JP3656388B2 - 車両挙動制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両挙動制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両の挙動制御装置としては、例えば特開平7−89427号公報(文献1)に記載されているように、各輪個別の自動ブレーキにより車両水平面挙動(例えばヨーレート)を目標通りのものとなるよう制御するようにした構成のものが知られている。また、例えば特開平5−262213号公報(文献2)のよるものも知られている。
【0003】
車両挙動を制御するに際しては例えば、車両挙動を検出する挙動センサからの出力、つまり挙動検出値と、車速および操舵角から求めた挙動目標値との間の偏差が減少するよう、つまり実挙動が挙動目標値に一致するよう、左右輪制動力差により車両を挙動制御することが考えられる。
こうした制御装置では、制御対象車輪のブレーキ液圧制御により車両挙動を制御可能である。
【0004】
ところで、ブレーキ液圧制御により挙動制御を行う場合は、液圧を検出する圧力センサを使用して制御に必要な所要の圧力情報を検出することができる。例えば、前掲文献1では、マスターシリンダ液圧を検出する圧力センサが利用される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかして、次のような面から考察すると、圧力センサに関して、以下のごとくの点が指摘できる。
【0006】
(イ)検出対象となる圧力に比較的大きな脈動を伴うような場合、これが圧力センサによって検出される。
例えば、図2は、後記本発明実施例でも参照される図であるが、自動ブレーキによる左右制動力差で車両のヨーレートを制御する車両挙動制御での予圧制御をも行う制御態様の場合、同図中左部に示すようなプリチャージ圧の脈動分(ノイズ分)も圧力センサにより検出される。
このため、フィルタを設けて脈動分を除去することが考えられるが、しかし、フィルタのあまり強くないものでは、脈動の多い(ノイズ成分の多い)圧の検出のような場面では不十分で、検出圧力値に対するその脈動分の変動はとり除きにくく、依然としてその影響は大きく、耐ノイズ性が問題となる。
【0007】
(ロ)一方、このような不利を避けるためには、大きな脈動の多い場合であってもこれを十分に除去しうるよう、そのフィルタの強いものを使用すると良いが、しかし、これだと、かかる圧力センサの検出値などの応答性の問題が生ずることとなる。
すなわち、フィルタ特性があまりに強いと、上記脈動除去の狙いには適応できても、例えば、自動ブレーキによってブレーキ圧力を制御して実行させる車両挙動制御に対し、当該圧力センサの検出圧力値を、それぞれの制御タイミングでの圧力状態を監視するための制御情報(制御変数)としても用いるような場合にあっては、応答性の面で対応しにくくなる。特に、例えば、当該制御中に、ドライバがブレーキぺダルを踏み込んで制動の意思をみせたような場面(なかんずく、該ぺダルを急激に踏み込んだ急ブレーキの場面)を考慮すると、この場合、そのときのマスターシリンダ液圧(M/C圧)の上昇状態を圧力センサで迅速かつ正確に検知することができれば、かかる車両挙動制御状態をドライバの上記の制動意思による通常ブレーキング状態へとすばやく移行させる等の適切な制御切り換えなどができるが、こうした制御などのため、そのフィルタの強い(フィルタ時定数の大きい)圧力センサ検出値が用いられることとなるような場合には、そのフィルタが強い分、実際の圧力(M/C圧)の変化がその圧力情報値に反映しにくくなる。結果、制御遅れなども生じやすく、この意味でも応答性は確保しにくくなる。したがって、この点からは、圧力センサのフィルタ特性は、応答性に関し、その低下をもたらすような大きな影響を与えないように、弱い方が望ましいが、これだと、既述した上記(イ)の点からの耐ノイズ性の問題が生ずることとなる。
よって、上記(イ),(ロ)の点の不利をともに解消してそれを実現することはなしがたく、耐ノイズ性と応答性との双方の両立は困難である。
【0008】
本発明は、このような考察に基づき、また以下に述べる考察にも基づき、これらの点から改良、改善を加えようとするものであり、たとえ、検出対象となる圧力に比較的大きな脈動を伴うようなノイズ成分の多い場合の圧力検出であっても上記(イ),(ロ)のような不利を回避し得て、応答性の向上を図りつつ、耐ノイズ性の向上を図れ、耐ノイズ性と応答性の両立を図ることを可能ならしめようというものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によって、下記の車両挙動制御装置が提供される。
本発明は、制御対象車輪のブレーキ液圧制御により車両挙動を制御可能な制御装置であって、
少なくとも、ブレーキぺダル踏み込み操作時に該操作に応じた対応操作圧を導くことができる液路部分で、かつブレーキ液圧制御の場合には制御用液圧発生の用に供する圧液をポンプの吸入側へ供給することのできる液路部分による第1の液路系と、
該第1の液路系に生ずる圧力を検出する圧力検出手段と、
該圧力検出手段による検出値に対しフィルタを施すフィルタ手段と、
前記ブレーキ液圧制御による車両挙動制御中、前記圧力検出手段の検出圧力レベルに応じて、該フィルタ手段によるフィルタの特性を、当該圧力レベルが小さいときは強くし、当該圧力レベルが大きいときは弱くするよう、変更する第1の変更手段とを
備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記ブレーキ液圧制御による車両挙動制御は、
前記ポンプを含む挙動制御用圧力源からの挙動制御圧による制御対象車輪の自動ブレーキにより左右制動力差を与えて、挙動検出値と挙動目標値との間の挙動偏差が減少するよう車両の挙動制御を行うブレーキ液圧制御である、
ことを特徴とするものである。
【0011】
また、前記ブレーキ液圧制御による車両挙動制御は、左右制動力差を与える挙動制御に先んじて制御対象車輪のブレーキ系に予圧を供給する予圧制御を含み、当該予圧制御の用に供するプリチャージ圧による液を前記ポンプの吸入側へ与えるのに、前記第1の液路系が用いられ、かつ、
該ポンプから当該第1の液路系側の方向に液をリリーフさせるリリーフ弁が設けられている、
ことを特徴とするものである。
【0012】
また、制御対象車輪のブレーキ液圧制御により車両挙動を制御可能な制御装置であって、
少なくとも、ブレーキぺダル踏み込み操作時に該操作に応じた対応操作圧を導くことができる液路部分で、かつブレーキ液圧制御の場合には制御用液圧発生の用に供する圧液をポンプの吸入側へ供給することのできる液路部分による第1の液路系と、
該第1の液路系に生ずる圧力を検出する圧力検出手段と、
該圧力検出手段による検出値に対しフィルタを施すフィルタ手段と、
前記ブレーキ液圧制御での減圧後、所定時間、該フィルタ手段によるフィルタの特性を強くするよう、変更する第2の変更手段とを
備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、前記第1の変更手段と前記第2の変更手段とを有する、
ことを特徴とするものである。
【0014】
また、前記減圧は、
前記ポンプを含む挙動制御用圧力源からの挙動制御圧による制御対象車輪の自動ブレーキにより左右制動力差を与えて、挙動検出値と挙動目標値との間の挙動偏差が減少するよう車両の挙動制御を行う、第1のブレーキ液圧制御における減圧制御を含むとともに、
前記第1の液路系を経て制御対象車輪へ伝えられるブレーキぺダル踏み込み対応操作圧によるブレーキ時のアンチスキッド制御のための、第2のブレーキ液圧制御における減圧制御を含み、
これらのいずれも対象として、当該いずれの減圧制御後も、前記第2の変更手段が、それぞれ所定時間の間、フィルタ特性の変更をする、
ことを特徴とするものである。
【0015】
また、前記フィルタの特性の変更は、前記第1のブレーキ液圧制御を対象とした減圧制御後所定時間の間のフィルタ特性の変更と、前記第2のブレーキ液圧制御を対象とした減圧制御後所定時間の間のフィルタ特性の変更とで、それぞれ、異なる特性に切り替える、
ことを特徴とするものである。
【0016】
また、前記第1のブレーキ液圧制御による車両挙動制御は、左右制動力差を与える挙動制御に先んじて制御対象車輪のブレーキ系に予圧を供給する予圧制御を含み、
当該予圧制御の用に供するプリチャージ圧による液を前記ポンプの吸入側へ与えるのに、前記第1の液路系が用いられ、かつ、
該ポンプから第1の液路系側の方向に液をリリーフさせるリリーフ弁が設けられているとともに、
該ポンプの吐出側と第1の液路系側との間で該リリーフ弁と並列になるように第2の液路系を有して、当該第2の液路系中に前記第2のブレーキ液圧制御の場合に開弁位置の切換え状態をとる電磁切換弁が設けられている、
ことを特徴とするものである。
【0017】
また、前記フィルタの特性の変更は、
フィルタ時定数の切り替えによる態様か、
または圧力検出値の加重平均、移動平均もしくはこれらに類するフィルタリング処理による態様かの、
いずれかの態様により、フィルタ特性の変更を行う、
ことを特徴とするものである。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、請求項1記載のごとく、制御装置は、制御対象車輪のブレーキ液圧制御により車両挙動を制御可能であって、その第1の液路系、圧力検出手段、フィルタ手段、および第1の変更手段のそれぞれを有して、ブレーキ液圧制御による車両挙動制御中、少なくとも、ブレーキぺダル踏み込み操作時に該操作に応じた対応操作圧を導くことができる液路部分で、かつブレーキ液圧制御の場合には制御用液圧発生の用に供する圧液をポンプの吸入側へ供給することのできる液路部分によるその第1の液路系に生ずる圧力を検出するその圧力検出手段の検出圧力レベルに応じて、圧力検出手段による検出値に対しフィルタを施すそのフィルタ手段によるフィルタの特性を、当該圧力レベルが小さいときは強くし、当該圧力レベルが大きいときは弱くするよう、変更する。
よって、かようにフィルタ特性を検出圧力レベルにより切り換えることができ、耐ノイズ性と応答性を両立でき、たとえ、検出対象となる圧力に比較的大きな脈動を伴うようなノイズ成分の多い場合の圧力検出であっても、既述の(イ),(ロ)のような不利を回避し得て、応答性の向上を図りつつ、耐ノイズ性の向上を図れ、耐ノイズ性と応答性の両立を図ることを可能ならしめる。したがって、前記ブレーキ液圧制御による車両挙動制御中、例えば、ドライバがブレーキぺダルを踏み込んでブレーキをかけるような制動場面でも、そのとき切換え制御が要求されることとなる切換弁等に対する切換えも大きな応答遅れなく制御し得て、その場面での車輪ホイールシリンダへの制動意思の伝達も適切に実現できる。
【0019】
また、本発明は、前記ブレーキ液圧制御による車両挙動制御は、これを、前記ポンプを含む挙動制御用圧力源からの挙動制御圧による制御対象車輪の自動ブレーキにより左右制動力差を与えて、挙動検出値と挙動目標値との間の挙動偏差が減少するよう車両の挙動制御を行うブレーキ液圧制御による構成として好適に実施でき、同様にして、上記と同様の効果を得られる(請求項2)。また、この場合、かかる自動ブレーキによる車両の挙動制御中に、ドライバが緊急回避のためブレーキぺダルを踏み込んで急ブレーキをかけたときも、これに十分に対応でき、その応答性の確保を確実なものにならしめる。
【0020】
また、前記ブレーキ液圧制御による車両挙動制御が、左右制動力差を与える挙動制御に先んじて制御対象車輪のブレーキ系に予圧を供給する予圧制御を含み、当該予圧制御の用に供するプリチャージ圧による液を前記ポンプの吸入側へ与えるのに、前記第1の液路系が用いられ、かつ、該ポンプから当該第1の液路系側の方向に液をリリーフさせるリリーフ弁が設けられている構成の場合に適用して、本発明は好適に実施でき、同様にして、上記と同様の効果を得られる(請求項3)。また、この場合において、その圧力検出手段は、そのプリチャージ圧を検出対象とすることができ、よって、プリチャージ作動確認や予圧作動の確認等のために用いることができるとともに、そのときの耐ノイズ性の向上も図られている結果、ポンプ脈動、あるいはリリーフ弁作動による脈動があって、ノイズ成分の多いときでさえも、その正確な作動確認等を可能ならしめる。
【0021】
また、本発明は、請求項4記載のごとく、前記第1の変更手段に代え、その第2の変更手段を有して、ブレーキ液圧制御での減圧後、所定時間、該フィルタ手段によるフィルタの特性を強くするよう、変更することで、減圧後の脈動に対応可能にすることができ、耐ノイズ性の向上を図ることができる。したがって、例えば、減圧制御を行った後は、制御対象車輪のブレーキ系のアキュムレータ(リザーバ)にたまった液をポンプで吐出するためにポンプ脈動がその圧力検出手段により検出される場合でも、減圧制御が入った後、所定時間はフィルタ特性をかように切り替えることができるため、耐ノイズ性を向上させることができる。
さらにまた、本発明は、前記第1の変更手段と前記第2の変更手段とを有する構成として好適に実施でき(請求項5)、このようにすると、両手段による作用効果が得られる結果、前述のごとくにその圧力検出手段のフィルタ特性を検出圧力レベルにより切り換えることで耐ノイズ性と応答性を両立できる上、さらに、減圧後所定時間は、斯くフィルタ特性を変更することで、さらなる耐ノイズ性の向上が可能となる。
【0022】
また、前記減圧は、前記ポンプを含む挙動制御用圧力源からの挙動制御圧による制御対象車輪の自動ブレーキにより左右制動力差を与えて、挙動検出値と挙動目標値との間の挙動偏差が減少するよう車両の挙動制御を行う、第1のブレーキ液圧制御における減圧制御を含むとともに、前記第1の液路系を経て制御対象車輪へ伝えられるブレーキぺダル踏み込み対応操作圧によるブレーキ時のアンチスキッド制御のための、第2のブレーキ液圧制御における減圧制御を含み、これらのいずれも対象として、当該いずれの減圧制御後も、前記第2の変更手段が、それぞれ所定時間の間、フィルタ特性の変更をする、構成として、本発明は好適に実施でき、同様にして、上記と同様の効果を得られる(請求項6)。また、この場合、かかる自動ブレーキによる車両の挙動制御、アンチスキッド制御共に、減圧制御が入った後、所定時間はフィルタ特性を強くするよう切り替えることができるため、いずれの場合も、減圧後のポンプ駆動を伴うときのそのポンプ脈動に起因するノイズ成分に対する耐ノイズ性を向上させることができる。
【0023】
また、この場合において、本発明に従えば、さらに、前記フィルタの特性の変更は、前記第1のブレーキ液圧制御を対象とした減圧制御後所定時間の間のフィルタ特性の変更と、前記第2のブレーキ液圧制御を対象とした減圧制御後所定時間の間のフィルタ特性の変更とで、それぞれ、異なる特性に切り替えるよう構成して好適に実施でき(請求項7)、このようにすると、上記効果に加えて、第1のブレーキ液圧制御中と第2のブレーキ液圧制御中とで液路が異なる場合に適用して効果的なものが提供でき、したがって、アンチスキッド制御中と自動ブレーキによる車両挙動制御中とで液路が異なる場合に、それぞれに合わせた、減圧後所定時間の間のフィルタの強さに設定できることから、一層適切なフィルタ特性とすることが可能となる。
【0024】
また、この場合、前記第1のブレーキ液圧制御による車両挙動制御が、左右制動力差を与える挙動制御に先んじて制御対象車輪のブレーキ系に予圧を供給する予圧制御を含み、当該予圧制御の用に供するプリチャージ圧による液を前記ポンプの吸入側へ与えるのに、前記第1の液路系が用いられ、かつ、該ポンプから第1の液路系側の方向に液をリリーフさせるリリーフ弁が設けられているとともに、該ポンプの吐出側と第1の液路系側との間で該リリーフ弁と並列になるように第2の液路系を有して、当該第2の液路系中に前記第2のブレーキ液圧制御の場合に開弁位置の切換え状態をとる電磁切換弁が設けられている構成の場合に適用して、本発明は好適に実施でき、同様にして、上記と同様の効果を得られる(請求項8)。また、この場合において、その圧力検出手段は、そのプリチャージ圧を検出対象とすることができ、よって、請求項3記載での態様と同じようにして、作動確認等のために用いることができるとともに、その減圧後の脈動に対する耐ノイズ性の向上も図ることができ、そのときのポンプ脈動やリリーフ弁作動による脈動によるノイズ成分の多いときには、そのアンチスキッド制御での場合に比し、フィルタ特性を強めの変更とすることで耐ノイズ性を確保し、他方、アンチスキッド制御での減圧後所定時間の間のフィルタ特性の変更は、かかるリリーフ弁作動がない分、それほどは強めない態様でのフィルタ特性の強めの変更ですみ、適切なフィルタ特性の設定が可能となる。
