JP3673878B2 - 床版防水材料、床版防水舗装構造体及び床版施工方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、硬化性、耐水性、接着性、低温可撓性に優れた道路橋、高架橋等の床版防水材料、床版防水舗装構造体及び施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート床版は、橋梁や高速道路等の耐久性向上を目的に防水施工を施されている。現在、床版の防水構造としてはシート系、塗膜系、舗装系の3種類がある。この内舗装系は他の2種類に比べ防水性能が劣るため施工例は少ない。
【0003】
シート系防水は、工場で製作された合成繊維不織布等に加熱溶融した特殊アスファルトを含浸させ、鉱物質粉末を散布して、厚み2mm程度、巾1m程度に成形したシートを床版に溶融または接着剤等で張り付ける工法である。
【0004】
シート防水床版構造は、床版および舗装との接着性、床版にクラックが発生した場合のクラック追従性に優れる等の長所を有する。しかし、一方短所としては作業がシート裏面をバーナーで溶融しながら貼るといった特殊な熟練作業が要求されるとか、あるいは溶融アスファルト製造時のアスファルト加熱による火気、火傷事故の懸念等がある。更に施工期間が、塗膜系より長い等の問題もある。
【0005】
また、施工場所は平面部のみではなく、形状的に立ち上がりを含んだ変化した部分、すなわち高架道路の場合、縁石や地覆あるいは排水梁などと舗装との境界部は路面の水が浸透し易く、シート防水構造の場合の大きな問題となる。シート防水の機能上の致命的な欠点は、シートを張り付けの時、溶融張り付け用アスファルトを均一に施工することが極めて困難なことである。すなわち、どうしても一部空気の巻き込みが生じる。空気を巻き込んだ場合、その場所に集中的にコンクリート中の水分が集まり、水蒸気によるブリスタリング現象を生じる。そして、繰り返しによりやがて舗装層にクラックが入り、剥離現象へとつながる。特に重交通路線や車両による遠心力や加速、制動に伴う大きなせん断力が働く曲線部や坂道でこうした問題が発生する。
【0006】
塗膜系防水床版構造としては、クロロプレンゴムなどの合成ゴムを揮発性溶剤に溶かした合成ゴム系(溶剤型)と変性エポキシ等のエポキシ樹脂系がある。合成ゴム系の防水は、クロロプレン等の主成分に無機フィラー、繊維、加硫剤、顔料などを添加し、揮発性溶剤を加えた高粘度の溶液が用いられる。一般に、不揮発分は30〜50%程度である。この合成ゴム塗膜防水材は、接着層上に3〜5回に分けて塗布され、溶剤の揮発によって乾燥後、加硫が進行し、厚さ0.4〜1.5mm程度の連続した防水層を形成する。この際使用する接着剤は防水材と同様の材料であるが、コンクリートへの浸透性を考慮して、揮発性溶剤を75〜90%と多く加えたゴム系溶剤型が用いられる。通常コンクリート上に1〜2回に分けて塗布する。以上が主流を占める塗膜系防水床版構造の施工法である。
【0007】
塗膜系防水床版構造は、被塗布物の形状変化に拘らず、塗布できるという長所を持っている。反面、欠点としては溶剤を飛散させて硬化塗膜を得る等、施工に時間がかかる。あるいは作業環境及び大気汚染の問題もある。
【0008】
また塗膜が薄く弱いために、ブリスタリング現象を生じ易いとか、舗装作業時に防水層を破損し易いという致命的な欠陥を有する。一方、非溶剤系塗膜防水構造として、エポキシ系防水材を用いるものもある。しかし、硬化時間が長く、樹脂に伸びが無く、コンクリートのクラック追従性に欠ける。合わせて、樹脂粘度が高く、作業性が悪い等の問題がある。
【0009】
一方、コンクリート建築物を基体とした防水被覆塗膜型構造体としては、特公昭52−25877公報に記載されているように、柔軟性のあるウレタン変性不飽和ポリエステル樹脂と繊維補強材とを組み合わせたFRP材を防水用被覆体とした構造体などが知られている。しかしながら、FRP被覆構造体は、FRPに使用される樹脂の性能によって、耐水性、耐熱性などに優れるものの、繊維補強材が混入される処から、材料の伸びが非常に小さくなると言う欠点がある。然るに、FRP被覆構造体はクラック追従性に劣るという欠点がある。また、繊維補強材として使用されるガラス繊維の取扱い上、含浸脱泡工程等の複雑な作業が必要であり、施工作業の熟練者を必要とする。
【0010】
又、出願人は、先に床版防水構造体に関し特開平1−131703号公報、特開平1−158101号公報で引張伸び率5〜200%のFRP防水層を提案している。しかしながら、この防水層は、低温可撓性が悪いためクラック追従性が不十分である欠点があった。
【0011】
このように従来技術に従う限り、各々の床版防水構造は、一長一短の有る物である。特に、駆体面が粗く、また交通遮断の時間が限定される補修用床版防水施工をする場合、より材料、施工法が限定されるのが実状である。
【0012】
従って、本発明は以下の課題を解決する床版防水材料、床版舗装構造体、施工方法を提供しようとするものである。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、防水層性能面からは、
