JP3677943B2 - ハイハットスタンド - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイハットスタンドに関し、特に演奏性および応答性の良好なハイハットスタンドに関する。
【0002】
【従来の技術】
ハイハットスタンドは、スタンド本体の上部に下側固定シンバルを設け、このスタンド本体内を摺動自在に貫通する作動ロッドの上部に上側可動シンバルを前記下側固定シンバルに対向させて設け、作動ロッドの下方に設けたペダルの踏込操作によって作動ロッドを下降させることにより上側可動シンバルが下側固定シンバルを打撃し演奏するものである。作動ロッドは復帰用ばねによって上方に付勢されており、このばね力に抗してペダルを踏込むようにしている。
【0003】
復帰用ばねの強さは、ハイハットスタンドの演奏性および応答性を高める上できわめて重要である。何故なら、復帰用ばねのばね力が強過ぎるとペダルを強く踏み込まなければならないため、微妙なペダル操作によってシンバルを開閉させることが難しく、反対に弱過ぎるとペダルを軽く踏込むことができるため微妙なペダル操作が得られる反面、ペダルの戻りが遅いため素早い正確な動作が得られなくなるからである。そのため、演奏性および応答性のよいハイハットスタンドを得るためには、ペダルが軽く踏めてしかも速く戻ることが要求される。
【0004】
このような観点から、実公昭60−27427号公報等に記載されているようにストラップと呼ばれるベルトまたはチェンによって作動ロッドとペダルを連結したり、あるいは作動ロッドとペダルを直接接続したハイハットスタンドにおいては、復帰用ばねの設定圧力と同じ大きさの踏込力でペダルを操作しなければならず、演奏性および応答性という点で問題があった。
【0005】
そこで、このような従来の問題を解決するために、動滑車の原理を応用することによりばね力自体は強くてもペダルの踏込力を小さくし得るようにしたハイハットスタンドが知られている(特開平3−251895号公報)。このハイハットスタンドは、図4に示すように作動ロッド1の下端に回動軸2を共有して設けた動滑車として機能する大小2つの回動部材3A,3Bからなるホイール部材3と、このホイール部材3に巻着された2本のチェーン4A,4Bを介して作動ロッド1とペダル5を連結したものである。ホイール部材3としてはスプロケットが用いられ、大回動部材3Aに一方のチェーン4Aの一端を連結し、他端をペダルフレーム6に連結し、小回動部材4Bに他方のチェーン4Bの一端を連結し、他端をペダル5に連結している。なお、7は作動ロッド1の復帰用ばね、8Aはスタンド本体の上部に設けられた下側固定シンバル、8Bは作動ロッド1の上部に設けられた上側可動シンバルである。
【0006】
このような構成においては、従来と同じばね力Fの復帰用ばね7を用いた場合、作動ロッド1を引き下げるのに要する力W(=F)よりペダル5の踏込力Pを小さくでき、また上側可動シンバル8Bを一定距離(h)引き下げるのに要するペダル5の作動距離Hを大きくすることができる。なお、作動ロッド1を引き下げる力W、シンバル8Bの移動距離h、ペダル5の踏込力Pおよびペダル5の作動距離Hとの間には、
PH=Whの関係が成り立つ。
また、
H=h+X/Y・h=(1+X/Y)h
h=Y/(X+Y)H
P=Y/(X+Y)W
W=(1+X/Y)P
となる。
【0007】
ここで、小回動部材3Bの半径Xと大回動部材3Aの半径Yとの比をX:Y=1:2とした場合は、
P=2/3W
H=3/2h
となる。
【0008】
大径回動部材3Aに他方のチェーン4Bを連結し、小径回動部材3Bに一方のチェーン4Aを連結してX:Y=2:1とした場合は、
P=1/3W
H=3h
となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来のハイハットスタンドにおいては、動滑車の原理を応用していることから大きさが異る2つの回動部材3A,3Bと長さが異なる2本のチェーン4A,4Bを必要とするため、部品の種類が多く、その製作が面倒であるという問題があった。
また、大きな踏込力Pを得るために大回動部材3Aの半径Yを大きくすると、必然的に高さも高くなるため、大回動部材3Aとペダルフレーム6との間隔が狭くなり、実際にはペダル5の作動距離Hを大きくすることができないという問題があった。
【0010】
