JP3673033B2 - アンテナ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば携帯可能な無線通信機能を有する情報記憶媒体としての無電池式の無線カードとの間で無線による送受信を行うことにより、無線カードに対して電力の送信やデータの送信及び受信など、所定の情報処理を行う情報処理装置としての無線カードリーダ・ライタに適用されるアンテナ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、携帯可能な無線通信機能を有する情報記憶媒体として、いわゆる無電池の無線カードが開発され、実用化され初めている。この種の無線カードを用いた無線カードシステムでは、無線カードリーダ・ライタを用いて、無線カードとの間で無線による送受信を行うことにより、無線カードに対して電力の送信やデータの送信及び受信など、所定の処理を行っている。
【0003】
ところで、このような無線カードリーダ・ライタにおいては、無線カードとの間で無線で送受信を行うためのアンテナ装置を備えている。
現在、無線カードシステムのリーダ・ライタ側に備えられているアンテナ装置は、ループ状に形成されたループアンテナを使用している場合が多い。このループアンテナの放射パターンは、アンテナを中心に8の字状のパターンであるため、希望する通信エリアの他に通信可能なエリアが生じる。また、無線カードシステムは、他のシステム、例えば鉄道会社の改札に設けられる自動改札システム、アミューズメントパークなどの入退場を管理するゲートシステムなどに適用される際に、ステンレスなどの金属筺体、すなわち金属面上にリーダ・ライタ用のアンテナを設置する場合が多い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の無線カードシステムのリーダ・ライタは、ループアンテナを使用しているため、ループアンテナの特性上、希望する通信エリアの他に感度の良好な不要な通信エリアが生じる問題がある。すなわち、8の字状に形成されるアンテナの放射パターンのうち、一方の放射パターンのみを通信エリアとして使用したい場合であっても、他方の放射パターンが不要な通信エリアとして存在する。
【0005】
例えば、多数の人の入退場を管理するゲートシステムにおいては、リーダ・ライタのアンテナの設置場所が問題となる。ゲートシステムの通路に対して通信エリアを水平に設置するために、ゲートシステムの筺体の側面にアンテナを設置した場合、所望する一方の放射パターンにより、そのゲートを入退出する無線カードの所有者を管理することが可能であるが、不所望な他方の放射パターンにより、隣に隣接するゲートに不要な通信エリアが形成され、隣接するゲートを通過する無線カード所有者の入退出管理データを読み取ってしまう可能性がある。
【0006】
一般に、このようなリーダ・ライタの誤動作を防止するために、不要な通信エリアをシャットアウトする対策として、金属板をアンテナの裏面に設置する方法が適用されている。この場合、不要な通信エリアを形成する放射パターンは金属板の影響によって吸収され、放射パターンを極めて小さくすることができるが、これにともなって所望する通信エリアの放射パターンも減少し、通信距離が減少する。
【0007】
このような問題は、リーダ・ライタ用のアンテナをゲートシステムの筺体の上面に設置して、通路に対して通信エリアを垂直にした場合でも同様に、通信距離が減少する。
【0008】
そこで、この発明は、無電池式の無線カード等の情報記憶媒体に対して電力の送信、データ受信、データ送信等を無線で行う情報処理装置としての無線カードリーダ・ライタにおいて、通信距離を拡大することが可能なアンテナ装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、この発明は、このアンテナ装置を備えた情報処理装置を提供することを目的とする。
さらに、この発明は、この情報処理装置、及び無電池式の情報記憶媒体を含む無線通信システムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記問題点に基づきなされたものであって、
送受信用のアンテナを介して、無線通信機能を有する無電池式の情報記憶媒体との間で無線による送受信を行うことにより、所定の情報処理を実行する情報処理装置において、
ループ状に形成され、前記情報記憶媒体に対してデータ信号を送信するとともに、前記情報記憶媒体から送信されたデータ信号を受信する送受信用の第1のアンテナ部と、
