JP3680369B2 - 摺動絞り弁型気化器 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、気化器本体を貫通する吸気路に連設された絞り弁案内筒内に移動自在に配置された摺動絞り弁によって、吸気路が開閉制御される摺動絞り弁型気化器に関する。そして、このうち特に摺動絞り弁を全閉状態に保持し、摺動絞り弁を迂回して形成されるバイパス空気通路を介して最低空気量を機関に向けて供給した摺動絞り弁型気化器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の摺動絞り弁型気化器は図5、図6に示される。図5はその縦断面図、図6は図5の左側の側面図である。1は内部を側方に吸気路2が貫通した気化器本体であって、吸気路2の中間部から上方に向かって摺動絞り弁案内筒3が連設されて開口する。この摺動絞り弁案内筒3の下方底部3Aは、吸気路2の下方底部2Aより更に下方に向かって没入して形成される。従って、吸気路2の下方底部2Aと摺動絞り弁案内筒3の下方底部3Aとの間には段部4が形成される。5は気化器本体1の下方に配置された浮子室本体であって、気化器本体1と浮子室本体5とによって内部に一定なる燃料液面が形成される浮子室6が形成される。7は主燃料系Mによって形成される主混合気を吸気路2内に供給するニードルジエットであり、この主混合気を形成する主燃料は主燃料ジエット8によって制御され、主空気は主空気ジエット9によって制御される。Sは低速燃料ジエット10によって制御される低速燃料と、図示せぬ低速空気ジエットによって制御される低速空気とにより形成される低速燃料系であり、この低速燃料系Sによって形成される低速混合気はバイパス孔11及びパイロットアウトレット孔12より吸気路2内へ供給される。このバイパス孔11はニードルジエット7より機関側(図5において左方)の摺動絞り弁案内筒3の下方底部3Aに開口する。パイロットアウトレット孔12はバイパス孔11より更に機関側の吸気路2の下方底部2Aに開口する。13は摺動絞り弁案内筒3内に移動自在に配置されて、吸気路2を全閉から全開に渡って開閉制御する摺動絞り弁であり、吸気路2の全閉状態は、摺動絞り弁13の機関側対向側面13Aの下端13Bが摺動絞り弁案内筒3の下方底部3Aに当接した状態で得ることができる。この状態で機関側対向側面13Aの下端13B近傍は段部4に接触する。尚、図5において、摺動絞り弁13の機関側対向側面13Aの下端13Bは、説明を容易にする為に摺動絞り弁案内筒3の下方底部3Aよりわずかに上方に図示した。又、14は摺動絞り弁13に一体的に取着されたジエットニードルであって、吸気路2(摺動絞り弁案内筒3の下方底部3Aに相当する)に開口するニードルジエット7内に挿入される。以上によると、吸気路2は摺動絞り弁13によって図示せぬエアクリーナに連なるエアクリーナ側の吸気路2B(図5において右方の吸気路)と図示せぬ機関に連なる機関側の吸気路2C(図5において左方の吸気路)とに区分される。そして、エアクリーナ側の吸気路2Bと機関側の吸気路2Cとは摺動絞り弁13を迂回してバイパス空気通路15にて連絡される。尚、バイパス空気通路15には、該空気通路15を通過する空気量を調整する調整手段16が配置される。このバイパス通路15及び調整手段16は例えば特公平2−25022号公報で知られる。又、前述したバイパス孔11は摺動絞り弁13の機関側対向側面13Aの上流側吸気路2D(いいかえると機関側対向側面13Aとニードルジエット7との間の吸気路)に開口し、パイロットアウトレット孔12は摺動絞り弁13の機関側対向側面13Aより下流側の吸気路2E(いいかえると機関側対向側面13Aより機関側の吸気路2C)に開口する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
