JP7211413B2 - 菓子生地、菓子、菓子用組成物及びこれらの製造方法 - Google Patents
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Description
具体的に、本発明は、以下の実施形態を有するものである。
[I-1]小麦、乳、卵及び大豆を実質的に含まず、α化澱粉及び水分を含む菓子生地。
[I-2]さらにβ澱粉を含む[I-1]に記載の菓子生地。
[I-3]水分の含有量は、菓子生地の全質量に対して18~60質量%である[I-1]又は[I-2]に記載の菓子生地。
[I-4]さらに油脂を含み、油脂の含有量は、菓子生地の全質量に対して5~60質量%である[I-1]~[I-3]のいずれかに記載の菓子生地。
[I-5]α化澱粉の含有量は、菓子生地の全質量に対して7~60質量%である[I-1]~[I-4]のいずれかに記載の菓子生地。
[I-6]β澱粉の含有量は、菓子生地の全質量に対して1~50質量%である[I-2]~[I-5]のいずれかに記載の菓子生地。
[I-7]α化澱粉とβ澱粉の質量比が1:50~50:1である[I-2]~[I-6]のいずれかに記載の菓子生地。
[I-8]香料をさらに含む[I-1]~[I-7]のいずれかに記載の菓子生地。
[II-1](a)水分と油脂を混合して混合体を得る工程と、
(b)前記混合体に少なくともα化澱粉を含む粉体を混合する工程と、を含む、
菓子生地の製造方法。
[II-2]前記(a)工程が水分と油脂とβ澱粉を混合して混合体を得る工程であるか、あるいは、(b)工程が前記混合体にα化澱粉とβ澱粉を含む粉体を混合する工程である、[II-1]に記載する製造方法。
[II-3]小麦、乳、卵及び大豆を実質的に含まない菓子生地を製造するための組成物であって、α化澱粉を含み、小麦、乳、卵及び大豆を実質的に含まない組成物。
[II-4]β澱粉をさらに含む、[II-3]に記載する組成物。
[II-5]粉体組成物である[II-3]または[II-4]に記載する組成物。
[II-6]前記[II-1]または[II-2]に記載する製造方法の(b)工程においてα化澱粉を含む粉体として使用される粉体組成物である、[II-3]~[II-5]のいずれかに記載する組成物。
[III-1][I-1]~[I-8]のいずれかに記載の菓子生地の加熱成型物である菓子。
[III-2]菓子に含まれる全固形分質量100質量%に対する全蛋白質量が5質量%以下である[III-1]に記載の菓子。
[III-3]小麦、乳、卵及び大豆に由来するアレルゲンを含まない[III-1]又は[III-2]に記載の菓子。当該菓子は、小麦、乳、卵及び大豆から選択される少なくとも1種の食物に対してアレルギーを有する者のための菓子として提供することができる。
[III-4]クッキー、タルト、サブレ、パイ、ボーロ又はビスケットである[III-1]~[III-3]のいずれかに記載の菓子。
[III-5][I-1]~[I-8]のいずれかに記載の菓子生地を成型する工程、及び加熱する工程を有する、[III-1]~[III-4]のいずれかに記載する菓子の製造方法。
[IV-1]小麦、乳、卵及び大豆を実質的に含まない菓子の製造に、[I-1]~[I-8]のいずれかに記載する菓子生地を用いることを特徴とする、菓子の保形性を向上する方法。当該保形性の向上方法には、菓子生地の成型時及び/又は菓子焼成時の変形を抑制する方法が含まれる。
[IV-2]小麦、乳、卵及び大豆を実質的に含まない菓子生地の製造に、原料としてα化澱粉を配合することを特徴とする、菓子生地の成型性を向上する方法。
[IV-3]さらにβ澱粉を配合する[IV-2]に記載する方法。
[IV-4]さらに油脂を配合し、油脂の配合量は、菓子生地の全質量に対して5~60質量%である[IV-2]または[IV-3]に記載の方法。
[IV-5]α化澱粉の含有量は、菓子生地の全質量に対して7~60質量%である[IV-2]~[IV-4]に記載の方法。
[IV-6]β澱粉の含有量は、菓子生地の全質量に対して1~50質量%である[IV-2]~[IV-5]のいずれかに記載の方法。
[IV-7]α化澱粉とβ澱粉の質量比が1:50~50:1である[IV-2]~[IV-6]のいずれかに記載の方法。
