JP3667630B2 - 遮光帯を有するレンチキュラーレンズシートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レンチキュラーレンズシートの非レンズ面の非集光部に、遮光層を形成する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
画面サイズの大きいテレビジョンとして、背面より映像を投影して前面より観察する、いわゆるプロジェクション型テレビジョンがある。一般のCRTよりも輝度の高い投映用のCRTや、液晶(LCD)プロジェクター、もしくはデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を使用したDLPプロジェクター等を用いて投映するものである。
このプロジェクション型テレビジョンにおける映像投映用のスクリーンとしては、代表的には、図1に模式的に示すように、フレネル凸レンズシート1とレンチキュラーレンズシート2とを組み合わせたものが使用されている。スクリーン背面からの投映光4を、まず、フレネル凸レンズシート1で絞って、適度な範囲内に向かう光、例えば平行光5とした後、レンチキュラーレンズシート2を用いて、水平方向(図1では左右方向)に適度な広がり角度θを持たせた出射光6として出光させ、図1では下側になる観察方向より映像が眺められるようになっている。
このようなスクリーンを使用することにより、CRTから出光される光4を、所定の角度範囲θで有効に利用することができるので、スクリーンの正面から水平方向にずれた位置で観察しても、明るい映像を眺めることができる。
【0003】
ところで、ここで使用されるレンチキュラーレンズシート2は、一般に、図2に斜視図で示すような構造を有している。
即ち、レンチキュラーレンズシート2は、入光面側(図2では上面)に、断面が円形等のかまぼこ形状のレンチキュラーレンズ2aが多数並べられた形状を有しており、非レンズ面には、レンチキュラーレンズ2aの焦点近傍以外を覆う通常、黒色の遮光帯(ブラックストライプとも言う。)3が設けられており、外光を吸収して、映像のコントラストを向上させている。
【0004】
このブラックストライプ3は、反対側のレンチキュラーレンズ形状との正確な位置関係を有している必要があるため、従来、その製造には、種々の方法が検討されてきた。
例えば、ブラックストライプを設けるべき部分を凸部(凹部でもよい。)として形成しておき、凸部にのみ、塗装や転写でブラックストライプを形成する方法がある。この方法によるときは、凸部がレンチキュラーレンズとの正確な位置関係を有していれば、格別、注意を払わなくても、ブラックストライプを正確な位置に形成することができる。
【0005】
しかし、レンチキュラーレンズと凸部とはレンチキュラーレンズシートの互いに反対側に存在するので、製造時の金型としては、それぞれの面の形状に合せた二つの金型を準備し、正確に位置合わせする必要がある。また、凸部は、ブラックストライプを設ける際に、それ以外の部分とある程度の段差を有していないと凹部にブラックストライプ形成用の樹脂組成物が付着する。
【0006】
これらの点は、従来、さほど問題にはならなかったが、近年、CRTを拡大投映するものに替わって、LCDプロジェクター、もしくはDLPプロジェクターを用いたプロジェクション型テレビジョンが出現し、これらのプロジェクターからの光は画素(ドットマトリックス)によって構成されるため、CRTを拡大投映する場合に使用するよりもピッチが小さい、ファインピッチのレンチキュラーレンズシートが要求され、一例として、CRTを拡大投映する場合、ピッチが0.5mm〜2.0mmであったのに対し、0.05〜0.3mmのものが使われるようになった。
レンチキュラーレンズのピッチ(図1中、符号pで示す)が小さい、ファインピッチのものが望まれるようになるに連れ、上記の位置合わせが難しくなってきた。また、凸部の段差が大きいと、出射光(図1中符号6で示す。)の光路を妨害する恐れがあるため、ブラックストライプの巾を狭くする必要に迫られるし、凸部の段差を小さくすると、凹部にブラックストライプ形成用の樹脂組成物が付着する懸念が生じる。
【0007】
そこで、このような機械的な手段によらず、レンチキュラーレンズを利用した光学的手段により、ブラックストライプを形成しようとする試みがなされた。
特開平9−120102号公報には、要約すると、レンチキュラーレンズシートの平坦面に電離放射線硬化型樹脂層を形成し、レンチキュラーレンズ側から光線(紫外線を例示)で露光して、集光部の樹脂層を硬化させ、非集光部の樹脂層の粘着性を利用して、トナーもしくは転写シートの転写層を付着させる方法が開示されている。また、露光は、レンチキュラーレンズの長さ方向を向いた帯状の光線をレンチキュラーレンズが並んでいる方向に相対移動させて、平行光による露光が行なわれるよう配慮している。
なお、電離放射線と言うものの、その範囲に含まれ得る電子線は、レンチキュラーレンズのような光学レンズでは屈折しないし、電子線を屈折させる方策の記述がないから、上記の方法は実際には、紫外線を使用する方法である。
【0008】
上記公報に記載の方法によれば、レンチキュラーレンズを有するのとは反対側の面に凸部等を形成する必要がなく、レンチキュラーレンズを利用してブラックストライプを設ける事ができるので、凸部にブラックストライプを設ける方法における上記の欠点が解消される。
【0009】
しかしながら、上記公報に記載された方法は、電離放射線硬化型樹脂層の形成、露光による集光部を硬化させ、光集光部の粘着性を残す、および光集光部へのトナーもしくは転写層の付着の各工程を要するものであり、凸部にブラックストライプを設ける方法にくらべ、工程数が格段に増加し、効率的ではなく、より一層の改善が望まれるものである。
【0010】
これとは別に、特開平11−84105号公報には、透明基板上に透明粘着層を形成した上に透明微小球体を供給して半ば埋め込み、その上に光吸収層を設けて透明微小球体を覆い、その後、透明基板側より平行光を照射して、収斂させ、光出射部位上の光吸収層のみを除去する方法が開示されている。
【0011】
上記公報に開示されている方法では、ガラスや樹脂のビーズを使用している関係上、等方性を有する、即ち、水平方向および垂直方向に、同じ角度で広がりを持って光が出射するスクリーンが得られる。
