JP3961116B2 - 鉄骨造りの建物における床構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄骨造りの建物における床構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
集合住宅などの鉄骨造りの建物において、躯体内部の床の形成は、ハーフPCa板を大梁、小梁にわたすように敷き、その上にコンクリートを打設して仕上げるというようにして行われることもあるが、この方法はコストが高くつくことから、普通は、デッキプレートを大梁、小梁にわたすように敷き、その上にコンクリートを打設する、というようにして行われる。
【0003】
そして、建物が、図7に示すように、バルコニーや、共用廊下など、建物の外壁の外方に突出される出っ張り部71を有するものである場合は、これらの出っ張り部71の床72の形成は、建物の躯体の大梁73から下地用の小梁鉄骨74…を突出させ、その上に、デッキプレート75を敷き、コンクリート76を打設するというようにして行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、出っ張り部の床72の形成を上記のような態様で行うのでは、出っ張り部の床の施工に多種類の工事を必要とし、施工が厄介であると共に、出っ張り部の床の工事に長期間を要するという問題がある。即ち、建物躯体に、出っ張り部の床72の受けとなる下地用の小梁鉄骨74,74を備えさせる工事を行わなければならない。小梁鉄骨74を備えさせる場合は、外壁77に小梁鉄骨を通す切欠き77aを備えさせなければならなず、また、小梁鉄骨74には耐火被覆をする必要もある。また、コンクリート76を打設する工事を行わなければならず、コンクリート打設後は養生期間も必要である。また、出っ張り部の床72の上面については、水勾配を付けるなど排水のための左官工事を行わなければならない。また、出っ張り部の床72の下面側については、小梁鉄骨74やデッキプレート75が露出しているために、軽量鉄骨下地を用いてボード78を張り、水切や見切など金物を取り付けるなど、軒天の仕上げ工事を行わなければならない。出っ張り部の床72の鼻先部分79についても、ボーダーパネルなどを用いて鼻先隠しを行わなければならない。また、出っ張り部の床72に対し、ドレインやインサート、設備孔などの各種の加工を建築現場にて行っていく必要がある。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点に鑑み、出っ張り部の床を含む建物の床のトータルコストを低く抑えつつ、出っ張り部の床の施工に関し、工種を削減し、工期を短縮して、施工を省力化することができる、鉄骨造りの建物における床構造を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、建物の外壁内方の床が、デッキプレート上にコンクリートを打ち込んで形成される鉄骨造りの建物における床構造において、
建物の外壁外方に突出される出っ張り部の床が、プレキャスト版からなることを特徴とする鉄骨造りの建物における床構造床構造によって解決される。
【0007】
この床構造では、出っ張り部の床をプレキャスト版にて構成する構造としているから、出っ張り部の床は、プレキャスト版を建物の外壁外方に突出させるように設置するだけで形成することができる。従って、出っ張り部の床の施工に関し、工種は大幅に削減され、工期も大幅に短縮される。
【0008】
即ち、プレキャスト版はそれ自身に充分な強度をもたせることができるから、建物躯体に、出っ張り部の床の受けとなる小梁鉄骨を備えさせる必要はない。従ってまた、外壁に小梁鉄骨を通す切欠きを備えさせる必要もなく、耐火被覆の必要もない。また、プレキャスト版によるものであるから、コンクリートの打設は不要であり、養生期間を考慮する必要もない。また、出っ張り部の床の上面側については、予めその上面を所定の非平坦形状に成形しておくことができ、従って、床面の左官工事も必要ない。しかも、プレキャスト版によるものであるから、上面がむらのないきれいな仕上がりとなる。また、出っ張り部の床の下面側についても、プレキャスト版の下面が露出するだけで、スッキリしており、軒天の仕上げ工事も特段必要ない。出っ張り部の床の鼻先部分についても、プレキャスト版の鼻先部分が露出しているだけで、スッキリしており、鼻先隠しの工事も特段必要でない。また、ドレインやインサート、設備孔などもプレキャスト版に予め備えさせておくことができ、現場でのそれらの加工を排除することもできる。