【0025】
また、本発明は、前記フィルタの特性の変更は、請求項9記載のごとくのフィルタ時定数の切り替え、フィルタリング処理の態様のいずれでも実施できるものである。この場合に、フィルタリング処理のときは、圧力検出値の加重平均や移動平均等、例えば適用するシステム、圧力センサの取る付け位置などに合わせて、最適な平均値処理による演算処理を容易に導入して、プログラム処理で実施できる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施の形態になる車両の挙動制御装置を示すシステム図である。本実施の形態において挙動制御装置は、自動ブレーキによる左右制動力差で車両のヨーレートを制御するものとし、また、ここでは、車両挙動制御装置用予圧制御をも行うものとする。なお、これに加えて、本実施の形態においては、ドライバによるブレーキペダル踏み込みでのブレーキングの際に、アンチスキッド制御(ABS)も可能である。
【0027】
図1において、11FL,11FRはそれぞれ、挙動制御に際して自動ブレーキにより制動すべき左右の車輪で、例えば左前輪および右前輪を示す。これら車輪は、該自動ブレーキをも含め、ABS制御の場合も、個々に制動制御され得るもので、したがって、それぞれ左右独立して制御可能な制御対象車輪である。
【0028】
12はブレーキマスターシリンダで、ブレーキペダル13の踏み込みにより、リザーバタンク14内のブレーキ液をブレーキペダル踏力に応じたマスターシリンダ液圧Pm にして出力するものとする。
マスターシリンダ液圧Pm は、ブレーキマスターシリンダ12の出力ポートとプリチャージシリンダ(プリチャーピストンジシリンダ;P/P)15間の比較的に長い配管To(チューブ)を通じて、該プリチャージシリンダ15のマスターシリンダ液圧ポート15aに供給することができる。
【0029】
ここに、当該プリチャージシリンダ15はリターンスプリング15bにより弾支されたピストン15cを有するもので、ピストン15cの図示する常態位置でマスターシリンダ液圧ポート15aをピストン連通孔15dにより出力ポート15eに通じさせるよう構成する。
【0030】
プリチャージシリンダ15には更に、ピストン連通孔15dが開口するシリンダ室とは反対側のシリンダ室に開口させてプリチャージ圧ポート15fを穿設し、当該ポートからの後述するプリチャージ圧Pprでピストン15cがリターンスプリング15bに抗し左行される時にピストン連通孔15dを塞ぐフリーピストン15gをバネ15hにより浮動支持して設ける。
【0031】
リザーバタンク14とプリチャージ圧ポート15fと間に、プリチャージポンプ16、リリーフ弁17およびオリフィス18の相互並列回路として構成したプリチャージ圧源を接続して設け、プリチャージポンプ16を、後述のごとくにON,OFF制御されるモータ16aにより適宜駆動する。
【0032】
プリチャージシリンダ15の出力ポート15eには、一方で、液路(油路)L1を通じ、常開の電磁式マスターシリンダ液圧選択弁19を介して前輪ブレーキ液圧回路20を接続し、他方で、液路L1から分岐した液路(油路)L2を通じ、常閉の電磁式プリチャージ圧選択弁21を介して挙動制御圧ポンプ22の吸入ポートを接続する。
【0033】
ここに、液路L1は、ドライバのブレーキぺダル13の踏み込みによる通常ブレーキング時にはマスターシリンダ液圧Pm が作用するマスターシリンダ液圧路であり、また、自動ブレーキによる挙動制御では、当該液路L1,L2の系を通してプリチャージ圧Pprの作用する部分でもある。
したがって、当該液路部分は、ブレーキぺダル13踏み込み操作時に該操作に応じたマスターシリンダ液圧Pm を導くことができる部分で、かつ、本例では、自動ブレーキのブレーキ液圧制御による挙動制御の場合には制御用液圧発生の用に供する液(Ppr圧液)を挙動制御圧ポンプ22の吸入側へ供給することのできる部分である。
【0034】
なお、挙動制御圧ポンプ22は、後述するように挙動制御に際して左右前輪11FL,11FRへ向かう挙動制御用のブレーキ液圧を発生するためのもので、挙動制御用圧力源を構成するが、このポンプ22は、後述のごとくにON,OFF制御されるモータ22aにより適宜駆動する。
【0035】
なお、挙動制御圧ポンプ22の吐出ポートはリリーフ弁23を介してプリチャージシリンダ15の出力ポート15eに通じさせるとともに、前輪ブレーキ液圧回路20に接続する。ここに、リリーフ弁23は、電磁式マスターシリンダ液圧選択弁19と並列に設けられ、挙動制御圧ポンプ22からプリチャージシリンダ15の方向に液をリリーフするよう、該ポンプ22の吐出ポートと液路L2(液路L1,L2系)との間に接続されている。
【0036】
前輪ブレーキ液圧回路20から左右前輪11FL,11FRのホイールシリンダ24FL,24FRへ向かう左右前輪ブレーキ液圧回路20FL,20FR中にはそれぞれ、常開の電磁式増圧弁25FL,25FRを挿置し、これら増圧弁25FL,25FRとホイールシリンダ24FL,24FRとの間において左右前輪ブレーキ液圧回路20FL,20FRより分岐する減圧回路26FL,26FR中にそれぞれ、常閉の電磁式減圧弁27FL,27FRを挿置する。
そして、減圧回路26FL,26FRはそれぞれ共通なアキュムレータ28(リザーバ)に接続するとともに、同じく共通な逆止弁29を経て挙動制御圧ポンプ22の吸入ポートに接続する。
【0037】
増圧弁25FL,25FRは、入力圧(ポンプ22からの挙動制御圧)を、対応する左右前輪ホイールシリンダ24FL,24FRへ供給してその内圧(予圧、自動ブレーキ圧)を上昇させ、減圧弁27FL,27FRはそれぞれ、ホイールシリンダ24FL,24FRの内圧(予圧、自動ブレーキ圧)を減圧回路26FL,26FRより排除して低下させるもので、従ってこれら増減圧弁は、それぞれのブレーキ系における内圧を調整する調圧手段を構成する。
【0038】
マスターシリンダ液圧選択弁19に並列に配して、ブレーキ液圧の抜け方向に対し逆止機能を果たす逆止弁30を設けるとともに、増圧弁25FL,25FRに並列に配して、ブレーキ液圧の入り方向に対し逆止機能を果たす逆止弁31,32を設け、これらにより対応する弁が閉じたままの状態でスティックした場合における安全保障を行う。
【0039】
プリチャージポンプ16のモータ16a、および挙動制御圧ポンプ22のモータ22a、またマスターシリンダ液圧選択弁19およびプリチャージ圧選択弁21、更に増圧弁25FL,25FRおよび減圧弁27FL,27FRのON,OFFは、コントローラ41によりこれらを制御して所定の挙動(ヨーレート)制御を行うこととし、
当該制御のためにコントローラ41には、車両の発生ヨーレートγS を検出するヨーレートセンサ(挙動センサ)42からの信号と、車速VSPを検出する車速センサ43からの信号と、エンジンスロットル開度TVOを検出するスロットル開度センサ44からの信号とをそれぞれ入力するとともに、ブレーキ液温度Kを検出する温度センサ45からの信号等を入力する。また、例えば、4チャネルABS制御も実行するときは、前後左右4輪の各車輪速センサ(不図示)からの信号をコントローラ41に入力することができる。
【0040】
また、コントローラ41には、圧力を検出する圧力センサ50からの信号を入力する。
圧力センサ50は、図示例では、上述した液路L1,L2の系に接続されており、該液路系に生ずる圧力を検出する(なお、圧力センサ50の接続箇所は、分岐液路L2部分であってもよい)。
【0041】
圧力センサ50は、これにより、ブレーキぺダル13踏み込み操作時のマスターシリンダ液圧Pm を検出することができ、また、自動ブレーキの挙動制御の場合には液路L1,L2上のプリチャージ圧Pprを検出することができ、その検出値は圧力検出情報としてコントローラ41に入力される。したがって、ドライバによるブレーキング時(ABS制御を含む)のブレーキぺダル操作対応圧としてのマスターシリンダ液圧Pm をこれによってみることができとともに、また、ドライバによる非ブレーキング時の場合のプリチャージ圧Pprのチェックなどもこれによって行うことができる。
【0042】
例えば、プリチャージ作動の確認(プリチャージポンプ16等が正常に作動するかどうかの確認)を圧力センサ50からの入力検出値により行うことができ、あるいは、該圧力センサ自体の自己診断の用にも用いることができる。
【0043】
コントローラ41は、マイクロコンピュータを含んで構成され、A/D変換部を含む入力検出回路と、演算処理回路(CPU)と、該演算処理回路で実行される自動ブレーキによる挙動制御(アクティブ制御)ためのブレーキ液圧制御プログラム(ABS制御をも実行する場合にはABS制御プログラムを含む)およびその他の制御プログラム、並びに演算結果等を格納する記憶回路(RAM,ROM)と、マスターシリンダ液圧選択弁19、プリチャージ圧選択弁21、増圧弁25FL,25FR、減圧弁27FL,27FR、およびポンプモータ16a,22aに制御信号を出力する出力回路等から構成することができる。
なお、圧力センサ50からの入力情報により、プリチャージ作動確認処理や圧力センサ自己診断処理を行うには、これらの処理プログラムも記憶回路に格納しておけばよい。
【0044】
コントローラ41は、上述した圧力センサ50からの情報を含む各種入力情報を用い、通常ブレーキング時、およびブレーキ液圧制御時、本液圧ブレーキシステムを以下のごとくに制御することができる。
【0045】
〔通常ブレーキ〕
コントローラ41は、プリチャージポンプ16のモータ16a、および挙動制御圧ポンプ22のモータ22a、またマスターシリンダ液圧選択弁19およびプリチャージ圧選択弁21、更に増圧弁25FL,25FRおよび減圧弁27FL,27FRを全てOFFする。
【0046】
よって、プリチャージポンプ16からのプリチャージ圧Pprが発生しないためにプリチャージシリンダ15がピストン15cを図示位置にされており、マスターシリンダ液圧ポート15aを出力ポート15eに通じさせ、
プリチャージ圧選択弁21、および減圧弁27FL,27FRが閉弁状態にされており、
マスターシリンダ液圧選択弁19および増圧弁25FL,25FRが開弁状態にされている。
【0047】
ここで、ドライバがブレーキペダル13を踏み込んでマスターシリンダ液圧Pm を発生させると、このマスターシリンダ液圧Pm が、ブレーキマスターシリンダ12の出力ポート→配管To→プリチャージシリンダ15のポート15a→ピストン連通孔15dおよび出力ポート15e→液路L1を順次経てマスターシリンダ液圧選択弁19に至り、その後マスターシリンダ液圧Pm が、この弁19から増圧弁25FL,25FRを経てホイールシリンダ24FL,24FRに達することで、ドライバによる前2輪11FL,11FRのブレーキ操作を可能とする(後2輪系も、上記に準じその後輪液圧ブレーキ系によりブレーキ操作を可能であるのはいうまでもない)。
ここに、コントローラ41は、圧力センサ50の検出値により、上記液路部分に作用する圧(この場合は、マスターシリンダ液圧Pm )をみることができる。
【0048】
〔自動ブレーキによる挙動制御〕(アクティブ制御)
本ブレーキ液圧制御では、コントローラ41は、挙動制御圧ポンプ22を含む挙動制御用圧力源からの挙動制御圧による左右前輪11FL,11FRの自動ブレーキにより左右制動力差を与えて、ヨーレイト検出値γS と、車速VSPおよびスロットル開度TVOから算出したヨーレイト目標値γ0 との間のヨーレイト偏差Δγ(=γ0 −γS )が減少するよう車両の挙動制御を行うブレーキ液圧制御を実行するが、更には、その左右制動力差を与える挙動制御に先んじて左右前輪11FL,11FRのブレーキ系に予圧を供給する予圧制御をも実行する。
ここに、例えば、予圧指令値PTGになるよう予圧制御を行おうとするなら、この場合、該予圧制御を含んで、次のようにして本ブレーキ液圧制御を実行することができる。
【0049】
コントローラ41は、ヨーレート偏差Δγの絶対値|Δγ|が、あらかじめ定めた予圧制御開始用ヨーレート偏差設定値ΔγST以上で、予圧制御を行うべきと判定するとき、かかるタイミング(例えば、図2時刻t1)で、プリチャージポンプ16のモータ16a、および挙動制御圧ポンプ22のモータ22aをONして対応するポンプを駆動するとともに、マスターシリンダ液圧選択弁19およびプリチャージ圧選択弁21をONして、マスターシリンダ液圧選択弁19を閉じるとともにプリチャージ圧選択弁21を開弁させる。
これにより、液路L1と前輪ブレーキ液圧回路20間のマスターシリンダ液圧選択弁19による連通は、当該弁19の閉弁位置への切換えで遮断されて、以後、コントローラ41の制御の下、当該弁19に対する閉弁切換え指令がなされない限り、当該弁19は、確実にその閉弁状態に維持制御され、他方、プリチャージ圧選択弁21の開弁制御で、液路L1,L2部分の系は、ポンプ22吸入側と連通する。
【0050】
ポンプ16の駆動で発生したプリチャージ圧Pprはプリチャージシリンダ15のピストン15cをしてこれを図1の左方へストロークさせ、結果、ピストン連通孔15dをフリーピストン15hにより閉塞する。
その後、ピストン15cの更なる左行によりポート15eからプリチャージ圧Pprと同じ圧力(以下では便宜上、これも同じプリチャージ圧Pprと称する)が出力され、これが、プリチャージシリンダ15の出力ポート15e→液路L1→液路L2の経路でプリチャージ圧選択弁21を経て挙動制御圧ポンプ22の吸入ポートに供給される。
【0051】
これにより、モータ22aの上記したONにより駆動される挙動制御圧ポンプ22の吸入効率が高められ、ポンプ22は高応答で挙動制御用の圧力を吐出することができ、後述する挙動制御の応答性を向上させることができる。
したがって、プリチャージ圧Pprは、挙動制御圧ポンプ22に要求される吸入効率が達成されるのに必要な最小限の極く低い値とする。かくて、予圧制御の用に供するプリチャージ圧Pprによる液をポンプ22の吸入側へ与えるのに、液路L1,L2の液路系が用いられる。
ここに、コントローラ41は、圧力センサ50の検出値により、上記液路部分に作用する圧(この場合は、プリチャージ圧Ppr)をみることができる。
【0052】
ポンプ22からの吐出される挙動制御圧は増圧弁25FL,25FRに達し、コントローラ41は、車両の挙動(ヨーレート)制御前の当該予圧制御に際して、上記マスターシリンダ液圧選択弁19の閉弁による液路L1と液圧回路20との切り離し状態のもとで、左右前輪11FL,11FRの対応増圧弁25FL,25FRをOFFして開き、同じ側の対応減圧弁27FL,27FRをOFFして閉じることで対応ホイールシリンダ24FL,24FR内をポンプ22による加圧制御圧下、圧力上昇させる増圧によって、また、逆に、対応増圧弁25FL,25FRをONして閉じ、同じ側の対応減圧弁27FL,27FRをONして開くことで対応ホイールシリンダ24FL,24FR内の圧力を対応減圧回路26FL,26FRより排除して圧力低下させる減圧によって、これらの繰り返しにより、左右前輪のホイールシリンダ24FL,24FRを含むブレーキ系を予圧指令値PTGとなるよう予圧制御することができる。
【0053】
しかして、かかる予圧下、コントローラ41は、ヨーレート偏差Δγの絶対値|Δγ|が、あらかじめ定めた挙動制御開始用ヨーレート偏差設定値ΔγVDC (ΔγVDC >ΔγST)以上であるかどうかについてのチェックをも並行して実行し、それ以上と判定すると、したがって、左右制動力差を与えるべき挙動制御域であると判定すると、以下のごとくに、挙動制御を実行することができる。
ここに、例えば、制動力差につき、これを片側増圧により生成させるものとすれば、コントローラ41は、そのための挙動(ヨーレート)制御に際して制動すべき一方側前輪の増圧弁25FLまたは25FRをOFFして開き、当該一方側前輪の減圧弁27FLまたは27FRをOFFして閉じるよう制御する。
