JP3971010B2 - エンジンの吸気装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリンダ内にタンブルを発生させるエンジンの吸気装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、4サイクルエンジンの吸気装置としては、混合気の供給量が少ない低負荷運転時に燃焼が安定するように、吸気ポートに吸気制御弁などの混合気が流れる方向を制御する部材を設けてシリンダ内にいわゆるタンブルを発生させるものがある。前記タンブルとは、混合気がシリンダ軸線に沿って旋回するような縦方向の旋回流のことである。
【0003】
前記吸気制御弁は、吸気ポートのシリンダ側に配設し、低負荷運転時に吸気通路のシリンダ側を塞ぐように構成している。すなわち、この吸気制御弁を有する吸気装置を使用すると、低負荷運転時に混合気が吸気ポート内の吸気通路をカム軸側(シリンダとは反対側)に偏って流れ、吸気ポートの燃焼室側の開口から燃焼室内におけるシリンダ軸線を挾んで反対側(排気弁側)へ斜めに流入し、シリンダ内にタンブルが発生する。このため、混合気の乱れによる燃焼速度の向上と混合の均一化が図られ、低負荷運転時に燃焼が安定するようになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、上述したように構成した吸気装置は、上述のように低負荷時により強いタンブルの形成が望まれるが、流量が少ないため流速が遅く、充分なタンブルが得られない。これは、吸気制御弁の下流側で吸気の一部が吸気通路内のシリンダ側の部分へ拡がるように流れるからである。このため、低負荷運転時に燃焼を安定させるにも限界があった。
【0005】
また、上述した吸気装置は、シリンダヘッドに吸気制御弁を収容する空間を形成する分だけ吸気ポートを形成する部分が狭くなるため、吸気ポートの通路断面積を大きくとることができないという問題もあった。このため、この種の吸気装置を小型のエンジンに装備すると高負荷運転時に吸気量が不足してしまう。
【0006】
本発明は上述した問題点を解消するためになされたもので、低負荷運転時に充分なタンブルを発生させて燃焼のより一層の安定化を図るとともに、吸気ポートの通路断面積を大きくとって高負荷運転時に出力向上を図ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために本発明に係るエンジンの吸気装置は、スライド式スロットル弁を有する気化器のスロットル弁下流側の吸気通路を、スロットル弁の閉方向の先端側に位置する低負荷用通路と、他端側に位置する高負荷用通路とから構成し、シリンダヘッドの吸気ポートに、吸気弁が貫通する部分より上流側で吸気ポート内の吸気通路をシリンダの軸線方向の一方と他方とに分ける隔壁を形成し、前記隔壁よりシリンダとは反対側の吸気通路を前記低負荷用通路に接続するとともに、他方の吸気通路を前記高負荷用通路に接続し、前記吸気ポートにおける吸気入口と吸気弁貫通部との間を、前記吸気入口から下流側に向かうにしたがって次第にクランク軸の軸線方向から見てシリンダから離間するように傾斜させて形成したものである。
【0008】
本発明によれば、低負荷運転時には気化器の低負荷用通路から吸気ポートの隔壁よりシリンダとは反対側の吸気通路に混合気が供給される。吸気ポートは、吸気弁が貫通する部分を境にして屈曲しているので、低負荷運転時に混合気は慣性によって略全量が外壁側、すなわち、前記屈曲部分の径方向の外側(シリンダとは反対側)の壁面に沿って吸気ポートの燃焼室側の開口へ流れ、この開口から吸気弁の排気弁寄り側を通ってシリンダ軸線を横切るようにして反対側へ斜めに流入する。
【0009】
また、高負荷運転時には気化器の高負荷用通路にも混合気が流れるようになり、吸気ポート内の隔壁の両側の吸気通路を使用して混合気を燃焼室内に供給することができる。この吸気装置は、吸気が流れる方向を制御するために吸気ポートに吸気制御弁を設ける構造ではないので、吸気ポートを形成する部分が狭くなる制約を受けることがなく、吸気ポートの通路断面積を高負荷運転時の吸気量が確保できるように大きくとることができる。
【0010】
