JP3657903B2 - 青果物の殺菌処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、玉葱、キュウリ、レタス、キャベツ、ピーマン等の野菜類や、メロン等の果物類(以下これらを総称して青果物という)の殺菌処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、玉葱、キュウリ、レタス、キャベツ、ピーマン等の野菜類や、メロン等の果物類(青果物)は、生鮮な状態で所定の大きさに切断加工して、カット状の青果物群として食材に供されることあり、この場合、カット状の青果物群を殺菌処理することによって、その衛生上の管理や保存管理がなされる。
【0003】
近年、無機塩等の水溶液、例えば、食塩の希薄水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される電解生成酸性水が殺菌作用を有することに着目して、食品分野、医療分野、農業分野等で、電解生成酸性水を殺菌処理液として使用する試みがなされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、電解生成酸性水を殺菌処理液としてカット状の青果物群の殺菌処理を試みたところ、殺菌処理液が低pHであることから、カット状の青果物群のドリップ(細胞液)が溶出してカット状の青果物群が軟化する現象があることを知得した。このため、カット状の青果物群に軟化状態を引起こす殺菌処理液では、カット状の青果物群に殺菌効果をもたらすのに十分な時間だけ処理すると、食材としての品質を損なうおそれがあるという問題も知得した。
【0005】
野菜等の加熱調理や加熱殺菌等の熱処理によって、野菜の組織が軟化することは周知であって、この軟化を防止する軟化防止処理方法は、従来から種々提案されている。これらの軟化防止処理方法としては、例えば、特開昭57−208963号公報には、野菜類を加温されたカルシウム塩水溶液に浸漬する方法が提案されている。また、特開昭60−237957号公報には、野菜類をカルシウム水溶液中に低温下で浸漬した後、そのままカルシウム水溶液を所定の高温まで加温して所定時間保持する方法が提案されている。また、特開平3−285651号公報には、野菜類をカルシウム塩水溶液に浸漬した状態で減圧処理する方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、これらの軟化防止処理方法では、使用しているいずれの処理液もカルシウム塩水溶液であることから、カルシウム塩の溶解度の関係で処理液のpHの調整が困難であって、処理液の低pH側への調整が難しく、処理液の野菜類に対する浸透性が十分ではない。このため、カルシウムイオンの野菜類に対する軟化防止効果が短時間には発揮し得ない。また、これらの軟化防止処理方法は、カット状の青果物群を電解生成酸性水で殺菌処理する際に生じる軟化現象の防止を意図しているものではない。
【0007】
本発明の目的は、電解生成酸性水の殺菌作用に着目してカット状の青果物群を殺菌処理する方法を提供するものであるが、その主たる目的は、電解生成酸性水により殺菌処理する際にカット状の青果物群における軟化現象の発生を防止することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、青果物の殺菌処理方法に関し、特に、生鮮な青果物を所定の大きさに切断加工してなるカット状の青果物群の軟化現象を発生させることのない殺菌方法に関する。しかして、本発明に係る殺菌処理方法においては、切断加工してなるカット状の青果物群を、カルシウムイオンを含有する電解生成酸性水を殺菌処理液として殺菌処理することを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る殺菌処理方法で使用する殺菌処理液としては、無機カルシウム塩または有機カルシウム塩の水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成されるカルシウムイオンを含有する電解生成酸性水を採用することができるとともに、カルシウム成分の非含有無機塩または有機塩の水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される電解生成酸性水にカルシウム塩を添加して調製される、カルシウムイオンを含有する電解生成酸性水を採用することができる。
【0010】
【発明の作用・効果】
本発明に係るカット状の青果物類の殺菌方法においては、殺菌作用を有する電解生成酸性水を主要構成成分とする殺菌処理液を使用するものであって、カット状の青果物群を効果的に殺菌する。
【0011】