1)耐水性の良いこと。
【0014】
2)低温可撓性に優れることで、床版のクラック追従性が良いこと。
3)床版層と舗装層とが防水層により強固に接着する。即ち、接着性に優れること。
【0015】
施工面からは、
1)硬化性に優れることにより、構造体の施工性、作業性の良いこと。
2)防水層施工後、速やかに舗装層を施工できること(交通遮断時間が短いこと)。
である。
【0016】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、上述したような発明が解決しようとする課題を解決するべく、鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0017】
即ち、本発明は、低温(−10℃)での引張伸び率が40%以上の樹脂硬化物となるラジカル硬化型樹脂であって、該ラジカル硬化型樹脂が、(a)数平均分子量500以上のポリオキシプロピレンジオール、ポリテトラメチレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンジオールから選ばれるポリエーテルポリオールを用いたエーテル結合含有ラジカル硬化型樹脂と (b) 重合性単量体からなることを特徴とする床版防水材料、好ましくはラジカル硬化型樹脂のの樹脂硬化物の引張強度が、低温(−10℃)で100Kgf/cm2以上であること、上から(A)舗装層、(B)前記の床版防水材料からなる防水層、(C)床版の構造からなることを特徴とする床版防水舗装構造体、防水層(B)の厚みが、0.2mm以上であること、床版(C)と舗装層(A)との間に前記の床版防水材料を用いることを特徴とする床版施工方法を提供しようとするものである。
【0018】
(構成)
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明の舗装層(A)は、道路舗装に用いられるアスファルトに骨材を混ぜたアスファルト系舗装材を加熱150〜260℃、好ましくは150〜180℃で混合し、これを動力ローラーで転圧して成形される。アスファルトは、例えばレーキアスファルト、ロックアスファルト、アスファルタイト等の天然アスファルト、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト等の石油アスファルト、セミブローンアスファルト、硬質アスファルト、これらに熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ゴム等を入れて改質されたアスファルトも含むものである。
【0020】
その骨材としては、好ましくは粒径5〜30mm程度の砕石、粒径0.01〜5mm程度の小石や砂、例えば玉砕、砂利、スラグ、砂等である。舗装層(A)の厚さは、通常3〜10cm程度、好ましくは4〜6cm程度である。舗装層(A)は、さらに表面にシールコート層としてストレートアスファルトを施工してもよい。
【0021】
基体である床版(C)は、例えば、セメントコンクリート、アスファルトコンクリート、モルタルコンクリート、レジンコンクリート、透水コンクリート、
ALC板、PC板、金属(鋼材)などの単独または組み合わせで構成された物で、コンクリートの場合通常鉄筋を含むもので、道路、橋、高架道・橋等の床に用いられるものである。その形状はいずれのものでもよく、構造物の表面であれば曲面、延長面、平面または傾斜面などのいづれでもよい。通常その表面は、必要に応じて下地処理とか、あるいはプライマーで処理などを行うのがよい。更に既設の床版防水構造体の内、舗装層をも有する既設の構造体、もしくは舗装層を剥したさらには舗装層と既設防水層を剥した構造体をも、ここでの床版に含めるものである。
【0022】
本発明の床版防水材料及び防水層(B)であるラジカル硬化型樹脂としては、エーテル結合含有柔軟性ラジカル硬化型樹脂(a)と重合性単量体(b)とからなる組成であり、好ましくは不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂などが挙げられる。その樹脂硬化物の引張り伸率(JIS K 6301)が、低温(−10℃)において40%以上である。更に、−10℃での樹脂硬化物の引張強度(JIS K 6301)は、好ましくは100Kgf/cm2以上、より好ましくは150Kgf/cm2以上である。引張伸び率が40%より小さいと、低温可撓性に劣り基体である床版との間に亀裂または剥離を発生させ、クラック追従性に劣り防水性が好ましくない。引張強度が100Kgf/cm2より小さいと亀裂発生時における耐性に劣り、クラッツク追従性が不十分となり防水性が不十分となる。
【0023】
使用する樹脂の粘度は、好ましくは1〜30ポイズ、より好ましくは2〜20ポイズである。また、該防水層(B)の厚みは、自由に設定できるが好ましくは0.2mm以上、より好ましくは1〜3mm程度である。
【0024】
