JP3663774B2 - 金属中微量酸素の分析方法および装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は金属中微量酸素の分析方法および装置に係り、特に従来のこの種の分析方法および装置に比し簡便迅速にしかも高精度にて定量できる分析方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属中の酸素は延性や加工性などの材料特性に影響を及ぼすために、正確な定量分析が必要である。特に近年、鋼の高純度化に伴い鉄鋼中の極微量の酸素が重要視されるようになり、その高精度でしかも迅速簡便な分析方法および分析装置が求められている。
しかし、鋼の高純度化が進むと、各成分の含有量が低減されているため、その正確な分析には分析前に試料表面の汚染部を確実に除去することが極めて重要となっている。汚染源としては有機物や炭酸ガスの吸着、大気等の雰囲気による表面酸化物等が該当する。金属中の酸素含有量を正確に測定するにはこれらの汚染部を完全に除去した後に分析する必要がある。
【0003】
最近の鉄鋼中の微量酸素分析法としては、不活性ガス融解ー赤外線吸収法が広く用いられており、試料表面の汚染部除去の前処理法としては、酸等を用いた電解研磨法や化学研磨法が報告されている。従来のこれらの方法の概要について説明する。
【0004】
特開平3ー150462号公報所載の発明の要旨は次のとおりである。すなわち、「鉄鋼中の微量酸素を加熱抽出して測定する際に、前処理として試料の電解研磨を行なう方法において、酸素量測定前に1200℃以上1400℃以下の温度で予備加熱を行なうことを特徴とする鉄鋼の微量酸素分析方法。」である。すなわち、この発明は、試料表面に付着したガス、有機物等の汚染物を試料の酸素測定前に1200℃〜1400℃の温度に加熱して除去し、鋼中に存在する微量酸素のみを分析せんとするものである。
【0005】
特開昭60ー18759号公報による発明の要旨は次の如くである。すなわち、「鋼中O2を分析するための供試料を反応管内に収容せしめると共に、該反応管内に還元性ガスを通入させ、該還元ガス雰囲気において500℃以上に加熱し前記供試料表面を還元処理することを特徴とする鋼中O2分析供試料の前処理法 。」である。すなわち、この発明は、供試料を還元ガス雰囲気で加熱することによって、試料表面の酸化膜を除去し、酸素分析の精度の向上を図らんとするものである。
【0006】
しかし、上記従来法によって表面付着汚染を除去しても完全に酸化膜を除去することが困難であることが判明した。すなわち、上記発明の如き前処理を施しても、前処理の時点から分析計で測定するまでの時間帯に、試料洗浄等による試料表面汚染もしくは再酸化などにより試料表面が再度汚染されるためppmレベルもしくはそれ以下の定量分析に影響を与えることが明らかになった。特に清浄な鉄の表面は、雰囲気の吸着や酸化が瞬時に起り易い。この問題を解決するために特開平6ー148170号公報所載の発明は一つの方法を提案している。
【0007】
この発明の要旨は、次の如くである。すなわち、「鉄鋼試料表面をグラインダー、ヤスリ等で研削後、該試料中の微量酸素を加熱抽出して測定する方法において、該研削処理後の試料を炭素ルツボに入れ900℃以上1,400℃以下の温度で予備加熱を行なうことを特徴とする鉄鋼中の微量酸素分析方法。」である。すなわち、この方法は、鉄鋼試料表面をグラインダー、ヤスリ等で研削後、試料を炭素ルツボに入れ、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気中で900℃以上、1,400℃以下の温度で予備加熱する方法である。
