JPH11336235A - 鉄骨造りの建物における床構造 - Google Patents

鉄骨造りの建物における床構造

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JPH11336235A
JPH11336235A JP14693498A JP14693498A JPH11336235A JP H11336235 A JPH11336235 A JP H11336235A JP 14693498 A JP14693498 A JP 14693498A JP 14693498 A JP14693498 A JP 14693498A JP H11336235 A JPH11336235 A JP H11336235A
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floor
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 バルコニー等の出っ張り部の床を含む建物の
床のトータルコストを低く抑えつつ、出っ張り部の床の
施工に関し、工種を削減し、工期を短縮して、施工を省
力化できる、鉄骨造りの建物における床構造を提供する
こと。 【解決手段】 建物の外壁2の内方の床が、デッキプレ
ート8上にコンクリート9を打ち込んで形成される鉄骨
造りの建物において、建物の外壁2の外方に突出される
出っ張り部3,4の床5,5が、プレキャストコンクリ
ート版6からなる。そして、プレキャスト版6は、建物
躯体の大梁1に支えられて、その一方の側が建物躯体の
内方に存置されると共に、他方の側が出っ張り部の床5
として建物の外壁2の外方に突出して備えられている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄骨造りの建物に
おける床構造に関する。
【0002】
【従来の技術】集合住宅などの鉄骨造りの建物におい
て、躯体内部の床の形成は、ハーフPCa板を大梁、小
梁にわたすように敷き、その上にコンクリートを打設し
て仕上げるというようにして行われることもあるが、こ
の方法はコストが高くつくことから、普通は、デッキプ
レートを大梁、小梁にわたすように敷き、その上にコン
クリートを打設する、というようにして行われる。
【0003】そして、建物が、図7に示すように、バル
コニーや、共用廊下など、建物の外壁の外方に突出され
る出っ張り部71を有するものである場合は、これらの
出っ張り部71の床72の形成は、建物の躯体の大梁7
3から下地用の小梁鉄骨74…を突出させ、その上に、
デッキプレート75を敷き、コンクリート76を打設す
るというようにして行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、出っ張
り部の床72の形成を上記のような態様で行うのでは、
出っ張り部の床の施工に多種類の工事を必要とし、施工
が厄介であると共に、出っ張り部の床の工事に長期間を
要するという問題がある。即ち、建物躯体に、出っ張り
部の床72の受けとなる下地用の小梁鉄骨74,74を
備えさせる工事を行わなければならない。小梁鉄骨74
を備えさせる場合は、外壁77に小梁鉄骨を通す切欠き
77aを備えさせなければならなず、また、小梁鉄骨7
4には耐火被覆をする必要もある。また、コンクリート
76を打設する工事を行わなければならず、コンクリー
ト打設後は養生期間も必要である。また、出っ張り部の
床72の上面については、水勾配を付けるなど排水のた
めの左官工事を行わなければならない。また、出っ張り
部の床72の下面側については、小梁鉄骨74やデッキ
プレート75が露出しているために、軽量鉄骨下地を用
いてボード78を張り、水切や見切など金物を取り付け
るなど、軒天の仕上げ工事を行わなければならない。出
っ張り部の床72の鼻先部分79についても、ボーダー
パネルなどを用いて鼻先隠しを行わなければならない。
また、出っ張り部の床72に対し、ドレインやインサー
ト、設備孔などの各種の加工を建築現場にて行っていく
