JP3686367B2 - パターン形成方法および半導体装置の製造方法 - Google Patents

パターン形成方法および半導体装置の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は転写用マスクと電子線を用いた微細なパターン形成方法とそれを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子線によるパターン形成法ではレジスト膜が表面に形成された基板に照射された電子線が基板内で散乱し、広い範囲に渡って再びパターンを形成すべきレジスト膜の方に戻ってくるため、電子線の堆積エネルギが近傍にあるパターンの寸法や配置によって不均一な分布となる現象がある。この結果、仕上がりレジスト寸法は設計寸法からずれる。これは近接効果と呼ばれている。近接効果の及ぶ範囲は電子線の加速電圧によって異なるが例えば100kVの加速電圧で照射した電子はシリコン基板内で照射点から半径30μm以上の範囲に渡って影響を与え、パターン寸法を変化させる。従って高精度な露光を行なうためには近接効果を適切に補正する必要がある。
【0003】
また、電子線描画法は小パターンを逐次露光していくためスループットが低いという問題があったが、最近大面積転写用マスクを用いスループットを大きく改善した方式の実用化が進められている。この方式は一般的に電子線転写リソグラフィ(Electron Projection Lithography:以下EPLと略す)と呼ばれている。このEPLでは一括で露光する範囲をサブフィールドと呼ぶが、サブフィールドは約250μm角である。近接効果の及ぶ範囲は前述の例では半径30μm程度であるのでパターンの配置によってサブフィールド内での近接効果は不均一に現れる。このため従来転写用マスクを用いない電子線直接描画法で一般的であった露光パターン毎の露光量を変化させて最適なパターン寸法を得ようとする方式を使用することができない。
【0004】
EPL方式での近接効果を補正する手法の1つは補助露光法である。この手法は露光パターンの不均一性に基づく電子線の後方散乱による堆積エネルギ分布の不均一性を補助露光によって均一にする方式である。露光パターンが疎な領域で後方散乱による影響が少なくなるため疎な領域に補助露光を行なう。より正確に言えば露光パターンと白黒反転したパターンを電子線のボケ量をおよそ後方散乱の範囲に等しくし適切な露光量で露光することで達成される。この手法は近接効果のための複雑な計算を必要としないところが最大の利点である。しかしながら本来の露光パターンの露光の他に補助露光を実行する必要があるため、補助露光用のマスクが必要となり、また2度露光のため実質的なスループットが低下するという問題があった。さらに補助露光は露光パターン以外の領域に露光を行なうことになるためパターン部と非パターン部の堆積エネルギコントラストの低下を招くといった問題もあった。
【0005】
EPL方式での異なる近接効果補正方式としてパターン変形法がある。これは予め近接効果によって露光後にパターンが変形するのを予想してマスクパターンを変形させておくものである。露光後近接効果によって寸法が変化した結果仕上がり寸法が設計寸法になるようにマスクパターンの変形量を設定するものである。この方式では一旦適正なマスクを作成すれば、露光時は近接効果を考慮することなく露光を実行できるという利点がある。また2度露光が不要であるのでスループットを低下させるという問題もない。一方、近接効果によるパターン変形を予測したマスクパターンの変形量の計算は複雑であり長時間の計算機処理を要するという欠点があった。このため例えばジャーナル・オブ・ヴァキューム・サイエンス・アンド・テクノロジー(Journal of Vacuum Science and Technology Vol.B9 pp.3048−3053 No.6 Nov/Dec 1991) に開示されているように同じ特徴を持つパターンをグループ化して図形変形量を決定するといういわゆるルールベースによる補正法が用いられた。また特開平3−225816号公報においてパターン面積密度マップを用いて露光量補正によって近接効果を補正する手法が開示されている。同様にパターン面積密度マップを用いて図形変形量を決定する方式がジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics Vol.37 pp.6767−6773 No.12B Dec. 1998)に示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来法には以下のような欠点があった。先ず第1に大面積を一括で露光する方式では多数の電子が電子光学系に滞在するため空間電荷による電子線のボケ量が変化する問題がある。これは一般にクーロン効果と呼ばれている。前述したサブフィールド単位でトータル電流が露光パターンによって異なるためクーロン効果によってサブフィールド単位でボケの量が異なる。更に、実際にはクーロン効果はサブフィールド内であっても必ずしも一定ではなくパターンの粗密によって局所的にボケ量が変化している(ここではこれを局所クーロン効果と呼ぶ)。従来方式では局所クーロン効果まで考慮した近接効果補正は行われていなかった。
【0007】
第2に、近接効果の補正には光学系の収差とクーロン効果で決まる電子線のボケ量と後方散乱を考慮してパターン変形量を決定する必要があるがパターン変形によって他のパターンにも影響を与えることになるため、一般的には連立方程式の解として相互に矛盾のない変形量を決定する必要がある。これには今日の複雑なLSIパターンにおいては多大な計算時間を必要とする問題があった。
【0008】
また、連立方程式を解く代わりにパターン変形に伴うパターン相互の影響を繰り返し演算によって収束させる手段が考えられる。この場合パターン変形量は面積密度と電子線のボケ量の関数で表されるため1元方程式を解くことで求められる。しかし方程式の解として変形量を決定したパターン変形と面積計算を繰り返すことになるためやはり計算時間がかかるのは避けられない。
【0009】
第3に、相補分割、サブフィールド分割、近接効果補正の演算は複雑なパターン演算を膨大なLSIデータに対して行なう必要がある。通常、LSIのレイアウトデータは階層的なデータとして処理されることによってそのデータ量は数10分の1以下に圧縮されている。しかし上記従来法ではサブフィールド毎にフラット化されたデータに対してこれらの処理を行なうため、上記階層化の効果を活用することができず処理時間およびデータハンドリング上で大きな問題があった。
【0010】
本発明の目的はEPL方式の電子線露光法において、電子線のボケを含めた前方散乱、後方散乱、クーロン効果のいずれにも対応可能な近接効果補正方法とこれを用いたパターン形成方法および半導体装置の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的はEPL方式の電子線露光法において複雑なLSIパターンにおいても高速で精密な近接効果補正を可能とした処理によるパターン形成方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的はEPL方式の電子線露光法において高速なデータ処理と圧縮されたデータの扱いによって半導体装置を低コストで製造する方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本願明細書に開示される発明のうち、代表的なものの概要は以下の通りである。
【0014】
露光パターンを後方散乱、クーロン効果、プロセス起因の寸法誤差のそれぞれの影響範囲を考慮した区分領域に分割し、区分領域内のパターン面積占有率(パターン面積密度)を保存しておき、寸法補正に必要なパターン変形量を電子線の偏向位置と電子線の電流密度で定まるボケ量とそれぞれのパターン面積密度の関数としパターン寸法・属性に応じて決定し、電子線露光に際しては想定した電子線の偏向位置と電流密度と概ね一致させて露光する。ここでサブフィールド全体あるいは露光パターン全体の区分領域内のパターン面積密度を配列状データとして保存したものを面積密度マップと呼ぶ。上記以外にレジストの現像過程や後のエッチング工程において局所的なパターンの粗密依存性が発生する場合にはその影響範囲に応じた区分領域を設定しその区分領域内のパターン面積密度の関数としてパターン変形量を決定する。これら異なる大きさの複数の区分領域内のパターン面積密度は基準となる区分領域(最も小さい区分領域が望ましい)を設定しておきパターンデータから面積を計算する時は基準区分領域単位で行い、他の大きさの区分領域の面積密度は既に求められた基準領域内の面積密度から計算することが望ましい。この理由は最小の区分領域を持つ面積密度マップから、より大きいサイズの区分領域内の面積密度マップを作成することは単純な四則演算で可能であるため直接パターンデータから面積を計算するよりもはるかに高速に計算することができるためである。
【0015】
近接効果やクーロン効果あるいはエッチングなどのプロセスの影響は特定の領域内のみのパターンの影響を受けるものと距離の関数として他の領域のパターンの影響を受けるものとがある。例えばクーロン効果はサブフィールド内のみのパターンの影響を受けるものであるが、近接効果は特定の区分領域内だけでなく周辺の領域からの影響を距離の関数として受け、異なるサブフィールドのパターンの影響も受けることになる。これら距離依存の影響は前記基準区分領域で求められたパターン面積密度を、例えば近接効果であれば堆積エネルギの分布関数で畳み込み積分、またはこれと同様の処理を行なうことで取り込むことができる。
