JP3671560B2 - 熱硬化性樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、保存安定性、耐クラック性、密着性、耐熱性、耐湿熱性、電気絶縁性等に優れた熱硬化性樹脂組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルコキシシラン化合物は、加水分解およびそれに続く脱水縮合反応によってポリシロキサン樹脂を形成することはよく知られている。
このポリシロキサン樹脂は熱硬化性を有し、その硬化物が耐熱性、電気絶縁性に優れているものの、アルコキシシラン化合物を出発原料とした場合、硬化時の体積収縮が大きいため、硬化物にクラックが発生しやすいという問題があった。そこで、アルコキシシラン化合物の加水分解物および/またはその部分縮合物にアクリル樹脂等を配合して、硬化時のクラック発生を防止しようとする試みが検討されており、例えば、オルガノシランの部分縮合物、コロイダルシリカの分散液およびシリコーン変性アクリル樹脂からなる組成物(例えば特開昭60−135465号公報参照)、オルガノシランの縮合物、ジルコニウムアルコキシドのキレート化合物および加水分解性シリル基含有ビニル系樹脂からなる組成物(例えば特開昭64−1769号公報参照)のほか、オルガノシランの部分縮合物、加水分解性シリル基含有ビニル系樹脂、金属キレート化合物並びにβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類からなる組成物(例えば特開平4−58824公報参照)等が提案されている。
しかしながら、これらの組成物から得られる硬化物はいずれも、ポリシロキサン樹脂本来の耐熱性が損なわれるという欠点がある。
また、一般にテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とからポリアミック酸を経て得るポリイミド樹脂は、液晶用配向膜、半導体用絶縁膜、保護膜、接着剤等に使用されており、特に芳香族系ポリイミド樹脂は、耐熱性に優れ、高強度でることから、これらの特性が要求される用途に使用されている。
しかしながら、ポリイミド樹脂は、ポリシロキサン樹脂と比べて、一般に電気絶縁性が低く、また耐湿性にも劣るため、ポリイミド樹脂をポリシロキサン樹脂で改質することが提案されている。例えば、特開昭58−7437号公報、特開昭58−13631号公報等には、ポリイミド樹脂を構成するジアミン化合物として、
H2N-(CH2)3-(Si(CH3)2O)m -Si(CH3)2-(CH2)3-NH2
(但し、mは1〜100の整数)で表されるジメチルシリコーンオリゴマーを用いる方法が提案されているが、このような組成物は、耐熱性が低下する欠点がある。また、特開昭63−99236号公報、特開昭63−99536号公報等には、アルコキシシランの加水分解・縮合物とポリアミド酸(即ち、ポリアミック酸)溶液とを混合する方法が開示されているが、これらの組成物は、塗膜中におけるポリイミド樹脂へのポリシロキサン成分の分散性が悪く、塗膜の平滑性が劣る欠点がある。さらに、特開平6−207024号公報には、特定のシリル基を有するポリアミド酸溶液中で、アルコキシシランを加水分解・縮合させて得られた溶液が開示されているが、このような組成物は、ポリシロキサン成分の含有量が多くなると、塗膜の耐熱性が低下し、またポリアミド酸とアルコキシシランの加水分解・縮合物との混合溶液の保存安定性にも劣るという欠点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術における前記問題点を背景になされたもので、その課題は、溶液としての保存安定性に優れるとともに、硬化時にクラックを発生することがなく、しかも各種基材に対する密着性、耐熱性、耐湿熱性、電気絶縁性等に優れた硬化物を形成しうる熱硬化性樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、
(A)下記一般式(1)
(R1)n Si (OR2)4-n ・・・(1)
〔一般式(1)において、R1は炭素数1〜8の有機基、R2は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示し、nは0〜2の整数である。〕で表されるシラン化合物を、(B)加水分解性シリル基を有するポリアミック酸および/または加水分解性シリル基を有するポリイミド、並びに(C)ジルコニウム、チタンおよびアルミニウムの群から選ばれる金属のキレート化合物および/またはアルコキシド化合物と混合して、該シラン化合物を加水分解・部分縮合させることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物の製造方法からなる。
【0005】
以下、本発明を詳細に説明する。
(A)成分
本発明における(A)成分は、前記一般式(1)で表されるシラン化合物(以下、「シラン化合物(1)」という。)からなる。
一般式(1)において、R1の炭素数1〜8の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基のほか、3−クロロプロピル基、3−ブロモプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、3−(メタ)アクリルオキシプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−アミノプロピル基、3−ジメチルアミノプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、ビニル基、フェニル基等を挙げることができる。一般式(1)において、R1が2個存在するとき、各R1は相互に同一でも異なってもよい。
また、R2の炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等の直鎖あるいは分岐鎖の基を挙げることができ、炭素数1〜4のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等を挙げることができる。一般式(1)において、R2が2〜4個存在するとき、各R2は相互に同一でも異なってもよい。
【0006】
