以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1はコンバインの左側面図、図2はコンバインの平面図である。図1及び図2を参照して、コンバインの全体構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。図1及び図2に示す如く、走行部としての左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備える。走行機体1の前部には、穀稈を刈取りながら取込む6条刈り用の刈取装置3が、単動式の昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着される。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、該脱穀装置5から取出された穀粒を貯留する穀物タンク7とが横並び状に搭載される。なお、脱穀装置5が走行機体1の前進方向左側に、穀物タンク7が走行機体1の前進方向右側に配置される。走行機体1の後部に旋回可能な排出オーガ8が設けられ、穀物タンク7の内部の穀粒が、排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。刈取装置3の右側方で、穀物タンク7の前側方には、運転キャビン10が設けられている。
運転キャビン10内には、操縦ハンドル11と、運転座席12と、主変速レバー43と、副変速スイッチ44と、脱穀クラッチ及び刈取クラッチを入り切り操作する作業クラッチレバー45とを配置している。なお、運転キャビン10には、オペレータが搭乗するステップ50(図11参照)と、操縦ハンドル11を設けたハンドルコラム46と、前記各レバー43,45及びスイッチ44等を設けたレバーコラム47とが配置されている。運転座席12の下方の走行機体1には、動力源としてのディーゼルエンジン14が配置されている。
図1に示す如く、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にエンジン14の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24と、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持し、中間ローラ25によって走行クローラ2の非接地側を支持する。
図1、図2に示す如く、刈取装置3の刈取回動支点軸4aに連結した刈取フレーム221の下方には、圃場に植立した未刈り穀稈(穀稈)の株元を切断するバリカン式の刈刃装置222が設けられている。刈取フレーム221の前方には、圃場に植立した未刈り穀稈を引起す6条分の穀稈引起装置223が配置されている。穀稈引起装置223とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間には、刈刃装置222によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置224が配置される。なお、穀稈引起装置223の下部前方には、未刈り穀稈を分草する6条分の分草体225が突設されている。圃場内を移動しながら、刈取装置3によって圃場に植立した未刈り穀稈を連続的に刈取る。
次に、図1及び図2を参照して、脱穀装置5の構造を説明する。図1及び図2に示す如く、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴226と、扱胴226の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別盤227及び唐箕ファン228と、扱胴226の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴229と、揺動選別盤227の後部の排塵を排出する排塵ファン230を備えている。なお、刈取装置3から穀稈搬送装置224によって搬送された穀稈は、フィードチェン6に受継がれて、脱穀装置5に搬入されて扱胴226にて脱穀される。
図1に示す如く、揺動選別盤227の下方側には、揺動選別盤227にて選別された穀粒(一番物)を取出す一番コンベヤ231と、枝梗付き穀粒等の二番物を取出す二番コンベヤ232とが設けられている。揺動選別盤227は、扱胴226の下方に張設された受網237から漏下した脱穀物が、フィードパン238及びチャフシーブ239によって揺動選別(比重選別)されるように構成している。揺動選別盤227から落下した穀粒は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン228からの選別風によって除去され、一番コンベヤ231に落下する。一番コンベヤ231から取出された穀粒は、揚穀コンベヤ233を介して穀物タンク7に搬入され、穀物タンク7に収集される。
また、図1に示す如く、揺動選別盤227は、揺動選別によってチャフシーブ239から枝梗付き穀粒等の二番物を二番コンベヤ232に落下させるように構成している。チャフシーブ239の下方に落下する二番物を風選する選別ファン241を備える。チャフシーブ239から落下した二番物は、その穀粒中の粉塵及び藁屑が選別ファン241からの選別風によって除去され、二番コンベヤ232に落下する。二番コンベヤ232の終端部は、還元コンベヤ236を介して、フィードパン238の後部の上面側に連通接続され、二番物を揺動選別盤227の上面側に戻して再選別するように構成している。
一方、図1及び図2に示す如く、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン234と排藁カッタ235が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン234に受継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後部に設けられた排藁カッタ235にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出される。