しかし、この方法はヘリウム等のキヤリアーガス中でガス抽出する2,000℃前後の温度より低温で前処理するものであり、グラインダー等で研削された試料の表面付着酸素とルツボのCとの反応を前提としているものの、試料溶解前の上記低温度では脱酸反応が起りにくく、しかもルツボに接触する部位のみに限定され、試料全体の脱酸反応を期待することができないという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記の如く、金属中特に鉄鋼中微量酸素の分析方法ならびに装置についての従来技術の欠点に鑑み本発明の目的は、簡便、迅速に分析することができ、しかも高精度で信頼性の高い分析値を得ることができる効果的な金属中微量酸素の分析方法および装置を提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明による金属中微量酸素の分析方法および装置の要旨とするところは次の如くである。
(1)金属中微量酸素の分析方法において、試料を不活性ガス雰囲気の予備処理室に導入する段階と、前記試料を点支持した状態で不活性ガススパッタリングを施し該試料の汚染部を除去する段階と、前記スパッタリング終了後前記予備処理室の雰囲気ガスを分析用キャリアガスに置換する段階と、前記予備処理室内の雰囲気ガスを分析用キャリアガスに切替えた後前記試料を前記予備処理室からグラファイトるつぼを有する加熱室に直接落下させることによって移し酸素を分析する段階と、を有して成ることを特徴とする金属中微量酸素の分析方法。
(2)試料を点支持してその表面汚染部を不活性ガスのスパッタリングにより除去する予備処理室と、前記スパッタリング用電源および不活性ガス源と、前記予備処理室の上部に開閉自在に設けられた試料投入口と、前記予備処理室へ導入されるスパッタリング用不活性ガス管および分析用キャリアガス管と、前記予備処理室の外側前方に設けられた前記不活性ガスおよび分析用キャリアガスの切換えバルブと、前記予備処理室を開閉自在に閉塞するシャッターと、前記予備処理室の直下に設けられ汚染部の除去された試料が落下することによって直接移されるグラファイトるつぼを有する還元室と、前記還元室の加熱用電源と、前記還元室中の試料の酸素を定量する赤外線吸収装置を含む分析装置と、を有して成ることを特徴とする金属中微量酸素の分析装置。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。
図1は鉄鋼中の微量酸素の分析方法および装置を示す模式断面図である。
先ず、本発明による分析装置について説明する。本発明の特徴は試料2の表面汚染部を不活性ガスのスパツタリングにより除去する方法をとり、不活性ガスとして主としてアルゴンを使用しアルゴンスパツタリングによって汚染部を除去する予備処理を行なうために予備処理室4を設けている。予備処理室4内ではArスパツタリングを完了するまではアルゴンガス源6からバルブ8を経由して予備処理室4に導入し、排気ポンプ10およびバルブ12によって排気させるように構成されている。
【0011】
また、本発明法による予備処理室4におけるArスパツタリング完了後、試料2をグラフアイトるつぼ14を有する還元室16に移すために、還元室と同一雰囲気のHe等のキヤリアーガスと同一雰囲気にする必要上、予備処理室4内をArからHeへ切り換える。そのため予備処理室4の外側前方には切り換えバルブ8を経由してHeガス18が予備処理室4に導入できるようになっている。予備処理室4内の試料2はその全表面の汚染部を除去する必要から試料2の支持は左右からの導電性試料押さえ20を介して点支持となっているのが特徴である。更にスパツタリングのため、スパツタリング用電源22からの導線を介して試料2は陰極に帯電し、予備処理室4の外枠4Aが陽極に帯電し、試料2の表面に高圧を印加しアルゴンイオンを衝突させることによって全表面の汚染部が破壊除去される構成となっている。
【0012】
なお、予備処理室4の上部には、試料4の投入口24が設けられ、下部にはスライドバルブのシャッター26がいずれも開閉自在に設けられている。試料2のスパッタリングにより表面の酸素など不純物の除去終了後該試料に内蔵されている酸素を分析するため、予備処理室4からグラファイトるつぼ14を有する還元室16に移動させ空気に触れることなく、Ar雰囲気から分析用キャリアガスであるHeに切り換える。この切り換えはArガスの通路を閉とし、Heガスの通路を開とするバルブ8の切り換えによって行なわれる。予備処理室4のArからHeへの切り換え完了後、予備処理室4の底部のシャッター26を開とし、試料2を直下に設けられたグラファイトるつぼ14を有する還元室16中に落下される。還元室16は分析室を形成するのでHe源18からバルブに8を経てキャリアガスHeが循環されている。