しかし、スクリーンを観察する人の水平方向の位置は、複数の人が並んで座ったと仮定すれば、座る位置によってかなり異なるが、垂直方向の位置は、概ね座ったときの各人の目の高さであるから、人によってそれほどの差違は生じない。従って、一見、等方性は利点のように見えるが、実際には垂直方向に無駄に光を広げる結果となり、それだけ、映像の輝度を低下させることになる。
従って、飽くまでも、レンチキュラーレンズシートの改善により、ファインピッチ化を進める必要がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明においては、凸部を形成することなく、レンチキュラーレンズを利用した光学的な手段によりブラックストライプを形成すること、とりわけ、ファインピッチのレンチキュラーレンズシートにおいて、そのようなことを実現させること、および、使用する光の平行性を向上させて、得られる製品の精度を向上させると共に、製造効率(特に製造速度)を向上させることを課題とするものである。
【0013】
【課題を解決する手段】
発明者の検討により、遮光層形成用として、光吸収剤を含み、かつ遮光性の樹脂組成物を用いて、レンチキュラーレンズシートの非レンズ面に適用し、レンズ面側から、平行光によって露光を行うことにより、上記の課題が解決されることが判明した。
【0014】
第1の発明は、シートの少なくとも片面にレンチキュラーレンズが並んだレンズ面が設けられているレンチキュラーレンズシートの非レンズ面に、一様な厚みで遮光性および光吸収性を有する層を形成した後、前記の遮光性および光吸収性層を有する層の厚みが0.1〜5μmであり、前記レンズ面側より、平行光を照射することにより、前記非レンズ面の前記の各レンチキュラーレンズの集光部において、前記遮光性および光吸収性を有する層の溶融、昇華、燃焼、爆融もしくは削摩により除去して、前記非レンズ面の非集光部に、遮光帯を形成することを特徴とする遮光帯を有するレンチキュラーレンズシートの製造方法に関するものである。第2の発明は、第1の発明において、前記の遮光性および光吸収性を有する層の形成を、光吸収性を有する光吸収性層を形成し、その後、遮光性を有する遮光性層を形成することにより行なうことを特徴とするレンチキュラーレンズシートの製造方法に関するものである。第3の発明は、第1または第2いずれかの発明において、前記レンチキュラーレンズシートとして、透明基材シート上に積層された透明樹脂層を前記レンズ面の逆型形状を有する付型用型を用いた成形により得たものを使用することを特徴とするレンチキュラーレンズシートの製造方法に関するものである。第4の発明は、第1〜第3いずれかの発明において、前記レンチキュラーレンズのピッチが50μm〜300μmであることを特徴とするレンチキュラーレンズシートの製造方法に関するものである。第5の発明は、第1〜第4いずれかの発明において、前記遮光帯の幅が、前記レンチキュラーレンズのピッチをpとするとき、0.3p〜0.9pであることを特徴とするレンチキュラーレンズシートの製造方法に関するものである。第6の発明は、第1〜第5いずれかの発明において、前記平行光を、前記レンチキュラーレンズシートに垂直な方向から照射することを特徴とするレンチキュラーレンズシートの製造方法に関するものである。第7の発明は、第1〜第5いずれかの発明において、前記平行光を、前記レンチキュラーレンズシートに垂直な方向より傾けた方向から照射することを特徴とするレンチキュラーレンズシートの製造方法に関するものである。第8の発明は、第1〜第5いずれかの発明において、前記平行光を、前記レンチキュラーレンズシートの各々のレンチキュラーレンズに対し、互いに異なる二以上の方向から照射することを特徴とするレンチキュラーレンズシートの製造方法に関するものである。第9の発明は、第1〜第8いずれかの発明において、前記平行光を、前記レンチキュラーレンズシートの前記各レンチキュラーレンズが並んだ一方の端から順次、他端に向かうよう、前記平行光および前記レンチキュラーレンズシートとを相対的に移動させながら照射することを特徴とするいずれか記載のレンチキュラーレンズシートの製造方法に関するものである。第10の発明は、第1〜第9いずれかの発明において、前記平行光がレーザー光であり、固体レーザ、気体レーザー、液体レーザー、半導体レーザーのいずれかから放射される光を使用することを特徴とするレンチキュラーレンズシートの製造方法に関するものである。第11の発明は、第1〜第10いずれかの発明において、前記遮光性および光吸収性を有する層が、カーボンブラック、アクリジン、ポリアミック酸とローダミンG、KrFエキシマレーザー用色素、カルボキシル基又はスルホン酸基で置換されたポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、4[(2−ヒドロキシエチル)エチルアミノ]−4’−(ニトロフェニル)アゾベンゼン、1−(ジメチルアミノ)−ピレン等のピレン、7−(ジメチルアミノ)−4−メチルクマリン等のクマリン、4[(2−ヒドロキシエチル)エチルアミノ]−4’−(トリフルオロメチルスルフォニル)トラン、もしくは7−ヒドロキシ−4−メチル−2H−1−ベンゾピレン−2−オン、第3アミン官能基を有しアクリル重合体の酸性水素と第4級アンモニウム塩を生成する光吸収剤、金属ホウ素化物、金属カーバイド、金属窒化物、炭素窒化物、もしくはブロンズ構造の酸化物から選ばれた物質を含有することを特徴とするレンチキュラーレンズシートの製造方法に関するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の遮光帯を有するレンチキュラーレンズシートの製造方法を図3(a)〜(d)を引用して説明する。
まず、シートの片面(図3では上面)にレンチキュラーレンズ2aが並んだレンズ面が設けられたレンチキュラーレンズシート2を準備する(図3(a))。
レンチキュラーレンズシート2は、一般的に言って、図2に斜視図で示すような形状を有しており、各レンチキュラーレンズ2aは、その断面が図2に表れるように、円、楕円、もしくは放物線の一部をなした、かまぼこ形レンズであって、各レンチキュラーレンズ2aは、かまぼこ形レンズの長手方向と直角方向に密に並べられてレンズ面が構成されている。
【0016】
