JP3690710B2 - 樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬化性および保存性が良好で、電気、電子材料として有用な樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気、電子材料、特に半導体封止や銅張り積層板用に用いられる材料は、近年、その生産効率の向上を目的にますます速硬化性が求められ、その一方では、物流、保管時には保存性の向上を要求されている。
【0003】
これまでにもその要求に対して、エポキシ樹脂の硬化促進剤(以下、触媒とも言う)として、様々なアミン系潜伏性触媒の使用が提案されてきた。すなわち、イミダゾールや3級アミンの有機酸塩、4級アンモニウムテトラアリールボレート、4級アンモニウムテトラアルキルボレートなどである。しかしながら、これまでの試みはいずれも保存性と硬化性が両立できず、要求性能を十分に満たすものは見出されていなかった。これに対して、本発明者らが検討した結果では、従来の3級アミン、3級ホスフィンに比べて、本発明は保存性と硬化性の両方に優れ、特に低官能性、低核体エポキシ樹脂の使用において、特にその効果が顕著であることが分かった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題点を解決するべく鋭意検討した結果なされたもので、保存性と硬化性を両立させた、電気、電子材料として有用な樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、およびオニウムボレート(C)を必須成分とする樹脂組成物であり、該オニウムボレート(C)が、一般式(1)で表されるものであることを特徴とする樹脂組成物である。
【0006】
【化1】
式中、X+は、中心陽イオンが窒素陽イオンであるオニウムを表す。また、Y1、Y2、Y3、およびY4の内の少なくとも1つは、分子外に放出し得るプロトンを少なくとも1個有するプロトン供与体が、プロトンを1個放出してなる基であり、それらは同一であっても異なっていても良い。前記プロトン供与体以外の基は、芳香環もしくは複素環を有する有機基、または脂肪族基を表す。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられるエポキシ樹脂(A)は、半導体封止材料や銅張り積層板の分野で使用される、当業者に公知のものであればなんら制限はなく、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂などのフェノール樹脂や、ナフトール類などの水酸基にエピクロロヒドリンを反応させて製造するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノール類の共縮合物をエポキシ化したもの、脂環式エポキシ樹脂のようにオレフィンを過酸を用いて酸化させエポキシ化したものも含まれるが、特に、1分子内に2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、及び/またはエポキシ当量が240以上のエポキシ樹脂など、比較的低官能、低核体のエポキシ樹脂において、その良好な硬化性、保存性を発揮するので好ましい。
【0011】
本発明において用いられる硬化剤(B)としては、フェノール系樹脂、アミン系化合物、酸無水物、活性エステルなどが有効であるが、特にこれらに限定されるものではなく、エポキシ樹脂と反応し得るあらゆる硬化剤が使用できる。なかでも、1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物や、アミン系硬化剤が最も好ましく、具体的には前者では、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、アルキル変性ノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトール類とフェノール類をカルボニル基含有化合物と共縮合した樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノール類の共縮合物などが例示されるが、フェノール性水酸基の定義が、一般的にフェノールやナフトールなど芳香族性の環に結合する水素原子が少なくとも1個水酸基で置換されたものであることから、この定義に該当するフェノール性水酸基を1分子内に2個以上有するものであればよい。また、後者のアミン系硬化剤としては、ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ジアミン、アニリン樹脂、ジシアンジアミド、グアニジンやその誘導体などを例示することができるが、当業者に公知のものであればなんら限定されるものではない。
【0012】