【0009】
しかも、上記のように、出っ張り部の床をプレキャスト版にて構成する構造としながら、建物の外壁内方の床については、これを、デッキプレート上にコンクリートを打ち込んで形成する構造としているから、出っ張り部の床を含む建物の床のトータルコストは、これを低く抑えることができる。
【0010】
また、上記の床構造において、プレキャスト版は、建物躯体の大梁に支えられて、その一方の側が建物躯体の内方に存置されると共に、他方の側が出っ張り部の床として建物の外壁外方に突出して備えられている構造とすることにより、施工において、プレキャスト版を建物躯体に対し力学的安定性良く保持させることができる。即ち、プレキャスト版には、建物躯体の大梁を支点として、建物躯体の外方に突出される部分の重量によるモーメントが作用するが、同時に、このプレキャスト版には、建物躯体内部に存置される部分の重量によるモーメントが作用する。このモーメントが前記モーメントを小さくするように、あるいは、打ち消すように作用することとなって、上記のように、プレキャスト版を建物躯体に対し力学的安定性良く保持させることができる。従って、施工の際の建物躯体へのプレキャスト版の設置作業を容易に行うことができると共に、躯体に対するプレキャスト版の連結部分に対する力学的負荷も小さくなり、連結部分を簡素な構造にすることができる。
【0011】
また、建物躯体の大梁の位置に位置して、プレキャスト版の上下方向のレベルを調整するレベル調整機構が備えられる一方、大梁の上面に頭付きスタッドが立設され、プレキャスト版には、上下方向に貫通のスタッド孔が形成され、このスタッド孔は、プレキャスト版の厚さ方向中間部が上下両開口よりも狭く形成されており、このスタッド孔内に、大梁のスタッドが存置され、スタッド孔内に連結用の充填材が充填されて、プレキャスト版と大梁とが連結されている構造とするのがよい。
【0012】
この構造では、プレキャスト版は、そのスタッド孔内に大梁のスタッドを存置させた状態にし、そして、スタッド孔内に上方より連結用充填材を充填するだけで、建物躯体の大梁に連結され、大梁へのプレキャスト版の連結を施工容易に行うことができる。
【0013】
加えて、レベル調整機構が備えられているから、プレキャスト版の高さ位置を、建物躯体の大梁の位置において上へ下へと調整することができる。
【0014】
しかも、スタッドは頭付きスタッドからなり、スタッド孔は、プレキャスト版の厚さ方向中間部が上下両開口よりも狭く形成されているから、プレキャスト版がレベル調整機構により大梁の上面から浮上した状態で連結されることになっても、その浮上連結状態を、スタッドの頭部と連結用充填材と係合、及び、スタッド孔を囲む孔周壁と連結用充填材との係合によりしっかりと維持することができ、プレキャスト版と大梁とを上方にも下方にも外れてしまうことのないしっかりとした連結状態に連結することができる。
【0015】
更に、プレキャスト版のスタッド孔は、プレキャスト版の厚さ方向中間部が上下両開口よりも狭く形成されているものであるから、プレキャスト版の製作において、分割可能な組み合わせ型を用いることによって、そのようなスタッド孔を容易に成形することができ、スタッド孔形成上の難もない。
【0016】
また、建物躯体の大梁の上面に頭付きスタッドが立設され、プレキャスト版には、上下方向に貫通のスタッド孔が形成され、このスタッド孔は、プレキャスト版の厚さ方向中間部から上下両開口に向けて傾斜して開いていく態様で形成されており、このスタッド孔内に、大梁のスタッドが存置され、スタッド孔内に連結用の充填材が充填されて、プレキャスト版と大梁とが連結されている構造とするのがよい。
【0017】
この構造では、大梁の位置においてプレキャスト版に曲げモーメントが作用したり、上に凸や下に凸の曲げ応力が作用しても、スタッド孔を囲む内部の傾斜した壁面がそれを安定良く支えて、プレキャスト版と大梁との連結部を強度的に強いものにすることができる。
