JP3657008B2 - 1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシン - Google Patents

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    • C07H19/20Purine radicals with the saccharide radical esterified by phosphoric or polyphosphoric acids

Description

技術分野
本発明は、新規な1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシン、その製造方法およびその用途に関するものである。
背景技術
バーミンガム大学のグループは、国際特許出願PCT/GB90/01518(国際公開番号WO91/04982)において、1−(2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)−5−メチルウラシルおよび1−(2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)−5−ヨードシトシンに関して言及している。
また最近、NIHのグループは、下記式で表される1−(2,3−ジデオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−エリスロ−ペンタフラノシル)ウラシルなどの化合物に関して報告している(Tetrahedron Letters,35,7569−7572(1994)、Tetrahedron Letters,35,7573−7576(1994)、Chemistry Letters,301−302(1995))。
Figure 0003657008
しかし、バーミンガム大学のグループは前記の2つの化合物を文言上例示しているだけで、実際に合成した実施例を示していない。さらに、当該国際特許出願の明細書にはそれらの化合物の合成法が説明されているが、その方法は公知の文献(J.Org.Chem.,50,2597(1985)、J.Org.Chem.,50,3644(1985))記載の方法を単純に適用したものであって、このような方法では目的とする化合物が得られないことはNIHグループの上記文献から明らかである。したがって、上記国際出願の明細書中には当該化合物の抗ウイルス活性に関して若干言及されているものの、具体的な活性データは記載されていない。
また、NIHのグループは合成した化合物の抗HIV活性に関して言及しているものの、その活性は必ずしも満足し得るものではない。
さらに、いずれのグループにおいても、抗ウイルス活性以外のその他の生物活性に関しては何等報告されていない。
発明の開示
本発明者らは、グルコースを出発原料とする2′−デオキシ−2′−置換−4′−チオヌクレオシド誘導体の簡便な合成法を開発した(WO96/01834)。今回これらの知見をもとにさらに種々研究を重ねた結果、2′−デオキシ−2′−フルオロ−4′−チオアラビノヌクレオシドの簡便な合成法を確立し、種々化合物を合成し、その生物活性を検定する過程で特に1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシンが優れた抗腫瘍活性を有することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記式[I]で表される1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシン、および当該化合物を有効成分として含有してなる医薬組成物、特に抗腫瘍剤に関するものである。
Figure 0003657008
(式中、Rは水素原子またはリン酸残基を示す。)
また、本発明は、下記の第1工程〜第3工程よりなる、上記式[I]で表される1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシンの製造方法に関するものである。
第1工程:
式[II]で表される化合物の1級水酸基を保護基により保護した後、ジエチルアミノサルファートリフルオライド(DAST)と反応させて式[III]で表される化合物を得る工程
Figure 0003657008
(式中、R1およびR2はアルキル基、シリル基またはアシル基を示す。)
第2工程:
式[III]で表される化合物を酸化剤と反応させてスルホキシドとした後、酸無水物もしくは酸塩化物で処理することでプンメラー(Pummerer)転移反応に付して式[IV]で表される化合物を得る工程
Figure 0003657008
(式中、R1およびR2は前記と同意義。R3はアシル基を示す。)
第3工程:
ルイス酸触媒の存在下、式[IV]で表される化合物とN4−アシルシトシンもしくはシトシンとをグリコシル化反応に付して保護基を有する化合物を得、保護基を除去後、所望により糖部5′位をリン酸化することで式[I]で表される1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシンを得る工程
Figure 0003657008
(式中、R、R1、R2およびR3は前記と同意義。)
さらにまた、本発明は下記の第1工程〜第4工程よりなる、上記式[I]で表される1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシンの製造方法に関するものである。
第1工程:
式[V]で表される化合物の水酸基に脱離基を導入した後、フッ素原子を導入することの可能な求核試薬で処理し、式[VI]で表される化合物を得る工程
Figure 0003657008
第2工程:
式[VI]で表される化合物の5,6位イソプロピリデン基の選択的脱保護、1級水酸基の選択的保護と2級水酸基への脱離基の導入、1級水酸基の脱保護、5,6−エポキシ化、硫化試薬による5,6−チイラン化、および求核試薬によるチイランの開環とアシル基の導入により式[VII]で表される化合物を得る工程
Figure 0003657008
(式中、R4およびR5はアルキル基またはアシル基を示す。)
第3工程:
式[VII]で表される化合物の1,2位イソプロピリデン基を加水分解後、酸化剤により酸化的減炭反応を行い、1位をアルコキシ化後、水酸基を保護基で保護して式[VIII]で表される化合物を得る工程
Figure 0003657008
(式中、R4とR5は前記と同意義。R6とR7はアルキル基あるいはアシル基、R8はアルキル基を示す。)
第4工程:
式[VIII]で表される化合物の1位アルコキシ基を臭化水素−酢酸溶液で処理してブロモ化し、活性化したシトシンとグリコシル化反応に付して保護基を有する化合物を得、保護基を除去後、所望により糖部5′位をリン酸化することで式[I]で表される1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシンを得る工程
Figure 0003657008
(式中、R6、R7およびR8は前記と同意義。また、Rは水素原子またはリン酸残基を示す。)
【図面の簡単な説明】
図1は、静脈内投与による本発明化合物のヒト大腸癌細胞株SW−48に対するインビボ抗腫瘍効果を示したものである。
図2は、経口投与による本発明化合物のヒト大腸癌細胞株SW−48に対するインビボ抗腫瘍効果を示したものである。
発明を実施するための最良の形態
(1)本発明の化合物