次に、図3を参照して、コンバインの油圧回路構造について説明する。図3に示す如く、コンバインの油圧回路250は、上述した昇降用油圧シリンダ4と、排出オーガ8の籾投げ口9側を昇降させるオーガ昇降油圧シリンダ254と、走行機体1の左右端部を昇降させて走行機体1を左右に傾動させる左右の車高調節油圧シリンダ38と、走行機体1の前後部を昇降させて走行機体1を前後に傾動させる左右の前後傾斜用油圧シリンダ177と、二連構造の各作業ポンプ91a,91bとを備える。一方の作業ポンプ91aの吐出側に第1高圧油路257を接続する。他方の作業ポンプ91bの吐出側に第2高圧油路258を接続している。
第1高圧油路257には、昇降用油圧シリンダ4を作動する刈取昇降電磁弁260と、タンク油路用のアンロードリリーフ弁256を接続する。刈取装置3を比較的高速で昇降動させる刈取昇降電磁弁260と、刈取装置3を比較的低速で上昇させる刈取上昇電磁弁264と、刈取装置3が下降する側に昇降用油圧シリンダ4を比較的低速で作動する刈取下降電磁弁265が、昇降用油圧シリンダ4に接続されている。刈取昇降電磁弁260を切換える刈取装置3の昇降動とは別に、刈取上昇電磁弁264を切換えて刈取装置3を上昇させるように構成し、また刈取昇降電磁弁260による刈取装置3の上昇動を刈取上昇電磁弁264にて制限する一方、刈取下降電磁弁265を切換えて刈取装置3を下降させるように構成している。
第2高圧油路258には、左側の車高調節油圧シリンダ38を作動する左傾電磁弁261と、右側の車高調節油圧シリンダ38を作動する右傾電磁弁262と、左側の前後傾斜用油圧シリンダ177を作動する左側の前後傾動電磁弁266と、右側の前後傾斜用油圧シリンダ177を作動する右側の前後傾動電磁弁267と、オーガ昇降油圧シリンダ254を作動する穀粒排出電磁弁263とが接続されている。また、左傾電磁弁261と、右傾電磁弁262と、左側の前後傾動電磁弁266と、右側の前後傾動電磁弁267と、穀粒排出電磁弁263を、姿勢制御用電磁弁268を介して第2高圧油路258に接続している。車高調節油圧シリンダ38又は前後傾斜用油圧シリンダ177の作動に対し、オーガ昇降油圧シリンダ254の作動を、姿勢制御用電磁弁268にて優先するように構成している。なお、姿勢制御用電磁弁268にリリーフ弁269を並列に接続している。
次に、図4乃至図8を参照しながら、走行機体1の左右方向の傾斜角の調節構造について説明する。図4乃至図8に示す如く、走行機体1の下面側に設ける左右一対のローリング支点フレーム26と、左右一対の前側軸受体27と、左右一対の後側軸受体28を備える。走行機体1の下面側に固着されたローリング支点フレーム26の前端側に、左右一対の前側軸受体27を配置している。左右一対のローリング支点フレーム26の後端側に左右一対の後側軸受体28を配置している。左右の前側軸受体27に左右一対の前部ローリング支点軸29をそれぞれ貫通させ、左右の後側軸受体28に左右一対の後部ローリング支点軸30をそれぞれ貫通させている。なお、走行機体1の下面側に走行シャーシ1aを介して駆動スプロケット22(ミッションケース88)が配置されている。走行機体1の前部にミッションケース88の背面側が締結されている。
左右方向に延長させた左右一対の前部ローリング支点軸29の一端側には、上下方向に延長した左右一対の上側前部ローリングアーム31の基端側を一体的にそれぞれ固着している。左右一対の前部ローリング支点軸29の他端側には、前後方向に延長した左右一対の下側前部ローリングアーム33の基端側を一体的にそれぞれ固着している。即ち、左右一対の上側前部ローリングアーム31と、左右一対の下側前部ローリングアーム33とは、左右一対の前部ローリング支点軸29回りに一体的にそれぞれ回動する。また、下側前部ローリングアーム33の先端側に連結軸体40を介してトラックフレーム21の前部を連結している。
また、左右方向に延長させた後部ローリング支点軸30の一端側には、左右一対の上側後部ローリングアーム32の基端側を回動可能に被嵌させている。図6に示す如く、伸縮調節可能なターンバックル付きの左右一対の前後連結ローリングフレーム36を備える。長尺なロッド状の前後連結ローリングフレーム36は、走行機体1の上面よりも低位置で、走行機体1と平行に、前後方向に延長している。左右一対の上側前部ローリングアーム31の先端側に、軸体35を介して前後連結ローリングフレーム36の前端側を連結している。上側後部ローリングアーム32の上端側に、軸体37を介して前後連結ローリングフレーム36の後端側を連結している。
図4乃至図8に示す如く、走行機体1の左右方向の傾斜角度を変更させる左右一対の車高調節油圧シリンダ38を備える。走行機体1に左右一対のシリンダ支持ブラケット39を設ける。左右一対のシリンダ支持ブラケット39に基部軸体48を介して左右一対の車高調節油圧シリンダ38をそれぞれ連結させている。左右一対の上側後部ローリングアーム32の上端側に、先端側軸体42を介して左右一対の車高調節油圧シリンダ38のピストンロッド41をそれぞれ連結させている。
左右一対の後部ローリング支点軸30の他端側には、左右一対の下側後部ローリングアーム34の基端側を一体的にそれぞれ固着している。即ち、左右一対の後部ローリング支点軸30と、左右一対の下側後部ローリングアーム34とは、左右一対の後部ローリング支点軸30の軸線回りに一体的にそれぞれ回動するように構成している。また、下側後部ローリングアーム34の先端側に連結軸体174を介して従動リンク体175の一端側を連結する。従動リンク体175の他端側に連結軸体179を介してトラックフレーム21の後部を連結している。
図4乃至図8に示す如く、走行機体1の前後方向の傾斜角度を変更させる前後傾斜用油圧シリンダ177を備える。左右一対の後部ローリング支点軸30の一端側には、左右一対のピッチングアーム176の基端側が固着されている。左右一対のピッチングアーム176と、左右一対の下側後部ローリングアーム34とは、左右一対の後部ローリング支点軸30の軸線回りに一体的にそれぞれ回動するように構成している。また、左右一対の上側後部ローリングアーム32に連結軸体180を介して左右一対の前後傾斜用油圧シリンダ177をそれぞれ連結している。前後傾斜用油圧シリンダ177のピストンロッド178に、連結軸体181を介してピッチングアーム176の先端側を連結している。
