JP3665835B2 - たこ焼用粉 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
たこ焼用粉に関し、更に詳しくは焼きたて直後の食感が良好で、冷凍保存後電子レンジによる再加熱後の食感も同じように良好なたこ焼が得られるたこ焼用粉に関する。
【0002】
【従来の技術】
水に溶いた小麦粉に、刻んだタコ、乾しエビ、ネギ、紅ショウガなどを加え、鉄製の型に流しこんで球形に焼きあげて製造されるたこ焼は、元来、大阪の郷土料理菓子の一つであったが、手軽さと独特の風味などが好まれて現在では老若男女を問わず各地で最も広く賞味される食物の一つとなっている。
【0003】
しかし、昨今のように飽食の時代になると、食品に対する要望が厳しくなり、焼きたて直後のたこ焼にも、表面に適度な硬さがあって歯ざわりが良く、しかも全体としては食感がソフトで口溶けの良いものが好まれる傾向にある。一方、喫食に合わせてわざわざたこ焼を作らなくても、上記のような特性を有するたこ焼を何時でも食べたいという要望が強くなってきている。
【0004】
何時でも、容易に食べられるたこ焼として、例えば小麦粉生地に食物繊維、蛋白又は乳化剤のうちの一種又は二種以上の乳化剤を添加して焼きあげたたこ焼を乾燥(復元性の点で凍結乾燥が良好)するたこ焼の製造法(特開昭62−61566号)が開示されていて、喫食時に熱湯によってある程度復元はしていても、凍結乾燥ではコスト高になるし、湯もどしでは焼きたて直後の食感とは異なった食感になるという欠点がみられた。
【0005】
最近では、焼きあげたたこ焼を冷凍保存し、湯戻しでなく電子レンジなどで再加熱して食する冷凍たこ焼が年々増加する傾向にある。
【0006】
たこ焼用粉として小麦粉を使用する屋台や家庭用のたこ焼は、焼きたて直後では、バラツキはあるが歯ざわりが比較的良く、ソフト感や口溶けがまずまずであるが、一度冷凍してこれを電子レンジなどで再加熱すると、食感や風味が大幅に低下し、焼きたて直後の食感やうまみが復元するものでなかった。
【0007】
これらに対して、焼きたて、及び冷凍後再加熱しても食感などが良好なたこ焼を得ようとする提案として、特開平06−86658号、特開平07−79555号、特開平06−62813号、特開平06−27701号などが開示されている。
【0008】
特開平06−86658号では、澱粉(好適には小麦澱粉)100重量部に対して、大豆蛋白粉10〜50部及びグルコノデルタラクトン1〜10部を原料中に配合して、明石風たこ焼を得ようとするものであるが、大豆蛋白粉特有の臭いがあったり、小麦粉由来の風味が感じられない異質感のあるたこ焼であった。
【0009】
特開平07−79555号に於いては、乳酸ナトリウム5〜50重量%、糖(アルコール)0〜35重量%、HLB12以上のポリグリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤0.1〜20重量%、水分30〜90重量%で構成される組成物を、小麦粉や米粉に1〜5重量%添加する澱粉系食品が示されており、でん粉の老化をおさえることでケーキ、ホツトケーキ、たい焼、たこ焼、饅頭、団子等の食品を、冷凍後解凍して室温乃至冷蔵保存後も、しっとり感などの食感をある程度もたせる効果は認められるにしても、食感そのものがたこ焼の場合には必ずしも好ましいものといえるものではなかった。
【0010】
特開平06−62813号は、小麦粉、油脂及び澱粉エーテルの混合物を主原料とするたこ焼き用ミツクス及びこれを使用するたこ焼の製造法であり、特開平06−277011号では小麦粉とコーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカデンプン、馬鈴薯デンプンなどの澱粉を原料とするヒドロキシプロピル化デンプンを含有するたこ焼用プレミックスであり、どちらもプレミックスに澱粉エーテルを存在させることが共通の特徴となっている。何れも焼きあげ直後のたこ焼は、比較的ソフトであり、油脂の添加などによりクリーミー性などの改良はみられるが、口溶けの改善については必ずしも十分なものとはいえなかった。また、冷凍後再加熱したたこ焼も、食感にソフト感はあるが、口溶けの点ではものたりないものであった。
【0011】