他の発明に係るエンジンの吸気装置は、上述した発明に係るエンジンの吸気装置において、低負荷用通路に連通管を介して吸気チャンバーを接続したものである。
この発明によれば、吸気弁が閉じているときに吸気チャンバーに蓄えた混合気を、吸気弁が開いたときに気化器側から吸込んだ混合気に加えて燃焼室に供給することができる。
【0011】
他の発明に係るエンジンの吸気装置は、上述した発明に係るエンジンの吸気装置において、スロットル弁における低負荷用通路と高負荷用通路との間の隔壁より低負荷用通路側にスロットル弁を貫通する連通孔を穿設したものである。
この発明によれば、スロットル弁開度が小さいときに連通孔を通って空気が低負荷用通路に流入し、スロットル弁の下流側に生じる負圧が小さくなる。このため、気化器の高負荷用通路と低負荷用通路を仕切る隔壁とスロットル弁との間の隙間を通って空気が高負荷用通路の上流端から低負荷用通路へ前記負圧によって吸込まれるのを阻止することができる。
【0012】
他の発明に係るエンジンの吸気装置は、上述した発明に係るエンジンの吸気装置において、気化器の高負荷用通路に接続した吸気通路に低負荷運転時に閉じる開閉弁を介装したものである。
この発明によれば、開閉弁が閉じることによって気化器の高負荷用通路は下流側が閉塞されるので、気化器の高負荷用通路と低負荷用通路を仕切る隔壁とスロットル弁との間の隙間を通って空気が高負荷用通路の上流端から低負荷用通路へスロットル弁下流側の負圧によって流込むことを阻止することができる。
【0013】
他の発明に係るエンジンの吸気装置は、上述した発明に係るエンジンの吸気装置において、吸気ポート内の隔壁よりシリンダとは反対側に形成した吸気通路をシリンダの軸線方向から見て他方の吸気通路に対して傾斜させたものである。
この発明によれば、吸気ポート内の隔壁よりシリンダとは反対側に形成した吸気通路から混合気が燃焼室内にシリンダの軸線方向から見て斜めに流入する。
【0014】
他の発明に係るエンジンの吸気装置は、上述した発明に係るエンジンの吸気装置において、気化器の低負荷用通路と吸気ポート内の吸気弁貫通部との間の吸気通路を、吸気ポート内でのシリンダの軸線方向と平行な通路高さが下流側へ向かうにしたがって次第に小さくなるように形成するとともに、クランク軸の軸線方向と平行な通路幅が下流側へ向かうにしたがって次第に大きくなるように形成したものである。
この発明によれば、低負荷運転時に混合気は吸気ポートのカム軸側の壁面に沿って薄帯状に流れる。
【0015】
他の発明に係るエンジンの吸気装置は、上述した発明に係るエンジンの吸気装置において、気化器と吸気ポートの間で低負荷用通路と高負荷用通路とを仕切る隔壁の下流側の端部にこの隔壁を貫通する連通穴を形成したものである。
この発明によれば、スロットル弁開度が大きくなって低負荷用通路での流量が増大すると、混合気の一部が隔壁の連通穴を通って他方の吸気通路に流出する。このため、タンブルを発生させるための混合気の流量が略一定になり、タンブルが過度に発生することを阻止することができる。
【0016】
他の発明に係るエンジンの吸気装置は、上述した発明に係るエンジンの吸気装置において、シリンダヘッドの燃焼室上壁の一部をピストン側へ突出させるとともに、ピストンの頂部に凹陥部を形成したものである。
この発明によれば、ピストンの頂面でタンブルが反転し易くなり、タンブルが減衰し難い。また、シリンダヘッドの燃焼室上壁の一部をピストン側へ突出させているので、ピストンに凹陥部を形成することに起因する圧縮比の低下を防止することができる。さらに、燃焼室の突出部によって乱れが強化される。しかも、圧縮比を高めてもコンパクトで良好な燃焼室特性が得られる。加えて、相対的にプラグ近くの容積が増加したことにより、燃焼が安定する。
【0017】
他の発明に係るエンジンの吸気装置は、上述した発明に係るエンジンの吸気装置において、点火プラグの先端部を燃焼室内に突出させるとともにシリンダヘッドに前記突出部を囲む突起を形成し、ピストンの頂部に凹陥部を形成したことを特徴とするエンジンの吸気装置。
この発明によれば、点火プラグの先端部を囲む突起によって混合気の流動の乱れが強化され、点火ないし燃焼初期において燃焼温度が低くなる。また、ピストンの頂面でタンブルが反転し易くなり、タンブルが減衰し難い。シリンダヘッドの燃焼室上壁の一部をピストン側へ突出させているので、ピストンに凹陥部を形成することに起因する圧縮比の低下を防止することができる。さらに、圧縮比を高めてもコンパクトで良好な燃焼室特性が得られる。加えて、相対的にプラグ近くの容積が増加したことにより、燃焼が安定する。
