以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。例えば、後述する各処理の実行順序は、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜変更することができる。
図1に示されるプリンタ10は、被印刷媒体の一例であるシート6(図2)にインクを吐出して画像をシート6に印刷するプリンタである。すなわち、プリンタ10は、いわゆるインクジェットプリンタである。プリンタ10は、制御装置の一例である。
また、プリンタ10は、インクを吐出するヘッド62(図2)を移動させながら画像をシート6に印刷するプリンタである。すなわち、プリンタ10は、いわゆるシリアルプリンタである。
また、プリンタ10は、インクを貯留するインクカートリッジ18(図2)がキャリッジ32(図2)に搭載されておらず、筐体11に設置されたプリンタである。
プリンタ10は、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になることを抑制しつつ、シート6に画像を印刷する。以下、詳しく説明する。
プリンタ10は、図1に示されるように、筐体11と、筐体11に保持された操作パネル12、給紙トレイ15、及び排紙トレイ16と、を備える。図示例では、操作パネル12は、筐体11の側面の上部に配置されている。以下では、操作パネル12が設けられている筐体11の側面をプリンタ10の前面として前後方向8を規定し、前後方向8及び上下方向7に直交する方向を左右方向9と規定して説明する。図示例では、給紙トレイ15及び排紙トレイ16は、操作パネル12の下方に位置している。
操作パネル12は、ディスプレイ13及び操作スイッチ14を有する。ディスプレイ13は、液晶画面と、液晶画面に重畳された透明な膜状のタッチセンサとを有する。すなわち、ディスプレイ13は、いわゆるタッチパネルである。ユーザは、ディスプレイ13をタッチすることにより、或いは、操作スイッチ14を押し操作することにより、印刷指示などの指示をプリンタ10に入力する。
また、プリンタ10は、図2に示されるように、インクカートリッジ18が着脱される装着ケース17と、シート6を搬送する搬送装置21と、搬送されるシート6にインクを吐出して画像を印刷する印刷部31とを筐体11の内部に有している。搬送装置21及び印刷部31は、印刷実行部の一例である。
装着ケース17は、筐体11の開口19(図1(B))の奥に配置されている。装着ケース17は、インクカートリッジ18を着脱自在に保持する保持部を有している。保持部は、プリンタ10の種類に応じた数だけ装着ケース17に設けられている。例えば、プリンタ10が、いわゆるモノクロプリンタである場合、装着ケース17は、ブラックのインクを貯留するインクカートリッジ18のみを装着可能に、1つの保持部のみを設けられる。プリンタ10が、いわゆるカラープリンタである場合、装着ケース17は、例えば、ブラックのインク、シアンのインク、マゼンタのインク、及びイエローのインクをそれぞれ貯留する4つのインクカートリッジ18を装着可能に、4つの保持部を設けられる。以下では、プリンタ10がカラープリンタである例を説明する。すなわち、複数のインクカートリッジ18が装着ケース17に装着される。なお、インクカートリッジ18が貯留するインクは、染料のインクであってもよいし、顔料のインクであってもよい。
複数のインクカートリッジ18は、同一の構成である。インクカートリッジ18は、インクを貯留する空間を内部に有する箱状である。インクカートリッジ18は、その内部空間と外部とを連通させる大気連通口20を外壁の上部に有する。すなわち、インクカートリッジ18の内部空間は、大気開放されている。インクカートリッジ18は、容器の一例である。
搬送装置21は、シート6が搬送される搬送路22と、給紙トレイ15に載置されたシート6を搬送路22に送り出す給送ローラ23と、搬送路22においてシート6を搬送する搬送ローラ24及び排紙ローラ25と、プラテン26と、を主に備える。
搬送路22は、例えば、不図示の複数対のガイド部材で区画された空間である。図示例では、搬送路22は、給紙トレイ15の後部から給紙トレイ15の上方へ向かってUターンし、さらに前方へ向かって延びている。
プラテン26は、後述の印刷部31がシート6に画像を印刷する際にシート6を支持する部材である。プラテン26は、給紙トレイ15の上方に位置している。
給送ローラ23は、給紙トレイ15に載置されたシート6に当接可能に設けられている。回転する給送ローラ23は、給紙トレイ15からシート6を搬送路22に送り出す。
搬送ローラ24は、筐体11に固定された不図示のフレームに回転可能に支持されている。また、搬送ローラ24は、前後方向8におけるプラテン26の後方に位置している。そして、搬送ローラ24は、ピンチローラ27とともにローラ対を構成している。回転する搬送ローラ24は、搬送路22においてシート6を搬送する。
排紙ローラ25は、筐体11に固定された不図示のフレームに回転可能に支持されている。また、排紙ローラ25は、前後方向8におけるプラテン26の前方に位置している。そして、排紙ローラ25は、拍車28とともにローラ対を構成している。回転する排紙ローラ25は、搬送路22においてシート6を搬送し、排紙トレイ16にシート6を排出する。
給送ローラ23、搬送ローラ24、及び排紙ローラ25は、搬送モータ42(図5)によって回転される。詳しく説明すると、プリンタ10は、図5に示されるように、搬送モータ42及び駆動力切替機構44を備える。
搬送モータ42は、直流電圧を供給されることによって回転駆動する直流モータである。但し、搬送モータ42は、交流モータであってもよい。
駆動力切替機構44は、例えば、切替ギアやギア列などの複数のギアによって構成されるギア切替機構である。駆動力切替機構44は、搬送モータ42の回転駆動力を、給送ローラ23、搬送ローラ24、及び排紙ローラ25に選択的に伝達する。駆動力切替機構44の構成は周知であるので、詳しい説明は省略する。なお、駆動力切替機構44を用いずに、給送ローラ23、搬送ローラ24、排紙ローラ25を個別のモータでそれぞれ回転させてもよい。
印刷部31は、図2に示されるように、プラテン26の上方に配置されている。印刷部31は、キャリッジ32と、キャリッジ32に搭載された印刷ユニット33とを備える。
キャリッジ32は、図3に示されるように、一対のガイドレール34、35によって、左右方向9に沿って移動可能に支持されている。一対のガイドレール34、35は、左右方向9に沿ってそれぞれ延びており、前後方向8に互いに離間して配置されている。
キャリッジ32を左右方向9に沿って移動させる移動装置がプリンタ10に設けられている。詳しく説明すると、プリンタ10は、移動装置として、キャリッジモータ36(図5)と、キャリッジモータ36によって回転駆動される駆動プーリと、当該駆動プーリと対になる従動プーリと、駆動プーリ及び従動プーリに架け渡された無端環ベルトと、を備える。キャリッジモータ36は、直流電圧を供給されることによって回転駆動する直流モータである。但し、キャリッジモータ36は、交流モータであってもよい。無端環ベルトは、キャリッジ32に固着されている。キャリッジ32が移動する方向である左右方向9は、相対移動方向の一例である。キャリッジモータ36は、駆動源の一例である。
キャリッジモータ36によって駆動プーリが回転駆動されると、無端環ベルトが移動される。その結果、無端環ベルトに固着されたキャリッジ32が左右方向9に沿って移動される。
キャリッジ32は、上述の移動装置によって、図9に示される第1位置と第2位置との間で往復移動される。第1位置は、例えば、キャリッジ32がプリンタ10の左部にあるときの位置である。第2位置は、例えば、キャリッジ32がプリンタ10の右部にあるときの位置である。キャリッジ32は、例えば、第1位置及び第2位置の一方から加速移動された後、等速移動され、その後、減速移動されて第1位置及び第2位置の他方で停止される。図9において、キャリッジ32が移動する範囲、すなわち、第1位置と第2位置との間は、「キャリッジ移動範囲」として示されている。図9において、キャリッジ32が加速移動される領域は、「加速領域」として示されている。図9において、キャリッジ32が等速移動する領域は、「等速移動領域」として示されている。図9において、キャリッジ32が減速移動する領域は、「減速領域」として示されている。キャリッジ32は、等速移動領域においてシート6に対向し、加速領域及び減速領域において、シート6に対向しない。キャリッジ32が等速移動している間に、キャリッジ32に搭載された後述のヘッド62が、シート6の印刷領域にインクを吐出し、当該印刷領域に画像を印刷する(走査処理)。その後、搬送ローラ24によってシート6が所定の搬送量(改行量)だけ搬送される(改行処理)。そして、キャリッジ32が再び第1位置と第2位置との間で移動されて、次の印刷領域に画像が印刷される(走査処理)。走査処理と改行処理とが交互に実行されることにより、シート6の全面に画像が印刷される。詳しくは後述される。各印刷領域は、単位印刷領域の一例である。
印刷ユニット33は、図2に示されるように、バッファタンク61及びヘッド62を備えている。バッファタンク61は、箱状に形成されており、インクを貯留する内部空間を有している。バッファタンク61は、チューブ63の一端を接続されている。チューブ63の他端は、装着ケース17に接続されている。すなわち、バッファタンク61の内部空間は、チューブ63によって、装着ケース17に装着されたインクカートリッジ18の内部空間と連通されている。インクカートリッジ18に貯留されたインクは、チューブ63を通じてバッファタンク61に供給される。チューブ63の一端は、ヘッドに接続される第2端の一例である。チューブ63の他端は、容器に接続される第1端の一例である。チューブ63の内部空間は、流路の一例である。なお、チューブ63は、可撓性を有しており、キャリッジ32の移動に伴って撓む。
バッファタンク61は、4つの流路部材64により、ヘッド62と接続されている。流路部材64は、例えば、一端(上端)がバッファタンク61に接続され、他端(下端)がヘッド62に接続されたパイプである。4つの流路部材64を通じて、各色のインクがバッファタンク61からヘッド62に供給される。
バッファタンク61の上面は、開放されている。メンブレンシート50が、バッファタンク61の上面に貼着されている。メンブレンシート50は、バッファタンク61の上面の開口を閉塞する。
メンブレンシート50は、可撓性を有している。メンブレンシート50は、インクがチューブ63からバッファタンク61内に急激に流入した際に上方に膨れるように撓み、また、インクがバッファタンク61からチューブ63に急激に流出した際に下方に凹むように撓む。メンブレンシート50が撓むことにより、チューブ63からバッファタンク61へのインクの流出入によるインク圧力の急激な変化を緩和する。インク圧力は、インクがヘッド62のメンブレンシート50や後述のマニホールド68やノズル流路69に及ぼす圧力を意味する。
例えば、キャリッジ32の加速移動や減速移動によってバッファタンク61やチューブ63内のインクに慣性力が作用する。インクに作用する慣性力によって、チューブ63からバッファタンク61へのインクの流出入が生じる。すなわち、バッファタンク61は、キャリッジ32の加減速移動によって生じるインク圧力の急激な変化を緩和する。
ヘッド62は、バッファタンク61の下方に位置している。ヘッド62は、流路部材64の下端と接続された4つの流入口65を有している。各色のインクは、4つの流路部材64を通じて、バッファタンク61から4つの流入口65にそれぞれ流れ込む。
ヘッド62は、図4に示されるように、流入口65から流入したインクを吐出する4つのノズル列66を有する。各ノズル列66は、複数のノズル67をそれぞれ有する。各ノズル列66は、各色のインクをそれぞれ吐出する。