【0013】
還元室16の外側には高周波電源等の還元室16の温度を調整できる加熱用電源30が設けられており、予備処理試料をグラフアイトるつぼ14の中の還元性雰囲気で加熱される。
還元室16の試料2は溶解する温度の2,000〜2,500℃に昇温され、微量酸素はすべてCOガスとして公知の赤外線吸収装置32によって定量される。
【0014】
【実施例】
図2は試料2の表面をArでのスパツタリングした後の試料表面をオージエ電子分光法により分析した結果であり、横軸は電子エネルギーレベルを示し、縦軸はオージエ微分スペクトルを表す。図2より明らかなとおり、スパツタリングした後の試料2の表層部にはほとんど酸素が観測されないことから酸化膜による汚染が完全に除去されていることを示す。
【0015】
比較例として、図2に示したスパツタリングした後の同一試料を大気中に1分間放置した後、深さ方向に分析したオージエ電子分光法による分析結果を図3として示した。図3には高い値の酸素が検出されており、大気暴露により試料表面が再酸化されたことがわかる。
【0016】
【発明の効果】
本発明は金属中の特に鉄鋼中の微量酸素の分析に当り、従来法の欠点を一掃するため試料表面の汚染部の除去に、不活性ガススパツタリング現象を利用し、予備処理室において点支持の試料に対し、スパツタリングを行なうことにより表面には残留酸素が全く存在しないことを確認した。この汚染部のほとんどない試料を還元室のグラフアイトるつぼ中に移し、2,000℃以上の高温に昇温し、試料を溶解し内部の微量酸素をすべてCOガスとして例えば高感度で検出できる赤外線吸収装置で定量する装置および方法をとつたので、次の如き効果を挙げることができた。
(イ)試料表面の汚染部を完全に除去できるのみならず、スパツタリング後は瞬時といえども大気中に暴露することがないので、再酸化のおそれが全くないのが本発明の大きな特徴で、金属中微量酸素の定量が高精度で遂行できる。
(ロ)分析方法が比較的簡単であるので簡便、迅速に定量分析が可能となった。
(ハ)本発明の完成により、今後高純度材料の開発に著しく寄与できる。
【0017】
なお、本発明の実施例を主として、鉄鋼中微量酸素の分析方法および装置について説明したが、本発明の技術思想は鉄鋼以外の他の金属についても及ぼすことができるのが明らかである。
【0018】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による実施例として挙げた鉄鋼中微量酸素の分析方法および装置を模式系統的に示す線図である。
【図2】本発明の実施例の一つとして、試料をアルゴンスパツタリングを施した後、オージエ電子分光法にて分析した。横軸は電子ボルトで表したエネルギーレベル、縦軸はオージエ微分スペクトルを示す線図で、試料表面には酸化膜による汚染が全くないことを示す。
【図3】図2に示す試料を大気中に1分間放置した後、深さ方向に分析した著大な酸素値を示す図2と同一のオージエ電子分光法によって表された線図である。
【符号の説明】
2 試料
4 予備処理室
6 アルゴンガス源
8、12 バルブ
10 排気ポンプ
14 グラフアイトるつぼ
16 還元室
18 Heガス
20 試料押さえ
22 スパツタリング用電源
24 試料投入口
26 シヤッター
28 バルブ
30 加熱用電源
32 赤外線吸収装置
【産業上の利用分野】
本発明は金属中微量酸素の分析方法および装置に係り、特に従来のこの種の分析方法および装置に比し簡便迅速にしかも高精度にて定量できる分析方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属中の酸素は延性や加工性などの材料特性に影響を及ぼすために、正確な定量分析が必要である。特に近年、鋼の高純度化に伴い鉄鋼中の極微量の酸素が重要視されるようになり、その高精度でしかも迅速簡便な分析方法および分析装置が求められている。