【0016】
EPL方式の電子線露光方式ではいくつかの理由によりウエハ上の同一領域に複数のマスクを通過した電子線を重ね合わせて所望のパターンを露光することがある。その理由の1つは、転写用マスクとして、電子線が通過できる所望の形状の開孔部を有するステンシルマスクを用いた場合、1枚のマスクでは実現できないドーナッツ状のパターンや機械的強度が弱いため2枚に分割する必要のあるパターンが存在することである。他の理由はパターン密度が非常に高いパターンデータにおいてはクーロン効果が強く影響し、所望の解像性が得られない場合があり、2枚のマスクに分割して露光する必要性が出てくるからである。これら2枚(あるいは必要によりそれ以上)のマスクは相補マスクと呼ばれている。相補マスクを用いた露光において、クーロン効果は個別のマスクによる露光で影響を受けるが、近接効果は相補マスク全体のパターンの影響を受けることになる。この場合には相補マスク毎の面積密度マップとそれらを合成した合成面積密度マップを作成してそれぞれの影響を考慮してパターン変形を行なうことにより高精度なパターンを得ることが可能となる。
【0017】
また、パターン変形に伴う各区分領域のパターン面積密度の変化を前記基準区分領域内で再計算し、パターン面積密度の変化量が予め定められた値以下になるまで繰り返す。このとき、面積計算を行なう区分領域内に各パターンの周辺長を保存しておくことにより、パターン変形量(各辺のシフト量)と周辺長からパターン面積の変化量が計算できる。変形後のパターンから面積を計算しその変化量を求めることは時間のかかる計算となるが、周辺長より面積の変化量を計算することは数値計算のみで実行できるため繰り返し演算の大幅な高速化が実現できる。
【0018】
また、階層的に設計されたレイアウトデータに対して、できるだけ設計階層構造を保持したまま相補分割または相補分割と近接効果補正を行なう。このためには、サブフィールド分割は相補分割を行った後に行なうことが望ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
以下、本発明の実施例を図1を用いて説明する。図1は本発明のパターン形成方法の流れを示す図である。四角で囲まれた部分はデータ処理の機能ブロックである。先ずLSIパターンデータ101が入力として与えられる。次に102で示すように電子線露光装置で定まるサブフィールド(電子線を一度に転写できる最大の大きさを持つ領域でウエハ上換算でおよそ250μm角)単位にパターンデータを分割する。またLSIの層によっては必要に応じて相補パターンに分割を行なう。このサブフィールド分割と相補パターン分割の処理順序は逆であっても構わない。次にパターンデータを面積密度を計算する単位となる基準区分領域に分割し(103)、それぞれの区分領域内の個々のパターンの面積を計算し積算する(104)。区分領域の面積に占めるパターン面積の総和の比率を面積密度と呼ぶことにする。LSIパターン全体あるいはサブフィールド単位で処理を行なう場合はサブフィールド全体でそれぞれの基準区分領域について面積密度を計算しこれを2次元の配列データとしたものを基準面積密度マップと呼び保存しておく(105)。基準区分領域の大きさは1〜10μm程度が望ましく、後にパターン変形のために用いるいくつかの面積密度マップの区分領域より小さいことが必要である。また、この基準区分領域は後述する局所クーロン効果、近接効果、プロセス要因の補正のための区分領域の中で最も小さい区分領域でもって代用することも可能である。
【0020】
初めて基準面積密度マップが作成された場合には106で示される判定処理は無条件でNの処理に進む。次に、パターンの寸法精度劣化をもたらすいくつかの要因毎に区分領域の大きさの異なるいくつかの面積密度マップを作成する(107)。本実施例ではサブフィールド(SF)全体のクーロン効果(108)。局所クーロン効果(109)、近接効果(110)、エッチング等のプロセス要因(111)の4種類の面積密度マップを作成する。それぞれの区分領域の大きさは、108で250μm角、109で20μm角、110で10μm角、111で30μm角とした。これら4つの区分領域内の面積密度は前述した基準面積密度マップの要素の単純な加算平均処理だけで計算することができるため高速な処理が可能となる。108のSFクーロン効果は個別のサブフィールド内のパターン面積率と電子線の電流密度のみでクーロン効果が決まるため基準面積密度マップより計算された面積密度マップをそのままで保存する。一方、その他の3種の要因は考慮対象の区分領域内のパターンだけでなく周辺の区分領域のパターンであっても考慮対象のパターン寸法に対して距離に依存した影響を与える。そこでそれぞれの影響の程度を表す分布関数を用いて周辺区分領域パターンの影響取り込み計算を行った結果をそれぞれの面積密度マップとして保存する。寸法補正に必要なパターン変形量は電子線のボケ量にも大きく依存するため、電子線のボケ量は電子光学系で定まるサブフィールド偏向位置での収差とクーロン効果を考慮して決定する。上述した複数の面積密度マップの各要素とパターンの変形量を関係付けられた補正テーブルあるいは近似式112を用いて個々のパターンの変形を行なう(113)。
【0021】
上述した処理によってパターン変形を行った結果、各区分領域内のパターン面積密度は変化し、従ってパターン変形量に誤差が発生することになる。これを補正するため変形後のパターンを用いて再び基準区分領域内のパターン面積を計算し(104)、面積密度マップ105を再度作成する。次に、最も新しい面積密度マップの各要素と1つ前に作成した面積密度マップの各要素との差(変化量)が予め定めた規定値より大きいか否かを判定し(106)、大きければ上記処理を繰り返す。もし規定値以下であればパターン変形の処理は終了であり、次工程であるマスク用パターンデータの作成114に進む。ここでは電子光学系の縮小倍率(例えば1/4)に合わせたパターンデータの拡大処理、鏡面反転処理等のパターン処理を行ないマスク描画機のデータフォーマットに合わせたデータ変換処理を行なう。次に、前記マスク描画データを用いてマスク描画・レジスト現像の後、基板エッチング等のマスク加工処理を経てEPLマスクを作製する(115)。上記EPLマスクを用いて電子線露光を実行する際にはサブフィールド偏向位置と電子線の電流密度をパターン変形を実施した時に想定したサブフィールド偏向位置と電流密度に概ね一致させて行ない(116)所望のパターン形成を行なう。
【0022】
(実施例2)
図2及び図3は相補データに分割を行なう場合の処理の詳細を示したものである。図2は面積密度マップを求めるまでの手法を示したものである。チップサイズ20mm角のLSIのレイアウト設計が完了したCADデータ201は最初に250μm角のサブフィールド202に分割される。分割後のデータはSF1,1〜SF80,80の6400個のデータとなる。次にそれぞれのサブフィールドを2個の相補データ203と204、例えばSF1,1ではSF1,1AとSF1,1Bに分割する。これはそれぞれの相補データ内ではドーナッツ状のパターンを含まないように、またパターンの長手寸法/短手寸法(アスペクト比)が30を越えない大きさに分割している。ここまでの処理を1つの機能ブロックとして中間データファイル205に出力した。中間データファイルの形式は以後の処理に用いる機能ブロックと整合のとれるものが良い。一般的にLSIデータの授受に用いられるストリームファイル形式であると異なるソフトウエアを用いた処理にも汎用性が高い。ただし、上記の処理と以後の処理を連続して行なうにはソフトウエア固有のデータ形式で保存することが処理速度向上の上で望ましい。
【0023】
次に上記の処理でサブフィールド分割および相補データ分割されたデータは近接効果等補正処理(クーロン効果、近接効果、プロセスに起因する寸法誤差補正処理をここでは近接効果等補正処理と略して呼ぶことにする)のためのコンピュータPC0(206)に順次入力される。PC0にはPC1からPC10の10台のコンピュータ(207)が接続されており入力されたデータをサブフィールド単位で個別のコンピュータに分配する。個別コンピュータはサブフィールド毎に相補分割されたデータを5μm角の基準区分領域に分割しそれぞれの基準区分領域内のパターン面積密度を計算し基準面積密度マップsfi,j_a、sfi,j_b(208、209)を作成する。次に局所クーロン効果の補正のため25μm角の区分領域C1を設定する。局所クーロン効果の影響が距離x離れた点で関数f1(x)としてC1中心での局所クーロン効果面積密度マップの要素sfi,j_c1a(K,L)、sfi,j_clb(K,L)は(式1)で求められる。
【0024】
【式1】
Figure 0003686367
また同様にしてサブフィールド全体でのクーロン効果は250μm角を1つの区分領域としてパターン面積密度を計算すればよいので(式2)で求められる。
ここでnはサブフィールド内の基準区分領域のx方向およびy方向個数である。個別のコンピュータはサブフィールド単位を扱うのでsfi,j−c2a、sfi,j−c2bはそれぞれ1つの値を持つだけとなる。
【0025】
【式2】
Figure 0003686367
