JP5733377B2 - 溶鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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本発明は、溶鋼の清浄度に応じて連続鋳造条件を変更することを特徴とする溶鋼の連続鋳造方法に関し、より具体的には溶鋼のトータル酸素濃度(T.[O])に応じて連続鋳造中鋳片の切断長を変更したり、溶鋼へのCa添加量を調整したりする溶鋼の連続鋳造方法であって、連続鋳造後の鋳片の余剰材発生率を低減することができる連続鋳造方法に関する。
一部の鋼製品においては、割れの起点となる鋼中介在物を低減させた高清浄度鋼が求められている。溶鋼の清浄性の指標には溶鋼の介在物濃度を表すT.[O]値が広く用いられている。清浄度鋼の溶製では、RHなどの二次精錬で介在物の浮上分離が行われており、現状は溶鋼段階のT.[O]値が不明のため、経験に基づいてその浮上分離のための時間を決定している。したがって、製品の向先別に定められた鋼材の清浄度基準を満たさない鋳片(鋼材)が発生する場合がある。
その、鋼材中の成分や清浄度およびサイズは、向先別に定まっている場合が多い。したがって、連続鋳造後の鋳片は、その鋼材に求められている特有の成分規格や清浄度の基準を満たした上で、その鋼材に求められている所定範囲のサイズに適合していなければならない。
このような状況では、連続鋳造後(鋳片切断後)に目的とする清浄度を満たしていないことが判明した場合は、当初に予定されていた受注内容には品質不適のため使用できず、受注がない余剰材として一時保管し、後に清浄度に応じた適切な受注内容の向先に振り当てを行わなければならない。
しかし、品質不適問題により一旦余剰材が発生してしまうと、その余剰材となった鋳片は当初に計画されていた受注内容に合わせて切断されているので、そのサイズが後に清浄度に応じて振り当てられた受注内容に適合するとは限らない。もしその鋳片長が適合しない場合には、一旦所定の長さに切断された余剰材の鋳片長さよりも短い長さの別の受注内容に合わせて切断し直す必要がある。このため、鋳片の歩留ロスが大きく発生するといった問題点が生じる。
以上のように、連続鋳造後に目的とする清浄度を満たしていなかったことが判明した場合には、当初に予定されていた受注内容には品質不適のためにそのままでは出荷できず、余剰として積みあがるという問題が生じる。また、連続鋳造中の鋳片の切断は目的としていた出荷先に合わせて切断しているため、他の向先への変更は歩留ロスを伴い易いといった問題も生じる。
この品質不適問題の発生を防止するための手段として、特許文献1に開示された「溶解状態にある鋼の介在物評価方法」の発明の適用が考えられる。その発明では、精錬を完了する前に溶鋼の一部をサンプルとして取り出し、そのサンプルを非酸化雰囲気中にて固化させ、表面状態を観察し、表面に浮き上がった介在物の量に基づいて精錬中の鋼の清浄度を評価すると共に目標清浄度との関係から精錬の続行可否を判断するとしている。しかし、この方法では特別な測定装置を必要とする上に、オンラインでの実施に関する具体的内容は開示されていないため、実際短時間かつ高精度の清浄度評価を得るにはなお課題が多いと懸念される。
また、品質不適問題により余剰材が発生し、その結果生じてしまう鋳片の歩留ロスを減少するためには、例えば特許文献2に開示されるような、非金属介在物を定量分析し、その分析結果から工程処理条件を決定して製造処理し、製品化後の用途、製品化後の納入先を決定する発明の適用が考えられる。しかし、この発明は連続鋳造後に分析値を知って半製品のその後の工程処理条件を決定し、製造処理する方法なので、鋳片は定められた寸法に切断完了している。したがって、この発明を適用しても、余剰材発生とそれに伴う歩留低下を防止することができない。
また、特許文献3に開示されるような、溶鋼の化学組成を知って鋳片切断長を調整する発明は、公知である。しかし、それらの発明では、溶鋼中のTi/Nを含む成分分析値を知って連続鋳造中の鋳片切断長を調整したり、溶鋼成分を調整したりしているが、T.[O]などの清浄度に関する情報を入手して、鋳片切断長を調整したり溶鋼成分を調整したりする技術に関しては、未だ公開された文献が無い。RHなどの二次精錬終了後から鋳片切断開始までの時間は短いため、そのような短時間におけるT.[O]の正確な分析手法が従来知られていなかったためと考えられる。