上記の不飽和ポリエステル樹脂とは、α,β−不飽和二塩基酸又はその酸無水物と芳香族飽和二塩基酸またはその酸無水物と、グリコール類の重縮合によって製造され、場合によって酸成分として脂肪族あるいは脂肪族飽和二塩基酸を併用して製造される軟質不飽和ポリエステル、好ましくはエーテルグリコールを使用する不飽和ポリエーテルエステル樹脂が挙げられる。
【0025】
上記のα,β−不飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロルマレイン酸及びこれらのエステル等があり、芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸及びこれらのエステル等があり、脂肪族或いは脂環族飽和二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、グルタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びこれらのエステル等があり、それぞれ単独或いは併用して使用される。
【0026】
グリコール類としては、例えばエステルグリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA,エチレングリコールカーボネート、2,2−ジ−(4−ヒドロキシプロポキシジフェニル)プロパン等が挙げられる。これらの単独或いは併用して使用されるが、そのほかにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等付加物のポリエーテルグリコールも好ましく使用できる。また、グリコール類と酸成分の一部としてポリエチレンテレフタレート等の重縮合物も使用できる。
【0027】
上記ビニルエステル樹脂には、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂とエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の2種類がある。その一つであるポリエステル(メタ)アクリレート樹脂とは、好ましくは1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリル酸エステル基を含有する飽和もしくは不飽和ポリエーテルエステルである。
【0028】
他のひとつのエポキシ(メタ)アクリレート樹脂とは、ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂単独又はビスフェノールタイプのエポキシ樹脂とノボラックタイプのエポキシ樹脂とを混合した樹脂であって、その平均エポキシ当量が、好ましくは150から450の範囲にあるエポキシ樹脂と不飽和一塩基酸とをエステル化触媒の存在下で反応して得られるエポキシビニルエステル樹脂をいう。
【0029】
さらに、ビニルエステル樹脂の製法において、低分子量のビスフェノール型エポキシとビスフェノールAを反応させてエポキシオリゴマーを合成したのち、不飽和一塩基酸を反応させてることもでき、その不飽和一塩基酸の一部をジカルボン酸化合物(アジピン酸、セバチン酸、ダイマー酸など)や相当する末端カルボキシル液状ゴム(液状ニトリルゴムなど)と反応させることもできる。また、ビニルエステル樹脂の水酸基とイソシアネート化合物またはウレタンプレポリマーを反応させるともできる。これら変性ビニルエーテルエステル樹脂は、密着性、靱性、耐薬品性を改良する効果がある。
【0030】
更にウレタンアクリレート樹脂とは、例えばポリイソシアネートとポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール及びヒドロキシアルキルアクリレート等のポリオールとを反応させて得られるものである。好ましくはエーテル結合含有ウレタンアクリレート樹脂である。
【0031】
ここでいうポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオールとは、数平均分子量500以上のもので、好ましくは700〜3000のもので、ポリエーテルポリオールとしてはポリオキシプロピレンジオール(以下PPGと略す)、ポリテトラメチレングリコールエーテル(以下PTMGと略す)、ポリオキシエチレンジオールから選ばれる。同様にポリエステルポリオールは飽和二塩基酸またはその酸無水物と、グリコール類の重縮合によって製造され、場合によって酸成分として芳香族並びに脂肪族あるいは脂肪族飽和二塩基酸を併用して製造された飽和ポリエステルが挙げられる。アクリルポリオールとは、アクリロイル基を有する重合性単量体(例えばアクリ酸メチル)ならびに共重合可能なエチレン化合物(例えばスチレン、酢酸ビニル)、または共役ジエン化合物(例えばブタジエン)と水酸基を含有するアクリル系重合性単量体(例えば2−ヒドロキシメタアクリレート)、及び他のアクリル系重合性単量体(例えばペンタエリスリトールトリアリルエーテル)から反応して得られた両末端または側鎖に水酸基を有するアクリル系重合体である。かかる反応は、ラジカル重合開始剤の存在下、通常のアクリル重合物の製造方法を用いて得ることができる。