これらのデータをコンピュータPC0(206)に返しLSIチップ全体の大きさの基準面積密度マップMAP_A、MAP_B(210、211)を作成する。同様に局所クーロン効果補正用面積密度マップMAP_C1A、MAP_C1B(212、213)とサブフィールドクーロン効果補正用面積密度マップMAP_C2A、MAP_C2B(214、215)を作成する。
【0026】
一方後方散乱はサブフィールドを越えて影響を与えるためLSIチップ全体で考慮する必要がある。このため10μm角の区分領域を有する後方散乱補正用面積密度マップMAP_PROX(216)を基準面積密度マップMAP_A、MAP_B(210、211)より作成する。MAP_PROXの各区分領域内の要素は先ず基準面積密度マップMAP_AとMAP_BとでのLSIチップ上同じ位置の各要素を(式3)のように加算する。
【0027】
【式3】
Figure 0003686367
次に周辺区分領域からの影響を取り込む。後方散乱の分布関数をf2(x)とすれば後方散乱の面積密度マップの要素は(式4)で求められる。
【0028】
【式4】
Figure 0003686367
ここでf2(x)はガウス分布で良く近似ができ通常(式5)のように記述される。
【0029】
【式5】
Figure 0003686367
ここでβbは点入射の電子線による後方散乱のエネルギ堆積量が入射点の1/eになる距離で後方散乱係数と呼ばれるものである。
【0030】
次に作成された面積密度マップを用いてパターン寸法の変形を行なう手順を図3を用いて説明する。ここではプロセス起因の寸法誤差は無視できるとしてサブフィールドクーロン効果、局所クーロン効果、後方散乱による近接効果を補正する。従って図3(a)に示すように3種類の面積密度マップを使用する。また相補パターンの内の一方についてのみ説明するが他方についても同様の処理が適用できる。それぞれの面積密度マップの配列をサブフィールドクーロン効果マップでは(i,j)、局所クーロン効果マップでは(k,l)、後方散乱マップでは(m,n)と表記する。近接効果による寸法シフトは電子線のボケ(レジスト中での前方散乱を含む)と後方散乱によって発生する。従って本実施例の場合、区分領域のサイズが最も小さい後方散乱の面積密度マップの単位毎に電子線のボケ量と後方散乱の堆積エネルギ量を求める必要がある。電子線のボケの原因の1つは電子光学系で定まる収差とサブフィールド単位のクーロン効果である。光学系の収差はサブフィールドの偏向中心からの座標(x,y)で定まる。また電子線の電流密度をibとすればサブフィールド単位の電流は当該サブフィールドの面積密度sfi,j_c2a を用いてib*sfi,j_c2aで計算される。この時の電子線のボケ量が図3(b)のようにβf1であったとする。さらに(i,j)サブフィールド内での局所クーロン効果は50μm角内の面積密度sfi,j_cla(k,l)と電子線電流密度ibよりib*sfi,j_cla(k,l)の依存した値βf2として与えられる。ここで注意すべきは面積密度sfi,j_cla(k,l)は単に(k,l)区分領域内のみで決定した面積密度ではなく周辺区分領域の影響と取り込んだ面積密度であるという点である。また電子線のボケ量βf1、βf2はそれぞれの電流と光学系により定まる固有の値である。局所クーロン効果の1区分領域内での電子線のトータルのボケ量を、
【0031】
【式6】
Figure 0003686367
の(式6)より求める。電子線のボケ量には0.1μm程度以下の領域で影響を及ぼすプロセス上の要因を加えることによってその影響を補正することも可能である。例えば化学増幅レジストの酸拡散の影響は電子線のボケとは独立の現象であるので(式6)に加算して等価的に電子線のボケが増大したものと見なすことができる。次に後方散乱の影響は(m,n)区分領域内の面積密度MAP_PROXi,j(m,n)と電子線の基板材料からの反射の程度を表すηの積η*MAP_PROXi,j(m,n)に比例する。ここでηは正確には点入射の電子線が前方散乱でレジストに堆積するエネルギを1とした時に基板からの後方散乱によりレジストに堆積するエネルギの値として定義される。
【0032】
図3(c)に示したラインパターンとコンタクトホールについて寸法変形量は以下のようにして求められる。まず、パターン幅Wと寸法変化量Δwを一般化の
【0033】
【式7】
Figure 0003686367
ため電子線のボケ量βで正規化し、さらに式の簡単化のため後方散乱の当該区分領域での面積密度を単にαで表す。すなわち、
とすると、ラインパターンとコンタクトホールの場合の寸法変化量Δwはそれぞれ以下(式8)より求められる。
【0034】
【式8】
Figure 0003686367
ここでEsは基準エネルギで例えば1:1ライン/スペースパターンが設計値通りに仕上がる露光量でのパターンエッジでの堆積エネルギを表すものである。
【0035】
それぞれの区分領域内のパターンについてパターン変形量を求め、パターン変形を実施する。異なる局所クーロン効果区分領域単位で電子線のボケ量が異なり、異なる後方散乱区分領域毎に後方散乱のレベルが異なる。従って同一の後方散乱区分領域内でのみ同一寸法パターンに同一のパターン変形量が与えられる。
【0036】
以下、実施例1で説明したごとくパターン変形に伴う面積密度マップの変化を繰り返し計算で収束させ最終的なパターン変形量を決定する。
【0037】
本実施例では面積密度の周辺領域の取り込み処理や寸法変化量の計算方法の一つの例を示したもので計算方法は同等のものであれば上述した式に限定するものではない。また、複数のコンピュータを使った並列計算での例を示したが、マルチCPUを有するコンピュータを使った並列計算も同等に可能であり、処理データ量によっては1台のコンピュータのみで処理することが可能である。さらにまた、寸法変化量を決定するために(式8)の方程式の解を用いたが、これはパターン幅や面積密度に応じた補正テーブルを用意してテーブルを参照して必要な寸法変化量およびライン端のシフト量を求めることも可能である。
(実施例3)
図4はさらに他の実施例を示すものでパターン変形に伴う面積密度の変化による誤差を収束計算によって低減し、さらに高速に収束計算を実行する方式について説明したものである。本実施例では基準区分領域内のパターンを面積密度マップを用いて変形する工程のみを述べる。
【0038】
図4に示す大きさaの基準区分領域401内にパターン402〜406の5つの矩形パターンが存在している。それぞれの矩形パターンの短辺をw1〜w5とし長辺をh1〜h5(図中に示していない)とする。但しパターン402と403は辺s1を共有しており、パターン405は隣接する基準区分領域に跨って存在している。パターン405が基準区分領域の境界線で切られる線を仮想的な辺s2として定義する。この時パターン変形を実施する前の基準区分領域内の面積密度αは図中407で示す以下(式9)で与えられる。
【0039】
【式9】
Figure 0003686367
ここで面積密度の計算においてパターン405は仮想辺s2で切断されたものとして扱う。また各パターン毎の周辺長を408に保存する。この時、周辺長の計算においては共有辺s1と仮想辺s2は除外する。実際の面積密度の初期値αと周辺長lの計算は図形演算によって行なう。次にパターン変形に伴う面積密度の変化を409で示す(式10)により計算する。
【0040】
【式10】
Figure 0003686367
ただし、第1回目の計算では面積密度の変化量は0である。次に個々の基準区分領域で計算した面積密度マップを基に実施例2で示したと同様に電子線のボケ量の計算のための面積密度マップ1、410と後方散乱量の計算のための面積密度マップ2、411を作成する。これらの複数の面積密度マップより各区分領域内の個々のパターン変形量Δwを求める(412)。この時、パターン変形に伴うパターン面積密度の変化は図中413のように(式11)によって求めることができる。
【0041】
【式11】
Figure 0003686367
(式11)では辺の移動に伴うパターンの頂点部分での僅かな面積の変化を無視しているが、より正確にはパターン毎に頂点の数も基準区分領域内で保存しておいてΔw /a*(頂点数)を(式11)に加算(太くする場合)、減算(細くする場合)することが望ましい。 パターンの変形量はパターン変形を行なう前の面積密度により決定しているため(式11)で求めた面積密度の変化が大きい場合にはパターン変形量に誤差が生じることになる。このため図4で示した変形の妥当性の判定を(式12)により行なう(414)。
【0042】
【式12】
Figure 0003686367
この結果でパターン面積密度の変化量が予め設定した許容値より大きい場合、すなわち、414において
(判定Nの場合)には面積密度の再計算(409)、面積密度マップの作成(410、411)、図形変形量の決定(412)および面積密度の変化量(413)を求めた上で414の判定を再度実行する。これを繰り返し414が許容値以下になった段階(判定Yの場合)でパターン変形量を適正値と決定し実際のパターン変形415を行なう。
【0043】
一般的にはパターン変形量に伴うパターン面積の変化はパターン変形を実施した後のパターンに対して面積を計算し変形前後での面積差を計算する必要がある。この場合には各パターンの辺の移動処理を行ない、さらにその結果のパターンについて面積を計算する必要があるため処理時間がかかるという問題がある。本実施例では各パターンの周辺長を保存しておくことによって、元パターンの辺の移動処理を行なわずパターン変形に伴う面積密度の変化量を直接計算することが可能となった。このため単純な配列数値の計算のみでパターン変形量が適正であったかどうかの判定が可能である。パターン変形量が適正であることが判明した変形量に対して実際のパターンの辺の移動による変形を行なえばよいので時間のかかるパターン処理は1度だけですむという大きな利点がある。