ループ状に形成され、前記情報記憶媒体に対して電力を供給する電力信号を送信する第2のアンテナ部と、
互いに大きさが異なる第1磁性体ブロックと第2磁性体ブロックとを有し、これらを互いに重ねたとき第2磁性体ブロックの側面が第1磁性体ブロックの側面より突出するように形成され、第1磁性体ブロックの側面全周に第1のアンテナ部が配置されるとともに第2磁性体ブロックの側面全周に前記第2のアンテナ部が配置され、前記第1及び第2のアンテナ部によって発生される磁界の強度を増強する磁性体と、
を備えたことを特徴とするアンテナ装置を提供するものである。
【0011】
また、この発明によれば、
送受信用のアンテナを介して、無線通信機能を有する無電池式の情報記憶媒体との間で無線による送受信を行うことにより、所定の情報処理を実行する情報処理装置において、
ループ状に形成され、前記情報記憶媒体に対してデータ信号を送信するとともに、前記情報記憶媒体から送信されたデータ信号を受信する送受信用の第1のアンテナ部と、
ループ状に形成され、前記情報記憶媒体に対して電力を供給する電力信号を送信する第2のアンテナ部と、
前記第1及び第2のアンテナ部の周囲または周辺に部分的に設けられ、前記第1及び第2のアンテナ部によって発生される磁界の強度を増強する磁性体と、
を備えたことを特徴とするアンテナ装置を提供するものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施例について図面を参照して説明する。
図1は、この発明に係る情報記憶媒体、及び情報処理装置を含む無線通信システムの概略的な構成を示す図である。
【0023】
この無線通信システムとしての無線カードシステムは、図1に示すように、情報処理装置としての無線カードリーダ・ライタ200と、携帯可能な無線通信機能を有する無電池式の情報記憶媒体としての無線カード300とに大別される。
【0024】
無線カードリーダ・ライタ200は、無線カード300への読出し、書込み(記憶)コマンドの送信、読出しデータの処理、書込みデータの送信などを行うもので、データ信号を送受信する送受信用のアンテナ201、送信用データ信号をアンテナ201に提供するドライバ203、送信用データ信号を変調する変調回路204、無線カード300に電力を供給するための電力信号を送信するアンテナ202、この電力信号をアンテナ202に提供するドライバ212を有している。また、この無線カードリーダ・ライタ200は、受信したデータ信号を増幅する増幅器205、増幅された受信データ信号を復調する復調回路206を有している。さらに、この無線カードリーダ・ライタ200は制御部207、キーボードなどの操作部209、表示部208、各部に動作電源を供給する電池などを主体に構成される電源部210、および外部装置(図示しない)と接続されるインターフェース211を有している。
【0025】
無線カード300は、無線カードリーダ・ライタ200からのコマンドの解読データの書込み(記憶)、データの送信などを行うもので、送受信アンテナとしてのループ状アンテナと同調コンデンサとからなる並列同調回路301、無線カードリーダ・ライタ200のアンテナ202から送信された電力信号から電源を生成する電源生成部302、無線カードリーダ・ライタ200のアンテナ201から送信されたデータ信号を復調する復調回路303、制御ロジック回路305、無線カードリーダ・ライタ200に送信する送信データ信号を変調する変調回路304、EEPROM等で構成される不揮発性メモリ306、およびクロック生成回路307などによって構成されている。
【0026】
以下、無線カードリーダ・ライタ200および無線カード300について更に詳細に説明する。
まず、無線カード300に対するデータの読出しについて説明する。無線カードリーダ・ライタ200の制御部207で読出しコマンドを生成し、変調回路204へ送る。変調回路204では、任意の変調方式でコマンドを変調し、送信用のドライバ203へ送る。ドライバ203では、変調信号を放射するに十分な強度まで増幅する。増幅した信号は、アンテナ201へ供給される。
【0027】
また、制御部207は、無線カード300を駆動するための電源を確保するために、電力信号を生成する。この電力信号は、ドライバ212を介してアンテナ202に供給される。
【0028】
アンテナ201に供給されたデータ信号、及びアンテナ202に供給された電力信号は、後述するような放射パターンを形成して空間へ放射され、無線カード300の並列同調回路301で受信される。