必要がある。
【0005】本発明は、上記のような従来の問題点に鑑
み、出っ張り部の床を含む建物の床のトータルコストを
低く抑えつつ、出っ張り部の床の施工に関し、工種を削
減し、工期を短縮して、施工を省力化することができ
る、鉄骨造りの建物における床構造を提供することを課
題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題は、建物の外壁
内方の床が、デッキプレート上にコンクリートを打ち込
んで形成される鉄骨造りの建物における床構造におい
て、建物の外壁外方に突出される出っ張り部の床が、プ
レキャスト版からなることを特徴とする鉄骨造りの建物
における床構造床構造によって解決される。
【0007】この床構造では、出っ張り部の床をプレキ
ャスト版にて構成する構造としているから、出っ張り部
の床は、プレキャスト版を建物の外壁外方に突出させる
ように設置するだけで形成することができる。従って、
出っ張り部の床の施工に関し、工種は大幅に削減され、
工期も大幅に短縮される。
【0008】即ち、プレキャスト版はそれ自身に充分な
強度をもたせることができるから、建物躯体に、出っ張
り部の床の受けとなる小梁鉄骨を備えさせる必要はな
い。従ってまた、外壁に小梁鉄骨を通す切欠きを備えさ
せる必要もなく、耐火被覆の必要もない。また、プレキ
ャスト版によるものであるから、コンクリートの打設は
不要であり、養生期間を考慮する必要もない。また、出
っ張り部の床の上面側については、予めその上面を所定
の非平坦形状に成形しておくことができ、従って、床面
の左官工事も必要ない。しかも、プレキャスト版による
ものであるから、上面がむらのないきれいな仕上がりと
なる。また、出っ張り部の床の下面側についても、プレ
キャスト版の下面が露出するだけで、スッキリしてお
り、軒天の仕上げ工事も特段必要ない。出っ張り部の床
の鼻先部分についても、プレキャスト版の鼻先部分が露
出しているだけで、スッキリしており、鼻先隠しの工事
も特段必要でない。また、ドレインやインサート、設備
孔などもプレキャスト版に予め備えさせておくことがで
き、現場でのそれらの加工を排除することもできる。
【0009】しかも、上記のように、出っ張り部の床を
プレキャスト版にて構成する構造としながら、建物の外
壁内方の床については、これを、デッキプレート上にコ
ンクリートを打ち込んで形成する構造としているから、
出っ張り部の床を含む建物の床のトータルコストは、こ
れを低く抑えることができる。
【0010】また、上記の床構造において、プレキャス
ト版は、建物躯体の大梁に支えられて、その一方の側が
建物躯体の内方に存置されると共に、他方の側が出っ張
り部の床として建物の外壁外方に突出して備えられてい
る構造とすることにより、施工において、プレキャスト
版を建物躯体に対し力学的安定性良く保持させることが
できる。即ち、プレキャスト版には、建物躯体の大梁を
支点として、建物躯体の外方に突出される部分の重量に
よるモーメントが作用するが、同時に、このプレキャス
ト版には、建物躯体内部に存置される部分の重量による
モーメントが作用する。このモーメントが前記モーメン
トを小さくするように、あるいは、打ち消すように作用
することとなって、上記のように、プレキャスト版を建
物躯体に対し力学的安定性良く保持させることができ
る。従って、施工の際の建物躯体へのプレキャスト版の
設置作業を容易に行うことができると共に、躯体に対す
るプレキャスト版の連結部分に対する力学的負荷も小さ
くなり、連結部分を簡素な構造にすることができる。
【0011】また、建物躯体の大梁の位置に位置して、
プレキャスト版の上下方向のレベルを調整するレベル調
整機構が備えられる一方、大梁の上面に頭付きスタッド
が立設され、プレキャスト版には、上下方向に貫通のス
タッド孔が形成され、このスタッド孔は、プレキャスト
版の厚さ方向中間部が上下両開口よりも狭く形成されて
おり、このスタッド孔内に、大梁のスタッドが存置さ
れ、スタッド孔内に連結用の充填材が充填されて、プレ
