JP3654148B2 - 電線のアース接続構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電線のアース接続構造に関し、特に、自動車に配索する電線を車体にアース接続するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の自動車に配線する電線は車体にアース接続されており、図7に示すように、電線wの端末にアース端子1を圧着接続しておく一方、車体2の所定位置にボルト固定穴2aを設け、車体2の裏面にはボルト固定穴2aに沿ってナット3が固着されている。上記アース端子1は、円環形状の電気接触1aの丸穴1bをボルト固定穴2aに一致させ、ボルト4を丸穴1b、ボルト固定穴2aを通してナット3にネジ締めして固定し、アース端子1を車体2に圧接させてアース接続している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記構造とした場合、アース端子1は、車体裏面にナットが固定されているボルト固定穴にのみしかボルトを介して固定することができない。よって、アース接続位置を変更する場合には、車体側にナット付きのボルト固定穴を予め形成しておく必要があり、アース接続位置の変更を容易にできない問題がある。
また、ボルトをナットにネジ締めするために、締め付け作業が必要となり、アース接続箇所が多数であるため、この作業に時間がかかる問題もある。
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、アース接続作業性を高めると共に、アース接続位置の変更を容易にできるようにすることを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、電線端末に接続した端子を車体に固定するアース用固定材を高導電性樹脂で一体成形しており、
上記アース用固定材は、挿入された上記端子に接触係止する弾性係止を内部に設けているボックス部と、該ボックス部の外面より突設した軸部と、該軸部の先端より折り返し状に設けた係止羽根部とを備え、
電線端末に接続した端子を上記ボックス部に挿入係止し、上記係止羽根部を車体の係止穴に挿入係止することで、電線端末の端子が上記アース用固定材を介して車体にアース接続されることを特徴としている電線のアース接続構造を提供している。
【0006】
上記のように、本発明では、従来用いられているボルトに代えて、高導電性樹脂からなるボックス部と係止羽根部を備えたアース用固定材を設け、該アース用固定材を用いることにより、ボックス部内にアース端子を挿入して接触係止し、係止羽根部を車体の穴に通すだけで、アース端子を車体に固定することができる。よって、車体側にナットを固定したボルト固定穴を設ける必要はなく、単なる穴にアース端子を接続固定することができる。その結果、車体にはアース固定穴にナットを取り付けておく必要はない。また、車体にはワイヤハーネスに取り付けたクランプを係止する穴が多数設けられているため、該クランプ係止穴を利用することにより、アース接続位置の変更も容易に行うことができる。
さらに、アース端子を車体に固定するために、従来はボルトとナットの2部材が必要であったが、本発明ではアース用固定材の1部材のみとなり、部品点数を減少できるため、コスト低減も図ることができる。
【0007】
上記電線端末に接続する端子はオス端子で、上記アース用固定材のボックス内の弾性係止片は、上記オス端子の電気接触部とバレル部の間の段部に係止する構成としている
【0008】
上記のように、弾性係止片をオス端子の段部に接触係止することにより、アース用固定材からの端子の抜け外れを防止してアース接続の確実性を高めることができる。なお、オス端子に係止穴を設けて、該係止穴に弾性係止片を係止させてもよい。このように弾性係止片を設けているため、単にオス端子をアース用固定材のボックス部内に挿入するだけで、該オス端子の係合孔の位置で弾性係止片が復元し係合孔に係止するため、オス端子とアース用固定材との移動不可な接続を容易に行うことができる。
【0009】
上記アース用固定材のボックス内には、複数の電線に接続された端子が並列状態に係止できる複数の端子収納室を設けていることが好ましい。該構成とすると、複数の電線の車体アース接続を1つのアース用固定材を用いて行うことができ、車体側に設ける係止穴も1つで良くなり、複数の電線の車体アース接続作業を1度で行うことができる。
【0010】
上記アース用固定材の素材となる高導電性樹脂は、特開平10−237331号、特開平11−342522号に開示されているように、熱可塑性樹脂中で、銅、ニッケル、鉄等からなる金属繊維を混入させたものと、鉛フリーハンダ(低融点半田)とCu粉などの低融点合金を分散させた導電性樹脂組成物からなる。
【0011】
