間だけ基準位置寄りの位置からキャリッジを移動させて印字した印字行どうしでも位置ズレが生じない。しかもこの場合、キャリッジを基準位置から移動しないため、キャリッジのむだな移動が少なくなる。
【0013】
請求項2の印字装置は、請求項1の発明において、前記所定の基準位置は、キャリッジ移動可能範囲の一端位置である。
この場合、所定の基準位置は、キャリッジ移動可能範囲の一端位置なので、印字領域をその基準位置に対して、少なくともキャリッジの加速に要する加速区間だけ印字方向側に設けることで、キャリッジの移動可能範囲を有効に使って印字動作をすることができる。その他、請求項1と同様に作用する。
【0014】
請求項3の印字装置は、請求項2の発明において、前記速度変動区間は、キャリッジの加速に要する加速区間と加速終了後の速度不安定区間とを加えたものであり、前記駆動開始位置判定手段は、印字開始位置が速度不安定区間内であるか否かを判定する。
この場合、印字開始位置がこの速度不安定区間外のときには、キャリッジの速度変動を確実に解消した定速状態で印字することができる。その他、請求項2と同様に作用する。
【0015】
請求項4の印字装置は、請求項1〜3の何れか1項に記載の発明において、前記印字ヘッドは、記録媒体と間隔をおいて位置し印字要素を記録媒体に向け動作させるものである。
この場合、印字開始位置が速度変動区間内にあると、速度の変動によって印字要素が記録媒体に到達する位置(即ち印字位置)にズレが生じることがあるが、前述のように、基準位置からキャリッジの移動を開始するため、速度変動が各行において一致することになり、各行の印字位置にズレが生じることがない。印字要素を記録媒体に向け動作させるタイプの印字ヘッド、例えばインクジェット式、あるいはドットインパクト式印字ヘッドにおいて好適である。特に、インクジェット式印字ヘッドのように、印字するドット径が小さく高解像度の印字をするものでは位置ズレによる影響が大きいが、その位置ズレを最小にして精度の高い印字を行うことができる。またこの結果、印字速度を高速しても影響が少ないから、一層高速化できる。
【0016】
請求項5の印字装置は、請求項4の発明において、前記印字ヘッドは、記録媒体に向けてインク滴を噴出するインクジェット式のものである。
この場合には、インクジェット式印字ヘッドを使用することで、印字するドット径を小さく高解像度の印字を、位置ズレの影響を最小にして高精度で印字できる。また、この結果、印字速度を高速化できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
本実施形態は、着脱可能に装着されたインクカートリッジに収容したインクを印字ヘッドから噴射させて記録紙に印字するインクジェット式印字装置に本発明を適用した場合のものである。
図1に示すように、インクジェット式印字装置1は、基本的に、本体カバー2内に設けた本体フレーム3に、ゴム製のプラテン10と、キャリッジ21を駆動するキャリッジ駆動機構20と、キャリッジ21上に取付けられたヘッドホルダー31に設けられた印字ヘッド33に形成されたインク噴射ノズルからインクを噴射させて印字するインク噴射機構30などを設けたものである。
【0018】
前記プラテン10は、図1に示すように、左右方向向きに配設され、そのプラテン軸11は左右両端部において、本体フレーム3の側壁板3a,3bに夫々回転可能に枢支され、プラテン軸11の左端部には、プラテンギヤ12が取り付けられ、このプラテンギヤ12は、図示外のプラテン駆動機構を介してフィードモータ13(図2参照)に連結されている。即ち、フィードモータ13の所定回転方向への回転がプラテン駆動機構を介してプラテンギヤ12に伝達され、そのプラテンギヤ12の回転によりプラテン10が所定の記録紙送り方向に回転駆動される。
【0019】
次に、キャリッジ駆動機構20について、図1に基づいて説明する。
前記プラテン10の前側には、キャリッジ21が水平状に配設され、そのキャリッジ21は、後端部において、プラテン10と平行に配設され、本体フレーム3に支持されたガイドロッド22により左右方向移動自在に支持されるとともに、その前端部において、本体フレーム3の前端部のガイドレール部3dにより左右方向移動自在に支持されている。
【0020】
一方、キャリッジ21の移動範囲の左端部には、従動プーリー23が側壁板3cに回転可能に枢支されるとともに、その右端部には、DCモータからなるキャリッジ駆動モータ25が設けられ、そのキャリッジ駆動モータ25の駆動軸に取付けられた駆動プーリー24と従動プーリー23とに亙って無端状のタイミングベルト26が掛け渡され、キャリッジ21の下端部においてこのこのタイミングベルト26に連結されている。