本発明の化合物は、前記式[I]で表される1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシンであり、当該化合物は塩、水和物または溶媒和物の形態であってもよい。そのような塩としては、Rが水素原子である場合には塩酸塩または硫酸塩などの酸付加物、Rがリン酸残基である場合にはナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩もしくはアンモニウム塩などの薬学的に許容される任意の塩が例示される。
また、水和物または溶媒和物としては、本発明の化合物またはその塩1分子に対し、0.1〜3.0分子の水または溶媒が付着したものを例示することができる。さらに、互変異性体などの各種異性体も本発明の化合物に包含されうる。
(2)本発明の化合物の製造方法
本発明の化合物は下記の第1工程〜第3工程からなる反応工程により製造することができる。
第1工程:
第1工程は、式[II]で表される化合物の1級水酸基を適当な保護基により保護した後、DASTと反応させて式[III]で表される化合物を得る工程である。
Figure 0003657008
(式中、R1およびR2はアルキル基、シリル基またはアシル基を示す。)
原料化合物は上記式[II]で表され、該化合物は公知の方法によりグルコースより容易に合成することができる(J.Org.Chem.,61,822(1996))。
式中のR1およびR2は前記定義のとおりであり、具体的には、メチル、エチル、ベンジル、メトキシベンジル、ジメトキシベンジル、トリチル、ジメトキシトリチルなどの非置換あるいは置換アルキル基、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリルなどの非置換あるいは置換シリル基、アセチル、ベンゾイル、ピバロイルなどのアシル基が例示できる。
保護基の導入は常法によって行うことができ、例えばシリル系保護基の場合、反応溶媒(たとえば、ピリジン、ピコリン、ジメチルアミノピリジン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、塩化メチレンなどの単独または混合溶媒)中、式[II]化合物1モルに対してシリル化剤(たとえば、t−ブチルジフェニルシリルクロリド、t−ブチルジメチルシリルクロリドなど)を1〜10モル、必要によりイミダゾールなどの塩基を1〜5モル用い、反応温度0〜50℃で反応させればよい。
このようにして得られた保護基を有する化合物とDASTを反応させて式[III]化合物を得る。
DASTとの反応は、塩化メチレン、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサンなどの溶媒中、必要に応じてアルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下、式[II]化合物1モルに対してDAST1〜20モル用い、反応温度は−100〜150℃、好ましくは−80℃〜室温で反応させることにより行うことができる。
式[III]化合物の単離は、通常の糖の分離精製手段を用いればよく、たとえば酢酸エチルと水で分配後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することができる。
第2工程:
第2工程は、式[III]で表される化合物を酸化剤と反応させてスルホキシドとした後、酸無水物もしくは酸塩化物で処理することでプンメラー転移反応に付して式[IV]で表される化合物を得る工程である。
Figure 0003657008
(式中、R1およびR2は前記と同意義。R3はアシル基を示す。)
スルホキシドへの誘導は常法に従って行うことができる。たとえば、塩化メチレン中アルゴンまたは窒素などの不活性ガス気流下、−100〜0℃においてm−クロロ過安息香酸で処理する方法(J.Org.Chem.,61,822(1996))、もしくはメタノールなどのアルコール系の溶媒中、メタ過ヨウ素酸ナトリウムで処理する方法(Tetrahedron Letter,993(1979))などを利用することができる。
次に、酸無水物もしくは酸塩化物処理によるプンメラー転移反応も常法により行うことができる。すなわち、必要によりアルゴンまたは窒素などの不活性ガス気流下、スルホキシド1モルに対して1〜100モルの無水酢酸、トリフルオロ無水酢酸などの酸無水物あるいは塩化メシルなどの酸塩化物を用い、反応温度−80〜150℃で反応させることにより行うことができる。なお、用いる酸無水物もしくは酸塩化物は反応溶媒としても機能するが、必要に応じて塩化メチレンなどの有機溶媒中で上記反応を行わせることもできる。
このようにして得られた式[IV]化合物の単離は、通常の糖の分離精製手段を用いればよく、たとえば酢酸エチルと水で分配後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することができる。
第3工程:
第3工程は、ルイス酸触媒の存在下、式[IV]で表される化合物とN4−アシルシトシンもしくはシトシンとをグリコシル化反応に付して保護基を有する化合物を得、保護基を除去後、所望により糖部5′位をリン酸化することにより式[I]で表される1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシンを得る工程である。
Figure 0003657008
(式中、R1、R2、R3およびRは前記と同意義。)
式[IV]化合物のグリコシル化反応は、必要によりアルゴンまたは窒素などの不活性ガス気流下、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドなどの溶媒中、式[IV]化合物1モルに対してN4−アシルシトシンもしくはシトシン1〜10モルとトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、四塩化すず、四塩化チタン、塩化亜鉛、三フッ化ホウ素などのルイス酸0.1〜10モルとを用い、反応温度−50〜100℃で反応させることにより実施することができる。
保護基の除去は、使用した保護基に応じて酸性加水分解、アルカリ性加水分解、フッ化テトラブチルアンモニウム処理、接触還元などの通常の処理を適宜選択して行なえばよい。たとえば、ベンジル系保護基の場合、塩化メチレン中、アルゴンまたは窒素などの不活性ガス気流下、−100℃〜室温において三塩化ホウ素または三臭化ホウ素を用いる方法により脱保護することができる。
また、式[I]中、Rがリン酸残基である化合物を合成する場合、上述の脱保護終了後、オキシ塩化リン、テトラクロロピロリン酸、β−シアノエチルリン酸とDCCなどの通常のヌクレオシド5′位の選択的リン酸化反応に使用するリン酸化剤と反応させ、常法により遊離酸型または塩型の目的化合物を得ることができる。
このようにして得られた本発明の化合物は、ヌクレオシドまたはヌクレオチドの単離精製に使用されている方法を適宜組み合せて分離精製することができる。たとえば、ヌクレオシド体(式[I]のRが水素原子)の場合には、溶媒留去後、エタノール等の適当な溶媒から結晶化すればよく、必要に応じ塩型として得ることもできる。また、ヌクレオチド体(式[I]のRがリン酸残基)の場合には、イオン交換カラムクロマトグラフィー、活性炭などの吸着カラムクロマトグラフィーなどにより精製し、凍結乾燥または結晶化により遊離酸型を得ることができ、必要に応じて塩型として得ることもできる。