キャスト版と大梁とが連結されている構造とするのがよ
い。
【0012】この構造では、プレキャスト版は、そのス
タッド孔内に大梁のスタッドを存置させた状態にし、そ
して、スタッド孔内に上方より連結用充填材を充填する
だけで、建物躯体の大梁に連結され、大梁へのプレキャ
スト版の連結を施工容易に行うことができる。
【0013】加えて、レベル調整機構が備えられている
から、プレキャスト版の高さ位置を、建物躯体の大梁の
位置において上へ下へと調整することができる。
【0014】しかも、スタッドは頭付きスタッドからな
り、スタッド孔は、プレキャスト版の厚さ方向中間部が
上下両開口よりも狭く形成されているから、プレキャス
ト版がレベル調整機構により大梁の上面から浮上した状
態で連結されることになっても、その浮上連結状態を、
スタッドの頭部と連結用充填材と係合、及び、スタッド
孔を囲む孔周壁と連結用充填材との係合によりしっかり
と維持することができ、プレキャスト版と大梁とを上方
にも下方にも外れてしまうことのないしっかりとした連
結状態に連結することができる。
【0015】更に、プレキャスト版のスタッド孔は、プ
レキャスト版の厚さ方向中間部が上下両開口よりも狭く
形成されているものであるから、プレキャスト版の製作
において、分割可能な組み合わせ型を用いることによっ
て、そのようなスタッド孔を容易に成形することがで
き、スタッド孔形成上の難もない。
【0016】また、建物躯体の大梁の上面に頭付きスタ
ッドが立設され、プレキャスト版には、上下方向に貫通
のスタッド孔が形成され、このスタッド孔は、プレキャ
スト版の厚さ方向中間部から上下両開口に向けて傾斜し
て開いていく態様で形成されており、このスタッド孔内
に、大梁のスタッドが存置され、スタッド孔内に連結用
の充填材が充填されて、プレキャスト版と大梁とが連結
されている構造とするのがよい。
【0017】この構造では、大梁の位置においてプレキ
ャスト版に曲げモーメントが作用したり、上に凸や下に
凸の曲げ応力が作用しても、スタッド孔を囲む内部の傾
斜した壁面がそれを安定良く支えて、プレキャスト版と
大梁との連結部を強度的に強いものにすることができ
る。
【0018】しかも、プレキャスト版のスタッド孔は、
プレキャスト版の厚さ方向中間部から上下両開口に向け
て傾斜して開いていく態様で形成されているから、プレ
キャスト版の製作において、分割可能な組み合わせ型を
用いることによって、そのようなスタッド孔を容易に成
形することができ、スタッド孔形成上の難もない。
【0019】また、建物躯体の大梁の上面に頭付きスタ
ッドが立設され、この頭付きスタッドは、大梁の上面に
一体的に取り付けられたナットに頭付きボルトの先端部
を螺合して立設されており、プレキャスト版には、上下
方向に貫通のスタッド孔が形成され、このスタッド孔内
に、大梁の前記スタッドが存置され、スタッド孔内に連
結用の充填材が充填されて、プレキャスト版と大梁とが
連結されているものとするのがよい。これにより、大梁
の上面にナットを一体的に取り付けると共にナットに頭
付きボルトを螺合させるだけでスタッド立てを行うこと
ができ、スタッド立ての本数が少ないような場合などに
おいて、簡便にかつコスト的に有利にスタッド立てを行
うことができる。
【0020】また、プレキャスト版の外壁内方側の端部
下面側に、建物躯体の小梁が、一部突出するように備え
られ、該プレキャスト版と隣接して小梁の上面にナット
が一体的に取り付けられ、該ナットに螺合してネジ棒が
立設され、プレキャスト版の外壁内方側の端部から外方
に突出して備えられた水平板の孔に前記ネジ棒が通さ
れ、ネジ棒に螺合された上下のナットにて水平板を上下
方向から挟んでプレキャスト版と小梁とが連結されてい
る構造とするのがよい。
【0021】上記のように、プレキャスト版が、建物躯
体の大梁に支えられて、その一方の側が建物躯体の内部
に存置されると共に、他方の側が出っ張り部の床として
建物の外壁外方に突出されて備えられ、プレキャスト版
を建物躯体に対し力学的安定性良く保持させることがで
きるようになされていることとの結び付きにおいて、プ