【0029】
無線カード300で受信されたデータ受信信号は、復調回路303で復調されて、制御ロジック回路305に送られ、ここでコマンド解析が行われる。その結果、コマンドの内容が読出しであると解読すると、制御ロジック回路305は、カードデータが格納されている不揮発性メモリ306から所定のデータを読出して変調回路304へ送る。変調回路304では、カードデータを変調して、並列同調回路301へ供給する。
【0030】
また、無線カード300内の並列同調回路301で受信された電力信号は、無線カード300内の電源生成部302により、無線カード300内で消費する電源に変換される。
【0031】
並列同調回路301に供給された信号は、空間へ放射され、無線カードリーダ・ライタ200のアンテナ201で受信される。受信信号は、受信用の増幅器205へ送られる。増幅器205では、受信信号を増幅した後、復調回路206へ送り、ここで復調する。復調された信号は、制御部207へ送られ、ここで所定のデータ処理が行われる。
【0032】
なお、必要に応じて表示部208でデータ表示が可能であり、また操作部209でデータ入力が可能である。
次に、無線カード300に対するデータの書込みについて説明する。無線カードリーダ・ライタ200の制御部207で書込みコマンドおよび書込みデータを生成し、変調回路204へ送る。変調回路204では、任意の変調方式でコマンドおよびデータを変調し、送信用のドライバ203へ送る。ドライバ203では変調信号を放射するに十分な強度まで増幅する。増幅した信号は、アンテナ201へ供給される。
【0033】
アンテナ201に供給された信号は空間へ放射され、無線カード300の並列同調回路301で受信される。受信信号は、復調回路303で復調されて、制御ロジック回路305に送られ、ここでコマンド解析が行われる。その結果、コマンドの内容が書込みであると解読すると、制御ロジック回路305は、書込みコマンドの後に送られてくる書込みデータを不揮発性メモリ306の所定のアドレスに書込む。
【0034】
また、無線カード300内のクロック生成回路307は、並列同調回路301での受信信号により、各回路を動作させるのに必要なクロックを発生するものであり、そのクロックは復調回路303、変調回路304、および制御ロジック回路305に出力されている。
【0035】
このように、無線カードリーダ・ライタ200は、無線カード300の並列同調回路301と相対向する位置にデータ送受信用のアンテナ201と電力送信用のアンテナ202とが接近して配置されている。アンテナ201からは無線カード300に対して強度の強い信号が放射される。また、受信系は、無線カード300からの微弱信号を受信する必要があるため高感度となっている。
【0036】
次に、上述したような無線カードリーダ・ライタ200に備えられるアンテナ装置について説明する。
図2には、アンテナ装置としてループ状に形成されたループアンテナの一例が示されている。
【0037】
図2に示すように、このループアンテナ10は、線材で方形型のループを形成し、一方向に積層させることにより構成されるものである。
このループアンテナ10は、図3に示すような放射パターンを形成する。なお、この放射パターンは、図2に示したループアンテナの受信強度を測定し、同一強度を示す位置を線で結んだものと定義する。
【0038】
すなわち、図3に示したように、ループアンテナ10の放射パターンは、8の字状に形成される2つのメインローブ21A、21Bと、サイドローブ22とから構成されている。このループアンテナ10の放射パターン、特にメインローブ21A、21Bは、ループが形成されている面の表面側、及び裏面側にそれぞれ形成される。
【0039】
このようなループアンテナ装置を図4に示すようなゲートシステム30に適用した場合、例えばゲート装置の筺体31の側面に設置した場合について考える。すなわち、ゲート装置31は、無線カードを所有しているカード所有者(以下、所有者と称する)が通過する通路32を形成するために、一定の間隔をおいて配置されている。そして、ループアンテナ装置10は、ゲート装置31の通路32側の側面に設けられ、無線カードを所有している所有者の通路の通過を管理するものである。
【0040】