図4、図5に示す如く、左右一対の車高調節油圧シリンダ38と、前後傾斜用油圧シリンダ177は、側面視又は平面視で、前後に一列状に配置されている。左右一対の車高調節油圧シリンダ38の作動によって走行機体1の左右方向の傾斜角度を変更する左右一対の前側のローリングリンク機構R1は、上側前部ローリングアーム(左右傾動アーム)31、上側後部ローリングアーム(左右傾動アーム)32、下側前部ローリングアーム(前側アーム)33、下側後部ローリングアーム(後側アーム)34、前後連結ローリングフレーム36、従動リンク体(ピッチングリンク)175を有する。車高調節油圧シリンダ38が作動したときに、上側前部ローリングアーム31と下側前部ローリングアーム33が前部ローリング支点軸29回りに一体的に回動すると同時に、上側後部ローリングアーム32、下側後部ローリングアーム34、ピッチングアーム176、前後傾斜用油圧シリンダ177が後部ローリング支点軸30回りに一体的に回動する。
即ち、図7に示す如く、車高調節油圧シリンダ38が作動したときに、トラックフレーム21に対して走行機体1の前後方向傾斜角度を維持しながら、走行機体1とトラックフレーム21の相対間隔を変化させる。左右の走行クローラ2の沈下量が変化して走行機体1が左右に傾動した場合、又はオペレータが走行機体1を左右に傾動させたい場合、車高調節油圧シリンダ38の自動制御又は手動制御によって走行機体1の左右方向傾斜角度を変化させ、走行機体1の左右方向の対地傾斜角度を設定角度(略水平姿勢)に保つことができる。
左右一対の前後傾斜用油圧シリンダ177の作動によって走行機体1の前後方向の傾斜角度を変更する左右一対の後側のピッチングリンク機構P1は、下側後部ローリングアーム(後側アーム)34、従動リンク体(ピッチングリンク)175、ピッチングアーム(前後傾動アーム)176を有する。前後傾斜用油圧シリンダ177が作動したときに、下側後部ローリングアーム34及びピッチングアーム176が後部ローリング支点軸30回りに一体的に回動して、従動リンク体175を介して前部ローリング支点軸29回りにトラックフレーム21を回動させる。
即ち、図8に示す如く、前後傾斜用油圧シリンダ177が作動したときに、走行機体1の左右方向の対地傾斜角度を維持しながら、トラックフレーム21に対して走行機体1の前後方向傾斜角度を変化させる。左右の走行クローラ2を移動させる走行路面が登り傾斜又は下り傾斜の斜面の場合、又は左右の走行クローラ2の前部(又は後部)の沈下量が変化して走行機体1が前後に傾動した場合、又はオペレータが走行機体1を前後に傾動させたい場合、前後傾斜用油圧シリンダ177の自動制御又は手動制御によって走行機体1の前後方向傾斜角度を変化させ、走行機体1の前後方向の対地傾斜角度を設定角度(略水平姿勢)に保つことができる。
なお、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25は、走行機体1から横向きに突出させたローラ軸25aに回転自在に軸支している。即ち、駆動スプロケット22と中間ローラ25間の走行クローラ2の非接地側は、車高調節油圧シリンダ38又は前後傾斜用油圧シリンダ177によって走行機体1の左右方向又は前後方向の傾斜角度が変更されたとしても、走行機体1の下面との間隔が常に略一定に維持される。
上記の構成により、図7に示す如く、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方を作動して、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方のピストンロッド41を進出させた場合、左右一対のトラックフレーム21いずれか一方又は両方が下動し、左右一対の走行クローラ2のいずれか一方又は両方の接地側を押し下げ、走行機体1の左側又は右側又は両方の車高を高くするように構成している。
また、図4に示す如く、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方を作動して、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方のピストンロッド41を退入させた場合、左右一対のトラックフレーム21いずれか一方又は両方が上動し、左右一対の走行クローラ2のいずれか一方又は両方の接地側を押し上げ、走行機体1の左側又は右側又は両方の車高を低くするように構成している。即ち、左右一対の車高調節油圧シリンダ38をそれぞれ作動させて、走行機体1に対して左右の走行クローラ2の接地面高さをそれぞれ変更することによって、走行機体1の左右方向の傾斜角が調節され、走行機体1が略水平(左右傾斜角0度)に支持されるように構成している。
図8に示す如く、車高が高いピストンロッド41進出状態(又は車高が低いピストンロッド41退入状態)で、前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させて、左右一対の前後傾斜用油圧シリンダ177のピストンロッド178をそれぞれ退入させた場合、左右一対のピッチングアーム176がそれぞれ作動して、左右一対の従動リンク体175が下方にそれぞれ押下げられ、左右一対のトラックフレーム21の両方の後端側が同時にそれぞれ下動する。
その結果、下側前部ローリングアーム33に対して下側後部ローリングアーム34の平行姿勢が変更され、左右一対の走行クローラ2の後部の接地側が押下げられ、走行機体1の後端側の車高が高くなり、走行機体1が前下がりに傾斜するように構成している。即ち、前部ローリング支点軸29回りに走行機体1の後端側を上動させて、走行機体1の後端側が前端側よりも高くなる前方傾斜姿勢(前下がり傾斜姿勢)に傾動させるように構成している。その結果、前上がりに傾斜した走行路面を移動するときに、走行機体1の前後方向の傾きを略水平に維持できる。
