JP3668379B2 - 米を原料とする麺の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、米を原料とする麺の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
麺は、安く、手軽であることから日頃からよく食され、その種類もうどん、中華麺、パスタといったいろいろなものがある。これらの麺は、独特のこし(弾力性、硬さ、又は噛み応えをいう)を持っており、このこしが麺の善し悪しを決める一因となっているともいえる。このこしは、麺の主原料である小麦粉に含まれるグルテンの作用によるものであり、このグルテンを調節することにより、麺に適度のこしを引き出している。
その一方で、米は日本人の主食として食されており、これを原料とした麺としてビーフンがある。このビーフンは、うるち米を粉状にして麺の状態にしたものであり、近年、日本では若い人の嗜好に合い、広く愛好されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ビーフンにはこしがなく、上記した麺のこしを大切にする他の麺とは、一線を画するものである。また、米にはもともとグルテンが含まれていないため米を原料として製造した麺にはこしが出ず、こしを出すためには、何らかの手段を講ずる必要があった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、こしを有することを特徴とする米を原料とする麺の製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
ここで、第1の発明に係る米を原料とする麺は、アミロースを含む米、芋類のデンプン粉、及び小麦粉を主原料とする麺であって、前記米は粒状となって麺内にその一部が未α化の状態で混入している。
主原料のうちの芋類のデンプン粉及び小麦粉は、非常に細かくα化に時間がかからないので、加熱することにより粒状の米よりも早くα化する。一方、アミロースを含む米は、粒状になって混入しており、α化に時間を要する。したがって、加熱した場合、α化した粒状米と未α化の状態である粒状米(一部が未α化の状態で残っている粒状米)が存在することとなり、この粒状米の未α化の部分(及びα化した後に老化した部分)が麺を食したときにこしとして感じられる。
ここで、アミロースを含んだ米には、国産うるち米のようにアミロースを15〜25%含むものが好ましいが、それより少ない割合のものやタイ米のようにアミロースをほぼ100%含む米であってもよい。また、芋類のデンプン粉とは、バレイショデンプン粉、さつまいものデンプン粉等をいい、粒径が0.5〜5μmのもの(0.5μm未満であってもよく、又は5μmを超えても粒状米より先にα化すればよい)が好ましく、麺のつなぎの役割を果たすものである。そして、小麦粉には、一等の強力粉を用いるのが好ましく、その粒径は5〜20μmのもの(5μm未満であってもよく、又は20μmを超えても粒状米より先にα化すればよい)が好ましい。この小麦粉は、グルテンの作用も期待できるが、主として混練する際に原料が機械(ミキサー等)の内壁に付着しないようにするために用いている。
【0005】
また、前記芋類のデンプン粉及び小麦粉は、前記米1に対し、前記デンプン粉が外分で0.8〜1.3、前記小麦粉が外分で0.1〜0.4の範囲で含まれていることが望ましい。
デンプン粉を外分で0.8〜1.3とするのは、0.8未満であるとすぐに麺が切れてしまうという問題があり、1.3を超えると、含有する粒状米に対する量が多くなり、こしがあまり感じられなくなるという問題があるからである。また、小麦粉を0.1〜0.4とするのは、0.1未満では、混練する際に原料が機械(ミキサー等)の内壁に付着しやすくなって上手く塊状物が製造できないという問題があり、0.4を超えると、麺が切れやすくなるという問題があるからである。
そして、副原料として、食塩及び豆乳が少量含まれているとよい。食塩を含ませるのは、グルテンの作用を増強させる作用も期待できるが、主として味付けのためであり、米1に対し、外分で0.005〜0.01の割合で含ませるのが適当である。豆乳を含ませるのは、小麦粉と同様、原料が機械(ミキサー等)の内壁に付着しないようにして、効率的に塊状物を製造するためであり、米1に対し、外分で0.02〜0.1の割合で加えるとよい。
