JP3675167B2 - 収穫作業車の穀物積替判定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、収穫作業車の穀物積替判定装置に関し、収穫作業車の収納タンクに収納する穀物量が満杯近くなったとき、圃場区画周辺に待機させた穀物運搬車等への積替時期を、満杯予測地点と現在地点及び穀物積替地点の位置関係から判定する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術、及び発明が解決しようとする課題】
従来から、収穫作業車により圃場区画を周回して収穫作業を行うとき、作業車の収納タンクが満杯近くなった時点で、圃場区画外に待機させている穀物運搬車等による穀物の積替地点において積替えを行うものでは、この積替地点から圃場区画を一周する途中で満杯が予測されるときは、この満杯地点から積替地点まで引き返してくる時間的ロスを少なくするため、満杯が予測される前の周回における積替地点で運搬車等に積替えを行うもの等が一部で試みられている。このような方式においては、穀物の積替地点と収納タンクの満杯地点との関係から収納される穀物量が最大では圃場区画の一周分程度の減量が予測されるが、小区画の圃場では収納タンクに対する穀物充填量への影響が少ないため作業効率が余り低下するようなことはなかった。
【0003】
しかし、大区画の圃場においては収納タンクへの穀物充填量が大きく減量されることになり作業効率が著しく低下する恐れがあるため、収納タンクに対する穀物充填量が満杯に近くなるまで作業を続行した後、積替地点まで引き返して積替えを行うことになるが、この場合においても、積替時期の判定を誤ると積替地点まで引き返してくる時間的ロスにより作業効率が著しく低下する恐れがある。
【0004】
そこでこの発明は、収穫作業車の収納タンクに収納する穀物量が満杯近くなったとき、穀物運搬車等への積替時期を満杯予測地点と現在地点及び穀物積替地点の位置関係から判定する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、圃場区画Aと穀物の積替地点Bとを記憶させると共に、車体1の収納タンク2に収納された穀物の充填量を検出する穀物量検出手段3と、車速を検出する車速検出手段4と、車体1の現在地点Cを検出する位置検出手段5とにより、現在地点Cから穀物が満杯となるまでの走行可能距離rを算出し、この走行可能距離rを走行経路によって割り出した満杯予測地点Dと積替地点Bとの距離s、及び現在地点Cと積替地点Bとの距離tを各々算出比較して積替時期を判定することを特徴とする収穫作業車の穀物積替判定装置の構成とする。
【0006】
【作用】
上記の構成により、収穫作業車によって圃場区画A内を所定の走行パターン、例えば回り刈り等の作業を行うとき、作業車の収納タンク2が満杯近くなった時点で圃場区画A周辺の積替地点Bに待機させている穀物運搬車等に積替えて再び作業を継続させるものにおいて、この作業時に、穀物量検出手段3による収納タンク2内の穀物充填量の検出と、車速検出手段4による車速の検出と、例えばジャイロ等の位置検出手段5による作業時の現在地点Cの検出とを行い、これらの検出により現在地点Cから収納タンク2が満杯になるまでの走行可能距離rを算出し、この走行可能距離rを所定の走行パターンによる走行経路によって満杯予測地点Dを割り出すことにより、コントローラ等に記憶されている積替地点Bと満杯予測地点Dとの距離s及び積替地点Bと現在地点Cとの距離tを各々算出比較し、作業効率が低下しない一定の基準により、例えば距離sと距離tの関係によって積替時期の判定を行うと共に、積替地点Bへの戻り経路を選択して引返し積替えを行わせる。
【0007】
【発明の効果】
