JP3664972B2 - アークチューブ - Google Patents

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毅史 福代
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    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J61/00Gas-discharge or vapour-discharge lamps
    • H01J61/02Details
    • H01J61/36Seals between parts of vessels; Seals for leading-in conductors; Leading-in conductors
    • H01J61/366Seals for leading-in conductors
    • H01J61/368Pinched seals or analogous seals

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  • Vessels And Coating Films For Discharge Lamps (AREA)
  • Discharge Lamps And Accessories Thereof (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、車両用前照灯の光源として用いられるアークチューブに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アークチューブは高輝度照射が可能なことから、近年では車両用前照灯等の光源としても多く用いられるようになってきている。
【0003】
車両用前照灯等に用いられるアークチューブは、一般に、図17に示すように、放電空間102を形成する発光管部104aの両側に各々ピンチシール部104bが形成されてなる石英ガラス製のアークチューブ本体104と、タングステン電極108およびリード線110がモリブデン箔112を介して連結固定されてなる1対の電極アッシー106とからなり、各電極アッシー106は、そのタングステン電極108の先端部を放電空間102へ突出させるようにして、各ピンチシール部104bにおいてアークチューブ本体104にピンチシールされている。そしてこのピンチシールにより、モリブデン箔112はアークチューブ本体104に埋設された状態で該アークチューブ本体104と接合されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
タングステン電極108とモリブデン箔112との連結固定は、両部材を部分的に重ね合わせた状態で溶接することにより行われているが、この重ね合わせ部分の周辺においてモリブデン箔112とアークチューブ本体104との接合力を十分に確保することは容易でなく、このため従来のアークチューブは、アークチューブの使用中にモリブデン箔112が剥離しやすいものとなっている。
【0005】
そしてこのような剥離が生じると、モリブデン箔112とアークチューブ本体104との接合面の端縁からアークチューブ本体104にクラックが生じ、これが成長して最終的には放電空間102と外部空間との間にリークが発生するに至ってしまう。このため従来のアークチューブは比較的寿命が短いものとなっているという問題がある。
【0006】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、車両用前照灯の光源として用いられるアークチューブにおいて、モリブデン箔の剥離に起因するリーク発生を効果的に抑制して長寿命化を図ることができるアークチューブを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、タングステン電極とモリブデン箔との重ね合わせ部分の周辺における各部材の寸法関係に配慮すれば、他の特性を阻害することなくモリブデン箔の剥離発生を効果的に抑制することが可能であることが実験結果から確認できたことに鑑み、その寸法関係を規定することにより上記目的達成を図るようにしたものである。
【0008】
すなわち、本願発明に係るアークチューブは、
車両用前照灯の光源として用いられるアークチューブであって、