このように上記のような方法で製造されたたこ焼では、焼きたて直後及び冷凍後の再加熱後の食感が必ずしも満足のいくものでなく、その改善が強く望まれている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、焼きたて時のみならず冷凍保存後の再加熱時でも、歯ざわりがよく、全体的にはソフトで、口溶けが良好なたこ焼の製造を可能にするたこ焼用粉を開発することである。
【0013】
【課題を解決しようとする手段】
上記の課題に関して、本発明者等は鋭意努力の結果、小麦粉100重量部と可溶性澱粉3〜20重量部とからなるたこ焼粉を使用することによって問題点の解消がはかれることを見出して本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明でいうたこ焼とは、主原料の粉として小麦粉を水又はだし汁に溶き、卵や調味料を加えて生地をつくり、これに刻んだタコ、乾しエビ、ネギ、紅ショウガなどの具材を加え、たこ焼器の型に入れ、焼きあげて製造されるものを総称し、たこ焼機の種類や窪みの形などによって、たこ焼の形状が決定さるが、通常は球状、或は半円状にする場合が多い。尚、具材としてタコのみを用いる明石焼も本発明のたこ焼に包括する。
【0015】
本発明に使用する可溶性澱粉は、澱粉を水に懸濁させ、次亜塩素酸ソーダ酸又は酸(例えば塩酸、硫酸等)を添加して、10重量%水溶液の粘度が5〜2000cpになるまで分解した後、中和、水洗、脱水、乾燥して粉末状で得られる冷水不溶で熱水可溶なタイプのものを指称する。可溶性澱粉の10重量%水溶液の粘度が20OOcpを越えるとたこ焼の口溶けを改善する効果はみられず、5cp未満でも本発明に使用できるが、可溶性澱粉の製造時に水に溶解する部分が多くなって歩留りが悪くなるので、実用的には5〜2000cpが望ましく、たこ焼の歯ざわりがさらに良くなるという点からより好ましくは5〜500cpである。
【0016】
可溶性澱粉を製造するための澱粉としては、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、ワキシーコーンスターチなどの天然澱粉及びこれらの澱粉をエステル化、或はエーテル化した変性澱粉を使用できる。中でも、口溶けがより良好になるという点で糯種の澱粉(変性品も含む)から製造された可溶性澱粉を用いることがより好ましい。尚、糯種の澱粉としては、ワキシーコーンスターチ、糯米澱粉、糯ソルガム澱粉等があげられる。
【0017】
本発明でいう10重量%水溶液の粘度は、200cc容のビーカに該澱粉試料20gと水180gを秤取し、沸騰浴中で内容物を攪拌しながら90℃まで加熱後、蒸発水分を補充しながら30℃まで冷却し、B型回転粘度型を用い、該粘度が10000cp未満では60rpm、10000cpを越える場合は12rpmの回転数にて測定した値である。
【0018】
本発明のたこ焼用粉は小麦粉100重量部と可溶性澱粉3〜20重量部から構成される。可溶性澱粉の割合が3重量%未満では、本発明の効果が充分に発揮できないし、20重量%を越えると、冷凍後の再加熱後のたこ焼の食感と焼きたて直後のたこ焼の食感に差はなくなるが、たこ焼の歯ざわりが悪くなる。
【0019】
たこ焼用粉として小麦粉を100%用いるたこ焼では、焼きたて直後ではそれなりの歯ざわりがあるし、ソフト感や口溶けもまずまずであるが、一度冷凍してから電子レンジなどで再加熱すると、食感や風味の低下が著しく、焼きたて直後の状態の復元などができるものでなかった。これに対して本発明の小麦粉と可溶性澱粉からなるたこ焼用粉を使用することで、焼きたてのみならず冷凍後に電子レンジなどで再加熱しても、歯ざわりが良好で、ソフト感があり、口溶けに優れたこ焼の製造が可能になる。
【0020】
本発明は、焼きたて直後のたこ焼に歯ざわりがよく、ソフトで、口溶けに優れた食感を与え、しかも何時でも気が向いた時に食べられように冷凍保存し、電子レンジなどで再加熱しても、焼きたて直後の食感が再現ができるたこ焼を容易に得ることができる。これは小麦粉100重量部と可溶性澱粉3〜20重量部とからなるたこ焼用粉を使用することで達成された。
【0021】