しかし、鋼の高純度化が進むと、各成分の含有量が低減されているため、その正確な分析には分析前に試料表面の汚染部を確実に除去することが極めて重要となっている。汚染源としては有機物や炭酸ガスの吸着、大気等の雰囲気による表面酸化物等が該当する。金属中の酸素含有量を正確に測定するにはこれらの汚染部を完全に除去した後に分析する必要がある。
【0003】
最近の鉄鋼中の微量酸素分析法としては、不活性ガス融解ー赤外線吸収法が広く用いられており、試料表面の汚染部除去の前処理法としては、酸等を用いた電解研磨法や化学研磨法が報告されている。従来のこれらの方法の概要について説明する。
【0004】
特開平3ー150462号公報所載の発明の要旨は次のとおりである。すなわち、「鉄鋼中の微量酸素を加熱抽出して測定する際に、前処理として試料の電解研磨を行なう方法において、酸素量測定前に1200℃以上1400℃以下の温度で予備加熱を行なうことを特徴とする鉄鋼の微量酸素分析方法。」である。すなわち、この発明は、試料表面に付着したガス、有機物等の汚染物を試料の酸素測定前に1200℃〜1400℃の温度に加熱して除去し、鋼中に存在する微量酸素のみを分析せんとするものである。
【0005】
特開昭60ー18759号公報による発明の要旨は次の如くである。すなわち、「鋼中O2を分析するための供試料を反応管内に収容せしめると共に、該反応管内に還元性ガスを通入させ、該還元ガス雰囲気において500℃以上に加熱し前記供試料表面を還元処理することを特徴とする鋼中O2分析供試料の前処理法 。」である。すなわち、この発明は、供試料を還元ガス雰囲気で加熱することによって、試料表面の酸化膜を除去し、酸素分析の精度の向上を図らんとするものである。
【0006】
しかし、上記従来法によって表面付着汚染を除去しても完全に酸化膜を除去することが困難であることが判明した。すなわち、上記発明の如き前処理を施しても、前処理の時点から分析計で測定するまでの時間帯に、試料洗浄等による試料表面汚染もしくは再酸化などにより試料表面が再度汚染されるためppmレベルもしくはそれ以下の定量分析に影響を与えることが明らかになった。特に清浄な鉄の表面は、雰囲気の吸着や酸化が瞬時に起り易い。この問題を解決するために特開平6ー148170号公報所載の発明は一つの方法を提案している。
【0007】
この発明の要旨は、次の如くである。すなわち、「鉄鋼試料表面をグラインダー、ヤスリ等で研削後、該試料中の微量酸素を加熱抽出して測定する方法において、該研削処理後の試料を炭素ルツボに入れ900℃以上1,400℃以下の温度で予備加熱を行なうことを特徴とする鉄鋼中の微量酸素分析方法。」である。すなわち、この方法は、鉄鋼試料表面をグラインダー、ヤスリ等で研削後、試料を炭素ルツボに入れ、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気中で900℃以上、1,400℃以下の温度で予備加熱する方法である。
しかし、この方法はヘリウム等のキヤリアーガス中でガス抽出する2,000℃前後の温度より低温で前処理するものであり、グラインダー等で研削された試料の表面付着酸素とルツボのCとの反応を前提としているものの、試料溶解前の上記低温度では脱酸反応が起りにくく、しかもルツボに接触する部位のみに限定され、試料全体の脱酸反応を期待することができないという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記の如く、金属中特に鉄鋼中微量酸素の分析方法ならびに装置についての従来技術の欠点に鑑み本発明の目的は、簡便、迅速に分析することができ、しかも高精度で信頼性の高い分析値を得ることができる効果的な金属中微量酸素の分析方法および装置を提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明による金属中微量酸素の分析方法および装置の要旨とするところは次の如くである。
(1)金属中微量酸素の分析方法において、試料を不活性ガス雰囲気の予備処理室に導入する段階と、前記試料を点支持した状態で不活性ガススパッタリングを施し該試料の汚染部を除去する段階と、前記スパッタリング終了後前記予備処理室の雰囲気ガスを分析用キャリアガスに置換する段階と、前記予備処理室内の雰囲気ガスを分析用キャリアガスに切替えた後前記試料を前記予備処理室からグラファイトるつぼを有する加熱室に直接落下させることによって移し酸素を分析する段階と、を有して成ることを特徴とする金属中微量酸素の分析方法。
