JP3552416B2 - 電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真感光体に関するものである。詳しくは、特定の下引き層を使用した電子写真感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真技術は、即時性、高品質の画像が得られることなどから、近年では複写機の分野にとどまらず、各種プリンターの分野でも広く使われ応用されてきている。電子写真技術の中核となる感光体については、その光導電材料として従来からのセレニウム、ヒ素−セレニウム合金、硫化カドミニウム、酸化亜鉛といった無機系の光導電体から、現在では有機系の光導電材料を使用した感光体が主流となっている。
【0003】
一般に電子写真感光体は、アルミニウム等の導電性基体上にこの様な感光層を設けて形成されるが、実際の電子写真プロセスで使用する上で基体表面が及ぼす影響は非常に大きい。例えば、基体表面に存在する汚れや異物の付着、傷などは多かれ少なかれ電気特性に悪影響を及ぼし、結果的に画像欠陥として現れる。この様な基体表面の欠陥をなるべく除去するためには感光体のコストアップにつながる切削加工や鏡面研磨などの二次加工及び精密な洗浄が必要となる。一方このような工程を経ず均一で清浄な基体表面を得る手段として基体と感光層の間に下引き層を設けることが公知の技術として知られている。
【0004】
下引き層としては、例えばアルミニウム陽極酸化被膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の無機層、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の有機層、及び無機粒子及び有機顔料と有機バインダーの混合層が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、下引き層に要求される特性としてはまず第一に電気特性が挙げられる。すなわち電子写真特性に影響を及ぼさないことが必要である。このためには、電気抵抗が低いこと(低温下においても)が必要である。また感光層に対して、キャリアーの注入性がないことも必要である。感光層に対しキャリアーの注入性のある下引き層を用いると帯電電位を減少させ、結果的に画像のコントラストを低下させたり、カブリの原因となる(このカブリは、反転現像において特に問題となる。)。更に感光体の電気特性を阻害しない範囲で、基体表面の様々な欠陥を被覆するため、なるべくその膜厚が厚くできることも必要である。この様な要求特性に対し、これまで知られているたとえば上記に示した下引き層は必ずしも満足していないのが現状である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、上記の要求特性を満足できる下引き材料について鋭意検討した結果、温度35℃、相対湿度85%の環境下に4時間放置後の含水率が1重量%〜3重量%のアルミナ粒子を含有させた下引き層が非常に効果的であることを見い出し、本発明に到達した。すなわち本発明の要旨は導電性基体上に、少なくとも下引き層及び感光層を有する電子写真感光体において、該下引き層が、温度35℃、相対湿度85%の環境下に4時間放置後の含水率が1重量%〜3重量%のアルミナ粒子を含有していることを特徴とする有機電子感光体にある。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。本発明では導電性基体としては、例えばアルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料、表面にアルミニウム、銅、パラジウム、酸化錫、酸化インジウム等の導電性層を設けたポリエステルフィルム、紙、ガラス等の絶縁性基体が使用される。なかでもアルミニウム等の金属の パイプが望ましい基体である。
【0008】
導電性基体と感光層の間に本発明の下引き層が設けられる。
本発明における下引き層は、含水量1重量%〜3重量%のアルミナ粒子をバインダー樹脂中に分散された形で設けられる。但し、ここで言う含水量とは35℃、85%RH環境下に4時間放置後の値を意味する。
バインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼインナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、メチルセルロース、ニトロセルロース、ポリビニルアセタール、ゼラチン、デンプン、フェノキシ、エポキシ、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド樹脂等が単独或いは硬化剤と共に硬化した形で使用できるが、中でもアルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は良好な分散性、塗布性を示し好ましいバインダー樹脂の例である。より好ましくは、下記一般式(I)で示されるジアミンを構成成分として有する共重合ポリアミドを用いるのが好ましい。