本発明の菓子生地は、小麦、乳、卵及び大豆を実質的に含まず、α化澱粉及び水分を含むことを特徴とする。本明細書において、本発明の菓子生地とは、α化澱粉に少なくとも水分を混合することで得られる固形状物のことをいい、加熱して菓子として食用に供される前の状態、つまり加熱して菓子を製造する前段階のものをいう。菓子生地は、所定の形状に成型される前の状態であってもよいし、また所定の形状に成型された後の状態であってもよい。両者を区別するために、成型後の菓子生地を「成型生地」と称する場合がある。なお、成型前の菓子生地は、所望の形状に成型できる程度の固形性状を有するものであればよい。例えばパンケーキやケーキ等の生地(batter)のようにペースト状の流動性を有するものであってもよいし、またクッキー、パイまたはパン等の生地(Pastry dough)のように自重で形状が変わる流動性はないものの、外的な力により変形するものであってもよい。
<α化澱粉>
α化澱粉は、生澱粉を水に分散して膨潤させた後、加熱して糊化させた糊化澱粉である。その使用に際しては、糊化後、乾燥して調製される乾燥粉体または乾燥顆粒物が用いられる。
ヒドロキシプロピル化澱粉は、ヒドロキシプロピル基を有する加工澱粉であり、原料の未加工澱粉である澱粉種(原料種)を酸化プロピレンでエーテル化することで得られる。ヒドロキシプロピル基を有するため、ヒドロキシプロピル化澱粉は親水性が高い。また、ヒドロキシプロピル化澱粉は老化耐性に優れている。原料とする澱粉の種類は前述の通りであり、好ましくはタピオカ澱粉、及び馬鈴薯澱粉、より好ましくはタピオカ澱粉である。
(1)測定するヒドロキシプロピル化澱粉約50~100 mgを精密に量り、0.5 mol/lの硫酸25 mlを加えて沸騰水浴中で加熱して溶かし、冷後、水で正確に100 mlとして被験試料液とする。必要に応じて、ヒドロキシプロピル基が4 mg/100ml以上とならないように希釈する。
(2)別に、未加工澱粉についても同様に操作し、吸光度測定の対照液とする。
(3)これらの液1 mlずつを正確に量り、それぞれ25 mlの目盛り付試験管に入れ、冷水で冷却しながらそれぞれに濃硫酸8 mlを滴下する。よく撹拌した後、沸騰水浴中で正確に3分間加熱し、直ちに氷水中で冷却する。
(4)冷却後、それぞれにニンヒドリン試薬(5%のNaHSO3水溶液にニンヒドリンを溶解して3%濃度に調整したもの)0.6 ml を注意しながら管壁に沿って加え、直ちに振り混ぜ、25℃の水浴中に入れて100分間放置する。
(5)次いでそれぞれに濃硫酸を加えて25 mlとし、栓をして振盪しないように静かに数回上下を逆にする。その後、直ちに吸光度測定用のセルに移し、正確に5分後に、対照液に対する590nmの吸光度を測定する。
(6)別途調製した標準原液を用いて検量線を作製し、それから被験試料中のプロピレングリコール濃度(μg/ml)を算出する。
[検量線の作製]
プロピレングリコール約25mgを精密に量り、水を加えて正確に100mlとし、標準原液とする。標準原液2、4、6、8、10mlを正確に量り、それぞれに水を加えて正確に50 mlとして、標準溶液とする。それぞれの標準溶液の1 mlを正確に採り、25mlの目盛り付試験管に入れ、冷水中で濃硫酸8 mlを滴下し、それぞれにニンヒドリン試薬0.6 ml を注意しながら管壁に沿って加え、以下、前述する被験試料と同様に操作して検量線を作成する。
(7)次式によりヒロドキシプロピル基含量(%)を求め、更に乾燥物換算を行う。
本発明の菓子生地は、前記α化澱粉に加えて、水分を含む。ここで、水分の含有量は、特に制限されるものではないが、菓子生地の全質量に対して、18質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることが一層好ましい。また、水分の含有量は、菓子生地の全質量に対して、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましく、40質量%以下であることが一層好ましい。菓子生地における水分含有量を上記範囲内とすることにより、菓子生地の取扱いが容易となり、菓子生地を成型しやすくなる。また、菓子生地を成型後、加熱して製造される菓子の保形性及び食感をより効果的に高めることができる。