【0018】
しかも、プレキャスト版のスタッド孔は、プレキャスト版の厚さ方向中間部から上下両開口に向けて傾斜して開いていく態様で形成されているから、プレキャスト版の製作において、分割可能な組み合わせ型を用いることによって、そのようなスタッド孔を容易に成形することができ、スタッド孔形成上の難もない。
【0019】
また、建物躯体の大梁の上面に頭付きスタッドが立設され、この頭付きスタッドは、大梁の上面に一体的に取り付けられたナットに頭付きボルトの先端部を螺合して立設されており、プレキャスト版には、上下方向に貫通のスタッド孔が形成され、このスタッド孔内に、大梁の前記スタッドが存置され、スタッド孔内に連結用の充填材が充填されて、プレキャスト版と大梁とが連結されているものとするのがよい。これにより、大梁の上面にナットを一体的に取り付けると共にナットに頭付きボルトを螺合させるだけでスタッド立てを行うことができ、スタッド立ての本数が少ないような場合などにおいて、簡便にかつコスト的に有利にスタッド立てを行うことができる。
【0020】
また、プレキャスト版の外壁内方側の端部下面側に、建物躯体の小梁が、一部突出するように備えられ、該プレキャスト版と隣接して小梁の上面にナットが一体的に取り付けられ、該ナットに螺合してネジ棒が立設され、プレキャスト版の外壁内方側の端部から外方に突出して備えられた水平板の孔に前記ネジ棒が通され、ネジ棒に螺合された上下のナットにて水平板を上下方向から挟んでプレキャスト版と小梁とが連結されている構造とするのがよい。
【0021】
上記のように、プレキャスト版が、建物躯体の大梁に支えられて、その一方の側が建物躯体の内部に存置されると共に、他方の側が出っ張り部の床として建物の外壁外方に突出されて備えられ、プレキャスト版を建物躯体に対し力学的安定性良く保持させることができるようになされていることとの結び付きにおいて、プレキャスト版の躯体内部側の端部を、建物躯体の小梁に対し、このような簡素な連結構造にて連結することが可能となる。
【0022】
しかも、水平板を挟む上下のナットを調整することによって、プレキャスト版の躯体内方側の端部の上下方向のレベル調整を行うことができ、レベル調整機構と連結機構とを一体化して簡素な構造を実現することができる。
【0023】
加えて、スタッド立てを簡便にかつコスト的に有利に行うことができると共に、小梁の上面に取り付けられるナットを予め工場にて取り付けておき、建築現場にてこのナットにネジ棒を螺合させてネジ棒の立設を行うというような施工方法をとることもでき、このようにすることによって、小梁の運搬や取扱いを容易なものとしながら、建築現場でのスタッド打ちや溶接を削減することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1に示す床の構造は、例えば集合住宅などの鉄骨造りの建物の床の構造で、1,1はこの建物の躯体を構成する大梁であり、これら大梁1,1の外方に隣接して外壁2,2が備えられ、一方の外壁2の外方にバルコニー3が出っ張り部として備えられると共に、もう一方の外壁2の外方に、共用廊下などとして用いられる屋外廊下部分4が出っ張り部として備えられている。
【0026】
バルコニー3及び屋外廊下部分4の各床5,5は、プレキャスト版6,6にて構成されており、各プレキャスト版6,6は、その下面中間部を大梁1に支えさせると共に、この中間部を挟む一方の側を建物躯体の大梁1の内方に小梁7に支承させて存置させ、そして、中間部を挟むもう一方の側を、バルコニー3や廊下4の床5,5として、建物の外壁2,2の外方に突出させて備えられている。
【0027】
そして、建物の両外壁2,2間の屋内において、両プレキャスト版6,6にて挟まれた部分に、大梁、小梁上にわたすようにデッキプレート8が敷かれ、その上にコンクリート9が打ち込まれて、屋内の床10が形成されている。
【0028】