この明細書および添付図面においては、レンチキュラーレンズシート2を、概ね、シートの片面にレンチキュラーレンズ2aが並んだレンズ面が設けられたものとして説明するが、両面にレンズ面を有するものでもよいし、その場合、片面のレンチキュラーレンズは、他方のレンチキュラーレンズの焦点近傍にのみ設けられてあってもよい。
【0017】
レンチキュラーレンズシート2は、また、図2に示すように、透明基材シート2bにレンチキュラーレンズ2aが並んだレンズ面が設けられたような積層構造を有するものであってもよい。
このような積層構造を有するレンチキュラーレンズシート2は、透明基材シート2b上に透明樹脂層を介して、レンズ面の逆型形状を有する付型用型を押し付けることにより製造でき、通常、透明な紫外線硬化性樹脂組成物を透明基材シート2b上に塗布し、塗布後、金型ロールと接触させ、そのままの状態で、紫外線硬化性樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させることにより製造する。
【0018】
この場合、透明基材シート2bとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−α−オレフィン共重合体エラストマー、酸変性ポリオレフィン、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアセタール、ポリメチルメタクリレート、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート(略称;PET)、ポリブタジエンテレフタレート、ナイロン等の単体、あるいは、混合体(共押出フィルム等)、および、ラミネート品等を挙げることができる。
【0019】
また、透明基材シート2bに積層して、レンズ面を形成するための樹脂層を構成する樹脂としては、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(例、PMMA)、ポリスチレン、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン系アクリレートなどの熱硬化性樹脂をそれぞれ単独、或いは上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを混合して使用することができる。
【0020】
レンズ面を形成するための樹脂層を構成する樹脂としては、より好ましくは、ラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性物質、或いは、これらにラジカル重合性不飽和単量体を加え電離放射線硬化性、さらに紫外線吸収剤や光開始剤を配合して、特に紫外線硬化性としたもの等を使用することができる。このほか、銀塩、重クロム酸ゼラチン、サーモプラスチック、ジアゾ系感光材料、フォトレジスト、強誘電体、フォトクロミック材料、サーモクロミック材料、カルコゲンガラスなどの感光材料なども使用できる。
【0021】
レンチキュラーレンズシート2の非レンズ面(図では下面)には、遮光性および光吸収性を有する層3aを形成する。なお、以降の説明において、遮光性および光吸収性を有する層を、遮光性/光吸収性層と略記する。
遮光性/光吸収性層3aは、バインダ成分、例えば、透明樹脂と、遮光性物質および光吸収性物質の両方の物質、もしくは遮光性物質および光吸収性物質の両方の物質の性質を兼ね備える物質とからなる樹脂組成物からなり、好ましくは、一様な厚みで形成される。
【0022】
遮光性/光吸収性層3aには、上記の樹脂組成物中に、遮光性を付与する目的で、カーボンブラックや暗色系の顔料、または/および染料からなる遮光性物質が適宜に配合されている。
遮光性物質としては、光を遮る効果が大きく、しかも画像の表示の妨げとなるような色相を遮光帯に付与することがない色相を有していることが好ましく、色相としては、黒色、灰色、もしくは白色であるが、明度が高いと外光反射を伴なうので、黒色が好ましい。
従って、カーボンブラック、Fe3O4、もしくは濃色の染料の混合物等により着色して黒色とするが、黒色の度合いが高く、かつ、加工時に熱吸収もあるカーボンブラックを使用する事がより好ましい。
【0023】
光吸収性物質は、次の工程において、レンチキュラーレンズシート2のレンズ面側からのレーザー光等の平行光の照射により遮光性/光吸収性層3aを部分的に除去して遮光帯を作成する際に、照射されたレーザー光等の平行光のエネルギーを高い効率で熱エネルギーに変換することを目的として添加されているものである。
光吸収性物質としては、具体的には、近赤外光(波長域700〜2000nm)に対するものとして、銅または鉄を含有する化合物の微粉体あるいは錯体、カーボンブラック、アントラキノン化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、クロム,コバルト金属錯塩化合物、六塩化タングステンと塩化スズをメチルメタクリレート(MMA)シロップに溶解させ重合させた材料、ジチオール系の金属錯体(主にニッケル錯体)、スクアリリウム化合物、アセチレン系ポリマーに酸化剤を気相もしくは液相でドーピングした材料、チオ尿素に硫化第二銅を作用させた材料、イモニュウム系材料等の多くの無機錯体や有機化合物等を挙げることができる。
【0024】
また、可視光(波長400〜700nm)に対する光吸収性物質としては、カーボンブラック、有機顔料、例えば、ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン、ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン、インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン、オキシケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、もしくはフタロシアニン染料等、金属、例えばZn、Cu、Al、Pb、Cr、Cd、Fe、Co、K、Na、Ti、Hg、Sr、Ca、Ba、Si、もしくはS等の単体、合金、酸化物、水酸化物、またはこれらの複合体、等の無機化合物等を挙げることができる。このような遮光性物質および/または光吸収性物質は、遮光性/光吸収性層3a中に、1〜70%(質量基準)程度含有される。含有量が1%未満であると、遮光性/光吸収性層3aを加工して遮光帯3を製作する際の形成精度が低下する。また、含有量が70%を超えると、配合の効果が向上しない。
【0025】