本発明の菓子生地は、さらにβ澱粉を含むことが好ましい。β澱粉とは生澱粉を水に分散して膨潤させただけの未糊化澱粉(未α化澱粉)である。α化澱粉とβ澱粉を併用して菓子生地を製造することで、β澱粉を用いない場合よりも、菓子生地の固さや流動性がより一層調整しやすく、成型性を向上することができる。またこれにより、菓子の保形性もより一層高めることができる。β澱粉は、加熱処理することで良好な硬さを発現することができる。このため、β澱粉を配合することで、菓子に適度な硬さを付与することができる。本発明では、前述するα化澱粉とβ澱粉を併用することにより、保形性とサクサクとした食感を兼ね備えた菓子を製造することができる。また、α化澱粉に対してβ澱粉を組み合わせることでβ澱粉の分散が安定維持されるため、菓子生地中の澱粉の分布の均一性を高めることができる。これにより、澱粉を、水分や油脂分中に均一に分散させた状態で加熱に供することができ、より一層食感に優れた菓子を製造することができる。
また、β加工澱粉としてヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を用いてクッキーのようにサクサクした食感を有する菓子を製造するためには、そのCL化度は、粘度が10~2000の範囲にあるリン酸架橋澱粉を用いることが好ましく、好ましくは粘度が20~1500の範囲にあるリン酸架橋澱粉を用いることがより好ましい。
菓子生地中に含まれるα化澱粉とβ澱粉の合計含有量は、菓子生地の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、40質量%以上であることが特に好ましい。また、α化澱粉とβ澱粉の合計含有量は、菓子生地の全質量に対して、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。
本発明の菓子生地は、さらに油脂を含むことが好ましい。油脂としては、食用油脂や加工油脂を用いることができる。食用油脂としては、例えば、ナタネ油、ハイエルシン菜種油、米油、綿実油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、サフラワー油、キャノーラ油、コーン油、パーム油、ヤシ油、及びカカオ脂等の植物性油脂;牛脂、豚脂、魚油、及び鯨油等の動物性油脂を挙げることができる。加工油脂としては、食用油脂に水素添加、エステル交換等の物理的または化学的処理を施した加工油脂を挙げることができる。本発明では、油脂は、小麦、乳、卵及び大豆を原料としない油脂であることが好ましい。特に本発明において好ましく用いられる油脂としては、例えば、マーガリン類ではファットスプレット、その他の油脂としてショートニングを挙げることができる。また、市販品として、例えば、ナタネ油を原料として製造されたA-1ソフトマーガリン(ボーソー油脂(株)製)を挙げることができる。当該市販品は牛乳、卵、大豆、小麦を含まず、食物アレルギー対応製品として製造販売されている油脂である。
本発明の菓子生地は、上述したα化澱粉、水分、β澱粉及び油脂以外に、製造する菓子の種類に応じて、他の任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、本発明の作用効果を損なわないものであればよく、少なくともアレルギーを誘発しないものである。つまり、本発明で用いる任意成分は、小麦、乳、卵及び大豆を実質的に含まないものである。これを限度として、例えば、食塩、砂糖、乳化剤、膨張剤、風味付けパウダー、調味料、酸味料、甘味料、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、着色料、保存料、香料、機能性素材等を挙げることができる。中でも、本発明の菓子生地は、食塩、砂糖、乳化剤、風味付けパウダー、甘味料及び香料から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、砂糖、風味付けパウダー、及び香料から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。なお、本発明の菓子生地は、少なくとも香料を含むものであることが好ましく、このような場合、例えば油脂由来の異臭をマスキングすることで、菓子の風味を高めることができる。