本発明の化合物は、上記の方法以外にも、以下に示す第1工程〜第4工程よりなる方法にて製造することもできる。この方法は、反応条件が比較的マイルドであり、反応収率の向上、β体の収率向上などが達成または期待できる優れた方法である。
第1工程:
第1工程は、式[V]で表される化合物の水酸基に脱離基を導入した後、フッ素原子を導入することの可能な求核試薬で処理し、式[VI]で表される化合物を得る工程である。
Figure 0003657008
原料化合物は式[V]で表され、該化合物は公知の方法(Carbohydr.Res.,24,192(1972))によりグルコースより容易に製造することができる。
導入する脱離基としては、メタンスホニル、p−トルエンスルホニル、ベンゼンスルホニル、イミダゾイルスルホニル、トリフルオロメタンスルホニルなどのスルホニル基、好ましくはメタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、イミダゾイルスルホニル基を例示することができる。
脱離基の導入は、常法によって行えばよく、例えば、メタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基またはイミダゾイルスルホニル基の場合、反応溶媒(たとえば、ピリジン、ピコリン、ジメチルアミノピリジン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、塩化メチレンなどの単独または混合溶媒)中、式[V]化合物1モルに対し、メタンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド、あるいはスルフリルクロリドを1〜10モル、必要によりイミダゾールなどの塩基を2〜50モル用い、反応温度−50〜50℃、好ましくは0〜50℃で反応させることにより実施できる。
フッ素原子を導入することの可能な求核試薬としては、フッ化カリウム(スプレードライ品を含む)、フッ化水素カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウムなどを使用することができる。
このような求核試薬との反応は、2−メトキシエタノール、2,3−ブタンジオールなどのグリコール系の溶媒中、式[V]化合物1モルに対して求核試薬2〜100モル、好ましくは2〜50モルを用い、室温〜300℃、好ましくは50〜200℃で反応させればよい。
このようにして得られた式[VI]化合物の単離は、通常の糖の分離精製手段を用いればよく、たとえば酢酸エチルと水で分配後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン−酢酸エチルなどの有機溶媒で溶出することで単離精製することができる。
第2工程:
第2工程は、式[VI]で表される化合物の5,6位イソプロピリデン基の選択的脱保護、1級水酸基の選択的保護と2級水酸基への脱離基の導入、1級水酸基の脱保護と5,6−エポキシ化、硫化試薬による5,6−チイラン化、および求核試薬によるチイランの開環とアシル基の導入により式[VII]で表される化合物を得る工程である。
Figure 0003657008
(式中、R4およびR5はアルキル基またはアシル基を示す。)
5,6位イソプロピリデン基の選択的脱保護は、通常の酸加水分解の方法で行えばよく、例えば用いる酸としては、塩酸、硫酸などの鉱酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸を例示することができる。脱保護反応を実施する際、これらの使用する酸を適当な濃度になるように水で希釈し、また、必要の応じTHF、ジオキサンなどの有機溶媒との混合溶媒とし、−50〜150℃で、好ましくは−20〜100℃で撹拌することにより脱保護反応を実施できる。
1級水酸基の選択的保護に用いる保護基としては、通常の水酸基の保護基でよく、ベンジル、ジメトキシベンジルなどのベンジル系保護基あるいはt−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、トリエチルシリルなどのシリル系保護基、メトキシメチル、メトキシエトキシエチル、テトラヒドロフランテトラヒドロピランなどのエーテル系保護基、トリチル、モノメトキシトリチル、ジメトキシトリチルなどのトリチル系保護基及びアセチル、ベンゾイル、ピバロイルなどのアシル基などが例示できる。
保護基の導入は、常法によって行えばよく、例えば、t−ブチルジフェニルシリル基などのシリル系保護基またはベンゾイル基などのアシル基の場合、反応溶媒(たとえば、ピリジン、ピコリン、ジメチルアミノピリジン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、塩化メチレンなどの単独または混合溶媒)中、式[VI]化合物1モルに対してシリル化剤(たとえば、t−ブチルジフェニルシリルクロリドなど)もしくはアシル化剤(たとえば、ベンゾイルクロリドなど)を0.8〜10モル、必要によりイミダゾール、ピリジンなどの塩基を1〜5モル用い、反応温度−20〜50℃で反応させることにより実施できる。
また、2級水酸基へ導入する脱離基としては、第1工程で例示した脱離基と同じものを例示することができ、導入方法は第1工程に記載した方法と同様の方法により実施できる。
1級水酸基の脱保護は使用した保護基に応じ、酸性加水分解、アルカリ性加水分解及びエステル交換、フッ化物処理、接触還元などの通常の処理を適宜選択して行なえばよい。特に、アルカリ性加水分解及びエステル交換の場合、同条件にて同時にエポキシ化反応も進行する。しかし、アルカリ性加水分解及びエステル交換の条件でエポキシ化反応が不十分にしか進行しなかった場合または他の条件で脱保護を行なった場合は、脱保護により得られるシスジオール体を塩基処理することにより目的とするエポキシ体へ誘導することができる。この場合、用いる塩基としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどが例示できる。塩基処理は、エーテル、THF、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒などの有機溶媒中、式[VI]化合物1モルに対して塩基を0.5〜5モル用い、−50〜120℃で処理することにより実施できる。
得られたエポキシ体のチイラン体への変換は、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒、ピリジン、アセトニトリル、DMFなどの有機溶媒中、式[VI]化合物1モルに対して硫化試薬を0.1〜10モル用い、0〜150℃で処理することで実施できる。使用する硫化試薬としては、チオ尿素、キサンテート、チオカルボニルジイミダゾールなどが例示される。
得られたチイラン体の開環とアシル基の導入は、有機酸、有機酸塩、酸無水物の任意の混合物中、式[VI]化合物1モルに対して有機酸、有機酸塩または酸無水物を1〜100モル用い、室温〜200℃で処理することにより実施される。反応に使用する有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ピバル酸、トリフルオロ酢酸が、有機酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、プロピオン酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸カリウム、トリフルオロ酢酸リチウムが、酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸、無水ピバル酸、無水トリフルオロ酢酸などがそれぞれ例示される。