このようなシラン化合物(1)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン類;3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン等のハロアルキルトリアルコキシシラン類;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシドキシアルキルトリアルコキシシラン類;3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン等(メタ)アクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン類;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトアルキルトリアルコキシシラン類;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノアルキルトリアルコキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン類;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のフェニルトリアルコキシシラン類;3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン等の3,4−エポキシシクロヘキシルアルキルトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類;テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジエチルジアセトキシシラン等のアシルオキシシラン類等を挙げることができる。
これらのシラン化合物(1)のうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等が好ましい。
本発明において、シラン化合物(1)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0007】
(B)成分
本発明における(B)成分は、加水分解性シリル基を有するポリアミック酸および/または加水分解性シリル基を有するポリイミドからなる。
(B)成分としては、下記一般式(2)で表される加水分解性シリル基(以下、「加水分解性シリル基(2)」という。)を、ポリアミック酸における下記一般式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」という。)あるいはポリイミドにおける下記一般式(4)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(4)」という。)の各1モルに対して、通常、0.01〜1.1モル、好ましくは0.02〜0.8モル、特に好ましくは0.02〜0.5モル含有するポリアミック酸あるいはポリイミドが好ましい。但し、本発明の熱硬化性樹脂組成物がポリアミック酸およびポリイミドをともに含有する場合は、加水分解性シリル基(2)の平均含有率は、繰返し単位(3)と繰返し単位(4)との合計1モルに対して前記範囲内にある。
【0008】
【化1】
【0009】
〔一般式(2)において、R1は炭素数1〜8の有機基、R2は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示し、mは0〜2の整数である。〕
【0010】
【化2】
【0011】
【化3】
【0012】
〔一般式(3)および一般式(4)において、R3は4価の有機基を示し、R4は2価の有機基を示す。〕
一般式(2)において、R1の炭素数1〜8の有機基およびR2の炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基としては、例えば、一般式(1)のそれぞれR1およびR2について例示した基を挙げることができる。
一般式(2)において、R1が2個存在するとき、各R1は相互に同一でも異なってもよく、R2が2〜3個存在するとき、各R2は相互に同一でも異なってもよい。また、一般式(2)におけるR1およびR2は、それぞれ一般式(1)におけるR1およびR2と同一でも異なってもよい。
一般式(3)および一般式(4)において、R3の4価の有機基としては、脂肪族有機基、脂環族有機基あるいは芳香族有機基のいずれでもよいが、特に炭素数6〜120の芳香族有機基が好ましい。
前記4価の芳香族有機基としては、例えば、
【0013】
【化4】
【0014】
〔式中、R5〜R10 は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)、フルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基等)またはフェニル基を示す。〕
等を挙げることができる。
また、R4の2価の有機基としては、脂肪族有機基、脂環族有機基あるいは芳香族有機基のいずれでもよいが、特に炭素数6〜120の芳香族有機基が好ましい。
前記2価の芳香族有機基としては、例えば、
【0015】
【化5】
【0016】
〔式中、 R11〜R16 は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)、フルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基等)またはフェニル基を示す。〕
等を挙げることができる。
ポリアミック酸における繰返し単位(3)およびポリイミドにおける繰返し単位(4)は、それぞれ1種以上が存在することができる。また、本発明において、ポリアミック酸は一部がイミド化されていてもよく、この場合のイミド化率は、50%未満であり、一方、ポリイミドは一部がイミド化されていなくてもよく、ポリイミドのイミド化率は、50%以上、好ましくは90%以上である。
本発明における(B)成分の合成法としては、種々の方法を採用することができ、特に限定されないが、例えば、