本発明の菓子生地の製造方法は特に限定されるものではないが、(a)水分と油脂を混合して混合体を得る工程と、(b)該混合体に少なくともα化澱粉を含む粉体を混合する工程と、を含むことが好ましい。斯くしてα化澱粉、水分及び油脂を含む菓子生地を製造することができる。菓子生地にβ澱粉を配合する場合、β澱粉は、(a)工程で配合し、水分と油脂とβ澱粉との混合体として調製するか、もしくは(b)工程で使用するα化澱粉を含む粉体に混合されていることが好ましい。具体的には、例えば、(a)工程で水にβ澱粉を分散した後に油脂と混合してもよく、油脂にβ澱粉を分散した後に水と混合してもよく、また、(b)工程で水分と油脂の混合体にα化澱粉とβ澱粉を含む粉体を混合してもよい。なお、水分と油脂の混合体にα化澱粉とβ澱粉を含む粉体を混合する場合は、α化澱粉の粉末とβ澱粉の粉末をプレミックスして混合体に添加してもよい。
本発明は、上述した菓子生地を、成型後、加熱して製造される菓子に関するものである。成型生地の加熱方法は特に限定されるものでなく、例えば焼く、蒸す、茹でる、揚げる等の方法が挙げられる。好ましくは、成型生地を焼成してなる焼き菓子である。このような焼き菓子としては、制限されないものの、例えば、クッキー、タルト、サブレ、ボーロ、ビスケット、パイ、マドレーヌ等を挙げることができる。中でも、本発明の菓子は、クッキー、タルト、サブレ、パイ、ボーロ又はビスケットであることがより好ましく、クッキーであることが特に好ましい。
本発明は、小麦、乳、卵及び大豆を実質的に含まない菓子の保形性(形状保持性)を向上する方法に関する。ここで菓子の保形性を向上するとは、具体的には、小麦、乳、卵及び大豆を実質的に含まず、またα化澱粉を含まない菓子生地を成型する際及び/又は成型生地を焼成する際に生じ得る変形を抑制することを意味する。かかる保形性の向上効果(成型時及び/又は焼成時の変形の抑制効果)は、成型した菓子生地(成型生地)を加熱焼成し、菓子を製造した後に、加熱前後で形状(形と大きさ)を比較し、両者の差異が少ないことをもって良好であると判定できる。その詳細は実施例の欄にて詳細に説明する。当該方法は、菓子の製造に、前述する本発明の菓子生地を用いることで実施することができる。
[α化澱粉]
20℃以下の冷水を手で撹拌しながら、この中に少しづつ未溶解物(ダマ、ママコ)ができないようにα化加工澱粉を添加し、4%濃度の澱粉溶液を作成する。その後、手撹拌しながら容器を30℃の水につけ、4%濃度、30℃の澱粉溶液を作成し、当該澱粉溶液の粘度を測定する。
[β澱粉]
4%濃度に調製した加工澱粉のスラリーを、90℃に加熱しながら20分間撹拌し、その後、30℃に冷却し、当該冷却時(30℃)の粘度を測定する。
表1に記載する処方に従って、ボウルにマーガリンをハンドミキサー(National社製)でクリーム状になるまで混合した後、砂糖を加えさらに混合した。そこに水を入れ、均一になるまで混合した。さらに、バニラエッセンスを添加し、混ぜ合わせた。次いで、α化澱粉とβ澱粉を加え、ゴムベラで粉っぽさがなくなるまで混ぜ合わせて固形状(ドウ状)の菓子生地(クッキー生地)を得た。得られた菓子生地を幅42mm、長さ185mm、高さ37mmの直方体形状の型に充填し、5℃の冷蔵庫に30分間置いた。その後、冷蔵庫から取り出し、生地を型から取り出し、6mmの厚さに切り(37mm×42mm×6mm)、180℃のオーブンで12分間焼成し、焼き菓子(クッキー)を得た。
表1及び2に記載する処方に従って、使用するα化澱粉またはβ澱粉の種類と各成分の配合量を変更した以外は実施例1と同様にして、菓子生地(クッキー生地)及び焼き菓子(クッキー)を得た。なお、実施例2~11の菓子生地は実施例1と同様に固形状(ドウ状)を有し、実施例12~14の菓子生地は半固形状(ドウ状とペースト状との中間の状態)、実施例15~18の菓子生地は水分が少ないため纏まりにくく脆い固形状を有していた。
表3に記載する処方に従って、ボウルにマーガリンをハンドミキサー(National社製)でクリーム状になるまで混合した後、砂糖、食塩、水、コーンスターチ、ベーキングパウダーをハンドミキサーで混合しながら添加し、ゴムベラで粉っぽさがなくなるまで混ぜ合わせて半固形状の菓子生地を得た。得られた菓子生地を幅42mm、長さ185mm、高さ37mmの直方体形状の型に充填し、5℃の冷蔵庫に30分間置いた。その後、冷蔵庫から取り出した菓子生地は、生地がべたつき、型抜きが出来なかった。そのため、型に入った状態で菓子生地を-30℃の急速冷凍機で凍らせた後に型抜きし、次いで厚さ6mmになるように切り分け(37mm×42mm×6mm)、180℃のオーブンで12分間焼成して、焼き菓子(クッキー)を得た。