【0021】
そして、キャリッジ駆動モータ25が回転駆動されることによりり、これら両プーリー23,24とタイミングベルト26とを介して、キャリッジ21が、これらガイドロッド22及びガイドレール部3dに支持されて、プラテン10と平行な主走査方向に往復移動駆動される。
ここで、キャリッジ21の下側には、薄いフィルムからなる帯状のエンコーダ部材28が配設され、その両端部が側壁板3a,3cに取付けられている。このエンコーダ部材28には、図1に示すように、所定幅を有する黒く印刷された遮光部と、所定幅を有する透明な透過部とが微小目盛り状に形成され、これら遮光部と透光部とを、発光素子と受光素子とからなフォトセンサ29で光学的に読み取り、エンコーダ信号として出力するようになっている。
【0022】
次に、記録紙Pにインクを噴射して印字するインク噴射機構30について簡単に説明する。
前記キャリッジ21上には、上方及び下方が開放状で箱状のヘッドホルダー31が装着され、そのヘッドホルダー31には、記録用のインクを収容したインクカートリッジ32が着脱可能に装着されるとともに、そのヘッドホルダー31に立設された後壁部には、印字ヘッド33が設けられ、印字ヘッド33にはプラテン10上の記録紙Pに対し間隔をおいて開口する複数の噴射ノズルが形成されている。インクカートリッジ32のインクが印字ヘッド33の複数の噴射ノズルへ供給され、各噴射ノズルに設けられた電気的アクチュエータが選択的に駆動されることにより、複数の噴射ノズルから記録紙Pに向けてインクが噴射されて印字される。
【0023】
インクジェット式印字装置1の制御系は、図2のブロック図に示すように構成されている。
制御部41は、受信した画像データを画像処理したり、種々の周辺回路を制御するように周辺入出力インターフェースを備えた1チップCPUであり、CPU41aと、所謂プログラマブル・ペリフェラル・インターフェース(PPI)である周辺入出力インターフェース41bとで構成されている。
【0024】
制御装置40は、基本的に、この制御部41と、制御部41にデータバスなどのバス42を介して接続されたROM43及びRAM44と、周辺入出力インターフェース41bに接続された駆動回路45〜46などから構成され、キャリッジ駆動回路45にはキャリッジ駆動モータ25が接続され、駆動回路46にはフィードモータ13が接続されている。更に、周辺入出力インターフェース41bには、電源スイッチや各種のスイッチ及び表示ランプが設けられた操作パネル47、記録紙Pの有無やその先端位置を検出する用紙センサ48、キャリッジ21の原点位置を検出する原点位置検出センサ49、ホストコンピュータなどの外部電子機器51とデータ通信を行う通信用インターフェース50などが接続されている。
【0025】
前記ROM43には、通信制御の制御プログラムや画像記録の為の各種の制御プログラムと、キャリッジ駆動モータ25を加速と定速と減速とを含む所定の速度パターンで駆動制御しながら印字する印字制御の制御プログラムと、後述する駆動開始位置設定制御の制御プログラムなどが予め格納されている。また、RAM44には、受信した画像データを格納する画像データメモリ、キャリッジ21の移動位置を更新しながら記憶するキャリッジ位置メモリに加えて、画像記録に必要な各種のメモリやバッファなどが設けられている。つまり制御装置40は、印字開始位置決定手段、駆動開始位置判定手段、駆動開始位置設定手段などを構成する。
【0026】
次に、前記バス42を介して接続された印字タイミング制御部52について、図2に基づいて説明する。
印字タイミング制御部52は、フォトセンサ29から検出パルス信号を受け、この検出パルス信号をカウントすることにより印字タイミングを発生する印字タイミング発生回路52aと、制御部41から受けた印字行の印字データとこの印字タイミングとに基づいて、複数の噴射ノズルからインク噴射を実行する為の噴射駆動信号をヘッド駆動回路53に出力する印字制御回路52bとからなり、この印字タイミング制御部52は、ハードロジック回路からなる、所謂ASIC(アプリケーション・スペシフィック・インタグレーテッド・サーキット)として構成されている。
【0027】