一の流入口65と、一のノズル列66の複数のノズル67とは、図2の拡大図に示されるように、一のマニホールド68及び複数のノズル流路69によって接続されている。マニホールド68及びノズル流路69の構成は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色について同一である。具体的には、ブラックのインクが流通するマニホールド68及びノズル流路69と、シアンのインクが流通するマニホールド68及びノズル流路69と、マゼンタのインクが流通するマニホールド68及びノズル流路69と、イエローのインクが流通するマニホールド68及びノズル流路69とは、同一の構成であって、左右方向9(図2の紙面に直交する方向)に並んで設けられている。
マニホールド68は、流入口65から前後方向8における前方へ向かって延びている。複数のノズル流路69は、マニホールド68から下方へ向かって、ヘッド62の下面までそれぞれ延びている。ヘッド62の下面における複数のノズル流路69の各開口が、複数のノズル67である。
複数のノズル流路69は、前後方向8に沿って並んでおり、前後方向8において互いに離間している。ノズル流路69間の離間距離は、一定である。すなわち、図4に示されるように、各ノズル列66において、複数のノズル67は、前後方向8に沿って一定間隔で並んでいる。
図2に示されるように、圧電素子70が、各ノズル流路69にそれぞれ設けられている。すなわち、ヘッド62は、複数の圧電素子70を有する。圧電素子70は、直流電圧を供給されることによって変形する素子である。圧電素子70は、変形することにより、ノズル流路69内のインクに圧力を加えてノズル67からインク(インク滴)を吐出させる。チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などが圧電素子70として用いられる。圧電素子70は、駆動素子の一例である。なお、圧電素子70に代えて、電力を供給されることによって発熱するヒータが駆動素子として用いられてもよい。ヒータは、発熱することにより、ノズル流路69内のインクを突沸させてノズル67からインク(インク滴)を吐出させる。
上下方向7における複数のノズル67の高さ位置は、インクカートリッジ18における液面の高さ位置よりも上方に位置している。したがって、大気圧によってノズル67からインクが吐出されることがない。そして、ヘッド62からインクカートリッジ18へのインクの逆流は、ノズル67におけるインクのメニスカスによって防止される。すなわち、ノズル67におけるインクのメニスカスが破壊されると、ノズル67からヘッド62内にエアが進入し、インクカートリッジ18からヘッド62へのインクの供給が阻害される。
プリンタ10は、上述の搬送モータ42、キャリッジモータ36、及び圧電素子70などに電力を供給する電源回路41と、搬送モータ42、キャリッジモータ36、及び圧電素子70の駆動を制御する制御装置71と、種々のセンサやスイッチ等と、を備える。
電源回路41や制御装置71は、例えば、制御基板及び当該制御基板に実装されたICや、マイクロコンピュータや、コイルや、コンデンサや、抵抗などによって実現される。すなわち、プリンタ10は、電源回路41や制御装置71を実現する一乃至複数の制御基板ユニットを有している。
電源回路41は、入力される商用の交流電圧を、所定の電圧値の直流電圧に変換する回路である。電源回路41は、例えば、スイッチングレギュレータや、シリーズレギュレータや、ツェナーダイオード等を用いた定電圧回路などを組み合わせて形成される。電源回路41が出力する直流電圧は、ディスプレイ13や、制御装置71や、後述の通信I/F75や、キャリッジモータ36や、搬送モータ42などに供給される。
切替スイッチ38及びスイッチング素子37が、電源回路41とキャリッジモータ36との間に設けられている。切替スイッチ38は、キャリッジモータ36に供給される直流電圧の正負を切り替えるスイッチである。切替スイッチ38は、制御装置71からの制御信号を入力されることによって接点を切り換え、キャリッジモータ36に供給される直流電圧の正負を切り替える。キャリッジモータ36に供給される直流電圧の正負が切り替えられることにより、キャリッジモータ36の回転の向きが切り替えられる。キャリッジモータ36の回転の向きが切り替えられることにより、キャリッジ32の移動の向きが切り替えられる。すなわち、制御装置71は、切替スイッチ38の駆動を制御することにより、キャリッジ32の移動の向きを制御する。
スイッチング素子37は、例えばMOSFETである。スイッチング素子37は、制御装置71から一定周波数の駆動信号を入力されることにより、オンオフする。制御装置71は、スイッチング素子37に入力する一定周波数の駆動信号のデューティ比を変化させることにより、キャリッジモータ36に供給される単位時間当たりの電力量を制御する。すなわち、制御装置71は、いわゆるPWM制御により、キャリッジモータ36の回転速度を制御する。また、制御装置71は、スイッチング素子37や切替スイッチ38の駆動を制御して、キャリッジモータ36を回転駆動させ、或いはキャリッジモータ36の回転を停止させて、キャリッジモータ36を駆動させたときのキャリッジモータ36の回転量を制御する。制御装置71は、キャリッジモータ36の回転量を制御することにより、キャリッジ32の移動量を制御する。
なお、切替スイッチ38及びスイッチング素子37を用いたキャリッジモータ36の回転の向きや回転速度の制御は一例であって、他の方法が用いられてキャリッジモータ36の回転の向きや回転速度の制御が行われてもよい。
切替スイッチ45及びスイッチング素子43が、電源回路41と搬送モータ42との間に設けられている。切替スイッチ45は、搬送モータ42に供給される直流電圧の正負を切り替えるスイッチである。切替スイッチ45は、制御装置71からの制御信号を入力されることによって接点を切り換え、搬送モータ42に供給される直流電圧の正負を切り替える。搬送モータ42に供給される直流電圧の正負が切り替えられることにより、搬送モータ42の回転の向きが切り替えられる。
スイッチング素子43は、例えばMOSFETである。制御装置71は、スイッチング素子37と同様に、PWM制御によって搬送モータ42の回転速度を制御する。また、制御装置71は、スイッチング素子43や切替スイッチ45の駆動を制御して、搬送モータ42を回転駆動させ、或いは搬送モータ42の回転を停止させて、搬送モータ42を駆動させたときの搬送モータ42の回転量を制御する。制御装置71は、搬送モータ42の回転量を制御することにより、シート6の搬送量を制御する。
なお、切替スイッチ45及びスイッチング素子43を用いた搬送モータ42の回転の向きや回転速度の制御は一例であって、他の方法が用いられて搬送モータ42の回転の向きや回転速度の制御が行われてもよい。
後述の制御装置71が、シート6の搬送量及び位置や、キャリッジ32の移動量及び位置などを正確に制御できるように、プリンタ10は、種々のセンサとして、リニアエンコーダ51、ロータリエンコーダ52、及びレジセンサ57を備える。
リニアエンコーダ51は、キャリッジ32の位置を検出するセンサである。リニアエンコーダ51は、図3に示されるように、ガイドレール34に設けられた読取部53と、キャリッジ32に設けられたフォトインタラプタ54とを備える。読取部53は、光を透過する透光部と、光を遮光する遮光部とが左右方向9に沿って交互に並ぶ構成を有する。フォトインタラプタ54は、キャリッジ32の移動に伴って読取部53を走査し、複数のパルスからなるパルス列を出力する。フォトインタラプタ54が出力したパルス列は、制御装置71に入力される。制御装置71は、入力したパルス列によって、キャリッジモータ36の駆動を制御する。
ロータリエンコーダ52は、搬送ローラ24の回転速度や回転量を検出するセンサである。ロータリエンコーダ52は、搬送ローラ24と一体で回転する円板状のエンコーダディスク55と、フォトインタラプタ56とを備える。エンコーダディスク55は、光を透過する透光部と、光を遮光する遮光部とが周方向に沿って交互に並ぶ構成を有する。フォトインタラプタ56は、エンコーダディスク55の回転に伴ってエンコーダディスク55を走査し、複数のパルスからなるパルス列を出力する。フォトインタラプタ56が出力したパルス列は、制御装置71に入力される。制御装置71は、入力したパルス列によって、搬送モータ42の駆動を制御する。
図5に示されるレジセンサ57は、前後方向8における搬送ローラ24(図2)の後方となる位置に設けられている。すなわち、レジセンサ57は、シート6の搬送向きにおける搬送ローラ24よりも上流となる位置に設けられている。レジセンサ57は、例えば、搬送路22を搬送されるシート6に押されることによって回動する回動部材と、回動部材の回動位置を検出するフォトインタラプタとを有する。レジセンサ57が出力する信号の電圧値は、シート6の先端がレジセンサ57を通過することにより、変化する。
レジセンサ57が出力する信号は、制御装置71に入力される。制御装置71は、例えば、レジセンサ57から入力する信号の電圧値が変化したことを起点としてロータリエンコーダ52が出力するパルスの数をカウントする。制御装置71は、当該パルスの数のカウント値(積算値)により、シート6の先端位置を特定する。制御装置71は、例えば、レジセンサ57及びロータリエンコーダ52から入力される信号を用いて、シート6の先端の位置がヘッド62に対向する所定の頭出し位置に到達するまでシート6を搬送する頭出し処理を実行する。
図5に示されるように、制御装置71は、中央演算処理装置であるCPU72と、記憶部73と、通信バス74とを備える。通信バス74は、CPU72や、記憶部73や、ディスプレイ13や、スイッチング素子37、43や、電源回路41や、通信インタフェース(以下、通信I/Fと記載する)75を接続されている。通信I/F75は、例えば、USBケーブルやLANケーブルや無線LANなどを用いた通信回線との接続を行うインタフェースである。通信回線は、インターネットや、LAN(ローカルエリアネットワーク)などである。プリンタ10は、通信I/F75を通じて、サーバや携帯端末やパーソナルコンピュータなどの機器と通信を行う。プリンタ10は、例えば、携帯端末やパーソナルコンピュータから、通信I/F75を通じて印刷指示を受け付ける。
記憶部73は、ROM76と、RAM77と、EEPROM78とを備える。ROM76は、オペレーティングシステム(以下、OSと記載する)81と、制御プログラム82とを記憶する。制御プログラム82は、単一のプログラムであってもよいし、複数のプログラムの集合体であってもよい。制御プログラム82は、例えば、ユーザの入力操作を受け付けるUIモジュールと、通信I/F75を通じて他の機器と通信を行う通信モジュールと、電源回路41の動作を制御する電源モジュールと、搬送装置21や印刷部31の制御を行う印刷モジュールとで構成される。複数のプログラム(モジュール)は、例えばマルチタスクによって、擬似的に並行して、CPU72によって実行される。制御プログラム82を実行するCPU72は、制御部の一例である。制御プログラム82は、プログラムの一例である。記憶部73は、メモリの一例である。
また、ROM76は、速度関数V(t)及び閾値を記憶する。速度関数V(t)は、キャリッジ32が加速移動する際や、キャリッジ32が等速移動する際や、キャリッジ32が減速移動する際のキャリッジ32の速度の制御に用いられる。詳しく説明すると、制御プログラム82は、速度関数V(t)を記憶部73から読み出す。そして、制御プログラム82は、所定のデューティ比でスイッチング素子37を駆動させる。そして、制御プログラム82は、リニアエンコーダ51から入力されるパルス列に基づいて、キャリッジ32の移動速度を算出する。制御プログラム82は、算出したキャリッジ32の時刻tにおける移動速度(以下、キャリッジ速度とも記載する)が、速度関数V(t)が示す時刻tでの速度(以下、目標速度とも記載する)よりも、どれくらい遅いか、或いは、どれくらい速いかを判断する。制御プログラム82は、キャリッジ速度が目標速度よりも遅いと判断すると、キャリッジ速度と目標速度との差に応じてデューティ比を上げてキャリッジモータ36を駆動させる。制御プログラム82は、キャリッジ速度が目標速度よりも速いと判断すると、キャリッジ速度と目標速度との差に応じてデューティ比を下げてキャリッジモータ36を駆動させる。すなわち、制御プログラム82は、キャリッジ速度が、速度関数V(t)が示す速度に一致するように、キャリッジモータ36に供給する電力量を制御する。