【0032】
芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸及びこれらのエステル等があり、脂肪族或いは脂環族飽和二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、グルタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びこれらのエステル等があり、それぞれ単独或いは併用して使用される。
【0033】
グリコール類としては、例えばエステルグリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA,エチレングリコールカーボネート、2,2−ジ−(4−ヒドロキシプロポキシジフェニル)プロパン等が挙げられ、単独或いは併用して使用されるが、そのほかにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の付加物も同様に使用できる。また、グリコール類と酸成分の一部としてポリエチレンテレフタレート等の重縮合物も使用できる。
【0034】
ポリイソシアネートとしては、例えば2,4−トリレンジイソシアネートと及びその異性体または異性体の混合物(以下TDIと略す)、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、バーノックD−750、クリスボンNX(大日本インキ化学工業(株)製品)、デスモジュールL(住友バイエル社製品)、コロネートL(日本ポリウレタン社製品)、タケネートD102(武田薬品社製品)等が挙げられるが、特にTDIが好ましく用いられる。
【0035】
ヒドロキシアルキルアクリレートとしては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等が挙げられる。
【0036】
本発明のウレタンアクリレート樹脂には、硬化時の嫌気性改良のためアリルエーテル基をポリマー中に導入することも好ましい。この場合、合成上好ましいのは水酸基含有アリルエーテル化合物を用いるものである。水酸基含有アリルエーテル化合物としては、公知慣用のものが使用できるが、中でも代表的なものにはエチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテ、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールネリアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等の多価アルコール類のアリルエーテル化合物等が挙げられ、水酸基を1個有するアリルエーテル化合物が好ましい。
【0037】
さらに、上記ラジカル硬化性樹脂には、硬化時の嫌気性を改良するため、乾性油もしくはそれらの脂肪酸化合物を用いた空乾性付与型重合体と重合性不飽和単量体を含む樹脂組成物を併用しても良い。
【0038】
本発明の重合性単量体(b)とは、エチレン性不飽和単量体で、ラジカル硬化型樹脂(a)と架橋反応可能な不飽和モノマーあるいは不飽和オリゴマー等が挙げられ、特に好ましくはアクリロイル基を有するモノマー又はオリゴマーであり、(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好ましい。アクリロイル基を有しないモノマーを使用しその量が大きくなった場合、ビニルエステル樹脂との共重合性が悪くなり硬化時間が長くなる欠点が発生する。アクリロイル基を有するこれらのモノマーの具体的な例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸2−ハイドロキシエチル、アクリル酸2−ハイドロキシプロピル、アクリル酸β−エトキシエチル、アクリル酸2−シアノエチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチル、メタアクリル酸ヘキシル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ラウリル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸2−ハイドロキシエチル、メタアクリル酸2−ハイドロキシプロピル、フェニルカルビトールアクリレート、ノニルフェニルカルビトールアクリレート、ノニフェノキシプロピルアクリレート、N−ビニルピロリドン、ポリカプロラクトンアクリレート、アクリロイルオキシエチルフタレート、アクリロイルオキシサクシネート、更に樹脂硬化物の硬化性(表面乾燥性)を向上させるジシクロペンタンジエン、シリシクロデカン、トリアジンの各誘導体例えばジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリシクロデカニルメタアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌルアクリレート等が挙げられる。