本発明は上記した従来の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、復帰用ばねのばね力を変えないでペダルを軽く踏込むことができ、また部品の種類が少なく、ペダルの作動距離を大きくし得るようにしたハイハットスタンドを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、復帰用ばねによって上方への復帰習性が付与され上部に上側可動シンバルが取付けられた作動ロッドの下端をペダルに連結し、このペダルの踏込操作によって前記作動ロッドを上下動させるハイハットスタンドにおいて、前記作動ロッドの下端にローラリンクをその中央部を揺動自在に枢支させるとともに、このローラリンクの両端部に回転体をそれぞれ設け、これら回転体に一端が前記ペダルに接続され他端がペダルフレームに接続される伝達部材の中間部を掛け渡したことを特徴とする。
本発明においては、1種類の回転体を2つ用いればよいので、回転体の種類を少なくすることができる。また、伝達部材が1つであるため、伝達部材の数も少なくすることができる。2つの回転体が同じであれば、回転体とペダルフレーム6との間隔を大きく設定することが可能で、ペダルの作動距離を大きくすることができる。
【0012】
また、本発明は、伝達部材をペダルフレームとペダルのいずれか一方に対して長さ調整機構により長さ調整可能に接続したことを特徴とする。
本発明においては、長さ調整機構によって伝達部材の長さを調整することにより、ペダルの作動距離を変えることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係るハイハットスタンドの斜視図、図2は要部の断面図、図3は要部の側面図である。なお、従来技術の欄で示した構成部材等と同一のものについては同一の符号をもって示し、その説明を適宜省略する。これらの図において、ハイハットスタンド20は、折畳み自在な三脚21によって床面上に立設される中空のスタンド本体22と、このスタンド本体22内を摺動自在に貫通する作動ロッド1と、この作動ロッド1を上方へ付勢するばね装置23と、スタンド本体22の下部に配置されたペダル装置24等を備え、スタンド本体22の上部には下側固定シンバル8Aが取付けられ、作動ロッド1の上部には上側可動シンバル8Bが取付けられている。
【0014】
前記ばね装置23は、スタンド本体22の外周に固定されたパイプ26と、このパイプ26内に組み込まれ上端がパイプ26に連結された復帰用ばね7と、前記パイプ26の内部に下方から挿入され上端に前記復帰用ばね7の下端が連結されたスプリングロッド28とを備え、このスプリングロッド28が前記作動ロッド1の下端に取付けた連結部材25に立設されている。
【0015】
前記ペダル装置24は、床面上に設置されたペダルフレーム6と、このペダルフレーム6のヒール31に後端側が上下方向に回動自在に連結されたペダル5と、このペダル5の前端を前記作動ロッド1の下端に連結する伝達部材32等で構成されている。
【0016】
さらに作動ロッド1とペダル5の連結構造を図2および図3に基づいて詳述すると、前記連結部材25には軸受部材33を介してローラリンク34が取付けられている。ローラリンク34は、ペダル5の前後方向に長く形成されて中央が前記軸受部材33に設けた回動軸35によって上下方向に揺動自在に軸支され、前後端部にはピン37によって回転自在に軸支された回転体36A,36Bがそれぞれ設けられている。回転体36Aと36Bは同一で、ローラリンク34の揺動中心Oから一定距離離間して設けられている。
【0017】
前記伝達部材32は、一端が前記ペダル5の前端部に固定され、他端が前記ペダルフレーム6に一体に設けた連結部6Aに長さ調整機構38を介して連結され、中間部が前記回転体36A,36Bに掛け渡されている。
【0018】
ここで、本実施の形態においては、伝達部材32としてベルトを用い、回転体36A,36Bとしてローラを用いた例を示しているため、安価であるという利点があるが、これに限らず伝達部材32としてチェーンベルトやタイミングベルトやワイヤーを用い、回転体36A,36Bとしてスプロケットや歯付き車を用いてもよい。
【0019】
前記長さ調整機構38は、前記連結部6Aに設けたねじ孔に貫通して螺合されたねじ体41と、このねじ体41を連結部材6Aに固定するダブルナット42と、ねじ体41の上端に回転自在に設けられた部材43とを備え、この部材43に前記伝達部材32のペダルフレーム側端が接続されている。
【0020】
