JP3668718B2 - 加工食品用耐熱性さつまいもフィリングの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、菓子やパン、パイ、饅頭などの加工食品用のさつまいもフィリングの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、菓子やパン、パイ、饅頭などの加工食品用に使用されるさつまいもフィリングは、さつまいもに卵、砂糖や水飴等の甘味成分及び呈味成分等を添加し、これを加熱練合したものであるのが一般的である。このようなさつまいもフィリングは菓子やパン、パイ、饅頭、その他の生地に包み込んだ状態で、焼成等の加熱工程を経て製品化される。
【0003】
この場合、生地に包み込まれたさつまいもフィリングについては焼成時における耐熱性が要求される。即ち、焼成時にさつまいもフィリングの焼成時の目減りや流れ出しを防止すると共に、焼成後においてもさつまいもフィリングが柔軟な性状を保持することにより商品価値を高めることができるからである。
【0004】
このような耐熱性を保持するために、従来のさつまいもフィリングについては、さつまいもに生餡や小麦粉乃至でんぷん、卵、安定剤等を添加して混合し、加熱殺菌後、充填包装して製品化されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来のさつまいもフィリングの成分組成及び製造工程によれば、柔らかな状態を維持し耐熱性を必要とした場合、その配合組成のさつまいもフィリングについては固さや耐熱性の点で限界がある。
【0006】
即ち、従来の製造工程において、卵の配合量を増加させた場合、耐熱性を高めることができるが、さつまいもフィリングを得る際の加熱時に卵の蛋白質が変性し、製品の仕上がりと焼成後の状態がバサついたものになり、食味の点で卵によるザラつきが発生し滑らかなペースト状の食感とは異質の物となってしまう欠点がある。また、生餡やでんぷん、安定剤等の配合量を増加させた場合には、粘りや状態が硬くなり過ぎて柔らかな状態を維持できない等の問題がある。
【0007】
上記した方法により耐熱性を上げる場合、図3に示すように、例えば、製品パイBでは、焼成時にさつまいもフィリングdに含まれている水分が蒸発して生地bの内面から剥がれて空洞fが生じたり、生地bから押し出しeのようにさつまいもフィリングdが流れ出てしまうという欠点がある。cは生地bの表面の切り込みである。このさつまいもフィリングdの剥がれfや押し出しeが生じると、焼成後の生地bとの内面に空洞fが生じることになる。さつまいもフィリングdが生地bから流出してしまうと、加工食品を安定した状態で得ることが困難となり、また空洞fの発生は商品価値を低下させる。
【0008】
そこで、本発明は従来のさつまいもフィリングにおける欠点を解消し、さつまいもフィリングに加熱時のザラつきの発生を防止し、焼成後においても本来の柔わらかさを保持させると共に、加工食品を得るための焼成時において、さつまいもフィリングが生地から剥がれたり、生地から流出することのない、良好な食味の加工食品用耐熱性さつまいもフィリングの製造方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、さつまいもに油脂を投入して加熱混合し、この混合物を70〜80℃の温度状態に保ち卵タンパク質及びマンナンを投入し、これを充填包装して後、その中心温度が40℃以下となるように冷却することを特徴とするものである。
【0010】
本発明において、さつまいもの種類、形態については、特に限定されるものものではなく、皮つき、皮なし、乱切り、ダイスカット、裏ごしたもの等を使用することができる。このさつまいもについては、一度、焼き工程あるいは蒸し工程が入ったものであることが好ましい。さつまいもが焼き工程や蒸し工程を経ることにより加熱不足が解消され、充分に加熱することによりその食味も向上するからである。
【0011】
本発明において、油脂としては、マーガリン、ショートニング、バター等の固型油脂、サラダ油、菜種油、大豆油、パーム油等の液体油脂等を使用することができる。油脂を配合することにより、食味となめらかさを向上できるからである。
【0012】
本発明において、卵タンパク質としては、卵白アルブミン、乾燥卵白等を使用することができ、これらを併用することもできる。マンナンは、精製、未精製のいずれのものも使用することができる。
【0013】
本発明において、さつまいもフィリングの原料には、性能を損ねることのない範囲内で食味を高めるために、任意成分として、甘味成分、香味成分等を添加することができる。この甘味成分としては砂糖、マルトース、液糖、コーンシロップ、異性化糖等の甘味料のほか、糖アルコール等も使用できる。呈味成分としては、乳製品等を挙げることができる。