このようにして得られた式[VII]化合物の単離は、通常の糖の分離精製手段を用いればよく、たとえば酢酸エチルと水で分配後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン−酢酸エチルなどの有機溶媒で溶出することで単離精製することができる。
第3工程:
第3工程は、式[VII]で表される化合物の1,2位イソプロピリデン基を加水分解後、酸化剤により酸化的減炭反応を行い、1位をアルコキシ化後、水酸基を保護基で保護して式[VIII]で表される化合物を得る工程である。
Figure 0003657008
(式中、R4とR5は前記と同意義。R6とR7はアルキル基あるいはアシル基、R8はアルキル基を示す。)
1,2位イソプロピリデン基の加水分解は、上記第2工程で説明した5,6位イソプロピリデン基の脱保護と同様の方法により実施できる。
酸化的減炭反応は、メタノールなどのアルコール系溶媒、THF、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、塩化メチレン、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエンなどの有機溶媒単独あるいは水との混合溶液中、過ヨウ素酸ナトリウム、過マンガン酸カリウムなどの酸化剤を式[VII]化合物1モルに対して0.1〜10モル用い、−50〜100℃、好ましくは、−20〜50℃で処理することにより実施できる。
1位アルコキシ化反応は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール溶媒中、大過剰の塩化水素を用いて−50〜100℃で処理することにより実施できる。
3位及び5位水酸基の保護基としては、通常の水酸基の保護基でよく、ベンジル、ジメトキシベンジルなどのベンジル系保護基あるいはt−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、トリエチルシリルなどのシリル系保護基、メトキシメチル、メトキシエトキシエチル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル系保護基、トリチル、モノメトキシトリチル、ジメトキシトリチルなどのトリチル系保護基及びアセチル、ベンゾイル、ピバロイルなどのアシル基などが例示できる。保護基の導入は、第2工程記載の方法と同様な方法により実施することができる。
このようにして得られた式[VIII]化合物の単離は、通常の糖の分離精製手段を用いればよく、たとえば酢酸エチルと水で分配後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン−酢酸エチルなどの有機溶媒で溶出することで単離精製することができる。
第4工程:
第4工程は、式[VIII]で表される化合物の1位アルコキシを臭化水素−酢酸溶液で処理してブロモ化し、活性化したシトシンとグリコシル化反応に付して保護基を有する化合物を得、保護基を除去後、所望により糖部5′位をリン酸化することで式[I]で表される1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシンを得る工程である。
Figure 0003657008
(式中、R6、R7およびR8は前記と同意義。また、Rは水素原子またはリン酸残基を示す。)
式[VIII]化合物の1位アルコキシ基のブロム化は、式[VIII]化合物1モルに対して0.1〜10モル程度の臭化水素を含有する臭化水素−酢酸中、さらに塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどとの混合溶媒中、−50〜70℃で処理することにより実施できる。
また、上記ブロム化反応で進行が不十分の場合には、加酢酸分解により1−アセトキシ体とし、さらに上記ブロム化反応を実施すればよい。式[VIII]化合物の加酢酸分解は、硫酸などの鉱酸存在下、式[VIII]化合物1モルに対して1モル〜大過剰の酢酸、無水酢酸の混合物中、−20〜100℃、好ましくは0〜50℃で処理することにより実施される。
グリコシル化反応は、アルゴンまたは窒素などの不活性ガス気流下、溶媒として塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドなどを用い、式[VIII]化合物1モルに対して活性化したシトシン(シリル化したシトシン、またはシトシンの金属もしくはアルキルアンモニウム塩)1〜10モル、および必要に応じてトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、四塩化すず、四塩化チタン、塩化亜鉛、三フッ化ホウ素などのルイス酸0.1〜10モルを用い、−50〜100℃で反応させることにより実施できる。
また、上記以外にも、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、アセトニトリルなどの有機溶媒中もしくは溶媒非存在下、シリル化したシトシンと必要に応じてヨウ化ナトリウムなどの触媒存在下、室温〜200℃で処理することによりグリコシル化反応を行うことも可能である。
保護基の除去は、使用した保護基に応じた酸性加水分解、アルカリ性加水分解、フッ化物処理、接触還元などの通常の処理を適宜選択して行なえばよい。特に、ベンジル系保護基の場合、その脱保護は塩化メチレン中アルゴンまたは窒素などの不活性ガス気流下、−100℃〜室温において三塩化ホウ素または三臭化ホウ素を用いる方法が望ましい。
また、式[I]中、Rがリン酸残基である化合物を合成する場合、上述の脱保護終了後、オキシ塩化リン、テトラクロロピロリン酸、β−シアノエチルリン酸とDCCなどの通常のヌクレオシド5′位の選択的リン酸化反応に使用するリン酸化剤と反応させ、常法により遊離酸型または塩型の目的化合物を得ることができる。
このようにして合成される本発明の化合物は、一般のヌクレオシド、ヌクレオチドの単離精製に使用されている方法を適宜組み合せて分離精製することができる。たとえば、ヌクレオシド体(式[I]のRが水素原子)の場合には溶媒留去後、エタノール等の適当な溶媒から結晶化すればよく、必要に応じ塩型として得ることもできる。ヌクレオチド体(式[I]のRがリン酸残基)の場合にはイオン交換カラムクロマトグラフィー、活性炭などの吸着カラムクロマトグラフィーなどにより精製し、凍結乾燥または結晶化により遊離酸型を得ることができ、必要に応じて塩型として得ることもできる。
(3)本発明の化合物の用途
本発明の化合物は、後述の試験例に示すように優れた抗腫瘍作用を有することから、これらを有効成分とする本発明の組成物は悪性腫瘍(例えば、肺癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌、乳癌、腎癌、膀胱癌、子宮癌、骨肉腫、黒色腫)などの治療に有用である。
本発明の化合物の投与量は、患者の年齢、体重、疾病、患者の重篤度、薬物による許容性、投与方法などにより異なり、これらの条件を総合した上で適宜決定されるものであるが、通常1日当たり0.001〜1000mg/kg体重、好ましくは0.01〜100mg/kg体重の範囲内から選ばれ、一回または複数回に分けて投与される。