摺動絞り弁13の最低開度時における機関の運転は以下の如く行なわれる。摺動絞り弁13は、スプリング17によってもっとも下方に戻された状態にあって、摺動絞り弁13の機関側対向側面13Aの下端13Bは吸気路2の下方底部2Aより更に下方へ進入し、摺動絞り弁案内筒3の下方底部3Aに当接した状態にある。(図5、図6では説明を容易にする為に当接させていない)この状態において、摺動絞り弁13の機関側対向側面13Aの下端13B近傍は、段部4に臨んで接触して配置されて、吸気路2を全閉状態に保持する。従って摺動絞り弁13を介してエアクリーナ側の吸気路2Bから機関側の吸気路2Cに向けて空気が流れることはない。摺動絞り弁13は吸気路2を全閉保持する。一方、バイパス空気通路15は調整手段16によってその通過空気量が制御され、このバイパス空気通路15が摺動絞り弁13を迂回してエアクリーナ側の吸気路2Bと機関側の吸気路2Cとを連絡するもので、調整手段16によって制御された空気が機関側の吸気路2Cに供給される。
【0004】
かかる状態において機関が運転されると、機関に向けて調整手段16によって制御された空気がエアクリーナ側の吸気路2Bから摺動絞り弁13を迂回して機関側の吸気路2C内に供給される。一方、燃料はパイロットアウトレット孔12より機関側の吸気路2C内に吸出される。而して、この燃料と空気によって形成される混合気で機関の最低回転が保証される。
【0005】
かかる従来の摺動絞り弁型気化器によると、前記摺動絞り弁13の全閉状態から摺動絞り弁13をわずかに開放する摺動絞り弁13の微少開度開放域における機関の良好な回転応答性を得ることが困難である。これは摺動絞り弁13の機関側対向側面13Aの下端13Bが吸気路2の下方底部2Aより更に没入した摺動絞り弁案内筒3の下方底部3Aに当接して配置されていることによる。すなわち、機関の最低回転時には、摺動絞り弁13の機関側対向側面13Aの下端13Bは、摺動絞り弁案内筒3の下方底部3Aに当接した状態にあって、前記下端13Bは吸気路2の下方底部2Aより段差Hだけ下方に位置し、下端13B近傍は段部4に接触して配置される。この状態は、図7において点線で示される。そして、摺動絞り弁13の微少開度開放時において、摺動絞り弁13が段差Hより小なる範囲hでわずかに上方に開放移動した際、機関側対向側面13Aの下端13Bが未だ吸気路2の下方底部2Aに達することがなく、その下端13Bが吸気路2を開放しない。この状態は、図7の一点鎖線で示される。以上によると、摺動絞り弁13が微少開放動作されたにも拘らず機関へ供給される空気量は何等増量されることがなく、依然としてバイパス空気通路15によって制御された最低回転時における一定の空気のみが機関に向けて供給される。従って、摺動絞り弁13の微少開放動作に対する空気量の増加を得ることができず機関の回転数をその開放に応じて上昇させることができない。
【0006】
本発明はかかる不具合に鑑み成されたもので、摺動絞り弁によって吸気路を全閉状態とし、摺動絞り弁を迂回してバイパス空気通路より吸気路に供給される空気量によって機関の最低回転を得る摺動絞り弁型気化器において、摺動絞り弁の微少開度開放域における機関の良好な回転応答性を得ることにある。
【0007】
【課題を解決する為の手段】
前記目的を達成する為に本発明は、気化器本体を貫通する吸気路に絞り弁案内筒が連設されるとともに絞り弁案内筒には、少なくとも吸気路を全閉状態に保持しうる摺動絞り弁が移動自在に配置され、更に摺動絞り弁を迂回して機関側の吸気路とエアクリーナ側の吸気路とを連絡するバイパス空気通路を備えた摺動絞り弁型気化器において、摺動絞り弁の機関側対向側面に、吸気路の横断面の中心を通る垂線の側方に位置し、垂線に沿う切欠き孔を摺動絞り弁の下端より上方に向けて貫通して穿設し、摺動絞り弁による吸気路の全閉状態において、前記切欠き孔の上部を吸気路内に向けて開口したことを特徴とする。
【0008】
本発明によると機関に供給される最低空気量はバイパス空気通路を介して供給される空気量と、吸気路に開口する切欠き孔から供給される空気量との合計空気量によって決定される。摺動絞り弁が吸気路を全閉状態に保持した状態から、摺動絞り弁を微少開放動作すると、切欠き孔の吸気路に対する開口が増加し、摺動絞り弁の微少開放動作に応じて即座に機関へ供給される空気量を増量でき、これによって良好な機関の回転応答性を得ることができる。
【0009】
【実施例】