【0014】
本発明において、さつまいもフィリングの各配合成分は、さつまいも40〜65重量%、油脂3〜8重量%、卵蛋白質0.3〜1.1重量%及びマンナン0.05〜0.1重量%の配合量であることが好ましい。
【0015】
さつまいもの配合量が、40重量%未満であると、さつまいもフィリングの性状が柔らかくなり過ぎ、また、65重量%を超えると、さつまいもフィリングの性状が硬くなり、本来の滑らかな状態がなくなることがある。
【0016】
また、卵タンパク質の配合量が0.3重量%未満であると、さつまいもフィリングの耐熱性が低下し、また、1.1重量%を超えると硬くなり、ボソボソした食感となることがあるからである。
【0017】
本発明において、混合物に対する卵タンパク質とマンナンの投入温度が70℃未満であると、得られるさつまいもフィリングの保存性が低下することがある。また、投入温度が80℃を超えると、ザラつきが発生する。
【0018】
本発明において、卵タンパク質とマンナンを投入し攪拌して後、直ちに包装充填することが好ましい。得られるさつまいもフィリングの保存性を高めるためである。この包装は、樹脂フィルム等で密閉状態で行うことが好ましい。包装することにより、製品の冷却効果を高めるためである。
【0019】
この充填包装物に対しては中心温度を40℃以下に30分間以内で冷却することが好ましい。この冷却までの時間が30分間を超えると、包装したさつまいもフィリングが変質してしまいザラつきが発生するからである。
【0020】
本発明によれば、配合した卵タンパク質とマンナンの投入時の温度管理を行うことで、さつまいもフィリングを得るための加熱によっても、さつまいもフィリング本来の柔軟性と滑らかさを維持し、かつ良好な食味を保持させることができる。さらに、さつまいもフィリングが包含されている加工食品を焼成する際にも、さつまいもフィリングの焼き減りや、流れ出しの発生を防止できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
【0022】
【実施例】
(対象区)
【0023】
【表1】
【0024】
表1に示す各配合量で、皮なしで乱切りしたさつまいもに砂糖とマーガリンを混合し攪拌を行いながら、100℃で5分間保持し、これを80℃まで冷却して包装充填して対象区を得た。
(試験例1〜8)
【0025】
【表2】
【0026】
表2に示す各配合量で、皮なしで乱切りしたさつまいもに、砂糖、マーガリン及び乾燥卵白を混合し、100℃で5分間保持し、これを80℃まで冷却して包装充填した。これを試験例1〜8の試料とした。
(試験例9〜16)
【0027】
【表3】
【0028】
表3に示す各配合量で、皮なしで乱切りしたさつまいもに、砂糖、マーガリン及びマンナンを混合し、100℃で5分間保持し、これを80℃まで冷却して包装充填して試験例9〜16の試料とした。
【0029】
これらの試験例1〜16の試料について、耐熱性及び食味について試験を行い、その結果を表2及び表3に示した。
【0030】
ここでの耐熱性は、30mmの直径で30mmの高さに円柱状に30g絞り出して、これを200℃のオーブンで20分間焼成した後、その高さを測定した。この高さが25mm以上あったものを最良で○、20mm以上のとき良で△、20mm未満を不良で×、とした。
【0031】
食味は、前記した対象区を基準としてパネラー10名で試食を行い、8名以上の者が食味差なしと判断した物を○とし、7〜5名であるとき△、5名未満であるとき×とした。
【0032】
なお、卵由来のタンパク質の単体と、マンナン単体での使用では、効果のある傾向は示すが満足いく結果は得られなかった。これは耐熱性もさることながら、仕込み時に全てを添加して加熱を行ったために、卵由来のタンパク質が熱変性しザラつきが発生したからである。そこで、次に卵由来のタンパク質とマンナンとの併用及びその添加時期の検討を行った。
(試験例17〜23)
【0033】
【表4】
【0034】
表4に示す配合量で、さつまいもに砂糖、マーガリン、乾燥卵白及びマンナンを混合し、100℃で5分間保持し、これを80℃まで冷却して包装充填した。これを試験例17〜23の試料とした。
【0035】
表4に示す結果から、耐熱性を維持するためにはマンナンが0.03重量%以上、乾燥卵白が0.3重量%以上必要であることが好ましいことが分る。
【0036】
そこで、試験例17〜23の試料について、加熱混合後の乾燥卵白及びマンナンの投入温度を60〜90℃の温度状態に保ち、充填包装して中心温度が40℃以下となるように30分間以内で冷却して、それぞれの耐熱性、食味及び保存性について試験を行い、その結果を表5に示した。
【0037】
【表5】
【0038】