【0039】
架橋反応時の共重合性は少し劣るが、これ以外のビニルモノマーを硬化性を損なわない範囲で併用してもよい。例えば、スチレン、酢酸ビニル、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテトラブロムフタレート等のアリルモノマー類;アクリルニトリル、グリシジルメタクリレート、n−メチロールアクリルアミド−ブチルエーテル、n−メチロールアクリルアミド、アクリルアミド等の硬質モノマー類が挙げられる。
【0040】
また、エチレン性不飽和単量体としては、一分子中に少なくとも2個の重合性二重結合を有する化合物も使用可能であり、硬化物表面の耐薬品性等を向上される目的で使用される。この一分子中に少なくとも2個の重合性二重結合を有する化合物、即ち多官能不飽和モノマーは、好ましくは、多官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーであり、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートのようなアルカンジオールジ−(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン−グリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルフマレート等が挙げられ、これらは単独で、又は2種以上の併用で用いられる。
【0041】
さらに、本発明の(メタ)アクリロイル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、空乾性を有する重合性不飽和モノマーを用いることもでき、例えばジシクロペンタジエン、トリシクロデカン等のアクリル酸誘導体、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、トリシクロ〔5-2-1-02,6〕デカニルアクリレート等を挙げることができ後述する乾性油、エポキシ反応性希釈剤等も使用できる。
【0042】
本発明の樹脂組成物には、樹脂硬化物の空気硬化性を改良する目的と、硬化収縮を低減する目的で、熱可塑性樹脂を添加することができる。熱可塑性樹脂の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸の低級アルキルエステル類、スチレン、塩化ビニル、酢酸ビニルなどの単量体の単独重合体又は共重合体類、前記ビニル単量体の少なくとも1種と、ラウリルメタクリレート、イソビニルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ヒドロキシアルキルアクリレート又はメタクリレート、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、セチルステアリルメタクリレートよりなる重合体の少なくとも1種の共重合体などのほか、セルロースアセテートブチレート及びセルロースアセテートプロピオネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、飽和ポリエステル等を挙げることができる。その添加量は、樹脂組成物100重量部に対して0〜50重量部が好ましく、0〜35重量部が特に好ましい。
【0043】
本発明のラジカル硬化型樹脂成分に、必要に応じてより乾燥性を向上させる目的でパラフィン及び/又はワックス類を併用してもよい。
【0044】
本発明で用いられるパラフィン及び/又はワックスとしては、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスやステアリン酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸等が挙げられるが、好ましくはパラフィンワックスが用いられる。このパラフィン及び/又はワックス塗膜表面における硬化反応中の空気しゃ断作用、耐汚れ性の向上を目的に添加される。添加量としては樹脂成分100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.2〜2重量部である。
【0045】
本発明のラジカル硬化型樹脂組成物には、硬化剤が使用され、好ましくは、有機過酸化物が挙げられる。具体的にはジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等の公知のものが使用され、混練条件、養生温度等で適宜選択される。
【0046】
添加量は、通常使用されている量であり、好ましくは、樹脂組成物100重量部に対して0.01〜4重量部である。上記硬化剤は、組合わせて使用されても良い。
【0047】
また、硬化促進剤、すなわち硬化剤の有機過酸化物をレドックス反応によって分解し、活性ラジカルの発生を容易にする作用のある物質は、例えばコバルト系、バナジウム系、マンガン系等の金属石鹸類、第3級アミン類、第4級アンモニウム塩、メルカプタン類等がある。
【0048】