この時、アンテナ装置は、通路側に形成されるメインローブ21Aと、ゲート装置31の裏面側、すなわち隣接するゲート装置が管理すべき通路側に形成されるメインローブ21Bとを形成する。そして、裏面側に形成されたメインローブ21Bと隣接するゲート装置のメインローブ21Aとの干渉領域23が形成される。つまり、通路側に通信エリアを設定すると、隣接するゲート間において干渉領域が存在し、所有者が1つの通路32を通過した際に、所有している無線カードを隣接するゲート装置31に備えられているアンテナ装置10がそれぞれ読み取ってしまう虞がある。
【0041】
そこで、アンテナ装置10の裏面側に金属板を設け、裏面側に発生するメインローブ21Bの一部を減衰させる方法があるが、その際、通路32側に形成される通信エリアとしてのメインローブ21Aも減衰し、通信可能なエリアが縮小してしまう。
【0042】
また、ゲート装置31の筺体上にアンテナ装置10が設置された場合を考える。
すなわち、アンテナ装置10は、図5に示すように、ループが形成されている面が金属製の筺体31の上面に対して平行となるように設置され、アンテナケース11によっておおわれている。この時、ループアンテナ10が通信可能な通信エリアは、ゲート装置31の直上に形成される。したがって、隣接するゲート装置との干渉が防止され、隣接するゲートを通過する所有者のデータを読み取るような誤動作をする虞はなくなる。
【0043】
しかしながら、アンテナ装置10は、本来、図5中の実線で示すような8の字状の放射パターン21A、21Bを形成するはずであるが、金属製の筺体上にループアンテナを設置したことにより、ループアンテナ10の特性が変化する。すなわち、図5中の破線で示すように、ループアンテナ10の上面側の放射パターン41Aは、本来の放射パターン21Aより減衰し、通信可能なエリアが減少する。また、ループアンテナ10の下面側の放射パターン41Bは、金属筺体31に吸収され、放射されなくなる。
【0044】
上述したような問題を解消するために、ループアンテナは、ゲート間で放射パターンが干渉することなく、かつ、通信距離を確保できるアンテナ構成が必要となる。
【0045】
図6には、ループアンテナが生成する磁界の様子が示されている。
無線カードシステムでは、通信距離が短い場合、通信距離を決定するパラメータとして磁界が支配的となるため、以下、磁界について考える。ループアンテナ10に図6中の矢印51の向きに電流を流すと、矢印52に示したような磁界が発生する。
【0046】
次に、図7に示すように、ループアンテナ10の周囲に透磁率の高い磁性体60、例えばフェライトコアを配置した場合について考える。
ループアンテナ10に図7中の矢印61の向きに電流を流すと、矢印62に示したような磁界が発生する。
【0047】
すなわち、磁界62が磁性体、すなわちフェライトコア60を通過し、所望の位置に磁界が放射される。これにより、メインローブを生成する磁界の強度が増大する。また、同時に、後方、すなわちループアンテナのループが形成されている面の下方に回り込んでいた磁界も、このフェライトコアの作用により、減少する。このように、フェライトコアにより、ループアンテナで生成される磁界を所望する側に効率よく放射することが可能となり、通信距離を拡大することが可能となる。
【0048】
次に、上述したような磁性体が配置されたアンテナ装置の効果を実証するための実験を行った。
すなわち、図8に示すように、単純なループ状に形成されたループアンテナ80は、信号源としてのドライバ81に接続されている。また、ループアンテナ80のループが形成されている面の正面の位置には、所定の距離離間して近磁界プローブ82が配置されている。そして、この近磁界プローブ82には、強度測定器、例えばスペクトラムアナライザ83が接続されている。
【0049】
そして、ループアンテナ80に信号源から信号を供給した際に、ループアンテナ80から放射される磁界を近磁界プローブ82で受信し、スペクトラムアナライザ83により、その磁界の強度を測定する。
【0050】
この実験で使用するループアンテナとしては、図8に示したような単純なループ状に形成されたループアンテナ80と、図9に示すような単純なループ状のアンテナの周囲、すなわち近磁界プローブ82が配置されている正面以外の面に透磁率の高い磁性体91、例えばフェライトコアを配置したループアンテナ90とを使用して上述したような実験を行った。
【0051】
この実験の結果は、図10に示されている。
図10に示すように、フェライトコアを配置しないループアンテナ80の場合、ループアンテナ80の正面の放射磁界強度は、図10中のBのような特性を示す。また、金属製の筺体上にループアンテナが配置されたときのように、ループアンテナの背面に金属板が設けられた時のループアンテナ80の正面の放射磁界強度は、図10中のDのような特性を示す。