なお、左右一対の前後傾斜用油圧シリンダ177のピストンロッド178をそれぞれ退入させることによって、前記とは逆に、左右一対のトラックフレーム21の両方の後端側が同時にそれぞれ上動し、走行機体1の後端側の車高が低くなり、走行機体1が後下がりに傾斜することは云うまでもない。
図9は、縦軸にコンバインの車高(走行機体1の対地高さ)を縦軸とし、コンバイン機体の前後方向の傾斜角度(走行機体1の前後傾斜角度)を横軸とし、走行機体1の対地高さ(左右方向の傾斜制御)と走行機体1の前後傾斜角度(前後方向の傾斜制御)の関係(姿勢制御動作範囲)を示す線図である。図9に太い実線で示した範囲(変形6角形状の枠)内で、前後傾斜センサ381の検出結果等に基づき、車高調節油圧シリンダ38と前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させ、車高調節油圧シリンダ38の左右方向の傾斜制御動作を所定範囲に維持して、前後傾斜用油圧シリンダ177の前後方向の傾斜制御が実行されるように構成している。
例えば、車高調節油圧シリンダ38の左右方向の傾斜制御動作のうち、最高車高Dに対して約60パーセント(約3分の2)の車高Cと、最高車高Dに対して約10パーセント(約10分の1)の車高Aの間で、走行機体1の前後傾斜角度が0度から最大前傾角度F(例えば約5度)まで、前後傾斜用油圧シリンダ177の前方向の傾斜制御が実行され、走行機体1が前傾姿勢(前下り傾斜姿勢)にて支持されるように構成している。最高車高Dのときには、最大前傾角度Fに対して約60パーセント(約3分の2)の前傾角度F1以下の範囲で、前後傾斜用油圧シリンダ177の前方向の傾斜制御(前傾作動)が実行される。また、車高A以下のとき、又は車高C以上のときには、最大前傾角度F以下の範囲で、前後傾斜用油圧シリンダ177の前方向の傾斜制御が実行される。車高A以下の前傾作動規制エリアE1(斜線表示範囲)と、車高C以上の前傾作動規制エリアE3(斜線表示範囲)が形成される。車高C以下のとき、又は車高A以上のときには、走行機体1の前後傾斜角度が0度から最大前傾角度F(例えば約5度)の範囲で、前後傾斜用油圧シリンダ177の前方向の傾斜制御が実行される。
即ち、最高車高Dのときには、最大前傾角度Fに対して約60パーセント(約3分の2)の前傾角度F1以下に走行機体1の前傾作動が規制される。車高C以上の車高が高い状態では、最大前傾角度F以下に走行機体1の前傾作動が規制され、刈取装置3の前端側が低く支持されるのを防止できる。その結果、昇降用油圧シリンダ4によって刈取装置3が非作業位置(高位置)に上昇されている場合であっても、走行機体1を適正に前傾作動できる。例えば、圃場への出入やトラック荷台への積み降ろし等の作業において、走行機体1が大きく前下り傾斜した姿勢で移動しても、田面や路面に刈取装置3の前端側が衝突するのを防止できる。
一方、図9に示す如く、車高調節油圧シリンダ38の左右方向の傾斜制御動作のうち、車高が最高車高Dと、最高車高Dに対して約25パーセント(約4分の1)の車高Bとの間で、走行機体1の前後傾斜角度が0度から最大後傾角度R(例えば約3度)まで、前後傾斜用油圧シリンダ177の後方向の傾斜制御(後傾作動)が実行され、走行機体1が後傾姿勢(後下り傾斜姿勢)にて支持されるように構成している。また、車高B以下のときには、最大後傾角度R以下の範囲で前後傾斜用油圧シリンダ177の後方向の傾斜制御が実行される。車高B以下の後傾作動規制エリアE2(斜線表示範囲)が形成される。即ち、車高B(最高車高Dの約25パーセント)以上を維持しながら、最大後傾角度Rまで走行機体1を後傾できるから、昇降用油圧シリンダ4によって刈取装置3が非作業位置(高位置)に上昇されていても、走行機体1をスムーズに後傾作動させて、刈取装置3をさらに上昇でき、障害物に対して刈取装置3を上方に俊敏に回避させることができる。
また、車高C以上の高い車高のとき、又は車高A又は車高B以下の低い車高のとき、前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させる前に車高調節油圧シリンダ38が作動して、車高調節油圧シリンダ38の車高上昇(左右方向の傾斜)制御動作を優先して、走行機体1の車高を所定車高以上に維持してから、前後傾斜用油圧シリンダ177の前後方向の傾斜制御が実行できる。その結果、圃場又は畦等の土中に刈取装置3の前部が突入するのを防止できる。なお、最高車高Dの約25パーセント(約4分の1)以下の低い車高(車高A又は車高B以下)のときには、走行機体1の前傾作動が規制される車高に比べ、走行機体1の後傾作動が規制される車高が高くなる(車高A<車高B)。最大後傾角度R(例えば約3度)と、最大前傾角度Fに対して約60パーセント(約3分の1)の前傾角度F1とを略等しく形成している。即ち、最大前傾角度Fに対して約60パーセントの傾斜角度の大きさに最大後傾角度Rを形成している。
図9に示す如く、最大後傾角度Rに対して最大前傾角度Fを大きくすることによって、超湿田で走行クローラ2が大きく沈下し、走行機体1の車高を高くして刈取作業をしているときに、走行機体1の車高を下げて走行抵抗を増大させることなく、又は刈取装置3を下降させて刈刃装置222等を土中に突入させることなく、走行機体1を前傾させることによって、未刈り穀稈の株元を所定高さで刈刃装置222によって切断できる。
図4に示す如く、走行シャーシ1aに前側最下げストッパ185を固着する。下側前部ローリングアーム33の上面側に前側最下げストッパ185の一端側を延長させる。走行機体1の前側車高が最も低い状態(図4又は図6の状態)、即ち、走行機体1の前側とトラックフレーム21が最も接近したときに、下側前部ローリングアーム33の上面に前側最下げストッパ185の下面が当接して、走行機体1の前側が最下げ位置に支持される。下側前部ローリングアーム33と前側最下げストッパ185の当接によって、走行機体1の前側下面に走行クローラ2の前側上面が干渉するのを防止している。