閾値は、ヘッド62へのインクの供給が不十分になるか否かの判断に用いられる。詳しくは後述される。なお、速度関数V(t)及び閾値は、ROM76ではなく、EEPROM78に記憶されていてもよい。また、速度関数V(t)及び閾値は、プリンタ10の出荷時において記憶部73に予め記憶される。
RAM77は、OS81や制御プログラム82の実行に必要なデータなどを一時記憶する。EEPROM78は、例えば、プリンタ10の電源OFF後も保持すべきデータなどを記憶する。
以下、図6、図7、及び図9を参照して、制御プログラム82が実行する処理について説明する。具体的には、制御プログラム82が、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になることを抑制しつつ、ヘッド62にインクを吐出させてシート6に画像を印刷する処理について説明する。
制御プログラム82は、図6に示されるメイン処理を実行する。まず、制御プログラム82は、印刷指示が入力されたか否かを判断する(S11)。印刷指示は、例えば、操作パネル12において、ディスプレイ13のタッチセンサや操作スイッチ14を用いてプリンタ10に入力される。或いは、印刷指示は、通信I/F75を通じて、パーソナルコンピュータや携帯端末からプリンタ10に入力される。
制御プログラム82は、印刷指示が入力されていないと判断すると(S11:No)、メイン処理を終了する。制御プログラム82は、印刷指示が入力されたと判断すると(S11:Yes)、ステップS12以降の処理を実行する。なお、制御プログラム82は、例えば、メイン処理を定期的に実行する。
制御プログラム82は、印刷指示が入力されたと判断すると(S11:Yes)、印刷データが入力されたか否かを判断する(S12)。印刷データは、例えば、通信I/F75を通じてパーソナルコンピュータや携帯端末から制御装置71に入力される。或いは、印刷データは、プリンタ10に装着されたUSBメモリ(登録商標)などの可搬記憶媒体から制御装置71に入力される。或いは、プリンタ10がスキャナを有している場合、印刷データは、コピーすべき画像のデータとして、スキャナから入力される。さらに或いは、プリンタ10がFAX機能部を有している場合、印刷データは、FAX機能部から入力される。印刷データの入力を受け付けて印刷データを取得するステップS12:Yesの処理は、取得処理の一例である。
印刷データは、印刷設定やパスデータなどを含む。印刷設定は、例えば、用紙の種類や、用紙のサイズや、用紙の印刷の向きや、拡大率などの設定を含む。パスデータは、キャリッジ32が第1位置及び第2位置の一方から他方への1回の移動によってシート6の印刷領域(図9)に印刷される画像を示すデータ(以下、1パス分のパスデータとも記載する)である。例えば、制御プログラム82は、1パス分のパスデータを、パーソナルコンピュータや携帯端末やUSBメモリ(登録商標)から順次取得する。なお、記憶部73の空き容量に余裕があれば、制御プログラム82は、複数パス分のパスデータや、1ページ分のパスデータを取得してもよい。「パス」は、キャリッジ32における第1位置及び第2位置の一方から他方への移動を意味する。
以下では、図9に示す例にしたがって、ステップS13以降の処理を説明する。図9に示す例では、まず、シート6の先端部の「最初の印刷領域」がヘッド62に対向する位置までシート6が搬送される頭出し処理(S19)が実行される。次いで、キャリッジ32が第1位置から第2位置まで移動されつつヘッド62からインクが吐出され、「最初の印刷領域」に画像が印刷される(1パス目)。その後、「次の印刷領域」がヘッド62に対向する移動距離である「改行量」だけシート6が搬送される。そして、キャリッジ32が第2位置から第1位置まで移動されつつヘッド62からインクが吐出され、「次の印刷領域」に画像が印刷される(2パス目)。制御プログラム82は、メイン処理において、「最初の印刷領域」及び「次の印刷領域」に画像が印刷される際に、ヘッド62へのインクの供給量が不十分にならないように、搬送モータ42、キャリッジモータ36、及び圧電素子70の駆動を制御する。
なお、図9に示す上のグラフは、キャリッジ32が第1位置から第2位置に移動しつつヘッド62からインクが吐出する場合におけるインクがヘッド62に及ぼす圧力と、キャリッジ32の位置との関係を示している。縦軸は、圧力を示し、横軸は、キャリッジ32の位置を示す。図9に示す下のグラフは、キャリッジ32が第2位置から第1位置に移動しつつヘッド62からインクが吐出する場合におけるインクがヘッド62に及ぼす圧力と、キャリッジ32の位置との関係を示している。縦軸は、圧力を示し、横軸は、キャリッジ32の位置を示す。圧力は、大気圧を基準値ゼロとして示されている。すなわち、ヘッド62からのインクの吐出によって低下するインク圧力は、負圧として示される。図9に示される「境界位置」及び「吐出停止位置」については、変形例5において説明される。
制御プログラム82は、印刷データを取得するまで待機する(S12:No)。制御プログラム82は、印刷データを取得したと判断すると(S12:Yes)、「最初の印刷領域」に印刷を行った場合のインク圧力、及びインク圧力の最小値であるインク圧力最小値を決定するインク圧力最小値決定処理を実行する(S13)。すなわち、制御プログラム82は、図9の上のグラフに実線で示されたインク圧力と、インク圧力最小値「-A」とを決定するインク圧力最小値決定処理を実行する。
インク圧力の低下について詳しく説明する。圧電素子70が変形してノズル67からインクが吐出された後、圧電素子70が元の形状に復帰すると、インクがマニホールド68やノズル流路69に及ぼす圧力であるインク圧力が低下する。インク圧力が低下することにより、バッファタンク61を通じてインクカートリッジ18からインクがヘッド62内に引き込まれ、インク圧力が元の圧力(大気圧)に復帰する。インク圧力が元の圧力に復帰する前に圧電素子70が連続して駆動されると、インク圧力が徐々に低下する。
図7(A)を参照して、インク圧力最小値決定処理について説明する。まず、制御プログラム82は、最初のパスであるか否かを判断する(S31)。すなわち、制御プログラム82は、「最初の印刷領域」への画像の印刷か否かを判断する。
制御プログラム82は、最初のパスであると判断すると(S31:Yes)、残留圧力値をゼロに決定する(S32)。制御プログラム82は、最初のパスでないと判断すると(S31:No)、残留圧力値を記憶部73のEEPROM78またはRAM77から読み出して取得する(S33)。残留圧力値は、後述する残留圧力決定処理(図7(C))のステップS55において、記憶部73のEEPROM78またはRAM77に記憶される値である。なお、記憶部73に記憶される残留圧力値の初期値をゼロとして、制御プログラム82は、最初のパスであると判断すると、ゼロである残留圧力値を読み出してもよい。この場合、メイン処理の終了時点、例えば、後述のステップS25の実行後に、記憶部73に記憶される残留圧力値を初期値に上書きする処理が設けられる。
制御プログラム82は、図7(A)に示されるように、残留圧力値をゼロに決定し(S32)、或いは、残留圧力値を記憶部73から読み出した後(S33)、ステップS12で取得した印刷データ(パスデータ)に基づいて、各圧電素子70の駆動回数及び圧電素子70に供給する直流電圧の電圧値をそれぞれ決定する。そして、制御プログラム82は、圧電素子70の駆動回数及び圧電素子70に供給する電圧値に基づいて、各ノズル列66における1パスでのインクドット数をそれぞれ算出して決定する(S34)。インクドット数は、一のノズル列66が吐出するインクの総量を示す数値である。
制御プログラム82は、例えば、一定電圧の電圧値の直流電圧を供給して圧電素子70を駆動させる回数を、インクドット数として算出する。具体的に説明すると、制御プログラム82は、例えば、取得したパスデータに基づいて、圧電素子70に供給する直流電圧の電圧値を、「大」、「中」、「小」に分けて決定する。圧電素子70に「大」の電圧値の直流電圧が供給されると、ノズル67は、「大玉」のインク滴を吐出する。圧電素子70に「中」の電圧値の直流電圧が供給されると、ノズル67は、「中玉」のインク滴を吐出する。圧電素子70に「小」の電圧値の直流電圧が供給されると、ノズル67は、「小玉」のインク滴を吐出する。例えば、「中玉」のインク滴が「大玉」のインク適のa%であり、「小玉」のインク滴が「大玉」のインク適のb%である。制御プログラム82は、1パスにおいて全て「大玉」が吐出されるものとして、「大玉」が吐出される回数をインクドット数として算出する。すなわち、制御プログラム82は、ノズル67が吐出するインク適を全て「大玉」に換算してインクドット数を算出する。
制御プログラム82は、ステップS34で算出したインクドット数と、ステップS32又はステップS33で取得した残留圧力値とを用いて、ステップS23(図6)で実行する走査処理におけるインク圧力を決定する(S35)。
詳しく説明すると。まず、制御プログラム82は、インクドット数に基づいて、ヘッド62からのインクの吐出によって低下する圧力(以下、低下圧力と記載する)を決定する。記憶部73のROM76またはEEPROM78は、例えば、インクドット数と低下圧力との対応が示されたテーブル、または、インクドット数から低下圧力を算出する計算式を予め記憶する。制御プログラム82は、インクドット数に対応する低下圧力を記憶部73から読み出して決定する。或いは、制御プログラム82は、インクドット数と、記憶部73から読み出した計算式とを用いて、低下圧力を算出して決定する。なお、インクドット数に基づいて低下圧力を決定する方法は、上述の方法に限定されない。他の方法によって、低下圧力が決定されてもよい。
次に、制御プログラム82は、決定した低下圧力に、ステップS32、S33で取得した残留圧力値を加えて、インク圧力を決定する(S35)。図9に示す例では、ステップS35で、上のグラフに実線で示されたインク圧力が決定される。
制御プログラム82は、ステップS35で決定したインク圧力の最小値を、インク圧力最小値に決定し、記憶部73のEEPROM78またはRAM77に記憶し(S36)、インク圧力最小値決定処理を終了する。図9に示す例では、インク圧力最小値「-A」が記憶部73に記憶される。ステップS35、S36で決定されるインク圧力及びインク圧力最小値は、第2インク圧力値の一例である。インク圧力及びインク圧力最小値を決定するステップS35、S36の処理は、第2インク圧力値決定処理の一例である。
制御プログラム82は、図6に示されるように、ステップS13のインク圧力最小値決定処理の実行後、インク圧力最小値決定処理で決定したインク圧力最小値が、記憶部73のROM76に記憶された閾値以上か否かを判断する(S14)。ステップS14の処理は、判断処理の一例である。インク圧力最小値が閾値以上であることは、第2インク圧力値が閾値に達していないことの一例である。インク圧力最小値が閾値以上でないことは、第2インク圧力値が閾値に達していることの一例である。
なお、ステップS13、S14の処理は、ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの各色のインクについて、それぞれ実行される。すなわち、全ての色についてインク圧力及びインク圧力最小値が決定され、全ての色についてインク圧力最小値が閾値以上であるか否かが判断される。制御プログラム82は、ステップS14において、全ての色についてインク圧力最小値が閾値以上である場合に、インク圧力最小値が閾値以上であると判断する。制御プログラム82は、ステップS14において、1つの色でもインク圧力最小値が閾値以上でないと判断すると、インク圧力最小値が閾値以上でないと判断する。
閾値は、例えば、インク圧力最小値が当該閾値に到達すると、ヘッド62へのインクの供給量が不十分となって、適切な量のインクがヘッド62から吐出されずに印刷の精度が低下したり、ノズル67におけるインクのメニスカスが破壊されてヘッド62内にエアが進入したりする値として設定される。具体的には、閾値は、ノズル67の直径に応じた値に設定される。例えば、閾値(負の値)は、ノズル67の直径が大きいほど、小さな値とされる。