一般式
【0009】
【化3】
【0010】
は、それぞれ独立して置換基を有していてもよいシクロヘキシル環を表し、R1 、R2 はそれぞれ独立して水素、アルキル基、アルコキシ基、アリール基を表す。)
更に好ましくは、下記一般式(II)で示されるジアミンを構成成分として有する共重合ポリアミドを用いるのが好ましい。
一般式
【0011】
【化4】
【0012】
の置換基及びR1 、R2 は、それぞれ独立して水素、アルキル基、アルコキシ基を表す。)
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられるが、
【0013】
【化5】
【0014】
の置換基及びR1 、R2 として好ましいのは、水素原子、メチル基、エチル基である。
かかる共重合ポリアミドの数平均分子量は、1万〜5万、より好ましくは1.5万〜3.5万である。この範囲をはずれると、塗布性や保存性に問題を生じ易い。
【0015】
バインダー樹脂に対するアルミナ粒子の添加比は任意に選べるが、40w%から400w%の範囲で使用することが、分散液の保存安定性、塗布性の面で好ましい。下引き層の膜厚は、0.1μmから10μm、好ましくは0.2μmから5μmの範囲で使用されるのが最も効果的である。つぎにこの様な下引き層の上に感光層が設けられるが感光層は、積層型、単層型のいずれであってもよいが、積層型の場合に、特に本発明の効果が顕著である。
【0016】
積層型感光体の場合その電荷発生層に使用される電荷発生材料としては、例えば、セレニウム、及びその合金、硫化カドミニウム、その他無機系光導電材料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料などの有機顔料等各種が使用できるが、中でもフタロシアニン顔料、特にチタニルフタロシアニンは、感度、帯電性、繰り返し安定性に優れているのみならず、本願の効果が顕著に現れる点で好ましい。これらの微粒子を例えば、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステルなどの各種バインダー樹脂で結着した形で使用される。この場合の使用比率はバインダー樹脂100重量部に対して30から500重量部の範囲より使用され、その膜厚は通常0.1μmから1μm、好ましくは、0.15μmから0.6μmが好適である。
【0017】
電荷移動層の電荷移動材料としては、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン、テトラシアノキノジメタンなどの電子吸引性物質、カルバゾール、インドール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾールなどの複素環化合物、アニリン誘導体、或いはこれらの化合物からなる基を主鎖もしくは側鎖に有する重合体などの電子供与性物質が挙げられる。これらの電荷移動材料とともに必要に応じてバインダー樹脂が配合される。好ましいバインダー樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、及びその共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等があげられ、またこれらの部分的架橋硬化物も使用できる。また電荷移動層には、必要に応じて酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいても良い。電荷移動層の膜厚は、10〜40μm、好ましくは、13〜35μmの厚みで使用されるのがよい。
【0018】
単層分散型の場合前述の電荷発生材料及び電荷移動材料を例えば、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート等のバインダー樹脂で結着した形で使用される。この場合バインダー樹脂100重量部に対して電荷発生材料は1から50重量部、電荷移動材料は30から150重量部の範囲より使用されるのが好ましい。また膜厚は通常5から50μm、好ましくは10から35μmが好適である。また必要に応じて酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいても良い。
【0019】