特開平05−223808号公報 特開2002−214222号公報 特開2002−283021号公報 特開2002−328125号公報 特開平10−311782号公報
本発明は、現状では鋳片切断後にしかわからないT.[O]外れに起因する、(1)余剰材の発生、および(2)向先変更に伴う歩留ロスの双方を抑制する手段を提供することを課題とする。
上記の課題の解決するために本発明者は次のような検討を行った。すなわち、余剰材の発生を抑制するための対応として、まず「ア:RHでのT.[O]外れの防止」があり、次に「イ:鋳片切断前の向先変更」がある。しかし、アには特許文献1に記載される方法があるものの、その方法では特別な測定装置を必要とする上に、実際短時間かつ高精度の清浄度評価を得るにはなお課題が多いものと判断した。そこで、本発明ではイでの対応を考えた。
ここで、向先変更に伴う歩留ロスの発生に対しては、そもそも余剰材を発生させないためのアやイが効果的であるが、その他に「ウ:生じた余剰材の向先振当て最適化」もある。このウには、特許文献2に記載される方法の適用が考えられるが、所詮従来分析方法によるT.[O]の分析値を利用するものなので、その分析値を後から知っても振当て最適化に顕著な成果が現れるものではない。そこで、本発明者らはイが最も効果的で良いと考えた。
イについては特許文献3に記載される方法のように鋳片の化学成分を知って切断長を調整する方法が知られていたものの、T.[O]については具体的な情報入手方法が無かった。そこで、本発明者らは、まず二次精錬終了後の溶鋼中のT.[O]の迅速分析方法の開発に着手してその方法の確立を目指し、それと平行して以下の本発明を完成させた。
(1)溶鋼の二次精錬終了後に溶鋼中のT.[O]を分析し、その分析値に応じて該溶鋼の連続鋳造条件を変更する溶鋼の連続鋳造方法であって、前記溶鋼中のT.[O]分析を行う方法として、鉄鋼試料を黒鉛るつぼに入れて不活性ガス中で加熱融解し、発生した一酸化炭素または二酸化炭素のいずれかひとつあるいは両方の赤外線吸収度から該試料中の酸素濃度を測定する方法であって、該試料表面の酸化皮膜を除去、清浄化する前処理として真空アークプラズマ処理をアークプラズマ放電開始時の真空度を5Pa以上35Pa以下かつ、アークプラズマ出力電流を15A以上55A以下とする条件下において、溶鋼から採取した鋼塊に対して、高さ1.5mm以上7mm以下、表面積Sと体積Vの比(S/V)が1.05以上1.30以下となるように機械加工して得た小片を試料とし、前記アークプラズマ放電を前記試料に、合計4回以下であって、かつ合計処理時間として0.2秒以上1.2秒以下施した後、該試料を大気と接触させることなく、直接、分析時の温度よりも高い温度で加熱、清浄化した後、分析する温度に下げて待機させた黒鉛るつぼへ投入する鉄鋼中酸素分析方法を用いるとともに、前記溶鋼中のT.[O]分析値を、該溶鋼の連続鋳造中であってその鋳片の切断開始前までに知り、そのT.[O]分析値が受注内容に適合していなかった場合には、そのT.[O]分析値が受注内容を満足する別の向先をまず選定し、当該別の向先の受注内容の切断長に適合するように鋳片を切断することを特徴とする、溶鋼の連続鋳造方法。
)上記(1)記載の溶鋼の連続鋳造方法を用いて鋳片加工後の出荷先を調整することを特徴とする、溶鋼の連続鋳造方法。
本発明は、精錬終了から連続鋳造での鋳造中鋳片の切断開始前または鋳造開始前に溶鋼中のT.[O]を分析し、溶鋼の清浄度を判断する。その判断した清浄度に応じて、必要な場合には連続鋳造中の鋳片切断前にT.[O]分析値に対応した適切な向先に変更し、その向先の受注内容に基づいて切断長を決定する。また、必要な場合には連続鋳造機のタンディッシュ内に添加するCa量や合金鉄量を調整して、向先の受注内容に溶鋼成分を適合させる。
それらの実施により、切断後に満足する清浄度を得られていないことが判明した際に行う振替作業時に発生する歩留ロスを減少でき、かつ、余剰材減少を達成することが出来る。