導電性の金属繊維が配合される熱可塑性樹脂としては、プロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン等の樹脂を単独あるいはブレンドして用いることが可能であり、特にアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂が好適に用いられる。
【0012】
上記熱可塑性樹脂に混同して分散させると共にネットワーク状に接合させる低融点合金は、融点が100℃以上、好ましくは200℃以上で、射出成形物に溶融する合金を使用され、Sn−Pb系、Sn−Ag−Pb系、Sn−Bi系、Sn−Bi−In系、Bi−Pb系、Bi−Sn系、Sn−Cu系、Sn−Cu−Ni−P系、Sn−Ag系、Sn−Bi−Pb系、Sn−In系のものが挙げられる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
前述した高導電性樹脂で一体成形したアース用固定材10を、ボルトに代えて、電線wの端末に接続したオス端子1と車体2との固定に用いている。
【0014】
上記アース用固定材10は、オス端子1の細幅平板形状の電気接触部1aが挿入される一端開口のボックス部11を備え、該ボックス部11の先端寄りの外面より車体係止用の軸部12が突出し、該軸部12の先端の互いに対向する位置から折り返し状に突設した2枚の係止羽根部13を設けている。上記ボックス部11の内周面には、底壁11bの略中央部より弾性係止片(ランス)11dを先端壁11c方向に傾斜させて突設し、該弾性係止片11dが、挿入されたオス端子1の電気接触部1aとバレル部1bとの間の段部1cに係止する構成としている。
【0015】
次に、電線wの端末に接続したオス端子1を上記アース用固定材10を用いて車体2に固定する作業手順を図2(A)(B)(C)を用いて説明する。
まず、図2(A)に示すように、ボックス部11内へオス端子1の電気接触部1aを開口部11aから挿入する。このとき、ボックス部11内の弾性係止片11dは先端壁11c方向に押し倒されるが、オス端子1の段部1cが通過すると、図2(B)に示すように、弾性係止片11dが復元して段部1cに係止する。
【0016】
自動車への電線配線時に、オス端子1を挿入係止したアース用固定材10の係止羽根部13を、図2(B)に示すように、車体2の係止穴20に圧入して軸部12まで挿入すると、図2(C)に示すように、係止穴20を貫通した係止羽根部13が復元して開き、係止穴20の周縁に係止羽根部先端の係止段部14が係止穴20の周縁に係止され、アース用固定材10は車体2と固定される。
【0017】
上記構成によると、高導電性樹脂で形成されたアース用固定材10がオス端子1と接触されていると共に車体2とも接触されるため、電線wの端末に接続したオス端子1は車体2と導通してアース接続を図ることができる。
【0018】
また、アース用固定材10への車体への取付は、係止羽根部13を係止穴20に圧入後、該係止羽根部13が復元して穴に係止するため、従来の金属性ボルトと異なり、係止穴20の裏面にナットを固着しておく必要がない。従って、部品点数を減少させることができるとともに、車体の係止穴を裏面のナットを固着していない穴とすることができる。よって、車体に多数あけられているクランプ係止用の穴を利用して係止することができ、接続位置の変更に対しても、クランプ係止穴を利用して容易に対応することができる。
【0019】
また、アース用固定材10とオス端子1とは、オス端子1を単にボックス部11内に挿入するだけで、弾性係止片11dの復元によって係合孔1bで接触係止し移動不可に固定することができ、アース用固定材10と車体2とは、係止羽根部13を係止穴20に圧入することによって、係止羽根部13が復元して係止穴20の周縁に係止され、いずれもワンタッチ作業ですむため、全体としても単純な二作業で済み、ねじ締め作業も不要となるため、作業性が大幅に向上する。
【0020】
図3及び図4は本発明の第2実施形態を示し、二箇所に係止羽根部13a’、13b’を備えたアース用固定材10’による電線のアース接続構造を示している。
【0021】
上記アース用固定材10’は、図3に示すように、軸部12の先端外周に折り返し状に突設した先端係止羽根部13a’と、先端より間隔をあけた中間部外周より突設した中間係止羽根部13b’との計2箇所の係止羽根部13’を設けている。その他の点では上記第1実施形態と同様である。
【0022】
上記構成のアース用固定材10’を用いてオス端子1を車体2に固定すると、薄い板厚の車体に固定するときは、図4(A)に示すように、基板部11’からの寸法の小さい中間係止羽根部13bで車体2に係止し、厚い板厚の車体に固定するときは、図4(B)に示すように先端係止羽根部13a’を係止して固定することができる。このように、車体の板厚が変わっても2段階調節で対応できるため、適した係止羽根部を選択することにより、アース用固定材10’と車体2との接続確実性を高めることができると共に、アース用固定材の汎用性を高めてコスト低減を図ることができる。