また、後側軸受体28の下面に後側最下げストッパ186を固着する。トラックフレーム21に受止め体187を固着する。走行機体1の後側車高が最も低い状態(図4又は図6の状態)、即ち、走行機体1の後側とトラックフレーム21が最も接近したときに、受止め体187の上面に後側最下げストッパ186の下面が当接して、走行機体1の後側が最下げ位置に支持される。受止め体187と後側最下げストッパ186の当接によって、走行機体1の後側下面に走行クローラ2の後側上面が干渉するのを防止している。
次に、図10、図11を参照しながら、ローリングアクチュエータとしての車高調節油圧シリンダ38又はピッチングアクチュエータとしての前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させる傾斜姿勢手動操作用のスイッチ機構55と、該スイッチ機構55を操作する姿勢操作具としての姿勢操作レバー56について説明する。図10は、運転キャビン10の上面斜視の断面説明図である。図11は、運転キャビン10の要部の側面説明図である。図10、図11に示す如く、ハンドルコラム46の右側面から右側方に姿勢操作レバー56を突設させる。操舵操作具としての操縦ハンドル11の右下方側に姿勢操作レバー56が配置される。運転座席12に座乗したオペレータが左手で操縦ハンドル11を握り、オペレータが右手で姿勢操作レバー56の握り部56aを握り、姿勢操作レバー56を上下左右方向に傾倒可能に構成している。
図10、図11に示す如く、姿勢操作レバー56の基端部に傾斜姿勢手動操作用のスイッチ機構55を設ける。傾斜姿勢手動操作用のスイッチ機構55は、後述する左傾スイッチ61、右傾スイッチ62、前傾スイッチ63、後傾スイッチ64を有する(図12参照)。姿勢操作レバー56の上下前後方向の傾倒操作によって、左傾スイッチ61、右傾スイッチ62、前傾スイッチ63、後傾スイッチ64を選択的にオン作動させるように構成している。即ち、姿勢操作レバー56を手動操作することによって、走行機体1が左側又は右側又は前側又は後側に傾動して、走行機体1の傾斜姿勢が変更されるように構成している。
例えば、姿勢操作レバー56を上方向に傾倒操作することによって、左傾スイッチ61(左傾電磁弁261、右傾電磁弁262)がオン作動して、走行機体1を左側に傾ける。姿勢操作レバー56を下方向に傾倒操作することによって、右傾スイッチ62(左傾電磁弁261、右傾電磁弁262)がオン作動して、走行機体1を右側に傾ける。姿勢操作レバー56を前方向に傾倒操作することによって、前傾スイッチ63(前後傾動電磁弁266,267)がオン作動して、走行機体1を前側に傾ける。姿勢操作レバー56を後方向に傾倒操作することによって、後傾スイッチ64(前後傾動電磁弁266,267)がオン作動して、走行機体1を後側に傾ける。
図10、図11に示す如く、姿勢操作レバー56の握り部56aには、図示しないバネ力によって初期位置(出力オフの中立位置)に自動復帰する正逆転可能なダイヤル構造の回転操作体65を配置している。回転操作体65は、車高調節ポテンショメータ66を有する(図12参照)。オペレータが右手で回転操作体65を撮んで回動させているときに、走行機体1の車高が変化するように構成している。即ち、オペレータの手動操作によって回転操作体65を正回転(逆回転)させた場合、車高調節ポテンショメータ66の出力に基づき、左傾電磁弁261及び右傾電磁弁262がオン作動して、走行機体1を上昇(下降)させて、走行機体1の対地高さを高く(低く)する。一方、オペレータが右手を回転操作体65から離すことによって、回転操作体65が初期位置に戻り、そのときの対地高さに走行機体1が支持されるように構成している。
その結果、回転操作体65が手動操作されている間だけ、車高調節油圧シリンダ38が作動して、走行機体1を適正地上高に支持できる。例えば、本機(コンバイン)を運搬するトラックの荷台への積み下ろしや、本機の圃場への出入等において、走行機体1を大きく傾けて移動させる必要がある場合でも、本機が路面と接触して損傷するのを低減できる。また、走行機体1の傾斜姿勢が殆ど変化しないから、走行機体1の重心の移動を低減でき、本機の転倒なども簡単に防止できる。
次に、図12を参照しながら、コンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御と、前後方向の傾斜制御と、刈取装置3の昇降制御について説明する。図14は、コンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御手段、及び前後方向の傾斜制御手段、及び刈取装置3の昇降制御手段の機能ブロック図であり、マイクロコンピュータ等によって形成した作業コントローラ371を備える。作業コントローラ371は、制御プログラムを記憶したROMと各種データを記憶したRAMとを有する。
図12に示す如く、作業コントローラ371には、刈取装置3によって刈取った刈取穀稈を検出する作物センサ372と、刈取装置3の作動を検出する作業スイッチ373と、走行機体1の左右方向の傾斜角度を検出する振子式の左右傾斜センサ374と、走行機体1と左側のトラックフレーム21との相対間隔(車高)を検出するポテンショメータ形の左車高センサ375と、走行機体1と右側のトラックフレーム21との相対間隔(車高)を検出するポテンショメータ形の右車高センサ376と、走行機体1の左右方向の傾斜角度の基準値を初期設定する手動ダイヤル切換式ポテンショメータ形の左右傾斜設定器377が接続されている。
また、作業コントローラ371には、左傾電磁弁261と、右傾電磁弁262が接続されている。この構成により、左右傾斜センサ374の検出値と、左車高センサ375の検出値と、右車高センサ376の検出値とに基づき、左傾電磁弁261又は右傾電磁弁262を切換えて、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させ、走行機体1の左右方向の傾斜を修正して、走行機体1が左右向きに略水平になるように自動制御する。