(2)試料を点支持してその表面汚染部を不活性ガスのスパッタリングにより除去する予備処理室と、前記スパッタリング用電源および不活性ガス源と、前記予備処理室の上部に開閉自在に設けられた試料投入口と、前記予備処理室へ導入されるスパッタリング用不活性ガス管および分析用キャリアガス管と、前記予備処理室の外側前方に設けられた前記不活性ガスおよび分析用キャリアガスの切換えバルブと、前記予備処理室を開閉自在に閉塞するシャッターと、前記予備処理室の直下に設けられ汚染部の除去された試料が落下することによって直接移されるグラファイトるつぼを有する還元室と、前記還元室の加熱用電源と、前記還元室中の試料の酸素を定量する赤外線吸収装置を含む分析装置と、を有して成ることを特徴とする金属中微量酸素の分析装置。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。
図1は鉄鋼中の微量酸素の分析方法および装置を示す模式断面図である。
先ず、本発明による分析装置について説明する。本発明の特徴は試料2の表面汚染部を不活性ガスのスパツタリングにより除去する方法をとり、不活性ガスとして主としてアルゴンを使用しアルゴンスパツタリングによって汚染部を除去する予備処理を行なうために予備処理室4を設けている。予備処理室4内ではArスパツタリングを完了するまではアルゴンガス源6からバルブ8を経由して予備処理室4に導入し、排気ポンプ10およびバルブ12によって排気させるように構成されている。
【0011】
また、本発明法による予備処理室4におけるArスパツタリング完了後、試料2をグラフアイトるつぼ14を有する還元室16に移すために、還元室と同一雰囲気のHe等のキヤリアーガスと同一雰囲気にする必要上、予備処理室4内をArからHeへ切り換える。そのため予備処理室4の外側前方には切り換えバルブ8を経由してHeガス18が予備処理室4に導入できるようになっている。予備処理室4内の試料2はその全表面の汚染部を除去する必要から試料2の支持は左右からの導電性試料押さえ20を介して点支持となっているのが特徴である。更にスパツタリングのため、スパツタリング用電源22からの導線を介して試料2は陰極に帯電し、予備処理室4の外枠4Aが陽極に帯電し、試料2の表面に高圧を印加しアルゴンイオンを衝突させることによって全表面の汚染部が破壊除去される構成となっている。
【0012】
なお、予備処理室4の上部には、試料4の投入口24が設けられ、下部にはスライドバルブのシャッター26がいずれも開閉自在に設けられている。試料2のスパッタリングにより表面の酸素など不純物の除去終了後該試料に内蔵されている酸素を分析するため、予備処理室4からグラファイトるつぼ14を有する還元室16に移動させ空気に触れることなく、Ar雰囲気から分析用キャリアガスであるHeに切り換える。この切り換えはArガスの通路を閉とし、Heガスの通路を開とするバルブ8の切り換えによって行なわれる。予備処理室4のArからHeへの切り換え完了後、予備処理室4の底部のシャッター26を開とし、試料2を直下に設けられたグラファイトるつぼ14を有する還元室16中に落下される。還元室16は分析室を形成するのでHe源18からバルブに8を経てキャリアガスHeが循環されている。
【0013】
還元室16の外側には高周波電源等の還元室16の温度を調整できる加熱用電源30が設けられており、予備処理試料をグラフアイトるつぼ14の中の還元性雰囲気で加熱される。
還元室16の試料2は溶解する温度の2,000〜2,500℃に昇温され、微量酸素はすべてCOガスとして公知の赤外線吸収装置32によって定量される。
【0014】
【実施例】
図2は試料2の表面をArでのスパツタリングした後の試料表面をオージエ電子分光法により分析した結果であり、横軸は電子エネルギーレベルを示し、縦軸はオージエ微分スペクトルを表す。図2より明らかなとおり、スパツタリングした後の試料2の表層部にはほとんど酸素が観測されないことから酸化膜による汚染が完全に除去されていることを示す。