本発明の樹脂組成物には、上記添加剤以外に充填剤、補強材、骨材、顔料、染料等を本発明の効果を損なわない範囲で添加しても良い。
【0049】
充填材としては、炭酸カルシウム粉、クレー、アルミナ粉、硅石粉、タルク、硫酸バリウム、シリカパウダー、ガラス粉、ガラスビーズ、マイカ、水酸化アルミニウム、セルロース糸、硅砂、川砂、寒水石、大理石粉など公知のものが挙げられる。
【0050】
補強材とは、好ましくは繊維強化材であるが本発明の引張伸び率が損なわれるようであれば用いない。繊維強化材とは、例えばガラス繊維、アミド、アラミド、ビニロン、ポリエステル、フェノール等の有機繊維、カーボン繊維、金属繊維、セラミック繊維或いはこれらを組合わせて用いられる。施工性、経済性を考慮した場合、好ましいのはガラス繊維、有機繊維である。また、繊維の形態は、平織り、朱子織り、不織布、マット状等があるが、施工法、厚み保持等より不織布、マット状が好ましい。また、ガラスロービングを20〜100mmにカットしてチョップドストランドにして使用することも可能である。
【0051】
本発明の床版(C)と防水層(B)とを強固に接着させるためにプライマーを用いることは有用であり、例えば一液湿気硬化型ウレタン・プライマー、ビスフェノールA型エポキシ/ポリアミン系プライマー、不飽和ポリエステル樹脂系プライマー、アクリルシラップ系プライマー等のコンクリート含浸型の低粘度品(粘度300cp以下)を用いることもできる。
【0052】
プライマーの塗布量は、溶液で50〜500g/cm2、好ましくは100〜200g/cm2 である。塗布する手段としては、ハケ、ロール、スプレイガン等を用いることができる。
【0053】
さらに、本発明の防水層(B)と舗装層(A)との接着性を強固にするために、タックコート層を設けることもできる。タックコート剤の形状・種類は、液状、粉状粉状、粒状、シート・フィルム状、いづれでもよく、前記両層の接着性を向上させる作用のあるものであれば材質を問わない。材質としては、樹脂、ゴム、アスファルト等からなる固体状のもの、ならびに石油アスファルト、カットバックアスファルト、ゴムアスファルト、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、芳香族炭化水素樹脂、クマロンインデン樹脂、タールピッチ、キシレン樹脂、無水タール等が挙げられる。
【0054】
タックコート層の形成は、液状であれば、ハケ、ロール、スプレイ等で塗布すれば良いし、粉状・粒状であれば均一に散布すれば良く、シート・フィルム状であれば防水層(B)上に敷設することができる。また、固体のタックコート剤を加熱溶融し液状化して防水層(B)上に供することもできる。
【0055】
本発明の施工方法としては、床版基体(C)上に直接、またはプライマー層を介して、(B)低温(−10℃)での引張伸び率が10%以上であるラジカル硬化型樹脂防水層を設け、次いで(A)舗装層を設けることからなる床版防水舗装構造体の施工法であるし、又は、床版上に直接、または接着剤層を介して、(B)低温(−10℃)での引張伸び率が10%以上であるラジカル硬化型樹脂防水層を設け、次いで(A)舗装層を設けることからなる床版防水舗装構造体の施工法である。
【0056】
更には、既設基体上の既設床版層または舗装層をかかる床版層(C)として、その上に、直接に、またはプライマーまたは接着剤層を介して、それぞれ(A)舗装層と、(B)低温(−10℃)での伸び率が10%以上であるラジカル硬化型樹脂防水層の構造からなる床版防水舗装構造体を提供できる。
【0057】
【実施例】
以下に、本発明を実施例と比較例で詳細に説明するが、文中「部」、「%」は特に断わりのない限り重量基準である。
【0058】
合成例1〔ウレタンアクリレート(試料A)の調整〕
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び環流冷却器を備えた1リットルの四つ口フラスコに数平均分子量1000のプロピレングライコール(PPGと略す)500gとトリレンジイソシアネート(TDIと略す)174gを仕込み、窒素気流下80℃で4時間反応させた。NCO当量が600とほぼ理論当量値となったので、50℃まで冷却した。空気気流下、ハイドロキノン0.07gを加え、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMAと略す)130gを加え、90℃で5時間反応させた。NCO%が0.1%以下となった時点で、ターシャリーブチルカテコール(TBCと略す)0.07g添加し、ポリエーテルウレタンアクリレート樹脂組成物を得た。これをスチレン345gに希釈溶解させ、不揮発分70%のウレタンアクリレート(試料A)とした。
【0059】
合成例2〔ウレタンアクリレート(試料B)の調整〕
上記合成例1と同様にして、数平均分子量1000のポリテトラメチレングライコール(PTMGと略す)500g、TDI174g、HEMA130gを用いてポリエーテルウレタンアクリレート樹脂組成物を合成した。得られた樹脂組成物をメチルメタアクリレート(MMAと略す)345gに希釈溶解し、不揮発分70%のウレタンアクリレート(試料B)とした。
