JP7218097B2 - 焼き菓子用ミックス粉、焼き菓子及び焼き菓子の製造方法 - Google Patents
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Description
焼き菓子の外表面の食感を改良するために、次のような技術が提案されている。特許文献1では、剥皮処理された小麦粒および/またはその破砕小麦を含有する、サクサクとした食感の菓子が得られる菓子用小麦組成物が開示されている。特許文献2では、特定の小麦品種由来の小麦粉の少なくとも1種を50質量%以上含有する、さっくりとした食感で、口溶けが良い焼き菓子類が作業性良く得られる焼き菓子類用小麦粉が開示されている。特許文献3では、エンド型プロテアーゼを小麦粉100gあたり50~3300U含有するように生地混合物に混ぜてから、加熱調理までの間の最高到達温度を40℃以下に維持することを特徴とする、さっくりと軟らかい食感で口溶けのよい菓子の製造方法が開示されている。何れも口当たりの軽い食感ではあるものの、パリッとした乾的な外表部の食感を有する菓子を提供するには至っていない。なお、本明細書において「パリッとした食感」とは、焼き菓子の表面が、「フランスパン等のハード系パン類をオーブントースターで再加熱した際のパリパリとしたクラスト」で薄く覆われているかのように張りがあり、やや硬さを感じさせながらも軽やかにサックリと噛み切れる食感のことをいう。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]小麦粉100質量部に対して、酸処理澱粉、焙焼澱粉、酵素処理澱、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉及び架橋澱粉から選択される変性もち種馬鈴薯澱粉を0.15~22.5質量部含有することを特徴とする、焼き菓子用ミックス粉。
[2]前記[1]に記載の穀粉組成物を含む焼き菓子用生地。
[3]前記[2]に記載の菓子類用生地を焼成してなる菓子類。
[4]前記[1]に記載の焼き菓子用ミックス粉を使用することを特徴とする、焼き菓子の製造方法。
「酸処理澱粉」とは澱粉を塩酸や硫酸等の酸で処理した澱粉をいう。
「焙焼澱粉」とは澱粉を加熱焙焼した澱粉をいう。
「酵素処理澱粉」は澱粉をα-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ7,イソアミラーゼ、プルラナーゼ等の酵素で処理した澱粉をいう。
「酸化澱粉」とは澱粉を次亜塩素酸塩などの酸化剤で酸化処理してカルボキシ基を導入した澱粉をいう。本発明において用いる酸化澱粉には、酸化処理した澱粉をさらにエーテル化処理やエステル化処理を行った酸化澱粉も含まれ、このような酸化澱粉の例としてはアセチル化酸化澱粉が挙げられる。なお、酸化澱粉と同様に澱粉を次亜塩素酸ナトリウム等で処理したものとして「漂白澱粉」が知られているが、漂白澱粉は澱粉に対して化学的修飾を行うことなく他の色素成分を酸化等することによって澱粉の色調を調整したものであり、本発明における変性澱粉には該当しない。
「エステル化澱粉」とは、澱粉に対してエステル結合で官能基を付加した澱粉をいう。エステル化澱粉は、澱粉に無水酢酸、オクテニルコハク酸、リン酸塩等を作用させることにより修飾を行うことで得ることができ、エステル化澱粉の例としては、アセチル化澱粉、オクテニルコハク酸化澱粉、リン酸モノエステル化澱粉等が挙げられる。
「エーテル化澱粉」とは、澱粉に対してエーテル結合で官能基を付加した澱粉をいう。エーテル化澱粉の例としては、カルボキシメチル化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉およびカルボキシエチル化澱粉等が挙げられる。