ここで、前述したように、キャリッジ21は、ガイドロッド22及びガイドレール部3dに支持されるとともに、タイミングベルト26を介してキャリッジ駆動モータ25により、印字方向又は反印字方向へ駆動するように構成されていることから、停止状態のキャリッジ21を急激に加速して駆動した直後には、キャリッジ21とガイドロッド22及びガイドレール部3dとの移動摩擦やキャリッジ21自体の質量により、タイミングベルト26に張力が作用して延びが生じることから、図3に示すように、駆動開始直後のキャリッジ21の移動速度に速度変動が発生し、この速度変動は、加速に要する加速区間Uと、加速終了後の速度不安定区間Vとを加えた速度変動区間Tに亙って収束するようになり、それ以後において定速になる。
【0028】
ところで、複数印字行を印字する際に、各印字行毎に、キャリッジ21がキャリッジ移動可能範囲の左端位置である基準位置LMから印字方向に駆動されるときには、各印字行におけるキャリッジ21の速度変動が同期する、つまり図3の速度変動パターンはどの行でも一致して現われる。また、印字領域は、基準位置LMからその加速区間Uを隔てた位置から設けられている。
次に、インクジェット式印字装置1の制御装置40で行われる駆動開始位置設定制御のルーチンについて、図4のフローチャートに基づいて説明する。尚、図中の符号Si(i=10、11、12・・・・)は各ステップである。
【0029】
ここで、キャリッジ21は、電源投入時に原点位置検出センサ49に基づいて原点位置設定され、その後その原点位置よりも印字方向側の基準位置LMに移動され、その基準位置LMで待機している。そして、印字開始に際しては、制御部41により、フォトセンサ29から受ける検出パルス信号に基づいて、その基準位置LMからのキャリッジ21の移動位置が更新して記憶される。
【0030】
印字行毎の印字処理に際して、印字制御に先立ってこの制御が開始され、RAM44に1行分の印字データが作成されると、その印字行の先頭位置(印字開始位置)PSが、印字領域の左端(印字領域開始位置)を基準にして求められる(S11)。そして、その印字開始位置PSがキャリッジ21の速度変動区間Tにあるかどうかが判断される(S12)。即ち、速度変動区間Tのうち加速区間Uはもともと印字領域の外に設定してあるから、印字領域開始位置に速度不安定区間Vを加えた値と、印字開始位置PSとを比較すればよい。
【0031】
その印字開始位置PSが、速度不安定区間V内にあるときには(S12:Yes )、キャリッジ21が基準位置LMに移動され(S13)、キャリッジ21はその基準位置LMから印字方向への移動が開始され、その移動途中における印字開始位置PSからその印字行の印字データが記録紙Pに印字され(S15)、この制御を終了して、メインルーチンにリターンする。
【0032】
例えば、図5に示すように、第1印字行の印字データLD1の印字開始位置PSが、速度変動区間T内のときには、キャリッジ21は基準位置LMから移動が開始され、移動途中における印字開始位置PSから1行目の印字データLD1が印字される。そして、次の第2印字行の印字データLD2の印字開始位置PSが速度変動区間T内のときには、同様にして、キャリッジ21が一旦基準位置LMに移動され、基準位置LMから移動が開始され、移動途中における印字開始位置PSから2行目の印字データLD2が印字される。
【0033】
即ち、各印字行における印字開始位置が印字方向に異なる場合でも、キャリッジ21を各印字行の印字毎に基準位置LMから印字方向へ移動を開始することにより、キャリッジ21の移動開始時に発生する速度変動が各行において一致するため、速度不安定区間V内に印字するデータでも、複数印字行の印字位置に位置ズレが生じることがない。従って、複数の印字行により印字した縦罫線が直線状に揃うことになる。
【0034】
一方、基準位置LMに対する印字開始位置PSが速度変動区間T外のときには(S12:No)、キャリッジ21は、その印字開始位置PSよりも速度変動区間Tだけ基準位置LM寄りの位置Qに移動され(S14)、キャリッジ21はその位置Qから印字方向への移動が開始され、その移動途中における印字開始位置PSからその印字行の印字データが記録紙Pに印字され(S15)、メインルーチンにリターンする。
【0035】
例えば、図5に示すように、第3印字行の印字データLD3の印字開始位置PSが、速度変動区間T外のときには、キャリッジ21は、その印字開始位置PSよりも速度変動区間Tだけ基準位置LM寄りの位置Qに移動され、キャリッジ21はその位置Qから移動が開始され、移動途中における印字開始位置PSから3行目の印字データLD3が印字される。