【0018】
他の発明に係るエンジンの吸気装置は、上述した発明に係るエンジンの吸気装置において、気化器とシリンダヘッドとの間に介装する吸気管のシリンダヘッド側の接続面を平坦面とし、この接続面の全域をシリンダヘッドに接触させたものである。
この発明によれば、エンジンの熱が吸気管に伝導によって伝達されて吸気管が加温されるから、吸気管に付着した燃料の気化が促進される。
【0019】
【発明の実施の形態】
第1の実施の形態
以下、本発明に係るエンジンの吸気装置の一実施の形態を図1ないし図5によって詳細に説明する。
図1は本発明に係るエンジンの吸気装置の断面図、図2は要部を拡大して示す断面図、図3は図1におけるIII−III線断面図、図4はシリンダヘッドの底面を示す図、図5は吸気管内の吸気通路の形状を示す断面図で、同図(a)は図1におけるA−A線断面図、同図(B)は図1におけるB−B線断面図、同図(C)は図1におけるC−C線断面図、同図(d)は図1における吸気ポートのD−D線断面図である。
【0020】
これらの図において、符号1はこの実施の形態による自動二輪車用4サイクル単気筒エンジンを示す。2はシリンダを示し、3はシリンダヘッド、4はピストン、5はコンロッドを示す。
【0021】
このエンジン1は、シリンダ2の軸線方向が車体の前方を指向するようにシリンダ2を前傾させている。このエンジン1を図示してない車体に搭載した状態での水平線を図1中に二点鎖線Hで示し、シリンダ2の軸線を一点鎖線Cで示す。前記ピストン4は、図1および図3に示すように、頂部に凹陥部4aを形成し、後述するタンブルが反転し易いようにしている。また、凹陥部4aを形成することによって燃焼室6の容積が増大して圧縮比が低下するのを阻止するために、図3および図4に示すように点火プラグ7の電極部を燃焼室6内に突出させるとともに、この点火プラグ7の突出部分を囲む突起8をシリンダヘッド3に形成している。
【0022】
このエンジン1の動弁装置は、1本のカム軸9で1本ずつの吸気弁10と排気弁11を駆動する構造を採っている。吸気弁10が開閉する吸気ポート12は、図1および図2に示すようにクランク軸(図示せず)の軸線方向から見た状態で、シリンダヘッド側部の吸気入口13と吸気弁10が貫通する部分との間を、下流側に向かうにしたがって次第にシリンダ2から離間するように傾斜させて形成している。このため、吸気ポート12は、吸気弁10が貫通する部分を境にして屈曲している。
【0023】
また、吸気ポート12における吸気弁10が貫通する部分より上流側には、吸気ポート12内の吸気通路をシリンダ2の軸線方向の一方と他方とに分ける隔壁14を形成している。この隔壁14よりシリンダ2と反対側の吸気通路を以下において吸気ポート側低負荷用通路15といい、隔壁14よりシリンダ2側の吸気通路を以下において吸気ポート側高負荷用通路16という。
【0024】
前記吸気ポート12には吸気管17を介して気化器18を接続している。前記吸気管17は、シリンダヘッド3の上部から上方へ延在して上流端が車体の前方を指向するように屈曲しており、内部に吸気通路が二つ形成されるように隔壁19を一体に形成している。この隔壁19は、吸気管17をシリンダヘッド3に取付けた状態で吸気ポート12の前記隔壁14に接続するようにしている。
【0025】
この隔壁19によって画成された二つの吸気通路20,21のうち前記吸気ポート側低負荷用通路15に接続する吸気通路20は、図5(a)〜(d)に示すように、下流側に向かうにしたがって通路断面の形状が徐々に扁平になるように形成している。詳述すると、この吸気通路20および吸気ポート側低負荷用通路15は、吸気ポート12内でのシリンダ2の軸線方向と平行な通路高さHが下流側へ向かうにしたがって次第に小さくなるとともに、クランク軸の軸線方向と平行な通路幅Wが下流側へ向かうにしたがって次第に大きくなるように形成している。
【0026】