(実施例4)
本実施例ではいくつかの計算処理をフィッティングより求めた近似式により高速化する手法を図5および図6を用いて説明する。
【0044】
電子線のボケ量は電子光学系の収差とクーロン効果によるボケによって決まることが知られている。光学系の収差は電子線の電流値と偏向位置によって異なるため、個々のサブフィールドの電子線ボケ量はサブフィールド偏向位置、電子線の電流密度、サブフィールド内の開口面積によってそれぞれに異なることになる。この個々のサブフィールドの電子線ボケ量をシミュレーションによって求めることは多大な時間を要する。
【0045】
本実施例の方法においては図5(a)に示すようにサブフィールド偏向可能な領域501に複数の代表点502を設ける。次にサブフィールド電流がIである時、代表点P(x,y)での電子線のボケをシミュレーションにより求める。これを設定した代表点全てに対して行なう。またサブフィールド電流がIである時も同様にして代表点での電子線ボケ量をシミュレーションによって求める。サブフィールド電流がIである時の各代表点の位置(x,y)と電子線ボケ量βf0_I1の関係を多項式によってフィッティングする。例えば5次の多項式によって近似すると(式13)に示すような形式となる。
【0046】
【式13】
Figure 0003686367
これをサブフィールド電流がIの場合にも同様に行ない電子線ボケ量βf0_I2の近似式を求める。個別サブフィールド((i,j)位置とする)のボケ量を求めるにはまず偏向位置(x,y)でのβf0_I1またはβf0_I2は(式13)に座標を代入することによって求められる。(i,j)サブフィールドの面積密度は図5(b)の面積密度マップ1(503)によって求められるのでこれをα(i,j)とし、電子線の電流密度をiとするとサブフィールド電流はα(i,j)*iとなる。電子線ボケ量が図5(c)に示したようにサブフィールド電流に対して直線的であるとすれば(式14)を用いて個別サブフィールドの電子線ボケ量を求めることができる。
【0047】
【式14】
Figure 0003686367
ここでは簡単のために(式14)を1次多項式でフィッティングしたが、シミュレーションで求めるボケ量をさらに異なる電流値で行ない高次の多項式でフィッティングすることでより高精度な近似ができる。
【0048】
次にサブフィールド内で分布を持つ局所クーロン効果についても同様に図5(d)の面積密度マップ2(504)の面積密度α(k,l)より
【0049】
【式15】
Figure 0003686367
として求めることができる。ただしここでの電子線ボケ量はサブフールド内電流分布による電子線ボケの変化量として予め求めておく。これによって電子光学系の収差、サブフィールドクーロン効果、サブフィールド内局所クーロン効果の全てを考慮した電子線ボケ量βは(式16)によって求めることができる。
【0050】
【式16】
Figure 0003686367
(式16)のβにより規格化したパターン寸法wと規格化したパターン寸法変化量Δwを用いると(式8)の方程式は(式17)のようになる。
【0051】
【式17】
Figure 0003686367
(式17)よりΔwを求めることは困難ではないがLSIの個々のパターンについて実行すると多大な時間が必要となる。そこで本実施例では(式17)の解を多項式で近似することを行なう。後方散乱による基板からの反射率であるηは基板材料が同じであれば基本的には一定であるので、ここではシリコン基板上に加速電圧100kVで電子線描画した場合を仮定しη=0.6とする。規格化パターン寸法wをパラメータとして(式17)をΔwに対して解いた結果を図示したものが図6(a)である。面積密度αとパターン変形量Δwの関係は次の3次の多項式(式18)
【0052】
【式18】
Figure 0003686367
で非常によくフィッティングができる。また規格化パターン寸法が大きくなるとパターン寸法に依存せず1本の近似曲線に収斂することも分かる。さらに(式18)3次式の各項の係数a3、a2、a1、a0と規格化パターン寸法wの関係を表したものが図6(b)である。この結果もまたおよそ0.8<w<3.2の範囲で3次の多項式によってよく表すことができる。3.2<wの領域ではほぼ一定値である。すなわちパターン寸法に依存しないということが言える。
【0053】
図6の結果を用いれば個別のパターン毎に方程式を解く必要はなく3次多項式に数値を代入するだけでパターン形状の変化量を求めることができ、処理の大幅な高速化が可能となる。なお本実施例ではラインパターンについて説明したがホールパターンや矩形パターンについても多項式近似によって同様な高速化が可能である。また、電子光学系の収差、サブフィールドクーロン効果、サブフィールド内局所クーロン効果の全てを考慮した電子線ボケ量を(式16)の和の形で求めたが局所クーロン効果によるボケの寄与分の算出法によっては二乗和の形で求めることもできる。
(実施例5)
本発明を論理LSIのパターン露光に適用した例を図7を用いて説明する。図7はLSIの第1配線層の製造工程に適用した場合の例である。図7(a)はLSIパターンをサブフィールドに分割した時の一部分を示すもので701の領域が250μm角に分割された1つのサブフィールド領域である。図7(a)では実際のパターンそのものではなくパターン群を矩形として表してある。その中の一部の領域702および703の詳細パターンを図7(b)に示す。この2つの領域ではほとんどのパターンが本LSIパターンの最小寸法である70nmで構成されている。パターン704は配線が70nmの等間隔ライン/スペースで配置された領域の1つのパターンを示す、またパターン705は疎なパターン領域での70nmのパターンを示す。
【0054】
本実施例では後方散乱による近接効果補正のための区分領域を10μmとして面積密度マップを作成した(図には示していない)。またサブフィールド内の局所クーロン効果を補正するために50μm角の区分領域を設定し、面積密度マップを作成した。この内サブフィールド701について面積密度の分布を3次元グラフで表現したものを図7(c)に示す。図の見やすさのために図7(a)のX,Y方向と図7(c)では逆になっていることに注意が必要である。図7(c)の面積密度マップの作成に当たっては隣接する区分領域内パターンの影響を取り込むために下記(式19)のように隣接する9個の区分領域で重み付け平滑化処理を行なっている。
【0055】
【式19】
Figure 0003686367
ここで、α、αはそれぞれ平滑化前および平滑化後の面積密度である。また、g(l,m)は重み係数で、
【0056】
【式20】
Figure 0003686367
の値を用いた。
【0057】
近接効果、サブフィールドクーロン効果およびサブフィールド内局所クーロン効果を考慮に入れたマスク寸法変化量を図7(d)に示す。この結果より設計寸法が70nmであるのでパターン704は52.5nm、パターン705は110nmである。4倍転写用マスクとして、それぞれ210nm、440nmのパターンを形成し電子線露光を行なったところ図7(e)の条件Aの結果を得た。寸法測定の再現性±2nmの範囲で70nmのパターンを得ることが可能であった。一方、図7(e)の条件Bは近接効果とサブフィールドクーロン効果のみを考慮したものでサブフィールド内の局所クーロン効果を無視して寸法補正を行なった実験的な結果である。この場合にはパターン密度のやや高いパターン704で+5nmの寸法誤差が認められた。このように3種類の面積密度マップを使用してマスクパターン寸法を変化させることによってサブフィールド内の不均一なパターン配置による寸法誤差を高精度に補正することが可能となった。
【0058】
本実施例では配線パターンのように比較的パターン密度の高い層について説明したが、論理LSIにおいてはスルーホール層(あるいはコンタクトホール層)では元々のパターン面積密度が低くサブフィールド内の局所クーロン効果の影響は軽微であるため近接効果とサブフィールドクーロン効果を補正する処理を行なえば十分である。また論理LSIのゲート層も同様にややパターン密度が低いためサブフィールド内の局所クーロン効果を無視することができる場合が多い。但しゲートパターンに要求される寸法精度は一般にLSIの他の層より厳しいので要求精度によってはやはり局所クーロン効果の補正が必要となる。局所クーロン効果の補正の必要性は局所面積密度の許容最大値を設定しておきこの許容値を超える区分領域があるか否かで判断すればよい。また相補マスクに分割する必要がある場合には分割されたそれぞれのマスクパターン内での面積密度で判断する必要がある。
(実施例6)
図8はLSIの設計段階で使用される階層的なデータ構造をできるだけ活かした形で近接効果等の補正データ処理を行う方式について説明したものである。図8(a)に示すLSIデータの最上位階層のセルABC(801)とし、その下位にAA、BB、CC等がある。さらにAA階層の下にはA、Aの下にはa、b、cという階層構造を形成している。
【0059】