【0054】
これにより、制動すべき当該一方側前輪のホイールシリンダ24FLまたは24FR内がポンプ22からの挙動制御圧を供給されて、予圧値から増圧される増圧制御が実行される。ここに、反対側前輪のホイールシリンダ24FRまたは24FLは、上記予圧制御を継続されているため、相変わらず予圧値のままで制動力を発生するに至らない。
よって、車両は左右制動力差を付与されてこれに伴うヨーモーメントを与えられ、車両挙動(ヨーレート)を目標値γ0 に近づけることができる。
【0055】
コントローラ41は、また、車両挙動(ヨーレート)が目標値γ0 に近づいて前記のヨーレート偏差Δγの絶対値|Δγ|が挙動制御開始用ヨーレート偏差設定値ΔγVDC 未満に収まる領域に入ると、上記により制動されていた一方側前輪の増圧弁25FLまたは25FRをONして閉じると同時に、当該一方側前輪の対応減圧回路26FLまたは26FRの減圧弁27FLまたは27FRをONして開くよう制御することができる。
すなわち、この場合は、対応する側の前輪ホイールシリンダ24FLまたは24FR内を排圧して制動を解除するべく、対応減圧弁を開き、ホイールシリンダ→減圧弁→アキュムレータ(リザーバ)の経路で対応ホイールシリンダの液をアキュムレータ28へ抜いて減圧する減圧制御を実行する。
かくして、こうした増減圧制御により、ヨーレート偏差Δγを減少させるよう、目標の車両挙動となるようにブレーキ液圧制御により車両の挙動制御を行うことができる。
【0056】
〔圧力センサのフィルタ特性切り替え〕
コントローラ41は、更に、上記制御に加えて、圧力センサ50の検出出力に対し、フィルタを施すとともに、一定条件下で、圧力センサ50のフィルタ特性を変更する変更制御をも実行する。
ここでは、アクティブ制御中か否かおよび圧力レベルに応じて切り替える。すなわち、例えば上記〔自動ブレーキによる挙動制御〕のごとくに液路L1と前輪ブレーキ液圧回路20間のマスターシリンダ液圧選択弁19による連通を、当該弁の閉弁位置への切換え制御で切り離した状態で、マスターシリンダ12による系とは別個の制御用圧源を使用し動的な車両運動をそのブレーキ液圧制御でコントロールするアクティブ制御中(VDS作動中)か否かおよび圧力レベルに応じて、コントローラ41は、圧力センサ50のフィルタ特性を切り替えるよう制御する。
【0057】
これは、以下のような観点に基づくものである。
圧力センサ50は、この場合、液路L1,L2の系に作用するプリチャージ圧Pprを検出対象とすることができる。よって、既述のように、圧力センサ50からのコントローラ41への入力情報は、プリチャージ作動確認(したがってまた、挙動制御圧ポンプ22の吸入ポートへのプリチャージ圧液の供給、予圧作動の確認)等のために用いることができるものである。
【0058】
ところが、非ブレーキング時のアクティブ制御中、上記挙動制御圧ポンプ22の駆動による圧力変動が生じ、これが、例えば図2に示すような時刻t1以降での脈動の要因となる。
特に、本アクティブ制御モード時、液路L1,L2の系の部分やこれに連通する部分の容量は、全体としても小さく、したがって容量が小である分、わずかな圧力変動でも、液圧変化が生じやすいものとなる。
更にはまた、リリーフ弁23は、該ポンプ22の吐出ポート側から液路L1,L2の方向に液をリリーフするものであるが、これをも考慮すると、かかるリリーフ弁23の作動時にも、そのON,OFFが圧力変動の要因となる場面があり、結果、これが、液圧変化をより大きくする原因ともなる。
【0059】
上記のことから、アクティブ制御中、液路L1,L2上のプリチャージ圧Pprには、ノイズ成分としての脈動が乗り、図2に例示するごとく、真のプリチャージ圧Ppr(中央値)に対しかかるノイズが含まれた状態で、圧力センサ50により検出されることとなる。したがって、このままでは、例えば、プリチャージ作動確認等を行わせようという場合など、そういったチェックのための使用場面にあっては、脈動分の影響の大きい圧力センサ50の検出値を適用すると、正確な作動確認判断等を行いにくくなるなど、この場合に圧力センサ50をプリチャージ圧Ppr検出センサとして使用したいという、その本来の機能を満足させることができにくいものとなる。
【0060】
よって、耐ノイズ性の点からは、大きな脈動がたとえ重畳していても、これを十分に除去できるようなフィルタを使用する必要があるが、他方、適用するフィルタがノイズ除去に優れたフィルタ特性のものであると、本アクティブ制御中でも、ドライバがブレーキぺダル13を踏み込んでブレーキングをするという場面(例えば、図2時刻t2)もあることを考慮すれば、そのような制動意思(特に急ブレーキ時での制動意思)をみせたときに、強いフィルタであればあるほど、そのときのマスターシリンダ液圧(M/C圧)の立ち上がりの検出に対応しにくく、応答性の確保を図りにくくなる。
この場合、ブレーキぺダル踏み込みによるマスターシリンダ液圧がプリチャージ圧Pprより高くなると、当該マスターシリンダ液圧が、閉塞状態にあったプリチャージシリンダ15におけるフリーピストン15gとピストン連通孔15dとのその閉塞を解除し(プリチャージピストンシリンダP/Pの開放)、結果、液路L1,L2の系に作用するに至るものの、強いフィルタ特性のフィルタに起因して、圧力センサ50の検出値に基づくそのマスターシリンダ液圧の検出に応答遅れが生ずる分、これに基づくコントローラ41による上記マスターシリンダ液圧選択弁19の図1図示位置への復帰制御(開弁位置への切換え制御)など、切換えが必要とされる切換弁制御(該当する場合は左右増圧弁25FL,25FRの開成、左右減圧弁27FL,27FRも含む)も遅れ、車輪ホイールシリンダ24FL,24FRへの制動意思の伝達も、それだけ応答遅れが生ずることとなる。
【0061】
そこで、本例では、脈動の多い圧力レベルではフィルタを強く、脈動の少ない圧力レベルではフィルタを弱く、設定する。これがため、例えば、図3のように、フィルタ時定数Tを、検出圧力Pによって切り替えることで、上記のことを行うことができる。
図に例示の特性中、Pa、Pbは、圧力についての第1の所定値、および第2の所定値で、第1の所定値PaはプリチャージPpr対応圧値(真値相当値)であり、Ta、Tbは、それぞれに対応するフィルタ時定数設定値であって、図示に特性傾向に従い、第1の所定値Pa未満では大きな時定数Taとしてフィルタを強くすることができ、第2の所定値Pb以上の圧力レベルでは小さな時定数Tbとしてフィルタを弱くすることができる。
【0062】
なお、ここに、圧力レベルが大きい場合にフィルタの特性を弱く設定しても足りるとしたのは、アクティブ制御中であっても、マスターシリンダ液圧がプリチャージ圧Pprより高くなった場合、上記のごとくにプリチャージピストンシリンダ15(P/P)が開放されるので、前述したほどの大きなノイズ成分としての脈動は検出されないという着想による。すなわち、この場合は、圧力センサ50の設けられている液路L1,L2の系は、マスターシリンダ12と連通する。これがため、かかる状態では、圧力センサ50が接続している系は、比較的に長い配管To部分やマスターシリンダ12を含めたものとなる。したがって、前述のような容量小であるがゆえにわずかな圧力変動でも液圧変化が生じやすいといった状態とは異なった状態となっており、全体としての容量はその分増えて、したがってまた、ポンプ22の駆動によっても(リリーフ弁23のON,OFFがあっても)、その分脈動が小さくなるとの見地からである。
【0063】
コントローラ41は、こうしたフィルタの特性の変更をフィルタ時定数の切り替えで行うときは、例えば、圧力センサ50からの入力アナログ信号の段階で適用するフィルタをコントローラ41の入力検出回路に備えて、そのフィルタ時定数回路を圧力レベルに応じて切り替えるよう、時定数切り替え制御をもすることで、これを実行することができる(なお、この点は、後記の時定数切り替えの場合も、これに準ずる構成とすることができる)。
【0064】
かくして、圧力センサ50のフィルタ特性を、検出圧力レベルにより切り換えることで、耐ノイズ性と応答性を両立できる。既述の明細書冒頭の(イ),(ロ)の問題をともに解消でき、たとえ、アクティブ制御中で、検出対象となるプリチャージPprに比較的大きな脈動を伴うようなノイズ成分の多い場合の圧力検出であっても、それらの不利を回避し得て、応答性の向上を図りつつ、圧力センサ50をプリチャージ圧検出センサとして機能させる場合での前述した耐ノイズ性の向上をも図ることができ、他方、もし、アクティブ制御中に、ドライバが緊急回避のためブレーキぺダル13を踏み込んで来て急ブレーキをかけるような制動制御場面でも、これに十分に対応でき、コントローラ41によるマスターシリンダ液圧選択弁19の開弁位置への切換えも大きな応答遅れなく制御し得て、その場面での車輪ホイールシリンダ24FL,24FRへの制動意思の伝達も適切に実現できる。
【0065】
好ましくはまた、コントローラ41は、かかるフィルタ特性の変更は、これを圧力センサ50の圧力検出値に対する演算処理による態様によって行うことができる。
【0066】
図4は、ソフト的なフィルタリング処理の場合に適用できる、コントローラ41が実行する圧力センサ50のフィルタリング処理プログラムのフローチャートの一例である。本プログラムによる圧力センサのフィルタ特性の決定のためのルーチンは、一定時間ごとに実行される。
【0067】
同図において、ステップS101では、本ステップS101実行のつど、P=圧力センサ値により、圧力センサ50からの入力信号に基づく検出値を読み込む。続くステップS102において、本プログラム例では、後述するステップS105,S107,S108またはS109のうちのいずれか一によって選択的に実行されることとなる圧力センサ50のフィルタリングのための演算処理に備えるべく、次式による設定を実行する。
【数1】
Pz1=Pz0 ・・・(1)
Pz0=P ・・・(2)
ここに、Pz0は今回の圧力センサ値、Pz1は前回の圧力センサ値
【0068】
これら式中、(1)式は、次回ループでの、当該ステップS105,S107,S108またはS109において適用する値Pz1に今回ループでの検出値を所定の割合で反映させるため、今回値をメモリに記憶させておくための処理となる。
【0069】
次いで、ステップS103において、上記アクティブ制御中か否かの判断をし、その結果、アクティブ制御中でない場合(ステップS103の答が否定(No))は、ステップS109を実行して本ルーチンの今回ループの処理を終了する。他方、ステップS103の答が肯定(Yes)でアクティブ制御中(本例では、予圧制御中も含む)なら、アクティブ制御中の検出圧力レベルに応じてフィルタ特性を切り替えるべく、本プログラム例では、以下の処理を実行する。
【0070】
すなわち、ステップS104でP<P1か否かを判断し(ここに、P1は比較のため用いる第1の所定値)、P<P1が成立して圧力レベルが低いときは、ステップS105の処理を選択する一方、圧力センサ値Pが第1の所定値P1以上のときは、さらに、ステップS106でP<P2か否かを判断し(ここに、P2は比較のため用いる第2の所定値で、P1<P2)、その結果、P1≦P<P2が成立し圧力レベルが当該範囲のレベルのときは、ステップS107の処理を選択し、P2≦Pが成立し圧力レベルが第2の所定値P2以上に高いときは、ステップS108の処理を選択する。こうして、アクティブ制御中は、上記いずれかの処理を選択して、本ルーチンの今回ループの処理を終了する。
【0071】
ここに、ステップS105,S107,S108,S109による演算は、圧力センサ検出値に対し、ノオズ成分を除去のためなされる平均化処理であり、本プログラム例では、そのフィルタリング処理は、以下に基づく加重平均によって行う。
【0072】
【数2】
Pf=0.4×Pz1+0.6×Pz0 ・・・(3)〔S105〕
Pf=0.3×Pz1+0.7×Pz0 ・・・(4)〔S107〕
Pf=0.2×Pz1+0.8×Pz0 ・・・(5)〔S108〕
Pf=0.1×Pz1+0.9×Pz0 ・・・(6)〔S109〕
ここに、各(3)〜(6)式中、右辺第1項中のPz1は、前回値 (記憶値) であり、第2項における今回値Pz0と、その前回値Pz1との割合を、それぞれ各式のごとく設定することにより、フィルタ特性を変更することができる。
【0073】
アクティブ制御中でない場合は、上式(6)に従い、前回値を0.1(10パーセント)、今回値を0.9(90パーセント)の割合として値Pfを得(ステップS109)、これをフィルタリング処理後の圧力センサ値とし、コントローラ41で遂行される他のプログラム(メインルーチンのブレーキ液圧制御プログラム等)中で必要とされる場合の圧力センサデータ値として適用させていくことができる。
ここに、このときは、液路L1,L2の系が図1図示のごとくマスターシリンダ系と連通する状態にあり、圧力センサ50は該状態でのその液路部分の作用圧を検出することとなる場合で、式(6)は、今回値の成分が0.9(90パーセント)ともっとも多く反映されることとなる。してがって、本ステップS109によるフィルタリングは、ステップS105,S107,S108,S109の各処理のうちで、フィルタリング処理がもっとも弱くされ、ポンプ22非駆動時(リリーフ弁23も非作動時)の低ノイズ、高応答性重視にものに設定されていることになる。
なお、もし、望むなら、アクティブ制御中でない場合、上記に代えて、フィルタを施さないようにする態様にすると、その場合は、ステップS109のフィルタリング処理を省くことができ、その分、プログラムが簡易化される(この点は、後記例のプログラムでも同様である)。
【0074】
一方、アクティブ制御中、圧力センサ値PがP<P1で、所定値P1を下回っているときの圧力レベルでは、上式(3)に従い、前回値を0.4(40パーセント)、今回値を0.6(60パーセント)の割合として、値Pfを得る(ステップS105)。この場合は、既に述べてきたように、図1の液路L1,L2の系は脈動の多い圧力レベルであり、よって、本ステップS105によるフィルタリングは、ステップS105,S107,S108,S109の各処理のうちで、もっともフィルタリング処理が強く設定されており、これをフィルタリング処理後の圧力センサ値とし、アクティブ制御中で必要とされる場合の圧力センサデータ値として適用させ、脈動の多い場合でも耐ノイズ性を向上させる。
【0075】
また、アクティブ制御中、圧力センサ値PがP1≦P<P2で、所定値P1以上所定値P2未満の圧力レベルでは、上式(4)に従い、前回値を0.3、今回値を0.7の割合として値Pfを得る(ステップS107)。これをフィルタリング処理後の圧力センサ値として、上記ステップS105と同様にアクティブ制御中での圧力センサデータ値に適用させることになる。本ステップS107によるフィルタリングは、ステップS105に比し、やや弱めのフィルタリング処理となる。
【0076】
さらに、アクティブ制御中、圧力センサ値PがP2≦Pで、所定値P2以上の圧力レベルでは、上式(5)に従い、前回値を0.2、今回値を0.8の割合として値Pfを得る(ステップS108)。これをフィルタリング処理後の圧力センサ値として、同様にアクティブ制御中での圧力センサデータ値に適用させることになる。ここに、本ステップS108によるフィルタリングは、アクティブ制御中でのうち、前回値が0.2(20%)の割合と低下し、他方今回値が0.8(80%)の割合と増加し、今回検出圧力センサ値がより多く反映されている。したがって、アクティブ制御中でも、ステップS105よりも、かつまたステップS107よりも、さらに弱めのフィルタリング処理に切り替えられ、本プログラム例の場合には、ステップS109の低ノイズ、高応答性重視のフィルタリング処理に近い状態とできる。
かくして、既述のごとく脈動の少ない圧力レベルでは、こうしてフィルタ特性を切り替え得て、例えば、ドライバの急ブレーキ等にも対応し得、そのフィルタを弱くする分、耐ノイズ性でも十分なものとなると同時に、応答性を向上をも図れる。
【0077】