以下、本発明になる摺動絞り弁型気化器の一実施例を図1、図2、図3により説明する。図1は縦断面図、図2は図1の左側面図、図3は図1のC−C線における横断面図である。尚、図5、図6と同一構造部分は同一符号を使用して説明を省略する。尚、図5に示される従来例とは摺動絞り弁が異なる。摺動絞り弁案内筒3内に移動自在に配置される摺動絞り弁20は以下の如く形成される。摺動絞り弁20の機関側対向側面20Aの下端20Bの近傍に切欠き孔20Cが穿設される。この切欠き孔20Cは吸気路2の横断面の中心Aを通る垂線X−Xの側方にあって機関側対向側面20Aを貫通して形成されるとともに垂線X−Xに沿って穿設される。この垂線X−Xに沿うとは、摺動絞り弁20の開放方向Y−Yに沿うことであって機関側対向側面20Aの下端20Bから上方に向かうことである。そして摺動絞り弁20の下端20Bが摺動絞り弁案内筒3の下方底部3Aに当接した摺動絞り弁20の全閉時において、この切欠き孔20Cは段部4に接触し、切欠き孔20Cの上部20C’は、吸気路2に開口する。すなわち、摺動絞り弁20の全閉時において、切欠き孔20Cの上部20C’は吸気路2に開口し、上部20C’より下方の切欠き孔20Cは、段部4に接触して吸気路2に開口しない。
【0010】
次にその作用について説明する。まず、機関の最低回転は以下によって保証される。摺動絞り弁20は、スプリング17によってもっとも下方に押圧されて移動し、このとき摺動絞り弁20の下端20Bが摺動絞り弁案内筒3の下方底部3Aに当接して、吸気路2はこの摺動絞り弁20によって全閉保持される。かかる状態において、摺動絞り弁20の機関側対向側面20Aの下端20B近傍に穿設された切欠き孔20Cは段部4に臨んで配置され、切欠き孔20Cの上部20C’は、吸気路2に開口し、上部20C’より下方にある切欠き孔20Cは段部4に接触して配置され、吸気路2に開口しない。一方バイパス空気通路15の下流側は調整手段16を介して機関側の吸気路2Cに連絡される。
【0011】
以上によると、機関側の吸気路2C内には調整手段16によって制御された空気がバイパス空気通路15を介して供給され、さらに切欠き孔20Cの上部20C’の開口を介して機関側対向側面20Aの上流側吸気路2Dから下流側吸気路2Eに向けて、切欠き孔20Cの上部20C’によって制御された空気が供給される。すなわち、機関側の吸気路2C内には、バイパス空気通路15と切欠き孔20Cの上部20C’とよりそれぞれ制御された空気が供給される。一方、機関側の吸気路2Cには、パイロットアウトレット孔12を介して低速燃料系S内の低速混合気が供給され、これによって機関の最低回転が得られる。かかる摺動絞り弁20の全閉状態は図4に示されるもので、切欠き孔20Cの上部20C’が吸気路2に開口し、上部20C’より下方の切欠き孔20Cが段部4に接触し、段部4にてこの切欠き孔20Cが閉塞されていることがよく理解される。
【0012】
尚、前記摺動絞り弁20の全閉状態において、切欠き孔20Cの上部20C’が吸気路2に開口し、この上部20C’が機関側対向側面20Aの上流側吸気路2Dと下流側吸気路2Eとを連絡してエアクリーナ側の吸気路2Bから機関側の吸気路2Cに向けて空気が流れるが、機関側対向側面20Aの上流側吸気路2Dの室容積が切欠き孔20Cの上部20C’より充分に大であること、及び切欠き孔20Cが、バイパス孔11及びニードルジエット7が開口する軸心に対して側方に偏芯して開口することから、切欠き孔20Cの上部20C’を通過する空気流が直接的にバイパス孔11及びニードルジエット7に作用することがなく、更には前記空気流によって生起される負圧が上昇しないので、それらバイパス孔11、ニードルジエット7より混合気を吸気路2内に吸出するものでない。このことは、摺動絞り弁20が高開度より全閉に戻される機関の減速運転時において、バイパス孔11、ニードルジエット7から混合気を吸出し、機関に向かう混合気を過濃とすることがない。仮にこの切欠き孔が吸気路2の横断面の中心Aを通る垂線X−X上に穿設されたとすると、切欠き孔の上部を通過する空気流が直接的にバイパス孔11、ニードルジエット7に作用することになり、バイパス孔11、ニードルジエット7から混合気を吸気路2内に吸出することになる。
【0013】