この階層構造を保持したままでデータ処理するためには、サブフィールド分割はできるだけ処理の後工程で行なうことが望ましい。このため、本実施例では図8(b)のようなデータ処理フローとした。まず相補パターン分割の必要のある場合にはLSIデータABC(801)を最初に2つの相補パターンABC−1とABC−2に分割する。本実施例では相補パターン分割のために汎用的なLSIのデザインルールチェック(DRC)用ソフトウエアを使用した。ABC−1とABC−2はABCのほとんどの階層構造が保持されている。
【0060】
次に分割されたパターンABC−1内のセル間のパターンに重なりがあるものについて一体化して重なりを除去する。その後10μmの基準区分領域を設定し区分領域内のパターン面積を計算し基準面積密度マップMAP−B1を作成する。またパターンABC−2についても同様に処理して基準面積密度マップMAP−B2を作成する。基準区分領域の大きさを後方散乱補正用の区分領域の10μmと一致させたため、後方散乱面積密度マップMAP−PRXはMAP−B1とMAP−B2のマップの同一位置での区分領域の面積密度の値を単に加算するだけで作成が可能である。
【0061】
次に、基準面積密度マップMAP−B1を元に区分領域が30μmの局所クーロン効果補正用面積密度マップMAP−CL1および区分領域が250μmのサブフィールドクーロン効果補正用面積密度マップMAP−SF1を作成する。またもう一方の相補パターンついても同様にして面積密度マップMAP−CL2およびMAP−SF2を作成する。
【0062】
次にパターンデータABC−1(あるいはABC−2)を250μm角のサブフィールド単位に分割する場合にはサブフィールド内にて階層が閉じているセルについてはそのままの形で階層を保存する。また、下位階層のセルがサブフィールド間に跨っている場合にはサブフィールド内で階層が閉じた複数のセルとして構成し直す。このようにサブフィールド内に階層を保持したパターンデータABC−1−SF(あるいはABC−2−SF)を作成する。これらのパターンデータと面積密度マップMAP−PRX、MAP−CL1、MAP−SF1(あるいはMAP−CL2、MAP−SF2)より補正演算処理802を行なうには実施例1から実施例5で述べられた手法が用いられる。補正演算の結果相補マスク用データABC−M1とABC−M2が作られる。
【0063】
この段階ではほとんどの階層は展開されフラットなデータ構造となる。この理由は同一のセルであってもその配置位置によって寸法補正量が異なるためデータ圧縮ができなくなるためである。しかしながら、LSIの層によっては例えばホールパターンあるいはLSIの論理ゲートの部分ではサブフィールド内の局所的なパターン密度が低い領域もありサブフィールド内の領域において一定の寸法補正量となり階層を維持することも可能である。この段階でパターンデータABC−M1およびABC−M2は直接マスク描画用電子線描画装置のフォーマットに出力すると効率がよい。806のデータを用いて作成された転写用相補マスクにより同一位置のサブフィールドはウエハ上の同一位置に転写されるように電子線露光807が実行される。
【0064】
以上のように相補パターンデータへの分割をサブフィールド分割の前に行なうことでデータの階層構造をできるだけ保持したままデータ処理ができるので処理速度の高速化、処理データ量の低減に効果がある。もちろんサブフィールド分割後相補パターン分割を行なってもデータの階層を保持することは可能である。この時は元々のLSIデータの構造によってはフラットな構造に展開するセルが多くなることがありうる。
【0065】
上記のデータ処理においてサブフィールドサイズは250μm角であるので20mm角のLSIチップでは6400個のサブフィールドデータが形成される。この時パターンデータABC−1−SF(あるいはABC−2−SF)は異なる6400個のファイルとして保存してもよいが、全体を1つのファイルとしてサブフィールドデータを6400個の下位階層のセルとしておくとデータの入出力の際に好都合である。
(実施例7)
次に、具体的な半導体集積回路装置の製造例を説明する。ここでは、例えばゲートアレイ、スタンダードセル等のようなセミカスタム方式で製造される半導体集積回路装置、半導体基板上にカスタムI/O(Input/Output)回路、カスタム論理回路またはI/F(インターフェイス)制御回路を有する半導体集積回路装置の製造方法に本発明を適用する場合を説明する。
【0066】
図9(a)は、半導体集積回路装置における論理素子の一部を示す平面図である。ここでは2個のnMISQnと、2個のpMISQpとから構成されている。nMISQnは、半導体基板に形成されたp型ウエル領域PWの表面のn型半導体領域911n上に、pMISQpは、n型ウエル領域NWの表面のp型半導体領域911p上に、それぞれ形成されている。ゲート電極912Aは、nMISQnおよびpMISQpに共有となっている。ゲート電極912Aは、例えば低抵抗多結晶シリコンの単体膜、低抵抗多結晶シリコン膜の上部にシリサイド層を設けたポリサイド構造、低抵抗多結晶シリコン膜上に窒化タングステン等のようなバリア膜を介してタングステン等のような金属膜を堆積してなるポリメタル構造あるいは絶縁膜に掘られた溝内に窒化チタン等のようなバリア膜を堆積し、さらにその上に銅等のような金属膜を埋め込むことで形成されたダマシンゲート電極構造で構成されている。ゲート電極912Aの下方の半導体基板部分はチャネル領域となる。
【0067】
配線913Aは、例えば高電位(例えば3.3Vまたは1.8V程度)側の電源配線であり、コンタクトホールCNTを通じて2個のpMISQpのp型半導体領域911pと電気的に接続されている。また、配線913Bは、例えば低電位(例えば0V程度)側の電源配線であり、コンタクトホールCNTを通じて1個のnMISQnのn型半導体領域911nと電気的に接続されている。配線913Cは、2入力NANDゲート回路の入力配線であり、コンタクトホールCNTを通じてゲート電極912Aの幅広部分で接触し電気的に接続されている。配線913Dは、コンタクトホールCNTを通じてn型半導体領域911nおよびp型半導体領域911pの両方に電気的に接続されている。配線914Aは、コンタクトホールCNTを通じて配線913Dと電気的に接続されている。
【0068】
ここでは、図9(a)の回路を製作する工程の内で本発明のパターン形成方法による電子線転写方式を用いた工程、光リソグラフィを用いた工程の使い分けを図9(b)に示した。p型あるいはn型のウエル領域の形成工程では微細な寸法を必要としないため通常の光リソグラフィによってパターン形成を行った。素子分離層の形成においては基準面積密度マップの他に、後方散乱マップ(MAP1)、サブフィールド単位のクーロン効果マップ(MAP2)およびサブフィールド内局所クーロン効果マップ(MAP3)を作製してこれらの誤差補正を行なった2枚の相補マスクを使用してパターン形成を行なった。次にシリコン基板をエッチングにより溝形成を行なった後、シリコン酸化膜を埋め込みCMP(Chemical Mechanical Polishing)による平坦化を行なった。次にゲート形成工程では上述のMAP1、MAP2、MAP3の他にドライエッチングでのローディング効果による寸法ばらつきを補正するためプロセスマップ(MAP4)を用いてパターン形状の補正を行なった。またクーロン効果を低減するため2枚の相補マスクに分割し電子線露光時に重ね合わせることで所定のパターンを得ている。
【0069】
コンタクト穴の形成工程では相補マスクへの分割は行なわずMAP1およびMAP2のみを使用したパターン変形を行なった。これは後の工程であるスルーホール1の形成工程でも同じである。金属配線1の工程では比較的パターン密度が高い領域があることと、長い配線もあるためステンシルマスクの機械強度確保のために2枚の相補マスクに分割している。また、補正のためのパターン変形にはMAP1、MAP2およびMAP3を使用した。この後の工程は金属配線2、スルーホール2、金属配線3、スルーホール3、金属配線4、スルーホール4、金属配線5、スルーホール5、プロテクション工程があるが、これらはすべてゲート電極パターンに比べてパターン寸法が大きく、光リソグラフィによってパターン形成した。
【0070】
また、上記は半導体装置の製造方法に関するものであったが、特にそれに制限されることはない。例えば液晶ディスプレイ等、エネルギ線を照射することによって感応基板上にパターン転写を行なうものであれば同様な手法を用いることによって応用可能である。
(実施例8)
本実施例では、マスク補正に用いるDAシステムの一例を図10を用いて説明する。
【0071】
まず、所望の半導体回路パターンを含む設計レイアウトデータを入力し、これを必要に応じて相補マスクパターンデータP1、P2へ分割する。なお、このとき併せて、分割辺図形PD、及びサブフィールド境界線を新たに図形データとして生成することが好ましい。但し、この段階ではサブフィールドへのデータの分割は行なわない。上記パターンデータに対して、前記実施例に述べたのとほぼ同様の方法により複数種類の区分領域に基づく面積密度マップ(ここでは後方散乱マップD1(x,y)、クーロン効果マップD2(x,y)、ウエハープロセスD3(x,y)を用いた)を生成する。x,yはレイアウトパターンの座標である。
【0072】