上記のプレキャスト版6は、例えば、内部に配筋を施したコンクリート製のプレキャスト版などからなり、図2及び図3に示すように、建物の外壁2の外方に突出される部分においては、予め、その上面に、排水のための水勾配11と排水溝12が成形されており、また、下面は、階下の軒天として平坦に成形されている。また、鼻先部13には、手摺り14や腰壁15等を取り付けることができるよう、その上面に嵌込み凹部などが成形されている。更に、プレキャスト版6の上面において、外壁2の下面と対面される部分は、外壁の仕様、取付け方法に対応する形状、例えば凸16が成形されている。また、プレキャスト版6において、建物躯体の内方側に存置される端部には、デッキプレート8上に打設されるコンクリート9中に埋設される筋材17…が突出して備えられている。その他、ドレインや各種インサート、設備孔などもプレキャスト版のキャスティング時に備えられている。
【0029】
建物の施工は、建物躯体の鉄骨の建方を行い、屋内にデッキプレート8を大梁小梁に支えさせるようにして敷き込んだのち、各階に下方から上方に向けて順次上記のプレキャスト版6を取り付けていくと共に、外壁2も取り付けていき、そして、屋内のデッキプレート8上にコンクリート9を打設するというようにして進められていく。プレキャスト版6と外壁2との施工順序については、プレキャスト版6を下階から上階に向けて順次取り付けていったのち、各階に外壁2を取り付けていくというようにして行っていくこともできるし、下階から上階に向けてプレキャスト版6と外壁2とを交互に取り付けていくようにして行っていくこともできる。
【0030】
建物躯体へのプレキャスト版6の設置は、例えば、図2(イ)に示すように、建物の外で、プレキャスト版6の出っ張り部の床となる側をクレーンなどで水平に吊り、プレキャスト版6のもう一方を建物躯体の大梁1を越えて内方に差し込み、そして、プレキャスト版6の中間部を躯体の大梁1の上面に支承させると共に、内方側の端部下面を小梁7に支承させるというようにして行っていくことができる。プレキャスト版6は、その中間部が躯体の大梁1に支承されるように設置されるから、建物躯体に対し力学的安定性良く保持される。
【0031】
そして、大梁1及び小梁7に支承させたプレキャスト版6は、まず小梁7に対し仮止め状態に連結され、次いで、大梁1部分、小梁7部分においてそれぞれ上下方向のレベル調整をされ、そして、大梁1と小梁7にそれぞれ連結される。
【0032】
即ち、大梁1による支承部分には、図4に示すようなレベル調整機構21と連結機構22とが備えられている。図3に示すように、レベル調整機構21は、大梁1の上面に沿うように、中間部を挟む左右2箇所の位置にそれぞれ備えられている。各レベル調整機構21は、例えば、図4(ハ)に示すような構造のものである。即ち、プレキャスト版6の上面に、所定の深さの方形の凹所23が形成されていると共に、凹所23の底面中間部に、大梁1の上面に開口するネジ孔24aが、長ナット24の埋込みによって形成されている。凹所23の成形及び長ナット24の埋込みは、プレキャスト版6のキャスティングの際に行われたものである。そして、先端球面状25aのレベル調整用の六角ボルト25が上方から凹所23を介してネジ孔24aに螺合され、ボルト25の頭部を凹所23内に存置させている。レベル調整は、ボルト25の先端部を大梁1の上面に当接させ、凹所23内のボルト25の頭部を回転させてプレキャスト版6の下面から下方に進出させたりあるいは上方に後退させたりすることによって行われる。ボルト25の先端部25aは上記のように球面状をしているから、ボルト25は位置ズレを起こすことなく略定位置で安定良く回転され、プレキャスト版6の不本意な側方への位置ズレを有効的に防止することができる。
【0033】
連結機構22は、図3に示すように、大梁1の上面に沿う沿う複数箇所、例えば図示するように3箇所の位置に、レベル調整機構21,21を避けるようにして、それぞれ備えられている。各連結機構22は、図4(ロ)に示すような構造のものである。即ち、大梁1の上面に頭付きスタッド26が立設されて、プレキャスト版6には、それに対応して上下方向に貫通のスタッド孔27が形成されている。頭付きスタッド26は、大梁1の上面にナット26aを溶接Wにより取り付け、このナット26aに頭付きボルト26bの先端部を螺合して立設させたものである。スタッド26は、例えば、工場にて大梁1の上面にナット26aを先付けしておき、現場で、このナット26aに頭付きボルト26bを螺合させるというようにして大梁1に設けられる。スタッド孔27は、スタッド26に対してルーズな断面サイズを有し、プレキャスト版6の厚さ方向中間部から上下両開口に向けて傾斜して開いていく複式錐状ないし鼓状に成形されている。このスタッド孔27は、プレキャスト版6のキャスティングにおいて、円錐台状の一対の型を互いに突き合わせるように組み合わせ、これを型枠内にセットし、コンクリートの打設、養生後、各型を分離させるように抜くというようにして容易に形成することができる。
