JP3686179B2 - 電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真感光体に関するものである。詳しくは、特定の下引き層を使用した電子写真感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真技術は、即時性、高品質の画像が得られることなどから、近年では複写機の分野にとどまらず、各種プリンターの分野でも広く使われ応用されてきている。電子写真技術の中核となる感光体については、その光導電材料として従来からのセレニウム、ヒ素−セレニウム合金、硫化カドミニウム、酸化亜鉛といった無機系の光導電体から、現在では有機系の光導電材料を使用した感光体が主流となっている。
【0003】
一般に電子写真感光体は、アルミニウム等の導電性基体上にこの様な感光層を設けて形成されるが、実際の電子写真プロセスで使用する上で基体表面が及ぼす影響は非常に大きい。例えば、基体表面に存在する汚れや異物の付着,傷などは多かれ少なかれ電気特性に悪影響を及ぼし、結果的に画像欠陥として現れる。この様な基体表面の欠陥をなるべく除去するためには感光体のコストアップにつながる切削加工や鏡面研磨などの二次加工及び精密な洗浄が必要となる。一方このような工程を経ず均一で清浄な基体表面を得る手段として基体と感光層の間に下引き層を設けることが公知の技術として知られている。
【0004】
下引き層としては、例えばアルミニウム陽極酸化被膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の無機層、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の有機層、及び無機粒子及び有機顔料と有機バインダーの混合層が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、下引き層に要求される特性としてはまず第一に電気特性が挙げられる。すなわち電子写真特性に影響を及ぼさないことが必要である。このためには、電気抵抗が低いこと(低温下においても)が必要である。また感光層に対して、キャリアーの注入性がないことも必要である。感光層に対しキャリアーの注入性のある下引き層を用いると帯電電位を減少させ、結果的に画像のコントラストを低下させたり、カブリの原因となる(このカブリは、反転現像において特に問題となる)。更に感光体の電気特性を阻害しない範囲で、基体表面の様々な欠陥を被覆するため、なるべくその膜厚が厚くできることも必要である。
この様な要求特性に対し、これまで知られているたとえば上記に示した下引き層は必ずしも満足していないのが現状である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、上記の要求特性を満足できる下引き材料について鋭意検討した結果、少なくとも、酸化チタン粒子と特定の共重合ポリアミドを含む下引き層が非常に効果的であることを見い出し、本発明に到達した。すなわち本発明の要旨は導電性基体上に、少なくとも下引き層及び感光層を有する有機電子写真感光体において、該下引き層が少なくとも平均一次粒子径が100nm以下である酸化チタン粒子と下記一般式(I)で示されるジアミン成分を構成成分として有する共重合ポリアミドを含有し、かつ該共重合ポリアミド1重量部に対して、 酸化チタン粒子が0.5〜4重量部含まれることを特徴とする有機電子写真感光体にある。
【0007】
【化4】
【0008】
は、それぞれ独立して置換基を有していてもよいシクロヘキシル環を表し、R1 ,R2 はそれぞれ独立して水素、アルキル基、アルコキシ基、アリール基を表す。)
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の感光体は導電性基体上に設けられる。導電性基体としては、例えばアルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料、ポリエステルフィルム、紙、ガラス等の絶縁性基体の表面にアルミニウム、銅、パラジウム、酸化錫、酸化インジウム等の導電性層を設けたものが使用される。なかでもアルミニウム等の金属のエンドレスパイプが望ましい基体である。
導電性基体と感光層の間に本発明の下引き層が設けられる。
本発明で用いられる下引き層には、下記一般式(I)で示されるジアミンを構成成分として含む共重合ポリアミドが含まれる。
【0010】
【化5】
【0011】
は、それぞれ独立して置換基を有していてもよいシクロヘキシル環を表し、R1 ,R2 はそれぞれ独立して水素、アルキル基、アルコキシ基、アリール基を表す。)