レキャスト版の躯体内部側の端部を、建物躯体の小梁に
対し、このような簡素な連結構造にて連結することが可
能となる。
【0022】しかも、水平板を挟む上下のナットを調整
することによって、プレキャスト版の躯体内方側の端部
の上下方向のレベル調整を行うことができ、レベル調整
機構と連結機構とを一体化して簡素な構造を実現するこ
とができる。
【0023】加えて、スタッド立てを簡便にかつコスト
的に有利に行うことができると共に、小梁の上面に取り
付けられるナットを予め工場にて取り付けておき、建築
現場にてこのナットにネジ棒を螺合させてネジ棒の立設
を行うというような施工方法をとることもでき、このよ
うにすることによって、小梁の運搬や取扱いを容易なも
のとしながら、建築現場でのスタッド打ちや溶接を削減
することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態を図面に
基づいて説明する。
【0025】図1に示す床の構造は、例えば集合住宅な
どの鉄骨造りの建物の床の構造で、1,1はこの建物の
躯体を構成する大梁であり、これら大梁1,1の外方に
隣接して外壁2,2が備えられ、一方の外壁2の外方に
バルコニー3が出っ張り部として備えられると共に、も
う一方の外壁2の外方に、共用廊下などとして用いられ
る屋外廊下部分4が出っ張り部として備えられている。
【0026】バルコニー3及び屋外廊下部分4の各床
5,5は、プレキャスト版6,6にて構成されており、
各プレキャスト版6,6は、その下面中間部を大梁1に
支えさせると共に、この中間部を挟む一方の側を建物躯
体の大梁1の内方に小梁7に支承させて存置させ、そし
て、中間部を挟むもう一方の側を、バルコニー3や廊下
4の床5,5として、建物の外壁2,2の外方に突出さ
せて備えられている。
【0027】そして、建物の両外壁2,2間の屋内にお
いて、両プレキャスト版6,6にて挟まれた部分に、大
梁、小梁上にわたすようにデッキプレート8が敷かれ、
その上にコンクリート9が打ち込まれて、屋内の床10
が形成されている。
【0028】上記のプレキャスト版6は、例えば、内部
に配筋を施したコンクリート製のプレキャスト版などか
らなり、図2及び図3に示すように、建物の外壁2の外
方に突出される部分においては、予め、その上面に、排
水のための水勾配11と排水溝12が成形されており、
また、下面は、階下の軒天として平坦に成形されてい
る。また、鼻先部13には、手摺り14や腰壁15等を
取り付けることができるよう、その上面に嵌込み凹部な
どが成形されている。更に、プレキャスト版6の上面に
おいて、外壁2の下面と対面される部分は、外壁の仕
様、取付け方法に対応する形状、例えば凸16が成形さ
れている。また、プレキャスト版6において、建物躯体
の内方側に存置される端部には、デッキプレート8上に
打設されるコンクリート9中に埋設される筋材17…が
突出して備えられている。その他、ドレインや各種イン
サート、設備孔などもプレキャスト版のキャスティング
時に備えられている。
【0029】建物の施工は、建物躯体の鉄骨の建方を行
い、屋内にデッキプレート8を大梁小梁に支えさせるよ
うにして敷き込んだのち、各階に下方から上方に向けて
順次上記のプレキャスト版6を取り付けていくと共に、
外壁2も取り付けていき、そして、屋内のデッキプレー
ト8上にコンクリート9を打設するというようにして進
められていく。プレキャスト版6と外壁2との施工順序
については、プレキャスト版6を下階から上階に向けて
順次取り付けていったのち、各階に外壁2を取り付けて
いくというようにして行っていくこともできるし、下階
から上階に向けてプレキャスト版6と外壁2とを交互に
取り付けていくようにして行っていくこともできる。
【0030】建物躯体へのプレキャスト版6の設置は、
例えば、図2(イ)に示すように、建物の外で、プレキ
ャスト版6の出っ張り部の床となる側をクレーンなどで
水平に吊り、プレキャスト版6のもう一方を建物躯体の
大梁1を越えて内方に差し込み、そして、プレキャスト