遮光性/光吸収性層3aに含有されるバインダ成分としては、モノマーとして酢酸ビニル、ビニルアルコール、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、例えばメタクリル酸メチル、フッ素含有(メタ)アクリル酸誘導体、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン等のオレフィン等から選ばれる少なくとも1種類のモノマーを重合させた重合体、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートブチレート、エチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース誘導体、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、石油系樹脂、天然ゴム類もしくはブタジエン系ゴム等の合成ゴム類、シリコン樹脂、またはフッ素樹脂等のポリマーから選ばれた透明樹脂を挙げることができ、これらを単独、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0026】
遮光性/光吸収性層3aに含有されるバインダ成分としては、ワックス類を使用することもでき、ワックス類としては、鯨ロウ、蜜ロウ、カルナバロウ、キャンデリラロウ、木ロウ、モンタンロウ、ラノリンロウ等の天然ワックス、パラフィンロウ、マイクロクリスタリンワックス、エステルワックス、酸化ワックス、低分子量ポリエチレンワックス、モンタンワックス、塩化パラフィン等の合成ワックス、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、フロメン酸、ベヘニン酸等の高級脂肪酸、ステアリルアルコール、ベヘニンアルコール等の高級アルコール、ショ糖の脂肪酸エステル、スルビタンの脂肪酸エステル等のエステル類、ステアリンアミド、オレインアミド等のアミド類も用いる事が可能である。
【0027】
遮光性/光吸収性層3aには、酸化剤として、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、もしくは過塩素酸カリウム等を加えると、平行光照射時の燃焼性が向上する。
なお、遮光性/光吸収性層3aには、光照射による遮光帯3形成時の膜切れ性を向上させるために、平均粒径1μm以下のフィラーを30重量%以下の割合で含有させてもよい。
【0028】
遮光性/光吸収性層3aの厚みは、例えば、0.1〜5μm程度、より好ましくは、0.1〜1μm程度とすることができる。厚みが0.1μm未満であると、遮光層3としての機能が不十分になりやすく、5μmを超えると、遮光層3の形成時に、遮光性/光吸収性層3aの膜切れ性が悪くなり高精細なパターン形成が困難となる。
また、遮光性/光吸収性層3aは、一様な厚みであることが好ましい。厚みが一様でないと、次の工程で平行光を照射したときに、熱的挙動にバラツキが生じ、具体的には所定の幅で、遮光性/光吸収性層3aを除去するのに支障があるからである。
遮光性/光吸収性層3aの厚みのバラツキは、膜厚(=平均膜厚)に対して、±20%程度以下であることが好ましい。
【0029】
レンチキュラーレンズシート2の下面に遮光性/光吸収性層3aを形成した後、レンズ面側から平行光源7を使用して平行光8を照射する(図3(c))。
平行光としては、集光により遮光性/光吸収性層を除去し得るものであれば、ハロゲンランプ、キセノンフラッシュランプ、もしくはレーザー光源等のいすれから発する光も使用できる。
このうち、レーザー光としては、Al2 O3、CaF2 、CaWO4 、MgF2、バリウムクラウンガラス、YAG等に代表される固体レーザ、CO2 、Ar、Kr、もしくはXe等の希ガス単独または希ガスとハロゲンガスを含むエキシマレーザーに代表される気体レーザー、キレート化合物溶液またはフタロシアニン、クリプトシアニン、ローダミン等の有機色素溶液またはオキシ塩化セレン等の無機液体等を用いる液体レーザー、Al、Ga、As、In、P、Sb、Pb、Se、Te等から選ばれる2種以上の元素で構成される結晶に代表される半導体レーザー等のレーザーから放射される光を使用することができ、これらのレーザー光は、遮光性/光吸収性層3aに含有されている光吸収性物質との関係から適宜選択することができる。
【0030】
いずれの平行光も、通常の光源から発する可視光、紫外線光源から発する紫外線にくらべ、平行性が格段に高いため、そのままでも充分に使用できるが、必要に応じ、光学系を用いることにより、必要なスポット径になるよう調整して遮光性/光吸収性層3aに照射し、必要によりマスクを介して照射を行なってもよい。光照射量は、使用する光源、遮光性/光吸収性層3aに含有されている光吸収性物質の材質等を考慮して設定することができる。
なお、本明細書において、平行光とは、光源から発した光線どうしのなす角度が0°であるものを指す以外に、中心となる光線を基準に±10°の範囲内にあるものも含めるものとする。
【0031】
照射された平行光は、照射部のレンチキュラーレンズ2aにより屈折し、非レンズ面で集光するので、非レンズ面に積層された遮光性/光吸収性層3aの集光部において、光吸収性物質によって照射光が熱エネルギーに変換される。
【0032】
このため、集光部において、遮光性/光吸収性層3aが溶融、昇華、燃焼、またはアブレーション(削摩もしくは爆融)により、部分的に除去され、遮光帯3が形成される。
単にレーザー照射しただけでは遮光性/光吸収性層3aの残渣が生じ得るので、必要に応じて、適宜な手段、例えば、真空吸引、減圧吸引、拭き取り、空気もしくは液体の吹付け等によって、除去を助けてもよい。
【0033】
遮光性/光吸収性層3a中に含有させるバインダと、遮光性物質、および光吸収性物との次のような組み合わせは、上記したものの中から適宜に組み合わせ得るが、文献に見られる次のような組み合わせも、好ましい例として挙げられる。
【0034】
ニトロセルロース樹脂とカーボンブラック。このカーボンブラックは、遮光性物質でもあり、光吸収性物質でもある。このニトロセルロース樹脂とカーボンブラックとの組み合わせからなる樹脂組成物は、ニトロセルロース樹脂の燃焼速度が速く、また、カーボンブラックの熱吸収性が高いため、平行光による照射により照射部分が昇温するまでの時間が極度に短いので、結果として、可視レーザー光等の平行光を照射すると、照射部分が瞬時に除去される。
