JP3657458B2 - 床組工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、傾斜状に床下地を設ける床組工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、映画館、劇場等のような比較的広い床面を傾斜状或いは階段状に床組みする場合には、平坦な床スラブに直接コンクリートを打ち込んで傾斜状及び階段状に床組みする工法が用いられていた。またこれを軽量化し、階段状に床組みする工法として図7に示す床組工法が用いられていた。
【0003】
この床組工法は、1段毎に個別に床下地材を敷設する工法であり、階段の各段ごとにそれぞれ同じ高さの床支持脚21を立設し、この床支持脚21の上部に大引材22、根太材23を配置し、この根太材23の上にデッキプレート24を配置する。さらに、上記デッキプレート24の前端部に蹴込み板25を取り付けて床下地材を階段状に組み立て、デッキプレート24の上にコンクリートを打設して階段床を構築していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記床組工法では、各段毎に高さを調節し、狭い範囲内で個別に床下地を組む必要があることから、施工には手間及び時間がかかり、また単位面積当たりの床支持脚等の下地材の使用量も多く、材料のロスが生じていた。また、階段床に隣接してスロープ状の傾斜床を設ける場合には、その傾斜床の部分のみスロープ状に床下地を組むなど面倒な作業を行う必要があり、さらに下地の縁が切れるなどの問題もあった。
【0005】
また、近年映画館などは建物の高い階に設けられる場合が多く、このような高い階にスロープを形成する場合、コンクリートを既存の床スラブに直接打ち込む工法では、床に重量がかかり過ぎ、建物の構造上採用が困難であるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、施工性及び経済性に優れかつ軽量な床組工法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以上の技術的課題を解決するため、本発明に係る床組工法は、図1に示すように、床スラブ1上に、高さが段階的に異なる複数の床支持脚2の列を複数立設し、上記高さの異なる支持脚2間に傾斜状に大引材3を載置固定し、これら大引材3の上に、大引材3と直交する方向に根太材4を載置固定し、これら根太材4の上に鋼板5を敷設して傾斜面を形成する工法とした。
【0008】
また、本発明に係る床組工法は、上記傾斜面にコンクリートを打設してスロープ面を形成する工法とした。
【0009】
本発明に係る床組工法は、上記傾斜面に、傾斜方向に所定間隔をおいて階段の蹴込部としての蹴込プレート6を取り付け、上記蹴込プレート6間にコンクリートを打設し、階段の踏面を形成して階段床を構築する工法とした。
【0010】
また、本発明に係る床組工法は、上記傾斜面に、傾斜方向に所定間隔をおいて階段の蹴込部としての蹴込プレート6を取り付け、この蹴込プレート6の側端部に傾斜方向に向けて側端プレート7を取付け、上記蹴込プレート6間にコンクリートを打設し、階段の踏面を形成して階段床を構築する一方、上記側端プレート7の階段床と反対側の鋼板の傾斜面上にコンクリートを打設して傾斜床を形成する工法とした。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る床組工法を劇場の床構築に適用した場合について説明する。図1に示すように、劇場の床スラブ面1は水平状でありこの上方に階段床及び傾斜床を組立てる。この床組に用いられる部材は同図に示すように、床支持脚2、これに支持される大引材3及び根太材4、根太材4に載置されるデッキプレート5、及びデッキプレート5上に配置されるZ型プレート6及びささらプレート7等である。
【0012】
上記床支持脚2は、支持台11、調整ボルト12及びU字受具13よりなっている。この床支持脚2は、設置場所に応じて、支持台11及び調整ボルト12の高さ寸法が異なるものが用いられる。大引材3は、断面略矩形状で下部の中央に開口部3aが形成された鋼製の角パイプである。根太材4は、断面ハット状で左右にフランジ部4aを有する鋼材である。デッキプレート5は、強度を保つために、板に断面が山と谷をもつように加工された鋼板である。
【0013】