【0052】
このように、背面に金属板を設けることにより、約6dBmも放射磁界強度が減少する。
一方、図9に示したようなフェライトコア91を周囲に配置したループアンテナ90の場合、ループアンテナ90の正面の放射磁界強度は、図10中のAのような特性を示す。また、このループアンテナ90の背面に金属板を設けた場合のループアンテナの正面の放射磁界強度は、図10中のCのような特性を示す。
【0053】
フェライトコアを周囲に配置した場合のループアンテナ90は、フェライトコアが配置されていないループアンテナ80の特性と比較して、放射効率が良好であることが分かる。このループアンテナ90は、背面に金属板を設けても約2dBmの放射磁界強度が減少するのみである。すなわち、特性劣化の度合いが小さいことが確認された。
【0054】
また、背面に金属板を設けた場合であっても、ループアンテナ80の背面に金属板を配置しない場合を同等の放射磁界強度を得ることができる。
したがって、ループアンテナの周囲に磁性体を配置することにより、同一の駆動パワーで、より大きな放射磁界強度を得ることが可能となり、通信可能な通信エリアを拡大することができる。
【0055】
次に、上述したようなフェライトコアとループアンテナとを組み合わせたアンテナ装置の構造の一例について説明する。
図11には、この発明に係るアンテナ装置の一例の斜視図が概略的に示されている。
【0056】
すなわち、このアンテナ装置100は、直方体の磁性体ブロック101と、線材をループ状に形成することにより得られるループアンテナ102とを有している。磁性体ブロック101の側面全周にわたって線材が巻き付けられ、ループアンテナ102が形成されている。このループアンテナ102に所定の方向に電流を流すことにより発生する磁界は、磁性体ブロック101により、確実に、しかも効率よく一方向に放射される。
【0057】
したがって、ループアンテナ102から放射される放射磁界強度を増大させることができる。
図12には、この発明に係るアンテナ装置の他の一例の斜視図が概略的に示されている。
【0058】
すなわち、このアンテナ装置110は、上段と下段とで大きさの異なる磁性体ブロック111と、線材をループ状に形成することにより得られるループアンテナ112とを有している。磁性体ブロック111は、下段の側面が上段の側面より突出するように形成されている。この磁性体ブロック111の上段の側面全周には、線材が巻き付けられ、ループアンテナ112が形成されている。このループアンテナ112に所定の方向に電流を流すことにより発生する磁界は、磁性体ブロック111により、確実に、しかも効率よく一方向に放射される。特に、ループアンテナ112の下方に回り込む磁界が下段の磁性体ブロックにより確実に上方に向けて放射される。
【0059】
したがって、ループアンテナ112から放射される放射磁界強度を増大させることができる。
なお、図11及び図12に示したアンテナ装置100、及び110は、それぞれ磁性体ブロック101及び111の側面に巻き付けられたが、磁性体ブロックの側面全周にわたって溝部が形成され、この溝部に線材を巻き付けることによりループアンテナ102及び112を形成してもよい。
【0060】
図13には、この発明に係るアンテナ装置の他の一例の斜視図が概略的に示されている。また、図14には、図13に示したアンテナ装置の断面図が概略的に示されている。
【0061】
すなわち、このアンテナ装置120は、図13及び図14に示すように、表面がループ状に開口された溝部123を有する磁性体ブロック121と、線材をループ状に形成することにより得られるループアンテナ122とを有している。この時、線材は、溝部123によって隔てられた内側の磁性体ブロック124の側面全周にわたって巻き付けられ、ループアンテナ122が形成されている。このループアンテナ122に所定の方向に電流を流すことにより発生する磁界は、磁性体ブロック121により、確実に、しかも効率よく一方向に放射される。特に、溝部123によって下方に回り込む磁界を開口が形成されている面側に効率よく放射することができる。
【0062】
したがって、ループアンテナ122から放射される放射磁界強度を増大させることができる。
上述したアンテナ装置の例では、ループアンテナが1個の場合について説明したが、図1に示したような無線カードシステムに利用される無線カードリーダ・ライタ200においては、データ信号送信用のアンテナ201と電力信号送信用のアンテナ202とを有しており、以下に2個以上のループアンテナを磁性体に配置する場合について説明する。