投与方法は、経口、非経口、経腸、局所投与などのいずれの経路によっても投与することができる。
本発明の化合物の製剤化に際しては、通常使用される製剤用担体、賦形剤、その他の添加剤を使用することができる。担体としては、乳糖、カオリン、ショ糖、結晶セルロース、コーンスターチ、タルク、寒天、ペクチン、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、レシチン、塩化ナトリウムなどの固体状担体、グリセリン、落花生油、ポリビニルピロリドン、オリーブ油、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、水などの液体状担体を例示することができる。
剤型としては任意の形態を採ることができ、たとえば固体状担体を使用する場合には錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル化剤、座剤、トローチ剤などを、液体状担体を使用する場合にはシロップ、乳液、軟ゼラチンカプセル、クリーム、ゲル、ペースト、スプレー、注射などをそれぞれ例示することができる。
実施例
以下、本発明を合成例、試験例、製剤例などをあげて具体的に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。
合成例1
1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D −アラビノフラノシル)シトシン〔式[I],R=H〕の 合成
(1) 1,4−アンヒドロ−5−O−t−ブチルジフェ ニルシリル−3−O−ベンジル−2−デオキシ−2−フ ルオロ−4−チオ−D−アラビトール〔式[III],R 1 Bn,R 2 =TBDPS〕の合成
1,4−アンヒドロ−3−O−ベンジル−4−チオ−D−アラビトール〔式[II],R1=Bn〕37.7gとイミダゾール11.3gをDMF400mlに溶解し、氷冷下、t−ブチルジフェニルシリルクロライド(TBDPSCl)42.9mlを加え、アルゴン気流下、0℃で一晩撹拌した。水を加えしばらく室温で撹拌した後、溶媒を留去、残渣を酢酸エチル−水で分配し、有機層を更に水で洗浄後、乾燥した。溶媒を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトにより精製し、2〜10%酢酸エチル−n−ヘキサンにより溶出した部分を濃縮し、5−シリル体53.4g(収率71%)を得た。
得られた5−シリル体5.06gを塩化メチレン25mlに溶解し、この溶液にアルゴン気流下、−78℃にてジエチルアミノサルファートリフルオライド(DAST)2.26mlを含む塩化メチレン溶液25mlを滴下し、−78℃3時間撹拌した。反応を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて停止した後、クロロホルムにより抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカカムクロマトにより精製し、2〜4%酢酸エチル−n−ヘキサンにより溶出した部分を濃縮し、目的物2.78g(収率55%)を得た。
1H−NMR(CDCl3)δ7.71−7.63(4H,m,C6H5),7.71−7.63(11H,m,C6H5),5.18(1H,dq,H−2,J=3.5,50.5Hz),4.64(1H,d,C6H5CH2,J=12.0Hz),4.60(1H,d,C6H5CH2,J=12.0Hz),4.35(1H,dt,H−3,J=2.9,11.2Hz),3.76(1H,t,H−5a,J=9.5Hz),3.66(1H,ddd,H−5b,J=2.0,6.1,10.5Hz),3.57−3.53(1H,m,H−4),3.19(1H,ddd,H−1a,J=4.4,12.2,30.3Hz),3.06(1H,ddd,H−1b,J=3.4,12.2,18.1Hz),1.05(9H,s,tBu)。
(2) 1−O−アセチル−5−O−t−ブチルジフェ ニルシリル−3−O−ベンジル−2−デオキシ−2−フ ルオロ−4−チオ−D−アラビノース〔式[IV],R 1 =B n,R 2 =TBDPS,R 3 =Ac〕の合成
1,4−アンヒドロ−5−O−t−ブチルジフェニルシリル−3−O−ベンジル−2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−D−アラビトール2.58gを塩化メチレン15mlに溶解し、アルゴン気流下、−78℃に冷却し、80%m−クロロ過安息香酸1.15gを溶解した塩化メチレン溶液を滴下した。30分間撹拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え反応を止め、室温に戻しクロロホルムで抽出、有機層を乾燥した。溶媒を留去し、残渣を無水酢酸30mlに溶解し、アルゴン気流下、2時間110℃に保った。室温にまで冷却した後、減圧下溶媒を留去した。残渣を酢酸エチルに溶解し、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で分配し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、溶液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトにより精製し、5〜10%酢酸エチル−n−ヘキサンにより溶出した部分を濃縮し、目的物1.57g(収率54%)を得た。
1H−NMR(CDCl3)δ7.68−7.62(4H,m,C6H5),7.46−7.25(11H,m,C6H5),6.06(1H,d,H−1,J=4.4Hz),5.11(1H,ddd,H−2,J=4.4,8.3,51.0Hz),4.78(1H,d,C6H5CH2,J=11.7Hz),4.60(1H,d,C6H5CH2,J=11.7Hz),4.38(1H,ddd,H−3,J=7.3,8.3,11.7Hz),3.81(1H,dd,H−5a,J=4.4,10.5Hz),3.74(1H,dd,H−5b,J=5.9,10.5Hz),3.34(1H,ddd,H−4,J=4.4,5.9,7.3Hz),2.05(3H,s,Ac),1.07(9H,s,tBu)。
(3) 1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ −β−D−アラビノフラノシル)シトシン〔式[I],R =H〕の合成
1−O−アセチル−5−O−t−ブチルジフェニルシリル−3−O−ベンジル−2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−D−アラビノース971mgをアセトニトリル20mlに溶解し、この溶液にシリル化したN4−アセチルシトシン(N4−アセチルシトシン832mgを触媒量の硫酸アンモニウムとともにヘキサメチルジシラザン中、5時間還流することにより調製)、四塩化すず1M塩化メチレン溶液3.60mlを加え室温で3時間撹拌した。更に四塩化すず1M塩化メチレン溶液1.80mlを加え、室温で1時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、不溶物をセライトでろ過し、クロロホルムで3回抽出し有機層を乾燥した。ろ液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトにより精製し、1%メタノール−n−クロロホルムで溶出した部分を集め、濃縮し、保護された目的物672mg(収率59%)を得た。