放電空間を形成する発光管部の両側に各々ピンチシール部が形成されてなる石英ガラス製のアークチューブ本体と、タングステン電極とモリブデン箔とが部分的に重ね合わされた状態で溶接されてなり、上記タングステン電極の先端部を上記放電空間へ突出させるようにして上記各ピンチシール部において上記アークチューブ本体にピンチシールされた1対の電極アッシーと、を備えてなるアークチューブにおいて、
上記ピンチシール部における上記モリブデン箔の幅方向と平行な両面が、上記タングステン電極と上記モリブデン箔との接合部の両側に位置するU字形領域を含む一般部と、この一般部のU字形領域を囲むようにして該U字形領域に対して段下がりで平面状に形成された段下がり平面部とからなり、
上記タングステン電極と上記モリブデン箔との重ね合わせ代L1が、上記タングステン電極の径Dおよび上記モリブデン箔の幅Wに対して、
2D≦L1≦0.8W
に設定されるとともに、上記モリブデン箔と上記放電空間との間隔L2が、上記ピンチシール部の幅Aおよび上記ピンチシール部の段下がり平面部の厚さBに対して、
B≦L2≦0.8A
に設定されている、ことを特徴とするものである。
【0010】
上記「タングステン電極」は、タングステンを主成分とするものものであれば、純粋なタングステン製の電極であってもよいし、その他の成分が添加された電極であってもよい。
【0011】
上記「モリブデン箔」は、モリブデンを主成分とするものであれば、純粋なモリブデンで構成された箔であってもよいし、その他の成分が添加された箔であってもよい。
【0012】
上記「重ね合わせ代L1」および「間隔L2」の範囲設定は、発光管部の両側のピンチシール部の双方に適用されるものであってもよいし、そのいずれか一方にのみ適用されるものであってもよい。
【0013】
【発明の作用効果】
上記構成に示すように、本願発明に係るアークチューブは、その電極アッシーを構成するタングステン電極とモリブデン箔との重ね合わせ代L1が、タングステン電極の径Dおよび上記モリブデン箔の幅Wに対して、2D≦L1≦0.8Wに設定されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0014】
すなわち、アークチューブ本体にピンチシールされた各電極アッシーは、そのタングステン電極とモリブデン箔との溶接部分の周囲においてアークチューブ本体との間に微小な隙間が生じる。モリブデン箔の剥離はこの隙間を起点として発生するが、重ね合わせ代L1が長くなるほど隙間の割合が大きくなるので、モリブデン箔の剥離が発生しやすくなる。また、アークチューブの点灯や消灯に伴う温度変化によりタングステン電極がアークチューブ本体に対して伸縮するが、重ね合わせ代L1が長くなるとタングステン電極の伸縮に伴ってモリブデン箔に生じる応力も大きくなるので、この点においてもモリブデン箔の剥離が発生しやすくなる。したがって、重ね合わせ代L1をできるだけ短くすることが、モリブデン箔の剥離に起因するリーク発生を抑制する上で効果的である。
【0015】
一方、重ね合わせ代L1があまりにも短くなると、タングステン電極とモリブデン箔との溶接を行うことが物理的に困難となり、しかもこの溶接の際、モリブデン箔がタングステン電極との重ね合わせ部分において破断してしまうおそれがある。また、溶接工程でモリブデン箔が破断しなかったとしても、重ね合わせ代L1があまりにも短くなるとモリブデン箔の溶接部分周辺の強度が非常に弱くなるので、次工程のピンチシール工程においてピンチシール圧力により破断したり、アークチューブの点灯時に電流が溶接部分に集中して溶断してしまうおそれがある。
【0016】
そこで、本願発明者らの行った実験の結果に基づき、タングステン電極とモリブデン箔との重ね合わせ代L1をタングステン電極の径Dおよび上記モリブデン箔の幅Wに対して、2D≦L1≦0.8Wの範囲内の値に設定するようにすれば、モリブデン箔の破断発生を効果的に抑制した上で、モリブデン箔の剥離発生を効果的に抑制できる。そしてこれによりモリブデン箔の剥離に起因するリーク発生を効果的に抑制することができるので、アークチューブの長寿命化を図ることができる。
【0017】
また、本願発明に係るアークチューブは、その電極アッシーを構成するモリブデン箔と発光管部の放電空間との間隔L2が、ピンチシール部の幅Aおよびその段下がり平面部の厚さBに対して、B≦L2≦0.8Aに設定されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0018】
すなわち、モリブデン箔と放電空間との間隔L2が狭くなると、放電発光部(タングステン電極の先端)とモリブデン箔とが近づくため、アークチューブの点灯や消灯に伴うタングステン電極とモリブデン箔との重ね合わせ部分の温度変化が大きくなる。そしてこれにより重ね合わせ部分におけるタングステン電極のアークチューブ本体に対する伸縮作用が大きくなるので、モリブデン箔に生じる応力も大きくなり、モリブデン箔の剥離が発生しやすくなる。