【0012】
【化6】
【0013】
の置換基及びR1 ,R2 については、水素原子、アルキル基、アルコキシ基が好ましく、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられるが、特に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基である。この様な共重合ポリアミドとしては上記ジアミンと、例えば、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム類;1,4−ブタンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,20−アイコサンジカルボン酸等のジカルボン酸;1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等のジアミン類;ピペラジン等を組み合わせて、二元、三元、四元等に共重合させたものが挙げられる。
【0014】
その共重合比率については特に限定されないが、上記ジアミン成分が5〜40mol%、好ましくは5〜30mol%の範囲にあることが好ましい。共重合ポリアミドの数平均分子量としては1万〜5万が好ましく、特に好適には1.5万〜3.5万である。数平均分子量が小さすぎても、大きすぎても膜の均一性を保つことが難しくなりやすい。共重合ポリアミドの製造方法には特に制限はなく、通常のポリアミドの重縮合方法が適宜適用され、溶融重合法、溶液重合法、界面重合法等が用いられる。また重合に際して、酢酸や安息香酸等の一塩基酸、あるいは、ヘキシルアミン、アニリン等の一酸塩基を分子量調節剤として加えることも何ら差し支えない。
【0015】
又、亜リン酸ソーダ、次亜リン酸ソーダ、亜リン酸、次亜リン酸やヒンダードフェノールに代表される熱安定剤やその他の重合添加剤を加えることも可能である。
本発明で使用される共重合ポリアミドの具体例を以下に示す。
但し具体例中、共重合比率はモノマーの仕込み比率(モル比率)を表す。
【0016】
【化7】
【0017】
【化8】
【0018】
次に、もう一つの成分である酸化チタン粒子については、結晶型としては、アモルファス、アナターゼ、ルチル、ブルッカイトの各結晶型を使用することが出来る。又、分散性を向上させるため、電気抵抗を調節するため、及び湿度依存性を改良するために種々の表面処理を行っても良い。粒子径としては、電気特性面及び液の安定性の面から、平均1次粒子径としては、100nm以下であり、好ましくは、下限として10nm以上で、上限として60nm以下である。この粒径はTEM(透過型電子顕微鏡;transmission electron microscope)により容易に判定される。酸化チタン粒子と共重合ポリアミドの比率は任意に選ぶことが出来るが、液の安定性及び特性面から、共重合ポリアミド1重量部に対して、酸化チタン粒子0.5重量部から4重量部の範囲が好ましい。
【0019】
本発明の下引き層には、必要に応じて各種の添加剤を加えることが出来る。添加剤としては、酸化アルミニウム、酸化珪素、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化物微粒子やカーボンブラックや有機シリケート化合物や有機ジルコニウム化合物を加えてもよく、その割合は酸化チタンの50%以下でありさらに加えて塗布性を改良するために例えばシリコンオイルやフッ素系界面活性剤を用いることが出来る。
下引き層の膜厚は、0.05μmから10μm、好ましくは0.2μmから5μmの範囲で使用されるのが最も効果的である。0.05μm以下では下引き層の効果が得られにくく、10μm以上では残留電位が高くなりやすい。
つぎにこの様な下引き層の上に感光層が設けられるが感光層は、積層型、単層型のいずれであってもよいが、積層型の場合に、特に本発明の効果が顕著である。
【0020】
積層型感光体の場合その電荷発生層に使用される電荷発生材料としては、例えば、セレニウム、及びその合金、硫化カドミニウム、その他無機系光導電材料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料などの有機顔料等各種が使用できるが、中でもフタロシアニン顔料、特にオキシチタニウムフタロシアニンは、感度、帯電性、繰り返し安定性に優れているため良好な電子写真特性を示す。これらの微粒子を例えば、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステルなどの各種バインダー樹脂で結着した形で使用される。この場合の使用比率はバインダー樹脂100重量部に対して30から500重量部の範囲より使用され、その膜厚は通常0.1〜1μm、好ましくは、0.15〜0.6μmが好適である。