当該殺菌処理において、殺菌処理液が電解生成酸性水のみからなる場合には、カット状の青果物群は殺菌処理液の低pHに起因して軟化して食材としての品質を低下させる。しかしながら、本発明に係る殺菌処理方法で採用する殺菌処理液においては、主要構成成分である電解生成酸性水中にカルシウムイオンを含有することから、このカルシウムイオンが有効に作用してカット状の青果物群の軟化を防止する。この場合、カルシウムイオンは、電解生成酸性水の高浸透性によってカット状の青果物群の組織内に迅速に浸透して、カット状の青果物群に対する軟化防止効果を迅速に発揮する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に係る青果物の殺菌処理方法は、生鮮な青果物を所定の大きさに切断加工してなるカット状の青果物群を処理の対象とするもので、青果物としては、玉葱、キュウリ、レタス、キャベツ、ピーマン等の野菜類や、メロン等の果物類を挙げることができる。これらの青果物は、生鮮な状態で所定の大きさに切断加工し、カット状の青果物群の形態で殺菌処理した状態で食材として供される。
【0013】
本発明に係る殺菌処理方法においては、採用する殺菌処理液に大きな特徴を有するものであり、当該殺菌処理液は、電解生成酸性水を主要構成成分とするもので、これにカルシウムイオンを含有するものである。
【0014】
当該殺菌処理方法では、当該殺菌処理液を使用して、カット状の青果物群を殺菌処理するものであるが、殺菌処理では、一般には、カット状の青果物群を室温の殺菌処理液に数分〜十数分の間浸漬処理するか、当該殺菌処理液をカット状の青果物群上に数分〜十数分の間噴射処理する。これにより、カット状の青果物群の殺菌処理と軟化防止処理を同時に併せて行うことができる。
【0015】
本発明に係る殺菌処理で採用される殺菌処理液の調製には、幾多の方法がある。 当該殺菌処理液の調製方法の第1は、塩化カルシウムの水溶液、乳酸カルシウムの水溶液、酢酸カルシウムの水溶液を被電解水として採用するもので、有隔膜電解槽を有する電解水生成装置を使用して、これらの被電解水を有隔膜電解することにより、有隔膜電解槽の陽極室側にて酸性水が生成される。当該酸性水は、電解生成酸性水を主要構成成分とし、これに未電解状態の被電解水に起因するカルシウムイオンを含有している。当該酸性水は、本発明で採用する殺菌処理液に該当する。
【0016】
これらの殺菌処理液は、採用する非電解水の種類によってその特性を若干異にするものであって、殺菌処理の主たる目的に応じて使い分けすることが好ましい。すなわち、カット状の青果物群を高いレベルに殺菌したい場合には、被電解水として塩化カルシウムの水溶液を被電解水とする電解生成酸性水であって、殺菌力の高い強酸性の電解生成酸性水を主要構成成分とする殺菌処理液を選択することが好ましい。
【0017】
但し、当該殺菌処理液は、塩化カルシウムの濃度が高くて比較的長い時間の殺菌処理すると、カット状の青果物群の食味に苦味を発生させるおそれがある。このような特性のカット状の青果物群は、極めて微妙な食味を要求される調理に対しては、不適な食材である。このため、このような微妙な食味が要求される食材の供されるカット状の青果物群の殺菌処理にあっては、殺菌力が若干劣るが、カット状の青果物群に苦味を発生させるおそれがない、乳酸カルシウムの水溶液や酢酸カルシウムの水溶液を被電解水とする電解生成酸性水を主要構成成分とする殺菌処理液を選択することが好ましい。
【0018】
当該殺菌処理液の調製方法の第2は、カルシウム成分の非含有無機塩または有機塩の水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される電解生成酸性水に、カルシウム塩を添加して調製する方法である。当該調製方法では、塩化ナトリウム(食塩)や塩化カリウム等の水溶液を被電解水とするもので、有隔膜電解槽を有する電解水生成装置を使用して、これらの被電解水を有隔膜電解することにより、有隔膜電解槽の陽極室側に酸性水が生成され、この酸性水に塩化カルシウム等のカルシウム塩を添加する。当該酸性水は、電解生成酸性水を主要構成成分とするもので、これにカルシウム塩を添加して形成されるカルシウムイオンを含有している。カルシウムイオンを含有する当該酸性水は、本発明で採用する殺菌処理液に該当する。
【0019】
当該殺菌処理液は、電解生成酸性水にカルシウム塩を溶解するものであり、電解生成酸性水が酸性域にあってカルシウム塩の溶解度が中性水に比較して高い。このため、当該殺菌処理液は、従来、野菜の加熱処理時の軟化現象を防止するために使用されている冒頭に示す公知の処理液であるカルシウム塩水溶液に比較してカルシウムイオンの濃度が高くて、カット状の青果物群の殺菌時における軟化防止作用を一層発揮することになる。
【0020】