【0035】
特開平7−80670号公報に記載のオレフィン系ポリマー(日本ゼオン;ZMS)とアクリジン(分解温度;360℃)との組み合わせ、ポリアミック酸とローダミン6G色素との組み合わせ、もしくはオレフィン系ポリマー(日本ゼオン;ZMS)とKrFエキシマレーザー用色素(日本ケミック製)との組み合わせ。これらにおける樹脂は、加熱硬化する必要がある。
なお、ここで従来技術の説明に挙げられているポリイミド樹脂もエキシマレーザーとの組み合わせで使用できる。
必要に応じて、遮光性物質を添加するとよい。
【0036】
特開平9−1917号公報に記載の光吸収性ポリマー、もしくはバインダと、紫外、可視、もしくは赤外吸収性染料等の光吸収性物質との組み合わせ。ここで光吸収性ポリマーは、バインンダーと光吸収性物質両方の役割を兼ねる。光吸収性ポリマーとしては、例えばカルボキシル基又はスルホン酸基で置換されたポリピロール、ポリチオフェン又はポリアニリンである。これらのポリマーは、必要に応じて、イオンをドーピングすることができる。
必要に応じて、遮光性物質を添加するとよい。
【0037】
特開平8−333424号公報に記載のポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂と光吸収剤(光吸収性物質である。)との組み合わせ。光吸収剤としては、4[(2−ヒドロキシエチル)エチルアミノ]−4’−(ニトロフェニル)アゾベンゼン、1−(ジメチルアミノ)−ピレン等のピレン、7−(ジメチルアミノ)−4−メチルクマリン等のクマリン、4[(2−ヒドロキシエチル)エチルアミノ]−4’−(トリフルオロメチルスルフォニル)トラン、もしくは7−ヒドロキシ−4−メチル−2H−1−ベンゾピレン−2−オン、または第3アミン官能基を有し、アクリル重合体の酸性水素と第4級アンモニウム塩を生成する光吸収剤がある。
必要に応じて、遮光性物質を添加するとよい。
【0038】
また、光吸収性物質としては、金属ホウ素化物、金属カーバイド、金属窒化物、炭素窒化物、もしくはブロンズ構造の酸化物等が使用でき、樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、セルロースエーテルおよびセルロースエステル、もしくはポリアセタール等が使用できる。これらにおいても、必要に応じて、遮光性物質を添加するとよい。
【0039】
遮光性/光吸収性層3aをレンチキュラーレンズシート2の下面に形成するには、上記の光吸収性層形成用の樹脂組成物を塗料として調製したものを用い、公知のコーティング方法、即ち、ロールコーティング、グラビアコーティング、カーテンフローコーティング、かけ流しコーティング、ホイーラーもしくはスピンナーによる回転コーティング、もしくはスプレーコーティング等、またはシルクスクリーン印刷等の公知の印刷方法によってコーティングすればよい。
【0040】
遮光性/光吸収性層3aは、上記のように、レンチキュラーレンズシート2の下面に直接に形成するほか、一旦、別のフィルム等の上に作成した後、転写等によって、形成することができる。
例えば、薄いプラスチックフィルム上に、必要に応じて剥離性層を形成した後、上記の遮光性/光吸収性層3aをコーティング方法または印刷方法によって積層し、その上に必要に応じて接着剤層を積層して転写シートの形状としたものを準備し、レンチキュラーレンズシートの非レンズ面に転写して形成することにより、レンチキュラーレンズシート2下面に遮光性/光吸収性層3aを形成することができる。
【0041】
ところで、遮光性/光吸収性層3aに、遮光性物質および光吸収性物質の両方の物質を配合すると、遮光性物質が光吸収性物質の光吸収を妨げることが有り得る。そのような場合には、光吸収性物質を含有する樹脂組成物からなる光吸収性層をレンチキュラーレンズシートの非レンズ面に先に形成し、その後、光吸収性層を覆って、遮光性物質を含有する樹脂組成物からなる遮光性層を形成するとよい。
【0042】
ところで、レンチキュラーレンズシート2のレンチキュラーレンズ2aのピッチは必要な精度、レンチキュラーレンズシート2の大きさによっても異なるが、実用的には、大きいもので1mm前後以下であり、高精細のものでは、300μm以下であり、例えば、100μm〜200μm程度である。細かいものは製作精度の確保の観点から、20μm以上、より好ましくは50μm以上である。
これに対し、遮光帯3の巾は、レンチキュラーレンズ2aのピッチの0.3倍〜0.9倍、より好ましくは、0.5倍〜0.8倍程度である。0.3倍未満であると、遮光帯3を形成する意味がなく、また、レンズに対して斜めに光を入射させると、コマ収差が生じるので、精度良く遮光帯を形成することができない。他方、入光レンズの焦点にもある程度光が広がるため、0.9倍を超えると、製法上困難である。
従って、遮光帯3の幅が広ければ、平行光の照射により遮光性/光吸収性層3aを除去する巾は狭くて済むが、遮光帯3の幅が狭いときは、遮光性/光吸収性層3aを除去する幅を広くする必要があり、平行光の1回の照射では、除去する部分の幅が狭い場合が有り得る。
【0043】
このような場合には、平行光の照射を、同じレンチキュラーレンズに対し、異なる2以上の方向から照射することにより、遮光性/光吸収性層3を除去する幅を広くするとよい。図5(a)に、平行光として、ビーム8、8L、および8Rの3ビームを用いて3方向から照射する状態を例示する。
実用的には、せいぜい2方向、もしくは3方向から照射するのが効率的である。2方向以上からの照射は、照射毎に照射の方向を変えて2回以上の照射を行なうか、平行光を2ビーム以上を用いて異なる2以上の方向から一度に照射を行なってもよい。あるいは、特開2000−147665に開示されているように、照射の対象となるレンチキュラーレンズシートの上方に、照射の対象となるレンチキュラーレンズシートとレンズピッチが等しい、照射光拡散用のレンチキュラーレンズシートを配置し、照射用のレンチキュラーレンズを介して照射することにより、照射光を拡散させてもよい。
なお、異なる2以上の方向から照射するのに換えて、光拡散剤を含有するシートを介して照射し、除去する部分の幅を広くすることもできる。
【0044】