制御プログラム82は、インク圧力最小値が閾値以上であると判断すると(S14:Yes)、最終圧力値を記憶部73のEEPROM78或いはRAM77に記憶させる(S15)。具体的には、制御プログラム82は、インク圧力最小値決定処理のステップS35で決定したインク圧力に基づいて、インク圧力の最終値を最終圧力値に決定し、記憶部73に記憶させる。図9に示す例では、最終圧力値「-A」が記憶部73に記憶される。ステップS15で記憶部73に記憶される最終圧力値は、第1インク圧力値の一例である。最終圧力値を決定するステップS15の処理は、第1インク圧力値決定処理の一例である。
制御プログラム82は、ステップS15の処理の実行後、再演算フラグに「ON」が設定されているか否かを判断し(S16)、再演算フラグに「ON」が設定されていないと判断すると(S16:No)、ステップS17で残留圧力値決定処理を実行する。再演算フラグについては後述される。
残留圧力値決定処理は、残留圧力値を決定する処理である。図9を参照して、残留圧力値について説明する。1パス目の最終圧力値は、「-A」である。1パス目の終了後、改行量だけシート6が搬送される間、キャリッジ32の移動が停止されるとともに、ヘッド62からのインクの吐出も停止される。ヘッド62からのインクの吐出が停止されることにより、「-A」であったインク圧力が「-B」まで回復する。「-B」が、2パス目における残留圧力値である。
図7(C)を参照して、残留圧力値決定処理について説明する。まず、制御プログラム82は、ステップS12で取得した印刷データに基づいて、改行時間を決定する(S51)。改行時間は、改行量だけシート6を搬送するのに要する時間である。例えば、制御プログラム82は、取得した印刷データに基づいて、シート6の改行量を決定する。記憶部73のROM76またはEEPROM78は、改行量と改行時間との対応が示されたテーブル、或いは、改行量から改行時間を算出する計算式を予め記憶する。制御プログラム82は、決定した改行量に対応する改行時間を記憶部73に記憶されたテーブルから選択して決定し、或いは、決定した改行量と、記憶部73から読み出した計算式とに基づいて、改行時間を算出して決定する。
また、制御プログラム82は、ステップS15で記憶部73に記憶させた最終圧力値と、後述の待機時間決定処理のステップS43で記憶部73に記憶させた待機時間とを記憶部73から読み出して取得する(S52)。なお、待機時間の初期値はゼロである。すなわち、待機時間決定処理で待機時間が決定されていない場合、ゼロの待機時間が記憶部73から読み出される。
制御プログラム82は、記憶部73から読み出した待機時間と、ステップS51で決定した改行時間とに基づいて、インク圧力が回復する量を示す回復値を決定する(S53)。具体的に説明すると、まず、制御プログラム82は、取得した待機時間と改行時間とを足し合わせて総時間を算出する。記憶部73のROM76またはEEPROM78は、総時間と回復値との対応が示されたテーブル、または、総時間から回復値を算出する計算式を予め記憶する。制御プログラム82は、算出した総時間に対応する回復値を記憶部73に記憶されたテーブルから選択して決定し、或いは、算出した総時間と、記憶部73から読み出した計算式とに基づいて、回復値を算出して決定する。回復値を決定するステップS53の処理は、回復値決定処理の一例である。
なお、上述のように、待機時間の初期値はゼロであるので、後述の待機時間決定処理で待機時間が決定されていない場合、制御プログラム82は、改行時間のみに基づいて、回復値を決定することになる。
制御プログラム82は、ステップS53で決定した回復値を、ステップS52で取得した最終圧力値に加えて、残留圧力値を算出する(S54)。なお、残留圧力値が正の値になる場合は、残留圧力値は、上限値のゼロにされる。
制御プログラム82は、算出した残留圧力値を記憶部73のEEPROM78またはRAM77に記憶させ(S55)、残留圧力値決定処理を終了する。図9に示す例では、残留圧力値「-B」が記憶部73に記憶される。
制御プログラム82は、ステップS17の残留圧力値決定処理の実行後、再演算フラグに「ON」が設定されているか否かを判断する(S18)。制御プログラム82は、再演算フラグに「ON」が設定されていないと判断すると(S18:No)、頭出し処理を実行する(S19)。
頭出し処理は、「最初の印刷領域」(図9)がヘッド62に対向する位置までシート6を搬送する処理である。詳しく説明すると、制御プログラム82は、ステップS12で取得した印刷データに基づいて、頭出し量を決定する。頭出し量とは、「最初の印刷領域」がヘッド62に対向する位置に到達するまでのシートの搬送量である。
制御プログラム82は、搬送モータ42を駆動させてシート6を搬送し、ロータリエンコーダ52から入力するパルスのカウント数が、決定した頭出し量に応じた数値に到達したことに応じて、搬送モータ42の駆動を停止させる。
制御プログラム82は、ステップS19の頭出し処理の実行後、ステップS20からS22までの処理を実行する。ステップS20からS22までの処理については、後述される。
制御プログラム82は、ステップS20からS22までの処理の実行後、キャリッジ32を第1位置及び第2位置の一方から他方へ移動させつつヘッド62からインクを吐出させる走査処理を実行する(S23)。図9に示す例では、キャリッジ32が第1位置から第2位置に移動されつつ、ヘッド62からシート6にインクが吐出され、「最初の印刷領域」に画像が印刷される。
制御プログラム82は、ステップS23の走査処理の実行後、待機フラグに「OFF」を設定する(S24)。具体的には、制御プログラムは、待機フラグとして設定されたEEPROM78の記憶領域に「OFF」を記憶させる。また、制御プログラム82は、待機時間をゼロにリセット、或いはゼロで上書きする(S24)。待機フラグ及び待機時間については後述される。
次に、制御プログラム82は、次パスがあるか否かを判断する(S25)。次パスがあるか否かとは、画像を印刷した印刷領域の次の印刷領域があるか否かを意味する。制御プログラム82は、次パスがあるか否かを、ステップS12で取得した印刷データに基づいて判断する。
制御プログラム82は、次パスがないと判断すると(S25:No)、搬送モータ42を介して排紙ローラ25を回転させ、シート6を排紙トレイ16まで搬送させて、メイン処理を終了する。なお、印刷指示が複数のページの印刷を指示する場合、制御プログラム82は、次のページがあるか否かを判断し、次のページがあると判断すると、ステップS12以降の処理を継続して実行する。
制御プログラム82は、次パスがあると判断すると(S25:Yes)、ステップS12以降の処理を再度実行する。図9に示される例では、制御プログラム82は、「次の印刷領域」への印刷がある(次パスがある)と判断する(S25:Yes)。
制御プログラム82は、2パス目のパスデータを含む印刷データを取得する(S12)。次に、制御プログラム82は、インク圧力最小値を決定する(S13)。具体的には、制御プログラム82は、取得した印刷データと、ステップS17で記憶部73に記憶させた残留圧力値「-B」とを用いて、インク圧力及びインク圧力最小値を決定する(S35、S36)。図9に示す例では、制御プログラム82は、インク圧力として、下のグラフに破線で示されたインク圧力と、インク圧力最小値「-C」とを決定する。
制御プログラム82は、決定したインク圧力最小値が閾値以上か否かを判断する(S14)。図9の下のグラフに示す例では、インク圧力最小値「-C」は、閾値未満である。制御プログラム82は、決定したインク圧力最小値が閾値以上でないと判断すると(S14:No)、待機フラグに「ON」を設定する(S27)。また、制御プログラム82は、再演算フラグに「ON」を設定する(S27)。具体的には、制御プログラム82は、再演算フラグとして設定されたEEPROM78の記憶領域に「ON」を記憶させる。なお、待機フラグの初期値及び再演算フラグの初期値は、ともに「OFF」である。
次に、制御プログラム82は、待機時間決定処理を実行する(S28)。待機時間決定処理は、待機時間を決定する処理である。待機時間は、改行量だけシート6を搬送した後、キャリッジ32の停止が維持される時間である。図7(B)を参照して、待機時間決定処理について説明する。
制御プログラム82は、ステップS37で記憶部73のEEPROM78またはRAM77に記憶させた最終圧力値を記憶部73から読み出す(S41)。図9に示す例では、記憶部73から読み出される最終圧力値は、「-A」である。
制御プログラム82は、読み出した最終圧力値に基づいて、待機時間を決定する。具体的には、記憶部73のROM76またはEEPROM78は、例えば、最終圧力値と待機時間との対応が示されたテーブル、または、最終圧力値から待機時間を算出する計算式を予め記憶する。制御プログラム82は、最終圧力値に対応する待機時間を記憶部73から読み出す。或いは、制御プログラム82は、最終圧力値と、記憶部73から読み出した計算式とを用いて、待機時間を算出して決定する。待機時間は、例えば、最終圧力値が小さいほど、長い時間に決定される。すなわち、最終圧力値が小さいほど、待機時間が長くされ、インク圧力が、より回復される。また、記憶部73が記憶するテーブルが示される圧力値や計算式は、ステップS22で実行される走査処理でインク圧力最小値が閾値を超えないように決定される。記憶部73が記憶するテーブルに示された圧力値や計算式は、例えば、テストなどによって決められる。
なお、待機時間を決定する方法は、上述の方法に限定されない。他の方法によって、待機時間が決定されてもよい。例えば、制御プログラム82は、記憶部73のROM66やEEPROM78に予め記憶された固定値としての待機時間を記憶部73から読み出して決定してもよい。或いは、制御プログラム82は、最終圧力値に代えて、ステップS17で記憶部73に記憶させた残留圧力値を記憶部73から読み出し、残留圧力値に基づいて、待機時間を決定してもよい。記憶部73は、残留圧力値と待機時間との対応を示すテーブル、或いは、残留圧力値から待機時間を決定する計算式を予め記憶する。
制御プログラム82は、ステップS42で決定した待機時間を記憶部73のEEPROM78またはRAM77に記憶させ(S43)、待機時間決定処理を終了する。
制御プログラム82は、図6に示されるように、ステップS28の待機時間決定処理の実行後、残留圧力値決定処理を実行する(S17)。図9に示す例では、制御プログラム82は、ステップS28の待機時間決定処理で決定した待機時間と、記憶部73に記憶された「-A」の最終圧力値と、ステップS51で決定した改行時間とに基づいて、残留圧力値を再度決定する。すなわち、制御プログラム82は、待機時間が設定されたことによって「-B」からさらに回復する残留圧力値を決定する。図9に示す例では、制御プログラム82は、残留圧力値「0」を決定する。
制御プログラム82は、ステップS17で残留圧力値を再度決定した後、再演算フラグに「ON」が設定されているか否かを判断する(S18)。制御プログラム82は、再演算フラグに「ON」が設定されていると判断したことに応じて(S18:Yes)、インク圧力最小値決定処理を再度実行する(S13)。詳しく説明すると、待機時間が設定されたことにより、インク圧力は、図9の下のグラフに破線で示されたインク圧力から、実線で示されたインク圧力に変わる。制御プログラム82は、2パス目の次のパスにおける残留圧力値を決定するために、実線で示されたインク圧力を、インク圧力最小値決定処理を再度実行することによって決定する。なお、フローチャートには示されていないが、制御プログラム82は、取得した印刷データに基づいて次のパス(3パス目)があるか否かを判断し、次のパスが無いと判断すると、インク圧力最小値決定処理を再度実行することなく、ステップS19の改行処理以降の処理を実行してもよい。
制御プログラム82は、再度実行するステップS13のインク圧力最小値決定処理において、残留圧力値「-B」ではなく、再度決定された残留圧力値「0」を用いてインク圧力及びインク圧力最小値を決定する。図9に示す例では、制御プログラム82は、下のグラフに実線で示されたインク圧力、及びインク圧力最小値「-D」を決定する。