本発明に係る鉄鋼中酸素分析設備を模式的に示す図である。 従来方法により連続鋳造して得た鋳片の、切断後のT.[O]分布を示すグラフである。 従来方法と本発明方法における、清浄度不適合判明時の対応の相違を説明する図である。 従来方法と本発明方法により得られた鋳片の、切断後のT.[O]分布を示すグラフである。
本発明の連続鋳造方法について以下に説明する。
本発明では、RHなどを用いる溶鋼の二次精錬終了後にその溶鋼中のトータル酸素濃度(T.[O])を分析して、その溶鋼を連続鋳造した後の鋳片がその向先別に定められた条件を満たすことができるよう、そのT.[O]分析値に応じてその溶鋼の連続鋳造条件を変更することを基本的な特徴としている。
その変更する連続鋳造条件の一つは、連続鋳造中の鋳片の切断長である。二次精錬終了後の成分を、T.[O]を含めて鋳片の切断開始前に知ることが出来れば、その成分に適合する向先(受注内容)に合わせた長さの鋳片を得ることができる。ここで、二次精錬は鋳片の成分が向先(受注内容)に適合するように実施されているので、通常は向先を変更する必要が無いし、したがって鋳片の切断も当初計画通りに実施すれば良い。しかし、溶鋼中T.[O]が許容範囲から外れていたり、T.[O]と共に[Mn]や[P][S][Ca]などの含有量が外れていたりした場合には、計画通りの向先へ納入すべく鋳片の加工を開始することが出来ない。特にT.[O]は、その許容濃度が15ppm以下などの高清浄度鋼の製造では、その許容濃度を超えてしまい易い上に、超えてしまっていた場合の製品製造コストへの悪影響が大きい。このような場合には、鋳片の切断長を調整することが出来るだけでも、別の向先の受注内容に適合させることができる場合があり、コスト悪化を回避できる可能性が高まる。
また、本発明において変更する鋳造条件のもう一つは、連続鋳造する鋳片の成分である。上記したように、溶鋼の成分に合わせて鋳片の切断長を変更する方法もあるが、より根本的には溶鋼の成分を変更できれば、さらに別の向先の受注内容に適合させられる可能性が一層高くなる。但し、成分調整が可能な場所は、連続鋳造機の鋳型に溶鋼を供給するタンディッシュ内に実際上限られている。そこでは、従来からCaのほか、一部合金鉄の微量添加が行われているので、それらの添加量を調整し、T.[O]含有量と合わせて向先の受注内容に適合させることが可能である。この成分調整された溶鋼を連続鋳造した鋳片は、既にT.[O]濃度が分かっているので、前記した切断長の調整と合わせて実施することもできる。
この、成分に合わせて連続鋳造中に鋳片の向先を変更する方法は、特許文献3などに開示されているが、それらはすべてT.[O]またはそれに類似する正確な情報を知って利用する方法では無い。二次精錬終了から連続鋳造開始までは通常10分〜20分間と短いし、二次精錬終了から鋳片の切断開始まででも通常30分〜50分間程度と、従来知られているT.[O]分析方法に対しては短すぎ、したがって、T.[O]の情報を活用する着想は存在し得なかったからである。
特に、T.[O]が30ppm以下や15ppm以下の高清浄度鋼の製造においてはT.[O]に関する情報の利用価値が高いのだが、一方、そのような高清浄度鋼の分析においてはT.[O]の分析精度も厳しく求められるので、上記のように短時間で精度よく溶鋼中のT.[O]を知る方法は、未だ公開されていなかった。
そこで、本発明においては、次のような鋼中酸素の迅速分析方法を新たに開発して用いた。以下に、その分析方法について図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1はこの本発明に係る分析方法を実施するための鉄鋼中酸素分析装置を模式的に示したものである。
本発明に係る分析方法に求められる短時間かつ高精度分析を実現するために、本発明で組み合わせる要素技術の内、迅速かつ再現性の高い試料前処理方法として、真空アークプラズマ処理を選択した。例えば、特許文献4に開示された金属中成分分析用試料の調整方法及び装置を適用すればよい。予め真空に保った試料前処理装置1内に、隔離バルブ4を介して、真空度をほとんど変化させることなく、処理前試料投入口3から試料を挿入することができる。その後、真空アークプラズマ処理により、試料表面の酸化皮膜を数秒で除去する。該装置では、試料を自動搬送するため、試料形状を円柱またはブロック(直方体)に限定する。試料は、試料台に載置して処理するため、試料台と接する面は処理されない。そこで、試料を反転させて処理する必要がある。つまり、ひとつの試料に対して、少なくとも2回は放電する必要がある。放電回数が増えると、試料が長時間加熱されることになり、一旦、酸化皮膜除去された試料表面は再び酸化されてしまう。したがって、試料表面の酸化皮膜を確実、正確かつ再現性良く除去し、精錬操業上必要とされる分析精度を確保するため、下記の条件でアークプラズマ処理する必要がある。