(イ)繰返し単位(3)に対応するテトラカルボン酸二無水物と繰返し単位(3)に対応するジアミン化合物とを、有機溶媒中で重縮合させてポリアミック酸の溶液を得たのち、カルボン酸無水物基と加水分解性基とを有するシラン化合物および/またはカルボキシル基と反応しうる官能基と加水分解性基とを有するシラン化合物(以下、これらのシラン化合物をまとめて「官能性シラン化合物」という。)を反応させて、加水分解性シリル基を有するポリアミック酸の溶液を得る方法、
(ロ)官能性シラン化合物の存在下で、繰返し単位(3)に対応するテトラカルボン酸二無水物と繰返し単位(3)に対応するジアミン化合物とを、有機溶媒中で重縮合させて、加水分解性シリル基を有するポリアミック酸の溶液を得る方法、
(ハ)前記(イ)または(ロ)の方法により得られたポリアミック酸を、有機溶媒中で熱的方法あるいは化学的方法により脱水閉環反応させて、加水分解性シリル基を有するポリイミドの溶液を得る方法、
(ニ)繰返し単位(3)に対応するテトラカルボン酸二無水物と繰返し単位(3)に対応するジアミン化合物とを、有機溶媒中で重縮合させてポリアミック酸の溶液を得たのち、該ポリアミック酸を溶液中で熱的方法あるいは化学的方法により脱水閉環反応させて、ポリイミド溶液を得、その後、官能性シラン化合物を反応させて、加水分解性シリル基を有するポリイミドの溶液を得る方法、
(ホ)繰返し単位(3)に対応するテトラカルボン酸二無水物と、2個のアミノ基と加水分解性基とを有するシラン化合物、例えば、下記一般式
【0017】
【化6】
【0018】
〔但し、R1、R2およびmは一般式(2)におけるそれぞれR1、R2およびmと同義であり、R5は2価の有機基(好ましくはフェニレン基または炭素数1〜10のアルキレン基)を示す。〕で表される化合物とを、必要に応じて一般式(3)に対応するジアミン化合物と共に、有機溶媒中で重縮合させて、加水分解性シリル基を有するポリアミック酸の溶液を得る方法、
(ヘ)前記(ホ)の方法で得られたポリアミック酸を、有機溶媒中で熱的方法あるいは化学的方法により脱水閉環反応させて、ポリイミドの溶液を得る方法
等を挙げることができる。
これらの方法のうち、(イ)、(ニ)あるいは(ホ)の方法が好ましく、特に(イ)あるいは(ニ)の方法が好ましい。
【0019】
前記官能性シラン化合物としては、例えば、3,4−ジカルボキシフェニルトリメトキシシランの酸無水物、3,4−ジカルボキシベンジルトリメトキシシランの酸無水物等のカルボン酸無水物基含有シラン類;メルカプトメチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプトシラン類;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、(2−アミノエチルアミノ)メチルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3−〔2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ〕プロピルトリメトキシシラン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ウレア、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)ウレア、2−(2−アミノエチルチオ)エチルトリメトキシシラン、2−(2−アミノエチルチオ)エチルトリエトキシシラン、2−(2−アミノエチルチオ)エチルジメトキシメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオ)エチルジエトキシメチルシラン等のアミノシラン類;ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン、3−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−シクロヘキシルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、3−ベンジルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ベンジルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、3−(p−ビニルベンジルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(p−ビニルベンジルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−アリルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、3−ピペラジノプロピルトリメトキシシラン、3−ピペラジノプロピルジメトキシメチルシラン等のイミノシラン類;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−グリシドキシプロピルジエトキシメチルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシメチルシラン等のエポキシシラン類;3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルジメトキシメチルシラン、3−イソシアネートプロピルジエトキシメチルシラン等のイソシアネートシラン類等を挙げることができる。
これらの官能性シラン化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0020】
前記(イ)〜(ヘ)の方法に使用される有機溶媒としては、反応原料および得られる(B)成分に対して不活性であり、かつそれらを溶解しうるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;フェノール、クレゾール等のフェノール系溶媒等を挙げることができる。
これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
前記各方法におけるポリアミック酸の合成に際しては、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との合計量を、全溶液重量に対して、通常、1〜50重量%、好ましくは2〜30重量%とし、通常、150℃以下、好ましくは0〜120℃で反応させる。