保護された目的物614mgを塩化メチレン15mlに溶解し、これにアルゴン気流下−78℃において1Mトリクロロボラン4.85mlを滴下し、0℃に昇温し30分間撹拌した。ピリジン2ml、メタノール5mlを加え−78℃で更に30分間撹拌し、室温に戻した。溶媒を留去し残渣をメタノールで3回共沸した後、溶媒を留去し、残渣をメタノール10mlに溶解し、フッ化アンモニウム360mgを加え、2時間60℃に保った。減圧下、濃縮し、メタノール15ml、濃アンモニア水15mlを加え、室温で一晩撹拌した。溶媒を留去、残渣をエタノールで共沸し、シリカゲルカラムクロマトにより精製、更にODS逆相カラムクロマトにより精製し、標記化合物29mgを得た。
1H−NMR(DMSO−d6)δ7.98(1H,dd,H−6,J=1.0,7.2Hz),7.26,7.19(2H,br,NH2),6.47(1H,dd,H−1′,J=5.4,13.2Hz),5.85(1H,d,3′−OH,J=4.9Hz),5.77(1H,d,H−5,J=7.3Hz),5.22(1H,t,5′−OH,J=5.4Hz),4.91(1H,dt,H−2′,J=5.4,50.8Hz),4.25(1H,ddt,H−3′,J=4.9,5.4,11.2Hz),3.72(1H,dt,H−5′a,J=5.4,11.2Hz),3.60(1H,dt,H−5′b,J=5.9,11.2Hz),3.22(1H,dt,H−4′,J=5.4,5.9Hz)。
合成例2
1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D −アラビノフラノシル)シトシン〔式[I],R=H〕の 合成
(1) 1,2:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−3−デ オキシ−3−フルオロ−α−D−グルコフラノース〔式 [VI]〕の合成
1,2:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−α−D−アロフラノース[式V]20.0g(76.84mmol)をCH2Cl2240mlに溶解し、0℃でSO2Cl212.35ml(153.68mmol)を滴下し、15分間撹拌後、イミダゾール52.3g(768.40mmol)を氷冷下で少量ずつ加え、室温で2〜3時間撹拌した。sat.NaHCO3で反応停止後、CHCl3で抽出し、有機層をNa2SO4で乾燥させ溶媒を留去した。残渣を2−メトキシエタノール240mlに溶解し、フッ化カリウム(スプレードライ品)44.64g(768.40mmol)を加えて130℃で4〜6時間還流した。放冷後、溶媒を留去し、残渣を酢酸エチルと水で分配した。有機層をH2O×2,brineで洗浄し、Na2SO4乾燥後、減圧乾固し、シリカゲルカラム精製(400cc,5〜20%AcOEt(Hex中))を行い、目的物を12.98g(49.49mmol)、収率64%で得た。
1H−NMR(CDCl3)δppm5.95(d,1H,H−1,J1,2=3.9Hz),5.01(dd,1H,H−3,J3,4=2.2Hz,J3,F=49.8Hz),4.70(dd,1H,H−2,J1,2=3.9Hz,J2,F=10.7Hz),4.29(1H,ddd,H−5,J4,5=8.3Hz,J5,6a=5.9Hz,J5,6b=4.9Hz),4.12(dd,1H,H−6a,J5,6a=5.9Hz,J6a,b=8.8Hz),4.11(ddd,1H,H−4,J3,4=2.2Hz,J4,5=8.3Hz,J4,F=29.0Hz),4.03(dd,1H,H−6b,J5,6b=4.9Hz,J6a,b=8.8Hz),1.50,1.45,1.37,1.33(s,each 3H,ipr)。
(2) 5,6−ジ−S,O−アセチル−1,2−O−イソプロ ピリデン−5−チオ−α−D−グルコフラノース〔式 [VII],R 4 =R 5 =Ac〕の合成
1,2:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−3−デオキシ−3−フルオロ−α−D−グルコフラノース10.9g(41.56mmol)をTHF40ml,2N HCl40mlに溶解し、室温で撹拌した。反応終了後、NaHCO3で中和し、不溶物をろ去した。ろ液をCHCl3で抽出し、有機層をbrineで洗浄し、Na2SO4で乾燥後溶媒を留去した後、シリカゲルカラム精製(320cc,3〜6%MeOH(CHCl3中))を行い、1,2−O−イソプロピリデン−3−デオキシ−3−フルオロ−α−D−グルコフラノース8.02g(36.09mmol)を得た。得られた1,2−O−イソプロピリデン−3−デオキシ−3−フルオロ−α−D−グルコフラノースはCH2Cl2120mlに溶解し、ピリジン3.20ml,DMAP44mgを加え、−5℃でBzCl4.61ml(39.68mmol)のCH2Cl250mlを滴下した。−5℃で5時間反応を行い、反応終了確認後、MeOHで1時間撹拌し反応を停止した。CHCl3とH2Oで分配し、有機層を0.5N HCl×2,sat.NaHCO3×2,brineで洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を留去し、シリカゲルカラム精製(320cc,10〜25%AcOEt(Hex中))を行い、6−O−ベンゾイル−1,2−O−イソプロピリデン−3−デオキシ−3−フルオロ−α−D−グルコフラノースを9.33g(28.59mmol)、収率79%で得た。
1H−NMR(CDCl3)δppm8.09−8.05(m,2H,Bz),7.60−7.42(m,3H,Bz),5.99(d,1H,H−1,J1,2=3.9Hz),5.14(dd,1H,H−3,J3,4=2.0Hz,J3,F=49.8Hz),4.74−4.70(m,2H,H−2,H−6a),4.46(dd,1H,H−6b,J5,6b=5.9Hz,J6a,b=12.2Hz),4.27−4.18(m,2H,H−4,H5),2.83(br,1H,5−OH),1.47,1.33(s,each 3H,ipr)。
6−O−ベンゾイル−1,2−O−イソプロピリデン−3−デオキシ−3−フルオロ−α−D−グルコフラノース9.33g(28.59mmol)をピリジン80mlに溶解し、MsCl3.32ml(42.88mmol)を0℃で滴下し、室温で一晩撹拌した。0℃でH2Oを加え反応を停止した後、酢酸エチルで抽出し、有機層をsat.NaHCO3,brineで洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒留去し、残渣にMeOH80mlを加え、28%NaOCH37ml(34.31mmol)を加えて室温で45分間撹拌した。酢酸エチルと水で分配を行い、有機層をNa2SO4で乾燥後、シリカゲルカラム精製(220cc AcOEt:Hex=5:1〜1:1)を行い、5,6−アンヒドロ−1,2−O−イソプロピリデン−3−デオキシ−3−フルオロ−α−L−イドフラノース3.82g(65%)、及び1,2−O−イソプロピリデン−3−デオキシ−3−フルオロ−5−O−メタンスルホニル−α−D−グルコフラノース1.404g(16%)を得た。1,2−O−イソプロピリデン−3−デオキシ−3−フルオロ−5−O−メタンスルホニル−α−D−グルコフラノースはTHF10mlに溶解し、60%NaH206mg(5.14mmol)で処理し、5,6−アンヒドロ−1,2−O−イソプロピリデン−3−デオキシ−3−フルオロ−α−L−イドフラノースに変換させた。