版6の中間部を躯体の大梁1の上面に支承させると共
に、内方側の端部下面を小梁7に支承させるというよう
にして行っていくことができる。プレキャスト版6は、
その中間部が躯体の大梁1に支承されるように設置され
るから、建物躯体に対し力学的安定性良く保持される。
【0031】そして、大梁1及び小梁7に支承させたプ
レキャスト版6は、まず小梁7に対し仮止め状態に連結
され、次いで、大梁1部分、小梁7部分においてそれぞ
れ上下方向のレベル調整をされ、そして、大梁1と小梁
7にそれぞれ連結される。
【0032】即ち、大梁1による支承部分には、図4に
示すようなレベル調整機構21と連結機構22とが備え
られている。図3に示すように、レベル調整機構21
は、大梁1の上面に沿うように、中間部を挟む左右2箇
所の位置にそれぞれ備えられている。各レベル調整機構
21は、例えば、図4(ハ)に示すような構造のもので
ある。即ち、プレキャスト版6の上面に、所定の深さの
方形の凹所23が形成されていると共に、凹所23の底
面中間部に、大梁1の上面に開口するネジ孔24aが、
長ナット24の埋込みによって形成されている。凹所2
3の成形及び長ナット24の埋込みは、プレキャスト版
6のキャスティングの際に行われたものである。そし
て、先端球面状25aのレベル調整用の六角ボルト25
が上方から凹所23を介してネジ孔24aに螺合され、
ボルト25の頭部を凹所23内に存置させている。レベ
ル調整は、ボルト25の先端部を大梁1の上面に当接さ
せ、凹所23内のボルト25の頭部を回転させてプレキ
ャスト版6の下面から下方に進出させたりあるいは上方
に後退させたりすることによって行われる。ボルト25
の先端部25aは上記のように球面状をしているから、
ボルト25は位置ズレを起こすことなく略定位置で安定
良く回転され、プレキャスト版6の不本意な側方への位
置ズレを有効的に防止することができる。
【0033】連結機構22は、図3に示すように、大梁
1の上面に沿う沿う複数箇所、例えば図示するように3
箇所の位置に、レベル調整機構21,21を避けるよう
にして、それぞれ備えられている。各連結機構22は、
図4(ロ)に示すような構造のものである。即ち、大梁
1の上面に頭付きスタッド26が立設されて、プレキャ
スト版6には、それに対応して上下方向に貫通のスタッ
ド孔27が形成されている。頭付きスタッド26は、大
梁1の上面にナット26aを溶接Wにより取り付け、こ
のナット26aに頭付きボルト26bの先端部を螺合し
て立設させたものである。スタッド26は、例えば、工
場にて大梁1の上面にナット26aを先付けしておき、
現場で、このナット26aに頭付きボルト26bを螺合
させるというようにして大梁1に設けられる。スタッド
孔27は、スタッド26に対してルーズな断面サイズを
有し、プレキャスト版6の厚さ方向中間部から上下両開
口に向けて傾斜して開いていく複式錐状ないし鼓状に成
形されている。このスタッド孔27は、プレキャスト版
6のキャスティングにおいて、円錐台状の一対の型を互
いに突き合わせるように組み合わせ、これを型枠内にセ
ットし、コンクリートの打設、養生後、各型を分離させ
るように抜くというようにして容易に形成することがで
きる。
【0034】連結は、例えば、プレキャスト版6を吊っ
てこれを大梁1に設置し、上記のレベル調整機構21に
てプレキャスト版6のレベル調整を行った後、このスタ
ッド孔27を通じて、頭付きボルト26bを大梁1のナ
ット26aに螺合してスタッド26を立て、そして、ス
タッド孔27内に連結用の充填材28を充填するという
ようにして行われる。充填材28は、プレキャスト版6
と大梁1とを連結するものであり、例えば、スタッド孔
27内に普通コンクリートを打設させたものなどであっ
てもよい。上記のように、スタッド26を頭付きスタッ
ドとし、スタッド孔27を複式錐状ないし鼓状の孔とす
ることにより、プレキャスト版6が、図示するように、
レベル調整機構により大梁1の上面から浮上した状態で
連結されることになっても、その浮上連結状態を、スタ
ッド26の頭部と連結用充填材28と係合、及び、スタ