また、前記(ハ)、(ニ)あるいは(ヘ)の方法において、ポリイミドを合成する際の熱的イミド化反応の温度は、通常、50〜400℃、好ましくは100〜350℃であり、化学的イミド化反応の温度は、通常、0〜200℃である。
【0021】
本発明における(B)成分中の加水分解性シリル基(2)の含有率は、通常、0.1〜70重量%、好ましくは0.5〜60重量%、特に好ましくは1〜50重量%である。この場合、加水分解性シリル基(2)の含有率が0.1重量%未満では、得られる硬化物の透明性や均質性が低下する傾向がある。なお、(B)成分中に加水分解性シリル基(2)を70重量%を超えて含有させることは、実際上不可能である。
本発明における(B)成分の対数粘度〔η〕(N−メチルピロリドン中、30℃、0.5g/dl)は、通常、0.05〜5dl/g、好ましくは0.1〜3dl/gである。
本発明において、(B)成分は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
本発明における(B)成分の使用割合は、(A)シラン化合物(1)の縮合物100重量部に対して、通常、5〜1000重量部、好ましくは10〜800重量部、さらに好ましくは15〜600重量部である。この場合、(B)成分の使用割合が5重量部未満では、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化時にクラックを発生する場合があり、また1000重量部を超えると、硬化物の耐湿性が低下する傾向がある。
【0022】
(C)成分
本発明における(C)成分は、ジルコニウム、チタンおよびアルミニウムの群から選ばれる金属のキレート化合物および/またはアルコキシド化合物からなる。これらの化合物は、(A)成分と(B)成分との間の縮合反応を促進し、両成分の共縮合物の形成を促進する作用をなすものと考えられる。
このような(C)成分としては、例えば、下記一般式
Zr(OR17)p (R18COCHCOR19)4-p 、
Ti(OR17)q (R18COCHCOR19)4-q または
Al(OR17)r (R18COCHCOR19)3-r
で表される化合物、あるいはこれらの化合物の部分加水分解物を挙げることができる。
前記各式において、R17 およびR18 は相互に同一でも異なってもよく、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基を示し、R19 は、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等の直鎖または分岐鎖の炭素数1〜5のアルキル基、またはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリルオキシ基、ステアリルオキシ基等の直鎖または分岐鎖の炭素数1〜16のアルコキシル基を示す。前記各式中にR17 、R18 あるいはR19 が2個以上存在するとき、それぞれの基は相互に同一でも異なってもよい。
また、pおよびqは0〜3の整数、rは0〜2の整数である。
【0023】
(C)成分の具体例としては、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートチタン、トリ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートチタン、トリ−n−ブトキシ・アセトアセテートチタン、トリ−i−プロポキシ・アセトアセテートチタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセトアセテート)チタン、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、n−ブトキシ・トリス(アセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(アセトアセテート)チタン等のチタンキレート化合物;ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・アセチルアセテートアルミニウム、i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセテート)アルミニウム、モノアセチルアセテート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物;テトラ−i−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム等のジルコニウムアルコキシド化合物;テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン等のチタンアルコキシド化合物;トリ−i−プロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム等のアルミニウムアルコキシド化合物等を挙げることができる。
これらの化合物のうち、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムが好ましい。
本発明において、(C)成分は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
(C)成分の使用割合は、(A)シラン化合物(1)100重量部に対して、通常、0.01〜50重量部、好ましくは0.1〜50重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。この場合、(C)成分の使用割合が前記範囲外であると、得られる硬化物の耐熱性が低下する傾向がある。
【0024】
さらに、本発明においては、前記(A)成分、(B)成分および(C)成分以外に、下記(D)成分を使用することが好ましい。
(D)成分
(D)成分は、一般式
R18COCH2COR19
(但し、R18 およびR19 は、それぞれ(C)成分の金属キレート化合物を表す前記一般式におけるR18 およびR19 と同義であるが、両者のR18 およびR19 は、それぞれ相互に同一でも異なってもよい。)で表されるβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類からなり、本発明の熱硬化性樹脂組成物の保存安定性をさらに向上させる作用を有するものである。