【0019】
一方、モリブデン箔と放電空間との間隔L2が広くなると、次のような問題が生じる。すなわち、一般に、アークチューブ本体におけるタングステン電極との接合面近傍領域には、アークチューブの使用中、タングステン電極とアークチューブ本体(石英ガラス)との熱膨張率の差により、タングステン電極との接合面から放射状に延びるクラックと、タングステン電極を囲むようにして周方向に延びるクラックとが発生する。前者は電極クラックと呼ばれるものであって、この電極クラックが成長してアークチューブ本体の外周面に達すると、放電空間と外部空間との間にリークが発生するに至ってしまう。一方、後者はビードクラックと呼ばれるものであって、このビードクラックが形成されることにより電極クラックの成長が阻止される。このビードクラックは、タングステン電極のピンチシール部への埋設部分における軸線方向の温度分布が略均一であることがその発生の条件となる。しかしながら、モリブデン箔と放電空間との間隔L2が広くなると、タングステン電極のピンチシール部への埋設部分における軸線方向の温度分布がかなり不均一なものとなり、ビードクラックが形成されにくくなるので、電極クラックが容易に成長してアークチューブ本体の外周面に達しやすくなってしまう。
【0020】
そこで、本願発明者らの行った実験の結果に基づき、モリブデン箔と発光管部の放電空間との間隔L2を、ピンチシール部の幅Aおよびその段下がり平面部の厚さBに対して、B≦L2≦0.8Aに設定するようにすれば、電極クラックの成長を効果的に抑制した上で、モリブデン箔の剥離発生を効果的に抑制することできる。そしてこれによりモリブデン箔の剥離に起因するリーク発生を効果的に抑制することができるので、アークチューブの長寿命化を図ることができる。
【0021】
さらに本願発明においては、2D≦L1≦0.8WおよびB≦L2≦0.8Aの2つの条件式を同時に満足する構成となっているので、モリブデン箔の破断および電極クラックの成長を効果的に抑制した上で、モリブデン箔の剥離発生を効果的に抑制することができる。そしてこれによりモリブデン箔の剥離に起因するリーク発生をより効果的に抑制することができるので、アークチューブの一層の長寿命化を図ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0023】
図1は、本願発明の一実施形態に係るアークチューブが組み込まれた放電バルブ10を示す側断面図であり、図2は、そのII部拡大図である。また、図3は、図2のIII-III 線断面図である。
【0024】
これらの図に示すように、この放電バルブ10は車両用前照灯に装着される光源バルブであって、前後方向に延びるアークチューブユニット12と、このアークチューブユニット12の後端部を固定支持する絶縁プラグユニット14とを備えてなっている。
【0025】
アークチューブユニット12は、アークチューブ16と、このアークチューブ16を囲むシュラウドチューブ18とが一体的に形成されてなっている。
【0026】
アークチューブ16は、石英ガラス管を加工してなるアークチューブ本体20と、このアークチューブ本体20内に埋設された前後1対の電極アッシー22とからなっている。
【0027】
アークチューブ本体20は、中央に略楕円球状の発光管部20Aが形成されるとともにその前後両側にピンチシール部20Bが形成されてなっている。発光管部20Aの内部には前後方向に延びる略楕円球状の放電空間24が形成されており、この放電空間24には水銀とキセノンガスと金属ハロゲン化物とが封入されている。
【0028】
各電極アッシー22は、棒状のタングステン電極26とリード線28とがモリブデン箔30を介して各々溶接により連結固定されてなり、各ピンチシール部20Bにおいてアークチューブ本体20にピンチシールされている。その際、各タングステン電極26は、その先端部が前後両側から互いに対向するようにして放電空間24内に突出した状態で、その先端部以外の部分がピンチシール部20B内に埋設されており、各モリブデン箔30は、その全体がピンチシール部20B内に埋設されている。
【0029】
図4は、図2のIV-IV 方向矢視図であり、図5および6は、図4のV-V 線断面図およびVI-VI 線断面図である。
【0030】