【0023】
図5および図6は本発明に係る第3実施形態を示し、アース用固定材に多数本の電線を係止できるようにしている。本実施形態では、4本の電線wに接続された4個のオス端子1をアース用固定材10”を介して車体2にアース接続している。
【0024】
上記アース用固定材10”のボックス部11”は、仕切り壁110eで仕切られ並設された4つの端子収納室110からなる。各端子収納室110は、オス端子1を挿入する開口部110aを同じ側に設けている。各端子収容室110の内面には底壁110bより弾性係止片110dを突設している。
【0025】
上記アース用固定材10”を利用すると、図6(A)(B)に示すように、複数の電線wに接続された複数のオス端子1をそれぞれワンタッチ作業で一つのアース用固定材10”に並列状態に接続することができる。車体への固定は、該アース用固定材10”の一つの係止羽根部13”を一つの係止穴20に圧入することによって、ワンタッチ取付することができる。従って、複数の電線のアース接続を、1箇所の係止穴を利用して単純作業で行うことができ、作業性が大幅に向上する。また、車体に設ける係止穴も1つでよくなる。
【0026】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、高導電性樹脂で形成されたアース用固定材を用い、該アース用固定材のボックス部に電線端末の端子を挿入係止して、該アース用固定材に突設した係止羽根部を車体の係止穴に挿入すると、アース用固定材を介して端子の車体アース接続を簡単に行うことができる。
また、従来のボルトとナットによる車体への固定と異なり、車体係止穴の裏面へのナットの固着が不要となり、部品点数が減少してコスト低減を図ることができる。また、ねじ締め作業が不要となり、いずれもワンタッチ作業からなる単純な二作業でアース接続が可能となるため、作業性が大幅に向上する。
【0027】
さらに、一つのアース用固定材に複数の電線に接続された端子を並列状態に係止することができるため、複数の電線を1つのアース用固定材を用いて、車体に一つの係止穴にアース接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る接続構造を示す分解斜視図である。
【図2】 (A)(B)(C)は図1に示すアース用固定材でアース端子を車体に固定する作業を示す工程断面図である。
【図3】 本発明の第2実施形態に係るアース用固定材を示す斜視図である。
【図4】 (A)(B)は図3に示すアース用固定材でアース端子を車体に固定した状態を示す断面図である。
【図5】 本発明の第3実施形態に係るアース用固定材を示し、(A)は全体斜視図、(B)は開口部側からの側面図、(C)はC−C線断面図である。
【図6】 図5に示すアース用固定材を用いてアース端子を車体に固定した状態を示す図面であり、(A)は全体斜視図、(B)は要部断面図である。
【図7】 従来例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
1 アース端子
1b 係合孔
2 車体
10、10’、10” アース用固定材
11、11’、11” ボックス部
11d、110d 弾性係止片
110 端子収納室
12、12’、12” 軸部
13、13” 係止羽根部
13a’ 先端係止羽根部
13b’ 中間係止羽根部
14 係止段部
20 係止穴

Claims (3)

  1. 電線端末に接続した端子を車体に固定するアース用固定材を高導電性樹脂で一体成形しており、
    上記アース用固定材は、挿入された上記端子に接触係止する弾性係止を内部に設けているボックス部と、該ボックス部の外面より突設した軸部と、該軸部の先端より折り返し状に設けた係止羽根部とを備え、
    電線端末に接続した端子を上記ボックス部に挿入係止し、上記係止羽根部を車体の係止穴に挿入係止することで、電線端末の端子が上記アース用固定材を介して車体にアース接続されることを特徴としている電線のアース接続構造。
  2. 上記電線端末に接続する端子はオス端子で、上記アース用固定材のボックス内の弾性係止片は、上記オス端子の電気接触部とバレル部の間の段部に係止する構成としている請求項1に記載の電線のアース接続構造。
  3. 上記アース用固定材のボックス内には、複数の電線に接続された端子が並列状態に係止できる複数の端子収納室を設けている請求項1または請求項2に記載の電線のアース接続構造。
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