制御プログラム82は、決定したインク圧力最小値が閾値以上か否かを判断する(S14)。図9に示す例では、インク圧力最小値「-D」は閾値以上であるので、制御プログラム82は、インク圧力最小値が閾値以上であると判断する(S14:Yes)。そして、制御プログラム82は、決定したインク圧力の最終値である最終圧力値を決定し、記憶部73に記憶させる(S15)。図9に示す例では、制御プログラム82は、最終圧力値「-D」を記憶部73に記憶させる。
制御プログラム82は、ステップS15の実行後、再演算フラグに「ON」が設定されているか否かを判断する(S16)。すなわち、ステップS16では、最終圧力値の再決定が行われたか否かが判断される。制御プログラム82は、再演算フラグに「ON」が設定されていると判断すると(S16:Yes)、ステップS29の残留圧力値決定処理を実行する。ステップS29の残留圧力値決定処理は、図7(C)に示される残留圧力値決定処理において、待機時間をゼロとして残留圧力値を決定する処理である。また、ステップS29の残留圧力決定処理において実行されるステップS51では、2パス目の実行後に実行される改行処理に要する改行時間が決定される。図9に示される例では、制御プログラム82は、残留圧力値「-E」を決定する。残留圧力値「-E」は、2パス目の次のパスにおけるインク圧力の決定に用いられる。
制御プログラム82は、ステップS29の処理の実行後、再演算フラグに「OFF」を設定する(S30)。そして、制御プログラム82は、再演算フラグに「ON」が設定されているか否かを判断する(S18)。制御プログラム82は、再演算フラグに「ON」が設定されていないと判断すると(S18:No)、改行処理を実行する(S19)。改行処理は、次の印刷領域(図9)がヘッド62に対向する位置までシート6を搬送する処理である。詳しく説明すると、制御プログラム82は、ステップS12で取得した印刷データに基づいて、改行量を決定する。改行量とは、次の印刷領域がヘッド62に対向する位置に到達するまでのシート6の搬送量である。
制御プログラム82は、搬送モータ42を駆動させてシート6を搬送し、ロータリエンコーダ52から入力するパルスのカウント数が、決定した改行量に応じた数値に到達したことに応じて、搬送モータ42の駆動を停止させる。
制御プログラム82は、ステップS19の改行処理の実行後、待機フラグに「ON」が設定されているか否かを判断する(S20)。すなわち、ステップS20では、待機時間が設定されているか否かが判断される。
制御プログラム82は、待機フラグに「ON」が設定されていると判断すると(S20:Yes)、タイマカウンタをスタートさせる(S21)。そして、制御プログラム82は、タイマカウンタのカウント値が、ステップS42で決定した待機時間に到達したか否かを判断する(S22)。制御プログラム82は、タイマカウンタのカウント値が待機時間に到達するまで(S22:No)、ステップS23の走査処理の実行を待機する。
制御プログラム82は、タイマカウンタのカウント値が待機時間に到達したと判断すると(S22:Yes)、走査処理を実行する(S23)。
制御プログラム82は、待機フラグに「ON」が設定されていないと判断すると(S20No)、ステップS21、S22の処理をスキップする。すなわち、待機フラグに「ON」が設定されていない場合、ステップS19の改行処理の実行後、キャリッジ32の停止が待機時間の間だけ維持されることなく、キャリッジ32が即座に移動される。
ステップS22の走査処理は、印刷処理の一例である。ステップS19の改行処理の実行後、待機時間の間だけキャリッジ32の停止が維持された後に実行されるステップS23の走査処理は、第2種の印刷処理の一例である。ステップS19の改行処理の実行後、待機時間の間だけキャリッジ32の停止が維持されずに実行されるステップS23の走査処理は、第1種の印刷処理の一例である。
制御プログラム82は、ステップS23の走査処理の実行後、上述のステップS24、S25、S26の処理を実行する。
[実施形態の作用効果]
制御装置71は、取得した印刷データと、決定した残留圧力値とに基づいて、インクがヘッド62に及ぼす圧力であるインク圧力を決定する。したがって、残留圧力値に基づかずにインク圧力を決定するよりも、インク圧力を正確に決定することができる。その結果、制御装置71は、圧力センサを用いなくても、インク圧力を正確に決定することができる。インク圧力を正確に決定することができるので、制御装置71は、ヘッド62へのインクの供給が不十分になるか否かを正確に判断することができる。
また、制御装置71は、決定したインク圧力の最小値であるインク圧力最小値が閾値以上である場合に、待機時間を設けずに行われる走査処理(第1種の印刷処理)を実行し、インク圧力最小値が閾値以上でない場合に、待機時間を設けて行われる走査処理(第2種の印刷処理)を実行する。そして、閾値は、インク圧力最小値が当該閾値未満となると、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になる値として設定されている。したがって、制御装置71は、ヘッド62へのインクの供給量が十分である場合と、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になる場合とで、実行する印刷の種類を異ならせることができる。
本実施形態では、インク圧力最小値が閾値以上ではなく、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になる場合、待機時間が決定され、改行処理の実行後、待機時間の間だけ、キャリッジ32の停止が維持される。したがって、待機時間の間だけキャリッジ32の停止が維持されない場合よりも、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になることが抑制される。その結果、印刷の精度が低下することが抑制され、或いは、ノズル67におけるインクのメニスカスが破壊されることが抑制される。
また、本実施形態では、制御装置71は、改行時間に基づいて回復値を決定する。したがって、回復値が予め決定された固定値である場合よりも、回復値を正確に決定することができる。回復値を正確に決定することができるので、制御装置71は、残留圧力値を正確に決定することができる。残留圧力値を正確に決定することができるので、制御装置71は、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になるか否かを正確に判断することができる。その結果、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になって印刷の精度が低下することを、さらに抑制することができ、或いは、ノズル67におけるインクのメニスカスが破壊されることを、さらに抑制することができる。
また、本実施形態では、制御装置71は、待機時間及び改行時間に基づいて回復値を決定する。したがって、待機時間に基づかず、改行時間のみに基づいて回復値を決定する場合よりも、回復値を正確に決定することができる。回復値を正確に決定することができるので、制御装置71は、残留圧力値を正確に決定することができる。残留圧力値を正確に決定することができるので、制御装置71は、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になるか否かを正確に判断することができる。その結果、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になって印刷の精度が低下することを、さらに抑制することができ、或いは、ノズル67におけるインクのメニスカスが破壊されることを、さらに抑制することができる。
また、本実施形態では、制御装置71は、最終圧力値に基づいて待機時間を決定する(S41、S42)。待機時間が予め決定された固定値である場合、インク圧力が十分に回復しないおそれや、インク圧力が上限値であるゼロまで回復された後もキャリッジ32の停止が維持されるおそれがある。制御装置71は、最終圧力値に基づいて待機時間を決定するので、ヘッド62へのインクの供給量が十分である圧力までインク圧力が回復するように待機時間を決定することができ、また、インク圧力が上限値であるゼロまで回復された後もキャリッジ32の停止が維持されることがないように待機時間を決定することができる。その結果、印刷の精度が低下することを抑制でき、或いはノズル67におけるインクのメニスカスが破壊されることを抑制できるとともに、印刷に要する時間が長くなり過ぎることを抑制することができる。
[変形例1]
上述の実施形態では、改行処理の実行後、待機時間の間だけ、キャリッジ32の停止が維持される例を説明した。本変形例では、キャリッジ32が第1位置或いは第2位置に到達した後、次の移動が開始されるまでのキャリッジ32の停止時間が待機時間として決定される例を説明する。例えば、印刷すべき画像において、空白が存在し、当該空白の分だけ改行量が多くなると、改行処理に要する時間が長くなる。改行処理に要する時間が長くなると、改行処理の実行後に、インク圧力が十分に回復することが考えられる。そうすると、待機時間の分だけ、印刷に要する時間が不要に長くなるおそれが生じる。本変形例では、キャリッジ32が第1位置或いは第2位置に到達した後、次の移動が開始されるまでのキャリッジ32の停止時間が待機時間として決定され、改行処理に要する時間が待機時間よりも長い場合、改行処理の実行後、キャリッジ32の移動が即座に開始される。改行処理に要する時間が待機時間よりも短い場合、キャリッジ32は、待機時間の間だけ停止を維持された後、次の移動(次パス)を開始される。以下、具体的に説明する。
制御プログラム82は、実施形態で説明した図6のメイン処理において、ステップS21、S22の処理に代えて、以下に説明する処理を実行する。
制御プログラム82は、ステップS23の走査処理の終了後、すなわち、キャリッジ32の移動が停止された後、タイマカウンタによる時間の計測を開始する。そして、制御プログラム82は、次パスがあると判断したことに応じて(S25:Yes)、ステップS12からS20までの処理を実行する。制御プログラム82は、ステップS20において、待機フラグに「ON」が設定されていると判断すると、タイマカウンタのカウント値が待機時間以上であるか否かを判断する。すなわち、ステップS19の改行処理が終了した時点で、キャリッジ32の停止時間が、決定された待機時間以上であるか否かが判断される。制御プログラム82は、タイマカウンタのカウント値が待機時間以上でないと判断すると、キャリッジ32の停止を維持する。制御プログラム82は、カウント値が待機時間以上であると判断すると、キャリッジ32の移動を開始させ、ステップS23の走査処理を実行する。
本変形例では、改行処理に要する時間である改行時間の間だけキャリッジ32の停止が維持されることによってインク圧力が十分に回復する場合は、改行処理の終了後、キャリッジ32が即座に移動される。したがって、制御装置71は、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になることを抑制しつつ、印刷に要する時間が長くなり過ぎることを抑制することができる。
[変形例2]
上述の実施形態では、キャリッジ32が等速移動する等速移動領域においてヘッド62からインクが吐出されて画像がシート6に印刷される例を説明した。本変形例では、図10に示されるように、キャリッジ32が加速移動する加速領域、キャリッジ32が等速移動する等速移動領域、及びキャリッジ32が減速移動する減速領域において、ヘッド62からインクが吐出されてシート6に画像が印刷される例を説明する。