これらの図に示すように、前方側のピンチシール部20Bは、平面視において発光管部20Aから前方へ延びる略矩形形状を有しており、モリブデン箔30よりもある程度大きいサイズで形成されている。そして、このピンチシール部20Bと発光管部20Aとの間には、左右1対のネック部20Cが形成されている。なお、後方側のピンチシール部20Bについてもこれと同様の構成であるので、以下、前方側のピンチシール部20Bについて説明する。
【0031】
ピンチシール部20Bは、その断面形状が略横長矩形形状に設定されており、その上下両面20Baは、いずれも一般部20Ba1と段下がり平面部20Ba2とからなっている。
【0032】
一般部20Ba1は、上下各面20Baにおける左右両端部領域および後端部領域と、モリブデン箔30とタングステン電極26との接合部を含むようにして前後方向に延びるU字形領域と、モリブデン箔30とリード線28との接合部を含むようにして前後方向に延びる長円形領域とからなり、これら各領域が同一平面上に位置するようにして形成されている。一方、段下がり平面部20Ba2は、一般部20Ba1以外の全領域であって、一般部20Ba1に対して段下がりで平面状に形成されている。
【0033】
ピンチシール部20Bは、その幅AがA=3.8〜4.6mmに設定されており、その厚さBがB=1.8〜2.2mmに設定されている。ここで、幅Aは、左右方向の幅寸法であり、厚さBは、上下両面20Baの段下がり平面部20Ba2相互間の上下寸法である。
【0034】
図7および8は、前方側のピンチシール部20Bを形成するピンチシール工程を示す斜視図および平断面図である。
【0035】
これらの図に示すように、このピンチシール工程においては、すでに後方側のピンチシール部20Bが形成されたアークチューブ本体20を、その前端部が上を向くように配置した状態で、その発光管部20Aの上方に位置するピンチシール予定部20B´に対して1対のピンチャ2を左右両側から押し当てることにより、ピンチシール部20Bを形成するようになっている。
【0036】
両ピンチャ2は、平面視において点対称構造となっている。そして各ピンチャ2は、ピンチシール部20Bの上下各面20Baを形成するための正面部2aと、ピンチシール部20Bの両側面を形成するための側面部2bと、ピンチシールの際に相手側ピンチャに当接するストッパ部2cと、相手側ピンチャのストッパ部2cを受けるストッパ受け部2dとが形成されてなっている。各ピンチャ2の正面部2aには、ピンチシール部20Bの上下各面20Baにおける一般部20Ba1および段下がり平面部20Ba2に対応する一般部2a1および段上がり平面部2a2が形成されている。そして両ピンチャ2のストッパ部2cとストッパ受け部2dとの当接によりピンチシール時の成形空間が形成されるが、このとき両ピンチャ2の正面部2aの段上がり平面部2a2相互間の間隔D(B)によってピンチシール部20Bの厚さBが決定される。
【0037】
ところで、ピンチシール部20Bの上下各面20Baに、その一般部20Ba1としてU字形領域および長円形領域が設定されているのは、モリブデン箔30とタングステン電極26およびリード線28との各接合部において石英ガラスの肉厚が薄くなり割れが発生するのを未然に防止するためである。なお、これらU字形領域および長円形領域を一般部20Ba1として設定しておくことにより、電極アッシー22(特にタングステン電極26の先端部)の向きが前後方向軸線に対して左右方向に大きくずれないようにすることができる。
【0038】
ピンチシール予定部20B´は、アークチューブ本体20における一般の管状中空部に比して小径の中実構造となっており、その内部に電極アッシー22が位置決めされた状態で埋設されている。このピンチシール予定部20B´は、図9に示すように、ピンチシール工程の前工程であるシュリンクシール工程において、電極アッシー22が挿入されたアークチューブ本体20を左右両側から1対のバーナ4で加熱して該アークチューブ本体20を所定長にわたって熱収縮させることにより形成されるようになっている。
【0039】
図10および11は、図2および3の要部詳細図である。
【0040】
これらの図に示すように、タングステン電極26とモリブデン箔30との重ね合わせ代L1は、タングステン電極26の径Dおよびモリブデン箔30の幅Wに対して、2D≦L1≦0.8Wに設定されている。例えば、D=0.2mm、W=1.5mmに対して、L1=1mmに設定されている。また、モリブデン箔30と放電空間24との間隔L2は、ピンチシール部の幅Aおよび厚さBに対して、B≦L2≦0.8Aに設定されている。例えば、A=4.2mm、B=2.2mmに対して、L2=2.5mmに設定されている。
【0041】