また、本発明のオニウムボレート(C)を構成する、カチオンX+は、中心陽イオンが窒素陽イオンであるオニウムであれば良いが、このような窒素陽イオンとしては、非環状のアンモニウムイオン、イミニウムイオン、グアニジニウムイオン、アミジニウムイオン、環状アンモニウムイオンである1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタニウム、2環式アミジニウムイオンである1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセニウムや、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネニウム、単環のイミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオンなどが例示できる。
【0013】
一方、オニウムボレート(C)を構成するアニオン側のホウ素に結合する、一般式(1)におけるY1,Y2,Y3,Y 4 の元となる、分子外に放出し得るプロトンを少なくとも1個有するプロトン供与体の例としては、酢酸、安息香酸、ナフトエ酸、などのカルボン酸、フェノール、クレゾール、ナフトール、ヒドロキシアントラセンなどのフェノール類、イソシアヌル酸、フタルイミド、アセチルアセトナートなどのプロトン放出体、メタノール、エタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類、さらには、パラキシレンジメタノールなどのプロトン供与体の等価体や、アニリンなどのアミン類も、プロトンを供与できるならば何ら差し支えなく、それらは同一であっても異なっていても良い。
【0014】
また、一般式(1)における、ホウ素に結合した前記プロトン供与体以外の基は、芳香環もしくは複素環を有する有機基、または脂肪族基であり、メチル、エチルなどのアルキル基、フェニル、アニシルなどのアリール基、ベンジル、フェナシル基などが例示される。
【0017】
本発明において、オニウムボレート(C)が、エポキシ樹脂組成物に優れた硬化性と保存性を与える理由の、詳細は明らかでないが、エポキシが開環した際の酸素アニオンに、カウンターイオンとして対をなすオニウムボレート(C)を構成するカチオンX+の構造、および硬化の開始に影響を及ぼすアニオン側のボレートの役割が、ある特定構造の場合に、きわめて良好な性能を発揮するのであろうと推察される。また、本発明の検討過程で、エポキシ樹脂が比較的低官能のエポキシ樹脂、例えば2官能のエポキシ樹脂やエポキシ当量が240以上のエポキシ樹脂において、従来の3級アミンや3級ホスフィンに比べて、特に硬化性が優れていることが判明した。これは、3級アミンや3級ホスフィンの場合、硬化過程でエポキシに何らかの副反応が起こるため、低官能のエポキシ樹脂では、その副反応の影響が大きいためではないかと考えられる。
【0018】
また、本発明の樹脂組成物は、半導体封止材料など成形材料に通常用いられる無機充填剤や、離型剤、カップリング剤、顔料、他の硬化促進剤などを必要に応じて配合し、混練工程を経て成形材料を調製し、あるいは、樹脂組成物を溶剤に溶解してワニス化した後、積層板の作製に通常用いられるガラスクロスなどに含浸塗布し、乾燥工程を経て得られたプリプレグを用いて、銅箔を重ね合わせてプレス成形し、積層板を作製するために、使用することもできる。
【0019】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0020】
(実施例1〜5、および比較例1〜4)
成形材料を調製し、特性評価のため、加熱成形直後の熱時硬度、成形材料のスパイラルフロー、および保存後のフロー残存率を測定し、硬化性及び保存性の評価を行なった。それぞれの評価方法は、下記の通りとした。また、本実施例および比較例で用いた、化合物A、C、E、G〜Lの構造は、式(4)、(6)、(8)、(10)〜(15)に示した通りである。
【0021】
1.バーコール硬度
JIS−K6911に準ずる吸水円盤作製金型を用いて、175℃、50秒成形した後、即座に取り出して175℃に加熱した熱板上に10秒放置し、直ちに成型品の熱時硬度をバーコール硬度計を用いて測定した。この数値が大きいほど硬化性が高いことを示す。
【0022】
2.スパイラルフロー
EMMI―I−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、金型温度175℃、注入圧70kg/cm2、硬化時間2分で測定する。スパイラルフロー(cm)は流動性のパラメーターであり、数値の大きい方が流動性が良いことを示す。
【0023】
3.フロー残存率
成形材料を調製した直後のスパイラルフロー、および40℃、3日間保存した後のスパイラルフローを測定し、材料調製直後のスパイラルフロー(cm)に対する、保存後のスパイラルフロー(cm)の百分率を算出した。フロー残存率が大きいほど保存性が良いことを示す。
【0024】
(実施例1)
多官能エポキシ樹脂である、日本化薬製オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂(EOCN102065)67重量部(以下、単に部と略す)に、軟化点が105℃で水酸基当量104のフェノールノボラック33部、破砕状溶融シリカ300部、カルナバワックス2部、式(4)で表される化合物A3.1部を配合し、熱ロールで90℃、5分間混練して成形材料を調製した。
【0025】
(実施例3)