キャリッジ32が加速移動或いは減速移動(以下、加減速移動とも記載する)されると、ヘッド62内のインク及びチューブ63内のインクに慣性力が作用する。インクに作用する慣性力により、ヘッド62からチューブ63にインクが流出し、或いは、ヘッド62にチューブ63からインクが流入する。ヘッド62からチューブ63にインクが流出すると、インク圧力が低下する。ヘッド62にチューブ63からインクが流入すると、インク圧力が増加する。インク圧力が低下したときにヘッド62からインクが吐出されると、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になって、印刷の精度が低下したり、ノズル67におけるインクのメニスカスが破壊されるおそれが生じる。
本変形例では、制御プログラム82は、取得した印刷データ(パスデータ)及び残留圧力値に加え、キャリッジ32の加減速移動に基づいて、インク圧力及びインク圧力最小値を決定する。具体的には、制御プログラム82は、図7(A)に示されるインク圧力最小値決定処理に代えて、図8(A)に示されるインク圧力最小値決定処理を実行する。以下、詳しく説明する。なお、実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
ヘッド62からチューブ63にインクが流出するか、ヘッド62にチューブ63からインクが流入するかは、キャリッジ32が加速移動しているか、減速移動しているか、及びキャリッジ32の移動の向きによって決まる。制御プログラム82は、キャリッジ32の移動の向き、及びキャリッジ32が加速移動しているか減速移動しているかにより、ヘッド62からチューブ63にインクが流出するか、ヘッド62にチューブ63からインクが流入するかを判断する。図10に示す例では、キャリッジ32が第1位置から第2位置に向かって加速移動すると、チューブ63からヘッド62にインクが流入し、キャリッジ32が第2位置に向かって減速移動すると、ヘッド62からチューブ63へインクが流出する。なお、図10に示すグラフの縦軸や横軸や圧力の基準値(ゼロ)は、図9に示すグラフと同じである。
制御プログラム82は、実施形態と同様にして、ステップS31からステップS34までの処理を実行して、残留圧力値及びインクドット数を取得する。そして、制御プログラム82は、取得した残留圧力値及びインクドット数に基づいて、第1圧力を決定する(S61)。第1圧力の決定は、実施形態におけるインク圧力の決定と同じである。すなわち、制御プログラム82は、ステップS61において、ヘッド62からのインクの吐出によって低下する分の圧力(分圧)である第1圧力を決定する。第1圧力は、図10において、一番上のグラフに示されている。
また、制御プログラム82は、速度関数V(t)によって決まるキャリッジ32の加減速移動によって変化する分のインクの圧力(分圧)である第2圧力を決定する(S62)。第2圧力は、上述のメンブレンシート50によって緩和された後の圧力を示す。制御プログラム82は、例えば、第2圧力を記憶部73から読み出して決定する。記憶部73のROM76或いはEEPROM78は、加速領域におけるキャリッジ32の各位置と第2圧力との対応を示す第1テーブルと、減速領域におけるキャリッジ32の各位置と第2圧力との対応を示す第2テーブルとの2つのテーブルを予め記憶する。或いは、制御プログラム82は、速度関数V(t)を微分して加速度関数A(t)を算出し、算出した加速度関数A(t)に基づいて、時刻t1におけるキャリッジ32の位置x(t1)での加速度A(t1)に所定の係数を乗じて第2圧力を算出する。所定の係数は、プリンタ10の出荷時において、記憶部73に予め記憶される。第2圧力は、図10において、真中のグラフに示されている。
制御プログラム82は、決定した第1圧力(分圧)と第2圧力(分圧)とを足し合わせて、インクの総圧力としてのインク圧力を決定する(S63)。制御プログラム82は、決定したインク圧力のうち、最も低い値をインク圧力最小値に決定する。そして、制御プログラム82は、決定したインク圧力最小値を記憶部73のEEPROM78またはRAM77に記憶させ(S64)、インク圧力最小値決定処理を終了する。インク圧力は、図10において、一番下のグラフに示されている。
制御プログラム82は、インク圧力最小値決定処理の終了後、ステップS64で決定したインク圧力最小値が閾値以上であるか否かを判断し(図6のステップS14)、ステップS15以降の処理を実行する。
[変形例2の作用効果]
本変形例では、印刷データ(パスデータ)及び残留圧力値に加え、キャリッジ32の加減速移動に基づいてインク圧力及びインク圧力最小値を決定する。したがって、キャリッジ32の加減速領域においてもヘッド62からインクを吐出させてシート6に画像を印刷するプリンタ10において、キャリッジ32の加減速移動に基づかずにインク圧力を決定するよりも、インク圧力及びインク圧力最小値を正確に決定することができる。インク圧力最小値を正確に決定することができるので、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になるか否かを、さらに正確に判断することができる。その結果、キャリッジ32の加減速領域においてもヘッド62からインクを吐出させてシート6に画像を印刷するプリンタ10において、印刷の精度の低下を抑止することができ、或いは、ノズル67におけるインクのメニスカスが破壊されてヘッド62内にエアが進入することを防止することができる。
[変形例3]
上述の実施形態では、インクドット数及び残留圧力値に基づいてインク圧力及びインク圧力最小値を決定する例を説明した。本変形例では、インクドット数及び残留圧力値に加え、キャリッジ32の移動速度に基づいてインク圧力及びインク圧力最小値を決定する例を説明する。
記憶部73のROM76またはEEPROM78は、速度関数V(t)に代えて、第1速度関数V1(t)及び第2速度関数V2(t)を記憶する。第1速度関数V1(t)は、速度関数V(t)と同一の速度関数である。第2速度関数V2(t)は、第1速度関数V1(t)がキャリッジ32を移動させる速度よりも遅い速度でキャリッジ32を移動させる速度関数である。
ステップS12で制御プログラム82が取得する印刷データは、「ノーマル印刷」又は「高画質印刷」の印刷設定を含む。記憶部73のROM76またはEEPROM78は、「ノーマル印刷」と「第1速度関数V1(t)」とを対応付けて予め記憶し、「高画質印刷」と「第2速度関数V2(t)」とを対応付けて予め記憶する。制御プログラム82は、取得した印刷データに「ノーマル印刷」が含まれることに応じて、第1速度関数V1(t)を記憶部73から読み出す。制御プログラム82は、取得した印刷データに「高画質印刷」が含まれることに応じて、第2速度関数V2(t)を記憶部73から読み出す。制御プログラム82は、ステップS23の走査処理において、記憶部73から読み出した方の速度関数を用いてキャリッジ32を加速移動、等速移動、及び減速移動させ、第1位置及び第2位置の一方から他方へ移動させる。制御プログラム82が第1速度関数V1(t)或いは第2速度関数V2(t)を読み出してキャリッジ32の移動速度を決定する処理は、キャリッジ速度決定処理の一例である。
制御プログラム82は、図7(A)に示されるインク圧力最小値決定処理のステップS35において、インクドット数及び残留圧力値に加え、読み出した方の速度関数が示すキャリッジ速度に基づいて、インク圧力を決定する。詳しく説明すると、インク圧力の低下の度合は、単位時間当たりインクの吐出量であるインクの吐出頻度(いわゆる、印刷デューティ)に依存する。具体的には、インクの吐出頻繁が大きいと、インク圧力の低下度合が大きくなり、インクの吐出頻度が低いと、インク圧力の低下度合が小さくなる。インクの吐出頻度は、キャリッジ速度に依存する。具体的には、キャリッジ速度が速いほど、インクの吐出頻度が大きくなり、キャリッジ速度が遅いほど、インクの吐出頻度が小さくなる。
制御プログラム82は、インクドット数及びキャリッジ速度に基づいて、1パスにおけるインクの吐出頻度を決定する。具体的には、記憶部73のROM76またはEEPROM78は、インクトッド数、キャリッジ速度、及びインクの吐出頻度の対応を示すテーブル、或いは、インクドット数及びキャリッジ速度からインクの吐出頻度を算出する計算式を予め記憶する。制御プログラム82は、インクドット数及びキャリッジ速度と対応するインクの吐出頻度を記憶部73に記憶されたテーブルから選択して決定する。或いは、制御プログラム82は、インクドット数及びキャリッジ速度と、記憶部73から読み出した計算式とを用いて、インクの吐出頻度を算出して決定する。
制御プログラム82は、決定したインクの吐出頻度に基づいて、インク圧力の低下の度合を示す低下圧力を決定する。具体的には、記憶部73のROM76またはEEPROM78は、インクの吐出頻度と低下圧力との対応を示すテーブル、或いは、インクの吐出頻度から低下圧力を算出する計算式を予め記憶する。制御プログラム82は、決定したインクの吐出頻度に対応する低下圧力を記憶部73に記憶されたテーブルから選択して決定する。或いは、制御プログラム82は、低下圧力と、記憶部73から読み出した計算式とを用いて、低下圧力を算出して決定する。なお、記憶部73のROM76またはEEPROM78は、インクトッド数、キャリッジ速度、及び低下圧力の対応を示すテーブル、或いは、インクトッド数及びキャリッジ速度から低下圧力を算出する計算式を記憶していてもよい。制御プログラム82は、インクトッド数及びキャリッジ速度に対応する低下圧力を、記憶部73が記憶するテーブルから選択して決定し、或いは、インクトッド数及びキャリッジ速度と、記憶部73から読み出した計算式とを用いて、インクの低下圧力を算出して決定する。
制御プログラム82は、決定した低下圧力に、残留圧力値を加えて、インク圧力を算出して決定する。そして、制御プログラム82は、決定したインク圧力に基づいて、インク圧力最小値を決定する。
[変形例3の作用効果]
本変形例では、インクドット数及び残留圧力値に加え、キャリッジ速度にも基づいてインク圧力及びインク圧力最小値を決定する。したがって、キャリッジ速度を選択可能なプリンタ10において、キャリッジ速度に基づかずにインク圧力及びインク圧力最小値を決定するよりも、インク圧力及びインク圧力最小値を正確に決定することができる。インク圧力最小値を正確に決定することができるので、制御装置71は、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になるか否かを正確に判断することができる。その結果、制御装置71は、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になって印刷の精度が低下することを、さらに抑制することができ、或いは、ノズル67におけるインクのメニスカスが破壊されることを、さらに抑制することができる。
[変形例4]
上述の実施形態では、インク圧力最小値が閾値以上でない場合に、待機時間が決定され、決定された待機時間の間だけキャリッジ32の停止が維持されることにより、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になることが抑制される例を説明した。本変形例では、インク圧力最小値が閾値以上でない場合に、一の印刷領域(図9)への印刷が、第1位置及び第2位置の間のキャリッジ32の往復移動によって行われる例を説明する。具体的には、インク圧力最小値が閾値以上である場合、第1位置及び第2位置の一方から他方へのキャリッジ32の1回の移動において印刷領域にインクが吐出され、画像が印刷領域に印刷される。インク圧力最小値が閾値以上でない場合、第1位置及び第2位置の一方から他方へキャリッジ32が移動され、印刷すべき画像の一部が印刷領域に印刷され、その後、改行処理が実行されることなく、キャリッジ32が第1位置及び第2位置の他方から一方へ移動され、印刷すべき画像の残りの画像が印刷領域に印刷される。
制御プログラム82は、図6に示されるメイン処理に代えて、図11に示されるメイン処理を実行する。なお、実施形態と同一の処理については、実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。また、以下で説明される構成や処理以外の構成や処理は、実施形態と同一である。
制御プログラム82は、実施形態と同様に、ステップS11、S12の処理を実行し、印刷データを取得する。そして、制御プログラム82は、残留圧力値を決定する残留圧力値決定処理を実行する。