以上により、本例でも、圧力センサ50のフィルタ特性の決定に際し、アクティブ制御中の検出レベルに応じてフィルタ特性を切り替えることができ、耐ノイズ性と応答性の両立が図れる。
なお、フィルタリング処理としては加重平均の他、過去数回の圧力検出値を記憶しておいて平均処理する移動平均を用いるようにしてもよく、その他これに類するフィルタリング処理でもよい(この点は、後記例のプログラムでも同様である)。また、フィルタリング処理のときは、圧力検出値の加重平均や移動平均等、例えば適用する具体的な液圧システム、圧力センサ50の取り付け位置などに合わせて、最適な平均値処理による演算処理を容易に導入して、プログラム処理で実施できる。
【0078】
次に述べる例は、減圧後の脈動に対応可能にするものであり、減圧後、所定時間、フィルタ特性を切り替えようというものである。前記したものに加えて、この手法をも加味するときは、さらに、減圧後所定時間は、フィルタ特性を変更することで、さらなる耐ノイズ性の向上が可能となる。
これは、以下のような考察に基づくものである。
【0079】
減圧後の脈動については、図1を再度参照すると、例えば、上記〔自動ブレーキによる挙動制御〕(アクティブ制御)において、減圧制御を行った後は、アキュムレータ(リザーバ)28にたまった液をポンプ22で吐出するため、ポンプ脈動が検出される。減圧時には、先に触れたように、例えば前輪ホイールシリンダ24FL(または24FR)の液を、該ホイールシリンダ→減圧弁27FL(または27FR)→アキュムレータ28の経路で該アキュムレータへ抜いて減圧する減圧制御を実行するが、減圧後はアキュムレータ28にたまった液をポンプ22で汲み上げてプリチャージシピストンリンダ15に戻すために脈動が発生する。なお、このとき、マスターシリンダ液圧選択弁19は閉状態で、液路L1,L2の系の容量は小さい状態にあるのは、前述したとおりである。
【0080】
そこで、減圧制御が入った後、所定時間はフィルタ特性を切り替えることで、耐ノイズ性を向上させる。ここに、該所定時間の間は、フィルタの特性を強くするようになす。
これがため、かかるフィルタ特性を、フィルタ時定数の切り替えによって行う場合は、例えば、図5に示すように、減圧からの経過時間に応じて、フィルタ時定数Tを切り替える。図に例示の特性中、td1、td2は、減圧からの経過時間についての第1の所定値、および第2の所定値で、Td1、Td2は、それぞれに対応するフィルタ時定数設定値であって、図示の特性傾向に従い、減圧からの経過時間が第1の所定値td1に達しない状態では大きな時定数Td1としてフィルタを強くすることができ、第2の所定値td2を経過すれば小さな時定数Td2としてフィルタを弱くすることができる。かくして、このようにすれば、減圧後の脈動についても耐ノイズ性を向上させることができ、適切なフィルタ特性とすることができる。この場合において、コントローラ41は、前述の圧力レベルによるフィルタ特性変更と併用すれば、減圧後、たとえ、上記のようにフィルタを強くしている期間内に、ドライバが急ブレーキをかけたような制動場面なら、そのマスターシリンダ液圧の上昇を応答性よく正確に検出して、応答性重視の状態で、マスターシリンダ液圧選択弁19の開状態への切換え制御(増圧弁の開状態への切換え制御)を行わせることができる。
【0081】
コントローラ41は、好ましくはまた、本システムでABS制御もブレーキ液圧制御として実行する場合において、ABS、アクティブ制御共に、減圧後、所定時間、フィルタの特性を強くするよう、変更する。すなわち、液路L1の液路系を経て前輪11FL,11FRへ伝えられるブレーキぺダル13踏み込み対応操作圧によるブレーキ時のABS制御における減圧制御をも対象として、いずれの減圧後も、所定時間の間、フィルタ特性の変更をするよう制御する。
さらに、好ましくは、この場合において、アクティブ制御での減圧制御後所定時間の間のフィルタ特性変更と、ABS制御での減圧制御後所定時間の間のフィルタ特性変更とで、それぞれ、異なる特性に切り替えるよう制御する。
【0082】
図6は、そうした処理をも含んだ場合のソフト的なフィルタリング処理の場合に適用できる、圧力センサ50のフィルタリング処理プログラムのフローチャートの一例である。本プログラムによる圧力センサのフィルタ特性の決定のためのルーチンは、コントローラ41において一定時間ごとに実行される。
【0083】
同図において、ステップS201,S202,S203は、図4のステップS101,S102,S103と同様の処理内容である。
ステップS203の答が肯定でアクティブ制御中の場合は、ステップS211において、さらに、減圧から所定時間td(act)経過したか否かを判断し、その答が否定で、減圧から所定時間td(act)経過前は、ステップS212において、次式により、フィルタリング処理を実行する。
【数3】
Pf=0.4×Pz1+0.6×Pz0 ・・・(7)
【0084】
しかるに、ステップS211の答が否定に転じたら、すなわち減圧から所定時間td(act)経過後は、ステップS213において、次式により、フィルタリング処理を実行する。
【数4】
Pf=0.3×Pz1+0.7×Pz0 ・・・(8)
【0085】
ここに、上式(7),(8)は、前述したと同様の加重平均のためのものであり、したがって、アクティブ制御での減圧からの経過時間が所定時間td(act)に達しない当該所定時間td(act)の間は、フィルタを強くすることができ、所定時間td(act)を経過すればフィルタを弱くすることができ、したがって前記5図で説明したのと同様の作用効果を奏する。
【0086】
一方、ステップS203の答が否定に場合は、さらに、ステップS220でABS制御中か否かを判断する。
ここに、ABS制御は、例えばウエット路等の低μ路でのブレーキング時の車輪ロックを防止して車両の操安性向上等の車両挙動を制御するのに効果を発揮するものであるが、これは、図1において、ポンプ16はOFF(してがって、プリチャージシリンダ15は図1図示の状態)、プリチャージ圧選択弁21は閉とし、また、マスターシリンダ液圧選択弁19は開としたままで、車輪11FL,11FRの対応増圧弁および減圧弁の開閉切換えで制御し、ポンプ22はONの状態として実行することができる。
各チャネル独立のABS制御の場合でいえば、基本的には、各輪ごとの車輪速を検出して、スリップ率を算出し、スリップ率に応じて、車輪ロック傾向の場合、例えば、減圧、保持、増圧の3モードABSなら、制御対象車輪のホイールシリンダ液圧を保持(例えば、増圧弁25FLおよび/または25FRを閉、減圧弁27FLおよび/または27FRを閉)し、それでもロックしそうなら減圧(例えば、増圧弁25FLおよび/または25FRを閉、減圧弁27FLおよび/または27FRを開)し、かくて車輪速が回復してきたら、対応ホイールシリンダ液圧を元圧であるマスターシリンダ液圧Pm に向け増圧(例えば、増圧弁25FLおよび/または25FRを開、減圧弁27FLおよび/または27FRを閉)するスキッドサイクルを繰り返して、車輪ロックを回避することができる。また、ヨーレイトフィードバックABSなら、ヨーレイト偏差Δγに応じたホイールシリンダ液圧の調整により車両の挙動を制御できる。
【0087】
しかして、ステップS220の答が肯定でABS制御中である場合は、さらに、ステップS221において、ABS制御での減圧から所定時間td(ABS)経過したか否かを判断し、その判断の結果、その答が否定で、減圧から所定時間td(ABS)経過前は、ステップS222において、次式により、同様の加重平均によるフィルタリング処理を実行する。
【数5】
Pf=0.3×Pz1+0.7×Pz0 ・・・(9)
【0088】
しかるに、ステップS221の答が否定に転じたら、すなわち減圧から該所定時間td(ABS)経過後は、ステップS223において、次式により、同様の加重平均によるフィルタリング処理を実行する。
【数6】
Pf=0.1×Pz1+0.9×Pz0 ・・・(10)
【0089】
また、本プログラム例では、ステップS203,220の答がいずれも否定で、したがってアクティブ制御中でもなく、ABS制御中でもない場合も、上式(10)によるフィルタリング処理を実行することとしてある。
【0090】
かくして、ABS制御での減圧の場合も、減圧後、所定時間td(ABS)、フィルタ特性を強くするよう切り替えることができる。このようにすると、ABS制御の場合、減圧後はアキュムレータ28にたまった液を、マスターシリンダ12戻すためのポンプ22の駆動による脈動が発生するが、かかる減圧後の脈動に対しても耐ノイズ性の向上が図れ、したがって、減圧からの経過時間が所定時間td(ABS)に達しない当該所定時間td(ABS)の間は、フィルタを強くすることができ、所定時間td(ABS)を経過すればフィルタを弱くすることができて、同様に、前記5図で説明した作用効果を得ることができる。
【0091】
さらには、本プログラム例では、アクティブ制御の場合の減圧後のフィルタリング処理の切り替えが上式(7),(8)による態様であるのに対し、ABS制御の場合の減圧後のフィルタリング処理の切り替えは、これと異なり、上式(9),(10)による態様のものとしてあり、共に減圧後のフィルタ特性の強への変更でも、両者間で、前者のアクティブ制御の場合がフィルタ特性が強く(上式(7))、後者のABS制御の場合はフィルタ特性が弱く(上式(9))設定されている。
【0092】
このようにするのは、ABS制御中と、アクティブ制御中とで、液路が異なることに着目したことによる。
すなわち、アクティブ制御では、アキュムレータ28の液をポンプ22が吸い上げ、リリーフ弁23を通してプリチャージシリンダ15側へ送ることができるが、このとき、ポンプ22による脈動のほか、リリーフ弁23のON,OFF作動による脈動が加わる場合があり、したがって、より耐ノイズ性が要求されることから、上式(7)のごとくより強いフィルタ特性とするのが望ましいといえる。
【0093】
他方、ABS制御の場合は、該リリーフ弁23のON,OFF作動は加わらない。すなわち、該リリーフ弁23と並列になるように、ポンプ22の吐出側と液路L1,L2系側との間に設けられているマスターシリンダ液圧選択弁19が開状態のままであり、これを通して上流のマスターシリンダ液路系に戻すことができ、圧力センサ50が接続している液路部分に発生する脈動も、ポンプ22駆動による脈動にとどまり、また、マスターシリンダ12−配管To−プリチャージシリンダ15−液路L1−開位置の弁19−ポンプ22の吐出系液路の全体がつながっていることからも少なくて済むものとなる。よって、この場合は、所定時間td(ABS)の間、フィルタ特性を強くはするものの、上式(7)によるものに比べれば、上式(9)のごとく弱いフィルタ特性で足り、これが過不足のないものといえ、したがって、両制御の場合で、それぞれ、上記の見地から、それぞれに適するよう、異なるフィルタ特性に切り替えることとしたものである。
【0094】
本例のようにもすれば、ABS制御中とアクティブ制御中とで液路(油路)が異なる構成の場合に用いてより好適なものが提供でき、減圧後、所定時間、圧力センサ50のフィルタ特性の変更を行うとき、ABS制御中とアクティブ制御中とで液路が異なる場合にそれぞれ異なる特性とすることで、さらに一層適切なフィルタ特性とすることが可能となる。
【0095】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上記各例では、車両挙動制御は、左右制動力差を与えて、挙動検出値と挙動目標値との間の挙動偏差が減少するよう車両の挙動制御を行うブレーキ液圧制御、あるいはその左右制動力差を与える挙動制御に先んじて制御対象車輪のブレーキ系に予圧を供給する予圧制御を行うものとしたが、本発明は、減圧後の所定時間のフィルタ特性変更の場合を含んで、そうした実施態様に限られるものではなく、制御対象車輪のブレーキ液圧制御により車両挙動を制御可能な制御装置に広く適用可能である。
また、上記各例では、制御対象車輪として前2輪の場合を例示したが、これに限られるものでもなく、例えば、後2輪のみを対象する態様、および前2輪と後2輪をともに対象とする態様で実施できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態になる車両挙動制御装置を例示する液圧ブレーキシステム図である。
【図2】本発明に従う圧力センサのフィルタ特性の変更の原理的説明の用に供する図である。
【図3】フィルタ特性の変更の一態様の説明に供する、圧力−フィルタ時定数特性の一例の図である。
【図4】コントローラが実行する圧力センサのフィルタリング処理のプログラムの一例を示すプログラムフローチャートである。
【図5】フィルタ特性の変更の他の例に係るもので、減圧後、所定時間、フィルタ特性を切り替える場合のフィルタ特性の変更の一態様の説明に供する、減圧からの経過時間−フィルタ時定数特性の一例の図である。
【図6】コントローラが実行する他のプログラム例を示すもので、減圧後、所定時間、フィルタ特性を変更する場合の圧力センサのフィルタリング処理の一例を示すプログラムフローチャートである。
【符号の説明】
11FL 左前輪
11FR 右前輪
12 マスターシリンダ
13 ブレーキペダル
14 ブレーキ液リーザバタンク
15 プリチャージシリンダ
16 プリチャージポンプ
19 マスターシリンダ液圧選択弁
21 プリチャージ圧選択弁
22 挙動制御圧ポンプ
24FL 左前輪ホイールシリンダ
24FR 右前輪ホイールシリンダ
25FL 左前輪用増圧弁
25FR 右前輪用増圧弁
27FL 左前輪用減圧弁
27FR 右前輪用減圧弁
28 アキュムレータ
41 コントローラ
42 ヨーレート(挙動)センサ
43 車速センサ
44 スロットル開度センサ
45 温度センサ
50 圧力センサ(M/C圧センサ、兼プリチャージ圧センサ)
To 配管
L1,L2 液路(油路)
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両挙動制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両の挙動制御装置としては、例えば特開平7−89427号公報(文献1)に記載されているように、各輪個別の自動ブレーキにより車両水平面挙動(例えばヨーレート)を目標通りのものとなるよう制御するようにした構成のものが知られている。また、例えば特開平5−262213号公報(文献2)のよるものも知られている。
【0003】
車両挙動を制御するに際しては例えば、車両挙動を検出する挙動センサからの出力、つまり挙動検出値と、車速および操舵角から求めた挙動目標値との間の偏差が減少するよう、つまり実挙動が挙動目標値に一致するよう、左右輪制動力差により車両を挙動制御することが考えられる。
こうした制御装置では、制御対象車輪のブレーキ液圧制御により車両挙動を制御可能である。
【0004】
ところで、ブレーキ液圧制御により挙動制御を行う場合は、液圧を検出する圧力センサを使用して制御に必要な所要の圧力情報を検出することができる。例えば、前掲文献1では、マスターシリンダ液圧を検出する圧力センサが利用される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかして、次のような面から考察すると、圧力センサに関して、以下のごとくの点が指摘できる。
【0006】
(イ)検出対象となる圧力に比較的大きな脈動を伴うような場合、これが圧力センサによって検出される。
例えば、図2は、後記本発明実施例でも参照される図であるが、自動ブレーキによる左右制動力差で車両のヨーレートを制御する車両挙動制御での予圧制御をも行う制御態様の場合、同図中左部に示すようなプリチャージ圧の脈動分(ノイズ分)も圧力センサにより検出される。
このため、フィルタを設けて脈動分を除去することが考えられるが、しかし、フィルタのあまり強くないものでは、脈動の多い(ノイズ成分の多い)圧の検出のような場面では不十分で、検出圧力値に対するその脈動分の変動はとり除きにくく、依然としてその影響は大きく、耐ノイズ性が問題となる。
【0007】
(ロ)一方、このような不利を避けるためには、大きな脈動の多い場合であってもこれを十分に除去しうるよう、そのフィルタの強いものを使用すると良いが、しかし、これだと、かかる圧力センサの検出値などの応答性の問題が生ずることとなる。