レンチキュラーレンズシート2のサイズが大きくなると、スクリーンの中心にくらべ、周辺では、明るさが減って見えることがある。スクリーン上のレンチキュラーレンズがどれも同じ形状であると、図4(a)に示すように、中心および左右の周辺の各々のレンチキュラーレンズの光軸5L、5、5Rが、いずれも、スクリーンの直角方向を向いているためである。
【0045】
そこで、スクリーンの中には、図4(b)に示すように、スクリーン周辺部のレンチキュラーレンズの光軸を、スクリーン中心では、符号5’で示すようにスクリーンの直角方向を向いているが、スクリーンの左側の周辺に行くほど、光軸を次第に傾け、符号5L’で示すように、スクリーンの中央寄りに出光するように、また、スクリーンの右側の周辺に行くほど、光軸を次第に傾け、符号5R’で示すように、スクリーンの中央寄りに出光するように光軸を傾けてあるものがある。
【0046】
このように各レンチキュラーレンズ2aの光軸が周辺に行くほど傾いている場合も含め、スクリーン用に使用する際に、レンチキュラーレンズシート2に入射する光として、平行光を想定している場合には、遮光性/光吸収性層3に加工するための平行光8は、スクリーンに対して、常に垂直な方向から照射すればよい。
【0047】
また、スクリーン用に使用する際に、レンチキュラーレンズシート2に入射する光として、平行光以外の光を想定している場合には、遮光性/光吸収性層3に加工するための平行光8を、各部分において、スクリーン用に使用する際のレンチキュラーレンズシート2への入射光と同じ方向になるよう少し傾けて照射することにより開孔部の位置をずらすことができる。
この場合において、平行光の1回の照射で、除去する部分の幅が狭い場合には、図5(b)および図5(c)に示すように、所定の角度での照射光8’に加えて、照射光8’とは入射角度の異なるビーム8L’および/または8R’を用い、照射毎に遮光性/光吸収性層における集光位置を変えて2回以上の照射を行なうか、平行光を2ビーム以上を用いて互いに集光位置が異なるように配置し、一度に照射を行なってもよい。
あるいは、加工のための平行光8を傾ける代わりに、図5に示すようなレンチキュラーレンズの上方に、フレネルレンズシート、もしくはリニアフレネルレンズシートを配置することにより、加工のための平行光8を、フレネルレンズシート、もしくはリニアフレネルレンズシートに直角な方向から照射しても、レンチキュラーレンズに照射される平行光8の角度を傾けることができる。さらに使用するフレネルレンズシート、もしくはリニアフレネルレンズシートが光拡散剤を含有していれば、先に述べたように、除去する部分の幅を広げることもできる。
【0048】
本発明の製造方法により得られるレンチキュラーレンズシートは、レンチキュラーレンズ2aの構造に基づいて、映像光を水平方向に拡散させることができるが、垂直方向の拡散については、レンチキュラーレンズシートを構成する素材、例えば、透明基材シート2bの素材、もしくはレンチキュラーレンズ2aの素材に、適宜な光拡散剤を含有させて行なわせることができる。
【0049】
レンチキュラーレンズシート2への、垂直方向の拡散性の付与は、透明樹脂層中に光拡散剤を含有する光拡散性層、もしくはそのような層を有する光拡散性シートの積層によって行なってもよい。光拡散性層の積層は、透明樹脂中に光拡散剤を分散させた光拡散性樹脂組成物のコーティングにより、レンチキュラーレンズ2に直接塗布することによって、もしくは、別の適宜な透明基材シート上への光拡散性樹脂組成物のコーティングにより得た光拡散性シートを、レンチキュラーレンズ2に、適宜な接着方法、例えば、粘着剤を使用したラミネーション等によって、行なうことができる。
なお、平行光の照射により、遮光性/光吸収性層3aを除去する幅を広くするために、2方向以上の照射方向から照射することがよい旨を先に述べたが、光拡散剤が適用されることにより、照射されることにより、照射された平行光が拡散して幾分広がるので、除去する幅を広くすることができる。
【0050】
レンチキュラーレンズシート2には、スクリーンとして使用する際に、さらに付加した方が好ましい様々な機能の層を積層することができ、レンチキュラーレンズシート2の観察側面上に直接、もしくは、上記の光拡散性シートを介して、適宜な塗布方法等により直接積層してもよいし、別の透明基材シート上に塗布する等して、一旦別の積層体としてから、適宜な接着方法、例えば、粘着剤を使用したラミネーション等により、積層することができる。
本発明のレンチキュラーレンズシートの厚みが薄くなると、レンチキュラーレンズシートの自立性が低下する傾向がある。このため、比較的厚みのある透明板もしくは透明シートの支持体で補強することが好ましく(図1中符号2cで示すものが支持体である。)、あるいは、前記したような光拡散性シートを、厚みのある透明シートを基材として構成し、レンチキュラーレンズシートに積層することが好ましい。
【0051】
上記の付加した方が好ましい機能の層としては、表面が高硬度であるハードコート層、表面における外光の反射を防止する反射防止層、表面の帯電を防止し、触れたときの不快感を減らし、塵埃や汚染物質の付着を防止する帯電防止層等の機能を有する層である。これらの各機能を有する層は、各々の機能を発揮するための材料を同じ層内で併用するか、もしくは各々の機能を有する層を互いに積層する等により、任意に2以上の機能を兼ね備えたものとすることができる。
【0052】
【実施例】
(実施例1)
厚み125μmの透明なPETフィルムの片面に紫外線硬化性樹脂組成物を塗布し、レンチキュラーレンズの逆型形状を形成してある金型ロールの型面に塗布面を押し付け、その状態で、PETフィルム側より紫外線を照射して硬化を行なわせ、レンズピッチ155μm、最大厚み約45μmのレンチキュラーレンズ層をPETフィルムの片側に有するレンチキュラーレンズシートを得た。
【0053】
下記組成の光吸収性層形成用インキ組成物を、ボールミルを用いて充分、混練して作成し、ブレードコーターを利用して、上記により得られたレンチキュラーレンズシートのレンチキュラーレンズの無い方の側に、一面に均一に塗布し、乾燥させて、厚み0.7μmの光吸収性層を形成した。なお、以降における「部」は質量基準である。
(光吸収性層形成用インキ組成物)
・ニトロセルロース樹脂 5部
(旭化成工業(株)製、HIG 1/8)
・カーボンブラック微粒子 5部
(三菱化学(株)製、ダイアブラックLR)
・メチルエチルケトン 45部
・トルエン 45部
【0054】