また、吸気管17内の二つの吸気通路20,21のうち吸気ポート12の高負荷用通路16に接続する他方の吸気通路21は、途中に開閉弁22を介装している。開閉弁22は、吸気管17に回動自在に取付けた棒状の弁体22aと、この弁体22aの軸端部に取付けた駆動レバー22bと、前記弁体22aを図1において時計方向に付勢する復帰スプリング(図示せず)などから構成している。
【0027】
弁体22aは、吸気通路21と対応する部分に切欠き22cを形成している。この切欠き22cは、弁体22aが図1に示すように吸気通路21を閉塞する全閉状態から反時計方向に回動して全開状態になったときに吸気通路21の一部を構成する。
【0028】
前記駆動レバー22bは、操作ワイヤ23およびワイヤジョイント24を介してアクセルレバー(図示せず)のワイヤ操作子25に連結している。ワイヤジョイント24は、開閉弁22の操作ワイヤ23と並列になるように気化器18の操作ワイヤ26を接続している。また、このワイヤジョイント24は、開閉弁22の開動作が気化器18より遅れるように構成している。このため、開閉弁22は低負荷運転時には図1に示すように全閉状態を維持し、あるスロットル開度までは全閉のままでそれ以上負荷が大きくなるにしたがって(アクセルレバーの操作量が増大するにしたがって)徐々に開き、高負荷運転時に全開状態になる。
【0029】
前記気化器18は、スロットル弁27をスライド式ピストンによって形成し、スロットル弁27の下流側に、スロットル弁27の閉方向の先端側に位置する低負荷用通路28と、他端側に位置する高負荷用通路29とを形成している。これら両通路28,29を仕切る隔壁30は、吸気管17の隔壁19に接続している。また、気化器18の前記低負荷用通路28は、吸気管17内の吸気通路20を介して吸気ポート側低負荷用通路15に接続し、気化器18の高負荷用通路29は、吸気管17の吸気通路21を介して吸気ポート側高負荷用通路16に接続している。
【0030】
上述したように構成した吸気装置によれば、スロットル弁27の開度が相対的に小さい低負荷運転時には、気化器18の低負荷用通路28から吸気管17を介して面積の小さい吸気ポート側低負荷用通路15に高速で混合気が供給される。吸気ポート12は、吸気弁10が貫通する部分を境にして屈曲しているので、低負荷運転時に混合気は慣性によって略全量が外壁側、すなわち、前記屈曲部分の径方向の外側(シリンダとは反対側)の壁面に沿って吸気ポート12の燃焼室6側の開口12bへ流れ、この開口12bから吸気弁10の排気弁寄り側を通ってシリンダ軸線Cを横切るようにして反対側へ斜めに流入する。吸気弁10の排気弁11寄り側から流入した混合気は、シリンダ内を縦に下がった後、ピストン頂面で反転するため、縦の旋回流、すなわち図1中に矢印Tで示すようにタンブルが発生する。ピストン頂面は凹のため、反転時の減衰が少なく、強いタンブルが形成される。
【0031】
また、高負荷運転時には気化器18の高負荷用通路29にも混合気が流れるようになり、吸気ポート12内の隔壁14の両側の吸気通路15,16を使用して混合気を燃焼室6内に供給することができる。この吸気装置は、吸気が流れる方向を制御するために吸気ポート12に吸気制御弁を設ける構造ではないので、吸気ポート12を形成する部分が狭くなるような制約を受けることがなく、吸気ポート12の通路断面積を高負荷運転時の吸気量が確保できるように大きくとることができる。したがって、低負荷運転時に燃料の略全てでタンブルを発生させて燃焼の安定化を図ることができるとともに、吸気ポート12の通路断面積を大きくとって高負荷運転時に出力向上を図ることができる。高負荷時には吸気流速が速くなるが、吸気ポート12からの流れが多いため、流れは吸気ポート12の形状で支配されるようになる。すなわち、過度の流動が抑制され、燃焼騒音などの問題が発生することがない。この結果、スロットル開度に見合ったタンブルが形成される。
【0032】
さらに、この吸気装置は、開閉弁22が閉じることによって気化器18の高負荷用通路29の下流側を閉塞することができる。このため、低負荷時に気化器18の高負荷用通路29と低負荷用通路28を仕切る隔壁30とスロットル弁27との間の隙間を通って空気が高負荷用通路29の上流端から低負荷用通路28へスロットル弁下流側の負圧によって吸込まれるのを阻止することができる。したがって、高負荷用通路29への燃料溜りがなくなり、空燃比が安定し、低負荷時の運転が安定する。