次に、上記設計パターンP、又は相補マスクパターンP1、P2の含むパターンの各辺を適宜分割し、補正対象辺及び補正点を抽出、番号付けする。補正点は、補正辺のほぼ中央に設定する。又、必要に応じて各補正対象辺の属性の場合分けを行なう。辺の属するパターンの寸法(電子線透過部の幅)、辺の長さ、隣接パターンまでの距離、辺のパターンにおける機能(長辺、ライン端、ホール等)等に応じて、全ての辺が分類される。これらの分類は、現在広く行われている光近接効果補正で用いられている図形演算による図形抽出を用いた。なお、必ずしも上記の全項目に対して場合分けを行なう必要はない。例えば、パターン寸法と辺の機能だけの分類で十分な精度が得られる場合もある。各補正対象辺(辺番号i=1,2,...)に対して、補正点座標、辺の長さ、辺の属性の対応表を記憶装置に記憶する。
【0073】
上記第i補正点における3種類の面積密度D1i、D2i、D3iを、上記面積密度マップD1(x,y)、D2(x,y)、D3(x,y)から内挿近似して算出する。ここで、D1iの値はパターンと第i補正点座標(xi,yi)を中心とする第1の分布関数f1(x−xi, y−yi)の畳み込み積分の近似値、即ち、おおよそ上記補正点を中心とする半径r1(後方散乱の範囲)内の後方散乱に寄与するパターンの有効面積密度を表している。ここに、関数f1は、実施例2の式5に示したものと同様のものである。同様に、D2i、D3iは、各々上記補正点を中心とする局所クーロン効果作用範囲、及びウエハエッチング時ローディング効果作用範囲内の面積密度を表す。
【0074】
次に、各補正点における補正量、即ち補正辺の移動量を、D1i、D2i、D3iから決定する。ここでは、補正対象辺の属性及び、D1、D2、D3に応じて最適補正量PBをあらかじめ計算し、補正ルールテーブルとしてあらかじめ準備しておき、各補正点毎に上記ルールテーブルを参照することにより補正量を決定した。ルールテーブルの生成方法については、後で述べる。又、補正に伴う面積変化量dSiを、補正辺毎に(対象辺の長さLi x 補正量PBi)により計算する。以上求めた補正量、さらに必要に応じて面積変化量と補正点(補正辺)との対応表を生成し記憶装置に記憶する。
【0075】
補正に伴う面積又は面積密度の変化量が十分小さい場合には、前記パターンデータ上で各補正対象辺を上記補正量だけ移動させる。辺データの移動は通常の図形演算処理により行なう。辺の末端処理等については、通常の光近接効果補正で行われているのと同様にして、不要な凹凸が生じない様に適宜処理することが好ましい。
【0076】
各補正辺移動による面積変化dSiにともなう各面積密度マップの変化分dDj(x,y) (j=1,2,3) は次のようにして計算することができる。但し、ここでは上記変化分は連続関数として表現される。
dDj(x,y)=ΣdSi・fj(x−xi,y−yi) (式21)
(和は全ての、又は(x,y)近傍の補正点に対してとる。)
補正後の各補正点の面積密度は、
D’ji=Dji+dDj(xi,yi) (式22)
により与えられる。補正に伴う面積又は面積密度の変化量が無視できない場合には、上式により各補正点に計算し直した複数の面積密度を用いて、再度前記補正ルールテーブルを参照して補正量を再設定する。以下上記課程を補正に伴う面積又は面積密度の変化量が十分小さくなるまで繰り返す。この様にして各補正対象辺の補正量を最終的に決定した後、図形演算処理により前記パターンデータ上で各補正対象辺を上記補正量だけ移動させる。
【0077】
その後、サブフィールド分割を行った後、パターンデータをEB描画データとして出力し、これを用いて電子線投影露光装置用ステンシルマスクを描画、製作し、上記ステンシルマスクを用いて半導体基板上のレジスト膜を電子線露光、現像して所望の半導体回路パターンを形成した。なお、上記ステンシルマスクを電子線描画により作成する際にもマスク描画用近接効果補正が必要である。ここでは、上記マスク描画における後方散乱近接効果補正に用いる面積密度マップもD1、D2、D3と併せて前記基準面積密度マップから作成し、これに基づいて描画を行った。これにより補正通りの寸法をもつマスクパターンを形成することができた。
【0078】
本実施例によれば、パターンの属性に応じた最適補正量を図形演算によるパターン分類及び高速テーブル参照により極めて迅速に決定できる。又、補正対象辺の位置に応じた最適補正量を比較的空間的に粗い面積密度マップから高精度に内挿近似可能である。また、各辺の長さと補正量から面積密度の変化分が簡単に計算できるので、実際に図形変形を行うことなく最適補正量の収束計算が可能である。
【0079】
次に、上記補正テーブルの決め方について、ここでは簡単のためラインパターンを例として(図11を用いて)説明する。幅Wのラインパターンマスクを透過した電子線の透過率分布をU(x)とする。ここではU(x)として幅Wの単純なステップ関数を仮定する。電子ビームのパターンに依存しない(クーロン効果を除いた前方散乱による)ぼけの分布関数をBf(x)、クーロン効果による(パターン面積密度に依存する)ぼけの分布関数をBc(x)、後方散乱によるかぶり電子線強度をVとすると、ウエハ上の電子線強度分布I(x)は、およそ次式で与えられる。(但し(*)は畳み込み積分)
Figure 0003686367
但し、ここで上記2つのぼけを各々広がりβf、βcのガウス分布で仮定した。分布I(x)は、W, βf, βc, Vの関数であることに注意する。従って、ここで現像後のレジストパターンのエッジがI(x) = Icritとなるx=Xedgeで決まると仮定すると、XedgeもW, βf, βc,Vの関数となる。簡単のため、β=(βf+βc0.5とすると以下の通り。
【0080】
Xedge=f(W,β,V) (式24)
設計ラインエッジ位置をXdesignとすると、設計値からのズレはXedge−Xdesignで表されるので、このずれを補正するのに必要な最適バイアス量(辺の移動量)PBは次式で求められる。
【0081】
PB =‐(Xedge−Xdesign)/MEF (式25)
ここでMEFはいわゆるマスクエラーファクターと呼ばれる量で、マスク寸法変化に対する実際のレジスト寸法変化の割合を表し、次式で求まる。(マスク上の寸法はウエハ上に縮小された時の寸法に換算する。)
Figure 0003686367
以上より、
Figure 0003686367
上記バイアスPB をあらかじめ様々なW、β、Vに対して計算し3次元テーブル化した。本実施例ではMEFを上式により計算してバイアスPBを求めたが、簡単のため
PB=−(Xedge−Xdesign) (式28)
で近似してもよい。又、同様のテーブルは、ホールパターン、ライン端に対して作成してもよい。さらに、上記I(x)に対する式23中の U(x) を様々に設定することにより、近傍に隣接パターンが存在する場合の効果をとりこむことができる。このようにして、前記補正点抽出において行った辺の属性分類に応じてテーブルの使い分けを行うことにより、極めて高精度の補正が可能となる。
(実施例9)
ここでは補正点毎に、電子線投影像を簡易シミュレーションして寸法変動量を求め、これによりバイアス補正量を算出する方法について説明する。パターンの微細化に伴い開口パターン間のスペースがクーロン効果によるビームぼけ量に近づくにつれ、クーロン効果に依存して近傍パターンの状況が寸法に影響を与えるようになり、この効果をより正確に考慮する必要が生じる。これらの影響は実施例8における補正テーブルの場合分け(特に辺の属性の場合分け)をより木目細かく行うことによっても対応できるが、補正テーブルが膨大になってしまうという問題点がある。
【0082】
そこで、本実施例では、各補正点毎に該補正点近傍で電子線強度分布のシミュレーションを行ない、補正対象エッジの位置ズレを求めその最適補正量を計算した。電子線強度分布I(x,y)は、式23のU(x)を、マスクの開口パターンの2次元分布U(x,y)に置きかえることにより計算される。ここでβ及びVの値はは実施例8同様にして複数の面積密度マップに基づいて補正点毎に計算した値、または該補正点の属する各マップの区分領域の値を用いる。
【0083】
又、レジスト内の酸やクエンチャの拡散の影響や、現像等に関する各種の公知の計算モデルを加えてもよい。シミュレーションされた電子線強度分布から最適補正量を求める方法については、いわゆるモデルベースもしくはシミュレーションベースの光近接効果補正として広く知られる技術で用いられている手法を用いることができる。
【0084】
補正のためにはI(x,y)を全領域で計算する必要はなく、例えば補正点(xi,yi)を中心とする近傍3点もしくは5点だけでも十分である。本実施例が、従来光近接効果補正と異なるのは、補正の元となる投影像の物理的意味が異なることに加え、投影像が複数の面積密度マップに依存し、同一パターンであっても露光領域内の位置により異なることにある。
【0085】
以上のように、本発明では複数の誤差要因による影響をパターン面積密度マップを利用することで高速高精度に補正する方式について説明した。実施例は本発明のいくつかの例でありこれに制限されるものではない。パターンの寸法精度を劣化させる要因としては電子線転写時のみならず、マスクを製作する工程においても露光方式、基板構造によって誤差を発生させる可能性がある。
【0086】
マスク描画において電子線描画を用いることが多いためこの段階でも近接効果の影響を受けることになる。その場合にはさらに異なる面積密度マップを作成することによって補正することが可能となる。この場合電子線転写時の縮小倍率を考慮した近接効果補正が必要なことは言うまでもない。
【0087】
また電子線の露光照明系では光学方式と異なり蝿の目レンズによる照度均一化を行なうことが困難であるため、電子線の一括の露光範囲(サブフィールド)内での照度均一性が問題にあることがある。このような場合においてもサブフィールド内での不均一性を面積密度マップと同等の2次元マップを作成してパターン変形を行なうことができる。