平行光としては、YAGレーザー(照射面出力;4W、ビームスポット径;3mmφ)を用い、レンチキュラーレンズシートの法線方向から各々のレンチキュラーレンズに照射したところ、各々のレンチキュラーレンズの集光位置に対応する位置の光吸収性層が飛散除去され、開口部を生じた。これにより、130μm幅の遮光帯(ブラックストライプ)が、レンズピッチと同じピッチで形成されたレンチキュラーレンズシートを得た。
【0055】
上記と同様に光吸収性層を形成したレンチキュラーレンズシートに、レンチキュラーレンズシートの法線より+10°および−10°傾けた方向から、法線方向からの照射の際と同じ位置に照射を行なったところ、開口部の幅が拡大して形成された結果、115μm幅の遮光帯(ブラックストライプ)が形成された。
また、照射の角度をレンチキュラーレンズシートの法線より+20°および−20°傾けた方向から、法線方向からの照射の際と同じ位置に照射を行なったところ、100μm幅の遮光帯(ブラックストライプ)が形成された。
【0056】
(実施例2)
下記組成の光吸収性層形成用インキ組成物を用いた以外、実施例1と同様にして、厚み0.4μmの光吸収性層を形成した。
(光吸収性層形成用インキ組成物)
・アクリルスチレン樹脂 15部
(積水化学(株)製、エスレックP)
・カーボンブラック微粒子 5部
(三菱化学(株)製、ダイアブラックLR)
・メチルエチルケトン 40部
・トルエン 40部
実施例1におけるのと同様に、照射角度を変えて照射を行ない、同じ結果を得た。
【0057】
(実施例3)
下記組成の光吸収性層形成用インキ組成物を用いた以外、実施例1と同様にして、厚み0.4μmの光吸収性層を形成した。
(光吸収性層形成用インキ組成物)
・セルロースアセテートブチレート樹脂 20部
(イーストマンケミカル(株)製、CAB551−0.2)
・光熱変換剤(日本化薬(株)製、CY−10) 8部
・クロロホルム 72部
実施例1におけるのと同様に、照射角度を変えて照射を行ない、同じ結果を得た。
【0058】
(実施例4)
下記組成の光吸収性層形成用インキ組成物を用いた以外、実施例1と同様にして、厚み0.4μmの光吸収性層を形成した。
(光吸収性層形成用インキ組成物)
・セルロースアセテートブチレート樹脂 20部
(イーストマンケミカル(株)製、CAB551−0.2)
・光熱変換剤(下記「化1」の構造のもの) 8部
・クロロホルム 72部
実施例1におけるのと同様に、照射角度を変えて照射を行ない、同じ結果を得た。
【0059】
【化1】
【0060】
実施例1によって得られた、遮光帯の幅が130μm、115μm、100μmのレンチキュラーレンズシートと、素材的には実施例1によるものと同様で、ただし、レーザービームをさらに絞って、照射を行ない、遮光帯の幅が90μm、および80μmのレンチキュラーレンズシートとを準備した。
各々のレンチキュラーレンズシートにつき、遮光帯幅(μm)、遮光帯率(=遮光帯幅/レンズピッチ、%で表示)、透過率T(%)、反射率R(%)、および透過率T/反射率Rを求めた結果を「表1」に示す。
これらの測定値は、拡散剤を混入したフレネルレンズシートとの組み合わせで測定したものである。一般に、スクリーンの拡散の強さは、半値角(αV)で表され、ここで用いたフレネルレンズシートの半値角(αV)は4°である。因みに、拡散剤を含まないフレネルレンズシートと組み合わせた場合には、遮光率が80%を超えても、「表1」におけるように、顕著に透過率が減少しない。
【0061】
【表1】
【0062】
なお、実施例1〜4においては、いずれもレンズピッチが155μmのレンチキュラーレンズシートを対象としたが、本発明のレンチキュラーレンズシートのレンズピッチ、もしくはレンズの諸元は、必要に応じて、自由に定めることができる。
「表2」に、遮光帯を形成したレンチキュラーレンズシートの製作例を例示する。「表2」中、試料3が、上記実施例1〜4に相当する。
「表2」中、フィルム厚み、レンズピッチ、BS幅、およびレンズ高さはいずれも単位がμmであり、遮光帯率は「表1」におけるものと同じである。
【0063】
なお、投映源が液晶(LCD)プロジェクター、もしくはデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を使用したDLPプロジェクター等である場合には、これら投映源が単光源であることにより生じるシンチレーション(映像のちらつき)解消が必要である。このために、比較的多量の拡散剤が、フレネルレンズシート中に配合されるので、遮光帯率が高いと、フレネルレンズシート中の拡散剤により拡散された光が、レンチキュラーレンズシートに入射し、出光する際に、遮光帯により遮られる割合が増えることにより透過率が減少するので、「表2」中におけるように、遮光帯率(%)が70%前後(65%〜70%)であることが好ましい。
【0064】
【表2】
【0065】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、レンチキュラーレンズシート自身が有するレンチキュラーレンズによる平行光の集光を利用するので、凸部を形成する必要がなく、効率的にかつ、精度よく遮光帯を製造し得るレンチキュラーレンズシートの製造方法を提供することができる。請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、遮光性物質により、光吸収が妨げられることなく、遮光帯を製造し得るレンチキュラーレンズシートの製造方法を提供することができる。請求項3の発明によれば、請求項1または2いずれかの発明の効果に加え、レンチキュラーレンズシートを透明基材シート上に積層された透明樹脂層への賦型によって形成するので、レンチキュラーレンズシートの形状そのものの製造が効率的に行なえる、レンチキュラーレンズシートの製造方法を提供することができる。請求項4の発明によれば、請求項1〜3いずれかの発明の効果に加え、レンチキュラーレンズのピッチが細かい、いわゆる高精細用途に適したレンチキュラーレンズシートの製造方法を提供することができる。請求項5の発明によれば、請求項1〜4いずれかの発明の効果に加え、レンチキュラーレンズのピッチが細かく、従って、遮光帯の幅が狭いために、レンチキュラーレンズシートの凹凸の利用や、非平行光の利用による従来法では製造が不可能であった高精細用途に適したレンチキュラーレンズシートの製造方法を提供することができる。