【実施例】
以下本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定するものではない。
下引き層塗布液1調液方法
共重合ナイロンAを溶解した混合アルコール(メタノール/n−プロパノール=7/3)溶液に、予めボールミルにより分散したアルミナ〔昭和電工(株)製:UA−5305〕の混合アルコール溶液を混合し、更に超音波で分散処理を行い、UA−5305/ナイロン=2/1組成(重量比)で、固形分濃度9%下引き層塗布液1を調液した。
※共重合ナイロンA
【0020】
【化6】
【0021】
下引き層塗布液2調液方法
アルミナに昭和電工(株)製:UA−5205を用いる以外は、下引き層塗布液1調液方法と同様にして、UA−5205/ナイロン=2/1組成(重量比)で、固形分濃度9%の下引き層塗布液2を調液した。
下引き層塗布液3調液方法
共重合ナイロンAを混合アルコール(メタノール/n−プロパノール=70/30)溶液に溶かし、固形分6%の下引き塗布液3を調液した。
【0022】
下引き層塗布液4調液方法
アルミナに昭和電工(株)製:UA−5105を用いる以外は、下引き層塗布液1調液方法と同様にして、UA−5105/ナイロン=2/1組成(重量比)で、固形分濃度9%の下引き層塗布液4を調液した。
下引き層塗布液5調液方法
アルミナに住友化学(株)製:AKP−G008を用いる以外は、下引き層塗布液1調液方法と同様にして、AKP−G008/ナイロン=1/1組成(重量比)で、固形分濃度8%の下引き層塗布液5を調液した。
【0023】
下引き層塗布液6調液方法
共重合ナイロンAを溶解した混合アルコール(メタノール/n−プロパノール=70/30)溶液に、予め超音波により分散したアルミナ〔日本アエロジル(株)製:Aluminum oxide C(粉末X線回折より、δ型相アルミナ100%)〕の混合アルコール溶液を混合し、更に超音波で分散処理を行い、Aluminum oxide C/ナイロン=1/1組成(重量比)で、固形分濃度6%の下引き層塗布液6を調液した。
【0024】
下引き層塗布液7調液方法
アルミナに昭和電工(株)製:UA−5805を用いる以外は、下引き層塗布液6調液方法と同様にして、UA−5805/ナイロン=1/1組成(重量比)で、固形分濃度8%の下引き層塗布液7を調液した。
*上記の下引き層塗布液に使用したアルミナ粒子の35℃、85%の環境下に4時間放置後の含水量(測定:カールフィッシャー法の電量滴定法による)
UA−5105:0.7w% UA−5805:4.0w%
UA−5205:1.4w% AKP−G008:4.3
UA−5305:1.4w% Aluminum oxide C:4.8w%
【0025】
CGL塗布液1調液方法
オキシチタニウムフタロシアニン10重量部に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製:デンカブチラール#6000−C)5重量部に1,2−ジメトキシエタン500重量部を加え、サンドグラインドミルで粉砕、分散処理を行ってCGL塗布液1を調液した。
CTL塗布液1
次に示すヒドラゾン化合物56重量部と
【0026】
【化7】
【0027】
次に示すヒドラゾン化合物14重量部、
【0028】
【化8】
【0029】
及び下記に示すポリカーボネート樹脂100重量部を1,4−ジオキサン1000重量部に溶解させた液
【0030】
【化9】
【0031】
実施例−1
下引き層塗布液1に、表面を鏡面仕上げした肉厚1mm、外径30mm、長さ254mmのアルミシリンダーを浸漬し、引き上げることにより乾燥後の膜厚が0.5μmとなるように下引き層を設けた。
次にこのシリンダーを、CGL塗布液1に浸漬塗布し、乾燥後の着量が0.3g/m2 になるように電荷発生層を設けた。
更にこのシリンダーをCTL塗布液1に浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が17μmとなるように電荷移動層を設けた。この様にして得られたドラムを感光体Aとする。
【0032】
実施例−2
下引き層塗布液として、下引き層塗布液2を用いる以外は、感光体Aを作製するのと全く同じ(シリンダー、下引き層膜厚、CGL着量、CTL膜厚など総て)ようにして、作製したドラムを感光体Bとする。
【0033】
比較例−1 (下引き層無し)
表面を鏡面仕上げした肉厚1mm、外径30mm、長さ254mmのアルミシリンダーを、CGL塗布液1に浸漬塗布し、乾燥後の着量が0.3g/m2 になるように電荷発生層を設けた。