表3に記載する処方に従って、ボウルにマーガリンをハンドミキサーでクリーム状になるまで混合した後、各種の原料を比較例1と同様に添加し、半固形状の菓子生地を作製し、型に充填して5℃の冷蔵庫に30分間置いた。比較例2においても冷蔵庫から取り出した菓子生地は、生地がべたつき、圧延及び型抜きが困難であったため、型に入った状態で菓子生地を-30℃の急速冷凍機で凍らせた後に型抜きし、次いで厚さ6mmになるように切り分け(37mm×42mm×6mm)、180℃のオーブンで12分間焼成して、焼き菓子(クッキー)を得た。
表3に記載する処方に従って、ボウルに無塩バターをハンドミキサー(National製)でクリーム状になるまで混合した後、砂糖を加えさらに混合した。そこに卵を入れ、均一になるまで混合した。さらに、バニラエッセンスを添加し、混ぜ合わせた。次いで、小麦粉を加え、ゴムベラで粉っぽさがなくなるまで混ぜ合わせ、菓子生地を得た。得られた菓子生地を幅42mm、長さ185mm、高さ37mmの直方体形状の型に充填し、5℃の冷蔵庫に30分間置いた。その後、冷蔵庫から取り出した生地を型から取り出し、6mmの厚さに切り(37mm×42mm×6mm)、180℃のオーブンで12分間焼成し、焼き菓子(クッキー)を得た。
上記方法で製造した菓子生地について、下記に記載する方法に従って、蛋白含有量、水分含有量、及び油脂含油量を測定するとともに、それを加熱焼成して製造した菓子について保形性および食感を評価した。結果は表1~3に併せて記載する。
日本食品基準成分表2015年版(七訂)の分析マニュアルに基づいて、マクロ改良ケルダール法にて窒素定量し、換算係数(6.25)を乗じることで固形分重量を算出した。
日本食品基準成分表2015年版(七訂)の分析マニュアルに基づいて、減圧加熱乾燥法(直接法)にて算出した。
油脂含有量は、菓子生地の全質量に対するマーガリンの脂質量を油脂含有量とした。
焼成後の菓子の平面形状を写真に撮り、その画像をもとに、参考例1の菓子(コントロール品)の平面形状と比較して、このコントロール品からどの程度形状が崩れているかを評価した。具体的には、図1に示すように、コントロール品からの形状の崩れを段階的に示した見本形状1~4を基準にして下記の4段階で評価を行った。
[評価基準]
4:見本形状4(形状の崩れが最も少ない)-極めて良好
3:見本形状3(形状の崩れが少ない)-良好
2:見本形状2(形状の崩れが認められる)-やや不良
1:見本形状1(形状の崩れが最も多い)-不良
実施例、比較例及び参考例の菓子を、焼成後、室温まで放冷した後、訓練されたパネラー10名で試食し、参考例1の菓子の食感をコントロールとして、以下の評価基準で評価した。10名のパネラー間での評価の差はほとんどなかった。表には各パネラーの評価点の平均値を記載した。なお、評価が3以上を合格レベルとした。
[評価基準]
4:コントロールと同じくらいサクサクしている
3:コントロールよりはサクサク感が低下している(脆いまたは硬い)
2:サクサク感は少なく、しっとりしている
1:サクサク感はなく、ベタついている
一方、比較例1~3で得られた菓子(クッキー)は、保形性が悪く、焼成の段階で形状が崩れ、隣り合う生地同士が焼成の過程で混ざり合い、生地同士が結合した状態で焼成され、個々の菓子が得られなかった。また、比較例2及び3においては、サクサクとした食感も得られなかった。なお、参考例1は、小麦粉、バター、卵を含む通常のクッキーである。
小麦、乳、卵、及び大豆を原料に含まない下記の材料を用いて、タルトケース生地を調製し、それを焼成してアレルゲンフリーの菓子(タルトケース)を製造した。なお、α化澱粉としてα化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉(HP化度2.5、4%濃度での粘度130mPa・s)を、またβ澱粉としてヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉(HP化度3.6、4%濃度での粘度1400mPa・s)を使用した。またマーガリンとして、実施例1と同じものを使用した(以下、実施例20及び21も同じ)。これらの澱粉には小麦、乳、卵、及び大豆以外にもアレルゲン物質は含まれていない(特定7品目(卵・乳・小麦・そば・落花生・えび・かに)の含有量1ppm未満)。また当該菓子に含まれる全蛋白質量は全固形分質量あたりの0.05質量%以下である。