多官能で、エポキシ当量が260の大日本インキ製ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(HP−7200)71部に、軟化点が105℃で水酸基当量104のフェノールノボラック29部、球状溶融シリカ500部、カルナバワックス2部、式(8)で表される化合物E 3.2部を配合し、熱ロールで90℃、5分間混練して成形材料を調製した。
【0026】
(実施例2)
2官能の油化シェルエポキシ製ビフェニル型エポキシ樹脂(YX4000H)52部、三井東圧化学製アラルキル変性フェノール樹脂(XL225−3L)48部、球状溶融シリカ800部、カルナバワックス2部、式(6)で表される化合物C2.8部を配合し、熱ロールで90℃、5分間混練して成形材料を調製した。
【0027】
(実施例4−5、比較例1〜4)
表1に示した配合により、実施例1〜3と同様に操作して、それぞれ成形材料を調製した。評価結果は、実施例1〜3と併せて表1にまとめて示した。
【0028】
【表1】
【0029】
【化4】
【0031】
【化6】
【0033】
【化8】
【0035】
【化10】
【0036】
【化11】
【0037】
【化12】
【0038】
【化13】
【0039】
【化14】
【0040】
【化15】
【0041】
(実施例6、および比較例5〜7)
銅張り積層板を調製し、特性評価のため、得られた積層板の樹脂のガラス転移温度、およびプリプレグ保存後の樹脂分のゲルタイム残存率を測定し、硬化性及び保存性の評価を行なった。それぞれの評価方法は、下記の通りとした。また、本実施例および比較例で新たに用いた、化合物M,Nの構造は、式(16),(17)に示した通りである。
【0042】
4.ガラス転移温度
得られた両面銅張り積層板から銅箔をエッチング除去し、硬化したプリプレグ層のみを切り取って、動的粘弾性測定装置にて、5℃/minの昇温速度でガラス転移温度を測定した。十分に硬化していない場合、ガラス転移温度が低くなる。
【0043】
5.ゲルタイム残存率
プリプレグから樹脂分を落とし、170℃に加熱した熱板上でゲルタイムを測定する。プリプレグの調製直後、および40℃、35%RHで7日間保存した後のゲルタイムを測定し、調製直後のゲルタイム(秒)に対する、保存後のゲルタイム(秒)の百分率を算出した。ゲルタイム残存率の値が大きいほど、保存性が良いことを示す。
【0044】
(実施例6)
エポキシ当量925のビフェノールA型エポキシ樹脂50部、エポキシ当量475のビフェノールA型エポキシ樹脂50部、ジアミノジフェニルメタン3部、ジシアンジアミド0.8部、化合物H3.0部を、N,N−ジメチルホルムアミドとメチルエチルケトンの1:1混合溶剤100部に溶解し、ワニスを調製した。このワニスを用いて、厚さ100ミクロンのガラスクロスに含浸させた後、150℃、4分間乾燥して、プリプレグを調製した。このプリプレグ16枚を重ねて、その両側に厚さ35ミクロンの銅箔を重ね、2枚のステンレス板に挟んで、170℃、40kg/cm2で50分間プレスし、厚さ1.6mmの両面銅張り積層板を得た。
【0045】
(比較例5〜7)
表2に示した配合により、実施例6と同様に操作して、それぞれ両面銅張り積層板を調製した。評価結果は、実施例6の結果と併せて表2にまとめて示した。
【0046】
【表2】
【0047】
【化16】
【0048】
【化17】
【0049】
表1および表2の結果から明らかなように、成形材料の短時間成形におけるバーコール硬度(表1)、およびプリプレグの短時間の積層成形におけるガラス転移温度(表2)は、いずれも実施例の方が全般に優れた値を示しており、本発明による樹脂組成物の硬化性が高いことが分かる。また、保存後のフロー残存率(表1)、およびゲルタイム残存率(表2)も、いずれも実施例の方が高く、保存性についても本発明による樹脂組成物の方が優れており、潜伏性触媒としてのオニウムボレートの効果が明白である。
【0050】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、硬化性に優れていて、短時間の成形でも十分に硬化させることができ、また、常温付近での保存安定性にも優れ、電気、電子材料用として好適に使用でき、硬化性と保存性の良好な製品が得られ、電気、電子産業分野へのメリットは大きい。
Claims (4)
- 1分子内に2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、及び/またはエポキシ当量が240以上であるエポキシ樹脂が、エポキシ樹脂(A)の50重量%以上を占めることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 硬化剤(B)が、1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
- 硬化剤(B)が、アミン系化合物であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の樹脂組成物。
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