上記作用の如く、収穫作業車による圃場区画A内における収穫作業時に、収納タンク2が満杯近くなったときは積替地点Bにおいて穀物運搬車等に積替えた後再び収穫作業を続行させるが、この穀物の積替えを行うときに、収納タンク2内の穀物充填残量と車速及び現在地点Cの検出により、満杯までの走行可能距離rを算出すると共に満杯予測地点Dを割り出し、この満杯予測地点Dと積替地点Bとの距離s及び積替地点Bと現在地点Cとの距離tを各々算出比較して、作業効率が低下しない一定の基準によって積替時期と積替地点Bへの引返し経路とを判定することにより、従来の如く、大きい圃場区画Aにおいて穀物の積替地点Bを通過した一周内に収納タンク2の満杯が予測されるときは、予測される時点の積替地点Bで積替えを行わせることによって、収納タンク2への充填量が大きく減量されて著しく作業効率が低下するというようなことがなく、積替地点B,現在地点C,満杯予測地点Dと収納タンク2の穀物充填量との最適の兼ね合いによって、無駄な走行を防止し良好な作業効率を保持させることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施例を収穫作業車としてのコンバインについて図面に基づき説明する。
図12はコンバインの全体構成を示すもので、このコンバインの車台6の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行クローラ7を張設した走行装置8を配設すると共に、該車台6上にフィードチェン9に挟持搬送して供給される刈取り穀稈を脱穀し、この脱穀された穀粒を選別回収して一時貯留する収納タンク2と、このタンク2に貯留した穀粒を機外へ排出する排穀オーガ10とを備えた脱穀装置11を載置構成させる。
【0009】
該脱穀装置11の前方に、その前端側から植立穀稈を分草する分草体12と、分草された穀稈を引き起す引起部13と、引き起された穀稈を刈り取る刈刃部14と、この刈り取られた穀稈を後方へ搬送して該フィードチェン9へ受渡しする穀稈搬送部15等を有する刈取装置16を、油圧駆動による伸縮シリンダ17により土壌面に対して昇降自在に作用するよう構成させる。
【0010】
該脱穀装置11の一側にコンバインの操作制御を行う操作装置18と、この操作のための操作席19とを設け、この操作席19の下方側にはエンジン20を搭載し、後方側には前記収納タンク2を配置すると共に、操作装置18と操作席19とを覆うキャビン21を設けて構成している。これらの走行装置8,脱穀装置11,刈取装置16,操作装置18,エンジン20等によってコンバインの機体1を構成させている。
【0011】
図2に示す如く、前記収納タンク2内の上部側適宜位置に、超音波等によって穀粒の充填量を検出する穀物量検出手段3としての穀粒量センサ3を配設する。前記走行クローラ7駆動用の走行スプロケット22を軸止する車軸23を終段に内装した走行ミッションケース24の連動経路中に、車速を検出する車速検出手段4としての車速センサ4を配設して構成させる。
【0012】
前記キャビン21のルーフ部に、ジャイロ等によって現在地点Cを自律検出するか又はグローバルポジショニングシステム(GPS)等によって数個の通信衛星からの電波を利用して現在地点Cを検出する位置検出手段5としての位置センサ5を配設して構成させる。
図1に示す如く、圃場区画Aの外周辺の一角に、該収納タンク2が満杯になったときに穀粒の積替えを行う積替地点Bを設定し、この積替地点Bに穀粒貯留タンク25aを後部に載置した四輪自動車等による穀物運搬車25を待機して配置させる。
【0013】
CPUを主体的に配して演算制御を行わせるコントローラ26を設け、このコントローラ26に圃場区画Aの形状と積替地点Bとを記憶させると共に、回り刈りや往復刈り等による走行パターンを設定認識させ、該穀粒量センサ3,車速センサ4,位置センサ5等により検出された検出値を受けて、収穫作業中の現在地点Cと、収納タンク2の充填量と車速から算出した満杯になるまでの走行可能距離rを走行パターンの走行経路によって割り出した満杯予測地点Dとにより、記憶されている圃場区画Aと設定されている走行パターンに沿って、積替地点Bと満杯予測地点Dとの距離s及び積替地点Bと現在地点Cとの距離tを算出可能に構成させる。
【0014】
収穫作業車により圃場区画A内を設定した回り刈りの走行パターンによって収穫作業を行うとき、図3のフローチャートに示す如く、該収納タンク2の穀粒充填量が増大するに従って、図4に示す如く穀粒量センサ3の出力も増加するからこの増加による単位時間当りの穀粒増加率は、図5に示す如く△tに対し△vとなる。この穀粒増加率によって収納タンク2の充填残量を除した値と車速とにより満杯までの走行可能距離rが算出され、位置センサ5により検出される現在地点Cから走行可能距離rを走行パターンによる回り刈りの走行経路に沿って満杯予測地点Dを算出する。