即ち、(D)成分は、前記(C)成分をなす金属キレート化合物中の金属原子に配位することにより、該金属キレート化合物の(A)成分と(B)との間の縮合反応の促進作用を適度に抑制することによって、得られる熱硬化性樹脂組成物の保存安定性を向上させる作用を示すものと考えられる。
このような(D)成分の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸i−プロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸i−ブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、3,5−オクタンジオン、2,4−ノナンジオン、3,5−ノナンジオン、5−メチル−2,4−ヘキサンジオンを挙げることができる。
これらの化合物のうち、アセチルアセトン、アセト酢酸エチルが好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。
本発明において、(D)成分は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
(D)成分の使用割合は、(C)成分1モル当り、通常、2モル以上、好ましくは3〜20モル、さらに好ましくは4〜15モルである。この場合、(D)成分の使用割合が2モル未満では、得られる熱硬化性樹脂組成物の保存安定性の向上効果が低下する傾向がある。
【0025】
他の添加剤
本発明においては、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化条件によっては、硬化促進剤(以下、「(E)成分」という。)を少なくとも1種配合してもよく、比較的低い温度で硬化させるには、(E)成分の併用が効果的である。
このような(E)成分としては、例えば、ナフテン酸、オクチル酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸等のアルカリ金属塩:水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性化合物;アルキルチタン酸、りん酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸等の酸性化合物;1,2−エチレンジアミン、1,6−ヘキシレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ピペリジン、ピペラジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、エタノールアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン等のアミン類や、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる各種変性アミン類;3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン化合物;
(C4H9)2Sn(OCOC11H23)2 、(C4H9)2Sn(OCOCH=CHCOOCH3)2、
(C4H9)2Sn(OCOCH=CHCOOC4H9)2 、(C8H17)2Sn(OCOC11H23)2、
(C8H17)2Sn(OCOCH=CHCOOCH3)2 、(C8H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC4H9)2、
(C8H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC8H17)2 、Sn(OCOC8H17)2 等のカルボン酸型有機スズ化合物;
(C4H9)2Sn(SCH2COO)2 、(C4H9)2Sn(SCH2COOC8H17)2、
(C8H17)2Sn(SCH2COO)2、(C8H17)2Sn(SCH2CH2COO)2 、
(C8H17)2Sn(SCH2COOCH2CH2OCOCH2S)2 、
(C8H17)2Sn(SCH2COOCH2CH2CH2CH2OCOCH2S)2 、
(C8H17)2Sn(SCH2COOC8H17)2 、(C8H17)2Sn(SCH2COOC12H25)2、
【0026】
【化7】
【0027】
等のメルカプチド型有機錫化合物;
(C4H9)2Sn=S 、(C8H17)2Sn=S、
【0028】
【化8】
【0029】
等のスルフィド型有機錫化合物;
(C4H9)2Sn=O 、(C8H17)2Sn=O等の酸化物型有機錫酸化物と、エチルシリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチル等のエステル化合物との反応生成物等の有機錫化合物等を挙げることができる。
(E)成分の配合割合は、(A)〜(E)成分の固形分合計の、通常、15重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
なお、前記(C)成分も、硬化促進剤として作用するものである。
(E)成分の添加方法は特に限定されるものではなく、本発明における熱硬化性樹脂組成物を製造する際および/または製造後の適宜の段階で添加することができる。
さらに、例えば、クレー、ゼオライト、タルク、マイカ、シリカ、カーボンブラック、グラファイト、アルミナ、炭酸カルシウム、ワラストナイト等の充填剤や、ガラス、カーボン、アルミナ、チタン酸カリウム、ほう酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、全芳香族ポリエステル、超高分子量ポリエチレン、高強度ポリアクリロニトリル、高強力ポリビニルアルコール等の繊維あるいはウイスカー等の補強材を配合することができる。前記補強材は、織布、不織布、編み物等の布帛の形で用い、該布帛に、本発明における熱硬化性樹脂組成物を含浸させて使用することもできる。
これらの充填剤および補強材は、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