ッド孔27を囲む孔周壁と連結用充填材28との係合に
よりしっかりと維持することができ、プレキャスト版6
と大梁1とを上方にも下方にも外れてしまうことのない
しっかりとした連結状態に連結することができる。しか
も、大梁1の位置においてプレキャスト版6に曲げモー
メントが作用したり、上に凸や下に凸の曲げ応力が作用
しても、スタッド孔27を囲む内部の傾斜壁面がそれを
安定良く支えて、プレキャスト版6と大梁1との連結部
を強度的に強いものにすることができる。
【0035】なお、レベル調整機構21の凹所23内に
は、レベル調整後、充填材29が充填され、凹所23及
びボルト25が隠蔽される。この場合の充填材29は、
凹所23を埋めるものであればよく、必ずしもコンクリ
ートの打設によるものでなくともよいが、スタッド孔2
7の充填と併せて作業性良く凹所23を充填し、また、
レベル調整用ボルト25の不本意な回転を阻止する上
で、連結用充填材28と同じ充填材によって充填を行う
ものとするのが好ましい。
【0036】小梁7による支承部分においては、図5に
示すようなレベル調整機能付きの連結機構30が備えら
れている。即ち、同図に示すように、小梁7の上面の幅
方向中央部に、ネジ棒31が垂直状態に立設されてい
る。ネジ棒31は、全ネジボルトからなり、小梁7の上
面にナット32を溶接Wし、このナット32にネジ棒3
1の一端を螺合するというようにして立設されている。
そして、プレキャスト版6の端部には、ルーズ孔33を
有する水平板34が外方突出状態に植設されている。
【0037】プレキャスト版6の取付けは、例えば、次
のようにして行うことができる。即ち、ネジ棒31に一
方の挟込みナット35を螺合させると共に、このナット
35に座板36を支承させ、プレキャスト版6の水平板
34のルーズ孔33にネジ棒31を通し、ネジ棒31に
上方から座板36を介してもう一方の挟込みナット37
を螺合させる。これにより、プレキャスト版6は小梁7
に対し仮の状態に連結され、プレキャスト6は転落阻止
状態に建物躯体に保持される。次いで、挟込みナット3
5,37を回転させてプレキャスト版6のレベル調整を
行い、しかる後、両挟込みナット35,37を締め付け
て水平板34を挟み込む。以上のようにして、プレキャ
スト版6は小梁7に連結されている。
【0038】こうしてプレキャスト版6の取付けを終え
た後、躯体内のデッキプレート上にコンクリートが打設
されて床が形成される。コンクリートの打設は、屋内だ
けでよいから、打設作業が天候に左右されることはな
い。また、コンクリートの打設工事において、プレキャ
スト版6は、コンクリート止めとしても機能し、コンク
リート止めのための工事を軽減することが可能になる。
打設養生されたコンクリート9とプレキャスト版6と
は、プレキャスト版6から突出されている筋材17にて
連結される。なお、図6(イ)に示すように、プレキャ
スト版6の室内側の端部における肉厚を薄くし、そこを
ハーフプレキャスト版部6aとし、その上面側に、デッ
キプレート8上のコンクリート9を及ぼすようにしても
よい。このようにして、プレキャスト版6は建物の外壁
2の外方に突出して備えられ、出っ張り部3,4の床
5,5を形成する。プレキャスト版6による出っ張り床
は、それ自身で充分な強度をもち、建物躯体に、床の受
ける小梁鉄骨を備えさせる必要はない。また、上記のよ
うに、プレキャスト版6の上面には予め水勾配11や排
水溝12が成形されているから、左官工事も不要であ
る。出っ張り部の床の下面側についても、プレキャスト
版の下面が露出するだけで、スッキリしており、適宜、
塗装等を行うのみでよい。
【0039】図6(ロ)は、出っ張り部3,4の床部分
にのみプレキャスト版6を備えさせたものである。プレ
キャスト版6は、配筋等により、建物にしっかりと保持
させることができる。図6(ハ)は、コンクリート打設
領域の周囲を全周、プレキャスト版6…にて包囲させた
ものであり、コンクリートの打設工事において、プレキ
ャスト版6が、コンクリート止めとして機能し、コンク