すなわち、フィルタ特性があまりに強いと、上記脈動除去の狙いには適応できても、例えば、自動ブレーキによってブレーキ圧力を制御して実行させる車両挙動制御に対し、当該圧力センサの検出圧力値を、それぞれの制御タイミングでの圧力状態を監視するための制御情報(制御変数)としても用いるような場合にあっては、応答性の面で対応しにくくなる。特に、例えば、当該制御中に、ドライバがブレーキぺダルを踏み込んで制動の意思をみせたような場面(なかんずく、該ぺダルを急激に踏み込んだ急ブレーキの場面)を考慮すると、この場合、そのときのマスターシリンダ液圧(M/C圧)の上昇状態を圧力センサで迅速かつ正確に検知することができれば、かかる車両挙動制御状態をドライバの上記の制動意思による通常ブレーキング状態へとすばやく移行させる等の適切な制御切り換えなどができるが、こうした制御などのため、そのフィルタの強い(フィルタ時定数の大きい)圧力センサ検出値が用いられることとなるような場合には、そのフィルタが強い分、実際の圧力(M/C圧)の変化がその圧力情報値に反映しにくくなる。結果、制御遅れなども生じやすく、この意味でも応答性は確保しにくくなる。したがって、この点からは、圧力センサのフィルタ特性は、応答性に関し、その低下をもたらすような大きな影響を与えないように、弱い方が望ましいが、これだと、既述した上記(イ)の点からの耐ノイズ性の問題が生ずることとなる。
よって、上記(イ),(ロ)の点の不利をともに解消してそれを実現することはなしがたく、耐ノイズ性と応答性との双方の両立は困難である。
【0008】
本発明は、このような考察に基づき、また以下に述べる考察にも基づき、これらの点から改良、改善を加えようとするものであり、たとえ、検出対象となる圧力に比較的大きな脈動を伴うようなノイズ成分の多い場合の圧力検出であっても上記(イ),(ロ)のような不利を回避し得て、応答性の向上を図りつつ、耐ノイズ性の向上を図れ、耐ノイズ性と応答性の両立を図ることを可能ならしめようというものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によって、下記の車両挙動制御装置が提供される。
本発明は、制御対象車輪のブレーキ液圧制御により車両挙動を制御可能な制御装置であって、
少なくとも、ブレーキぺダル踏み込み操作時に該操作に応じた対応操作圧を導くことができる液路部分で、かつブレーキ液圧制御の場合には制御用液圧発生の用に供する圧液をポンプの吸入側へ供給することのできる液路部分による第1の液路系と、
該第1の液路系に生ずる圧力を検出する圧力検出手段と、
該圧力検出手段による検出値に対しフィルタを施すフィルタ手段と、
前記ブレーキ液圧制御による車両挙動制御中、前記圧力検出手段の検出圧力レベルに応じて、該フィルタ手段によるフィルタの特性を、当該圧力レベルが小さいときは強くし、当該圧力レベルが大きいときは弱くするよう、変更する第1の変更手段とを
備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記ブレーキ液圧制御による車両挙動制御は、
前記ポンプを含む挙動制御用圧力源からの挙動制御圧による制御対象車輪の自動ブレーキにより左右制動力差を与えて、挙動検出値と挙動目標値との間の挙動偏差が減少するよう車両の挙動制御を行うブレーキ液圧制御である、
ことを特徴とするものである。
【0011】
また、前記ブレーキ液圧制御による車両挙動制御は、左右制動力差を与える挙動制御に先んじて制御対象車輪のブレーキ系に予圧を供給する予圧制御を含み、当該予圧制御の用に供するプリチャージ圧による液を前記ポンプの吸入側へ与えるのに、前記第1の液路系が用いられ、かつ、
該ポンプから当該第1の液路系側の方向に液をリリーフさせるリリーフ弁が設けられている、
ことを特徴とするものである。
【0012】
また、制御対象車輪のブレーキ液圧制御により車両挙動を制御可能な制御装置であって、
少なくとも、ブレーキぺダル踏み込み操作時に該操作に応じた対応操作圧を導くことができる液路部分で、かつブレーキ液圧制御の場合には制御用液圧発生の用に供する圧液をポンプの吸入側へ供給することのできる液路部分による第1の液路系と、
該第1の液路系に生ずる圧力を検出する圧力検出手段と、
該圧力検出手段による検出値に対しフィルタを施すフィルタ手段と、
前記ブレーキ液圧制御での減圧後、所定時間、該フィルタ手段によるフィルタの特性を強くするよう、変更する第2の変更手段とを
備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、前記第1の変更手段と前記第2の変更手段とを有する、
ことを特徴とするものである。
【0014】
また、前記減圧は、
前記ポンプを含む挙動制御用圧力源からの挙動制御圧による制御対象車輪の自動ブレーキにより左右制動力差を与えて、挙動検出値と挙動目標値との間の挙動偏差が減少するよう車両の挙動制御を行う、第1のブレーキ液圧制御における減圧制御を含むとともに、
前記第1の液路系を経て制御対象車輪へ伝えられるブレーキぺダル踏み込み対応操作圧によるブレーキ時のアンチスキッド制御のための、第2のブレーキ液圧制御における減圧制御を含み、
これらのいずれも対象として、当該いずれの減圧制御後も、前記第2の変更手段が、それぞれ所定時間の間、フィルタ特性の変更をする、
ことを特徴とするものである。
【0015】
また、前記フィルタの特性の変更は、前記第1のブレーキ液圧制御を対象とした減圧制御後所定時間の間のフィルタ特性の変更と、前記第2のブレーキ液圧制御を対象とした減圧制御後所定時間の間のフィルタ特性の変更とで、それぞれ、異なる特性に切り替える、
ことを特徴とするものである。
【0016】
また、前記第1のブレーキ液圧制御による車両挙動制御は、左右制動力差を与える挙動制御に先んじて制御対象車輪のブレーキ系に予圧を供給する予圧制御を含み、
当該予圧制御の用に供するプリチャージ圧による液を前記ポンプの吸入側へ与えるのに、前記第1の液路系が用いられ、かつ、
該ポンプから第1の液路系側の方向に液をリリーフさせるリリーフ弁が設けられているとともに、
該ポンプの吐出側と第1の液路系側との間で該リリーフ弁と並列になるように第2の液路系を有して、当該第2の液路系中に前記第2のブレーキ液圧制御の場合に開弁位置の切換え状態をとる電磁切換弁が設けられている、
ことを特徴とするものである。
【0017】
また、前記フィルタの特性の変更は、
フィルタ時定数の切り替えによる態様か、
または圧力検出値の加重平均、移動平均もしくはこれらに類するフィルタリング処理による態様かの、
いずれかの態様により、フィルタ特性の変更を行う、
ことを特徴とするものである。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、請求項1記載のごとく、制御装置は、制御対象車輪のブレーキ液圧制御により車両挙動を制御可能であって、その第1の液路系、圧力検出手段、フィルタ手段、および第1の変更手段のそれぞれを有して、ブレーキ液圧制御による車両挙動制御中、少なくとも、ブレーキぺダル踏み込み操作時に該操作に応じた対応操作圧を導くことができる液路部分で、かつブレーキ液圧制御の場合には制御用液圧発生の用に供する圧液をポンプの吸入側へ供給することのできる液路部分によるその第1の液路系に生ずる圧力を検出するその圧力検出手段の検出圧力レベルに応じて、圧力検出手段による検出値に対しフィルタを施すそのフィルタ手段によるフィルタの特性を、当該圧力レベルが小さいときは強くし、当該圧力レベルが大きいときは弱くするよう、変更する。
よって、かようにフィルタ特性を検出圧力レベルにより切り換えることができ、耐ノイズ性と応答性を両立でき、たとえ、検出対象となる圧力に比較的大きな脈動を伴うようなノイズ成分の多い場合の圧力検出であっても、既述の(イ),(ロ)のような不利を回避し得て、応答性の向上を図りつつ、耐ノイズ性の向上を図れ、耐ノイズ性と応答性の両立を図ることを可能ならしめる。したがって、前記ブレーキ液圧制御による車両挙動制御中、例えば、ドライバがブレーキぺダルを踏み込んでブレーキをかけるような制動場面でも、そのとき切換え制御が要求されることとなる切換弁等に対する切換えも大きな応答遅れなく制御し得て、その場面での車輪ホイールシリンダへの制動意思の伝達も適切に実現できる。
【0019】
また、本発明は、前記ブレーキ液圧制御による車両挙動制御は、これを、前記ポンプを含む挙動制御用圧力源からの挙動制御圧による制御対象車輪の自動ブレーキにより左右制動力差を与えて、挙動検出値と挙動目標値との間の挙動偏差が減少するよう車両の挙動制御を行うブレーキ液圧制御による構成として好適に実施でき、同様にして、上記と同様の効果を得られる(請求項2)。また、この場合、かかる自動ブレーキによる車両の挙動制御中に、ドライバが緊急回避のためブレーキぺダルを踏み込んで急ブレーキをかけたときも、これに十分に対応でき、その応答性の確保を確実なものにならしめる。
【0020】
また、前記ブレーキ液圧制御による車両挙動制御が、左右制動力差を与える挙動制御に先んじて制御対象車輪のブレーキ系に予圧を供給する予圧制御を含み、当該予圧制御の用に供するプリチャージ圧による液を前記ポンプの吸入側へ与えるのに、前記第1の液路系が用いられ、かつ、該ポンプから当該第1の液路系側の方向に液をリリーフさせるリリーフ弁が設けられている構成の場合に適用して、本発明は好適に実施でき、同様にして、上記と同様の効果を得られる(請求項3)。また、この場合において、その圧力検出手段は、そのプリチャージ圧を検出対象とすることができ、よって、プリチャージ作動確認や予圧作動の確認等のために用いることができるとともに、そのときの耐ノイズ性の向上も図られている結果、ポンプ脈動、あるいはリリーフ弁作動による脈動があって、ノイズ成分の多いときでさえも、その正確な作動確認等を可能ならしめる。
【0021】
また、本発明は、請求項4記載のごとく、前記第1の変更手段に代え、その第2の変更手段を有して、ブレーキ液圧制御での減圧後、所定時間、該フィルタ手段によるフィルタの特性を強くするよう、変更することで、減圧後の脈動に対応可能にすることができ、耐ノイズ性の向上を図ることができる。したがって、例えば、減圧制御を行った後は、制御対象車輪のブレーキ系のアキュムレータ(リザーバ)にたまった液をポンプで吐出するためにポンプ脈動がその圧力検出手段により検出される場合でも、減圧制御が入った後、所定時間はフィルタ特性をかように切り替えることができるため、耐ノイズ性を向上させることができる。
さらにまた、本発明は、前記第1の変更手段と前記第2の変更手段とを有する構成として好適に実施でき(請求項5)、このようにすると、両手段による作用効果が得られる結果、前述のごとくにその圧力検出手段のフィルタ特性を検出圧力レベルにより切り換えることで耐ノイズ性と応答性を両立できる上、さらに、減圧後所定時間は、斯くフィルタ特性を変更することで、さらなる耐ノイズ性の向上が可能となる。
【0022】
また、前記減圧は、前記ポンプを含む挙動制御用圧力源からの挙動制御圧による制御対象車輪の自動ブレーキにより左右制動力差を与えて、挙動検出値と挙動目標値との間の挙動偏差が減少するよう車両の挙動制御を行う、第1のブレーキ液圧制御における減圧制御を含むとともに、前記第1の液路系を経て制御対象車輪へ伝えられるブレーキぺダル踏み込み対応操作圧によるブレーキ時のアンチスキッド制御のための、第2のブレーキ液圧制御における減圧制御を含み、これらのいずれも対象として、当該いずれの減圧制御後も、前記第2の変更手段が、それぞれ所定時間の間、フィルタ特性の変更をする、構成として、本発明は好適に実施でき、同様にして、上記と同様の効果を得られる(請求項6)。また、この場合、かかる自動ブレーキによる車両の挙動制御、アンチスキッド制御共に、減圧制御が入った後、所定時間はフィルタ特性を強くするよう切り替えることができるため、いずれの場合も、減圧後のポンプ駆動を伴うときのそのポンプ脈動に起因するノイズ成分に対する耐ノイズ性を向上させることができる。
【0023】
また、この場合において、本発明に従えば、さらに、前記フィルタの特性の変更は、前記第1のブレーキ液圧制御を対象とした減圧制御後所定時間の間のフィルタ特性の変更と、前記第2のブレーキ液圧制御を対象とした減圧制御後所定時間の間のフィルタ特性の変更とで、それぞれ、異なる特性に切り替えるよう構成して好適に実施でき(請求項7)、このようにすると、上記効果に加えて、第1のブレーキ液圧制御中と第2のブレーキ液圧制御中とで液路が異なる場合に適用して効果的なものが提供でき、したがって、アンチスキッド制御中と自動ブレーキによる車両挙動制御中とで液路が異なる場合に、それぞれに合わせた、減圧後所定時間の間のフィルタの強さに設定できることから、一層適切なフィルタ特性とすることが可能となる。
【0024】
また、この場合、前記第1のブレーキ液圧制御による車両挙動制御が、左右制動力差を与える挙動制御に先んじて制御対象車輪のブレーキ系に予圧を供給する予圧制御を含み、当該予圧制御の用に供するプリチャージ圧による液を前記ポンプの吸入側へ与えるのに、前記第1の液路系が用いられ、かつ、該ポンプから第1の液路系側の方向に液をリリーフさせるリリーフ弁が設けられているとともに、該ポンプの吐出側と第1の液路系側との間で該リリーフ弁と並列になるように第2の液路系を有して、当該第2の液路系中に前記第2のブレーキ液圧制御の場合に開弁位置の切換え状態をとる電磁切換弁が設けられている構成の場合に適用して、本発明は好適に実施でき、同様にして、上記と同様の効果を得られる(請求項8)。また、この場合において、その圧力検出手段は、そのプリチャージ圧を検出対象とすることができ、よって、請求項3記載での態様と同じようにして、作動確認等のために用いることができるとともに、その減圧後の脈動に対する耐ノイズ性の向上も図ることができ、そのときのポンプ脈動やリリーフ弁作動による脈動によるノイズ成分の多いときには、そのアンチスキッド制御での場合に比し、フィルタ特性を強めの変更とすることで耐ノイズ性を確保し、他方、アンチスキッド制御での減圧後所定時間の間のフィルタ特性の変更は、かかるリリーフ弁作動がない分、それほどは強めない態様でのフィルタ特性の強めの変更ですみ、適切なフィルタ特性の設定が可能となる。
【0025】
また、本発明は、前記フィルタの特性の変更は、請求項9記載のごとくのフィルタ時定数の切り替え、フィルタリング処理の態様のいずれでも実施できるものである。この場合に、フィルタリング処理のときは、圧力検出値の加重平均や移動平均等、例えば適用するシステム、圧力センサの取る付け位置などに合わせて、最適な平均値処理による演算処理を容易に導入して、プログラム処理で実施できる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施の形態になる車両の挙動制御装置を示すシステム図である。本実施の形態において挙動制御装置は、自動ブレーキによる左右制動力差で車両のヨーレートを制御するものとし、また、ここでは、車両挙動制御装置用予圧制御をも行うものとする。なお、これに加えて、本実施の形態においては、ドライバによるブレーキペダル踏み込みでのブレーキングの際に、アンチスキッド制御(ABS)も可能である。
【0027】
図1において、11FL,11FRはそれぞれ、挙動制御に際して自動ブレーキにより制動すべき左右の車輪で、例えば左前輪および右前輪を示す。これら車輪は、該自動ブレーキをも含め、ABS制御の場合も、個々に制動制御され得るもので、したがって、それぞれ左右独立して制御可能な制御対象車輪である。
【0028】
12はブレーキマスターシリンダで、ブレーキペダル13の踏み込みにより、リザーバタンク14内のブレーキ液をブレーキペダル踏力に応じたマスターシリンダ液圧Pm にして出力するものとする。
マスターシリンダ液圧Pm は、ブレーキマスターシリンダ12の出力ポートとプリチャージシリンダ(プリチャーピストンジシリンダ;P/P)15間の比較的に長い配管To(チューブ)を通じて、該プリチャージシリンダ15のマスターシリンダ液圧ポート15aに供給することができる。
【0029】