次に摺動絞り弁20を前記全閉状態からわずかに開放する微少開度開放域について説明する。摺動絞り弁20を図4において、開放方向Y−Yの上方向に向かってわずかに引上げると、切欠き孔20Cもまた摺動絞り弁20と同期して開放方向Y−Yの上方向に向かって移動し、切欠き孔20Cの上部20C’より下方の切欠き孔20Cは段部4との接触を解かれ、切欠き孔20Cは摺動絞り弁20の上動に応じて機関側の吸気路2C内に臨んで開口する。以上によると、切欠き孔20Cを介して機関側対向側面20Aの上流側吸気路2Dから機関側対向側面20Aの下流側吸気路2E(機関側の吸気路2Cに相当する)に向けて切欠き孔20Cの開口に応じた増量された空気が流入する。これによるとバイパス空気通路15からの空気量に加え、摺動絞り弁20の微少開度開放に応じた空気量を増量しうるもので、この空気量の増量に応じて機関の回転数を最低回転より上昇できる。
【0014】
そして、摺動絞り弁20の下端20Bが、吸気路2の下方底部2Aに達する迄の微少開度開放域において、摺動絞り弁20の開放移動量に応じて切欠き孔20Cの吸気路2内への開口が漸次増加するもので、これによって摺動絞り弁20の微少開度開放域において摺動絞り弁20の開放に応じて空気量を増量しうる。以上によると、特に摺動絞り弁20の微少開度開放域において、摺動絞り弁20の開放に応じて機関の回転数を上昇することができて回転応答性を効果的に高めることができた。
【0015】
又、切欠き孔20Cを吸気路2の横断面の中心Aを通る垂線X−Xの側方に配置したことによると、切欠き孔20Cの摺動絞り弁20の開放方向Y−Yに沿う長さLを大きくとることができる。以上によると、摺動絞り弁20の下端20Bが吸気路2の下方底部2Aに達した後において更に摺動絞り弁20が開放された際、下端20Bと吸気路2によって形成される開口に、切欠き孔20Cの開口を加えることができるので、摺動絞り弁20の微少開度域における空気の増量特性を高めることができ、もって機関の回転立上りをより一層向上できる。
【0016】
【発明の効果】
以上の如く、本発明になる摺動絞り弁型気化器によると、摺動絞り弁の全閉状態の初期から、摺動絞り弁の微少開放開度域において、摺動絞り弁の開放動作に応じて機関へ供給される空気量を増量できたものである。従って摺動絞り弁の微少開放開度域における機関の良好な回転応答性を得ることができ、更には機関の加速運転を良好に行ないうるものである。又、切欠き孔を、吸気路の横断面の中心を通る垂線の側方に形成したことによると、摺動絞り弁の下端が吸気路の下方底部に達した後において更に摺動絞り弁が開放された際、切欠き孔によって更に空気量を増量することができて、空気の増量特性を高めることができる。従って機関の回転立上りを一層向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になる摺動絞り弁型気化器の一実施例を示す縦断面図。
【図2】図1の左方の側面図。
【図3】図1のC−C線における横断面図。
【図4】図1の摺動絞り弁の簡略拡大図。
【図5】従来の摺動絞り弁型気化器の縦断面図。
【図6】図5の左方の側面図。
【図7】図5の摺動絞り弁の簡略拡大図。
【符号の説明】
20 摺動絞り弁
20A 機関側対向側面
A 吸気路の横断面の中心
X−X 中心Aを通る垂線
20C 切欠き孔
20C’切欠き孔の上部

Claims (1)

  1. 気化器本体を貫通する吸気路に絞り弁案内筒が連設されるとともに絞り弁案内筒には、少なくとも吸気路を全閉状態に保持しうる摺動絞り弁が移動自在に配置され、更に摺動絞り弁を迂回して機関側の吸気路とエアクリーナ側の吸気路とを連絡するバイパス空気通路を備えた摺動絞り弁型気化器において、摺動絞り弁20の機関側対向側面20Aに、吸気路2の横断面の中心Aを通る垂線X−Xの側方に位置し、垂線X−Xに沿う切欠き孔20Cを摺動絞り弁20の下端20Bより上方に向けて貫通して穿設し、摺動絞り弁20による吸気路2の全閉状態において、前記切欠き孔の上部20C´を吸気路2内に向けて開口したことを特徴とする摺動絞り弁型気化器。
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