リート打設工事を軽減することができる。図6(ニ)
は、建物の屋上部38の床に対し同様の床構造を採用し
た例である。
【0040】
【発明の効果】上述の次第で、本発明の鉄骨造りの建物
における床構造は、建物の外壁外方に突出される出っ張
り部の床をプレキャスト版にて構成する構造としたか
ら、出っ張り部の床は、プレキャスト版を建物の外壁外
方に突出させるように設置するだけで形成することがで
き、出っ張り部の床の施工に関し、工種を大幅に削減す
ることができると共に、工期も大幅に短縮することがで
きて、施工の省力を実現することができる。
【0041】しかも、建物の外壁外方に突出される出っ
張り部の床に関しては、上記のように、これをプレキャ
スト版にて構成する構造としながら、建物躯体内部の床
に関しては、これをデッキプレート上にコンクリートを
打ち込んで形成する構造としているものであるから、出
っ張り部の床を含む建物の床をトータルコスト低く施工
することができる。
【0042】また、上記の床構造において、プレキャス
ト版は、建物躯体の大梁に支えられて、その一方の側が
建物躯体の内方に存置されると共に、他方の側が出っ張
り部の床として建物の外壁外方に突出して備えられてい
る構造とすることにより、施工において、プレキャスト
版を建物躯体に対し力学的安定性良く保持させることが
でき、施工の際の建物躯体へのプレキャスト版の設置作
業を容易に行うことができると共に、躯体に対するプレ
キャスト版の連結部分に対する力学的負荷も小さくでき
て、連結部分を簡素な構造にすることができる。
【0043】また、請求項3の発明では、大梁へのプレ
キャスト版の連結を施工容易に行うことができると共
に、プレキャスト版の高さ位置を、建物躯体の大梁の位
置において上へ下へと調整することができ、しかも、レ
ベル調整でプレキャスト版が大梁の上面から浮上した状
態で連結されることになっても、プレキャスト版と大梁
とを上方にも下方にも外れてしまうことのないしっかり
とした連結状態に連結することができる。スタッド孔の
成形も容易である。
【0044】また、請求項4の発明では、大梁の位置に
おいて、プレキャスト版に曲げモーメントが作用した
り、上に凸や下に凸の曲げ応力が作用しても、スタッド
孔を囲む内部の傾斜した壁面がそれを安定良く支えて、
プレキャスト版と大梁との連結部を強度的に強いものに
することができ、しかも、スタッド孔の成形も容易であ
る。
【0045】また、請求項5の発明では、大梁の上面に
ナットを一体的に取り付けると共にナットに頭付きボル
トを螺合させるだけでスタッドを立てられ、スタッド立
てを簡便にかつコスト的に有利に行うことができる。し
かも、施工方法の選択により、大梁の運搬や取扱いを容
易なものにしながら、建築現場でのスタッド打ちや溶接
を削減することも可能となる。
【0046】また、請求項6の発明では、請求項2の発
明との結び付きにおいて、プレキャスト版の躯体内部側
の端部を、建物躯体の小梁に対し、このような簡素な連
結構造にて連結することが可能となり、しかも、この連
結構造において、プレキャスト版の躯体内方側の端部の
上下方向のレベル調整も行うことができ、加えて、施工
方法の選択により、小梁の運搬や取扱いを容易なものに
しながら、建築現場でのスタッド打ちや溶接を削減する
ことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示すもので、図(イ)は床
の断面側面図、図(ロ)は出っ張り部の床を拡大して示
す断面側面図である。
【図2】プレキャスト版の設置方法を示すもので、図
(イ)は設置前の側面断面図、図(ロ)は設置状態の側
面断面図である。
【図3】プレキャスト版の設置状態の平面図である。
【図4】大梁とプレキャスト版との連結部分を示すもの
で、図(イ)は平面図、図(ロ)は図(イ)のI−I線
断面図、図(ハ)は図(イ)のII−II線断面図であ
る。
【図5】小梁とプレキャスト版との連結部分を示すもの
で、図(イ)は断面側面図、図(ロ)は平面図である。
【図6】変形例を示すもので、図(イ)は断面側面図、