場合によっては、更に、副原料として少量の鹹水(かん水)を入れて中華麺としてもよい。この入れる鹹水の量は米1に対し、外分で0.003〜0.01とするとよい。鹹水を入れることにより、米粉の臭いを除去することが可能となる。
【0006】
また、第2の発明に係る米を原料とする麺の製造方法は、アミロースを含む米を粉砕した0.05〜0.5mmの粒度範囲のものを主体とする粒状米、芋類のデンプン粉、及び小麦粉からなる主原料を所定量の水と共に混練し、多数の小径の塊状物を製造する第1工程と、前記第1工程で作られた多数の塊状物を所定時間加熱して、該塊状物中の粒状米の一部にβデンプンを残した状態で該塊状物をそれぞれα化する第2工程と、前記第2工程で処理された多数の塊状物を混練して形保持可能な粘性を有する生地とする第3工程と、前記第3工程で製造された生地をプレス成形して、薄板状物とする第4工程と、前記第4工程で製造された薄板状物の老化を行って全体を固化させる第5工程と、前記第5工程で固化した薄板状物を切断して麺とする第6工程とを有している。
この製造方法においては、粒状となった米が用いられ、この粒状米は芋類のデンプン粉及び小麦粉に比較してα化に時間を要する。したがって、粒状米にβデンプンが残った状態で、芋類のデンプン粉及び小麦粉のα化が可能となる。そして、最終的に粒状米の未α化部分がこしとして感じられる部分となる。なお、0.05〜0.5mmの粒度範囲のものを主体とする粒状米とするのは、0.05mm未満のものが多くなると、こしとして感じられる部分が少なくなり、0.5mmを超えるものが多くなると麺としたときにこしというよりも異物感として感じられるからである。
また、第3工程において、多数の塊状物を再び混練するのでα化した粒状米とβデンプンが残った粒状米を含む原料(生地)をより均一に混練することができる。そして、第4工程では、老化前に生地をプレス成形するので薄板状物を製造しやすくなっている。さらに、第5工程で全体を固化させた後に、薄板状物を切断して麺とするので薄板状物の切断を行いやすくなっている。
【0007】
ここで、第1工程で使用する主原料の配分は、前記粒状米1に対し、前記デンプン粉が外分で0.8〜1.3、前記小麦粉が外分で0.1〜0.4の範囲で含まれているとよい。この範囲とするのは、第1の発明と同様の理由によるものである。
また、前記第1工程で製造される塊状物には、前記粒状米に対して外分で0.02〜0.1の豆乳と、少量の味付け用の食塩とが混入されているとよい。豆乳をこの範囲で混入するのは、第1の発明と同様の理由によるものであり、味付け用の食塩は、米1に対し、外分で0.005〜0.01の割合で混入するとよい。
そして、前記第1工程で製造された塊状物は、直径が1〜3cm程度の団子状に成形されているとよい。直径が1〜3cm程度とするのは、1cm未満であると原料の混練が不十分であるという問題があるからであり、また、直径が3cm程度となるまで混練すれば混練は充分になされているからである。
【0008】
さらに、前記第2工程における塊状物のα化は、該塊状物を蒸練することによって行うとよい。
また、前記第1工程における主原料の混練、及び前記第3工程における多数の塊状物の混練は、それぞれミキサーによって行うとよい。ミキサーによって行うことにより、短時間に原料等を均一に混練することができる。
そして、前記第4工程におけるプレス成形は、ロールプレスを用いて行い、前記薄板状物の厚みは0.5〜5mmの範囲で行うとよい。ロールプレスを使用することにより均一な厚さとすることができる。なお、この範囲とするのは、0.5mm未満では、切断して麺としたときに表面から粒状米が露出するからであり、5mmを超えると、切断して麺としたときに麺として太くなりすぎるからである。
さらに、前記第5工程の老化は、前記薄板状物が凍結しない温度で冷蔵庫に8〜15時間放置することによって行うとよい。低温で放置することによりデンプンが老化しやすくなるからである。なお、放置する時間を8〜15時間とするのは、8時間未満では、薄板状物にまだ強い粘性が残って切断しにくいからであり、15時間を超えて放置すると、老化が進行して薄板状物が硬くなりすぎて切断しにくくなるからである。
【0009】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1は、本発明の一実施の形態に係る米を原料とする麺の製造工程の説明図である。
【0010】