請求項6の発明によれば、請求項1〜5いずれかの発明の効果に加え、平行光を、前記レンチキュラーレンズシートに垂直な方向に光軸を向けて照射するので、レンチキュラーレンズシートの各部において、レンチキュラーレンズシートに垂直な方向に入射した映像光が、各々のレンチキュラーレンズの集光部で効率よく出光し得るレンチキュラーレンズシートの製造方法を提供することができる。請求項7の発明によれば、請求項1〜5いずれかの発明の発明の効果に加え、平行光を、前記光軸より少しずれた方向から照射するので、開孔部の位置を調節することが容易な、レンチキュラーレンズシートの製造方法を提供することができる。請求項8の発明によれば、請求項1〜5いずれかの発明の効果に加え、平行光を、互いに異なる二以上の方向から照射するので、開孔部の位置および/または幅を調節することが容易な、レンチキュラーレンズシートの製造方法を提供することができる。請求項9の発明によれば、請求項1〜8いずれかの発明の効果に加え、平行光とレンチキュラーレンズシートとを相対的に移動させながら照射を行なうので、照射が効率的に行なえるレンチキュラーレンズシートの製造方法を提供することができる。請求項11の発明によれば、請求項1〜10いずれかの発明の効果に加え、照射部分の除去が効率的に行なえ、生産スピードの向上が可能な、レンチキュラーレンズシートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プロジェクション型テレビジョン用スクリーンの概念図である。
【図2】レンチキュラーレンズシートの斜視図である。
【図3】本発明の製造方法のプロセスを示す図である。
【図4】周辺部の光軸が傾いたレンチキュラーレンズシートの断面図である。
【図5】レーザービーム等の平行光の使用方法を示す図である。
【符号の説明】
1 フレネル凸レンズシート
2 レンチキュラーレンズシート(2a;レンチキュラーレンズ、2b;透明基材シート、2c;支持板)
3 遮光帯(ブラックストライプ、3a;遮光性/光吸収性層)
4 CRTからの投映光
5 平行光
6 出射光
7 平行光源
8 平行光
Claims (11)
- シートの少なくとも片面にレンチキュラーレンズが並んだレンズ面が設けられているレンチキュラーレンズシートの非レンズ面に、一様な厚みで遮光性および光吸収性を有する層を形成した後、前記の遮光性および光吸収性層を有する層の厚みが0.1〜5μmであり、前記レンズ面側より、平行光を照射することにより、前記非レンズ面の前記の各レンチキュラーレンズの集光部において、前記遮光性および光吸収性を有する層の溶融、昇華、燃焼、爆融もしくは削摩により除去して、前記非レンズ面の非集光部に、遮光帯を形成することを特徴とする遮光帯を有するレンチキュラーレンズシートの製造方法。
- 前記の遮光性および光吸収性を有する層の形成を、光吸収性を有する光吸収性層を形成し、その後、遮光性を有する遮光性層を形成することにより行なうことを特徴とする請求項1記載のレンチキュラーレンズシートの製造方法。
- 前記レンチキュラーレンズシートとして、透明基材シート上に積層された透明樹脂層を前記レンズ面の逆型形状を有する付型用型を用いた成形により得たものを使用することを特徴とする請求項1または2いずれか記載のレンチキュラーレンズシートの製造方法。
- 前記レンチキュラーレンズのピッチが50μm〜300μmであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のレンチキュラーレンズシートの製造方法。
- 前記遮光帯の幅が、前記レンチキュラーレンズのピッチをpとするとき、0.3p〜0.9pであることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のレンチキュラーレンズシートの製造方法。
- 前記平行光を、前記レンチキュラーレンズシートに垂直な方向から照射することを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のレンチキュラーレンズシートの製造方法。
- 前記平行光を、前記レンチキュラーレンズシートに垂直な方向より傾けた方向から照射することを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のレンチキュラーレンズシートの製造方法。
- 前記平行光を、前記レンチキュラーレンズシートの各々のレンチキュラーレンズに対し、互いに異なる二以上の方向から照射することを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のレンチキュラーレンズシートの製造方法。
- 前記平行光を、前記レンチキュラーレンズシートの前記各レンチキュラーレンズが並んだ一方の端から順次、他端に向かうよう、前記平行光および前記レンチキュラーレンズシートとを相対的に移動させながら照射することを特徴とする請求項1〜8いずれか記載のレンチキュラーレンズシートの製造方法。
- 前記平行光がレーザー光であり、固体レーザ、気体レーザー、液体レーザー、半導体レーザーのいずれかから放射される光を使用することを特徴とする請求項1〜9いずれか記載のレンチキュラーレンズシートの製造方法。
- 前記遮光性および光吸収性を有する層が、カーボンブラック、アクリジン、ポリアミック酸とローダミンG、KrFエキシマレーザー用色素、カルボキシル基又はスルホン酸基で置換されたポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、4[(2−ヒドロキシエチル)エチルアミノ]−4’−(ニトロフェニル)アゾベンゼン、1−(ジメチルアミノ)−ピレン等のピレン、7−(ジメチルアミノ)−4−メチルクマリン等のクマリン、4[(2−ヒドロキシエチル)エチルアミノ]−4’−(トリフルオロメチルスルフォニル)トラン、もしくは7−ヒドロキシ−4−メチル−2H−1−ベンゾピレン−2−オン、第3アミン官能基を有しアクリル重合体の酸性水素と第4級アンモニウム塩を生成する光吸収剤、金属ホウ素化物、金属カーバイド、金属窒化物、炭素窒化物、もしくはブロンズ構造の酸化物から選ばれた物質の一種もしくは二種以上を含有することを特徴とする請求項1〜10いずれか記載のレンチキュラーレンズシートの製造方法。
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