さらに、作業コントローラ371には、走行機体1の前後方向の傾斜角度を検出する振子式の前後傾斜センサ381と、走行機体1の後部とトラックフレーム21の後端側との相対間隔(トラックフレーム21の前後方向の対本機傾斜角度)を検出するポテンショメータ形の本機傾斜センサ382と、走行機体1の前後方向の傾斜角度の基準値を初期設定する手動ダイヤル切換式ポテンショメータ形の前後傾斜設定器383と、前後傾動電磁弁266が接続されている。この構成により、前後傾斜センサ381の検出値と、本機傾斜センサ382の検出値と、前後傾斜設定器383の設定値とに基づき、前後傾動電磁弁266を切換えて、前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させ、走行機体1の前後方向の傾斜を修正して、走行機体1が前後向きに略水平になるように自動制御される。
作業コントローラ371の入力側には、左傾スイッチ61と、右傾スイッチ62と、前傾スイッチ63と、後傾スイッチ64と、車高調節ポテンショメータ66が接続されている。この構成により、姿勢操作レバー56の上下前後方向の傾倒操作、回転操作体65の正回転(逆回転)操作等の手動操作によって、車高調節油圧シリンダ38又は前後傾斜用油圧シリンダ177が作動し、オペレータが希望する傾斜姿勢に走行機体1を支持するように手動制御できる。
一方、図12に示す如く、作業コントローラ371には、走行クローラ2の回転速度(車速)を検出する車速センサ385と、刈取装置3の対地高さを検出するポテンショメータ形の刈取高さセンサ386と、刈取装置3の対地高さの基準値を初期設定する手動ダイヤル切換式ポテンショメータ形の刈取高さ設定器387と、刈取昇降電磁弁260が接続されている。この構成により、車速センサ385の検出値と、刈取高さセンサ386の検出値と、刈取高さ設定器387の設定値とに基づき、刈取昇降電磁弁260を切換えて、刈取上昇用油圧シリンダ4を作動させ、刈取装置3の対地高さを修正して、刈取装置3の穀稈刈取高さが略一定になるように自動制御する。
次に、図7乃至図9、図12に示す機能ブロック図、図13、図14に示すフローチャートを参照しながら、刈取装置3の穀稈刈取高さ制御態様、及びコンバイン(走行機体1)の左右方向及び前後方向の傾斜制御態様を説明する。図13のフローチャートに示す如く、エンジン14が始動された場合、作物センサ372値、左右傾斜センサ374値、左車高センサ375値、右車高センサ376値、左右傾斜設定器377値、前後傾斜センサ381値、本機傾斜センサ382値、前後傾斜設定器383値、車速センサ385値、刈取高さセンサ386値、刈取高さ設定器387値が読込まれる。作業スイッチ373がオンの刈取作業中、刈取高さ制御が実行される。また、作業スイッチ373がオン又はオフのいずれであっても、図14のフローチャートに示す左右傾斜制御と前後傾斜制御がそれぞれ実行される。
図13のフローチャートに示す如く、作業スイッチ373がオンの刈取作業中に、作物センサ372がオンになっていると、車速センサ385値と、刈取高さセンサ386値と、刈取高さ設定器387値に基づき、刈取装置3の穀稈刈取高さが低いと判断された場合、刈取昇降電磁弁260が切換り、刈取上昇用油圧シリンダ4を作動させて刈取装置3を上昇制御して、刈取装置3の対地高さを修正する。一方、刈取装置3の穀稈刈取高さが高いと判断された場合、刈取昇降電磁弁260が切換り、刈取上昇用油圧シリンダ4を作動させて刈取装置3を下降制御して、刈取装置3の対地高さを修正する。図13の刈取高さ制御によって、刈取高さ設定器387によって設定された刈取装置3の穀稈刈取高さを自動的に維持できる。
図14のフローチャートに示す如く、左右傾斜センサ374値と、左車高センサ375値と、右車高センサ376値と、左右傾斜設定器377値に基づき、走行機体1が左側に傾斜していると判断された場合は、左傾電磁弁261又は右傾電磁弁262が切換り、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させて、走行機体1の左側を上昇させるか、又は走行機体1の右側を下降させる。一方、走行機体1が右側に傾斜していると判断された場合は、左傾電磁弁261又は右傾電磁弁262が切換り、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させて、走行機体1の右側を上昇させるか、又は走行機体1の左側を下降させる。図14のコンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御によって、走行機体1の左右方向の傾斜角度が自動的に修正される。左右傾斜設定器377値に基づき、走行機体1の左右方向の傾斜姿勢を維持できる。なお、左右傾斜設定器377がオペレータによって操作された場合、左右傾斜設定器377によって設定された左右傾斜角度姿勢(対地水平姿勢)に走行機体1が手動操作にて支持される。
さらに、図14のフローチャートに示す如く、前後傾斜センサ381値と、本機傾斜センサ382値と、前後傾斜設定器383値に基づき、走行機体1が前側方に下り傾斜している前傾姿勢と判断された場合は、図9に太い実線の多角形枠にて示した車高範囲(前後傾斜角度の修正が可能な車高範囲)内のときに、前後傾動電磁弁266が切換り、左右の前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させて、前側に傾斜している走行機体1の後端側を下降させる後傾動作制御が実行される。即ち、図14のコンバイン(走行機体1)の後傾動作によって、前側に傾斜している走行機体1の前傾角度が自動的に修正される前方傾斜修正制御が実行される。前後傾斜設定器383値に、走行機体1の前後傾斜角度(対地水平姿勢)を一致させることができる。