【0021】
電荷移動層の電荷移動材料としては、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン、テトラシアノキノジメタンなどの電子吸引性物質、カルバゾール、インドール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾールなどの複素環化合物、アニリン誘導体、或いはこれらの化合物からなる基を主鎖もしくは側鎖に有する重合体などの電子供与性物質が挙げられる。これらの電荷移動材料とともに必要に応じてバインダー樹脂が配合される。好ましいバインダー樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、及びその共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等があげられ、またこれらの部分的架橋硬化物も使用できる。また電荷移動層には、必要に応じて酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいても良い。電荷移動層の膜厚は、10〜40μm、好ましくは、13〜35μmの厚みで使用されるのがよい。
【0022】
単層分散型の場合前述の電荷発生材料及び電荷移動材料を例えば、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート等のバインダー樹脂で結着した形で使用される。この場合バインダー樹脂100重量部に対して電荷発生材料は1から50重量部、電荷移動材料は30から150重量部の範囲より使用されるのが好ましい。また膜厚は通常5から50μm、好ましくは10から35μmが好適である。また必要に応じて酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいても良い。
【0023】
【実施例】
以下本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は特にこれらに限定するものではない。
下引き層塗布液1調液方法
下記の共重合ポリアミドA(数平均分子量;2万)を溶解した混合アルコール(メタノール/n−プロパノール=7/3)溶液に、予めボールミルにより分散したチタニア〔石原産業(株)製:TTO55N:平均一次粒子径、35nm〕の混合アルコール溶液を混合し、更に超音波で分散処理を行い、TTO55N/共重合ポリアミドA=1/1組成(重量比)で、固型分濃度9%下引き層塗布液1を調液した。
【0024】
【化9】
【0025】
下引き層塗布液2調液方法
共重合ポリアミドA(構造:下記参照)を溶解した混合アルコール(メタノール/n−プロパノール=7/3)溶液に、予めボールミルにより分散したチタニア〔石原産業(株)製:CR−60:平均一次粒子径が、0.21μm〕の混合アルコール溶液を混合し、更に超音波で分散処理を行い、CR−60/共重合ポリアミドA=2/1組成(重量比)で、固型分濃度12%下引き層塗布液2を調液した。
【0026】
下引き層塗布液3調液方法
共重合ポリアミドであるダイセルヒュルス社製ダイアミドT−171(6/6,6/12)を溶解した混合アルコール(メタノール/n−プロパノール=7/3)溶液に、予めボールミルにより分散したチタニア〔石原産業(株)製:TTO55N〕の混合アルコール溶液を混合し、更に超音波で分散処理を行い、TTO55N/ダイアミドT−171=1/1組成(重量比)で、固型分濃度9%下引き層塗布液3を調液した。
【0027】
下引き層塗布液4調液方法
共重合ポリアミドA(構造:下記参照)の固型分濃度が5%である混合アルコール溶液(メタノール/n−プロパノール=7/3溶液)を調液した。
電荷発生層(CGL)塗布液1調液方法
オキシチタニウムフタロシアニン10重量部に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製:デンカブチラール#6000−C)5重量部、1,2−ジメトキシエタン500重量部を加え、サンドグラインドミルで粉砕、分散処理を行ってCGL塗布液1を調液した。
電荷移動層(CTL)塗布液1調液方法
【0028】
次に示す(1)式のヒドラゾン化合物56重量部、(2)式のヒドラゾン化合物14重量部、及び(3)式のシアノ化合物1.5重量部、
【化10】
【0029】
及び下記に示すポリカーボネート樹脂100重量部を1,4−ジオキサン1000重量部に溶解させた液を調液した。