このように、本発明に係るカット状の青果物群を殺菌処理する方法においては、殺菌作用を有する電解生成酸性水を主要構成成分とする殺菌処理液を使用するものであって、カット状の青果物群を効果的に殺菌する。
【0021】
しかして、殺菌処理液が電解生成酸性水のみからなる場合には、カット状の青果物群は殺菌処理液の低pHに起因して軟化して食材としての品質を低下させることになる。しかしながら、本発明で採用している殺菌処理液は、主要構成成分である電解生成酸性水中にカルシウムイオンを含有することから、このカルシウムイオンが有効に作用して、カット状の青果物群の軟化を防止する。この場合、カルシウムイオンは、電解生成酸性水の高浸透性によってカット状の青果物群の組織内に迅速に浸透して、カット状の青果物群に対する軟化防止効果を迅速に発揮する。
【0022】
【実施例】
本実施例では、青果物であるキュウリを輪切りにしたカットサンプル(径3cm、厚み2mm)の群を供試料として、下記に示す第1処理液(実施例1)、第2処理液(実施例2)、第3処理液(比較例1)の各種の殺菌処理液を用いて殺菌処理の実験を行い、殺菌処理における供試料の軟化状態を評価した。これに加えて、殺菌作用を有しないが、野菜の軟化防止作用を有する処理液として知られている第4処理液(比較例2)を用いて軟化防止処理の実験を行い、供試料の軟化状態を評価して、各処理液を用いた場合の供試料の軟化状態と比較した。得られた結果を下記の表1に示す。また、各処理液の特性は下記に示す通りのものである。
【0023】
第1処理液(実施例1)は、塩化カルシウムが0.1重量%の希薄水溶液を被電解水とする有隔膜電解によって生成された電解生成酸性水であって、pHが2.5、有効塩素濃度が30mg/L、カルシウムイオン濃度が0.1重量%の強酸性の電解生成酸性水である。
【0024】
第2処理液(実施例2)は、塩化ナトリウムが0.1重量%の希薄水溶液を被電解水とする有隔膜電解によって生成された電解生成酸性水に、塩化カルシウムを当該電解生成酸性水に対して0.1重量%溶解してなるものであって、pHが2.5、有効塩素濃度が30mg/L、カルシウムイオン濃度が0.1重量%の強酸性の電解生成酸性水である。
【0025】
第3処理液(比較例1)は、塩化ナトリウムが0.1重量%の希薄水溶液を被電解水とする有隔膜電解により生成された電解生成酸性水であって、pHが2.5、有効塩素濃度が30mg/L、カルシウムイオンを実質的には含有していない強酸性の電解生成酸性水である。
【0026】
第4処理液(比較例2)は、塩化カルシウムが0.1重量%の実質的に中性の水溶液であって、電解生成酸性水を主要構成成分とする処理液ではない。
【0027】
供試料(カットキュウリ)の各種処理液による処理では、供試料を4つの群に分割して、各供試料群(1供試料群の重量100g)を、25℃に調整した各種処理液(100mL)にそれぞれ浸漬して、5分間保持した。その後、処理した供試料群を各種処理液から取出して水切りした後、各供試料群中の供試料の軟化状態を評価した。
【0028】
軟化状態の評価は、30名のパネラーによる官能試験によって行った。官能試験では、供試料群中から無作為に抽出した10個の供試料を対象として、これを食味した際の歯ごたえの硬軟性、および、目視による供試料の形態保持性を平均的に評価したものである。硬軟性の評価では、硬さが処理前に近い状態にある良好な状態を○、やや不良な状態を△、不良な状態を×とした3段階に評価した。また、形態保持性の評価では、形態が処理前に近い状態にある良好な状態を○、やや不良な状態を△、不良な状態を×とした3段階に評価した。
【0029】
【表1】
Claims (3)
- 生鮮な青果物を所定の大きさに切断加工してなる青果物を殺菌処理するための殺菌処理方法であって、切断加工してなるカット状の青果物群を、カルシウムイオンを含有する電解生成酸性水を殺菌処理液として殺菌処理することを特徴とする青果物の殺菌処理方法。
- 請求項1に記載の殺菌処理方法において、前記殺菌処理液は、無機カルシウム塩または有機カルシウム塩の水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される、カルシウムイオンを含有する電解生成酸性水であることを特徴とする青果物の殺菌処理方法。
- 請求項1に記載の殺菌処理方法において、前記殺菌処理液は、カルシウム成分の非含有無機塩または有機塩の水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される電解生成酸性水にカルシウム塩を添加して調製される、カルシウムイオンを含有する電解生成酸性水であることを特徴とする青果物の殺菌処理方法。
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