図8(B)を参照して、本変形例の残留圧力値決定処理を説明する。まず、制御プログラム82は、ステップS12で取得した印刷データに基づいて、ステップS19で実行する改行処理に要する時間である改行時間を決定する。改行時間の決定方法は、実施形態と同じである。
次に、制御プログラム82は、実施形態と同様に、最終圧力値を記憶部73から読み出して取得する(S82)。また、制御プログラム82は、ステップS81で取得した改行時間に基づいて、回復値を決定する(S83)。記憶部73のROM76またはEEPROM78は、改行時間と回復値との対応が示されたテーブル、或いは、改行時間から回復値を算出する計算式を予め記憶する。制御プログラム82は、改行時間に対応する回復値を記憶部73に記憶されたテーブルから選択して決定し、或いは、改行時間と、記憶部73から読み出した計算式とを用いて、回復値を算出して決定する。
制御プログラム82は、ステップS82で取得した最終圧力値に、ステップS83で決定した回復値を加え、残留圧力値を算出する(S84)。制御プログラム82は、算出した残留圧力値を記憶部73のEEPROM78またはRAM77に記憶させ(S85)、残留圧力値決定処理を終了する。
制御プログラム82は、図11に示されるように、残留圧力値決定処理(S71)の実行後、インク圧力最小値決定処理を実行する(S13)。インク圧力最小値の決定方法は、実施形態と同じである。具体的には、制御プログラム82は、図7(A)に示されるインク圧力最小値決定処理を実行する。図7(A)に示されるインク圧力最小値決定処理のステップS33において、制御プログラム82は、上述の残留圧力値決定処理のステップS85(図8(B))で記憶部73に記憶させた残留圧力値を記憶部73から読み出して取得する。
制御プログラム82は、ステップS13のインク圧力最小値決定処理で決定したインク圧力に基づいて、最終圧力値を決定し、決定した最終圧力値を記憶部73のEEPROM78またはRAM77に記憶させる(S15)。そして、制御プログラム82は、ステップS19の改行処理を実行する。なお、ステップS72またはステップS73の走査処理が最初に実行される走査処理(最初のパス)である場合、実施形態と同様に、ステップS19では、頭出し処理が実行される。頭出し処理及び改行処理は、実施形態と同様にして実行される。
制御プログラム82は、ステップS19の頭出し処理または改行処理の実行後、インク圧力最小値決定処理で決定したインク圧力最小値が、記憶部73に記憶された閾値以上か否かを判断する(S14)。すなわち、ステップS14では、実施形態と同様に、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になるか否かが判断される。
制御プログラム82は、インク圧力最小値が閾値以上であると判断すると(S14:Yes)、第1の走査処理を実行する(S72)。第1の走査処理は、実施形態で説明した走査処理と同じ処理である。すなわち、第1の走査処理は、第1位置及び第2位置の一方から他方へのキャリッジ32の1回の移動において、シート6の一の印刷領域(図9)に画像が印刷される処理である。第1の走査処理は、第1種の印刷処理の一例である。
制御プログラム82は、インク圧力最小値が閾値以上でないと判断すると(S14:No)、第2の走査処理を実行する(S73)。第2の走査処理は、第1位置及び第2位置の間におけるキャリッジ32の往復移動において、シート6の一の印刷領域に画像が印刷される処理である。第2の走査処理は、第2種の印刷処理の一例である。
第2の走査処理について、以下、詳しく説明する。まず、制御プログラム82は、各ノズル列66について、キャリッジ32の1回目の移動(以下、パス分割1パス目とも記載する)において使用するノズル67と、キャリッジ32の2回目の移動(以下、パス分割2パス目とも記載する)において使用するノズル67とを決定する。パス分割1パス目において使用するノズル67の数と、パス分割2パス目において使用するノズル67の数とは、ほぼ同じにされる。すなわち、パス分割1パス目でノズル67から吐出されるインクの量、及び、パス分割2パス目でノズル67から吐出されるインクの量は、第1の走査処理が実行された場合に1パスでノズル67から吐出されるインクの量の約半分になる。
なお、パス分割1パス目で使用するノズル67と、パス分割2パス目で使用するノズル67とを決定する代わりに、パス分割1パス目でノズル67がインクを吐出する吐出回数と、パス分割2パス目でノズル67がインクを吐出する吐出回数とが決定されてもよい。例えば、パス分割1パス目でノズル67がインクを吐出する吐出回数と、パス分割2パス目でノズル67がインクを吐出する吐出回数とは、同じ回数とされる。すなわち、パス分割1パス目でノズル67から吐出されるインクの量(以下、第1インク量とも記載する)、及び、パス分割2パス目でノズル67から吐出されるインクの量(以下、第2インク量とも記載する)は、第1の走査処理が実行された場合に1パスでノズル67から吐出されるインクの量(以下、予定吐出量とも記載する)の約半分になる。
第1インク量及び第2インク量が、予定吐出量の半分になると、パス分割1パス目におけるインクの吐出頻度、及び、パス分割2パス目におけるインクの吐出頻度は、第1の走査処理が行われた場合のインクの吐出頻度の半分になる。インクの吐出頻度が半分になると、インク圧力の低下度合が小さくなる。その結果、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になることが抑制される。すなわち、第2の走査処理が実行されると、第1の走査処理が実行されるよりも、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になることが抑制される。
制御プログラム82は、ステップS73の第2の走査処理の実行後、次のパスにおける残留圧力値の算出のために、最終圧力値を再決定して記憶部73に記憶させる最終圧力値変更処理を実行する。例えば、制御プログラム82は、インク圧力最小値決定処理を再度実行してインク圧力を再度決定し、再決定したインク圧力に基づいて最終圧力値を再決定する。或いは、制御プログラム82は、記憶部73に予め記憶された固定値を記憶部73から読み出し、読み出した固定値を最終圧力値に決定する。固定値は、例えばゼロである。すなわち、制御プログラム82は、インクの吐出頻度が半分になる第2走査処理が実行されると、残留圧力値が大気圧まで回復する値として、最終圧力値をゼロに決定する。
制御プログラム82は、第1の走査処理(S72)の実行後、或いは、最終圧力値変更処理(S74)の実行後、実施形態と同様に、ステップS25及びステップS26の処理を実行し、メイン処理を終了する。
[変形例4の作用効果]
本変形例では、インク圧力最小値が閾値以上でなく、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になるおそれがある場合、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になることが抑制される第2の走査処理が実行される。したがって、印刷の精度の低下が抑制され、或いは、ノズル67におけるインクのメニスカスが破壊されることが抑制される。
なお、変形例4では、第2の走査処理において、キャリッジ32が往復移動される例を説明したが、第2の走査処理において、キャリッジ32が、第1位置及び第2位置の間を3回以上移動されて、一の印刷領域に画像が印刷されてもよい。
[変形例5]
上述の変形例4では、パス分割1パス目において使用されるノズル67と、パス分割2パス目において使用されるノズル67とが決定される例を説明した。本変形例では、パス分割1パス目において、インク圧力最小値が閾値未満になる前に、ヘッド62からのインクの吐出が停止される例を説明する。
制御プログラム82は、図11に示す第2の走査処理(S73)に代えて、図8(C)に示す第3の走査処理を実行する。第3の走査処理は、第2種の印刷処理の一例である。
まず、制御プログラム82は、図8(C)に示される第3の走査処理を実行する前に、図9に示される境界位置及び吐出停止位置を決定する。境界位置は、ステップS13で決定されるインク圧力が記憶部73に記憶された閾値未満となる位置である。吐出停止位置は、キャリッジ32の移動の向きにおいて、境界位置よりも所定距離だけ前(図示例では右)の位置である。
制御プログラム82は、まず、ステップS13で決定したインク圧力が、記憶部73に記憶された閾値に一致するキャリッジ32の位置を決定する。次に、制御プログラム82は、記憶部73のROM66或いはEEPROM78に予め記憶された所定距離を読み出す。制御プログラム82は、境界位置から、キャリッジ32の移動の向きとは反対向きに所定距離だけ離れた位置を吐出停止位置に決定する。なお、吐出停止位置は、リニアエンコーダ51から入力するパルスの数のカウント値に対応する値(以下、決定値と記載する)として決定される。
制御プログラム82は、決定値を決定した後、図8(C)に示される第3の走査処理を実行する。まず、制御プログラム82は、ヘッド62の全てのノズル67を使用しつつ、キャリッジ32を第2位置から第1位置まで移動させる1回目のキャリッジ32の移動(パス分割1パス目)を実行する(S91)。そして、制御プログラム82は、リニアエンコーダ51から入力するパルスの数をカウントし、カウント値が、上述の決定値に到達したか否かを判断する(S92)。すなわち、ステップS92では、キャリッジ32が吐出停止値に到達したか否かが判断される。
制御プログラム82は、カウント値が決定値に到達していないと判断すると(S92:No)、パス分割1パス目のキャリッジ32の移動を継続して実行する。制御プログラム82は、カウント値が決定値に到達したと判断すると(S92:Yes)、キャリッジ32の移動を停止させずに、ヘッド62からのインクの吐出を停止させる(S93)。すなわち、制御プログラム82は、印刷領域のうち、吐出停止位置よりも右方の領域に画像を印刷する。
次に、制御プログラム82は、キャリッジ32が第1位置に到達してパス分割1パス目のキャリッジ32の移動が終了したか否かを判断する(S94)。制御プログラム82は、キャリッジ32が第1位置に到達するまで(S94:No)、キャリッジ32を第1位置に向かって移動させる。すなわち、制御プログラム82は、吐出停止位置でインクの吐出を停止させた後は、ヘッド62からインクを吐出させることなく、キャリッジ32を第1位置まで移動させる。
制御プログラム82は、キャリッジ32が第1位置に到達してパス分割1パス目のキャリッジ32の移動が終了したと判断すると(S94:Yes)、全てのノズル67を使用しつつ、キャリッジ32を第1位置から第2位置まで移動させる2回目のキャリッジ32の移動(パス分割2パス目)を実行する(S95)。そして、制御プログラム82は、リニアエンコーダ51から入力するパルスの数のカウント値が決定値に到達したか否かを判断する(S96)。すなわち、ステップS96では、キャリッジ32が吐出停止位置に到達したか否かが判断される。なお、制御プログラム82は、例えば、キャリッジ32が第2位置から第1位置に向かう場合には、リニアエンコーダ51から入力するパルスの数を加算してカウントする。そして、制御プログラム82は、キャリッジ32が第1位置から第2位置に向かう場合には、リニアエンコーダ51から入力するパルスの数を減算してカウントする。したがって、キャリッジ32が第1位置から第2位置に向かう場合であっても、第2位置から第1位置に向かう場合であっても、制御プログラム82は、同一の吐出停止位置でキャリッジ32を停止させることができる。
制御プログラム82は、カウント値が決定値に到達していないと判断すると(S96:No)、パス分割2パス目のキャリッジ32の移動を継続して実行する。一方、制御プログラム82は、カウント値が決定値に到達したと判断すると(S96:Yes)、キャリッジ32の移動を停止させずに、ヘッド62からのインクの吐出を停止させる(S97)。すなわち、制御プログラム82は、印刷領域のうち、パス分割1パス目で印刷が行われなかった領域、すなわち、吐出停止位置より左方の領域に、パス分割2パス目で画像を印刷する。