【0088】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の方法では露光パターンを、後方散乱、クーロン効果、プロセス起因の寸法誤差のそれぞれの影響範囲を考慮した区分領域に分割して複数の面積密度マップを作成し、区分領域内の各パターンの補正に必要な寸法変化量を面積密度の関数として決定することによって複数の効果を取り込んだマスクを作成することが可能となる。この結果、従来補正処理が困難であった複数の要因による寸法誤差を同時に補正することができる。また、面積密度マップを用いることで補正に必要なデータ処理時間を大幅に短縮でき高精度な露光パターンを得ることができる。
【0089】
またパターン変形に伴うパターン面積の変化をパターンの周辺長より計算するすることによって面積密度マップの再計算を高速に行なうことができるためさらに処理の高速化が可能となる。
【0090】
また、各種誤差要因による寸法誤差を補正する時に近似関数を用いることによって最適な寸法変化量を単純な数値代入による計算で求めることができるため高速な処理が可能となる。
【0091】
さらに、LSIパターンの階層構造を保持したまま演算を行なうことによって扱うデータ量を大幅に削減できるため使用する計算機が能力の低いものでも可能となり、また高速な処理が実現できる。
【0092】
これら処理の高速化は最適な寸法変化量を求める際の繰り返し演算において、より精密に実行することができるため、今後のLSIで要求される厳しい寸法精度を満足することができLSIの性能向上に大きく貢献できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るパターン形成方法を説明するためのフロー図である。
【図2】本発明に係るパターン形成方法において、特にパターンデータを複数の相補パターンに分割し、面積密度マップを求める方法を説明するための図である。
【図3】本発明に係るパターン形成方法において、特に面積密度マップを用いてパターン寸法の変形を行なう方法を説明する図で(a)はサブフィールド、局所クーロン効果及び後方散乱を求めるための面積密度マップに対するそれぞれの区分領域サイズ及び位置表記法を示す図、(b)は各位置におけるサブフィールド電流、局所クーロン効果、面積密度及びそれに対応する電子線のボケ量、後方散乱エネルギ量を示す図、(c)はラインパターン及びコンタクトホールの寸法変形量を示す図である。
【図4】本発明に係るパターン形成方法において、特にパターン変形を行う方法を具体的なパターンで説明するための図である。
【図5】本発明に係るパターン形成方法において、特に電子線のボケ量を簡便に求める方法を説明するための図で、(a)はサブフィールド変更可能な領域を示す図、(b)はクーロン効果に対する面積密度マップを示す概念図、(c)はサブフィールド電流値に対するサブフィールドクーロン効果による電子線のボケを示す図、(d)はサブフィールド内局所クーロン効果に対する面積密度マップを示す概念図、(e)は電流値に対する局所的クーロン効果による電子線のボケを示す図である。
【図6】本発明に係るパターン形成方法において、特にパターン寸法の変化量を簡便に求める方法を説明するための図で、(a)はパターン面積密度に対する規格化したパターン変形量を示す図、(b)は規格化パターン寸法に対する近似多項式の係数示す図である。
【図7】本発明に係るパターン形成方法をLSIの第1配線層の工程に適用した例を示す図で、(a)LSIパターンをサブフィールドに分割したときの概略平面図、(b)は具体的な配線パターンに例を示す平面図、(c)サブフィールド内での面積密度分布を3次元グラフィックスで示す図、(d)はパターン位置に対応するマスク寸法変化量を示す図、(e)はパターン位置に対するレジストパターン寸法を示す図である。
【図8】本発明に係るパターン形成方法において、特に近接効果の補正データ処理を説明するための図で、(a)はLSIパターンデータの構成を示す概念図、(b)はデータ処理フローを示す図である。
【図9】本発明に係るパターン形成方法をLSI製造に適用した例を示す図で、(a)LSIパターンの概略平面図、(b)は各種パタン形成工程における本願発明に係るステンシルマスクを適用したEPL及び光リソグラフィの使い分を説明するための図である。
【図10】本発明に係るパターン形成方法において、特にマスク補正に用いるDAシステムを説明するためのフロー図である。
【図11】本発明の別の実施例で用いる補正テーブルの作成方法の説明のための模式図。
【符号の説明】
101…LSIパターンデータの入力工程、102…サブフィールドおよび相補パターンに分割する工程、103…基準区分領域に分割する工程、104…区分領域内の個々のパターンの面積を計算し積算する工程、105…面積密度マップを作成する工程、106…面積密度の変化量が規定値以下か否かを判定する工程、107…複数の面積密度マップの全体、108…1サブフィールド(SF)内の全パターンの面積を計算して形成した面積密度マップ、109…サブフィールド内の局所的な領域毎にパターン面積を計算して形成した面積密度マップ、110…電子線の後方散乱の影響範囲でパターン面積を計算して形成した面積密度マップ、111…プロセス起因の誤差の影響範囲でパターン面積を計算して形成した面積密度マップ、112…複数の面積密度マップの各要素とパターンの変形量が関係付けられた補正テーブルあるいは近似式、113…補正のためのパターン変形工程、114…マスク用パターンデータの作成工程、115…EPLマスクを作製する工程、116…電子線露光工程、201…LSIのCADデータ、202…サブフィールドに分割されたLSIデータ、203…2個の相補パターンに分割されたサブフィールドデータの一方、204…2個の相補パターンに分割されたサブフィールドデータの他方、205…データ授受のための中間データファイル、206…データ管理と複数のコンピュータ制御のためのコンピュータ、207…データを並列処理するための複数のコンピュータ、208…1サブフィールドの基準面積密度マップ(相補パターンの一方)、209…1サブフィールドの基準面積密度マップ(相補パターンの他方)、210…LSIチップ全体の基準面積密度マップ(相補パターンの一方)、211…LSIチップ全体の基準面積密度マップ(相補パターンの他方)、212…局所クーロン効果補正用面積密度マップ(相補パターンの一方)、213…局所クーロン効果補正用面積密度マップ(相補パターンの他方)、214…サブフィールドクーロン効果補正用面積密度マップ(相補パターンの一方)、215…サブフィールドクーロン効果補正用面積密度マップ(相補パターンの他方)、216…LSIチップ全体の後方散乱補正用面積密度マップ、401…基準区分領域、402〜406…矩形パターン、407…基準区分領域内の面積密度を求める工程、408…基準区分領域内の各パターンの周辺長を保存したテーブル、409…パターン変形後の基準区分領域内の面積密度を求める工程、410…ボケ量の計算のための面積密度マップ、411…後方散乱量の計算のための面積密度マップ、412…個々のパターン変形量を求める工程、413…パターン変形に伴うパターン面積密度の変化量を求める工程、414…パターン変形量の妥当性の判定を行なう工程、415…適正なパターン変形量によりパターン変形を行なう工程、501…サブフィールド偏向可能な領域、502…電子線のボケ量をシミュレーションにより求めるための代表点、503…サブフィールドクーロン効果補正用の面積密度マップ、504…サブフィールド内局所クーロン効果補正用の面積密度マップ、701…LSIパターン内の1サブフィールド領域、702…サブフィールド内の一部の領域およびその拡大図、703…サブフィールド内の他の一部の領域およびその拡大図、704…等間隔ライン/スペースの領域にある1つの70nmラインパターン、705…疎なパターン領域での70nmのラインパターン、801…LSIデータの最上位階層のセル、802…LSIパターンデータ、803…近接効果等の補正演算工程、805…近接効果等の補正処理後のLSIパターンデータ(相補マスクの一方)、806…近接効果等の補正処理後のLSIパターンデータ(相補マスクの他方)、807…2枚の相補マスクを用いた電子線露光工程、911n…n型半導体領域、911p…p型半導体領域、912A〜912B…ゲート電極、913A〜913D…金属配線1、ABC−1…相補パターンに分割された一方のパターン、ABC−2…相補パターンに分割された他方のパターン、MAP−B1…基準面積密度マップ(相補パターンの一方)、MAP−B2…基準面積密度マップ(相補パターンの他方)、MAP−PRX…後方散乱補正用面積密度マップ、MAP−CL1…局所クーロン効果補正用面積密度マップ(相補パターンの一方)、MAP−CL2…局所クーロン効果補正用面積密度マップ(相補パターンの他方)、ABC−1−SF…サブフィールド単位に分割されたパターンデータ(相補パターンの一方)、ABC−2−SF…サブフィールド単位に分割されたパターンデータ(相補パターンの他方)、MAP−SF1…サブフィールドクーロン効果補正用面積密度マップ(相補パターンの一方)、MAP−SF2…サブフィールドクーロン効果補正用面積密度マップ(相補パターンの他方)、ABC−M1…相補パターンの一方のマスク製作用パターンデータ、ABC−M2…相補パターンの他方のマスク製作用パターンデータ。