また、前述の後傾動作制御において、目標の傾斜姿勢に至るまでに、トラックフレーム21に対して走行機体1が対走行部水平姿勢(平行な姿勢)になる場合、前記の後傾動作制御の途中で、トラックフレーム21(走行クローラ2)に対して走行機体1が水平姿勢になったときに、前記した後傾動作制御を一定時間だけ一旦停止させ、作業コントローラ371に接続したブザー390を鳴動させてオペレータに報知する。そして、前記一旦停止から一定時間が経過したときに、前記した後傾動作制御を自動的に再開させる。前記一旦停止とブザー390の鳴動によって、オペレータが走行機体1の対走行部水平姿勢を簡単に認識できる。
一方、図9の車高範囲(前後傾斜角度の修正が可能な車高範囲)内ではないとき、即ち、図9の車高範囲外(斜線にて表示した作動規制エリアE1、E2、E3)のときには、ブザー390を断続的に鳴動させてオペレータに報知しながら、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させて、走行機体1の右側又は左側を昇降させて、図9の車高範囲(前後傾斜角度の修正が可能な車高範囲)内に走行機体1の車高を変更させた後、前記した後傾動作制御が実行される。即ち、走行機体1の前傾角度を自動的に修正する前方傾斜修正制御が実行される。前後傾斜設定器383値に、走行機体1の前後傾斜角度(対地水平姿勢)を一致させることができる。
さらに、図14のフローチャートに示す如く、前後傾斜センサ381値と、本機傾斜センサ382値と、前後傾斜設定器383値に基づき、走行機体1が後側方に下り傾斜している後傾姿勢と判断された場合は、図9の車高範囲(前後傾斜角度の修正が可能な車高範囲)内のときに、前後傾動電磁弁266が切換り、左右の前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させて、後側に傾斜している走行機体1の後端側を上昇させる前傾動作制御が実行される。即ち、図14の走行機体1の前後方向の傾斜制御によって、後側に傾斜している走行機体1の前後方向の傾斜角度が自動的に修正される後方傾斜修正制御が実行される。前後傾斜設定器383値に、走行機体1の前後傾斜角度(対地水平姿勢)を一致させることができる。
また、前述の前傾動作制御において、目標の傾斜姿勢に至るまでに、トラックフレーム21に対して走行機体1が対走行部水平姿勢(平行な姿勢)になる場合、前記の前傾動作制御の途中で、トラックフレーム21(走行クローラ2)に対して走行機体1が水平姿勢になったときに、前記した前傾動作制御を一定時間だけ一旦停止させ、作業コントローラ371に接続したブザー390を鳴動させてオペレータに報知する。そして、前記一旦停止から一定時間が経過したときに、前記した前傾動作制御を自動的に再開させる。前記一旦停止とブザー390の鳴動によって、オペレータが走行機体1の対走行部水平姿勢を簡単に認識できる。
一方、図9の車高範囲(前後傾斜角度の修正が可能な車高範囲)内ではないとき、即ち、図9の車高範囲外(斜線にて表示した作動規制エリアE1、E2、E3)のときには、ブザー390を断続的に鳴動させてオペレータに報知しながら、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させて、走行機体1の右側又は左側を昇降させて、図9の車高範囲(前後傾斜角度の修正が可能な車高範囲)内に走行機体1の車高を変更させた後、前記した前傾動作制御が実行される。即ち、前後傾動電磁弁266が切換り、左右の前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させて、走行機体1の後端側を上昇させ、走行機体1の後傾角度を自動的に修正する後方傾斜修正制御が実行される。前後傾斜設定器383値に、走行機体1の前後傾斜角度(対地水平姿勢)を一致させることができる。
次に、図14のフローチャートに示す如く、姿勢操作レバー56又は回転操作体65が手動操作された場合、姿勢操作レバー56の上下前後方向の傾倒操作によって、走行機体1の左右方向の傾斜姿勢、又は走行機体1の前後方向の傾斜姿勢が変更される。姿勢操作レバー56が上方向に傾倒操作(左傾斜操作)された場合、走行機体1を左側に傾斜させる左傾制御が実行されるもので、姿勢操作レバー56の左傾斜操作によって、左右いずれか一方又は両方の車高調節油圧シリンダ38が作動して、走行機体1の右側に対して左側が低くなる姿勢に走行機体1が支持される。
また、姿勢操作レバー56が下方向に傾倒操作(右傾斜操作)された場合、走行機体1を右側に傾斜させる右傾制御が実行されるもので、姿勢操作レバー56の右傾斜操作によって、左右いずれか一方又は両方の車高調節油圧シリンダ38が作動して、走行機体1の左側に対して右側が低くなる姿勢に走行機体1が支持される。
また、姿勢操作レバー56が前方向に傾倒操作(前傾斜操作)された場合、走行機体1を前側に傾斜させる前傾制御が実行されるもので、姿勢操作レバー56の前傾斜操作によって、左右の前後傾斜用油圧シリンダ177が略同時に同量だけ同一方向に作動して、走行機体1の後側に対して前側が低くなる姿勢に走行機体1が支持される。
また、姿勢操作レバー56が後方向に傾倒操作(後傾斜操作)された場合、走行機体1を後側に傾斜させる後傾制御が実行されるもので、姿勢操作レバー56の後傾斜操作によって、左右の前後傾斜用油圧シリンダ177が略同時に同量だけ同一方向に作動して、走行機体1の前側に対して後側が低くなる姿勢に走行機体1が支持される。
姿勢操作レバー56が手動操作されることによって、姿勢操作レバー56の手動操作中、トラックフレーム21に対して走行機体1が対走行部水平姿勢(平行な姿勢)になる場合、前記の手動操作制御の途中で、トラックフレーム21(走行クローラ2)に対して走行機体1が水平姿勢になったときに、前記した手動操作制御を一定時間だけ一旦停止させ、作業コントローラ371に接続したブザー390を鳴動させてオペレータに報知する。そして、前記一旦停止から一定時間が経過したときに、姿勢操作レバー56が手動操作されている場合、前記した手動操作制御を自動的に再開させる。前記一旦停止とブザー390の鳴動によって、オペレータが走行機体1の対走行部水平姿勢を簡単に認識できる。