図(ロ)は断面平面図、図(ハ)は断面平面図、図
(ニ)は断面側面図である。
【図7】従来の出っ張り部の床の構造を示す断面側面図
である。
【符号の説明】
1…大梁 2…外壁 3…バルコニー(出っ張り部) 4…共用廊下(出っ張り部) 5…出っ張り部の床 6…プレキャスト版 7…小梁 8…デッキプレート 9…打設コンクリート 10…屋内の床

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 建物の外壁内方の床が、デッキプレート
    上にコンクリートを打ち込んで形成される鉄骨造りの建
    物における床構造において、 建物の外壁外方に突出される出っ張り部の床が、プレキ
    ャスト版からなることを特徴とする鉄骨造りの建物にお
    ける床構造。
  2. 【請求項2】 前記プレキャスト版は、建物躯体の大梁
    に支えられて、その一方の側が建物躯体の内方に存置さ
    れると共に、他方の側が出っ張り部の床として建物の外
    壁外方に突出して備えられている請求項1に記載の鉄骨
    造りの建物における床構造。
  3. 【請求項3】 建物躯体の大梁の位置に位置して、プレ
    キャスト版の上下方向のレベルを調整するレベル調整機
    構が備えられ、かつ、 大梁の上面に頭付きスタッドが立設され、プレキャスト
    版には、上下方向に貫通のスタッド孔が形成され、この
    スタッド孔は、プレキャスト版の厚さ方向中間部が上下
    両開口よりも狭く形成されており、このスタッド孔内
    に、大梁のスタッドが存置され、スタッド孔内に連結用
    の充填材が充填されて、プレキャスト版と大梁とが連結
    されている請求項2に記載の鉄骨造りの建物における床
    構造。
  4. 【請求項4】 建物躯体の大梁の上面に頭付きスタッド
    が立設され、プレキャスト版には、上下方向に貫通のス
    タッド孔が形成され、このスタッド孔は、プレキャスト
    版の厚さ方向中間部から上下両開口に向けて傾斜して開
    いていく態様で形成されており、このスタッド孔内に、
    大梁のスタッドが存置され、スタッド孔内に連結用の充
    填材が充填されて、プレキャスト版と大梁とが連結され
    ている請求項2に記載の鉄骨造りの建物における床構
    造。
  5. 【請求項5】 建物躯体の大梁の上面に頭付きスタッド
    が立設され、この頭付きスタッドは、大梁の上面に一体
    的に取り付けられたナットに頭付きボルトの先端部を螺
    合して立設されており、プレキャスト版には、上下方向
    に貫通のスタッド孔が形成され、このスタッド孔内に、
    大梁の前記スタッドが存置され、スタッド孔内に連結用
    の充填材が充填されて、プレキャスト版と大梁とが連結
    されている請求項2に記載の鉄骨造りの建物における床
    構造。
  6. 【請求項6】 プレキャスト版の外壁内方側の端部下面
    側に、建物躯体の小梁が、一部突出するように備えら
    れ、該プレキャスト版と隣接して小梁の上面にナットが
    一体的に取り付けられ、該ナットに螺合してネジ棒が立
    設され、プレキャスト版の外壁内方側の端部から外方に
    突出して備えられた水平板の孔に前記ネジ棒が通され、
    ネジ棒に螺合された上下のナットにて水平板を上下方向
    から挟んでプレキャスト版と小梁とが連結されている請
    求項2に記載の鉄骨造りの建物における床構造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN114215245A (zh) * 2021-12-17 2022-03-22 南京国豪装配式建筑有限公司 楼地面装配式装修构架系统
CN114892982A (zh) * 2022-06-01 2022-08-12 中铁一局集团建筑安装工程有限公司 一种节能型造楼机及其桁架结构

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