Claims (17)

  1. 電子線を1度に露光できる領域をサブフィールドとし前記電子線の偏向によって前記サブフィールドを被加工基板上の所定位置に順次露光することで所定パターンを形成するパターン形成方法において、
    前記所定パターンの全領域を一定の大きさを有する複数個の第1区分領域に分割し、一つの前記第1区分領域での前記電子線が透過するパターン面積が前記一つの第1区分領域全体に占める割合をパターン面積密度として前記所定パターン領域全体のパターン面積密度を前記第1区分領域のそれぞれに対応して構成される2次元の配列データとする第1の面積密度マップ作成工程と、
    前記第1区分領域の幾つかのパターン面積密度を用いて計算された値を第2区分領域のパターン面積密度とする第2の面積密度マップを作成する工程と、
    前記サブフィールドを露光する時の電子線の偏向位置で定まる電子線のボケ量を前記第1又は前記第2の面積密度マップと前記電子線の電流密度により修正した前記電子線のボケ量と、前記第1及び前記第2の面積密度マップとは異なる第3の面積密度マップを用いて前記電子線の前記被加工基板内での後方散乱の影響を考慮することによって電子線露光・現像後のパターン形状の変化を予測してパターン変形を施した転写用マスクを用いて、前記サブフィールドを露光する時に想定した前記サブフィールドの偏向位置と電流密度を概ね一致させて露光する工程とを有することを特長とするパターン形成方法。
  2. 請求項1記載のパターン形成方法において、
    前記パターン変形の変形量は電子線露光によりレジスト中に形成された潜像の現像工程あるいは現像後のレジストパターンを用いて基板加工を行なう工程での寸法変化量を加味したパターン変形量を前記第1、第2及び第3の面積密度マップとはさらに異なる第4の面積密度マップを用いて予め予測して修正したものであることを特徴とするパターン形成方法。
  3. 請求項1記載のパターン形成方法において、
    前記第2の区分領域は一つの前記サブフィールド全体であって、前記転写用マスクのパターン形成に用いられるパターンデータは、前記電子線のボケを前記一つのサブフィールド全体の電流に依存したクーロン効果による前記電子線のボケを前記一つのサブフィールドの面積密度と前記一つのサブフィールドの位置での電子光学系の収差とより予測してその形状を変形したものを含むことを特徴とするパターン形成方法。
  4. 請求項3記載のパターン形成方法において、
    前記一つのサブフィールドの位置での前記電子線のボケを前記一つのサブフィールドの偏向中心からの距離と前記一つのサブフィールドを透過する電流値の関数で表された近似式を用いて求めることを特徴とするパターン形成方法。
  5. 請求項1記載のパターン形成方法において、
    前記パターンデータは、前記サブフィールド内の局所的な電子線のボケの分布を前記第2の面積密度マップを用いて予測しその形状を修正したパターンであることを特徴とするパターン形成方法。
  6. 請求項1記載のパターン形成方法における面積密度マップを作成する工程において、前記第2の面積密度マップの各前記第2の区分領域内の要素は考慮対象の第2の区分領域の周辺の第2の区分領域が当該第2の区分領域に与える影響を取り込んで求められた要素であることを特徴とするパターン形成方法。
  7. 請求項1記載のパターン形成方法において、パターン形状を修正したことによる前記第1の面積密度マップの前記第1の区分領域内のパターン面積密度の変化量が予め定められた値より大きい場合、修正後のパターン形状により作成された面積密度マップに基づきパターン形状の修正を行なうことを特徴とするパターン形成方法。
  8. 請求項7記載のパターン形成方法において、パターン形状を修正した後パターン形状の修正に伴う各パターンの面積変化量を算出し該面積変化量より前記第1の面積密度マップの前記第1の区分領域内の各要素の変化量を求め該要素の変化量が予め定められた値より大きい場合、該要素の変化量を前記第1の区分領域に加算することで修正面積密度マップを形成し該修正面積密度マップを基にパターン形状の修正を行なうことを特徴とするパターン形成方法。
  9. 請求項7記載のパターン形成方法において、面積密度を求める各区分領域内の各パターンの周辺長を保存しパターン形状の修正量とパターンの周辺長よりパターン面積の変化量を計算することを特徴とするパターン形成方法。
  10. 請求項1記載のパターン形成方法において、パターンの修正量を前記第3の面積密度マップより計算される後方散乱のレベルと前記第2の面積密度マップあるいは複数の面積密度マップより計算される電子線のボケ量および修正対象パターン辺の属性とパターン変形量を関係付けられた補正テーブルまたは近似式を用いて決定することを特徴とするパターン形成方法。
  11. 請求項1記載のパターン形成方法において、前記修正対象パターン辺の属性は長辺長、短辺長またはパターン幅のいずれかを含むことを特徴とするパターン形成方法。
  12. 請求項1記載のパターン形成方法において、前記所定のパターンは複数のマスクを通過した電子線露光の重ね合せにより形成され、各々の前記マスクに対応したパターンのマスク別面積密度マップを形成する工程と、前記マスク別面積密度マップの同一位置の区分領域内要素を加算することにより合成面積密度マップを形成する工程とを含み、前記電子線のボケの算出には前記マスク別面積密度マップを用い、前記電子線の後方散乱の影響の算出には前記合成面積密度マップを用いることを特徴とするパターン形成方法。
  13. 請求項1記載のパターン形成方法において、前記所定のパターンは複数のマスクを通過した電子線露光の重ね合せにより形成され、各々の前記マスクに対応したパターンのマスク別面積密度マップを形成する工程と、各々の前記マスクに対応したパターンが一体となったパターンを用いて一体面積密度マップを形成する工程とを含み、前記電子線のボケの算出には前記マスク別面積密度マップを用い、前記電子線の後方散乱の影響の算出には前記一体面積密度マップを用いることを特徴とするパターン形成方法。
  14. 半導体回路の1層の回路パターンの全領域内に第1の大きさを有する複数個の第1の区分領域を設定し、該区分領域内のパターン面積を計算し第1の面積密度マップを作成する工程と、前記第1の区分領域とは異なる第2の区分領域を設定し第2の区分領域内のパターン面積を既に求められた第1の面積密度マップより計算し第2の面積密度マップを作成する工程と、前記第2の区分領域とは異なる第3の区分領域を設定し第3の区分領域内のパターン面積を既に求められた第1の面積密度マップより計算し第3の面積密度マップを作成する工程と、前記第2の面積密度マップを用いて露光用電子線の後方散乱の影響を考慮しかつ第3の面積密度マップを用いて前記露光用電子線のボケの影響を考慮した時のパターン変形量を予め予測してパターン形状を修正する工程とを含む工程により作成したパターンデータを用いて形成した電子線転写用マスクを用いて、レジストの塗布された半導体基板に電子線を照射し所望の回路パターンを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
  15. 請求項14記載の半導体装置の製造方法において、前記露光用電子線を1度に露光できる領域をサブフィールドとした時、1層の回路パターンをサブフィールド単位に分割し1サブフィールド内のパターンを複数の相補サブフィールドに分割する工程とを含み前記露光用電子線の後方散乱の影響は1サブフィールドおよび該サブフィールドに近接するサブフィールド内の全体のパターンを考慮した面積密度マップを使用し、前記露光用電子線のボケは分割された相補サブフィールド単位に作成された面積密度マップを使用して算出したものであって、電子線転写用マスクはサブフィールド単位および相補パターン単位に異なる位置に形成されており、前記露光用電子線の照射に当たっては同一位置の相補サブフィールドを前記半導体基板上の同一位置に重ねて露光し所望の回路パターンを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
  16. 請求項15記載の半導体装置の製造方法において、半導体装置のパターンデータの設計段階で使用された階層構造の少なくとも1部を保持した状態で該パターンデータを前記相補パターンへの分割を行った後に、前記サブフィールドへの分割および近接効果補正のための前記パターン変形を行なうことを特徴とする半導体装置の製造方法。
  17. 請求項14記載の半導体装置の製造方法において電子線を1度に露光できる領域をサブフィールドとした時、1層の回路パターンを複数の相補パターンに分割し、各々の相補パターンを同一分割位置を有するサブフィールド単位に分割する工程とを含み電子線の後方散乱の影響は考慮対象サブフィールドおよび該サブフィールドに近接するサブフィールド内の全相補パターンを考慮した面積密度マップを使用し、電子線のボケは分割された相補サブフィールド単位に作成された面積密度マップを使用して算出したものであって、電子線転写用マスクはサブフィールド単位及び相補パターン単位に異なる位置に形成されており、電子線の照射に当たっては同一位置の相補サブフィールドを前記半導体基板上の同一位置に重ねて露光し所望の回路パターンを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
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