保存性については、包装した試料を37℃で保管して30日経過した物を検査した。検査方法は標準平板菌数測定法を用いて結果を確認した。30日経過後で結果が良好な物を○、30日経過未満で腐敗、変敗が発生したものを×とした。
【0039】
表5に示す結果から、乾燥卵白の配合量が0.3重量%未満であるか、マンナンの配合量が0.05重量%未満である場合には、耐熱性を維持することが困難であることが分かる。
【0040】
乾燥卵白の配合量が0.3重量%以上であると共に、マンナンの配合量が0.05重量%以上であり、しかも加熱後の投入時の品温が70〜80℃の範囲であると、耐熱性、食味及び保存性について、いずれも良好なさつまいもフィリングを得ることができることが分かる。
【0041】
次に、上記の結果に基づき、試験例19の試料を加熱攪拌後の品温を80℃に保ち、これに乾燥卵白とマンナンを投入攪拌して容器に充填し、その後冷却時における中心温度と時間を試験した結果を表6に示した。
【0042】
【表6】
【0043】
表6の結果から、卵タンパク質とマンナンの投入時の温度は70〜80℃であり、その包装充填後の冷却温度と時間は30分以内に中心温度が40℃以下にしたものが好ましい結果を得た。
【0044】
冷却温度と時間が30分以内で中心温度が40℃以下であると耐熱性も良好で、食味も滑らかな状態となるが、冷却時に中心温度が40℃を超える場合には、耐熱性は良好であるが、食味が劣りザラつきやバサつきが発生する欠点があることが分かる。
(実施例1、比較例1)
上記した結果に基づき、試験例19の試料をさつまいもフィリングとした。即ち、配合原料の全てを加熱攪拌しその品温を80℃に保ち、その後中心温度を40℃以下に冷却してさつまいもフィリングを得て、このさつまいもフィリングをパイ生地に包み込んでパイの製造を行った。
【0045】
パイ生地については、表7に示す成分原料により作成した。
【0046】
【表7】
【0047】
パイの製造は、次のとおりである。即ち、パイ生地60gを正方形に展開し、これにさつまいもフィリング30gを充填包装内から絞り出し、図1に示す態様で、パイ生地を折り返して包み込んだ。これを200℃、20分間の条件で焼成し、製品パイを得た。製品パイAは、図1及び図2に示すように、生地bの内部にさつまいもフィリングaを包み込んだ形態となっており、生地bの表面に切り込みcが設けられている。
【0048】
比較例1としては、上記と同じパイ生地に前記した対象区のさつまいもフィリングを同様に包み込んで、これを200℃、20分間の条件で焼成し得たものである。
【0049】
実施例1及び比較例1の製品パイについて、パイにおける耐熱性を前記同様に評価して表8に示した。食味は対象区を基準として、パネラー10名で試食を行い、7名以上が良好と判断したとき◎、良好と判断した者が7〜5名であるとき○、5名以下であるとき×とした。
【0050】
【表8】
【0051】
表8の結果から、比較例1との比較において、実施例1の製品パイAはさつまいもフィリングaの柔軟な性状を保持し、ザラつき等の障害を生じることなく良好な状態で包含し、その耐熱性及び食味が良好なものであった。しかも、図1及び図2に示す形態で得られ、生地bの内部に剥がれや、さつまいもフィリングaが押し出されることもなかった。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、従来のさつまいもフィリングとは異なり、高い耐熱性を保持し、食感及び風味を含む食味に優れたさつまいもフィリングを得ることができる。このため、利用価値が高く、蒸し菓子、パン、パイ、饅頭などの多様な種類の加工食品のさつまいもフィリングとして最適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のさつまいもフィリングを包んで焼成して得られたパイの斜視図である。
【図2】 本発明の加工食品用耐熱性さつまいもフィリングを包んで焼成して得られたパイの縦断面図である。
【図3】 従来のさつまいもフィリングを包んで焼成して得られたパイの縦断面図である。
【符号の説明】
A 製品パイ
a さつまいもフィリング
b パイ生地
c 切り込み
Claims (2)
- さつまいもに油脂を投入して加熱混合し、この混合物を70〜80℃の温度状態に保ち卵タンパク質及びマンナンを投入し、これを充填包装して後、その中心温度が40℃以下となるように冷却することを特徴とする加工食品用耐熱性さつまいもフィリングの製造方法。
- 充填包装物の中心温度が40℃以下の状態で、30分間以内で冷却する請求項1に記載された加工食品用耐熱性さつまいもフィリングの製造方法。
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