【0033】
さらにまた、図5に示すように、気化器18の低負荷用通路28と吸気ポート12内の吸気弁貫通部との間の吸気通路を、吸気ポート12内でのシリンダ2の軸線方向と平行な通路高さHが下流側へ向かうにしたがって次第に小さくなるように形成するとともに、クランク軸の軸線方向と平行な通路幅Wが下流側へ向かうにしたがって次第に大きくなるように形成したため、低負荷運転時に混合気は吸気ポート12のカム軸9側の壁面12aに沿って薄帯状に流れる。この結果、シリンダ2内にタンブルが帯状に形成されてシリンダ内の広い範囲にわたって流れ、混合気が旋回する力が大きくなる。
【0034】
加えて、点火プラグ7の先端部を燃焼室6内に突出させるとともにシリンダヘッド3に前記突出部を囲む突起8を形成したため、点火プラグ7の先端部を囲む突起8によって混合気の流動の乱れが大きくなり、点火ないし燃焼初期において燃焼温度が低くなる。加えて、ピストン4の頂部に凹陥部4aを形成したため、ピストン4の頂面でタンブルが反転し易くなり、タンブルが減衰し難い。したがって、燃焼温度を低く抑えながら強いタンブルによって燃焼速度を速くすることができるので、混合気の空燃比をリーンに設定しても燃焼が安定するとともにNOx の発生を抑制することができる。
【0035】
第2の実施の形態
本発明に係るエンジンの吸気装置の第2の実施の形態を図6ないし図10によって詳細に説明する。
図6は他の実施の形態を示す断面図、図7は図6におけるVII−VII線断面図、図8は吸気ポート内の吸気通路の形状を示す構成図、図9は吸気ポートの吸気入口部分の断面図で、同図は図6におけるIX−IX線断面図である。図10は吸気ポートを形成するために用いる鋳造用中子を示す斜視図である。これらの図において、前記図1〜図5で説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明は省略する。
【0036】
この実施の形態を採るときに使用する吸気管17は、上流端が車体の後方を指向するように形成し、気化器18の低負荷用通路28と吸気ポート側低負荷用通路15とを連通する吸気通路21を他方の吸気通路20の上流端の下側から車体左側を通して下流端の車体前側に延設している。このように吸気通路21を形成しているため、吸気ポート側低負荷用通路15を図8および図9に示すようにシリンダ2の軸線方向から見て高負荷用通路16に対して傾斜させている。これらの吸気通路15,16を吸気ポート12に形成するために用いる中子を図10に符号31で示す。この中子31における吸気ポート側低負荷用通路15を形成する部分を符号32で示し、吸気ポート側高負荷用通路16を形成する部分を符号33で示す。
【0037】
このように吸気ポート側低負荷用通路15を他方の通路16に対して傾斜させることによって、吸気ポート側低負荷用通路15から混合気が燃焼室6内にシリンダ2の軸線方向から見て斜めに流入するから、シリンダ2内にタンブルと、シリンダ軸線Cを中心として旋回する旋回流からなるスワールとを合成した斜め方向に旋回するタンブルが発生する。これによって燃焼速度の一層の向上と、シリンダ内における図6の紙面に対する垂直方向の混合気均一化が行われる。
【0038】
また、前記吸気管17には、図6に示すように吸気チャンバー34を取付けている。この吸気チャンバー34は、気化器18の低負荷用通路28に接続する吸気通路21に吸気室35を接続している。
【0039】
このように低負荷用通路28に吸気チャンバー34の吸気室35を接続する構成を採ることにより、吸気弁10が閉じているときに吸気チャンバー34内に混合気が流入する。そして、この吸気チャンバー34に蓄えた混合気を、吸気弁10が開いたときに気化器18から吸込んだ混合気に加えて燃焼室6に供給することができる。したがって、吸気チャンバー34を設けない場合に較べてスロットル弁開度が同じでも混合気の供給量を増加させることができるから、気化器18の低負荷用通路28を使用する運転域を拡げることができる。このため、広い運転域にわたってタンブルによって燃焼改善を図ることができる。
【0040】