本発明のさらなる利点として、本発明のたこ焼用粉をベースにして、未処理澱粉や本発明に使用した以外の加工澱粉と組み合わせることで口溶けを損なうことなく好みに合わせて食感をつくることを可能にすることがあげられる。食感については、好みの問題という一面もあり、例えばもちもち感を望む時はワキシーコーンスターチやタピオカ澱粉などの未処理澱粉、及びこれ等のエステル化澱粉、エーテル化澱粉から選ばれる一種又は二種以上を、すこし硬めの食感を欲する時は架橋澱粉、架橋エステル化澱粉、架橋エーテル化澱粉を本発明のたこ焼用粉に対して3〜15重量%添加することで、口溶けが良くて、且つもちもち感やすこし硬めの食感を有するたこ焼を容易に製造できる。
【0022】
本発明のたこ焼用粉は、焼きたて時のみならず冷凍保存後の再加熱時でも、歯ざわりがよく、ソフトで、口溶けが良好なたこ焼の製造を可能にしたが、たこ焼以外にお好み焼のように小麦粉からなる生地を使用して鉄板などで焼いてそのまま、或は冷凍後に電子レンジなどで再加熱後でも同じようにソフトで口溶けがよいことが要求される食品の製造に使用できる。
【0023】
次に本発明のたこ焼用粉を用いる一般的なたこ焼の製造法を説明する。
小麦粉100部に可溶性澱粉3〜20部を混合してたこ焼用粉とし、これにグルコース、砂糖などの糖類、食塩、グルタミン酸などの調味料、砂糖などの糖類、卵、水、必要に応じてレシチンなどの界面活性剤やパーム油などの油脂を添加してたこ焼用の生地とする。その際、添加方法や添加順序を特に問題とせず、要は均一な生地をつくることが肝要で、例えば小麦粉と可溶性澱粉を予め混合しないでたこ焼用の生地を調製する段階で添加してもよい。
【0024】
上記のたこ焼用生地を予め加熱しておいたたこ焼機の鉄板の窪みに投入し、タコ、ネギ、キャベツ、紅ショウガなど好みの具材を添加する。生地がかたまってきたら反転して加熱し、適宜回転しながら焼きあげてたこ焼とする。
【0025】
このようにして製造されるたこ焼は、そのまますぐに喫食すると歯ざわりがよく、ソフト感があり、口溶けも良好である。また、必要に応じて冷凍し、何時でも電子レンジなどで再加熱すると焼きあげ直後と同じように好ましい食感を有するたこ焼になる。
【0026】
【実施例】
以下に本発明をより詳細に説明するために、参考例、実施例でもって説明するが、これらの例において部とあるのは重量部を示す。
【0027】
【参考例1】
攪拌下にある水130部にワキシーコンスターチを100部投入して分散させた澱粉スラリーを4点調製し、それぞれに次亜塩素酸ソーダ溶液(活性塩素約13%含有)を25部、12部、8部、5部を滴下し、澱粉スラリーのpHを11±0.1、温度30±1℃で活性塩素がなくなるまで反応(オルトトルイジン溶液で確認)後、10%硫酸溶液で中和する。反応中のpHは3%水酸化ナトリウムで調節し、温度が上昇する場合には冷却して反応をコントロールする。
中和後の澱粉スラリーを水洗、脱水、乾燥して得られた可溶性澱粉を試料No.1〜No.4とする。得られた可溶性澱粉の30℃における10%粘度を表1に記載した。
【0028】
【表1】
【0029】
【参考例2】
コーンスターチ100部と水120部よりなる澱粉スラリーに次亜塩素酸ソーダ28部を使用し、温度42±1℃にした以外、実施例1と同じように反応して得られた10%粘度が12cpの可溶性澱粉を試料No.5とした。
【0030】
【参考例3】
タピオカ100部と水120部よりなる澱粉スラリーに次亜塩素酸ソーダ12部を添加した以外、実施例1と同じように反応して得られた10%粘度が115cpの可溶性澱粉を試料No.6とした。
【0031】
【参考例4】
攪拌下の水130部に硫酸ナトリウム15部を溶解し、ワキシーコーンスターチ100部を投入して分散させ、3%水酸化ナトリウム溶液35部を滴下し、プロピレンオキサイド2.5部を添加し40℃で20時間反応後、10%硫酸で中和した。得られたエーテル化澱粉スラリーを2分割し、一方を28℃まで冷却後、次亜塩素酸ソーダ溶液20部を添加し、実施例1と同じように反応して得られた10%粘度が120cpの可溶性澱粉を試料No.7とした。残りの澱粉スラリー溶液は、そのまま水洗、脱水、乾燥して得られた置換度0.048で10%粘度が13000cpのエーテル化ワキシーコーンスターチを試料No.8とした。
【0032】
【参考例5】
攪拌下の水140部に硫酸ナトリウム20部を溶解し、小麦澱粉100部を投入して分散させ、3%水酸化ナトリウム溶液35部を滴下し、プロピレンオキサイド6部を添加し40℃で20時間反応後、10%硫酸で中和し、水洗、脱水、乾燥して得られた置換度0.082で10%粘度が43000cpのエーテル化小麦澱粉を試料No.9とする。