1H−NMR(CDCl3)δppm6.04(d,1H,H−1,J1,2=3.9Hz),4.96(dd,1H,H−3,J3,4=2.4Hz,J3,F=50.3Hz),4.71(dd,1H,H−2,J1,2=3.9Hz,J2,F=11.2Hz),3.89(ddd,1H,H−4,J3,4=2.4Hz,J4,5=5.9,J4,F=30.3Hz),3.22(1H,ddd,H−5,J4,5=5.9Hz,J5,6a=4.4Hz,J5,6b=2.9Hz),2.88(t,1H,H−6a,J=4.4Hz),2.71(dd,1H,H−6b,J5,6b=2.9Hz,J6a,b=4.9Hz),1.47,1.33(s,each 3H,ipr)。
5,6−アンヒドロ−1,2−O−イソプロピリデン−3−デオキシ−3−フルオロ−α−L−イドフラノース3.82g(18.7mmol)をMeOH90mlに溶解し、チオ尿素1.42g(18.7mmol)を加えて7時間還流した。放冷後、溶媒を留去し、残渣をH2OとCHCl3で分配し、有機層をNa2SO4で乾燥した。溶媒留去し、5,6−アンヒドロ−1,2−O−イソプロピリデン−3−デオキシ−3−フルオロ−5−チオ−α−D−グルコフラノースの残渣(3.99g)を得た。また、同様の方法により、1,2−O−イソプロピリデン−3−デオキシ−3−フルオロ−5−O−メタンスルホニル−α−D−グルコフラノースのNaH処理により得られた5,6−アンヒドロ−1,2−O−イソプロピリデン−3−デオキシ−3−フルオロ−α−L−イドフラノース(未精製)より、5,6−アンヒドロ−1,2−O−イソプロピリデン−3−デオキシ−3−フルオロ−5−チオ−α−D−グルコフラノースの残渣(0.87g)を得た。合わせた残渣をAcOH:Ac2O=15ml:75mlに溶解し、酢酸カリウム3.46g(35.29mmol)を加えて20時間還流した。放冷後溶媒を留去し、酢酸エチルに懸濁し、不溶物をろ去した。ろ液をH2O×2,sat.NaHCO3,brineで洗浄し、Na2SO4乾燥後、減圧乾固し、シリカゲルカラム精製(220cc,15〜20%AcOEt(Hex中))を行い、5,6−ジ−S,O−アセチル−1,2−O−イソプロピリデン−5−チオ−α−D−グルコフラノース5.2g(16.13mmol)を収率73%で得た。
融点:88.9−90.4℃
元素分析値:C13H19O6SF
計算値C:48.44,H:5.94
分析値C:48.49,H:6.00
1H−NMR(CDCl3)δppm5.98(d,1H,H−1,J1,2=3.9Hz),4.96(dd,1H,H−3,J3,F=49.6Hz),4.68(dd,1H,H−2,J1,2=3.9Hz),4.46−4.37(m,3H,H−6a,H−6b,H−4),4.11(dt,1H,H−5),2.36(s,3H,Ac),2.06(s,3H,Ac),1.49(s,3H,ipr),1.33(s,3H,ipr)。
(3) メチル 3,5−ジ−O−ベンゾイル−2−デオ キシ−2−フルオロ−4−チオ−D−アラビノフラノー ス〔式[VIII],R 6 =R 7 =Bz,R 8 =Me〕の合成
5,6−ジ−S,O−アセチル−1,2−O−イソプロピリデン−5−チオ−α−D−グルコフラノース100mg(0.31mmol)を90%トリフルオロ酢酸(1.5ml)に溶解し、0℃で4時間撹拌した。酢酸エチルで希釈し、有機層をH2O×3,sat.NaHCO3×2,brineで洗浄し、Na2SO4乾燥後、溶媒留去した。この残渣をMeOH0.8mlに溶解し、NaIO458.4mg(0.27mmol)のH2Oの溶液0.8mlを室温で加え、反応終了後グリセリンを加えて30分撹拌し、反応を停止した。不溶物をろ去し、ろ液を減圧乾固後、H2O×3/CHCl3で分配し、有機層をbrineで洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒留去し、残渣を5%HCl/MeOH2mlに溶解し、4時間還流した。NaHCO3で中和後、不溶物をろ去、溶媒留去をした。残渣をピリジン2mlに溶解し、BzCl150μl(1.29mmol)を0℃で加え、室温で2.5時間撹拌した。sat.NaHCO3で反応を停止後、CHCl3で抽出し、有機層を0.5N HCl,sat.NaHCO3,brineで洗浄し、Na2SO4で乾燥した。減圧乾固し、フラッシュシリカゲルカラム精製(15cc,5%AcOEt(Hex中))を行い、α及びβアノマーをそれぞれ28mg、24.5mg、更にアノマーの混合物として13.1mg(total54%)の目的物を得た。
(αアノマー)
1H−NMR(CDCl3)δppm8.03−7.99(4H,m,Bz),7.60−7.35(6H,m,Bz),5.77(1H,dt,H−1),5.28(1H,dd,H−2,J2,F=48.3Hz),5.24(1H,d,H−3,J2,3=2.0Hz),4.61−4.47(2H,m,H−5a,5b),4.05(1H,dt,H−4),3.42(3H,s,OMe)。
(βアノマー)
1H−NMR(CDCl3)δppm8.04−8.02(4H,m,Bz),7.59−7.31(6H,m,Bz),6.09(1H,dt,H−1,J1,2=3.9Hz),5.35(1H,ddd,H−2,J2,F=51.5Hz),4.96(1H,d,H−3),4.57(2H,ddd,H−5a,5b,J5a,b=11.2Hz,J5a,4=J4,5b=6.4Hz),3.69(1H,dt,H−4,J4,5a=J4,5b=6.4Hz),3.43(3H,s,OMe)。
(4) 1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ −β−D−アラビノフラノシル)シトシン〔式[I],R =H〕の合成
メチル 3,5−ジ−O−ベンゾイル−2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−α−及び−β−D−アラビノフラノース24.2mg(0.062mmol)をAcOH:Ac2O=2ml:2mlに溶解し、濃硫酸0.25mlを0℃で加え、室温で1時間撹拌した。NaOAc4.5gで中和した後、CH2Cl2とH2Oで分配し、有機層をNa2SO4で乾燥した。溶媒留去後シリカゲルカラム精製(10cc 10%AcOEt(Hex中))を行い、23.5mg(0.056mmol)、収率91%で1−O−アセチル−3,5−ジ−O−ベンゾイル−2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−D−アラビノフラノースをα、βアノマーの混合物として得た。
1H−NMR(CDCl3)δppm8.06−7.94(m,4H,Bz),7.62−7.30(m,6H,Bz),6.24(dd,0.42H,H−1α,J1,2=2.0Hz,J1,F=14.2Hz),6.18(d,0.58H,H−1β,J1,2=4.4Hz),6.08(ddd,0.58H,H−3β,J3,4=7.3Hz,J2,3=9.3Hz,J3,F=11.7Hz),5.85(dt,0.42H,H−3α,J2,3=J3,4=3.9Hz,J3,F=12.2Hz),5.39(ddd,0.42H,H−2α,J1,2=2.0Hz,J2,3=3.9Hz,J2,F=47.9Hz),5.31(ddd,0.58H,H−2β,J1,2=4.4Hz,J2,3=9.3Hz,J2,F=50.8Hz),4.69(dd,0.58H,H−5βa,J4,5a=6.4Hz,J5a,b=11.2Hz),4.55(dd,0.42H,H−5αa,J4,5a=7.8Hz,J5a,b=11.7Hz),4.49(dd,0.58H,H5βb,J4,5b=6.4,J5a,b=11.2Hz),4.47(dd,0.42H,H−5αb,J4,5b=1.5Hz,J5a,b=11.7Hz),4.11(ddd,0.42H,H−4α,J3,4=4.4Hz,J4,5a=7.8Hz,J4,5b=1.5Hz),3.74(q,0.58H,H−4β,J3,4=J4,5a=J4,5b=6.4Hz),2.12,2.11(s,total3H,Ac)。