Z型プレート6は、接地板部6a、この接地板部6aの一端から立上がる蹴込板部6b、及びこの蹴込板部6bの先端部から水平方向に屈曲される踏板部6cを有する鋼製の部材である。Z型プレート6は階段の基礎枠として用いられるものであり、各段ごとに必要な高さレベルが得られるように加工しておく。ささらプレート7は楔形状の鋼板であり、垂直辺部7a、これと直交する水平辺部7b及び傾斜辺部7cを有する。このささらプレート7は、Z型プレート6の側端部に、Z型プレート6と直交する向きに固着される。
【0014】
ここで、上記床組工法の施工手順について説明する。この床が施工される劇場は、前方に舞台が設置され、後方の観客席側は、後方に向うに従って高くなる階段床15及び両側には傾斜床16を構築し、この階段床15に観客席を設置する構造である。
【0015】
上記工法は先ず、水平な床スラブ1に、スロープ状に鋼製の床下地面を構築する。このスロープ形成のため、高さが異なる複数の床支持脚2を用い、後方に向かうに従い高さの高い床支持脚2を所定の間隔をおいて列状に配置する。同様に、床支持脚2の列を左右の側に設ける。これら床支持脚2の各列に大引材3を架設し、床支持脚2のU字受具13に固定する。
【0016】
U字受具13の底面と大引材3との間の楔状の隙間には、この隙間形状に対応する楔状片を差し込み、U字受具13の上部をボルトで締めて固定する。全ての床支持脚2の列に、同様にして大引材3を架設する。スロープの上部に踊場等の水平状の床を設ける場合には、同じ高さの床支持脚2を配置し同様に大引材3を架設する。
【0017】
次に、上記大引材3上にこれと直交する方向に根太材4を架設する。そして、根太材4のフランジ部4aをビス等の止着具を用いて大引材3の上面に固定する。図2は、床支持脚2に大引材3及び根太材4を敷設した状態を示したものである。図中、Sで示す範囲は、通路となる帯状の傾斜床16が形成される領域である。
【0018】
さらに、図3に示すように根太材4の上にデッキプレート5を敷設する。一枚のデッキプレート5を複数の根太材4間に載置し、隣接するデッキプレート5同士の端部は重ね合わせる。全体にデッキプレート5を敷設すれば、床下地として、後方に向け上方に傾斜する鋼製のスロープ面14が形成される。
【0019】
次に、Z型プレート6を上記スロープ面14に階段としての段差を形成する位置に取り付ける。このZ型プレート6は、各段差位置に応じて、下地の天端から階段の天端までのサイズで製作しておく。このZ型プレート6を段差位置に取り付けると、Z型プレート6の踏板部6aが階段の踏面の高さレベルとなる。またZ型プレート6の蹴込板部6bによって、階段の蹴込みが形成される。なお、Z型プレート6に代えて、プレキャストコンクリート板を用いてもよい。
【0020】
上記Z型プレート6の設置により階段床15の基礎が形成されるが、階段床15と傾斜床16との取合は、ささらプレート7により行う。図1に示すように、Z型プレート6の端部にささらプレート7を接続して、Z型プレート6の端部を閉塞する。そして、ささらプレート7の水平辺部7bを階段の踏面のレベルに合わせる。また、小階段17がある場合は、この小階段17に応じたサイズのZ型プレート6とささらプレート7を用いる。このようにささらプレート7を使用して階段床15と傾斜床16との境界を形成し、また両床15,16の床下地は連続しており、このため床下地の縁を切ることもなく同時に構築できる。
【0021】
上記の床下地が出来れば、鋼製のデッキプレート5のスロープ面14の上にコンクリートを打設する。階段床15はZ型プレート6とスロープ面14とによって囲まれた空間部に形成され、階段床15の踏面は踏板部6aを基準にして左官工事によって仕上げる。Z型プレート6の側端はささらプレート7で閉塞され、階段床15はここが側端となる。
【0022】
この階段床15に隣接して、通路として傾斜方向に帯状の傾斜床16を構築する。この傾斜床16は、スロープ面14(S領域)に所定の厚さでコンクリートを打設し、左官工事によって表面を滑らかに仕上げる。図4は傾斜床16を、また図5は階段床15をそれぞれ示したものであり、スロープ面の上部には踊り場17が設けられている。図6は、階段床15と傾斜床16との境界部分を示したものである。
【0023】
上記床組工法による床下地は、傾斜通路等のスロープ面を構築する場合に適用できる。この場合には、上記工法の施工において形成したデッキプレート5のスロープ面14を利用する。このスロープ面14の周囲に流れ止め用のプレート(打設したコンクリートの厚さと同程度の高さで囲いが可能な板材)或いはささらプレート等を設置し、スロープ面14の上に所定の厚さでコンクリートを打設する。そして、左官工事によりコンクリートの表面を仕上げて、滑らかなスロープ面を形成する。この工法により、デッキプレート5とコンクリートとが相まって強固な傾斜床が形成され、屋内或いは屋外において傾斜通路等として軽量のスロープ面が構築できる。尚、屋外においては、コンクリートに代えて、アスファルトコンクリート等を用いることができる。