図1に示すように、まず始めに、アミロースを20%程度含むうるち米を粉砕機を用いて粉砕し、0.05〜0.5mmの粒度範囲のものを主体とする粒状米としておく(ステップ1)。
そして、主原料である粒状米20kg、芋類のデンプン粉の一例であるバレイショデンプン粉20kg、及び小麦粉4kgと、副原料である食塩160g、豆乳0.8kgとを水7.2kgと共に第1のミキサー内に投入し、第1のミキサー内で15分程度混練する(ステップ2)。この混練により、原料が相互に絡み合い、直径1〜3cm程度の多数の団子状の塊状物ができる。なお、このとき、原料に含まれる小麦粉及び豆乳の作用により、原料はミキサーの内壁に付着しにくくなっていて、小麦粉及び豆乳は、塊状物製造の促進に寄与することとなる。
【0011】
この多数の塊状物を同径(2cm程度が好ましい)となるように調整し、これを蒸籠内に入れて20分程度蒸練する(蒸す)(ステップ3)。
こうして蒸練することにより、まず、バレイショデンプン粉及び小麦粉に含まれるデンプンがα化し、粒状米に含まれるデンプンの一部がα化することになる(粒状米の一部にβデンプンを残した状態となる)。即ち、芋類のデンプン粉及び小麦粉は粒状米に比べて細かくα化に時間がかからないため、すぐにα化することとなり、一方、粒状米はα化に時間がかかり、粒度が大きいものほど内部のα化は進みにくくなっている。したがって、蒸練したときに、粒状米の一部が未α化(βデンプン)の状態で残ることとなる。このβデンプンの残った粒状米は糊状となっておらず、最終的に麺とした場合にこしとして感じられる部分となる。
【0012】
次に、蒸練した多数の塊状物を第2のミキサー内に投入する。そして、第2のミキサー内でよく混練し、一塊の形保持可能な粘性を有した生地を製造する(ステップ4)。
こうしてできた生地を押出機を用いて押出した後、ロールプレスの相対する2個のロールの中心へ押し込みプレス成形し、所要の厚さ(0.5〜5mm程度)の薄板状物にする(ステップ5、6)。そして、出てくる薄板状物を麺棒に巻き付け、しばらく放置して水分を均等に分布させる。
この状態のままでは、薄板状物(生地)に粘りがあって、薄板状物を麺状に切断することができないので、薄板状物が凍結しない温度(2〜10℃程度)の冷蔵庫内で一晩(12時間程度)放置し、α化したデンプンの一部を老化させることにより全体を固化させる(ステップ7)。この放置により、α化した芋類のデンプン粉及び小麦粉の一部及び場合によっては粒状米のα化したデンプンの全部又は一部が老化して、薄板状物は固化することになる。
【0013】
一晩放置した後、薄板状物を切刃をもった切出機で線状に平行切断し、麺とする(ステップ8)。こうしてできた麺は、一般の麺と同様にこしを有したものとなる。
なお、鹹水を他の原料と一緒に第1のミキサー内に入れて、以後上記と同様の方法で製造することにより、中華麺を製造することもできる。
【0014】
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜8記載の米を原料とする麺の製造方法においては、主原料として粒状米、芋類のデンプン粉及び小麦粉を用いており、このうちの芋類のデンプン粉及び小麦粉は、粒状米に比較して細かくα化に時間がかからないので、粒状米の一部にβデンプンを残した状態で、塊状物それぞれα化することができ、粒状米のβデンプンとして残った部分(及びα化した後に老化した部分)、即ち、未α化部分をこしとして感じることのできる麺を製造することができる。また、主原料として用いた粒状米は、0.05〜0.5mmの粒度範囲のものを主体としていることにより適度なこしを有する麺を製造することが可能となる。
【0016】
特に、請求項2記載の米を原料とする麺の製造方法においては、第1工程で使用する主原料の配分は、粒状米1に対し、デンプンが外分で0.8〜1.3、小麦粉が外分で0.1〜0.4の範囲で含まれているので、麺が切れにくくなり、適度にこしをもったものとすることができると共に、小麦粉の作用により原料が機械の内壁に付着しにくくなり、効率的に麺を製造することができる。また、小麦粉のグルテンの作用により麺によりこしを持たすことができる。
請求項3記載の米を原料とする麺の製造方法においては、第1工程で製造される塊状物には、粒状米に対して外分で0.02〜0.1の豆乳が混入されているので、原料が機械の内壁に付着するのを抑制することができ、また、少量の味付け用の食塩が混入されているので、味付けの施された美味しい麺を製造することができる。