【0036】
即ち、印字行LD3はキャリッジ21の移動開始時に発生する速度変動が収束した定速状態で印字されることになり、この行LD3と同様な印字行が複数あっても印字位置に位置ズレが生じることがない。更に、基準位置LMからキャリッジ21を移動させて印字したものと、印字開始位置PSよりも速度変動区間Tだけ基準位置LM寄りの位置からキャリッジ21を移動させて印字したものとも揃うことになる。
【0037】
以上説明したように、印字ヘッド33を搭載したキャリッジ21と、そのキャリッジ21を移動駆動するキャリッジ駆動機構20とを備えた印字装置1において、印字開始位置PSが速度変動区間T内のときには、各印字行における印字開始位置PSが印字方向に異なる場合でも、その基準位置LMからキャリッジ21の移動を開始して印字するようにキャリッジ駆動機構20を制御するので、キャリッジ21の移動開始時に発生する速度変動が各印字行において一致することになり、速度不安定区間V内に印字するデータでも複数印字行の印字位置に位置ズレが生じることがない。ここで、速度変動区間Tの一部を印字領域に重複させて設けたので、キャリッジ移動可能範囲をその重複させた分だけ小さくでき、これにより印字装置1の幅寸法を小型化できる。
【0038】
また、印字開始位置PSが速度変動区間T外のときには、印字開始位置PSよりも速度変動区間Tだけ印字開始側の位置からキャリッジ21の移動を開始して印字するようにキャリッジ駆動機構20を制御するので、印字行はキャリッジ21の移動開始時に発生する速度変動が収束した定速状態で印字されることになり、複数印字行の印字位置に位置ズレが生じることがない。この場合、キャリッジ21を基準位置LMへ戻す必要がないから、キャリッジ21のむだな動きが少なくなり、全体としての印字時間を少なくできる。
【0039】
更に、所定の基準位置は、キャリッジ移動可能範囲の左端位置なので、印字領域をその基準位置に対して、少なくともキャリッジ21の加速に要する加速区間Uだけ印字方向側に設けることで、キャリッジの移動可能範囲を有効につかって印字動作をすることができる。
【0040】
また、速度変動区間Tは、キャリッジ21の加速に要する加速区間Uと加速終了後の速度不安定区間Vとを加えたものであり、印字開始位置が速度不安定区間内であるか否かを判定するので、印字開始位置がこの速度不安定区間V外のときには、キャリッジ21の速度変動を確実に解消した定速状態で印字することができる。
ここで、前記実施形態の変更態様として、所定の基準位置は、基準位置LM以外の任意の位置に設定することができる。キャリッジ駆動モータ25は、ステッピングモータや直流モータや各種のモータで構成されたものであってもよい。
本印字装置は、インク滴を噴出するインクジェット式印字ヘッド以外に、印字ピンを記録媒体に向け移動させるドットインパクト式印字ヘッドなど、記録媒体と間隔をおいて位置し印字要素を記録媒体に向け動作させる印字ヘッドを用いるものにおいて、速度不安定区間で印字ズレを生じることなく印字できるなど優れた効果を発揮するが、サーマル式印字ヘッドなど各種の印字方式のものに適用することができる。
【0041】
【発明の効果】
請求項1の印字装置によれば、印字ヘッドを搭載したキャリッジと、そのキャリッジを移動駆動するキャリッジ駆動手段とを備え、印字データに基づいてキャリッジを印字方向に移動させながら記録媒体に印字する印字装置において、印字開始位置決定手段と、駆動開始位置判定手段と、駆動開始位置設定手段とを設け、印字開始位置が所定の基準位置を基準とする速度変動区間内のときには、各印字行における印字開始位置が印字方向に異なる場合でも所定の基準位置からキャリッジの移動を開始して印字するようにキャリッジ駆動手段を制御するので、キャリッジの移動開始時に発生する速度変動が各行において一致することになり、速度変動区間内に印字するデータでも、複数印字行の印字位置に位置ズレが生じることがない。更に、速度変動区間の一部を印字領域に重複させて設けたので、キャリッジ移動可能範囲をその重複させた分だけ小さくでき、これにより印字装置の幅寸法を小型化できる。
【0042】
また、印字開始位置が速度変動区間外のときには、印字開始位置よりも速度変動区間だけ基準位置寄りの位置からキャリッジの移動を開始して印字するようにキャリッジ駆動手段を制御するので、各印字行はキャリッジの移動開始時に発生する速度変動が収束した定速状態で夫々印字されることになり、所定の基準位置からキャリッジを移動させて印字した印字行に対して印字位置に位置ズレが生じることがないのはもちろんであり、印字開始位置よりも速度変動区間だけ基準位置寄りの位置からキャリッジを移動させて印字した印字行どうしでも位置ズレが生じない。しかもこの場合、キャリッジを基準位置から移動しないため、キャリッジのむだな移動が少なくなり、全体としての印字時間を少なくできる。