【0060】
合成例3〔ウレタンアクリレート(試料C)の調整〕
上記合成例1、2と同様にして、数平均分子量2000のポリテトラメチレングライコール(PTMGと略す)500g、TDI87g、HEMA65gを用いてポリエーテルウレタンアクリレート樹脂組成物を合成した。得られた樹脂組成物をメチルメタアクリレート(MMAと略す)300gとn−ブチルアクリレート(n−BAと略す)50gに希釈溶解し、不揮発分65%のウレタンアクリレート(試料C)とした。
【0061】
合成例4〔変性ビニルエーテルエステル(試料D)の調整〕
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び環流冷却器を備えた2リットルの四つ口フラスコに数平均分子量700のPPG700gとセバシン酸101gを仕込み、窒素気流下200℃で7時間反応させた。その後、130℃まで冷却し、空気気流下、ハイドロキノン 0.05gを加え、グリシジルメタアクリレート(GMAと略す)142gを加え、130℃で5時間反応させた。ソリッド酸価が %以下となった時点で、ターシャリーブチルカテコール(TBCと略す)0.1g添加し、末端アクリレートを有する変性ビニルエーテルエステル樹脂組成物を得た。これをMMA260gとn−BA125gに希釈溶解させ、不揮発分70%の変性ビニルエーテルエステル(試料D)とした。
【0062】
合成例5〔変性不飽和ポリエーテルエステル(試料E)の調整〕
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口及び環流冷却器を備えた1リットルの四つ口フラスコに数平均分子量1000のPPG800g、プロピレングライコール(PGと略す)15.2g、フマル酸116gを仕込み、常法に従って窒素気流下200℃で10時間反応させた。その後ハイドロキノン0.04g、ターシャリーブチルカテコール(TBCと略す)0.08g添加し不飽和二重結合を有する変性不飽和ポリエーテルエステル樹脂組成物を得た。これをスチレン(SMと略す)203gとn−BA270gに希釈溶解させ、不揮発分65%の変性ビニルエーテルエステル(試料E)とした。
【0063】
比較合成例1〔ウレタンアクリレート(試料F)の調整〕
上記合成例1と同様にして、数平均分子量400のPPG400g、TDI348g、HEMA260gを用いてポリエーテルウレタンアクリレート樹脂組成物を合成した。得られた樹脂組成物をメチルメタアクリレート(MMAと略す)428gに希釈溶解し、不揮発分70%のウレタンアクリレート(試料F)とした。
【0064】
比較合成例2〔ビニルエステル(試料G)の調整〕
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び環流冷却器を備えた5リットルの四つ口フラスコにビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって得られたエポキシ当量470なるエポキシ樹脂2300gとメタクリル酸430gを仕込み、ハイドロキノン0.4gおよびトリエチルアミン5.4gを加え、空気気流下120℃まで昇温し、120℃で9時間反応させた。ソリッド酸価が5.2の液状ビニルエステルを得た。ターシャリーブチルカテコール(TBCと略す)0.1g添加し、これをSM1820gに希釈溶解させ、不揮発分60%のビニルエステル(試料G)とした。
【0065】
比較合成例3〔不飽和ポリエステル(試料H)の調整〕
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口及び環流冷却器を備えた1リットルの四つ口フラスコにトリエチレングライコール235g、ジエチレングライコール80g、無水フタル酸300gと無水マレイン酸36gを仕込み、常法に従って窒素気流下195℃で30時間反応させ、ソリッド酸価23なる不飽和ポリエステル樹脂を得た。その後ハイドロキノン 0.05g、TBC 0.1g添加し、SM 260gに希釈溶解させ、不揮発分55%の不飽和ポリエステル(試料H)とした。
【0066】
<ゲル化時間の測定法>
ラジカル硬化性樹脂100PHR に対し、BPOペースト(ベンゾイルパーオキサイド50%)2PHR 、6%ナフテン酸コバルト0.4PHR、DMA(ジメチルアニリン)0.5PHRをビーカーに採取し、25℃恒温水槽中でゲル化するまでの時間を測定した。
【0067】
<硬化性試験法>
0.5mmの塗膜を20℃室温のガラス板上にてアプリケーターを用いて作成し、表面乾燥性について指触試験を実施した。評価方法は脱脂綿約2〜3cm3 を塗膜表面に押しつけても、脱脂綿が粘着によって塗膜表面に残らなくなるまでの時間を測定した。配合組成は次の通りである。
【0068】
樹 脂 100 PHR
DMA 0.1 PHR
50%BPO 2.0 PHR
8%オクテン酸コバルト 0.4 PHR
【0069】
<強度試験測定法>