また前記添加剤以外に、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、防曇剤、防カビ剤、顔料、染料、分散剤、増粘剤、レベリング剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤や、オルトぎ酸メチル、オルト酢酸メチル、テトラエトキシシラン等の脱水剤等を配合することもできる。
【0030】
熱硬化性樹脂組成物の製造方法および用途
本発明における熱硬化性樹脂組成物は、下記の方法により製造される。
[I] (A)シラン化合物(1)を、(B)成分および(C)成分と混合して、シラン化合物(1)を加水分解・部分縮合させたのち、必要に応じて(D)成分を添加する方法。 前記 [I] の方法においては、(E)成分および前記他の添加剤は、適宜の段階で配合することができる。
シラン化合物(1)を加水分解・部分縮合させる際の水の添加量は、シラン化合物(1)中のアルコキシシリル基および/またはアシルオキシシリル基1当量当たり、通常、0.3〜1モル、好ましくは0.3〜0.8モル程度である。
本発明において、熱硬化性樹脂組成物を構成する(A)成分、(B)成分および(C)成分は、それらの少なくとも2種以上が、部分的にまたは全部が化学的に結合していてもよい。
シラン化合物(1)の縮合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、好ましくは2,000〜100,000である。
【0031】
また、本発明においては、熱硬化性樹脂組成物の全固形分濃度を調整し、併せて粘度も調整するために、有機溶媒を使用することができる。
このような有機溶媒としては、本発明により得られる熱硬化性樹脂組成物に対して不活性であり、かつこれを溶解しうる限り、特に限定されるものではない。
前記有機溶媒としては、例えば、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、i−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンセン、i−プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、ヘプタノール−3、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチルヘプタノール−4、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、クレゾール等のモノアルコール系溶媒;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタンジオール−2,4、2−メチルペンタンジオール−2,4、ヘキサンジオール−2,5、ヘプタンジオール−2,4、2−エチルヘキサンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン等のケトン系溶媒;エチルエーテル、i−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等のエステル系溶媒;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等の含窒素系溶媒;硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−プロパンスルトン等の含硫黄系溶媒等を挙げることができる。
【0032】
本発明により得られる熱硬化性樹脂組成物は、溶液としての保存安定性に優れるとともに、硬化時にクラックの発生がなく、しかもその硬化物は、各種基体に対する密着性、耐熱性、耐湿熱性、電気絶縁性等に優れている。
したがって、本発明により得られる熱硬化性樹脂組成物は、特に、半導体素子の多層配線間の層間絶縁膜あるいは平坦化膜、各種の電気機器や電子部品等の保護膜あるいは電気絶縁膜等として極めて好適に使用することができるほか、耐熱性が要求される接着剤や塗料としても有用である。
また、本発明により得られる熱硬化性樹脂組成物を予め離型処理した適当な基体に塗布して、熱硬化性薄膜を成形し、該薄膜を硬化前に基体から強制的に剥離することによって、熱硬化性フィルムを取得することができ、該熱硬化性フィルムは、電気機器や電子部品等の耐熱性接着フィルム等として有用である。あるいは、前記基体から強制的に剥離された熱硬化性薄膜を硬化させるか、または予め離型処理した適当な基体上に形成した熱硬化性薄膜を加熱、硬化させたのち、得られた硬化薄膜を基体から強制的に剥離することによって、硬化フィルムを取得することができる。
さらに、本発明により得られる熱硬化性樹脂組成物の溶液をガラスクロス等の適当な布帛に含浸させたのち乾燥したプリプレグ、あるいは無溶媒の該樹脂組成物をガラスクロス等の適当な布帛に含浸させたプリプレグは、銅張り積層板等の積層材等としても有用である。また、本発明により得られる熱硬化性樹脂組成物は、例えば、粉末、ペレット等の形態で、熱硬化性成形材料としても有用である。
本発明により得られる熱硬化性樹脂組成物から熱硬化性フィルムあるいは硬化フィルムを形成させる際に使用される基体は、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、ニッケル、ステンレス、チタン、アルミニウム、銅、各種合金等の金属;窒化ケイ素、炭化ケイ素、サイアロン、窒化アルミニウム、窒化ほう素、炭化ほう素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、アルミナ、シリカや、これらの混合物等のセラミック;Si、Ge、SiC 、SiGe、GaAs等の半導体; ガラス、陶磁器等の窯業材料;芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、全芳香族ポリエステル等の耐熱性樹脂等を挙げることができる。
前記基体には、所望により、予め離型処理を施しておくことができ、また、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等による薬品処理や、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着の如き適宜の前処理を施すこともできる。