ここに、当該プリチャージシリンダ15はリターンスプリング15bにより弾支されたピストン15cを有するもので、ピストン15cの図示する常態位置でマスターシリンダ液圧ポート15aをピストン連通孔15dにより出力ポート15eに通じさせるよう構成する。
【0030】
プリチャージシリンダ15には更に、ピストン連通孔15dが開口するシリンダ室とは反対側のシリンダ室に開口させてプリチャージ圧ポート15fを穿設し、当該ポートからの後述するプリチャージ圧Pprでピストン15cがリターンスプリング15bに抗し左行される時にピストン連通孔15dを塞ぐフリーピストン15gをバネ15hにより浮動支持して設ける。
【0031】
リザーバタンク14とプリチャージ圧ポート15fと間に、プリチャージポンプ16、リリーフ弁17およびオリフィス18の相互並列回路として構成したプリチャージ圧源を接続して設け、プリチャージポンプ16を、後述のごとくにON,OFF制御されるモータ16aにより適宜駆動する。
【0032】
プリチャージシリンダ15の出力ポート15eには、一方で、液路(油路)L1を通じ、常開の電磁式マスターシリンダ液圧選択弁19を介して前輪ブレーキ液圧回路20を接続し、他方で、液路L1から分岐した液路(油路)L2を通じ、常閉の電磁式プリチャージ圧選択弁21を介して挙動制御圧ポンプ22の吸入ポートを接続する。
【0033】
ここに、液路L1は、ドライバのブレーキぺダル13の踏み込みによる通常ブレーキング時にはマスターシリンダ液圧Pm が作用するマスターシリンダ液圧路であり、また、自動ブレーキによる挙動制御では、当該液路L1,L2の系を通してプリチャージ圧Pprの作用する部分でもある。
したがって、当該液路部分は、ブレーキぺダル13踏み込み操作時に該操作に応じたマスターシリンダ液圧Pm を導くことができる部分で、かつ、本例では、自動ブレーキのブレーキ液圧制御による挙動制御の場合には制御用液圧発生の用に供する液(Ppr圧液)を挙動制御圧ポンプ22の吸入側へ供給することのできる部分である。
【0034】
なお、挙動制御圧ポンプ22は、後述するように挙動制御に際して左右前輪11FL,11FRへ向かう挙動制御用のブレーキ液圧を発生するためのもので、挙動制御用圧力源を構成するが、このポンプ22は、後述のごとくにON,OFF制御されるモータ22aにより適宜駆動する。
【0035】
なお、挙動制御圧ポンプ22の吐出ポートはリリーフ弁23を介してプリチャージシリンダ15の出力ポート15eに通じさせるとともに、前輪ブレーキ液圧回路20に接続する。ここに、リリーフ弁23は、電磁式マスターシリンダ液圧選択弁19と並列に設けられ、挙動制御圧ポンプ22からプリチャージシリンダ15の方向に液をリリーフするよう、該ポンプ22の吐出ポートと液路L2(液路L1,L2系)との間に接続されている。
【0036】
前輪ブレーキ液圧回路20から左右前輪11FL,11FRのホイールシリンダ24FL,24FRへ向かう左右前輪ブレーキ液圧回路20FL,20FR中にはそれぞれ、常開の電磁式増圧弁25FL,25FRを挿置し、これら増圧弁25FL,25FRとホイールシリンダ24FL,24FRとの間において左右前輪ブレーキ液圧回路20FL,20FRより分岐する減圧回路26FL,26FR中にそれぞれ、常閉の電磁式減圧弁27FL,27FRを挿置する。
そして、減圧回路26FL,26FRはそれぞれ共通なアキュムレータ28(リザーバ)に接続するとともに、同じく共通な逆止弁29を経て挙動制御圧ポンプ22の吸入ポートに接続する。
【0037】
増圧弁25FL,25FRは、入力圧(ポンプ22からの挙動制御圧)を、対応する左右前輪ホイールシリンダ24FL,24FRへ供給してその内圧(予圧、自動ブレーキ圧)を上昇させ、減圧弁27FL,27FRはそれぞれ、ホイールシリンダ24FL,24FRの内圧(予圧、自動ブレーキ圧)を減圧回路26FL,26FRより排除して低下させるもので、従ってこれら増減圧弁は、それぞれのブレーキ系における内圧を調整する調圧手段を構成する。
【0038】
マスターシリンダ液圧選択弁19に並列に配して、ブレーキ液圧の抜け方向に対し逆止機能を果たす逆止弁30を設けるとともに、増圧弁25FL,25FRに並列に配して、ブレーキ液圧の入り方向に対し逆止機能を果たす逆止弁31,32を設け、これらにより対応する弁が閉じたままの状態でスティックした場合における安全保障を行う。
【0039】
プリチャージポンプ16のモータ16a、および挙動制御圧ポンプ22のモータ22a、またマスターシリンダ液圧選択弁19およびプリチャージ圧選択弁21、更に増圧弁25FL,25FRおよび減圧弁27FL,27FRのON,OFFは、コントローラ41によりこれらを制御して所定の挙動(ヨーレート)制御を行うこととし、
当該制御のためにコントローラ41には、車両の発生ヨーレートγS を検出するヨーレートセンサ(挙動センサ)42からの信号と、車速VSPを検出する車速センサ43からの信号と、エンジンスロットル開度TVOを検出するスロットル開度センサ44からの信号とをそれぞれ入力するとともに、ブレーキ液温度Kを検出する温度センサ45からの信号等を入力する。また、例えば、4チャネルABS制御も実行するときは、前後左右4輪の各車輪速センサ(不図示)からの信号をコントローラ41に入力することができる。
【0040】
また、コントローラ41には、圧力を検出する圧力センサ50からの信号を入力する。
圧力センサ50は、図示例では、上述した液路L1,L2の系に接続されており、該液路系に生ずる圧力を検出する(なお、圧力センサ50の接続箇所は、分岐液路L2部分であってもよい)。
【0041】
圧力センサ50は、これにより、ブレーキぺダル13踏み込み操作時のマスターシリンダ液圧Pm を検出することができ、また、自動ブレーキの挙動制御の場合には液路L1,L2上のプリチャージ圧Pprを検出することができ、その検出値は圧力検出情報としてコントローラ41に入力される。したがって、ドライバによるブレーキング時(ABS制御を含む)のブレーキぺダル操作対応圧としてのマスターシリンダ液圧Pm をこれによってみることができとともに、また、ドライバによる非ブレーキング時の場合のプリチャージ圧Pprのチェックなどもこれによって行うことができる。
【0042】
例えば、プリチャージ作動の確認(プリチャージポンプ16等が正常に作動するかどうかの確認)を圧力センサ50からの入力検出値により行うことができ、あるいは、該圧力センサ自体の自己診断の用にも用いることができる。
【0043】
コントローラ41は、マイクロコンピュータを含んで構成され、A/D変換部を含む入力検出回路と、演算処理回路(CPU)と、該演算処理回路で実行される自動ブレーキによる挙動制御(アクティブ制御)ためのブレーキ液圧制御プログラム(ABS制御をも実行する場合にはABS制御プログラムを含む)およびその他の制御プログラム、並びに演算結果等を格納する記憶回路(RAM,ROM)と、マスターシリンダ液圧選択弁19、プリチャージ圧選択弁21、増圧弁25FL,25FR、減圧弁27FL,27FR、およびポンプモータ16a,22aに制御信号を出力する出力回路等から構成することができる。
なお、圧力センサ50からの入力情報により、プリチャージ作動確認処理や圧力センサ自己診断処理を行うには、これらの処理プログラムも記憶回路に格納しておけばよい。
【0044】
コントローラ41は、上述した圧力センサ50からの情報を含む各種入力情報を用い、通常ブレーキング時、およびブレーキ液圧制御時、本液圧ブレーキシステムを以下のごとくに制御することができる。
【0045】
〔通常ブレーキ〕
コントローラ41は、プリチャージポンプ16のモータ16a、および挙動制御圧ポンプ22のモータ22a、またマスターシリンダ液圧選択弁19およびプリチャージ圧選択弁21、更に増圧弁25FL,25FRおよび減圧弁27FL,27FRを全てOFFする。
【0046】
よって、プリチャージポンプ16からのプリチャージ圧Pprが発生しないためにプリチャージシリンダ15がピストン15cを図示位置にされており、マスターシリンダ液圧ポート15aを出力ポート15eに通じさせ、
プリチャージ圧選択弁21、および減圧弁27FL,27FRが閉弁状態にされており、
マスターシリンダ液圧選択弁19および増圧弁25FL,25FRが開弁状態にされている。
【0047】
ここで、ドライバがブレーキペダル13を踏み込んでマスターシリンダ液圧Pm を発生させると、このマスターシリンダ液圧Pm が、ブレーキマスターシリンダ12の出力ポート→配管To→プリチャージシリンダ15のポート15a→ピストン連通孔15dおよび出力ポート15e→液路L1を順次経てマスターシリンダ液圧選択弁19に至り、その後マスターシリンダ液圧Pm が、この弁19から増圧弁25FL,25FRを経てホイールシリンダ24FL,24FRに達することで、ドライバによる前2輪11FL,11FRのブレーキ操作を可能とする(後2輪系も、上記に準じその後輪液圧ブレーキ系によりブレーキ操作を可能であるのはいうまでもない)。
ここに、コントローラ41は、圧力センサ50の検出値により、上記液路部分に作用する圧(この場合は、マスターシリンダ液圧Pm )をみることができる。
【0048】
〔自動ブレーキによる挙動制御〕(アクティブ制御)
本ブレーキ液圧制御では、コントローラ41は、挙動制御圧ポンプ22を含む挙動制御用圧力源からの挙動制御圧による左右前輪11FL,11FRの自動ブレーキにより左右制動力差を与えて、ヨーレイト検出値γS と、車速VSPおよびスロットル開度TVOから算出したヨーレイト目標値γ0 との間のヨーレイト偏差Δγ(=γ0 −γS )が減少するよう車両の挙動制御を行うブレーキ液圧制御を実行するが、更には、その左右制動力差を与える挙動制御に先んじて左右前輪11FL,11FRのブレーキ系に予圧を供給する予圧制御をも実行する。
ここに、例えば、予圧指令値PTGになるよう予圧制御を行おうとするなら、この場合、該予圧制御を含んで、次のようにして本ブレーキ液圧制御を実行することができる。
【0049】
コントローラ41は、ヨーレート偏差Δγの絶対値|Δγ|が、あらかじめ定めた予圧制御開始用ヨーレート偏差設定値ΔγST以上で、予圧制御を行うべきと判定するとき、かかるタイミング(例えば、図2時刻t1)で、プリチャージポンプ16のモータ16a、および挙動制御圧ポンプ22のモータ22aをONして対応するポンプを駆動するとともに、マスターシリンダ液圧選択弁19およびプリチャージ圧選択弁21をONして、マスターシリンダ液圧選択弁19を閉じるとともにプリチャージ圧選択弁21を開弁させる。
これにより、液路L1と前輪ブレーキ液圧回路20間のマスターシリンダ液圧選択弁19による連通は、当該弁19の閉弁位置への切換えで遮断されて、以後、コントローラ41の制御の下、当該弁19に対する閉弁切換え指令がなされない限り、当該弁19は、確実にその閉弁状態に維持制御され、他方、プリチャージ圧選択弁21の開弁制御で、液路L1,L2部分の系は、ポンプ22吸入側と連通する。
【0050】
ポンプ16の駆動で発生したプリチャージ圧Pprはプリチャージシリンダ15のピストン15cをしてこれを図1の左方へストロークさせ、結果、ピストン連通孔15dをフリーピストン15hにより閉塞する。
その後、ピストン15cの更なる左行によりポート15eからプリチャージ圧Pprと同じ圧力(以下では便宜上、これも同じプリチャージ圧Pprと称する)が出力され、これが、プリチャージシリンダ15の出力ポート15e→液路L1→液路L2の経路でプリチャージ圧選択弁21を経て挙動制御圧ポンプ22の吸入ポートに供給される。
【0051】
これにより、モータ22aの上記したONにより駆動される挙動制御圧ポンプ22の吸入効率が高められ、ポンプ22は高応答で挙動制御用の圧力を吐出することができ、後述する挙動制御の応答性を向上させることができる。
したがって、プリチャージ圧Pprは、挙動制御圧ポンプ22に要求される吸入効率が達成されるのに必要な最小限の極く低い値とする。かくて、予圧制御の用に供するプリチャージ圧Pprによる液をポンプ22の吸入側へ与えるのに、液路L1,L2の液路系が用いられる。
ここに、コントローラ41は、圧力センサ50の検出値により、上記液路部分に作用する圧(この場合は、プリチャージ圧Ppr)をみることができる。
【0052】
ポンプ22からの吐出される挙動制御圧は増圧弁25FL,25FRに達し、コントローラ41は、車両の挙動(ヨーレート)制御前の当該予圧制御に際して、上記マスターシリンダ液圧選択弁19の閉弁による液路L1と液圧回路20との切り離し状態のもとで、左右前輪11FL,11FRの対応増圧弁25FL,25FRをOFFして開き、同じ側の対応減圧弁27FL,27FRをOFFして閉じることで対応ホイールシリンダ24FL,24FR内をポンプ22による加圧制御圧下、圧力上昇させる増圧によって、また、逆に、対応増圧弁25FL,25FRをONして閉じ、同じ側の対応減圧弁27FL,27FRをONして開くことで対応ホイールシリンダ24FL,24FR内の圧力を対応減圧回路26FL,26FRより排除して圧力低下させる減圧によって、これらの繰り返しにより、左右前輪のホイールシリンダ24FL,24FRを含むブレーキ系を予圧指令値PTGとなるよう予圧制御することができる。
【0053】
しかして、かかる予圧下、コントローラ41は、ヨーレート偏差Δγの絶対値|Δγ|が、あらかじめ定めた挙動制御開始用ヨーレート偏差設定値ΔγVDC (ΔγVDC >ΔγST)以上であるかどうかについてのチェックをも並行して実行し、それ以上と判定すると、したがって、左右制動力差を与えるべき挙動制御域であると判定すると、以下のごとくに、挙動制御を実行することができる。
ここに、例えば、制動力差につき、これを片側増圧により生成させるものとすれば、コントローラ41は、そのための挙動(ヨーレート)制御に際して制動すべき一方側前輪の増圧弁25FLまたは25FRをOFFして開き、当該一方側前輪の減圧弁27FLまたは27FRをOFFして閉じるよう制御する。
【0054】
これにより、制動すべき当該一方側前輪のホイールシリンダ24FLまたは24FR内がポンプ22からの挙動制御圧を供給されて、予圧値から増圧される増圧制御が実行される。ここに、反対側前輪のホイールシリンダ24FRまたは24FLは、上記予圧制御を継続されているため、相変わらず予圧値のままで制動力を発生するに至らない。
よって、車両は左右制動力差を付与されてこれに伴うヨーモーメントを与えられ、車両挙動(ヨーレート)を目標値γ0 に近づけることができる。
【0055】
コントローラ41は、また、車両挙動(ヨーレート)が目標値γ0 に近づいて前記のヨーレート偏差Δγの絶対値|Δγ|が挙動制御開始用ヨーレート偏差設定値ΔγVDC 未満に収まる領域に入ると、上記により制動されていた一方側前輪の増圧弁25FLまたは25FRをONして閉じると同時に、当該一方側前輪の対応減圧回路26FLまたは26FRの減圧弁27FLまたは27FRをONして開くよう制御することができる。
すなわち、この場合は、対応する側の前輪ホイールシリンダ24FLまたは24FR内を排圧して制動を解除するべく、対応減圧弁を開き、ホイールシリンダ→減圧弁→アキュムレータ(リザーバ)の経路で対応ホイールシリンダの液をアキュムレータ28へ抜いて減圧する減圧制御を実行する。
かくして、こうした増減圧制御により、ヨーレート偏差Δγを減少させるよう、目標の車両挙動となるようにブレーキ液圧制御により車両の挙動制御を行うことができる。
【0056】
〔圧力センサのフィルタ特性切り替え〕
コントローラ41は、更に、上記制御に加えて、圧力センサ50の検出出力に対し、フィルタを施すとともに、一定条件下で、圧力センサ50のフィルタ特性を変更する変更制御をも実行する。
ここでは、アクティブ制御中か否かおよび圧力レベルに応じて切り替える。すなわち、例えば上記〔自動ブレーキによる挙動制御〕のごとくに液路L1と前輪ブレーキ液圧回路20間のマスターシリンダ液圧選択弁19による連通を、当該弁の閉弁位置への切換え制御で切り離した状態で、マスターシリンダ12による系とは別個の制御用圧源を使用し動的な車両運動をそのブレーキ液圧制御でコントロールするアクティブ制御中(VDS作動中)か否かおよび圧力レベルに応じて、コントローラ41は、圧力センサ50のフィルタ特性を切り替えるよう制御する。
【0057】