また、オペレータが右手で回転操作体65を撮んで、回転操作体65を手動操作にて回動させているときに、走行機体1の車高が変化する。即ち、オペレータの手動操作によって回転操作体65を正回転(逆回転)させた場合、車高調節ポテンショメータ66の出力に基づき、左傾電磁弁261及び右傾電磁弁262が略同時に同一方向にオン作動して、走行機体1を上昇(下降)させて、走行機体1の対地高さを高く(低く)する。その結果、走行機体1の左右及び前後の傾斜姿勢が一定に維持された状態で、オペレータが希望する高さにコンバインの車高が変更される。一方、オペレータが右手を回転操作体65から離すことによって、回転操作体65がバネ力にて初期位置に戻り、そのときの対地高さに走行機体1が支持される。コンバインを運搬するトラックの荷台への積み下ろしや、本機の圃場への出入等において、刈取装置3等が路面と接触して損傷するのを低減できる。また、歩み板などの急傾斜した走行路面であっても、コンバインの転倒などを予防しながら簡単に移動できる。
なお、前記姿勢操作レバー56を操作したときの車高調節油圧シリンダ38の作動速度(又は作動範囲)と、回転操作体65を操作したときの車高調節油圧シリンダ38の作動速度(又は作動範囲)とを、オペレータがそれぞれ初期設定することによって、姿勢操作レバー56を操作したときの車高調節油圧シリンダ38の作動遅れや、回転操作体65を操作したときの車高調節油圧シリンダ38の過敏動作(ハンチング動作)等を低減できる。オペレータのフィーリングに適応した手動制御速度によって車高調節油圧シリンダ38を作動させることができる。
図1、図6、図10、図11、図12に示す如く、左右の走行部2を有する走行機体1と、走行機体1の移動進路を変更する操舵操作具としての操縦ハンドル11と、走行機体1の左右方向の傾斜姿勢を変更するローリングアクチュエータとしての車高調節油圧シリンダ38と、走行機体の前後方向の傾斜姿勢を変更するピッチングアクチュエータとしての前後傾斜用油圧シリンダ177を備え、左右のトラックフレーム21に左右のリンク機構P1,R1を介して走行機体1を昇降可能に搭載し、走行機体1の左右方向の傾斜姿勢と、走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を変更可能に構成した走行車両において、車高調節油圧シリンダ38又は前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させる傾斜姿勢手動操作用のスイッチ機構55と、該スイッチ機構55を操作する姿勢操作具としての姿勢操作レバー56とを、操縦ハンドル11の近傍位置に配置している。したがって、車高調節油圧シリンダ38又は前後傾斜用油圧シリンダ177にスイッチ機構55を介して姿勢操作レバー56を簡単に連結できるものでありながら、オペレータが操縦ハンドル11を操作しながら姿勢操作レバー56を操作して、走行機体1を左右方向又は前後方向に傾動操作できる。例えば、田面が乱れた圃場の枕地旋回等でも、コンバインの刈取装置3等の対地作業機の接触損傷を低減できる。
図10、図11、図12に示す如く、姿勢操作レバー56の上下方向の手動操作によって車高調節油圧シリンダ38が作動する一方、姿勢操作レバー56の前後方向の手動操作によって前後傾斜用油圧シリンダ177が作動するように構成している。したがって、姿勢操作レバー56の操作方向と、走行機体1の姿勢が変化する方向とを一致させ、姿勢操作レバー56の操作によって、オペレータが体感する方向に走行機体1を傾動できる。例えば、オペレータが姿勢操作レバー56を十字方向(上下、前後)に操作して、車高調節油圧シリンダ38又は前後傾斜用油圧シリンダ177を択一的に作動できる。一方、オペレータが姿勢操作レバー56を放射方向(X方向)に操作して、車高調節油圧シリンダ38と前後傾斜用油圧シリンダ177の両方を同時に作動できる。即ち、走行機体1の姿勢を違和感なくスムーズに変更できる。走行機体1の傾動に対して俊敏に応答して、走行機体1の姿勢を修正できる。走行機体1の姿勢変更の操作フィーリングを向上できる。
図10、図11、図12に示す如く、姿勢操作レバー56の握り部56aに、初期位置に自動的に復帰する構造の回転操作体65を配置し、オペレータが回転操作体65を回動させているときに、車高調節油圧シリンダ38が作動して、走行機体1の車高が変化するように構成している。したがって、オペレータによって回転操作体65が操作されている間だけ、車高調節油圧シリンダ38が作動し、走行機体1の車高を高く(低く)して、走行機体1を適正地上高に支持できる。例えば、コンバインを運搬するトラックの荷台への積み下ろしや、本機の圃場への出入等において、走行機体1を大きく傾けて移動させる必要がある場合でも、本機が路面と接触して損傷するのを低減できる。その場合、走行機体1の傾斜姿勢を殆ど変化させないから、転倒なども簡単に防止できる。また、姿勢操作レバー56を操作したときの車高調節油圧シリンダ38の作動速度(又は作動範囲)等と、回転操作体65を操作したときの車高調節油圧シリンダ38の作動速度(又は作動範囲)等を異ならせて各別にそれぞれ設定できるから、車高調節油圧シリンダ38の作動遅れや、車高調節油圧シリンダ38の過敏動作(ハンチング動作)等を低減でき、車高調節油圧シリンダ38の制御機能を簡単に向上できる。
図12、図14に示す如く、姿勢操作レバー56の手動操作、又は車高調節油圧シリンダ38や前後傾斜用油圧シリンダ177の自動制御によって、走行機体1が対地水平姿勢に移行したときに、走行機体1の左右方向の傾斜姿勢の変更動作又は走行機体1の前後方向の傾斜姿勢の変更動作を一時的に停止させ、その停止状態がオペレータに報知されるように構成している。したがって、オペレータが希望する傾斜姿勢(予測する傾斜姿勢)から走行機体1の傾斜姿勢を大きく逸脱させることなく、車高調節油圧シリンダ38又は前後傾斜用油圧シリンダ177を制御できる。姿勢操作レバー56の手動操作によって、走行機体1が左右方向又は前後方向に過度に傾動されるのを防止できる。車高調節油圧シリンダ38や前後傾斜用油圧シリンダ177の手動制御機能、又はそれらの自動制御機能、又は姿勢操作レバー56の手動操作性等を簡単に向上できる。