本発明により得られる熱硬化性樹脂組成物を前記基体に塗布する際には、回転塗布法、ロール塗布法、流延塗布法、浸漬塗布法、噴霧塗布法等の適宜の塗布手段を採用することができる。また、塗布厚さは、塗布手段の選択、組成物溶液の固形分濃度や粘度を調節することにより、適宜制御することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を挙げて本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
実施例および比較例中の部および%は、特記しない限り重量に基づく。
実施例および比較例における各評価は、下記の要領で行った。
保存安定性
(E)成分を添加しない組成物試料を、ポリエチレン製ビン中に常温で1ヶ月間密栓保存し、目視によりゲル化の有無を判定した。さらに、ゲル化を生じていないものについては、BM型粘度計(東京計器(株)製)により粘度を測定し、変化率が20%以内のものを、“変化なし”とした。
耐クラック性
ガラス板上に、スリット巾254μmのアプリケーターを用いて組成物試料を塗布し、350℃で60分乾燥させたのち、塗膜の外観を目視により観察し、下記基準で評価した。
○:クラックが認められない、
×:クラックが認められる。
密着性
各種の基体上に、No.6バーコーターを用いて組成物試料を塗布し、350℃で60分乾燥させたのち、JIS K5400に準拠した碁盤目テストにより、テープ剥離試験を3回実施し、碁盤目100個のうち塗膜が基材に密着している平均数(n)により評価した。
耐熱性
アルミニウムパン中に組成物試料を加え、350℃で60分乾燥させたのち、セイコー電子工業(株)製SSC5200熱重量分析装置(TGA)を用い、空気中10℃/分の昇温速度による5%重量減少温度を測定した。
耐湿熱性
各種の基体上に、No.6バーコーターを用いて組成物試料を塗布して、350℃で60分乾燥させ、121℃、湿度100%および2気圧の条件下で、250時間耐湿熱試験(PCT)を行ったのち、前記密着性試験を実施して、耐湿熱性を評価した。
誘電率
ステンレス板上に、スピンナーを用いて組成物試料を塗布し、350℃で60分乾燥させたのち、横河・ヒューレット・パッカード(株)製HP16451B電極およびHP4284AプレシジョンLCRメータを用いて、1MHzにおける誘電率を測定した。
【0034】
【実施例】
製造例1((B)成分の合成)
ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物25.0部と2,2−ビス[ 4−(4−アミノフェノキシ)フェニル ]プロパン24.6部とを、N−メチルピロリドン450部中、25℃で2時間反応させたのち、さらに180℃で3時間反応させた。次いで、トルエンを滴下しながら、反応溶液中の水分を共沸留去した。
その後、得られた反応溶液に、3−アミノプロピルトリメトキシシラン3.59部を加え、25℃で2時間反応させたのち、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン4.10部を加え、120℃で2時間反応させて、(B)成分の10%溶液を得た。この(B)成分を(B-1) 成分とする。
【0035】
実施例1
シラン化合物(1)としてメチルトリメトキシシラン100部(固形分換算49部)、製造例1で得た(B-1)成分の10%溶液100部、(C)成分としてジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム5部、イオン交換水14部およびN−メチルピロリドン80部を、60℃で4時間反応させたのち、(D)成分としてアセチルアセトン5部を加え、60℃で1時間反応させて、固形分濃度20%の熱硬化性樹脂組成物(I)を調製した。
熱硬化性樹脂組成物(I)の評価結果を、表1および表2に示す。
【0036】
実施例2〜3
配合組成を表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物(II) および (III)を調製した。
これらの熱硬化性樹脂組成物の評価結果を、表1および表2に示す。
【0037】
比較例1〜3
配合組成を表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物(i) 〜 (iii)を調製した。
これらの熱硬化性樹脂組成物の評価結果を、表1および表2に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【発明の効果】
本発明により得られる熱硬化性樹脂組成物は、溶液としての保存安定性に優れるとともに、硬化時にクラックを発生することがなく、しかも各種基材に対する密着性、耐熱性、耐湿熱性、電気絶縁性等に優れた硬化物を形成することができる。
したがって、本発明により得られる熱硬化性樹脂組成物は、特に、半導体素子の多層配線間の層間絶縁膜あるいは平坦化膜、各種の電気機器や電子部品等の保護膜あるいは電気絶縁膜等として極めて好適に使用できるほか、接着剤、塗料、熱硬化性フィルム、硬化フィルム、プリプレグ、硬化成形品等としても有用である。
Claims (2)
- (A)下記一般式(1)
(R1)n Si (OR2)4-n ・・・(1)
〔一般式(1)において、R1は炭素数1〜8の有機基、R2は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示し、nは0〜2の整数である。〕で表されるシラン化合物を、(B)加水分解性シリル基を有するポリアミック酸および/または加水分解性シリル基を有するポリイミド、並びに(C)ジルコニウム、チタンおよびアルミニウムの群から選ばれる金属のキレート化合物および/またはアルコキシド化合物と混合して、該シラン化合物を加水分解・部分縮合させることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物の製造方法。 - シラン化合物を加水分解・部分縮合させる際の水の添加量が、シラン化合物(1)中のアルコキシシリル基および/またはアシルオキシシリル基1当量当たり、0.3〜1モルである、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
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