なお、図11に示すように、放電空間24の軸線方向両端部におけるタングステン電極26の左右両側には略楔状のスリット24aが形成されるが、図10に示すように、放電空間24の軸線方向両端部におけるタングステン電極26の上下両側には、ピンチシール時にピンチャ2の押圧力が直接作用するため、このようなスリット24aはほとんど形成されない。モリブデン箔30と放電空間24との間隔L2は、図10に示すように、アークチューブ本体20を側方から見た状態において測定される値である。
【0042】
本実施形態において、タングステン電極26とモリブデン箔30との重ね合わせ代L1を、2D≦L1≦0.8Wに設定したのは、次のような理由によるものである。
【0043】
すなわち、アークチューブ本体20にピンチシールされた電極アッシー22は、図12に示すように、そのタングステン電極26とモリブデン箔30との溶接部分の周囲においてアークチューブ本体20との間に微小な隙間Sが生じる。モリブデン箔30の剥離は、この隙間Sを起点として発生するが、重ね合わせ代L1が長くなるほど隙間Sの割合が大きくなるので、モリブデン箔30の剥離が発生しやすくなる。また、図13に示すように、アークチューブ16の点灯や消灯に伴う温度変化により、タングステン電極26がアークチューブ本体20に対して伸縮するが、重ね合わせ代L1が長くなるとタングステン電極26の伸縮に伴ってモリブデン箔30に生じる応力も大きくなるので、この点においてもモリブデン箔30の剥離が発生しやすくなる。このような剥離が生じると、図14に示すように、モリブデン箔30の端縁からアークチューブ本体20にクラックCが生じる。そしてこのクラックCが成長してアークチューブ本体20の外周面に達すると、放電空間24と外部空間との間にリークが発生するに至ってしまう。したがって、重ね合わせ代L1をできるだけ短くすることが、モリブデン箔30の剥離に起因するリーク発生を抑制する上で効果的である。
【0044】
一方、重ね合わせ代L1があまりにも短くなると、タングステン電極26とモリブデン箔30との溶接を行うことが物理的に困難となり、しかもこの溶接の際、モリブデン箔30がタングステン電極26との重ね合わせ部分において破断してしまうおそれがある。また、溶接工程でモリブデン箔30が破断しなかったとしても、重ね合わせ代L1があまりにも短くなると、モリブデン箔30の溶接部分周辺の強度が非常に弱くなるので、図15に示すように、次工程のピンチシール工程においてピンチシール圧力により破断したり、アークチューブ16の点灯時に電流が溶接部分に集中して溶断してしまうおそれがある。
【0045】
表1は、重ね合わせ代L1とアークチューブ16の寿命および溶接不良発生との関係を調べるために行った実験の結果を示す表である。この実験の供試サンプル数は、重ね合わせ代L1の各値につき10個である。また、各供試サンプルとして、タングステン電極26の径DがD=0.2mm、モリブデン箔30の幅WがW=1.5mm、ピンチシール部の幅AがA=4.2mm、厚さBがB=2.2mmのものを用いた。
【0046】
【表1】
Figure 0003664972
【0047】
表1の「寿命」の評価において、○は、平均寿命が2000時間以上であったもの、△は、平均寿命が1000〜2000時間であったもの、×は、平均寿命が1000時間未満であったものである。また、表1の「溶接不良」の評価は、目視によるものであって、○は、溶接が確実に行われており、かつモリブデン箔30に亀裂が認められなかったもの、△は、溶接は確実に行われているが、モリブデン箔30に亀裂が認められたもの、×は、溶接が確実に行われていないか、あるいはモリブデン箔30に破断が認められたものである。
【0048】
表1から明らかなように、重ね合わせ代L1を2D≦L1≦0.8W(すなわち本実施形態においては0.4mm≦L1≦1.2mm)の範囲内の値に設定すれば、1000時間以上の平均寿命を確保することができるとともに、溶接不良およびモリブデン箔30の破断を防止することができる。
【0049】
本実施形態において、モリブデン箔30と放電空間24との間隔L2をB≦L2≦0.8Aに設定したのは、次のような理由によるものである。
【0050】