【0024】
従って上記実施の形態によれば、鋼製の床下地をスロープ状に組むことにより、広い面積の床について一挙に施工が行え且つ床下地の構造が従来技術のような複雑さはないことから、施工性が大きく改善されるとともに材料のロスも軽減される。社内の評価では、上記工法を採用したことにより、施工性時間が上記従来の工法の1/2程度に短縮され、しかも施工に要する材料についても従来の工法に比べて2割程度低減されている。
【0025】
また、既存の床スラブに床支持脚2を立設して階段床の下部に空間部を形成したから、打設に要するコンクリートの量が少なくて軽量化が図れ、これにより高層階においても映画館、劇場などの階段及びスロープ面の設備を設けることが可能となる。さらに上記工法では、階段床に傾斜床を隣接する場合、階段床と傾斜床との下地を一体的に構築することができて施工が容易に行え、また強度的にも優れる。上記床組工法を、屋外の施工に用いれば、身体障害者等が車椅子を利用することができるバリアーフリーの床組が構築できる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る床組工法によれば、高さの異なる支持脚間に傾斜状に大引材を載置固定し、これら大引材と直交する方向に根太材を載置固定しその上に鋼板を敷設して傾斜面を形成することとしたから、施工性がよく強度的にも優れた床下地が広範囲に構築できるという効果がある。
【0027】
また、本発明に係る床組工法によれば、傾斜面にコンクリートを打設してスロープ面を形成することとしたから、コンクリートの使用量が少なく全体的に軽量な傾斜床を構築することができるという効果がある。
【0028】
本発明に係る床組工法によれば、傾斜面に蹴込プレートを取り付けコンクリートを打設して階段の踏面を形成し、階段床を構築することとしたから、広範囲に亘って一気に施工が行えて施工性が大幅に改善され、加えて材料ロスが低減された経済的な階段床が得られるという効果がある。
【0029】
また、本発明に係る床組工法によれば、傾斜面に蹴込プレートを取り付け、この側端部に側端プレートを取付けコンクリートを打設して階段床を構築する一方、側端プレートと反対側の傾斜面にコンクリートを打設して傾斜床を形成することとしたから、一体の床下地に階段床と傾斜床とを並設することができて施工が容易に行え、また強度的にも優れるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る床組工法の説明図である。
【図2】実施の形態に係る床下地を示す部分平面図である。
【図3】床下地にデッキプレートを敷設した状態を示した図である。
【図4】実施の形態に係る傾斜床を示す図である。
【図5】実施の形態に係る階段床を示す図である。
【図6】実施の形態に係る傾斜床と階段床との境界付近を示す図である。
【図7】従来例に係る床組工法の説明図である。
【符号の説明】
1 床スラブ
2 床支持脚
3 大引材
4 根太材
5 鋼板(デッキプレート)
6 蹴込プレート(Z型プレート)
7 側端プレート(ささらプレート)
Claims (2)
- 床スラブ上に、高さが段階的に異なる複数の床支持脚の列を複数立設し、
上記高さの異なる支持脚間に傾斜状に大引材を架設固定し、
これら大引材の上に、大引材と直交する方向に根太材を載置固定し、
これら根太材の上に鋼板を敷設して傾斜面を形成し、
上記傾斜面に、傾斜方向に所定間隔をおいて階段の蹴込部としての蹴込プレートを取り付け、
上記蹴込プレート間にコンクリートを打設し、階段の踏面を形成して階段床を構築することを特徴とする床組工法。 - 床スラブ上に、高さが段階的に異なる複数の床支持脚の列を複数立設し、
上記高さの異なる支持脚間に傾斜状に大引材を架設固定し、
これら大引材の上に、大引材と直交する方向に根太材を載置固定し、
これら根太材の上に鋼板を敷設して傾斜面を形成し、
上記傾斜面に、傾斜方向に所定間隔をおいて階段の蹴込部としての蹴込プレートを取り付け、この蹴込プレートの側端部に傾斜方向に向けて側端プレートを取付け、
上記蹴込プレート間にコンクリートを打設し、階段の踏面を形成して階段床を構築する一方、
上記側端プレートの階段床と反対側の鋼板の傾斜面上にコンクリートを打設し、傾斜床を形成することを特徴とする床組工法。
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