これは、以下のような観点に基づくものである。
圧力センサ50は、この場合、液路L1,L2の系に作用するプリチャージ圧Pprを検出対象とすることができる。よって、既述のように、圧力センサ50からのコントローラ41への入力情報は、プリチャージ作動確認(したがってまた、挙動制御圧ポンプ22の吸入ポートへのプリチャージ圧液の供給、予圧作動の確認)等のために用いることができるものである。
【0058】
ところが、非ブレーキング時のアクティブ制御中、上記挙動制御圧ポンプ22の駆動による圧力変動が生じ、これが、例えば図2に示すような時刻t1以降での脈動の要因となる。
特に、本アクティブ制御モード時、液路L1,L2の系の部分やこれに連通する部分の容量は、全体としても小さく、したがって容量が小である分、わずかな圧力変動でも、液圧変化が生じやすいものとなる。
更にはまた、リリーフ弁23は、該ポンプ22の吐出ポート側から液路L1,L2の方向に液をリリーフするものであるが、これをも考慮すると、かかるリリーフ弁23の作動時にも、そのON,OFFが圧力変動の要因となる場面があり、結果、これが、液圧変化をより大きくする原因ともなる。
【0059】
上記のことから、アクティブ制御中、液路L1,L2上のプリチャージ圧Pprには、ノイズ成分としての脈動が乗り、図2に例示するごとく、真のプリチャージ圧Ppr(中央値)に対しかかるノイズが含まれた状態で、圧力センサ50により検出されることとなる。したがって、このままでは、例えば、プリチャージ作動確認等を行わせようという場合など、そういったチェックのための使用場面にあっては、脈動分の影響の大きい圧力センサ50の検出値を適用すると、正確な作動確認判断等を行いにくくなるなど、この場合に圧力センサ50をプリチャージ圧Ppr検出センサとして使用したいという、その本来の機能を満足させることができにくいものとなる。
【0060】
よって、耐ノイズ性の点からは、大きな脈動がたとえ重畳していても、これを十分に除去できるようなフィルタを使用する必要があるが、他方、適用するフィルタがノイズ除去に優れたフィルタ特性のものであると、本アクティブ制御中でも、ドライバがブレーキぺダル13を踏み込んでブレーキングをするという場面(例えば、図2時刻t2)もあることを考慮すれば、そのような制動意思(特に急ブレーキ時での制動意思)をみせたときに、強いフィルタであればあるほど、そのときのマスターシリンダ液圧(M/C圧)の立ち上がりの検出に対応しにくく、応答性の確保を図りにくくなる。
この場合、ブレーキぺダル踏み込みによるマスターシリンダ液圧がプリチャージ圧Pprより高くなると、当該マスターシリンダ液圧が、閉塞状態にあったプリチャージシリンダ15におけるフリーピストン15gとピストン連通孔15dとのその閉塞を解除し(プリチャージピストンシリンダP/Pの開放)、結果、液路L1,L2の系に作用するに至るものの、強いフィルタ特性のフィルタに起因して、圧力センサ50の検出値に基づくそのマスターシリンダ液圧の検出に応答遅れが生ずる分、これに基づくコントローラ41による上記マスターシリンダ液圧選択弁19の図1図示位置への復帰制御(開弁位置への切換え制御)など、切換えが必要とされる切換弁制御(該当する場合は左右増圧弁25FL,25FRの開成、左右減圧弁27FL,27FRも含む)も遅れ、車輪ホイールシリンダ24FL,24FRへの制動意思の伝達も、それだけ応答遅れが生ずることとなる。
【0061】
そこで、本例では、脈動の多い圧力レベルではフィルタを強く、脈動の少ない圧力レベルではフィルタを弱く、設定する。これがため、例えば、図3のように、フィルタ時定数Tを、検出圧力Pによって切り替えることで、上記のことを行うことができる。
図に例示の特性中、Pa、Pbは、圧力についての第1の所定値、および第2の所定値で、第1の所定値PaはプリチャージPpr対応圧値(真値相当値)であり、Ta、Tbは、それぞれに対応するフィルタ時定数設定値であって、図示に特性傾向に従い、第1の所定値Pa未満では大きな時定数Taとしてフィルタを強くすることができ、第2の所定値Pb以上の圧力レベルでは小さな時定数Tbとしてフィルタを弱くすることができる。
【0062】
なお、ここに、圧力レベルが大きい場合にフィルタの特性を弱く設定しても足りるとしたのは、アクティブ制御中であっても、マスターシリンダ液圧がプリチャージ圧Pprより高くなった場合、上記のごとくにプリチャージピストンシリンダ15(P/P)が開放されるので、前述したほどの大きなノイズ成分としての脈動は検出されないという着想による。すなわち、この場合は、圧力センサ50の設けられている液路L1,L2の系は、マスターシリンダ12と連通する。これがため、かかる状態では、圧力センサ50が接続している系は、比較的に長い配管To部分やマスターシリンダ12を含めたものとなる。したがって、前述のような容量小であるがゆえにわずかな圧力変動でも液圧変化が生じやすいといった状態とは異なった状態となっており、全体としての容量はその分増えて、したがってまた、ポンプ22の駆動によっても(リリーフ弁23のON,OFFがあっても)、その分脈動が小さくなるとの見地からである。
【0063】
コントローラ41は、こうしたフィルタの特性の変更をフィルタ時定数の切り替えで行うときは、例えば、圧力センサ50からの入力アナログ信号の段階で適用するフィルタをコントローラ41の入力検出回路に備えて、そのフィルタ時定数回路を圧力レベルに応じて切り替えるよう、時定数切り替え制御をもすることで、これを実行することができる(なお、この点は、後記の時定数切り替えの場合も、これに準ずる構成とすることができる)。
【0064】
かくして、圧力センサ50のフィルタ特性を、検出圧力レベルにより切り換えることで、耐ノイズ性と応答性を両立できる。既述の明細書冒頭の(イ),(ロ)の問題をともに解消でき、たとえ、アクティブ制御中で、検出対象となるプリチャージPprに比較的大きな脈動を伴うようなノイズ成分の多い場合の圧力検出であっても、それらの不利を回避し得て、応答性の向上を図りつつ、圧力センサ50をプリチャージ圧検出センサとして機能させる場合での前述した耐ノイズ性の向上をも図ることができ、他方、もし、アクティブ制御中に、ドライバが緊急回避のためブレーキぺダル13を踏み込んで来て急ブレーキをかけるような制動制御場面でも、これに十分に対応でき、コントローラ41によるマスターシリンダ液圧選択弁19の開弁位置への切換えも大きな応答遅れなく制御し得て、その場面での車輪ホイールシリンダ24FL,24FRへの制動意思の伝達も適切に実現できる。
【0065】
好ましくはまた、コントローラ41は、かかるフィルタ特性の変更は、これを圧力センサ50の圧力検出値に対する演算処理による態様によって行うことができる。
【0066】
図4は、ソフト的なフィルタリング処理の場合に適用できる、コントローラ41が実行する圧力センサ50のフィルタリング処理プログラムのフローチャートの一例である。本プログラムによる圧力センサのフィルタ特性の決定のためのルーチンは、一定時間ごとに実行される。
【0067】
同図において、ステップS101では、本ステップS101実行のつど、P=圧力センサ値により、圧力センサ50からの入力信号に基づく検出値を読み込む。続くステップS102において、本プログラム例では、後述するステップS105,S107,S108またはS109のうちのいずれか一によって選択的に実行されることとなる圧力センサ50のフィルタリングのための演算処理に備えるべく、次式による設定を実行する。
【数1】
Pz1=Pz0 ・・・(1)
Pz0=P ・・・(2)
ここに、Pz0は今回の圧力センサ値、Pz1は前回の圧力センサ値
【0068】
これら式中、(1)式は、次回ループでの、当該ステップS105,S107,S108またはS109において適用する値Pz1に今回ループでの検出値を所定の割合で反映させるため、今回値をメモリに記憶させておくための処理となる。
【0069】
次いで、ステップS103において、上記アクティブ制御中か否かの判断をし、その結果、アクティブ制御中でない場合(ステップS103の答が否定(No))は、ステップS109を実行して本ルーチンの今回ループの処理を終了する。他方、ステップS103の答が肯定(Yes)でアクティブ制御中(本例では、予圧制御中も含む)なら、アクティブ制御中の検出圧力レベルに応じてフィルタ特性を切り替えるべく、本プログラム例では、以下の処理を実行する。
【0070】
すなわち、ステップS104でP<P1か否かを判断し(ここに、P1は比較のため用いる第1の所定値)、P<P1が成立して圧力レベルが低いときは、ステップS105の処理を選択する一方、圧力センサ値Pが第1の所定値P1以上のときは、さらに、ステップS106でP<P2か否かを判断し(ここに、P2は比較のため用いる第2の所定値で、P1<P2)、その結果、P1≦P<P2が成立し圧力レベルが当該範囲のレベルのときは、ステップS107の処理を選択し、P2≦Pが成立し圧力レベルが第2の所定値P2以上に高いときは、ステップS108の処理を選択する。こうして、アクティブ制御中は、上記いずれかの処理を選択して、本ルーチンの今回ループの処理を終了する。
【0071】
ここに、ステップS105,S107,S108,S109による演算は、圧力センサ検出値に対し、ノオズ成分を除去のためなされる平均化処理であり、本プログラム例では、そのフィルタリング処理は、以下に基づく加重平均によって行う。
【0072】
【数2】
Pf=0.4×Pz1+0.6×Pz0 ・・・(3)〔S105〕
Pf=0.3×Pz1+0.7×Pz0 ・・・(4)〔S107〕
Pf=0.2×Pz1+0.8×Pz0 ・・・(5)〔S108〕
Pf=0.1×Pz1+0.9×Pz0 ・・・(6)〔S109〕
ここに、各(3)〜(6)式中、右辺第1項中のPz1は、前回値 (記憶値) であり、第2項における今回値Pz0と、その前回値Pz1との割合を、それぞれ各式のごとく設定することにより、フィルタ特性を変更することができる。
【0073】
アクティブ制御中でない場合は、上式(6)に従い、前回値を0.1(10パーセント)、今回値を0.9(90パーセント)の割合として値Pfを得(ステップS109)、これをフィルタリング処理後の圧力センサ値とし、コントローラ41で遂行される他のプログラム(メインルーチンのブレーキ液圧制御プログラム等)中で必要とされる場合の圧力センサデータ値として適用させていくことができる。
ここに、このときは、液路L1,L2の系が図1図示のごとくマスターシリンダ系と連通する状態にあり、圧力センサ50は該状態でのその液路部分の作用圧を検出することとなる場合で、式(6)は、今回値の成分が0.9(90パーセント)ともっとも多く反映されることとなる。してがって、本ステップS109によるフィルタリングは、ステップS105,S107,S108,S109の各処理のうちで、フィルタリング処理がもっとも弱くされ、ポンプ22非駆動時(リリーフ弁23も非作動時)の低ノイズ、高応答性重視にものに設定されていることになる。
なお、もし、望むなら、アクティブ制御中でない場合、上記に代えて、フィルタを施さないようにする態様にすると、その場合は、ステップS109のフィルタリング処理を省くことができ、その分、プログラムが簡易化される(この点は、後記例のプログラムでも同様である)。
【0074】
一方、アクティブ制御中、圧力センサ値PがP<P1で、所定値P1を下回っているときの圧力レベルでは、上式(3)に従い、前回値を0.4(40パーセント)、今回値を0.6(60パーセント)の割合として、値Pfを得る(ステップS105)。この場合は、既に述べてきたように、図1の液路L1,L2の系は脈動の多い圧力レベルであり、よって、本ステップS105によるフィルタリングは、ステップS105,S107,S108,S109の各処理のうちで、もっともフィルタリング処理が強く設定されており、これをフィルタリング処理後の圧力センサ値とし、アクティブ制御中で必要とされる場合の圧力センサデータ値として適用させ、脈動の多い場合でも耐ノイズ性を向上させる。
【0075】
また、アクティブ制御中、圧力センサ値PがP1≦P<P2で、所定値P1以上所定値P2未満の圧力レベルでは、上式(4)に従い、前回値を0.3、今回値を0.7の割合として値Pfを得る(ステップS107)。これをフィルタリング処理後の圧力センサ値として、上記ステップS105と同様にアクティブ制御中での圧力センサデータ値に適用させることになる。本ステップS107によるフィルタリングは、ステップS105に比し、やや弱めのフィルタリング処理となる。
【0076】
さらに、アクティブ制御中、圧力センサ値PがP2≦Pで、所定値P2以上の圧力レベルでは、上式(5)に従い、前回値を0.2、今回値を0.8の割合として値Pfを得る(ステップS108)。これをフィルタリング処理後の圧力センサ値として、同様にアクティブ制御中での圧力センサデータ値に適用させることになる。ここに、本ステップS108によるフィルタリングは、アクティブ制御中でのうち、前回値が0.2(20%)の割合と低下し、他方今回値が0.8(80%)の割合と増加し、今回検出圧力センサ値がより多く反映されている。したがって、アクティブ制御中でも、ステップS105よりも、かつまたステップS107よりも、さらに弱めのフィルタリング処理に切り替えられ、本プログラム例の場合には、ステップS109の低ノイズ、高応答性重視のフィルタリング処理に近い状態とできる。
かくして、既述のごとく脈動の少ない圧力レベルでは、こうしてフィルタ特性を切り替え得て、例えば、ドライバの急ブレーキ等にも対応し得、そのフィルタを弱くする分、耐ノイズ性でも十分なものとなると同時に、応答性を向上をも図れる。
【0077】
以上により、本例でも、圧力センサ50のフィルタ特性の決定に際し、アクティブ制御中の検出レベルに応じてフィルタ特性を切り替えることができ、耐ノイズ性と応答性の両立が図れる。
なお、フィルタリング処理としては加重平均の他、過去数回の圧力検出値を記憶しておいて平均処理する移動平均を用いるようにしてもよく、その他これに類するフィルタリング処理でもよい(この点は、後記例のプログラムでも同様である)。また、フィルタリング処理のときは、圧力検出値の加重平均や移動平均等、例えば適用する具体的な液圧システム、圧力センサ50の取り付け位置などに合わせて、最適な平均値処理による演算処理を容易に導入して、プログラム処理で実施できる。
【0078】
次に述べる例は、減圧後の脈動に対応可能にするものであり、減圧後、所定時間、フィルタ特性を切り替えようというものである。前記したものに加えて、この手法をも加味するときは、さらに、減圧後所定時間は、フィルタ特性を変更することで、さらなる耐ノイズ性の向上が可能となる。
これは、以下のような考察に基づくものである。
【0079】
減圧後の脈動については、図1を再度参照すると、例えば、上記〔自動ブレーキによる挙動制御〕(アクティブ制御)において、減圧制御を行った後は、アキュムレータ(リザーバ)28にたまった液をポンプ22で吐出するため、ポンプ脈動が検出される。減圧時には、先に触れたように、例えば前輪ホイールシリンダ24FL(または24FR)の液を、該ホイールシリンダ→減圧弁27FL(または27FR)→アキュムレータ28の経路で該アキュムレータへ抜いて減圧する減圧制御を実行するが、減圧後はアキュムレータ28にたまった液をポンプ22で汲み上げてプリチャージシピストンリンダ15に戻すために脈動が発生する。なお、このとき、マスターシリンダ液圧選択弁19は閉状態で、液路L1,L2の系の容量は小さい状態にあるのは、前述したとおりである。
【0080】
そこで、減圧制御が入った後、所定時間はフィルタ特性を切り替えることで、耐ノイズ性を向上させる。ここに、該所定時間の間は、フィルタの特性を強くするようになす。