また、この実施の形態によるシリンダヘッド3は、図7に示すように、点火プラグ7の先端部の燃焼室6内への突出量が前記図3に示す形態に較べて少ない代わりに、燃焼室6の上壁の一部がピストン側へ突出している。この突出部を図7中に符号36で示す。ピストン4は図3に示す形態を採るときと同様に頂部に凹陥部4aを形成している。このように燃焼室6を構成しても前記第1の実施の形態を採るときと同様にピストン4の頂面でタンブルが反転し易くなり、タンブルが減衰し難い。その上、シリンダヘッド3の燃焼室上壁の一部をピストン4側へ突出させているので、ピストン4に凹陥部4aを形成することに起因する圧縮比の低下を防止することができる。さらに、圧縮比を高めてもコンパクトで良好な燃焼室特性が得られるし、相対的にプラグ近くの容積が増加したことにより、燃焼が安定する。
【0041】
第3の実施の形態
本発明に係る吸気装置は、図11に示すように構成することができる。
図11は他の実施の形態を示す断面図で、同図において前記図1ないし図10において説明したものと同一もしくは同等部材については、同一符号を付し詳細な説明は省略する。
【0042】
図11に示す吸気管17は、シリンダヘッド3側の接続面17aを平坦面とし、この接続面17aの全域をシリンダヘッド3に接触させている。すなわち、ガスケットを使用することなく吸気管17をシリンダヘッド3に取付けている。この接続構造を採ることにより、エンジン1の熱が吸気管17に伝導によって伝達されて吸気管17が加温されるから、吸気管17に付着した燃料の気化が促進される。このため、吸気管17に燃料が付着することに起因して空燃比が変動するのを阻止することができ、燃焼が安定する。
【0043】
また、この実施の形態による吸気ポート12の隔壁14と吸気管17内の隔壁19は、これら両者の間に低負荷用通路15と高負荷用通路16とを連通する連通穴41を形成している。このように隔壁14,19に連通穴41を形成することによって、エンジン運転域が低負荷域から高負荷域に移行するときにスロットル弁開度が大きくなって低負荷用通路15の混合気の流量が増大すると、混合気の一部が連通穴41を通って一部高負荷用通路16に流出する。このため、タンブルを発生させるための混合気の流量が略一定になり、タンブルが過度に発生することを阻止することができる。
【0044】
さらに、この実施の形態による気化器18は、スロットル弁27における低負荷用通路28と高負荷用通路29との間の隔壁30より低負荷用通路28側にスロットル弁27を貫通する連通孔42を穿設している。このように連通孔42をスロットル弁27に形成すると、スロットル弁開度が小さいときに連通孔42を通って空気が低負荷用通路28に流入し、スロットル弁27の下流側に生じる負圧が小さくなる。このため、気化器18の高負荷用通路29と低負荷用通路28を仕切る隔壁30とスロットル弁27との間の隙間を通って空気が高負荷用通路29の上流端から低負荷用通路28へ前記負圧によって図11中に矢印Rで示す流れが生じるのを阻止することができる。この結果、スロットル弁27によって制御する吸気量が正確になり、混合気の空燃比が安定する。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、低負荷運転時には気化器の低負荷用通路から吸気ポートの隔壁よりシリンダとは反対側の吸気通路に吸気および燃料が供給され、吸気弁が貫通する部分を境にして屈曲する吸気ポートの屈曲部分の径方向の外側(シリンダとは反対側)の壁面に沿って吸気ポートの燃焼室側の開口へ流れ、この開口から吸気弁の排気弁寄り側を通ってシリンダ軸線を横切るようにして反対側へ斜めに流入する。また、高負荷運転時には気化器の高負荷用通路にも吸気および燃料が流れるようになり、吸気ポート内の隔壁の両側の吸気通路を使用して吸気および燃料を供給することができる。この吸気装置は、吸気が流れる方向を制御するために吸気ポートに吸気制御弁を設ける構造ではないので、吸気ポートを形成する部分が狭くなる制約を受けることがなく、吸気ポートの通路断面積を高負荷運転時の吸気量が確保できるように大きくとることができる。
【0046】
したがって、低負荷運転時に燃料の略全てをタンブルに乗せて燃焼の安定化を図ることができるとともに、吸気ポートの通路断面積を大きくとって高負荷運転時に出力向上を図ることができる。
【0047】