【0034】
連結は、例えば、プレキャスト版6を吊ってこれを大梁1に設置し、上記のレベル調整機構21にてプレキャスト版6のレベル調整を行った後、このスタッド孔27を通じて、頭付きボルト26bを大梁1のナット26aに螺合してスタッド26を立て、そして、スタッド孔27内に連結用の充填材28を充填するというようにして行われる。充填材28は、プレキャスト版6と大梁1とを連結するものであり、例えば、スタッド孔27内に普通コンクリートを打設させたものなどであってもよい。上記のように、スタッド26を頭付きスタッドとし、スタッド孔27を複式錐状ないし鼓状の孔とすることにより、プレキャスト版6が、図示するように、レベル調整機構により大梁1の上面から浮上した状態で連結されることになっても、その浮上連結状態を、スタッド26の頭部と連結用充填材28と係合、及び、スタッド孔27を囲む孔周壁と連結用充填材28との係合によりしっかりと維持することができ、プレキャスト版6と大梁1とを上方にも下方にも外れてしまうことのないしっかりとした連結状態に連結することができる。しかも、大梁1の位置においてプレキャスト版6に曲げモーメントが作用したり、上に凸や下に凸の曲げ応力が作用しても、スタッド孔27を囲む内部の傾斜壁面がそれを安定良く支えて、プレキャスト版6と大梁1との連結部を強度的に強いものにすることができる。
【0035】
なお、レベル調整機構21の凹所23内には、レベル調整後、充填材29が充填され、凹所23及びボルト25が隠蔽される。この場合の充填材29は、凹所23を埋めるものであればよく、必ずしもコンクリートの打設によるものでなくともよいが、スタッド孔27の充填と併せて作業性良く凹所23を充填し、また、レベル調整用ボルト25の不本意な回転を阻止する上で、連結用充填材28と同じ充填材によって充填を行うものとするのが好ましい。
【0036】
小梁7による支承部分においては、図5に示すようなレベル調整機能付きの連結機構30が備えられている。即ち、同図に示すように、小梁7の上面の幅方向中央部に、ネジ棒31が垂直状態に立設されている。ネジ棒31は、全ネジボルトからなり、小梁7の上面にナット32を溶接Wし、このナット32にネジ棒31の一端を螺合するというようにして立設されている。そして、プレキャスト版6の端部には、ルーズ孔33を有する水平板34が外方突出状態に植設されている。
【0037】
プレキャスト版6の取付けは、例えば、次のようにして行うことができる。即ち、ネジ棒31に一方の挟込みナット35を螺合させると共に、このナット35に座板36を支承させ、プレキャスト版6の水平板34のルーズ孔33にネジ棒31を通し、ネジ棒31に上方から座板36を介してもう一方の挟込みナット37を螺合させる。これにより、プレキャスト版6は小梁7に対し仮の状態に連結され、プレキャスト6は転落阻止状態に建物躯体に保持される。次いで、挟込みナット35,37を回転させてプレキャスト版6のレベル調整を行い、しかる後、両挟込みナット35,37を締め付けて水平板34を挟み込む。以上のようにして、プレキャスト版6は小梁7に連結されている。
【0038】