【0015】
コントローラ26に記憶している穀粒の積替地点Bと満杯予測地点Dとの距離s及び積替地点Bと現在地点Cとの距離tを算出し、満杯予測地点Dが周回距離の中間位置から前側の時は距離s>距離tのとき、後側の時は距離s<距離tのときに積替えを行わせることにより、圃場区画A及び積替地点B,現在地点C,満杯予測地点Dと収納タンク2の穀粒充填量との最適の兼ね合いによって、充填量の減量や無駄な走行を防止し良好な作業効率を保持させうると共に、無人コンバイン等における穀粒の自動積替制御時の要素技術として利用可能である。
【0016】
また、図6に示す如く、前記刈取装置16における引起部13の引起ケース13a上端部の前側近傍位置と後側近傍位置とに、超音波による送信を受信してその往復時間の距離を検出することにより、各々倒伏穀稈の平均的倒伏上面の地上高uを算出可能な倒伏センサ27と、穀稈の全稈長vを算出可能な稈長センサ28とを配設して構成させる。
【0017】
上記の構成により、図7のフローチャートに示す如く、倒伏センサ27による倒伏穀稈の平均的倒伏上面部までの距離xと、稈長センサ28による引き起こされた鉛直状態の穀稈の平均的上端部までの距離yとを、図8の線図に示す如く、超音波の送信信号に対する受信時の音圧レベルの最大値により超音波の往復時間zを検出し、この往復時間zつまり受信時間によって、図9の線図に示す如く、倒伏穀稈の倒伏上面の地上高u及び穀稈の全稈長vを算出することができる。なお、超音波の往復時間zは該刈取装置16の刈高さ位置の違いによる誤差を補正するようにしてもよい。
【0018】
この算出された穀稈の全稈長vが、予め設定されている基準値よりも長いときは長稈又短いときは短稈と判定し、この長稈と短稈による全稈長vと倒伏上面の地上高uとの対比により各々倒伏度合を算出する。このように長稈・短稈の判定による倒伏度合の算出を行うことにより、倒伏上面の地上高uが同じときでも長稈では引起性能面から車速を下げると共に、引起し速度を上げなければ適正な刈り取りができ難いものであり、刈取精度や作業能率の向上につながる情報を得ることができる。
【0019】
また、前記の如き穀稈の長稈・短稈の判定による倒伏度合を算出するものにおいて、この倒伏度合から、図10の線図に示す如く、長稈・短稈によって引起しパターンと車速パターンを変更し、引起速度を決める引起係数αと適正車速を算出すると共に、図11の線図に示す如く、車速に対する引起速度の関係を標準比率から引起係数αを乗じて引起速度を算出し、穀稈の長稈・短稈の種類と倒伏度合から適正車速の制御と車速に応じた引起速度の制御を行うことができる。
【0020】
これらの制御から、刈り取る穀稈の条件に影響されることなく穀稈の倒伏度合が著しいほど車速を下げ引起速度を上げることにより(図10参照)、穀稈の引起姿勢や搬送姿勢が乱れるようなことがないから、搬送の詰まり防止と引き起こしによる脱粒の低減が可能になると共に、良好な作業効率を保持させることができる。
【0021】
また、上記と異なる実施例として、図13に示す如く、少しの間隙を保持して噛合するゴム等による硬い弾性体から形成された複数の対向する大径ギヤロール29と小径ギヤロール30とを、大径ロール軸31と小径ロール軸32とに各々軸止すると共に、この大径及び小径ロール軸31,32の各一端部に伝動用の大径ロールプーリ33と小径ロールプーリ34とを軸止し、大径及び小径ロールプーリ33,34の間にベルト35を張設する。該大径ギヤロール29と小径ギヤロール30の周囲を覆うロールカバー36を設けると共に、大径ギヤロール29と小径ギヤロール30の間に発生する圧力と周速差により、揉み作用させる方向に穀稈を挟持搬送する搬送チェン37と挟持杆38とを配設して脱穀機39を構成させる。
【0022】