吸気チャンバーを設ける他の発明によれば、吸気弁が閉じているときに吸気チャンバーに蓄えた混合気を、吸気弁が開いたときに気化器側から吸込んだ混合気に加えて燃焼室に供給することができる。このため、吸気チャンバーを設けない場合に較べてスロットル開度が同じでも混合気の供給量を増加させることができるから、気化器の低負荷用通路を使用する運転域を拡げることができる。このため、広い運転域にわたってタンブルによって燃焼改善を図ることができる。
【0048】
スロットル弁に連通孔を穿設する他の発明によれば、スロットル弁開度が小さいときに連通孔を通って空気が低負荷用通路に流入し、スロットル弁の下流側に生じる負圧が小さくなる。このため、気化器の高負荷用通路と低負荷用通路を仕切る隔壁とスロットル弁との間の隙間を通って空気が高負荷用通路の上流端から低負荷用通路へ前記負圧によって吸込まれるのを阻止することができるから、スロットル弁によって制御する吸気量が正確になり、混合気の空燃比が安定する。
【0049】
開閉弁を設ける他の発明によれば、開閉弁が閉じることによって気化器の高負荷用通路は下流側が閉塞されるので、気化器の高負荷用通路と低負荷用通路を仕切る隔壁とスロットル弁との間の隙間を通って空気が高負荷用通路の上流端から低負荷用通路へスロットル弁下流側の負圧によって流込むことを阻止することができる。
したがって、スロットル弁によって制御する吸気量が正確になり、混合気の空燃比が安定する。
【0050】
低負荷用通路に接続した吸気ポート内の吸気通路をシリンダ軸線方向視で傾斜させる他の発明によれば、低負荷運転時には混合気が燃焼室内にシリンダ軸線方向視で斜めに流入するから、シリンダ内にタンブルと、シリンダ軸線を中心として旋回する旋回流からなるスワールとを合成した斜め方向に旋回するタンブルが発生する。これによってシリンダ内混合気の左右方向、すなわちカム軸の軸線方向の均一化が進み、また燃焼速度も一層大きくなる。
【0051】
低負荷用通路に接続した吸気通路の断面形状を変える他の発明によれば、低負荷運転時に混合気は吸気ポートのカム軸側の壁面に沿って薄帯状に流れるから、シリンダ内にタンブルが帯状に形成されて混合気が旋回する力が大きくなる。
【0052】
吸気ポート内の隔壁に連通穴を形成する他の発明によれば、スロットル弁開度が大きくなって低負荷用通路での流量が増大すると、混合気の一部が隔壁の連通穴を通って他方の吸気通路に流出する。このため、タンブルを発生させるための混合気の流量が略一定になり、タンブルが過度に発生することを阻止することができる。
したがって、高負荷運転時にタンブルによって失火が生じることがなく、高負荷運転時でも燃焼が安定する。
【0053】
ピストンに凹陥部を形成する他の発明によれば、ピストンの頂面でタンブルが反転し易くなり、タンブルが減衰し難い。また、シリンダヘッドの燃焼室上壁の一部をピストン側へ突出させているので、ピストンに凹陥部を形成することに起因して圧縮比が小さくなることはない。
したがって、タンブルが強く生じるようになり、より一層燃焼が安定する。
【0054】
点火プラグの先端部を囲む突起を設ける他の発明によれば、火プラグの先端部を囲む突起によって混合気の流動が乱れ、点火ないし燃焼初期において燃焼温度が低くなる。ピストンの頂面でタンブルが反転し易くなり、タンブルが減衰し難い。また、シリンダヘッドの燃焼室上壁の一部をピストン側へ突出させているので、ピストンに凹陥部を形成することに起因して圧縮比が小さくなることはない。
したがって、燃焼温度を低く抑えながら強いタンブルによって燃焼速度を速くすることができるので、混合気の空燃比をリーンに設定しても燃焼が安定するとともにNOx の発生を抑制することができる。
【0055】
吸気管の平坦な接続面を全面にわたってシリンダヘッドに接触させる他の発明によれば、エンジンの熱が吸気管に伝導して吸気管が加温されるから、吸気管に付着した燃料の気化が促進される。
したがって、吸気管に燃料が付着することに起因して空燃比が変動するのを阻止することができ、燃焼が安定する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るエンジンの吸気装置の断面図である。
【図2】 要部を拡大して示す断面図である。
【図3】 図1におけるIII−III線断面図である。