【0063】
図15には、この発明に係るアンテナ装置、すなわち2個のループアンテナを有するアンテナ装置の一例の斜視図が概略的に示されている。
すなわち、このアンテナ装置130は、図15に示すように、直方体の第1の磁性体ブロック131と、線材をループ状に形成することにより得られる第1のループアンテナ132とを有している。第1の磁性体ブロック131の側面全周にわたって線材が巻き付けられ、第1のループアンテナ132が形成されている。この第1のループアンテナ132は、例えばデータ信号送信用のアンテナとして利用される。
【0064】
そして、この第1のループアンテナ132に所定の方向に電流を流すことにより発生する磁界は、第1の磁性体ブロック131により、確実に、しかも効率よく一方向に放射される。したがって、第1のループアンテナ132から放射される放射磁界強度を増大させることができる。
【0065】
また、このアンテナ装置130は、第1の磁性体ブロック131に並列に配置された直方体の第2の磁性体ブロック133と、線材をループ状に形成することにより得られる第2のループアンテナ134とを有している。第2の磁性体ブロック133の側面全周にわたって線材が巻き付けられ、第2のループアンテナ134が形成されている。この第2のループアンテナ134は、例えば無線カード300の電力を供給するための電力信号を送信するためのアンテナとして利用される。
【0066】
そして、この第2のループアンテナ134に所定の方向に電流を流すことにより発生する磁界は、第2の磁性体ブロック133により、確実に、しかも効率よく一方向に放射される。したがって、第2のループアンテナ134から放射される放射磁界強度を増大させることができる。
【0067】
このため、アンテナ装置130は、データ信号及び電力信号を効率よく送受信することができる。
図16には、この発明に係るアンテナ装置、すなわち2個のループアンテナを有するアンテナ装置の他の一例の斜視図が概略的に示されている。
【0068】
すなわち、このアンテナ装置140は、図16に示すように、上段141Aと下段141Bとで大きさの異なる磁性体ブロック141と、線材をループ状に形成することにより得られるループアンテナ142A、142Bとを有している。磁性体ブロック141は、下段141Bの側面が上段141Aの側面より突出するように形成されている。この磁性体ブロック141の上段141Aの側面全周には、線材が巻き付けられ、第1のループアンテナ142Aが形成されている。この第1のループアンテナ142Aは、データ信号の送受信用のアンテナとして利用される。また、この磁性体ブロック141の下段141Bの側面全周には、線材が巻き付けられ、第2のループアンテナ142Bが形成されている。この第2のループアンテナ142Bは、電力信号を送信するためのアンテナとして利用される。
【0069】
この第1及び第2のループアンテナ142A、142Bに所定の方向に電流を流すことにより発生する磁界は、磁性体ブロック141により、確実に、しかも効率よく一方向に放射される。したがって、第1、及び第2のループアンテナ142A、142Bから放射される放射磁界強度を増大させることができる。
【0070】
このため、アンテナ装置140は、データ信号及び電力信号を効率よく送受信することができる。
なお、図16に示したアンテナ装置140は、磁性体ブロック141の上段141A及び下段141Bにそれぞれ第1及び第2のループアンテナ142A、142Bを巻き付けたが、図12に示したような磁性体の上段のみにループアンテナを巻き付けたものを2個並列に並べて配置してもよい。
【0071】
図17には、この発明に係るアンテナ装置、すなわち2個のループアンテナを有するアンテナ装置の他の一例の斜視図が概略的に示されている。また、図18には、図17に示したアンテナ装置の断面図が概略的に示されている。
【0072】
すなわち、このアンテナ装置150は、図17及び図18に示すように、表面がループ状に開口された溝部153を有する磁性体ブロック151と、線材をループ状に形成することにより得られる第1及び第2のループアンテナ152A、152Bとを有している。この時、線材は、それぞれ溝部153によって隔てられた内側の磁性体ブロック154の側面全周にわたって巻き付けられ、第1及び第2のループアンテナ152A、152Bが形成されている。この第1のループアンテナ152Aは、例えばデータ信号送信用のアンテナとして利用される。また、第2のループアンテナ152Bは、電力信号送信用のアンテナとして利用される。