すなわち、モリブデン箔30と放電空間24との間隔L2が狭くなると、放電発光部(タングステン電極26の先端)とモリブデン箔30とが近づくため、アークチューブ16の点灯や消灯に伴うタングステン電極26とモリブデン箔30との重ね合わせ部分の温度変化が大きくなる。そしてこれにより重ね合わせ部分におけるタングステン電極26のアークチューブ本体20に対する伸縮作用が大きくなるので、モリブデン箔30に生じる応力も大きくなり、モリブデン箔30の剥離が発生しやすくなる。このような剥離が生じると、モリブデン箔30の端縁からアークチューブ本体20にクラックCが生じる。そしてこのクラックCが成長してアークチューブ本体20の外周面に達すると、放電空間24と外部空間との間にリークが発生するに至ってしまう(図14参照)。
【0051】
一方、モリブデン箔30と放電空間24との間隔L2が広くなると、次のような問題が生じる。すなわち、一般に、図16に示すように、アークチューブ本体20におけるタングステン電極26との接合面近傍領域には、アークチューブ16の使用中、タングステン電極26とアークチューブ本体20との熱膨張率の差により、タングステン電極26との接合面から放射状に延びるクラックC1と、タングステン電極26を囲むようにして周方向に延びるクラックC2とが発生する。前者は電極クラックと呼ばれるものであって、この電極クラックC1が成長してアークチューブ本体20の外周面に達すると、放電空間24と外部空間との間にリークが発生するに至ってしまう。一方、後者はビードクラックと呼ばれるものであって、このビードクラックC2が形成されることにより電極クラックC1の成長が阻止される。このビードクラックC2は、タングステン電極26のピンチシール部20Bへの埋設部分における軸線方向の温度分布が略均一であることがその発生の条件となる。しかしながら、モリブデン箔30と放電空間24との間隔L2が広くなると、タングステン電極26のピンチシール部20Bへの埋設部分における軸線方向の温度分布がかなり不均一なものとなり、ビードクラックC2が形成されにくくなるので、電極クラックC1が容易に成長してアークチューブ本体20の外周面に達しやすくなってしまう。
【0052】
表2は、モリブデン箔30と放電空間24との間隔L2と、箔浮き(モリブデン箔30の剥離)および電極クラックC1の発生との関係を調べるために行った実験の結果を示す表であり、アークチューブを1000時間点灯させた後に調べたものである。この実験の供試サンプル数は、間隔L2の各値につき10個である。また、各供試サンプルとして、タングステン電極26の径DがD=0.2mm、モリブデン箔30の幅WがW=1.5mm、ピンチシール部の幅AがA=4.2mm、厚さBがB=2.2mmのものを用いた。
【0053】
【表2】
Figure 0003664972
【0054】
表2の「箔浮き」の評価は、目視によるものであって、○は、モリブデン箔30の剥離が生じなかったものおよびモリブデン箔30の剥離は生じたが、アークチューブ本体20にモリブデン箔30の端縁から延びるクラックCは生じなかったものであり、△は、モリブデン箔30の剥離およびアークチューブ本体20のクラックCが生じたが、そのクラックCがモリブデン箔30の端縁とアークチューブ本体20の外周面までの距離の1/2未満であったものであり、×は、モリブデン箔30の剥離およびアークチューブ本体20のクラックCが生じ、そのクラックCがモリブデン箔30の端縁とアークチューブ本体20の外周面までの距離の1/2以上であったものである。
【0055】
また、表2の「電極クラック」の評価も、目視によるものであって、○は、ビードクラックC2の形成により、電極クラックC1がビードクラックC2の外周側領域まで成長していなかったものであり、△は、ビードクラックC2の形成がやや不十分で、電極クラックC1が部分的にビードクラックC2の外周側領域まで成長していたものであり、×は、ビードクラックC2の形成が不十分で、電極クラックC1がアークチューブ本体20の外周面に達していたものである。
【0056】
表2から明らかなように、モリブデン箔30と発光管部20Aの放電空間24との間隔L2を、ピンチシール部20Bの幅Aおよび厚さBに対して、B≦L2≦0.8A(すなわち本実施形態においては2.2mm≦L2≦3.4mm)の範囲内の値に設定すれば、電極クラックC1の成長を効果的に抑制した上で、モリブデン箔30の剥離発生を効果的に抑制することできる。
【0057】
以上詳述したように、本実施形態に係るアークチューブ16は、タングステン電極26とモリブデン箔30との重ね合わせ代L1が、タングステン電極26の径Dおよびモリブデン箔30の幅Wに対して、2D≦L1≦0.8Wに設定されているので、モリブデン箔30の破断を効果的に抑制した上で、モリブデン箔30の剥離発生を効果的に抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態に係るアークチューブ16は、モリブデン箔30と発光管部20Aの放電空間24との間隔L2が、ピンチシール部20Bの幅Aおよび厚さBに対して、B≦L2≦0.8Aに設定されているので、電極クラックC1の成長を効果的に抑制した上で、モリブデン箔30の剥離発生を効果的に抑制することができる。