これがため、かかるフィルタ特性を、フィルタ時定数の切り替えによって行う場合は、例えば、図5に示すように、減圧からの経過時間に応じて、フィルタ時定数Tを切り替える。図に例示の特性中、td1、td2は、減圧からの経過時間についての第1の所定値、および第2の所定値で、Td1、Td2は、それぞれに対応するフィルタ時定数設定値であって、図示の特性傾向に従い、減圧からの経過時間が第1の所定値td1に達しない状態では大きな時定数Td1としてフィルタを強くすることができ、第2の所定値td2を経過すれば小さな時定数Td2としてフィルタを弱くすることができる。かくして、このようにすれば、減圧後の脈動についても耐ノイズ性を向上させることができ、適切なフィルタ特性とすることができる。この場合において、コントローラ41は、前述の圧力レベルによるフィルタ特性変更と併用すれば、減圧後、たとえ、上記のようにフィルタを強くしている期間内に、ドライバが急ブレーキをかけたような制動場面なら、そのマスターシリンダ液圧の上昇を応答性よく正確に検出して、応答性重視の状態で、マスターシリンダ液圧選択弁19の開状態への切換え制御(増圧弁の開状態への切換え制御)を行わせることができる。
【0081】
コントローラ41は、好ましくはまた、本システムでABS制御もブレーキ液圧制御として実行する場合において、ABS、アクティブ制御共に、減圧後、所定時間、フィルタの特性を強くするよう、変更する。すなわち、液路L1の液路系を経て前輪11FL,11FRへ伝えられるブレーキぺダル13踏み込み対応操作圧によるブレーキ時のABS制御における減圧制御をも対象として、いずれの減圧後も、所定時間の間、フィルタ特性の変更をするよう制御する。
さらに、好ましくは、この場合において、アクティブ制御での減圧制御後所定時間の間のフィルタ特性変更と、ABS制御での減圧制御後所定時間の間のフィルタ特性変更とで、それぞれ、異なる特性に切り替えるよう制御する。
【0082】
図6は、そうした処理をも含んだ場合のソフト的なフィルタリング処理の場合に適用できる、圧力センサ50のフィルタリング処理プログラムのフローチャートの一例である。本プログラムによる圧力センサのフィルタ特性の決定のためのルーチンは、コントローラ41において一定時間ごとに実行される。
【0083】
同図において、ステップS201,S202,S203は、図4のステップS101,S102,S103と同様の処理内容である。
ステップS203の答が肯定でアクティブ制御中の場合は、ステップS211において、さらに、減圧から所定時間td(act)経過したか否かを判断し、その答が否定で、減圧から所定時間td(act)経過前は、ステップS212において、次式により、フィルタリング処理を実行する。
【数3】
Pf=0.4×Pz1+0.6×Pz0 ・・・(7)
【0084】
しかるに、ステップS211の答が否定に転じたら、すなわち減圧から所定時間td(act)経過後は、ステップS213において、次式により、フィルタリング処理を実行する。
【数4】
Pf=0.3×Pz1+0.7×Pz0 ・・・(8)
【0085】
ここに、上式(7),(8)は、前述したと同様の加重平均のためのものであり、したがって、アクティブ制御での減圧からの経過時間が所定時間td(act)に達しない当該所定時間td(act)の間は、フィルタを強くすることができ、所定時間td(act)を経過すればフィルタを弱くすることができ、したがって前記5図で説明したのと同様の作用効果を奏する。
【0086】
一方、ステップS203の答が否定に場合は、さらに、ステップS220でABS制御中か否かを判断する。
ここに、ABS制御は、例えばウエット路等の低μ路でのブレーキング時の車輪ロックを防止して車両の操安性向上等の車両挙動を制御するのに効果を発揮するものであるが、これは、図1において、ポンプ16はOFF(してがって、プリチャージシリンダ15は図1図示の状態)、プリチャージ圧選択弁21は閉とし、また、マスターシリンダ液圧選択弁19は開としたままで、車輪11FL,11FRの対応増圧弁および減圧弁の開閉切換えで制御し、ポンプ22はONの状態として実行することができる。
各チャネル独立のABS制御の場合でいえば、基本的には、各輪ごとの車輪速を検出して、スリップ率を算出し、スリップ率に応じて、車輪ロック傾向の場合、例えば、減圧、保持、増圧の3モードABSなら、制御対象車輪のホイールシリンダ液圧を保持(例えば、増圧弁25FLおよび/または25FRを閉、減圧弁27FLおよび/または27FRを閉)し、それでもロックしそうなら減圧(例えば、増圧弁25FLおよび/または25FRを閉、減圧弁27FLおよび/または27FRを開)し、かくて車輪速が回復してきたら、対応ホイールシリンダ液圧を元圧であるマスターシリンダ液圧Pm に向け増圧(例えば、増圧弁25FLおよび/または25FRを開、減圧弁27FLおよび/または27FRを閉)するスキッドサイクルを繰り返して、車輪ロックを回避することができる。また、ヨーレイトフィードバックABSなら、ヨーレイト偏差Δγに応じたホイールシリンダ液圧の調整により車両の挙動を制御できる。
【0087】
しかして、ステップS220の答が肯定でABS制御中である場合は、さらに、ステップS221において、ABS制御での減圧から所定時間td(ABS)経過したか否かを判断し、その判断の結果、その答が否定で、減圧から所定時間td(ABS)経過前は、ステップS222において、次式により、同様の加重平均によるフィルタリング処理を実行する。
【数5】
Pf=0.3×Pz1+0.7×Pz0 ・・・(9)
【0088】
しかるに、ステップS221の答が否定に転じたら、すなわち減圧から該所定時間td(ABS)経過後は、ステップS223において、次式により、同様の加重平均によるフィルタリング処理を実行する。
【数6】
Pf=0.1×Pz1+0.9×Pz0 ・・・(10)
【0089】
また、本プログラム例では、ステップS203,220の答がいずれも否定で、したがってアクティブ制御中でもなく、ABS制御中でもない場合も、上式(10)によるフィルタリング処理を実行することとしてある。
【0090】
かくして、ABS制御での減圧の場合も、減圧後、所定時間td(ABS)、フィルタ特性を強くするよう切り替えることができる。このようにすると、ABS制御の場合、減圧後はアキュムレータ28にたまった液を、マスターシリンダ12戻すためのポンプ22の駆動による脈動が発生するが、かかる減圧後の脈動に対しても耐ノイズ性の向上が図れ、したがって、減圧からの経過時間が所定時間td(ABS)に達しない当該所定時間td(ABS)の間は、フィルタを強くすることができ、所定時間td(ABS)を経過すればフィルタを弱くすることができて、同様に、前記5図で説明した作用効果を得ることができる。
【0091】
さらには、本プログラム例では、アクティブ制御の場合の減圧後のフィルタリング処理の切り替えが上式(7),(8)による態様であるのに対し、ABS制御の場合の減圧後のフィルタリング処理の切り替えは、これと異なり、上式(9),(10)による態様のものとしてあり、共に減圧後のフィルタ特性の強への変更でも、両者間で、前者のアクティブ制御の場合がフィルタ特性が強く(上式(7))、後者のABS制御の場合はフィルタ特性が弱く(上式(9))設定されている。
【0092】
このようにするのは、ABS制御中と、アクティブ制御中とで、液路が異なることに着目したことによる。
すなわち、アクティブ制御では、アキュムレータ28の液をポンプ22が吸い上げ、リリーフ弁23を通してプリチャージシリンダ15側へ送ることができるが、このとき、ポンプ22による脈動のほか、リリーフ弁23のON,OFF作動による脈動が加わる場合があり、したがって、より耐ノイズ性が要求されることから、上式(7)のごとくより強いフィルタ特性とするのが望ましいといえる。
【0093】
他方、ABS制御の場合は、該リリーフ弁23のON,OFF作動は加わらない。すなわち、該リリーフ弁23と並列になるように、ポンプ22の吐出側と液路L1,L2系側との間に設けられているマスターシリンダ液圧選択弁19が開状態のままであり、これを通して上流のマスターシリンダ液路系に戻すことができ、圧力センサ50が接続している液路部分に発生する脈動も、ポンプ22駆動による脈動にとどまり、また、マスターシリンダ12−配管To−プリチャージシリンダ15−液路L1−開位置の弁19−ポンプ22の吐出系液路の全体がつながっていることからも少なくて済むものとなる。よって、この場合は、所定時間td(ABS)の間、フィルタ特性を強くはするものの、上式(7)によるものに比べれば、上式(9)のごとく弱いフィルタ特性で足り、これが過不足のないものといえ、したがって、両制御の場合で、それぞれ、上記の見地から、それぞれに適するよう、異なるフィルタ特性に切り替えることとしたものである。
【0094】
本例のようにもすれば、ABS制御中とアクティブ制御中とで液路(油路)が異なる構成の場合に用いてより好適なものが提供でき、減圧後、所定時間、圧力センサ50のフィルタ特性の変更を行うとき、ABS制御中とアクティブ制御中とで液路が異なる場合にそれぞれ異なる特性とすることで、さらに一層適切なフィルタ特性とすることが可能となる。
【0095】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上記各例では、車両挙動制御は、左右制動力差を与えて、挙動検出値と挙動目標値との間の挙動偏差が減少するよう車両の挙動制御を行うブレーキ液圧制御、あるいはその左右制動力差を与える挙動制御に先んじて制御対象車輪のブレーキ系に予圧を供給する予圧制御を行うものとしたが、本発明は、減圧後の所定時間のフィルタ特性変更の場合を含んで、そうした実施態様に限られるものではなく、制御対象車輪のブレーキ液圧制御により車両挙動を制御可能な制御装置に広く適用可能である。
また、上記各例では、制御対象車輪として前2輪の場合を例示したが、これに限られるものでもなく、例えば、後2輪のみを対象する態様、および前2輪と後2輪をともに対象とする態様で実施できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態になる車両挙動制御装置を例示する液圧ブレーキシステム図である。
【図2】本発明に従う圧力センサのフィルタ特性の変更の原理的説明の用に供する図である。
【図3】フィルタ特性の変更の一態様の説明に供する、圧力−フィルタ時定数特性の一例の図である。
【図4】コントローラが実行する圧力センサのフィルタリング処理のプログラムの一例を示すプログラムフローチャートである。
【図5】フィルタ特性の変更の他の例に係るもので、減圧後、所定時間、フィルタ特性を切り替える場合のフィルタ特性の変更の一態様の説明に供する、減圧からの経過時間−フィルタ時定数特性の一例の図である。
【図6】コントローラが実行する他のプログラム例を示すもので、減圧後、所定時間、フィルタ特性を変更する場合の圧力センサのフィルタリング処理の一例を示すプログラムフローチャートである。
【符号の説明】
11FL 左前輪
11FR 右前輪
12 マスターシリンダ
13 ブレーキペダル
14 ブレーキ液リーザバタンク
15 プリチャージシリンダ
16 プリチャージポンプ
19 マスターシリンダ液圧選択弁
21 プリチャージ圧選択弁
22 挙動制御圧ポンプ
24FL 左前輪ホイールシリンダ
24FR 右前輪ホイールシリンダ
25FL 左前輪用増圧弁
25FR 右前輪用増圧弁
27FL 左前輪用減圧弁
27FR 右前輪用減圧弁
28 アキュムレータ
41 コントローラ
42 ヨーレート(挙動)センサ
43 車速センサ
44 スロットル開度センサ
45 温度センサ
50 圧力センサ(M/C圧センサ、兼プリチャージ圧センサ)
To 配管
L1,L2 液路(油路)
Claims (9)
- 制御対象車輪のブレーキ液圧制御により車両挙動を制御可能な制御装置であって、
少なくとも、ブレーキぺダル踏み込み操作時に該操作に応じた対応操作圧を導くことができる液路部分で、かつブレーキ液圧制御の場合には制御用液圧発生の用に供する圧液をポンプの吸入側へ供給することのできる液路部分による第1の液路系と、
該第1の液路系に生ずる圧力を検出する圧力検出手段と、
該圧力検出手段による検出値に対しフィルタを施すフィルタ手段と、
前記ブレーキ液圧制御による車両挙動制御中、前記圧力検出手段の検出圧力レベルに応じて、該フィルタ手段によるフィルタの特性を、当該圧力レベルが小さいときは強くし、当該圧力レベルが大きいときは弱くするよう、変更する第1の変更手段とを
備えることを特徴とする車両挙動制御装置。 - 前記ブレーキ液圧制御による車両挙動制御は、
前記ポンプを含む挙動制御用圧力源からの挙動制御圧による制御対象車輪の自動ブレーキにより左右制動力差を与えて、挙動検出値と挙動目標値との間の挙動偏差が減少するよう車両の挙動制御を行うブレーキ液圧制御である、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両挙動制御装置。 - 前記ブレーキ液圧制御による車両挙動制御は、左右制動力差を与える挙動制御に先んじて制御対象車輪のブレーキ系に予圧を供給する予圧制御を含み、
当該予圧制御の用に供するプリチャージ圧による液を前記ポンプの吸入側へ与えるのに、前記第1の液路系が用いられ、かつ、
該ポンプから当該第1の液路系側の方向に液をリリーフさせるリリーフ弁が設けられている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両挙動制御装置。 - 制御対象車輪のブレーキ液圧制御により車両挙動を制御可能な制御装置であって、
少なくとも、ブレーキぺダル踏み込み操作時に該操作に応じた対応操作圧を導くことができる液路部分で、かつブレーキ液圧制御の場合には制御用液圧発生の用に供する圧液をポンプの吸入側へ供給することのできる液路部分による第1の液路系と、
該第1の液路系に生ずる圧力を検出する圧力検出手段と、
該圧力検出手段による検出値に対しフィルタを施すフィルタ手段と、
前記ブレーキ液圧制御での減圧後、所定時間、該フィルタ手段によるフィルタの特性を強くするよう、変更する第2の変更手段とを
備えることを特徴とする車両挙動制御装置。 - 請求項1記載の前記第1の変更手段と請求項4記載の前記第2の変更手段とを有する、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の車両挙動制御装置 - 前記減圧は、
前記ポンプを含む挙動制御用圧力源からの挙動制御圧による制御対象車輪の自動ブレーキにより左右制動力差を与えて、挙動検出値と挙動目標値との間の挙動偏差が減少するよう車両の挙動制御を行う、第1のブレーキ液圧制御における減圧制御を含むとともに、
前記第1の液路系を経て制御対象車輪へ伝えられるブレーキぺダル踏み込み対応操作圧によるブレーキ時のアンチスキッド制御のための、第2のブレーキ液圧制御における減圧制御を含み、
これらのいずれも対象として、当該いずれの減圧制御後も、前記第2の変更手段が、それぞれ所定時間の間、フィルタ特性の変更をする、
ことを特徴とする請求項4、または請求項5に記載の車両挙動制御装置。 - 請求項6において、
前記フィルタの特性の変更は、前記第1のブレーキ液圧制御を対象とした減圧制御後所定時間の間のフィルタ特性の変更と、前記第2のブレーキ液圧制御を対象とした減圧制御後所定時間の間のフィルタ特性の変更とで、それぞれ、異なる特性に切り替える、
ことを特徴とする車両挙動制御装置。 - 前記第1のブレーキ液圧制御による車両挙動制御は、左右制動力差を与える挙動制御に先んじて制御対象車輪のブレーキ系に予圧を供給する予圧制御を含み、
当該予圧制御の用に供するプリチャージ圧による液を前記ポンプの吸入側へ与えるのに、前記第1の液路系が用いられ、かつ、
該ポンプから第1の液路系側の方向に液をリリーフさせるリリーフ弁が設けられているとともに、
該ポンプの吐出側と第1の液路系側との間で該リリーフ弁と並列になるように第2の液路系を有して、当該第2の液路系中に前記第2のブレーキ液圧制御の場合に開弁位置の切換え状態をとる電磁切換弁が設けられている、
ことを特徴とする請求項6、または請求項7に記載の車両挙動制御装置。 - 前記フィルタの特性の変更は、
フィルタ時定数の切り替えによる態様か、
または圧力検出値の加重平均、移動平均もしくはこれらに類するフィルタリング処理による態様かの、
いずれかの態様により、フィルタ特性の変更を行う、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の車両挙動制御装置。
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