上記の構成により、該搬送チェン37と挟持杆38とにより穀稈を挟持して搬送し、大径ギヤロール29と小径ギヤロール30の間において周速差を利用した揉み作用により脱粒を行わせるため、枝梗付着粒の低減や稈切れ等の発生を防止することができるから、従来の扱歯による脱粒のように枝梗付着粒や稈切れ等が発生し穀粒品質の低下や選別不良等を生じるようなことがなく、脱穀負荷の軽減及び選別部を小型化できることにより、エンジンを小馬力とし機体を軽量化することができる。
【0023】
また、図14に示す如く、対向する該大径ギヤロール29と小径ギヤロール30との複数組を連続作用可能な方向に並べて配置すると共に、この複数組を並べて配置した方向に搬送チェン37と挟持杆38を延長して脱穀穀稈を挟持搬送可能に構成することにより、該複数組の大径及び小径ギヤロール29,30と搬送チェン37及び挟持杆38とにより、脱粒作用の低下を生じさせないと共に扱残り等の発生を抑えることができる。
【0024】
また、前記の如く、該大径ギヤロール29と小径ギヤロール30とにより穀稈の脱穀を行うものにおいて、図15に示す如く、大径ギヤロール29を四方のバランススプリング40を介して大径ロール軸31に可動自在に軸止して、穀稈の脱穀量に応じて小径ギヤロール30との間隙を調整可能となるよう構成することにより、穂の長さや厚さの影響を受けずに安定した脱粒性能を保持して、脱穀量の変化に対応した脱粒が可能となる。なお、該バランススプリング40は小径ギヤロール30に設けるようにしてもよいし、両ギヤロール29,30の双方に設けるようにしてもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)圃場区画における収穫作業車の穀物積替時期の算出方法を示す平面図。
(b)収穫作業車から穀物運搬車への穀物の積替え状態を示す平面図。
【図2】収穫作業車の収納タンク内に穀粒量センサを設置した状態を示す側断面図。
【図3】収納タンクに収納した穀粒の積替実施時期の判定手順を示すフローチャート。
【図4】収納タンクにおける穀粒量と穀粒量センサの出力との関係を示す線図。
【図5】収納タンクにおける穀粒量センサの出力と時間から穀粒量の変化を示す線図。
【図6】収穫作業車の刈取装置に設置した稈長センサと倒伏センサにより穀稈の稈長と倒伏状態の検出作用を示す概略側面図。
【図7】刈取装置における穀稈検出による倒伏度合の算出手順を示すフローチャート。
【図8】刈取装置における穀稈検出による超音波の往復時間を示す線図。
【図9】(a)超音波センサによる倒伏穀稈の上面部と受信時間との関係を示す線図。
(b)超音波センサによる引起し穀稈上端部と受信時間との関係を示す線図。
【図10】穀稈の倒伏度合に対する適正車速及び引起し係数の関係を示す線図。
【図11】車速に対する引起速度を引起し係数により補正を行う状態を示す線図。
【図12】コンバインの全体構成を示す側面図。
【図13】(a)大径と小径のギヤロールの噛合により穀稈を脱粒する脱穀機の正面図。
(b)大径と小径のギヤロールの噛合により穀稈を脱粒する脱穀機の側面図。
【図14】大径と小径のギヤロール組合せを複数組並べて配設した脱穀機の概略正面図。
【図15】大径又は小径のギヤロールをロール軸に対して可動とした状態を示す正面図。
【符号の説明】
1. 車体
2. 収納タンク
3. 穀物量検出手段
4. 車速検出手段
5. 位置検出手段
A. 圃場区画
B. 積替地点
C. 現在地点
D. 満杯予測地点
r. 走行可能距離
s 距離(積替地点と満杯予測地点)
t 距離(積替地点と現在地点)

Claims (1)

  1. 圃場区画Aと穀物の積替地点Bとを記憶させると共に、車体1の収納タンク2に収納された穀物の充填量を検出する穀物量検出手段3と、車速を検出する車速検出手段4と、車体1の現在地点Cを検出する位置検出手段5とにより、現在地点Cから穀物が満杯となるまでの走行可能距離rを算出し、この走行可能距離rを走行経路によって割り出した満杯予測地点Dと積替地点Bとの距離s、及び現在地点Cと積替地点Bとの距離tを各々算出比較して積替時期を判定することを特徴とする収穫作業車の穀物積替判定装置。
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