(a)真空度:5Pa以上35Pa以下。真空アークプラズマによる試料表面酸化皮膜除去反応は真空度が高いほど促進されるが、35Paを超えると、試料温度上昇に伴う再酸化反応が顕著になるため好ましくない。一方、5Paより低いと、酸化皮膜除去反応自体が進行しなくなるため、好ましくない。したがって、最適な真空度が存在する。
なお、処理時に真空度が一定値に保持されるよう、真空排気バルブとガス導入バルブの開閉を制御する圧力制御機構を有することがなお好ましい。
(b)アークプラズマ出力電流:15A以上55A以下とする。
(c)処理時間:ひとつの試料に対して、合計の処理時間は0.2秒以上1.2秒以下とする。
(d)処理回数:ひとつの試料に対して、合計の処理回数は4回以下とする。
処理後の試料は、大気と接触させることなく、分析装置2に配置した前処理済試料投入口5を通じて、最終的に黒鉛るつぼに投入する。試料前処理チャンバーと分析装置の試料投入口は真空または不活性ガスで内部を置換した連結管8で連結する。不活性ガス種としては、空気との比重差を考慮して、連結管内を確実にガス置換して、処理後の試料の再酸化を防止する観点、さらには経済的な観点から、Arが好ましい。特許文献4に開示された装置構成では、前処理済試料は払い出された後、別置きの酸素分析装置に移送される。しかし、本発明の目的では迅速性が要求されることから、試料前処理装置1と酸素分析装置2を、それぞれ鉛直上下に配置し、連結管8内を自由落下させて、試料を移送する方法、すなわち図1のような装置構成を採用した。
この本発明の装置構成では、酸素分析装置2が床面に近い位置に配置され、分析装置2内部の清掃がガス中の不純物吸着剤の交換等、装置の維持管理作業に支障をきたす。そこで、架台6に組み込まれた装置全体をリフター7に載せて昇降可能とし、当該作業の際には装置全体を上げて、作業性を確保した。このリフター7の駆動方式は特に問わないが、装置全体では相当な重量であることから、操作性の観点で、自動油圧式が好ましい。また、リフター7の可動部は伸縮可能な材料で覆い、作業者が挟まれることのないよう、安全性に配慮した構造を有することが望ましい。
さらに、連結した酸素分析装置2が故障して使えない場合や、分析待ちの前処理済試料を別の酸素分析装置で分析する場合に備えて、試料前処理装置1と酸素分析装置2の連結管8途中に、前処理済試料の取出口9を設ける。
本発明で組み合わせる要素技術の内、溶鋼から採取した鋼塊より簡便かつ迅速に分析試料を得る方法として、溶鋼から採取した鋼塊を切断して作製した高さ(厚さ)が1.5mm以上7mm以下のスライスに対して、打ち抜いた円柱状小片を試料として用いる。具体的には、例えば、特許文献5に開示された分析試料の調整方法及び装置を適用すればよい。試料表面の酸化皮膜を確実、正確かつ再現性良く除去するためには、試料底面の直径と高さから計算される表面積Sと体積Vの比S/Vが、「1.05≦S/V≦1.30」を満たすような形状を確保する必要がある。
この理由は現時点で十分解明できていないが、電極形状などアーク処理部の形状に依存して、アークプラズマの空間分布において効率的な処理に好適な位置が限定されることに対応しているものと推察される。
本発明で組み合わせる要素技術の内、高精度な鋼中酸素分析方法として、不活性ガス中加熱融解−赤外線吸収法を動作原理とする酸素分析装置を選択した。この分析法では、試料ホルダと試料の脱酸反応剤(炭素)供給源を兼ねる黒鉛るつぼを使用する。
分析に先立って、るつぼ表面に吸着した酸素や汚染を除去するため、分析時よりもやや高い温度でるつぼだけを予め加熱する、いわゆる「空焼き」処理を実施する。「空焼き」処理により、黒鉛るつぼから発生する酸素、一酸化炭素あるいは二酸化炭素が分析値を変動させる影響を低減できる。市販の酸素分析装置で鋼中の酸素を分析する際には、通常、るつぼ、すなわち試料を1800℃〜2200℃程度の温度に加熱する。本発明で要求される高い分析精度を実現するためには、例えば、分析時の温度よりも100℃以上高い温度で、かつ、15秒以上加熱すればよい。