【図4】 シリンダヘッドの底面を示す図である。
【図5】 吸気管内の吸気通路の形状を示す断面図である。
【図6】 他の実施の形態を示す断面図である。
【図7】 図6におけるVII−VII線断面図である。
【図8】 吸気ポート内の吸気通路の形状を示す構成図である。
【図9】 吸気ポートの吸気入口部分の断面図である。
【図10】 吸気ポートを形成するために用いる鋳造用中子を示す斜視図である。
【図11】 他の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1…エンジン、2…シリンダ、3…シリンダヘッド、4…ピストン、6…燃焼室、7…点火プラグ、8…突起、9…カム軸、10…吸気弁、12…吸気ポート、13…吸気入口、14…隔壁、15…吸気ポート側低負荷用通路、16…吸気ポート側高負荷用通路、17…吸気管、17a…接続面、18…気化器、19…隔壁、20,21…吸気通路、22…開閉弁、27…スロットル弁、28…低負荷用通路、29…高負荷用通路、30…隔壁、34…吸気チャンバー、36…突出部、41…連通穴、42…連通孔。
Claims (10)
- スライド式スロットル弁を有する気化器のスロットル弁下流側の吸気通路を、スロットル弁の閉方向の先端側に位置する低負荷用通路と、スロットル弁の他端側に位置する高負荷用通路とから構成し、前記気化器を接続するシリンダヘッドの吸気ポートに、吸気弁が貫通する部分より上流側でこの吸気ポート内の吸気通路をシリンダの軸線方向の一方と他方とに分ける隔壁を形成し、前記隔壁よりシリンダとは反対側に位置する吸気通路を前記低負荷用通路に接続するとともに、他方の吸気通路を前記高負荷用通路に接続し、前記吸気ポートにおけるシリンダヘッド側部の吸気入口と吸気弁貫通部との間を、前記吸気入口から下流側に向かうにしたがって次第にクランク軸の軸線方向から見てシリンダから離間するように傾斜させて形成したことを特徴とするエンジンの吸気装置。
- 請求項1記載のエンジンの吸気装置において、低負荷用通路に連通管を介して吸気チャンバーを接続したことを特徴とするエンジンの吸気装置。
- 請求項1記載のエンジンの吸気装置において、スロットル弁における低負荷用通路と高負荷用通路との間の隔壁より低負荷用通路側にスロットル弁を貫通する連通孔を穿設したことを特徴とするエンジンの吸気装置。
- 請求項1記載のエンジンの吸気装置において、気化器の高負荷用通路に接続した吸気通路に低負荷運転時に閉じる開閉弁を介装したことを特徴とするエンジンの吸気装置。
- 請求項1記載のエンジンの吸気装置において、吸気ポート内の隔壁よりシリンダとは反対側に形成した吸気通路をシリンダの軸線方向から見て他方の吸気通路に対して傾斜させたことを特徴とするエンジンの吸気装置。
- 請求項1記載のエンジンの吸気装置において、気化器の低負荷用通路と吸気ポート内の吸気弁貫通部との間の吸気通路を、吸気ポート内でのシリンダの軸線方向と平行な通路高さが下流側へ向かうにしたがって次第に小さくなるように形成するとともに、クランク軸の軸線方向と平行な通路幅が下流側へ向かうにしたがって次第に大きくなるように形成したことを特徴とするエンジンの吸気装置。
- 請求項1記載のエンジンの吸気装置において、気化器と吸気ポートの間で低負荷用通路と高負荷用通路とを仕切る隔壁の下流側の端部にこの隔壁を貫通する連通穴を形成したことを特徴とするエンジンの吸気装置。
- 請求項1記載のエンジンの吸気装置において、シリンダヘッドの燃焼室上壁の一部をピストン側へ突出させるとともに、ピストンの頂部に凹陥部を形成したことを特徴とするエンジンの吸気装置。
- 請求項1記載のエンジンの吸気装置において、点火プラグの先端部を燃焼室内に突出させるとともにシリンダヘッドに前記突出部を囲む突起を形成し、ピストンの頂部に凹陥部を形成したことを特徴とするエンジンの吸気装置。
- 請求項1記載のエンジンの吸気装置において、気化器とシリンダヘッドとの間に、内部の吸気通路が隔壁で二つに画成された吸気管を介装し、この吸気管のシリンダヘッド側の接続面を平坦面としてこの接続面の全域をシリンダヘッドに接触させたことを特徴とするエンジンの吸気装置。
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