【0033】
【参考例6】
攪拌下の水130部に硫酸ナトリウム10部を溶解し、タピオカ澱粉100部を分散し、3%水酸化ナトリウム溶液を加えてpH11.0〜11.3に維持しながら、トリメタリン酸ソーダ0.06部を投入し、40℃で10時間反応後、10%硫酸で中和、脱水、乾燥して得られた10%粘度が7000cpの架橋タピオカ澱粉を試料No.10とする。
【0034】
【実施例1】
小麦粉100部と澱粉類10部を混合してたこ焼用粉とした。その際、参考例1〜参考例4の試料No.1〜No.7の可溶性澱粉、参考例4の試料No.8と参考例5の試料No.9のエーテル化澱粉、及び未変性のタピオカ澱粉の10種類を澱粉類として用いた。
【0035】
食塩1.8部、砂糖2.4部、グルタミン酸ソーダ2.4部を水300部に溶解した溶液を11点調製し、上記の10種類のたこ焼用粉100部にそれぞれ添加し、泡立て器を用いてダマがなくなるまで混合した後、全卵6部を加えて混合し、たこ焼用の生地とする。残りの溶液を小麦粉100部に添加し、対照例のたこ焼用の生地とする。
【0036】
たこ焼器(TS−284型,(株)太幸製,4連,ガス式,1連に28個の孔を有す)のガスバーナーを全開にして、煙が出る程度までフライパンを加熱後、ガスバーナのコックをしぼり、フライパンにあたる程度の炎とした後、孔の部分に薄く油を引いてから、たこ焼用の生地を1種類につき8点ずつ流し込む。その上に天カス、刻んだネギや紅ショウガを適量、湯通しし、約3g程度になるように裁断したタコを一切れ入れる。尚、具材の量は目分量でほぼ同じ程度の量になるようにして添加した。
【0037】
生地の表面が固まってきたら、裏返しにし、裏返した面がかたまってきたら千枚通しを用いてたこ焼を回転させ、わずかに表面にコゲ目がみられる程度まで焼きあげたたこ焼をたこ焼器より取り出す。
【0038】
得られたたこ焼きの半数についてはそのまま食感を評価し、残りの半数については冷後−20℃の冷蔵庫に1週間おいた後、電子レンジで再加熱してからの食感を評価し、それらの平均的な食感の評価を表3に示した。尚、歯ざわり、ソフト感、口溶けは、それぞれT、S、Mと表記した。また、食感の評価は下記に示す基準で行った。
【0039】
【0040】
【表2】
【0041】
【実施例2】
実施例1で使用した小麦粉と試料No.1の可溶性澱粉を表1の割合で混合したたこ焼用粉100部を用い、実施例1と同様にたこ焼を製造した。たこ焼用粉として小麦粉のみを用いたたこ焼を対照例のたこ焼として、実施例1と同じように評価した結果を表3に示した。
【0042】
【表3】
【0043】
【実施例3】
小麦粉94部、試料No.7の可溶性澱粉6部よりなるたこ焼用粉に、試料No.8のエーテル化ワキシーコーンスターチ5部又は試料No.10の架橋タピオカ澱粉5部を添加して混合し、それぞれに食塩1.9部、砂糖2.5部、グルタミン酸ソーダ2.4部、全卵6.2部、水315部を添加し、混合して調製したたこ焼用生地を用い、実施例1と同様にたこ焼を製造した。
【0044】
得られたたこ焼は何れも口溶けに優れたものであったが、エーテル化ワキシーコーンスターチを使用したたこ焼ではもちもち感、架橋タピオカ澱粉を使用したたこ焼では幾分硬さが感じられるものであった。また、これらを冷凍した冷凍たこ焼を1週間後に電子レンジで再加熱すると、焼きあげ時とほぼ同じような食感を有するたこ焼になった。
【0045】
【実施例4】
小麦粉85部と試料No.1の可溶性澱粉15部を混合し、食塩2.5部、卵25部、こんぶだし汁500部を添加して混合した生地を表面温度を約130℃に調節しておいたたこ焼器に入れ、その上にタコ約2.5部を添加し、焦げ目がつかないように注意しながら、10分間焼成して明石焼を得た。得られた明石焼はソフトでふっくらとし、口溶けに優れたものであった。また、焼成後、2週間冷凍保存し、電子レンジで再加熱したところ、焼きたてものと同様の好ましい食感のものであった。
Claims (3)
- 小麦粉100重量部と可溶性澱粉3〜20重量部とからなるたこ焼用粉。
- 可溶性澱粉の10重量%水溶液の粘度が5〜500cpである請求項1に記載のたこ焼用粉。
- 可溶性澱粉が糯種の澱粉を原料とする請求項1又は請求項2に記載のたこ焼用粉。
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