更にこのシリンダーをCTL塗布液1に浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が17μmとなるように電荷移動層を設けた。この様にして得られたドラムを感光体Cとする。
【0034】
比較例−2
下引き層塗布液として、下引き層塗布液3を用いる以外は、感光体Aを作製するのと全く同じ(シリンダー、下引き層膜厚、CGL着量、CTL膜厚など総て)ようにして、作製したドラムを感光体Dとする。
比較例−3
下引き層塗布液として、下引き層塗布液4を用いる以外は、感光体Aを作製するのと全く同じ(シリンダー、下引き層膜厚、CGL着量、CTL膜厚など総て)ようにして、作製したドラムを感光体Eとする。
【0035】
比較例−4
下引き層塗布液として、下引き層塗布液5を用いる以外は、感光体Aを作製するのと全く同じ(シリンダー、下引き層膜厚、CGL着量、CTL膜厚など総て)ようにして、作製したドラムを感光体Fとする。
比較例−5
下引き層塗布液として、下引き層塗布液6を用いる以外は、感光体Aを作製するのと全く同じ(シリンダー、下引き層膜厚、CGL着量、CTL膜厚など総て)ようにして、作製したドラムを感光体Gとする。
【0036】
比較例−6
下引き層塗布液として、下引き層塗布液7を用いる以外は、感光体Aを作製するのと全く同じ(シリンダー、下引き層膜厚、CGL着量、CTL膜厚など総て)ようにして、作製したドラムを感光体Hとする。
【0037】
実施例−1〜2、比較例−1〜6
感光体A〜Iを感光体特性測定機に装着し、各環境条件下、回転数30rpmで、電気特性を測定した(この時、帯電はコロトロンで−700Vになるように設定)。次にこれらの感光体を市販の半導体レーザプリンタ(HEWLETTPACKARD社 Laser Jet 4:反転現像方式)に装着し、各環境条件下でプリントを行い、画像評価を行った。表1に各環境下での残留電位及びカブリ値を示す。(カブリ値とは、印刷前の紙の白度と、印刷後(無地の信号での)の紙の白度差:この値が大きいと、印刷後の紙は、微小黒点が多く黒ずんだ紙になっている。)
【0038】
カブリ値の測定
カブリ値は、標準サンプルの白度が94.4となるよう白度計を調節し、この白度計を用いて印刷前の紙(A4サイズ)の白度を測定し、その同じ紙に対し、全面白色となる信号を上述のレーザープリンタに入力することにより印刷を行い、その後この紙の白度を再度測定し、印刷前と印刷後の白度の差を測定することにより求めた。
【0039】
【表1】
【0040】
感光体A、B(実施例)は、各環境下でカブリ値が小さく、残留電位についても下引き層の無い感光体Cと比較して、大きな上昇は無く、良好な画像が得られた。
下引き層の無い感光体Cは、各環境下においてカブリ値が大きく、良好な画像が得られなかった。
【0041】
アルミナ粒子を含まない下引き層の感光体D及び、含水量の少ないアルミナ粒子(UA−5105)を含有する下引き層の感光体Eは、各環境下において、カブリ値は小さかったが、低温、低湿下では、残留電位が大きく、画像濃度が薄くなり良好な画像が得られなかった。
その他の含水量の多いアルミナ粒子を含有する下引き層を有する感光体F、G、Hは、残留電位については、各環境下で良好であったが、高温高湿下では、カブリ値が大きく、良好な画像が得られなかった。つまり、実施例の感光体については、各環境下において、良好な画像が得られたが、比較例の感光体については、特定の環境下では、良好な画像を得られるものもあったが、低温低湿、常温常湿、高温高湿の総ての環境下にわたっては、良好な画像が得られなかった。以上の結果から、本発明の電子写真感光体は非常に優れた性能を有していると判断できる。
【0042】
【発明の効果】
本発明における(35℃、85%環境下に4時間放置後に)1w%〜3w%の水分を有するアルミナ粒子を含有した下引き層は、低温低湿においても、残留電位が小さく、暗減衰も小さく安定した電気特性を示す。また、高温高湿下でも、カブリのない良好な画像が得られる。
Claims (5)
- 導電性基体上に、少なくとも下引き層及び感光層を有する電子写真感光体において、該下引き層が、温度35℃、相対湿度85%の環境下に4時間放置後の含水率が1重量%〜3重量%のアルミナ粒子を含有していることを特徴とする有機電子写真感光体。
- 下引き層が、バインダー樹脂として、ポリアミドを含有していることを特徴とする請求項1記載の有機電子写真感光体。
- 感光層が、チタニウムフタロシアニンを含有する電荷発生層、及び電荷移動層を有する積層型感光体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機電子写真感光体。
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