また、市販の酸素分析装置では、まず、分析装置内に試料を取り込み、試料周辺の雰囲気をキャリアガスであるヘリウムガスで置換する間に、るつぼの交換、電極の清掃および「空焼き」処理を実施する。したがって、試料を投入してから分析値が判明するまで、比較的長い時間を要する。るつぼの交換および電極の清掃、さらに「空焼き」処理を先行して実施させ、分析装置が分析可能な状態で清浄化前処理した試料を投入することで、要求される分析所要時間に応じた迅速化を実現させることができる。
通常、酸素分析に際して、検出したガス量を試料中の酸素濃度に変換するため、試料重量を精密に秤量する必要がある。真空アークプラズマ処理前後での試料重量変化を評価した結果、試料の形状や表面酸化度合いによって多少ばらつきはあるものの、高々1mg程度の減量であったことから、試料重量0.5〜1.0gに対しては実用上無視できる程度の誤差しか与えないことが判明した。そこで、本発明を実施する際には、機械加工して得た後に予め秤量した分析試料を、真空アークプラズマ処理し、大気と接触させることなく、そのまま酸素分析装置に挿入することとした。
この分析方法を用いると、分析所要時間は試料調製時間を含めて5分以内であり、分析精度はT.[O]≦50ppmにおいて誤差±2ppm以内であるため、余裕を持って鋳片の切断開始までに(必要に応じて連続鋳造の開始前までに)T.[O]を知ることができる。
上記した鋳造条件の変更によって別の向先受注内容に適合させることが出来た鋳片は、余剰材となることは当然に避けられるし、その波及効果として鋳片長さが適合しない鋳片を再切断することに伴う鋳片歩留まりの低下も避けることができる。
本発明に係る上記の方法の実施対象となる鋼の化学組成は、連続鋳造が可能な鋼種であれば特に限定されないが、鋼材中のT.[O]が30ppm以下を要する高清浄度鋼や、鋼材中のT.[O]が15ppm以下を要する高清浄度鋼などが特に適しているといえる。
本発明で対象とする鋼種の主要成分の組成例を表1に示す。
Figure 0005733377
調査結果として上述の表1のうち、対象鋼種1の成分範囲内であり、特定の調査範囲として調査を行った成分範囲を表2に示して例として説明する。
Figure 0005733377
図2に従来方法で連続鋳造した際の切断後鋳片のT.[O]の分布を示す。従来方法ではT.[O]は鋳片切断後にしか判明していなかったため、表2に示したT.[O]≦15ppmの狙いで溶製を行った場合でもT.[O]外れが発生した。このような鋼はT.[O]≦15ppmの規格を満たさないためその規格を求める用途では使用できず、T.[O]の上限が緩やかなT.[O]≦30ppmの規格に振当てることになる。このようなT.[O]が外れていた鋳片は、上記のように、剰余材として一時保管される。そして、そのような剰余材では歩留ロスが多くなることは前記のとおりである。
このような問題の発生を回避すべく、前記イの対応を実施するためには、二次精錬終了から鋳片の切断開始までの30〜50分間の間にT.[O]を分析することが必要となる。好ましくは、二次精錬終了から連続鋳造開始前(溶鋼を収容した取鍋から連続鋳造用タンディッシュへと溶鋼供給を開始する前)までの10〜20分間の間にT.[O]を分析することが必要となる。ところが、従来のT.[O]分析方法では分析に要する時間がサンプルの調製を含めて長く、20分間でT.[O]を求めることは不可能であった。さらに、30〜50分間でも分析する手間と精度とを勘案すれば、実際上不可能であった。このため、上述イの対応を実施するための具体的な手段として従来の分析方法は適用できなかった。
そこで、10〜20分間以内で精度の高いT.[O]分析という課題を解決するために、別途並行して前記した酸素迅速分析方法を開発したのである。
前記の酸素迅速分析方法を用いた場合に、剰余材の発生が抑制されたり、発生した場合でも歩留まりロスが低下したりすることを具体的な事案を用いて説明する。
本発明の実施対象の一例としてT.[O]≦15ppmの規格を取り上げる。