制御プログラム82は、キャリッジ32が第2位置に到達してパス分割2パス目のキャリッジ32の移動が終了したか否かを判断する(S98)。制御プログラム82は、キャリッジ32が第2位置に到達するまで(S98:No)、キャリッジ32を第2位置に向かって移動させる。すなわち、制御プログラム82は、吐出停止位置でインクの吐出を停止させた後は、ヘッド62からインクを吐出させることなく、キャリッジ32を第2位置まで移動させる。
制御プログラム82は、キャリッジ32が第2位置に到達してパス分割2パス目のキャリッジ32の移動が終了したと判断すると(S98:Yes)、第3の走査処理を終了し、メイン処理(図11)のステップS25の処理を実行する。
なお、上述では、パス分割1パス目でキャリッジ32が第2位置から第1位置に移動され、パス分割2パス目でキャリッジ32が第1位置から第2位置に移動される例を説明した。しかしながら、パス分割1パス目でキャリッジ32が第1位置から第2位置に移動され、パス分割2パス目でキャリッジ32が第2位置から第1位置に移動されてもよい。
[変形例5の作用効果]
本変形例では、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になる境界位置の前の位置である吐出停止位置でインクの吐出が停止される。したがって、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になることが、確実に防止される。なお、パス分割1パス目でインクの吐出が停止された後、パス分割2パス目のキャリッジ32の移動が開始されるまでの間の時間により、パス分割1パス目におけるインクの吐出によって低下したインク圧力が回復する。
[変形例6]
上述の変形例4では、一の印刷領域への画像の印刷を、第1位置及び第2位置の間のキャリッジ32の往復移動によって行う第2の走査処理を説明した。本変形例では、キャリッジ32の移動速度を遅くしてシート6の印刷領域に画像を印刷する例を説明する。具体的には、制御プログラム82は、図11に示されるメイン処理を実行する。そして、制御プログラム82は、インク圧力最小値が閾値以上でないと判断したことに応じて(S14:No)、ステップS73の第2の走査処理に代えて、キャリッジ32の移動速度が第1の走査処理におけるキャリッジ32の移動速度よりも遅くされる第4の走査処理(不図示)を実行する。
記憶部73は、速度関数V(t)に代えて、第1速度関数V1(t)及び第2速度関数V2(t)を予め記憶する。第1速度関数V1(t)及び第2速度関数V2(t)は、変形例3で説明した第1速度関数V1(t)及び第2速度関数V2(t)と同じ関数である。第1速度関数V1(t)は、第1の走査処理におけるキャリッジ32の移動の制御に用いられる。第2速度関数V2(t)は、第4の走査処理におけるキャリッジ32の移動の制御に用いられる。
[変形例6の作用効果]
第4の走査処理では、第1の走査処理におけるキャリッジ32の移動速度よりも遅い速度でキャリッジ32が移動される。キャリッジ32の移動速度が遅くなると、単位時間当たりにノズル67から吐出されるインクの量が低減する。すなわち、インクの吐出頻度(印刷デューティ)が低減する。インクの吐出頻度が低減すると、インク圧力の低下度合が小さくなる。したがって、第1の走査処理よりも第4の走査処理の方が、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になることが抑制される。本変形例では、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になるおそれが有る場合、第4の走査処理が実行され、ヘッド62へのインクの供給量が不十分となることが抑制される。その結果、印刷の精度が低下することが抑制され、或いは、ノズル67におけるインクのメニスカスが破壊されることが抑制される。
[変形例7]
上述の実施形態では、インクを吐出するヘッド62を搭載したキャリッジ32を備えたプリンタ10が説明された。しかしながら、本発明は、インクを吐出するヘッド62がフレームなどに固定されたプリンタに用いることもできる。すなわち、本発明は、いわゆるラインプリンタにも用いることができる。
詳しく説明すると、ヘッド62が固定されたプリンタ(以下、ラインプリンタと記載する)は、シートを搬送する搬送装置21及びヘッド62を有する。シートは、例えば、ロール紙である。ロール紙は、被印刷媒体の一例である。
搬送装置21の構成は、例えば、実施形態で説明された搬送装置21の構成と概ね同じである。搬送装置21の搬送ローラ24を回転させる搬送モータ42は、駆動源の一例である。搬送ローラ24がロール紙を搬送する搬送方向は、相対移動方向の一例である。
ヘッド62の構成は、例えば、実施形態で説明されたヘッド62の構成と概ね同じである。但し、ヘッド62は、ロール紙の幅方向の両端まで画像を印刷可能な幅にされる。
ラインプリンタは、実施形態で説明された制御装置71を有する。制御装置71の制御プログラム82がステップS12で取得する印刷データは、例えば、空白を間に挟む複数の画像からなる画像データを含む。一の画像が印刷されるシート上の領域は、単位印刷領域の一例である。
制御プログラム82は、搬送されるロール紙に、ヘッド62からインクを吐出させて一の画像を印刷させる。そして、一の画像の印刷が終了し、上記空白に相当する距離だけ搬送装置21がロール紙を搬送する間、ヘッド62からのインクの吐出を停止させる。制御プログラム82は、実施形態と同様にして、一の画像を印刷する際に低下するインク圧力を決定する。そして、一の画像の印刷が終了する時点におけるインク圧力である最終圧力値を決定する。また、制御プログラム82は、上記空白に相当する距離だけロール紙が搬送されるのに要する搬送時間を、取得した印刷データ及びロール紙の搬送速度に基づいて決定する。そして、制御プログラム82は、上述の実施形態と同様にして、決定した搬送時間から回復値を決定する。制御プログラム82は、決定した回復値と、最終圧力値とを足し合わせ、次の画像の印刷が開始される時点における残留圧力値を算出する。制御プログラム82は、実施形態と同様にして、算出した残留圧力値と、ヘッド62からのインクの吐出によって生じる低下圧力とを足し合わせ、インク圧力及びインク圧力最小値を決定する。
そして、制御プログラム82は、決定したインク圧力最小値が閾値以上か否かにより、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になるか否かを判断する。そして、制御プログラム82は、インク圧力最小値が閾値以上であると判断した場合と、インク圧力最小値が閾値以上でないと判断した場合とで、実行する印刷の種類を変える。例えば、制御プログラム82は、インク圧力最小値が閾値以上でないと判断した場合、インク圧力最小値が閾値以上であると判断した場合よりも、搬送モータ42の回転速度を遅くする。搬送モータ42の回転速度は、例えば、実施形態で説明されたPWM制御によって変更される。
[変形例7の作用効果]
制御装置71は、取得した印刷データと、決定した残留圧力値とに基づいて、インクがヘッド62に及ぼす圧力であるインク圧力を決定する。したがって、残留圧力値に基づかずにインク圧力を決定するよりも、インク圧力を正確に決定することができる。その結果、制御装置71は、圧力センサを用いなくても、インク圧力を正確に決定することができる。インク圧力を正確に決定することができるので、制御装置71は、ヘッド62へのインクの供給が不十分になるか否かを正確に判断することができる。
また、制御装置71は、決定したインク圧力の最小値であるインク圧力最小値が閾値以上である場合に、ロール紙の搬送速度を遅くして印刷を行う。ロール紙の搬送速度が遅くされることにより、単位時間当たりにヘッド62が吐出するインクの量が低減する。すなわち、インクの吐出頻度(印刷デューティ)が低減する。インクの吐出頻度が低減することにより、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になることが抑制される。その結果、印刷の精度の低下が抑制され、或いは、ノズル67におけるインクのメニスカスが破壊されることが抑制される。
なお、インク圧力最小値が閾値以上でないと判断した場合にロール紙の搬送速度を低下させる代わりに、インク圧力が回復するまで、ロール紙の搬送を一時停止させてヘッド62からのインクの吐出を停止させてもよい。
[その他の変形例]
上述の実施形態では、プリンタ10の制御装置71が、本発明の「制御装置」の一例である例を説明した。しかしながら、本発明の「制御装置」は、プリンタ10と通信回線によって接続されたパーソナルコンピュータや携帯端末の制御装置であってもよい。その場合、制御プログラム82は、例えばプリンタドライバである。或いは、制御プログラム82は、プリンタドライバにモジュールとして組み込まれる。
上述の実施形態では、バッファタンク61にメンブレンシート50が設けられた例を説明した。しかしながら、バッファタンク61にメンブレンシート50が設けられていないプリンタにおいても、本発明を適用することができる。バッファタンク61にメンブレンシート50が設けられていない場合、上述の第1テーブル及び第2テーブルにおいて、キャリッジ32の加減速移動と対応付けられる圧力の数値が、バッファタンク61にメンブレンシート50が設けられた場合とは異なる値とされる。
上述の実施形態では、装着ケース17に着脱されるインクカートリッジ18が容器の一例として説明された。しかしながら、容器は、プリンタ10に固定されたタンクであってもよい。
上述の実施形態では、キャリッジモータ36が、キャリッジ32を移動させる駆動源の一例として説明された。しかしながら、制御装置71が駆動を制御可能であれば、他の駆動源が用いられてもよい。
上述の実施形態では、第2インク圧力値の一例としてインク圧力最小値が説明された。しかしながら、第2インク圧力値は、インクがヘッド62に及ぼす圧力に関係した値であって、ヘッド62へのインクの供給量が不十分になるか否かを判断可能であれば、他の値であってもよい。例えば、第2インク圧力値は、インク圧力のマイナス方向への変化量であってもよい。その場合、記憶部73に記憶される閾値は、実施形態で説明された閾値の絶対値とされる。制御プログラム82は、ステップS14において、インク圧力のマイナス方向への変化量が閾値以下であるか否かを判断する。制御プログラム82は、当該変化量が閾値以下であると判断すると(S14:Yes)、待機時間の間だけキャリッジ32の停止を維持させずに走査処理(S23)を実行し、当該変化量が閾値より大きいと判断すると(S14:No)、待機時間の間だけキャリッジ32の停止を維持した後に走査処理(S23)を実行する。第1インク圧力の一例として説明された最終圧力値についても、インク圧力最小値と同様に、残留圧力値を決定可能であれば、変化量など、他の値が用いられてもよい。
上述の実施形態では、一の閾値が記憶部73に記憶された例を説明した。しかしながら、プリンタ10が使用される環境温度やインクの粘度や沈降度に応じた複数の閾値が記憶部73に予め記憶されていてもよい。例えば、プリンタ10は、使用される環境温度を出力する温度センサを有する。制御プログラム82は、温度センサが出力した温度に応じた閾値を記憶部から読み出して、ステップS14の処理を実行する。或いは、制御プログラム82は、インクカートリッジ18が装着ケース17に装着されてからの経過時間をカウントして取得する。上記経過時間が長いほど、インクの粘度や沈降度が高くなる。制御プログラム82は、上記経過時間に応じた閾値を記憶部73から読み出して、ステップS14の処理を実行する。或いは、制御プログラム82は、上記環境温度や上記経過時間を用いて、実施形態で記載された閾値を補正し、補正した閾値を用いてステップS14の処理を実行してもよい。閾値を補正する計算式は、記憶部73に予め記憶される。
上述の実施形態では、インクカートリッジ18がキャリッジ32に搭載されていないプリンタ10を説明した。しかしながら、インクカートリッジ18は、キャリッジ32に搭載されていてもよい。すなわち、本発明は、いわゆるオンキャリッジのプリンタにも用いることができる。