注型板より試験体を作成し、JIS K 6301(加硫ゴム物理試験方法)の引張り試験に準拠し、1号ダンベルを用い、引っ張り速度50mm/minにて測定した。測定温度は20℃で常温物性を、−10℃で低温物性を評価した。
【0070】
<低温可撓性試験測定法>
コンクリート床版にクラックが生じた場合、低温可撓性の悪い防水層は低温時にコンクリート床版のクラックに追従できず、割れを生じることがある。これを調べる目的として、コンクリート床版防水工設計施工指針(案)・同解説(阪神高速道路公団、日本材料学会)の低温可撓性試験に準拠して測定した。
【0071】
<耐水性接着試験測定法>
コンクリート床版防水工設計施工指針(案)・同解説(阪神高速道路公団、日本材料学会)の耐水性試験に準拠して、30×30×10cmのコンクリート舗道版に防水層を施工し、その試験体を40℃温水に1ヶ月浸せきし取り出し、外観を目視観察した。観察結果は、以下の通り評価判定した。
【0072】
○:異常なし
△:白濁または微小ブリスター発生
×:ブリスター、膨れ発生
【0073】
また、浸漬前と水浸漬7日間後の供試体を室温にて、エポキシ系速硬化接着剤で以て、アタッチメントを接着し、室温1日養生後、建研式単軸引っ張り接着力を測定した。コンクリート床版に水が浸透した場合、水の影響によって接着力が低下する事が考えられ、一般に初期値に対する接着強度保持率が50%以上で有ることが好ましく、品質基準として設けられる。
【0074】
実施例1〜5、比較例1〜3
前記の試験(引張伸び率、引張り強度、ゲル化時間、硬化性、低温可撓性、耐水性接着強度及び浸漬後接着性保持率)を行ない、表1と表2に評価結果を示した。
【0075】
実施例6
旭コンクリート(株)製JIS規格歩道用コンクリート平板(300x300x60mm)の表面を#60でサンディング、その上にプライマーPD(一液湿気硬化型ウレタン、大日本インキ化学工業株式会社製)を0.2kgf/m2塗布乾燥させ、その上に所定の硬化剤を配合した実施例3のラジカル硬化型樹脂を厚み2mmに塗布し、防水層とした。さらに防水層が硬化したのち、タックコートとしてカチコートSR(アスファルト乳剤、日歴化学製)を0.3kg/m2塗布乾燥させて後、加熱アスファルト混合物を打設した。加熱アスファルト混合物はアスファルトミキサーで混合し、密粒度アスコン(13mmTop)を用いた。舗設温度を180℃として、ローラコンパクタにより転圧し、厚さ40mmに締め固めた。
【0076】
本発明の床版防水構造体は、硬化時間が短く、次工程にすぐ取りかかれるので作業性に優れる。また、FRP防水の様な繊維補強材としてのガラス繊維マットの敷設や樹脂の含浸工程がなく、樹脂層単独の防水層であるため極めて簡単な作業であった。
【0077】
【表1】
表−1
【0078】
【表2】
【0079】
【発明の効果】
本発明は、低温での引張伸び率10%以上ののラジカル硬化型樹脂からなる床版防水材料の優れた硬化性、低温可撓性、耐水性、接着性により、コンクリート床版などの基体にクラックが生じても、防水被覆材には亀裂が生ぜず、かつ、基体の変形に追従する、いわゆるクラック追従性に優れる床版防水舗装構造体を提供することができる。
【0080】
また、防水層の優れた低温可撓性は、極めて厳しい環境条件下においても、コンクリート床版の亀裂に追従性し、防水性能を保つことによって、コンクリートの劣化や床版内部の鉄筋の腐食を阻止し、優れた耐久性を有する道路橋、高架橋、建築物等の床防水舗装構造体を提供することが可能となる。
【0081】
さらに、この床版防水材を使用することにより、施工時に塗布するだけで良いことから、施工性を改善し、作業性を容易にし、単純化かつ短期施工せしめることができる。従って、従来のアスファルトシート系、合成ゴムまたはエポキシ塗膜系、舗装系の床版防水施工方法に見られる問題点を解決する施工方法が提供できる。
Claims (5)
- 低温(−10℃)での引張伸び率が40%以上の樹脂硬化物となるラジカル硬化型樹脂であって、該ラジカル硬化型樹脂が、(a)数平均分子量500以上のポリオキシプロピレンジオール、ポリテトラメチレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンジオールから選ばれるポリエーテルポリオールを用いたエーテル結合含有ラジカル硬化型樹脂と (b) 重合性単量体からなることを特徴とする床版防水材料。
- ラジカル硬化型樹脂の樹脂硬化物の引張強度が、低温(−10℃)で100Kgf/cm2以上であることを特徴とする請求項1記載の床版防水材料。
- 上から(A)舗装層、
(B)請求項1記載の床版防水材料からなる防水層、
(C)床版の構造からなることを特徴とする床版防水舗装構造体。 - 防水層(B)の厚みが、0.2mm以上であることを特徴とする請求項3記載の床版防水舗装構造体。
- 床版(C)と舗装層(A)との間に請求項1記載の床版防水材料を用いることを特徴とする床版施工方法。
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