【0073】
この第1及び第2のループアンテナ152A、152Bに所定の方向に電流を流すことにより発生する磁界は、磁性体ブロック151により、確実に、しかも効率よく一方向に放射される。特に、溝部153によって下方に回り込む磁界を開口が形成されている面側に効率よく放射することができる。したがって、第1及び第2のループアンテナ152A、152Bから放射される放射磁界強度を増大させることができる。
【0074】
このため、アンテナ装置150は、データ信号及び電力信号を効率よく送受信することができる。
図19には、この発明に係るアンテナ装置、すなわち2個のループアンテナを有するアンテナ装置の他の一例の斜視図が概略的に示されている。また、図20には、図19に示したアンテナ装置の断面図が概略的に示されている。
【0075】
すなわち、このアンテナ装置160は、図19及び図20に示すように、表面がループ状に開口された第1の溝部163A、第2の溝部163Bを有する磁性体ブロック161と、線材をループ状に形成することにより得られる第1及び第2のループアンテナ162A、162Bとを有している。この時、線材は、第1の溝部153によって隔てられた内側の磁性体ブロック164の側面全周にわたって巻き付けられ、第1のループアンテナ152Aが形成されている。この第1のループアンテナ152Aは、例えばデータ信号送信用のアンテナとして利用される。
【0076】
また、線材は、第2の溝部163Bによって隔てられた内側の壁部165の側面全周にわたって巻き付けられ、第2のループアンテナ162Bが形成される。第2のループアンテナ162Bは、電力信号送信用のアンテナとして利用される。
【0077】
この第1及び第2のループアンテナ162A、162Bに所定の方向に電流を流すことにより発生する磁界は、磁性体ブロック161により、確実に、しかも効率よく一方向に放射される。特に、第1及び第2の溝部163A、163Bによって下方に回り込む磁界を開口が形成されている面側に効率よく放射することができる。したがって、第1及び第2のループアンテナ162A、162Bから放射される放射磁界強度を増大させることができる。
【0078】
このため、アンテナ装置160は、データ信号及び電力信号を効率よく送受信することができる。
以上、説明した実施の形態においては、送信側のみについて説明したが、アンテナの可逆性を考慮すると、受信アンテナにも応用可能であることは容易に推測できる。
【0079】
上述したように、この発明によれば、ループアンテナの周囲もしくは周辺、または中心部に透磁率の高い磁性体、例えばフェライトコアを設置することにより、所望するメインローブの磁界を増強することが可能であり、通信可能なエリア、すなわち通信距離を延ばすことができる。
【0080】
また、ループアンテナの周囲もしくは周辺、または中心部に磁性体を設置することにより、後方に回り込む磁界の影響を抑えることが可能であり、金属筺体上にアンテナ装置を設置する必要のあるシステムにおいては、金属筺体の影響を小さくすることができる。すなわち、アンテナの特性の劣化を防止することができる。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、無電池式の無線カード等の情報記憶媒体に対して電力の送信、データ受信、データ送信等を無線で行う情報処理装置としての無線カードリーダ・ライタにおいて、通信距離を拡大することが可能なアンテナ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態を説明するための無線カードシステムの概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、この発明のアンテナ装置に適用されるループアンテナの一例を概略的に示す図である。
【図3】図3は、図2に示したループアンテナが放射する放射パターンの一例を概略的に示す図である。
【図4】図4は、この発明の無線カードシステムが適用されるゲートシステムの一例を概略的に示す図である。
【図5】図5は、図2に示したループアンテナが金属筺体上に配置された場合の影響を説明するための図である。
【図6】図6は、図2に示したループアンテナに電流を供給した際に生成される磁界の向きを示す図である。