「架橋澱粉」とは、リン酸基やアジピン酸基などの官能基を澱粉分子中のヒドロキシル基に導入して澱粉分子内または澱粉分子間で架橋させた澱粉をいう。架橋澱粉の例としてはリン酸架橋澱粉、アジピン酸架橋澱粉等が挙げられる。本発明において用いる架橋澱粉には、架橋反応と同時にエステル化反応やエーテル化反応を行った架橋澱粉も含まれ、このような架橋澱粉の例として、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉等が挙げられる。
さらに変性澱粉をα化して変性α化澱粉とすることもできる。なお、α化澱粉は、β澱粉を水分とともに加熱等すると澱粉粒子が膨潤し、更に加熱等すると澱粉粒子が崩壊し、最終的に透明で粘性のある糊液になったものを乾燥粉末化させたものであり、澱粉の状態が変化しているだけであるため、単にα化されたもち種馬鈴薯澱粉は、本発明でいう変性もち種馬鈴薯澱粉には含まれないものとする。
このような変性もち種馬鈴薯澱粉として、ヒドロキシプロピルリン酸架橋α化もち種馬鈴薯澱粉、ヒドロキシプロピルリン酸架橋もち種馬鈴薯澱粉、アジピン酸架橋α化もち種馬鈴薯澱粉、アジピン酸架橋もち種馬鈴薯澱粉、酸処理もち種馬鈴薯澱粉、酸化もち種馬鈴薯澱粉、焙焼もち種馬鈴薯澱粉、等が挙げられ、好ましくはヒドロキシプロピルリン酸架橋α化もち種馬鈴薯澱粉、ヒドロキシプロピルリン酸架橋もち種馬鈴薯澱粉、又は酸処理もち種馬鈴薯澱粉である。
変性もち種馬鈴薯澱粉は、天然由来のもち種馬鈴薯澱粉を工業的に変性させた物を使用しても良いし、市販されている物を使用しても良い。市販されている変性もち種馬鈴薯澱粉としては、エリアンVC120、エリアンVE540、エリアンGEL100(何れも松谷化学工業社製)などを例として挙げることが出来る。
もち種馬鈴薯澱粉の含有量は、菓子用ミックス粉に含まれる小麦粉100質量部に対して0.15~22.5質量部、好ましくは0.5~22.5質量部、さらに好ましくは0.5~15質量部、最も好ましくは0.5~7.5質量部である。もち種馬鈴薯澱粉の含有量が、菓子用ミックス粉に含まれる小麦粉100質量部に対して0.15~22.5質量部である場合、パリッとした食感の外表部としっとりとした内層部を有する焼き菓子を提供することができ本発明の効果がより十分に得られる傾向にある。0.15質量部未満になると、しっとりとした食感が損なわれる傾向にある。22.5質量部を超えると、外表部のパリッとした食感が損なわれる傾向にある。
原料の配合量は表1に従った。
(1)卵白、砂糖、食塩及びアーモンドプードルをミキサー(ホバート社製N-50)に投入し1速で混合した。
(2)小麦粉とベーキングパウダーを混合し、ミックス粉とした。
(2)上記(1)に、(2)のミックス粉を投入し、ビーターを使用して滑らかになるまで1速で2分間撹拌した。
(3)更に溶かしバターを投入し、滑らかで均質になるまで撹拌して生地を得た。
(4)得られた生地38gをフィナンシェ型に入れ、190℃で20分間オーブン(七洋社製BACKEN)で焼成してフィナンシェを製造した。
焼成したベーカリー製品を室温で1時間静置して粗熱を取った後、熟練パネラー10名により下記評価基準表に従って評価した(製造直後)。
オーブントースターで再加熱して評価する場合、焼成したベーカリー製品の粗熱を取ってから冷凍処理し、2週間冷凍保存し、室温解凍した後、200℃に予熱したオーブントースターに投入し、200℃で2分間再加熱し、同様に評価した(再加熱後)。
なお、変性もち種馬鈴薯澱粉を使用せずに製造したベーカリー製品(参考例)の焼成後のもの(冷凍保存、再加熱のいずれも行わないもの)を3点とした。
工程(2)のミックス粉においてさらに小麦粉100質量部に対して表3記載のもち種馬鈴薯澱粉4質量部を添加した以外は製造例1に従ってフィナンシェを製造し、食感を評価した。結果を表3に記載した。