こうしてプレキャスト版6の取付けを終えた後、躯体内のデッキプレート上にコンクリートが打設されて床が形成される。コンクリートの打設は、屋内だけでよいから、打設作業が天候に左右されることはない。また、コンクリートの打設工事において、プレキャスト版6は、コンクリート止めとしても機能し、コンクリート止めのための工事を軽減することが可能になる。打設養生されたコンクリート9とプレキャスト版6とは、プレキャスト版6から突出されている筋材17にて連結される。なお、図6(イ)に示すように、プレキャスト版6の室内側の端部における肉厚を薄くし、そこをハーフプレキャスト版部6aとし、その上面側に、デッキプレート8上のコンクリート9を及ぼすようにしてもよい。このようにして、プレキャスト版6は建物の外壁2の外方に突出して備えられ、出っ張り部3,4の床5,5を形成する。プレキャスト版6による出っ張り床は、それ自身で充分な強度をもち、建物躯体に、床の受ける小梁鉄骨を備えさせる必要はない。また、上記のように、プレキャスト版6の上面には予め水勾配11や排水溝12が成形されているから、左官工事も不要である。出っ張り部の床の下面側についても、プレキャスト版の下面が露出するだけで、スッキリしており、適宜、塗装等を行うのみでよい。
【0039】
図6(ロ)は、出っ張り部3,4の床部分にのみプレキャスト版6を備えさせたものである。プレキャスト版6は、配筋等により、建物にしっかりと保持させることができる。図6(ハ)は、コンクリート打設領域の周囲を全周、プレキャスト版6…にて包囲させたものであり、コンクリートの打設工事において、プレキャスト版6が、コンクリート止めとして機能し、コンクリート打設工事を軽減することができる。図6(ニ)は、建物の屋上部38の床に対し同様の床構造を採用した例である。
【0040】
【発明の効果】
上述の次第で、本発明の鉄骨造りの建物における床構造は、建物の外壁外方に突出される出っ張り部の床をプレキャスト版にて構成する構造としたから、出っ張り部の床は、プレキャスト版を建物の外壁外方に突出させるように設置するだけで形成することができ、出っ張り部の床の施工に関し、工種を大幅に削減することができると共に、工期も大幅に短縮することができて、施工の省力を実現することができる。
【0041】
しかも、建物の外壁外方に突出される出っ張り部の床に関しては、上記のように、これをプレキャスト版にて構成する構造としながら、建物躯体内部の床に関しては、これをデッキプレート上にコンクリートを打ち込んで形成する構造としているものであるから、出っ張り部の床を含む建物の床をトータルコスト低く施工することができる。
【0042】
また、上記の床構造において、プレキャスト版は、建物躯体の大梁に支えられて、その一方の側が建物躯体の内方に存置されると共に、他方の側が出っ張り部の床として建物の外壁外方に突出して備えられている構造とすることにより、施工において、プレキャスト版を建物躯体に対し力学的安定性良く保持させることができ、施工の際の建物躯体へのプレキャスト版の設置作業を容易に行うことができると共に、躯体に対するプレキャスト版の連結部分に対する力学的負荷も小さくできて、連結部分を簡素な構造にすることができる。
【0043】
また、請求項3の発明では、大梁へのプレキャスト版の連結を施工容易に行うことができると共に、プレキャスト版の高さ位置を、建物躯体の大梁の位置において上へ下へと調整することができ、しかも、レベル調整でプレキャスト版が大梁の上面から浮上した状態で連結されることになっても、プレキャスト版と大梁とを上方にも下方にも外れてしまうことのないしっかりとした連結状態に連結することができる。スタッド孔の成形も容易である。
【0044】
また、請求項4の発明では、大梁の位置において、プレキャスト版に曲げモーメントが作用したり、上に凸や下に凸の曲げ応力が作用しても、スタッド孔を囲む内部の傾斜した壁面がそれを安定良く支えて、プレキャスト版と大梁との連結部を強度的に強いものにすることができ、しかも、スタッド孔の成形も容易である。
【0045】
また、請求項5の発明では、大梁の上面にナットを一体的に取り付けると共にナットに頭付きボルトを螺合させるだけでスタッドを立てられ、スタッド立てを簡便にかつコスト的に有利に行うことができる。しかも、施工方法の選択により、大梁の運搬や取扱いを容易なものにしながら、建築現場でのスタッド打ちや溶接を削減することも可能となる。
【0046】