請求項4記載の米を原料とする麺の製造方法においては、第1工程で製造された塊状物は、直径が1〜3cm程度の団子状に成形されているので、充分に混練がなされた状態となり、また、この状態で蒸籠に移し加熱(蒸練)することでデンプンのα化を全体としてむらなく進行させることも可能となる。
請求項5記載の米を原料とする麺の製造方法においては、第2工程における塊状物のα化は、該塊状物を蒸練することによって行うので、効率よくデンプンのα化を促進することができる。
【0017】
請求項6記載の米を原料とする麺の製造方法においては、第1工程における主原料の混練、及び第3工程における多数の塊状物の混練は、それぞれミキサーによって行うので、短時間に効率よく混練することができる。
請求項7記載の米を原料とする麺の製造方法においては、第4工程におけるプレス成形は、ロールプレスを用いて行うので、均一にプレスができると共に薄板状物の厚みは0.5〜5mmの範囲とするので、食しやすい適度な太さの麺を製造することができる。
請求項8記載の米を原料とする麺の製造方法においては、第5工程の老化は、薄板状物が凍結しない温度で冷蔵庫で行うので、デンプンを短時間で老化させることができ、8〜15時間放置するので、切断するのに最も適度な硬さにすることができ、効率よく麺を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る米を原料とする麺の製造工程の説明図である。
Claims (8)
- アミロースを含む米を粉砕した0.05〜0.5mmの粒度範囲のものを主体とする粒状米、芋類のデンプン粉、及び小麦粉からなる主原料を所定量の水と共に混練し、多数の小径の塊状物を製造する第1工程と、
前記第1工程で作られた多数の塊状物を所定時間加熱して、該塊状物中の粒状米の一部にβデンプンを残した状態で該塊状物をそれぞれα化する第2工程と、
前記第2工程で処理された多数の塊状物を混練して形保持可能な粘性を有する生地とする第3工程と、
前記第3工程で製造された生地をプレス成形して、薄板状物とする第4工程と、
前記第4工程で製造された薄板状物の老化を行って全体を固化させる第5工程と、
前記第5工程で固化した薄板状物を切断して麺とする第6工程とを有することを特徴とする米を原料とする麺の製造方法。 - 請求項1記載の米を原料とする麺の製造方法において、前記第1工程で使用する主原料の配分は、前記粒状米1に対し、前記デンプン粉が外分で0.8〜1.3、前記小麦粉が外分で0.1〜0.4の範囲で含まれている米を原料とする麺の製造方法。
- 請求項1又は2記載の米を原料とする麺の製造方法において、前記第1工程で製造される塊状物には、前記粒状米に対して外分で0.02〜0.1の豆乳と、少量の味付け用の食塩とが混入されている米を原料とする麺の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の米を原料とする麺の製造方法において、前記第1工程で製造された塊状物は、直径が1〜3cm程度の団子状に成形されている米を原料とする麺の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の米を原料とする麺の製造方法において、前記第2工程における塊状物のα化は、該塊状物を蒸練することによって行う米を原料とする麺の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の米を原料とする麺の製造方法において、前記第1工程における主原料の混練、及び前記第3工程における多数の塊状物の混練は、それぞれミキサーによって行う米を原料とする麺の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の米を原料とする麺の製造方法において、前記第4工程におけるプレス成形は、ロールプレスを用いて行い、前記薄板状物の厚みは0.5〜5mmの範囲で行う米を原料とする麺の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の米を原料とする麺の製造方法において、前記第5工程の老化は、前記薄板状物が凍結しない温度で冷蔵庫に8〜15時間放置することによって行う米を原料とする麺の製造方法。
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