α化澱粉 21.0(質量%)
β澱粉 31.5
マーガリン 31.5
粉糖 10.5
色素 0.05
バニラエッセンス 0.1
バター香料 0.1
水 残 部
合 計 100.00質量%
1)マーガリンをハンドミキサーでクリーム状になるまで混ぜる。
2)粉砂糖を加えて混ぜ合わせる。
3)バニラエッセンスとバター香料を加えて混ぜる。
4)色素と水を合わせ、数回に分けながら生地に加え、均一になるまで良く混ぜる。
5)篩った澱粉(α化澱粉、β澱粉)を加え、粉っぽさがなくなるまでゴムベラで混ぜ合わせて生地をドウ状にまとめる。
6)調製した生地をラップで包み冷蔵庫(3℃)で30分寝かせる。
7)次いで生地を約35gずつに小分けをし、さらに冷蔵庫(3℃)で30分寝かせる。
8)タルト用の型に少量の油を塗り、上記の生地を伸ばしながら型の底と側面を被うように充填して成型し、底にフォークで穴を空ける。
9)これを再び、冷蔵庫(3℃)で30分寝かせる。
10)型に入れた生地の上にタルトストーンを乗せ、オーブンを用いて、180℃で15分間焼成する。
11)タルトストーンを外して、更に180℃で8分焼成する。
12)型をオーブンから取り出して粗熱がとれるまで室温で冷ました後、型から焼成された菓子を外して、更に室温で冷まして菓子(タルトケース)を得る。
13)これを包装した後、急速冷凍機で冷凍する。
小麦、乳、卵、及び大豆を原料に含まない下記の材料を用いて、実施例19と同様の操作により、タルトケース生地を調製し、それを焼成してアレルゲンフリーの菓子(タルトケース)を製造した。なお、α化澱粉としてα化リン酸架橋タピオカ澱粉(HP化度-、4%濃度での粘度260mPa・s)を、またβ澱粉としてヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉(HP化度3.6、4%濃度での粘度1400mPa・s)を使用した。これらの澱粉には小麦、乳、卵、及び大豆以外にもアレルゲン物質は含まれていない(特定7品目(卵・乳・小麦・そば・落花生・えび・かに)の含有量1ppm未満)。また当該菓子に含まれる全蛋白質量は全固形分質量あたりの0.05質量%以下である。
α化澱粉 25.6(質量%)
β澱粉 25.6
マーガリン 30.7
粉糖 10.2
色素 0.05
バニラエッセンス 0.1
バター香料 0.1
水 残 部
合 計 100.00質量%
焼成後、型から外したタルトケースの形状は極めて良好(保形性評価4)であった。また室温で冷やした後に食べたタルトケースの食感は、ザクザクした硬めの食感であった。また、冷凍後、解凍した後に食べたタルトケースの食感も変わらずザクザク感が維持されており、冷凍耐性があること、つまり冷解凍が可能で、冷凍食品として製造販売することができることが確認された。
小麦、乳、卵、及び大豆を原料に含まない下記の材料を用いて、実施例19と同様の操作により、タルトケース生地を調製し、それを焼成してアレルゲンフリーの菓子(タルトケース)を製造した。なお、α化澱粉1としてα化リン酸架橋タピオカ澱粉(HP化度-、4%濃度の粘度260mPa・s)、α化澱粉2としてα化ヒドロキシプロピルリン酸架橋タピオカ澱粉(HP化度2.5、4%濃度の粘度130mPa・s) を、またβ澱粉としてヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉(HP化度3.6、4%濃度の粘度1400mPa・s)を使用した。これらの澱粉には小麦、乳、卵、及び大豆以外にもアレルゲン物質は含まれていない(特定7品目(卵・乳・小麦・そば・落花生・えび・かに)の含有量1ppm未満)。また当該菓子に含まれる全蛋白質量は全固形分質量あたりの0.05質量%以下である。
α化澱粉1 15.7(質量%)
α化澱粉2 10.5
β澱粉 26.2
マーガリン 31.5
粉糖 10.5
色素 0.05