【0059】
このように本実施形態においては、モリブデン箔30の破断および電極クラックC1の成長を効果的に抑制した上で、モリブデン箔30の剥離発生を効果的に抑制することができ、これによりモリブデン箔30の剥離に起因するリーク発生をより効果的に抑制することができるので、アークチューブ16の長寿命化を十分に図ることができる。
【0060】
本実施形態においては、車両用前照灯に装着される放電バルブ10のアークチューブ16について説明したが、これ以外の用途に用いられるアークチューブにおいても、本実施形態と同様の構成を採用することにより本実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の一実施形態に係るアークチューブが組み込まれた放電バルブを示す側断面図
【図2】図1のII部拡大図
【図3】図2のIII-III 線断面図
【図4】図2のIV方向矢視図
【図5】図4のV-V 線断面図
【図6】図4のVI-VI 線断面図
【図7】上記アークチューブにおける前方側のピンチシール部を形成するピンチシール工程を示す斜視図
【図8】上記ピンチシール工程を示す平断面図
【図9】上記ピンチシール工程の前工程であるシュリンクシール工程を示す平断面図
【図10】図2の要部詳細図
【図11】図3の要部詳細図
【図12】上記アークチューブにおいて、アークチューブ本体にピンチシールされた電極アッシーのタングステン電極とモリブデン箔との溶接部分を示す斜視断面図
【図13】図12のXIII方向矢視図
【図14】上記モリブデン箔の端縁からアークチューブ本体に生じるクラックの様子を示す要部斜視図
【図15】上記モリブデン箔の破断の様子を示す、図13と同様の図
【図16】上記アークチューブ本体におけるタングステン電極との接合部近傍の様子を示す断面詳細図
【図17】従来例を示す、図3と同様の図
【符号の説明】
2 ピンチャ
2a 正面部
2a1 一般部
2a2 段上がり平面部
2b 側面部
2c ストッパ部
2d ストッパ受け部
4 バーナ
10 放電バルブ
12 アークチューブユニット
14 絶縁プラグユニット
16 アークチューブ
18 シュラウドチューブ
20 アークチューブ本体
20A 発光管部
20B ピンチシール部
20Ba 上面、下面
20Ba1 一般部
20Ba2 段下がり平面部
20B´ ピンチシール予定部
20C ネック部
22 電極アッシー
24 放電空間
24a スリット
26 タングステン電極
28 リード線
30 モリブデン箔
A ピンチシール部の幅
B ピンチシール部の厚さ
C クラック
C1 電極クラック
C2 ビードクラック
D タングステン電極の径
D(B) ピンチャの段上がり平面部相互間の間隔
L1 タングステン電極とモリブデン箔との重ね合わせ代
L2 モリブデン箔と放電空間との間隔
S 隙間
W モリブデン箔の幅

Claims (1)

  1. 車両用前照灯の光源として用いられるアークチューブであって、
    放電空間を形成する発光管部の両側に各々ピンチシール部が形成されてなる石英ガラス製のアークチューブ本体と、タングステン電極とモリブデン箔とが部分的に重ね合わされた状態で溶接されてなり、上記タングステン電極の先端部を上記放電空間へ突出させるようにして上記各ピンチシール部において上記アークチューブ本体にピンチシールされた1対の電極アッシーと、を備えてなるアークチューブにおいて、
    上記ピンチシール部における上記モリブデン箔の幅方向と平行な両面が、上記タングステン電極と上記モリブデン箔との接合部の両側に位置するU字形領域を含む一般部と、この一般部のU字形領域を囲むようにして該U字形領域に対して段下がりで平面状に形成された段下がり平面部とからなり、
    上記タングステン電極と上記モリブデン箔との重ね合わせ代L1が、上記タングステン電極の径Dおよび上記モリブデン箔の幅Wに対して、
    2D≦L1≦0.8W
    に設定されるとともに、上記モリブデン箔と上記放電空間との間隔L2が、上記ピンチシール部の幅Aおよび上記ピンチシール部の段下がり平面部の厚さBに対して、
    B≦L2≦0.8A
    に設定されている、ことを特徴とするアークチューブ。
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