表3は、本発明を実施して鋳片を取り扱った場合と従来技術に基づき鋳片を取り扱った場合との比較を示す表である。
Figure 0005733377
従来は、溶鋼量を鋳片長で20m分とした際に、従来技術によりT.[O]≦15ppmを満たしていると判断し、鋳片1本当たりの長さが5mの受注に合わせて切断すると、その20m分の母材から鋳片4本を納入でき、歩留ロスはゼロの予定であった。
しかし、従来は切断後の分析であるので、切断後に鋳片のT.[O]が15ppmより大きいことが判明した場合は15ppm以下の受注先には納入できず、一次保管する必要がある。
その後、T.[O]が30ppmの受注仕様を満足する別の受注先の、例えば鋳片長さが4mの受注先に振り当てる場合、5mの鋳片1本ずつから4mを新たに切断すると鋳片1本当たり1mのロスが発生し、4m分の歩留ロスが発生する。具体的には、母材が20mであるから歩留は80%となる。
一方、本発明により、精錬終了後から連続鋳造開始までに溶鋼中T.[O]の迅速分析を行い、清浄度が切断開始前にT.[O]が15ppmより大きいと判明した場合には、その時点で、そのT.[O]に適切な別の受注内容に振り当てを変更することが可能である。すなわち、切断時に鋳片1本当たりの長さを4mとすることができる。そうすることによって、20mの母材から鋳片5本を作製でき、歩留ロスをゼロとすることが実現される(図3)。
前記した表2の製品について、本発明法、すなわち酸素迅速分析方法を用いて、二次精錬終了から連続鋳造の開始前までの期間にT.[O]値を求め、その値に基づいて鋳込条件を設定し、その条件で鋳造を行う方法を実施した。
得られた鋳片を切断してT.[O]を測定し、T.[O]値の分布を評価した。その結果を、従来方法、すなわち連続鋳造の開始前までにT.[O]値を求めることなく鋳造条件を設定して鋳造を行う方法と対比して示したグラフが図4である。
なお、溶鋼量は240t/Ch、鋳片サイズは直径225mm〜360mmであって、長さ7m〜9mであり、本発明法と従来方法とのそれぞれについて50Chを鋳造した。その際の平均連々Ch数は5Chであって、本発明法と従来方法とで同数であった。
図4に示されるように、本発明法を実施した場合には、全ての鋳片についてT.[O]≦15ppmを満たすことができた。
1 前処理装置
2 酸素分析装置
3 処理前試料投入口
4 隔離バルブ
5 前処理済試料投入口
6 架台
7 リフター
8 連結管
9 前処理済試料途中取出口

Claims (2)

  1. 溶鋼の二次精錬終了後に溶鋼中のT.[O]を分析し、その分析値に応じて該溶鋼の連続鋳造条件を変更する溶鋼の連続鋳造方法であって、
    前記溶鋼中のT.[O]分析を行う方法として、鉄鋼試料を黒鉛るつぼに入れて不活性ガス中で加熱融解し、発生した一酸化炭素または二酸化炭素のいずれかひとつあるいは両方の赤外線吸収度から該試料中の酸素濃度を測定する方法であって、該試料表面の酸化皮膜を除去、清浄化する前処理として真空アークプラズマ処理をアークプラズマ放電開始時の真空度を5Pa以上35Pa以下かつ、アークプラズマ出力電流を15A以上55A以下とする条件下において、溶鋼から採取した鋼塊に対して、高さ1.5mm以上7mm以下、表面積Sと体積Vの比(S/V)が1.05以上1.30以下となるように機械加工して得た小片を試料とし、前記アークプラズマ放電を前記試料に、合計4回以下であって、かつ合計処理時間として0.2秒以上1.2秒以下施した後、該試料を大気と接触させることなく、直接、分析時の温度よりも高い温度で加熱、清浄化した後、分析する温度に下げて待機させた黒鉛るつぼへ投入する鉄鋼中酸素分析方法を用いるとともに、
    前記溶鋼中のT.[O]分析値を、該溶鋼の連続鋳造中であってその鋳片の切断開始前までに知り、そのT.[O]分析値が受注内容に適合していなかった場合には、そのT.[O]分析値が受注内容を満足する別の向先をまず選定し、当該別の向先の受注内容の切断長に適合するように鋳片を切断することを特徴とする、溶鋼の連続鋳造方法。
  2. 請求項1記載の溶鋼の連続鋳造方法を用いて鋳片加工後の出荷先を調整することを特徴とする、溶鋼の連続鋳造方法。
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