もち種馬鈴薯澱粉B:ヒドロキシプロピルリン酸架橋もち種馬鈴薯澱粉(松谷化学工業社製エリアンVE540)
もち種馬鈴薯澱粉C:酸処理もち種馬鈴薯澱粉(松谷化学社製エリアンGEL100)
もち種馬鈴薯澱粉D:漂白もち種馬鈴薯澱粉(松谷化学社製スタビローズAB1000)
もち種馬鈴薯澱粉E:α化もち種馬鈴薯澱粉(松谷化学社製マツノリンWP)
冷凍保存後オーブントースターで再加熱したフィナンシェでは、比較例1、2及び参考例1は外層のパリッとした食感は良好であったが、再加熱による水分飛散により内層のパサつきが生じた。それに対して、実施例1~3では、再焼成しても内層のみずみずしさが維持されており、外層のパリッとした食感がわずかに際立つ傾向にあり、内層と外層とのコントラストがあり優れた食感であった。
工程(2)のミックス粉においてさらに小麦粉100質量部に対して表4記載の資材4質量部を添加した以外は製造例1に従ってフィナンシェを製造し、評価した。結果を表2に記載した。なお、変性α化澱粉(資材A~C)は変性もち種馬鈴薯澱粉以外の澱粉の例であり、米粉(資材D)は外層のパリッとした食感を、乳化剤(資材E)は内層のしっとりとした食感を得るために使用される一般的な資材である。
資材C:ヒドロキシプロピルリン酸架橋α化ワキシーコンスターチ(松谷化学社製マツノリン880)
資材D:米粉(日本製粉社製プリード)
資材E:乳化剤(理研ビタミン社製エマルジーMM100)
冷凍保存後オーブントースターによる再加熱をしたフィナンシェでは、何れも外層のパリッとした食感が良好になるものの、内層の水分飛散によりパサつきが生じ不適であった。
工程(2)のミックス粉においてさらに小麦粉100質量部に対して表5記載のヒドロキシプロピルリン酸架橋α化もち種馬鈴薯澱粉を添加した以外は実施例1に従ってフィナンシェを製造して評価した(オーブントースター再加熱なし)。
原料の配合量は表6に従った。
(1)溶き全卵と砂糖をミキサー(ホバート社製N-50)に投入し1速で混合した。
(2)小麦粉とベーキングパウダーを混合し、ミックス粉とした。
(3)(1)にはちみつ、(2)のミックス粉を投入し、ホイッパーを使用して滑らかになるまで1速で2分間撹拌した。
(4)更に溶かしバターを5回に分けて投入し滑らかで均質になるまで撹拌した後、冷蔵庫で1時間保持して生地を得た。
(5)得られた生地25gをマドレーヌ型に入れ、上火180℃下火160℃で15分間オーブン(七洋社製BACKEN)焼成してマドレーヌを製造した。
工程(2)のミックス粉においてさらに小麦粉100質量部に対して表7記載の変性もち種馬鈴薯澱粉を添加した以外は製造例2に従ってマドレーヌを製造し、評価例1に従って評価した。なお、小麦粉と変性もち種馬鈴薯澱粉以外の資材の使用量は、小麦粉と変性もち種馬鈴薯澱粉の合計質量部に比例して増加させた(例えば、小麦粉100質量部と変性もち種馬鈴薯澱粉を10質量部使用した際の溶き全卵の使用量は110質量部である)。
また冷凍保存後オーブントースター再加熱した場合、実施例8~11では外層のパリッとした食感があり内層のしっとりとした食感が維持されており、優れた食感であった。比較例10及び11では、水分飛散による内層のパサつきが生じた。
Claims (4)
- 小麦粉100質量部に対してヒドロキシプロピルリン酸架橋もち種馬鈴薯澱粉又は酸処理もち種馬鈴薯澱粉を0.15~22.5質量部含有することを特徴とする、バターケーキ類用ミックス粉。
- 請求項1に記載のバターケーキ類用ミックス粉を含むバターケーキ類用生地。
- 請求項2に記載のバターケーキ類用生地を焼成してなるバターケーキ類。
- 請求項1に記載のバターケーキ類用ミックス粉を使用することを特徴とする、バターケーキ類の製造方法。
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