前記ペダル5は初期状態において図2に示すように前端側が上方に浮いた状態に保持されており、演奏時に踏込操作されると連結部材25が復帰用ばね7に抗して引き下げられるため、これと一体に作動ロッド1も下降して上側可動ロッド8Bが下側固定シンバル8Aを打撃する。長さ調整機構38によりペダル5の初期状態における傾斜角度を調整する場合は、ダブルナット42を緩めてねじ体41を回転によって上下動させ、伝達部材32を上昇させたり引き下げたりすればよい。その結果、ペダル5の傾斜角度、言い換えれば高さを容易に調整することができる。
【0021】
このような構成からなるハイハットスタンド20において、ローラリンク34の揺動中心Oと回転体36A,36Bの回転中心を通る直線上で、前記揺動中心Oから各回転体36A,36Bと伝達部材32との接触点D1 ,D2 までの距離をそれぞれa、接触点D1 から接触点D2 までの距離をAとし、ペダル5を踏込力Pで踏込むと、伝達部材32が引き下げられるため、ローラリンク34は点D2 を揺動支点として下方へ回動する。このときの踏込力Pは、作動ロッド1を引き下げる力をW(=F)とすると、テコの原理により
A×P=a×W
の関係が成り立つ。
この場合、A=2aであるため、
A×P=2a×P=a×Wとなる。
この結果、踏込力Pは1/2Wとなる。
【0022】
揺動中心Oから点D1 までの距離を2aに変更し、揺動中心Oから点D2 までの距離をaとした場合は、
A×P=3a×W=a×W
P=1/3W
となる。
【0023】
このように本発明においては、従来と同じばね力Fの復帰用ばね7を用いた場合、作動ロッド1を引き下げるのに要する力W(=F)よりペダル5の踏込力Pを小さくでき、図4に示した従来装置と同様にハイハットスタンド20の演奏性および応答性を向上させることができる。
また、このことは、踏込力Pを変えない場合、従来より大きなばね力の復帰用ばね7を使用することができることを意味する。
【0024】
ここで、本発明においてはテコの原理を応用しているので、支点からのアームの長さが重要になるだけで、2つの回転体36A,36Bについてはその大きさに関係せず同一のものを使用することができ、また伝達部材32は1つ用いるだけでよいので、上記した従来装置に比べてこれら部品の種類を少なくすることができる利点を有する。したがって、部品管理が容易で、安価に製作することができる。
また、回転体36A,36Bが同じ大きさであれば、ペダルフレーム6から回転体36A,36bまでの間隔を大きく設定することができ、ペダル5の作動距離を大きくすることができる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るハイハットスタンドによれば、テコの原理を応用しているので、復帰用ばねのばね力が強くてもペダルを軽く踏めて速く戻すことができる。したがって、微妙なペダル操作が得られ、演奏性および応答性を向上させることができる。また、同じ大きさの2つの回転体と1つの伝達部材を用いればよいので、これら部品の種類が少なく、安価に製作することができ、また部品管理も容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るハイハットスタンドの一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】 同スタンドの要部の断面図である。
【図3】 要部の側面図である。
【図4】 従来のハイハットスタンドの概念図である。
【符号の説明】
1…作動ロッド、4A,4B…チェーン、5…ペダル、6…ペダルフレーム、7…復帰用ばね、8A…下側固定シンバル、8B…上側可動シンバル、20…ハイハットスタンド、23…ばね装置、24…ペダル装置、32…伝達部材、34…ローラリンク、35…回動軸、36A,36B…回転体、38…長さ調整機構。

Claims (2)

  1. 復帰用ばねによって上方への復帰習性が付与され上部に上側可動シンバルが取付けられた作動ロッドの下端をペダルに連結し、このペダルの踏込操作によって前記作動ロッドを上下動させるハイハットスタンドにおいて、前記作動ロッドの下端にローラリンクをその中央部を揺動自在に枢支させるとともに、このローラリンクの両端部に回転体をそれぞれ設け、これら回転体に一端が前記ペダルに接続され他端がペダルフレームに接続される伝達部材の中間部を掛け渡したことを特徴とするハイハットスタンド。
  2. 請求項1記載のハイハットスタンドにおいて、
    伝達部材をペダルフレームとペダルのいずれか一方に対して長さ調整機構により長さ調整可能に接続したことを特徴とするハイハットスタンド。
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