【0015】
比較例として、図2に示したスパツタリングした後の同一試料を大気中に1分間放置した後、深さ方向に分析したオージエ電子分光法による分析結果を図3として示した。図3には高い値の酸素が検出されており、大気暴露により試料表面が再酸化されたことがわかる。
【0016】
【発明の効果】
本発明は金属中の特に鉄鋼中の微量酸素の分析に当り、従来法の欠点を一掃するため試料表面の汚染部の除去に、不活性ガススパツタリング現象を利用し、予備処理室において点支持の試料に対し、スパツタリングを行なうことにより表面には残留酸素が全く存在しないことを確認した。この汚染部のほとんどない試料を還元室のグラフアイトるつぼ中に移し、2,000℃以上の高温に昇温し、試料を溶解し内部の微量酸素をすべてCOガスとして例えば高感度で検出できる赤外線吸収装置で定量する装置および方法をとつたので、次の如き効果を挙げることができた。
(イ)試料表面の汚染部を完全に除去できるのみならず、スパツタリング後は瞬時といえども大気中に暴露することがないので、再酸化のおそれが全くないのが本発明の大きな特徴で、金属中微量酸素の定量が高精度で遂行できる。
(ロ)分析方法が比較的簡単であるので簡便、迅速に定量分析が可能となった。
(ハ)本発明の完成により、今後高純度材料の開発に著しく寄与できる。
【0017】
なお、本発明の実施例を主として、鉄鋼中微量酸素の分析方法および装置について説明したが、本発明の技術思想は鉄鋼以外の他の金属についても及ぼすことができるのが明らかである。
【0018】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による実施例として挙げた鉄鋼中微量酸素の分析方法および装置を模式系統的に示す線図である。
【図2】本発明の実施例の一つとして、試料をアルゴンスパツタリングを施した後、オージエ電子分光法にて分析した。横軸は電子ボルトで表したエネルギーレベル、縦軸はオージエ微分スペクトルを示す線図で、試料表面には酸化膜による汚染が全くないことを示す。
【図3】図2に示す試料を大気中に1分間放置した後、深さ方向に分析した著大な酸素値を示す図2と同一のオージエ電子分光法によって表された線図である。
【符号の説明】
2 試料
4 予備処理室
6 アルゴンガス源
8、12 バルブ
10 排気ポンプ
14 グラフアイトるつぼ
16 還元室
18 Heガス
20 試料押さえ
22 スパツタリング用電源
24 試料投入口
26 シヤッター
28 バルブ
30 加熱用電源
32 赤外線吸収装置
Claims (2)
- 金属中微量酸素の分析方法において、試料を不活性ガス雰囲気の予備処理室に導入する段階と、前記試料を点支持した状態で不活性ガススパッタリングを施し該試料の汚染部を除去する段階と、前記スパッタリング終了後前記予備処理室の雰囲気ガスを分析用キャリアガスに置換する段階と、前記予備処理室内の雰囲気ガスを分析用キャリアガスに切替えた後前記試料を前記予備処理室から直接にグラファイトるつぼを有する加熱室に落下させることによって移して酸素を分析する段階と、を有して成ることを特徴とする金属中微量酸素の分析方法。
- 試料を点支持してその表面汚染部を不活性ガスのスパッタリングにより除去する予備処理室と、前記スパッタリング用電源および不活性ガス源と、前記予備処理室の上部に開閉自在に設けられた試料投入口と、前記予備処理室へ導入されるスパッタリング用不活性ガス管および分析用キャリアガス管と、前記予備処理室の外側前方に設けられた前記不活性ガスおよび分析用キャリアガスの切換えバルブと、前記予備処理室を開閉自在に閉塞するシャッターと、前記予備処理室の直下に設けられ汚染部の除去された試料が直接落下することによって移されるグラファイトるつぼを有する還元室と、前記還元室の加熱用電源と、前記還元室中の試料の酸素を定量する赤外線吸収装置を含む分析装置と、を有して成ることを特徴とする金属中微量酸素の分析装置。
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