また、請求項6の発明では、請求項2の発明との結び付きにおいて、プレキャスト版の躯体内部側の端部を、建物躯体の小梁に対し、このような簡素な連結構造にて連結することが可能となり、しかも、この連結構造において、プレキャスト版の躯体内方側の端部の上下方向のレベル調整も行うことができ、加えて、施工方法の選択により、小梁の運搬や取扱いを容易なものにしながら、建築現場でのスタッド打ちや溶接を削減することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示すもので、図(イ)は床の断面側面図、図(ロ)は出っ張り部の床を拡大して示す断面側面図である。
【図2】プレキャスト版の設置方法を示すもので、図(イ)は設置前の側面断面図、図(ロ)は設置状態の側面断面図である。
【図3】プレキャスト版の設置状態の平面図である。
【図4】大梁とプレキャスト版との連結部分を示すもので、図(イ)は平面図、図(ロ)は図(イ)のI−I線断面図、図(ハ)は図(イ)のII−II線断面図である。
【図5】小梁とプレキャスト版との連結部分を示すもので、図(イ)は断面側面図、図(ロ)は平面図である。
【図6】変形例を示すもので、図(イ)は断面側面図、図(ロ)は断面平面図、図(ハ)は断面平面図、図(ニ)は断面側面図である。
【図7】従来の出っ張り部の床の構造を示す断面側面図である。
【符号の説明】
1…大梁
2…外壁
3…バルコニー(出っ張り部)
4…共用廊下(出っ張り部)
5…出っ張り部の床
6…プレキャスト版
7…小梁
8…デッキプレート
9…打設コンクリート
10…屋内の床
Claims (5)
- 建物の外壁内方の床が、デッキプレート上にコンクリートを打ち込んで形成される鉄骨造りの建物における床構造において、
建物の外壁外方に突出される出っ張り部の床が、プレキャスト版からなり、該プレキャスト版は、建物躯体の大梁に支えられて、その一方の側が建物躯体の内方に存置されると共に、他方の側が出っ張り部の床として建物の外壁外方に突出して備えられていることを特徴とする鉄骨造りの建物における床構造。 - 建物躯体の大梁の位置に位置して、プレキャスト版の上下方向のレベルを調整するレベル調整機構が備えられ、かつ、
大梁の上面に頭付きスタッドが立設され、プレキャスト版には、上下方向に貫通のスタッド孔が形成され、このスタッド孔は、プレキャスト版の厚さ方向中間部が上下両開口よりも狭く形成されており、このスタッド孔内に、大梁のスタッドが存置され、スタッド孔内に連結用の充填材が充填されて、プレキャスト版と大梁とが連結されている請求項1に記載の鉄骨造りの建物における床構造。 - 建物躯体の大梁の上面に頭付きスタッドが立設され、プレキャスト版には、上下方向に貫通のスタッド孔が形成され、このスタッド孔は、プレキャスト版の厚さ方向中間部から上下両開口に向けて傾斜して開いていく態様で形成されており、このスタッド孔内に、大梁のスタッドが存置され、スタッド孔内に連結用の充填材が充填されて、プレキャスト版と大梁とが連結されている請求項1に記載の鉄骨造りの建物における床構造。
- 建物躯体の大梁の上面に頭付きスタッドが立設され、この頭付きスタッドは、大梁の上面に一体的に取り付けられたナットに頭付きボルトの先端部を螺合して立設されており、プレキャスト版には、上下方向に貫通のスタッド孔が形成され、このスタッド孔内に、大梁の前記スタッドが存置され、スタッド孔内に連結用の充填材が充填されて、プレキャスト版と大梁とが連結されている請求項1に記載の鉄骨造りの建物における床構造。
- プレキャスト版の外壁内方側の端部下面側に、建物躯体の小梁が、一部突出するように備えられ、該プレキャスト版と隣接して小梁の上面にナットが一体的に取り付けられ、該ナットに螺合してネジ棒が立設され、プレキャスト版の外壁内方側の端部から外方に突出して備えられた水平板の孔に前記ネジ棒が通され、ネジ棒に螺合された上下のナットにて水平板を上下方向から挟んでプレキャスト版と小梁とが連結されている請求項1に記載の鉄骨造りの建物における床構造。
Priority Applications (1)
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JP14693498A JP3961116B2 (ja) | 1998-05-28 | 1998-05-28 | 鉄骨造りの建物における床構造 |
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