【図7】図7は、図2に示したループアンテナの周囲に透磁率の高い磁性体を配置した際に生成される磁界の向きを示す図である。
【図8】図8は、ループアンテナから放射される磁界の強度を測定するための測定系を説明するための図である。
【図9】図9は、周囲に磁性体が配置されたループアンテナの構成を概略的に示す図である。
【図10】図10は、図8及び図9に示したループアンテナを使用して放射磁界強度を測定した測定結果を示す図である。
【図11】図11は、この発明に係るアンテナ装置の構造の一例を概略的に示す斜視図である。
【図12】図12は、この発明に係るアンテナ装置の構造の他の一例を概略的に示す斜視図である。
【図13】図13は、この発明に係るアンテナ装置の構造の他の一例を概略的に示す斜視図である。
【図14】図14は、図13に示したアンテナ装置の構造を概略的に示す断面図である。
【図15】図15は、この発明に係るアンテナ装置、すなわち2個のループアンテナを有するアンテナ装置の構造の一例を概略的に示す斜視図である。
【図16】図16は、この発明に係るアンテナ装置、すなわち2個のループアンテナを有するアンテナ装置の構造の他の一例を概略的に示す斜視図である。
【図17】図17は、この発明に係るアンテナ装置、すなわち2個のループアンテナを有するアンテナ装置の構造の他の一例を概略的に示す斜視図である。
【図18】図18は、図17に示したアンテナ装置の構造を概略的に示す断面図である。
【図19】図19は、この発明に係るアンテナ装置、すなわち2個のループアンテナを有するアンテナ装置の構造の他の一例を概略的に示す斜視図である。
【図20】図20は、図19に示したアンテナ装置の構造を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
10…ループ状アンテナコイル
30…ゲートシステム
31…金属筺体
60…磁性体
100…アンテナ装置
101…磁性体ブロック
102…ループアンテナ
110…アンテナ装置
111…磁性体ブロック
112…ループアンテナ
120…アンテナ装置
121…磁性体ブロック
122…ループアンテナ
123…溝部
130…アンテナ装置
131…第1の磁性体ブロック
132…第1のループアンテナ
133…第2の磁性体ブロック
134…第2のループアンテナ
140…アンテナ装置
141…磁性体ブロック
142A…第1のループアンテナ
142B…第2のループアンテナ
150…アンテナ装置
151…磁性体ブロック
152A…第1のループアンテナ
152B…第2のループアンテナ
153…溝部
160…アンテナ装置
161…磁性体ブロック
162A…第1のループアンテナ
162B…第2のループアンテナ
163A…第1の溝部
163B…第2の溝部
165…壁部
Claims (2)
- 送受信用のアンテナを介して、無線通信機能を有する無電池式の情報記憶媒体との間で無線による送受信を行うことにより、所定の情報処理を実行する情報処理装置において、
ループ状に形成され、前記情報記憶媒体に対してデータ信号を送信するとともに、前記情報記憶媒体から送信されたデータ信号を受信する送受信用の第1のアンテナ部と、
ループ状に形成され、前記情報記憶媒体に対して電力を供給する電力信号を送信する第2のアンテナ部と、
互いに大きさが異なる第1磁性体ブロックと第2磁性体ブロックとを有し、これらを互いに重ねたとき第2磁性体ブロックの側面が第1磁性体ブロックの側面より突出するように形成され、第1磁性体ブロックの側面全周に第1のアンテナ部が配置されるとともに第2磁性体ブロックの側面全周に前記第2のアンテナ部が配置され、前記第1及び第2のアンテナ部によって発生される磁界の強度を増強する磁性体と、
を備えたことを特徴とするアンテナ装置。 - 送受信用のアンテナを介して、無線通信機能を有する無電池式の情報記憶媒体との間で無線による送受信を行うことにより、所定の情報処理を実行する情報処理装置において、
ループ状に形成され、前記情報記憶媒体に対してデータ信号を送信するとともに、前記情報記憶媒体から送信されたデータ信号を受信する送受信用の第1のアンテナ部と、
ループ状に形成され、前記情報記憶媒体に対して電力を供給する電力信号を送信する第2のアンテナ部と、
前記第1及び第2のアンテナ部の周囲または周辺に部分的に設けられ、前記第1及び第2のアンテナ部によって発生される磁界の強度を増強する磁性体と、
を備えたことを特徴とするアンテナ装置。
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