【0043】
請求項2の印字装置によれば、請求項1と同様の効果を奏するが、所定の基準位置は、キャリッジ移動可能範囲の一端位置なので、印字領域をその基準位置に対して、少なくともキャリッジの加速に要する加速区間だけ印字方向側に設けることで、キャリッジの移動可能範囲を有効に使って印字動作をすることができ、印字装置の幅寸法を一層小型化できる。
【0044】
請求項3の印字装置によれば、請求項2と同様の効果を奏するが、前記速度変動区間は、キャリッジの加速に要する加速区間と加速終了後の速度不安定区間とを加えたものであり、前記駆動開始位置判定手段は、印字開始位置が速度不安定区間内であるか否かを判定するので、印字開始位置がこの速度不安定区間外のときには、キャリッジの速度変動を確実に解消した定速状態で印字することができる。
請求項4の印字装置によれば、請求項1〜3のいずれかと同様の効果を奏し、速度変動区間においても印字ズレを生じることがないから、記録媒体と間隔をおいて位置し印字要素を記録媒体に向け動作させる印字ヘッドを使用するものにおいて、優れた効果を発揮する。
請求項5の印字装置によれば、請求項4と同様の効果を生じるが、さらにインクジェット式印字ヘッドを使用することで、印字するドット径を小さく高解像度の印字を、位置ズレの影響を最小にして高精度で印字できる。またこの結果、印字速度を高速にしても影響が少ないから、一層高速化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット式印字装置の概略斜視図である。
【図2】インクジェット式印字装置の制御系のブロック図である。
【図3】キャリッジを基準位置から移動開始するときの速度変動を説明する説明図である。
【図4】駆動開始位置設定制御のルーチンの概略フローチャートである。
【図5】印字開始位置が異なる印字行を印字するときのキャリッジ移動開始位置を説明する説明図である。
【符号の説明】
1 インクジェット式印字装置
20 キャリッジ駆動機構
21 キャリッジ
25 キャリッジ駆動モータ
33 印字ヘッド
40 制御装置
45 キャリッジ駆動回路

Claims (5)

  1. 印字ヘッドを搭載したキャリッジと、そのキャリッジを移動駆動するキャリッジ駆動手段とを備え、印字データに基づいてキャリッジを印字方向に移動させながら記録媒体に印字する印字装置において、
    前記印字データに基づいて各印字行の印字開始位置を求める印字開始位置決定手段と、
    前記印字開始位置決定手段で求めた印字開始位置が、所定の基準位置を基準としてキャリッジの駆動開始直後のキャリッジの速度変動が収束していない速度変動区間内か否かを判定する駆動開始位置判定手段と、
    前記駆動開始位置判定手段の判定結果を受け、印字開始位置が速度変動区間内のときには所定の基準位置からキャリッジの移動を開始して印字するようにキャリッジ駆動手段を制御し、印字開始位置が速度変動区間外のときには印字開始位置よりも速度変動区間だけ基準位置寄りの位置からキャリッジの移動を開始して印字するようにキャリッジ駆動手段を制御する駆動開始位置設定手段と、
    を備えたことを特徴とする印字装置。
  2. 前記所定の基準位置は、キャリッジ移動可能範囲の一端位置であることを特徴とする請求項1に記載の印字装置。
  3. 前記速度変動区間は、キャリッジの加速に要する加速区間と加速終了後の速度不安定区間とを加えたものであり、前記駆動開始位置判定手段は、印字開始位置が速度不安定区間内であるか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載の印字装置。
  4. 前記印字ヘッドは、記録媒体と間隔を置いて位置し印字要素を記録媒体に向け動作させるものであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の印字装置。
  5. 前記印字ヘッドは、記録媒体に向けてインク滴を噴出するインクジェット式のものであることを特徴とする請求項4に記載の印字装置。
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