【0030】
【化11】
【0031】
実施例−1
下引き層塗布液1に、表面を鏡面仕上げした肉厚1mm、外径30mm、長さ254mmのアルミシリンダーを浸漬し、引き上げることにより乾燥後の膜厚が0.5μmとなるように下引き層を設けた。次にこのシリンダーを、CGL塗布液1に浸漬塗布し、乾燥後の着量が0.3g/m2 になるように電荷発生層を設けた。更にこのシリンダーをCTL塗布液1に浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が17μmとなるように電荷移動層を設けた。この様にして得られたドラムを感光体Aとする。
【0032】
比較例−1
下引き層塗布液として、下引き層塗布液2を用いる以外は、感光体Aを作製するのと全く同様(シリンダー、下引き層膜厚、CGL着量、CTL膜厚など総て)にして、作製したドラムを感光体Bとする。
比較例−2
下引き層塗布液として、下引き層塗布液3を用いる以外は、感光体Aを作製するのと全く同様(シリンダー、下引き層膜厚、CGL着量、CTL膜厚など総て)にして、作製したドラムを感光体Cとする。
比較例−3
下引き層塗布液として、下引き層塗布液4を用いる以外は、感光体Aを作製するのと全く同様(シリンダー、下引き層膜厚、CGL着量、CTL膜厚など総て)にして、作製したドラムを感光体Dとする。
【0033】
比較例−4(下引き層無し)
表面を鏡面仕上げした肉厚1mm、外径30mm、長さ254mmのアルミシリンダーを、CGL塗布液1に浸漬塗布し、乾燥後の着量が0.3g/m2 になるように電荷発生層を設けた。
更にこのシリンダーをCTL塗布液1に浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が17μmとなるように電荷移動層を設けた。この様にして得られたドラムを感光体Eとする。
【0034】
次に感光体A〜Eを感光体特性測定機に装着して、各環境下(5℃/10%RH、25℃/50%RH、35℃/85%RH)で、回転数30rpmで、表面電位がコロトロン帯電機で−700Vになるように帯電させた後、780nmの光を照射し、660nmのLED光除電後の残留電位を測定した。次にこれらの感光体を市販の半導体レーザプリンタ(HEWLETT PACKARD社“Laser Jet 4 Plus”:反転現像方式)に装着し、各環境下(5℃/10%RH、25℃/50%RH、35℃/85%RH)で白地画像を出し、カブリ値を測定した。
【0035】
カブリ値は、標準サンプルの白度が94.4とするように白度計を調節し、この白度計を用いて印刷前の紙(A4サイズ)の白度を測定し、その同じ紙に対し、全面白色となる信号を上述のレーザープリンタに入力することにより印刷を行い、その後この紙の白度を再度測定し、印刷前と印刷後の白度の差を測定することにより求めた。この値が大きいということは、印刷後の紙は、微小黒点が多く黒ずんでいる、つまり画質が悪いということになる。
表1にこれらの結果を示す。
【0036】
【表1】
【0037】
感光体A(実施例)は、各環境下でカブリ値が小さく、残留電位についても下引き層の無い感光体Eと比較して、大きな上昇は無く、良好な画像が得られた。下引き層の無い感光体Eは、各環境下においてカブリ値が大きく、良好な画像が得られなかった。下引き層中のチタニア粒子の平均一次粒径が100nmを超える感光体B及び共重合ポリアミドAのみの下引き層の感光体Dは、カブリ値については良好であったが、低温低湿下では残留電位が大きく、画像濃度が薄くなり良好な画像が得られなかった。又、本発明以外のポリアミドである“ダイアミド−T171”とチタニア粒子を含有する下引き層を有する感光体Cは、残留電位については良好であったが、高温高湿下でのカブリ値が大きく良好な画像が得られなかった。つまり、実施例の感光体については、各環境下において、良好な画像が得られた。比較例の感光体については、特定の環境下では、良好な画像を得られるものもあったが、低温低湿、常温常湿、高温高湿の総ての環境下にわたっては、良好な画像が得られなかった。以上の結果から、本発明の電子写真感光体は非常に優れた性能を有していると判断できる。
【0038】
【発明の効果】
本発明により、低温低湿、常温常湿、高温高湿の総ての環境下において良好な画像を得ることのできる電子写真感光体を提供できる。
Claims (3)
- 電荷発生層にオキシチタニウムフタロシアニンを含有する請求項1又は2に記載の有機電子写真感光体。
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