バニラエッセンス 0.1
バター香料 0.1
水 残 部
合 計 100.00質量%
型から外したタルトケースの形状は極めて良好(保形性評価4)であった。また焼成後、室温で冷やした後に食べたタルトケースの食感は、サクサクした少し硬めであり、口の中でほぐれる食感が得られた。また、冷凍後、解凍した後に食べたタルトケースの食感も変わらず、冷凍耐性があること、つまり冷解凍が可能で、冷凍食品として製造販売することができることが確認された。
Claims (11)
- 小麦、乳、卵及び大豆を実質的に含まず、焼き菓子用生地の全固形分質量に対する小麦、乳、卵及び大豆に由来する蛋白質の含有量がそれぞれ10μg/g未満であって、
α化澱粉を11~25質量%、β加工澱粉を25~41質量%、油脂を8.2~40.8質量%、及び水分を含み、
前記α化澱粉は、α化リン酸架橋澱粉、又はα化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉であり、
前記β加工澱粉は、ヒドロキシプロピル化澱粉、又はヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉であり、
前記α化澱粉と前記β加工澱粉の質量比が1:1~3:7である、
β非加工澱粉を含まない焼き菓子用生地
(但し、非α化澱粉100重量部に対し、α化澱粉を1~60重量部、コンニャク糊を1~30重量部からなる配合物を含む食品用組成物を除く。)。 - 前記水分の含有量は、前記焼き菓子用生地の全質量に対して18~60質量%である請求項1に記載の焼き菓子用生地。
- 固形状、半固形状、又はそれらの成型物である、請求項1又は2に記載する焼き菓子用生地。
- 請求項1~3のいずれか一項に記載の焼き菓子用生地の加熱焼成物である菓子。
- 前記菓子に含まれる全固形分質量に対する全蛋白質量が5質量%以下である請求項4に記載の菓子。
- 小麦、乳、卵及び大豆に由来するアレルゲンを含まない菓子である請求項4又は5に記載の菓子。
- クッキー、タルト、サブレ、パイ、又はビスケットである請求項4~6のいずれか一項に記載の菓子。
- 小麦、乳、卵及び大豆を実質的に含まない請求項1に記載する焼き菓子用生地を製造するための組成物であって、α化澱粉とβ加工澱粉を1:1~3:7(質量比)の割合で含み、
前記α化澱粉は、α化リン酸架橋澱粉、又はα化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉であり、
前記β加工澱粉は、ヒドロキシプロピル化澱粉、又はヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉であり、
β非加工澱粉を含まず、焼き菓子用生地の全固形分質量に対する小麦、乳、卵及び大豆に由来する蛋白質の含有量がそれぞれ10μg/g未満である組成物
(但し、非α化澱粉100重量部に対し、α化澱粉を1~60重量部、コンニャク糊を1~30重量部からなる配合物を含む食品用組成物を除く。)。 - (a)水分と油脂を混合して混合体を得る工程と、
(b)前記混合体に少なくともα化澱粉とβ加工澱粉を含み、β非加工澱粉を含まない粉体を混合する工程と、を含み、
前記α化澱粉は、α化リン酸架橋澱粉、又はα化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉であり、
前記β加工澱粉は、ヒドロキシプロピル化澱粉、又はヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉である、
請求項1~3のいずれか一項に記載する焼き菓子用生地の製造方法
(但し、非α化澱粉100重量部に対し、α化澱粉を1~60重量部、コンニャク糊を1~30重量部からなる配合物を含む食品用組成物の製造方法を除く。)。 - 前記(a)工程が水分と油脂とβ加工澱粉を混合して混合体を得る工程であるか、あるいは、(b)工程が前記混合体にα化澱粉とβ加工澱粉を含む粉体を混合する工程である、請求項9に記載の製造方法。
- 菓子の製造に請求項1~3のいずれかに記載する焼き菓子用生地を用いることを特徴とする、焼き菓子の保形性を向上する方法。
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