1−O−アセチル−3,5−ジ−O−ベンゾイル−2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−D−アラビノフラノース150mg(0.358mmol)をCH2Cl21.5mlに溶解し、30%HBr酢酸0.3mlを加えて室温で20分間撹拌した。氷水15mlを加えて反応を停止し、CH2Cl2で抽出した。有機層をsat.NaHCO3、氷水で洗浄し、Na2SO4乾燥した。30℃以下で減圧乾固し、1−ブロモ体をオイルとして得た。この1−ブロモ体を、CH2Cl22mlを用いてシリル化したアセチルシトシン〔アセチルシトシン82.3mg(0.538mmol)をジクロロエタン2.5mlに溶解し、BSA267μl(1.08mmol)を加え、3時間還流した後、濃縮乾固することにより調製〕中に加え、80℃、4mmHg以下の減圧下で5時間グリコシル化を行った。CHCl3に懸濁させ、未反応の塩基をろ去し、ろ液を濃縮したものをMeOH:NH4OH=3ml:3mlに溶解し、一晩撹拌した。溶媒を留去し、フラッシュシリカゲルカラム精製(20cc,CHCl3:MeOH=10:1〜3:1)し、1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシン59.3mg(0.227mmol)、収率63.4%をβアノマーとαアノマーの混合物として得た。HPLC(YMC A−312,275nm,5%CH3CN(50mM TEAA中))により、β/αの生成比は5.02であった。この混合体を合成例1と同様にしてβアノマーとαアノマーを分離した。
試験例1:培養細胞の増殖阻害活性(イン・ビトロ試験)
(方法)
96穴プレートにサンプル溶液あるいはMEM−ハンクス培地10μlをあらかじめ入れておき、対数増殖期の細胞を5000細胞/90μl/ウェルとなるように10%牛胎児血清添加RPMI1640培地で希釈後播種し、37℃で3日間炭酸ガスインキュベーター中で培養した。培養終了後、各ウェルに10μlのMTT溶液(5mg/ml(PBS中))を加え、更に37℃で4時間炭酸ガスインキュベーター中で培養した。培養終了後、各ウェルに100μlの0.02N塩酸/50%ジメチルホルムアミド/20%SDSを加え、撹拌して生成したホルマザンを溶解し、マイクロプレートリーダー(東ソーMPR4Ai)により、570nm(試験波長)、690nm(参照波長)における吸光度を測定した。50%阻止率を示すサンプル濃度(IC50)をプロビット法によりコンピューターソフトを用いて算出した。
なお、試験サンプルは10mg/mlとなるようにジメチルスルホキシドに溶解後4℃で保存し、これをMEM−ハンクス培地で希釈して試験に供した。
(結果)
本発明の化合物の試験結果を表1に示す。なお、CCRF−HSB−2はヒト白血病細胞、KBはヒト鼻咽腔癌細胞、MKN−45とMKN−28はヒト胃癌細胞をそれぞれ示す。
Figure 0003657008
試験例2:マウス肉腫S−180に対するインビボ抗腫瘍効果
(方法)
S−180マウス肉腫細胞をICRマウスの腹腔内で継代した。移植6〜7日目の腹部の膨らんだマウスを選び、腹水を採取し、滅菌PBSで5x107細胞/mlになるように希釈し、調製した細胞懸濁液を5週齢、雌性のICRマウスの体側皮下にマウス当たり0.1ml(5×106細胞)ずつ移植した。サンプルを生理食塩水に溶解し、移植3日後から1日1回10日間マウスの体重10g当たり0.1mlの量で静脈内投与した。対照群には用いたビヒクルを投与した。
移植4週間後に腫瘍を摘出して重量を測定し、投与群の腫瘍の重量を対照群の重量と比較することにより抗腫瘍効果を評価した。
(結果)
測定結果を表2に示す。
Figure 0003657008
試験例3:ヒト大腸癌細胞株SW−48に対するインビボ抗腫瘍効果(1)
(方法)
SW−48細胞を10%牛胎児血清を含むRPMI1640培地中で培養し、対数増殖期にハーベストして、1x107細胞/マウスとなるように5週齢の雌のBALB/cヌードマウスの体側皮下に移植した。サンプルを生理食塩水に溶解後、移植7日目から1日1回10日間(qd x 10)マウスに静脈内投与した。対照群には用いたビヒクル(vehicle)を投与した。
1週2回マウスの腫瘍の大きさを測定し、腫瘍の体積を下記式に従って算出した。サンプル投与群の腫瘍の増殖曲線と対照群の腫瘍の増殖曲線とを比較することで抗腫瘍効果を評価した。
Figure 0003657008
(結果)
測定結果を図1に示す。なお、図中、Thio−FACは本発明の化合物を、5−FUは5−フルオロウラシルを、およびFurtulonはフルツロンを示す。
試験例4:ヒト大腸癌細胞株SW−48に対するインビボ抗腫瘍効果(2)
(方法)
SW−48細胞を10%牛胎児血清を含むRPMI1640培地中で培養し、対数増殖期にハーベストして、1x107細胞/マウスとなるように5週齢の雌のBALB/cヌードマウスの体側皮下に移植した。サンプルを0.5%カルボキシメチルセルロース含有生理食塩水に溶解または懸濁後、移植7日目から連日10回または3日毎に4回経口投与した。対照群には用いたビヒクルを投与した。
1週2回マウスの腫瘍の大きさを測定し、腫瘍の体積を上記式に従って算出した。サンプル投与群の腫瘍の増殖曲線と対照群の腫瘍の増殖曲線とを比較することで抗腫瘍効果を評価した。
(結果)
測定結果を図2に示す。なお、図中、Thio−FACは本発明の化合物を、およびFurtulonはフルツロンを示す。
製剤例1:錠剤
本発明の化合物 30.0mg
微粉末セルロース 25.0mg
乳糖 39.5mg
スターチ 40.0mg
タルク 5.0mg
ステアリン酸マグネシム 0.5mg
上記組成から常法によって錠剤を調製する。
製剤例2:カプセル剤
本発明の化合物 30.0mg
乳糖 40.0mg
スターチ 15.0mg
タルク 5.0mg
上記組成から常法によってカプセル剤を調製する。
製剤例3:注射剤
本発明の化合物 30.0mg
グルコース 100.0mg
上記組成を注射用精製水に溶解して注射剤を調製する。
産業上の利用可能性
本発明の化合物は、優れた抗腫瘍作用を有し、医薬品としての開発が期待されるものである。また、本発明の製造方法は、安価な物質を原料とし、工程数が少なく、簡単な操作で実施することができ、極めて実用的なものである。

Claims (3)

  1. 式[I]で表される1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシン:
    Figure 0003657008
    (式中、Rは水素原子またはリン酸残基を示す。)
  2. 請求項1記載の化合物を有効成分として含有する医薬組成物。
  3. 抗腫瘍剤として使用する請求項2記載の医薬組成物。
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