JP3652382B2 - テストステロン−５α−レダクターゼ阻害剤 - Google Patents
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Description
【０００１】
【産業上の利用分野】
本発明は、テストステロン−５α−レダクターゼ阻害剤に関し、更に詳しくは、サザンカ [Camellia sasanqua]、カンツバキ [Camellia sasanqua]、ツバキ [Camellia japonica]、コブシ [Magnolia kobus] 、ハクモクレン [Magnolia denudata]、キンギョソウ [Antirrhinum majus Linn.]、オオイヌフグリ [Veronica persica Poir.] 、シシガシラ [cv. Shishigashira]、トウゴクシダ 、クスノキ [Cinnamomum Camphora]、アカマツ [Pinus densiflora] 、アラカシ [Quercus glauca] 、ウバメガシ [Quercus phillyraeoides] 、アカメガシワ [Mallotus japonicus] 、キンシバイ [Hypericum patulum]の各植物、あるいはKhamin Chan [Curcuma Longa] 、Chum Het Thet [Cassia alata Linn.]、Henna [Lawsonia inermis Linn.]、Curculigo orchioides [Curculigo orchioides] 、Ranoolifia [Rauvolfia Serpentina] の各生薬、あるいはカジメ [Ecklonia cava]、アナアオサ [Ulra pertusa] 、オオバモク [Sargassum ringgoldianum]、イワヒゲ [Myelophycus caespitosus]、イシゲ [Ishige okamurai]、アミモヨウ [Miccrodictyon japonicum]の各海藻それぞれの水または／および有機溶剤により抽出される抽出物を含有するテストステロン−５α−レダクターゼ阻害剤及び育毛効果に優れる養毛・育毛剤に関する。
【０００２】
【従来の技術】
脱毛、発毛に関する医学的な知見は未知の面が多く、これらに用いられる育毛成分の生理的な作用機序は不明な点が多い。現在、脱毛の原因と考えられているものには、内分泌異常、ヘヤサイクルの異常、自律神経の失調、血液循環の不良、栄養障害、その他（遺伝性、老化等）が挙げられる。従来の育毛成分には、たとえば卵胞ホルモン（特開昭６０−３８３１３号）等のホルモン類、ビタミンＥ、Ｂ2 、Ｂ6 、ビオチン、パントテン酸等のビタミン類、その他アミノ酸類（ペプチドサブスタンス：特開昭６１−７２０９号）、センブリエキス等の生薬エキス、塩酸ジフェンヒドラミン等の消炎剤、グリセリン等の湿潤剤、感光素３０１号等の頭皮刺激剤、ヒノキチオール等の殺菌剤、エタノール等の清涼剤等がある。
【０００３】
そして、育毛・養毛剤は、前記養毛成分を単独または複数組み合わせて局所での効果を期待して使用されており、育毛、発毛促進、ふけ、かゆみ、炎症の防止、薄毛・脱毛予防をはかり、これにより総合的な養毛・育毛効果をねらっている。
【０００４】
最近、物質が有する特性たとえばテストステロン−５α−レダクターゼ阻害作用や毛母細胞賦活作用、血行促進作用に着目して、その物質を養毛・育毛剤として利用される傾向がある。
【０００５】
前記テストステロン−５α−レダクターゼ阻害剤が養毛・育毛剤として利用される理由は、代謝系における男性ホルモン（テストステロン）が、テストステロン−５α−レダクターゼの作用を受けて５α−ジヒドロテストステロンが生成・蓄積され、その結果毛根が萎縮し、抜毛、禿等を誘引すると考えられているからである。
【０００６】
たとえば、テストステロン−５α−レダクターゼ阻害物性を有する物質例として、高級脂肪酸のカルボン酸（特開昭５９−１５２３０８号、特開昭５９−１７２４１０号、特開昭５９−１７２４１１号、特開昭６１−５００７号、特開昭６１−５０１４号、特開昭６１−７２０５号等）、芳香族アルコール、芳香族カルボン酸（特開昭５７−５３４０１号）、その他天然抽出物および化合物（特開昭６０−１４６８２９号、特開昭５９−５９６０６号、特開昭５９−５９６０７号等）、二環式テルペン類の二環式縮合環化合物などがある。
【０００７】
二環式テルペン類の二環式縮合環化合物としては、５，６−ジメチル−８−イソプロペニル−ビシクロ〔４，４，０〕デセン−１−オン−３（特開昭５９−５３４１７号）、４，８−ジメチル−２−イソプロピリデン−１，２，３ａ，４，５，６−ヘキサヒドロ−アズレノン（６）または３，６，８−テトラメチル−１，２，４，７，８，８ａ−ヘキサヒドロ−アズレノン（特開昭５９−５３４１８号、特開昭５９−５５８１３号）、４−メチル−１−イソプロピル−ビシクロ〔３，１，０〕ヘキセン−３−オン２および４，６，６−トリメチル−ビシクロ〔３，１，１〕ヘプテン−３−オン−２（特開昭５９−５３４１９号、特開昭５９−５５８１２号）等がある。
【０００８】
このように、前記テストステロン−５α−レダクターゼ阻害特性または／および養毛・育毛効果を有するとされる物質が、広範囲で且つ多種多用である理由は、前記テストステロン−５α−レダクターゼの酵素活性及び養毛・育毛等に関する生理活性が、それら化学物質の分子構造と特異的に相関関係を有することに起因すると考えられるからである。同類または同族の化学的類似化合物であっても、その異性体（構造異性体、互変異性体、光学異性体、幾何異性体等）により、前記酵素活性及び生理活性の有無および力価は大きく異なる。各種物質の養毛・育毛の生理活性効果は、その差異が著しく、各物質の養毛・育毛効果をひとつひとつ直接測定し検索しなければ判別できないのが現状である。
【０００９】
【発明が解決しようとする問題点】
かくのごとく、養毛・育毛効果を有する物質は多種多様のものが提案されているが、これらの従来の育毛・養毛剤は（特にホルモン類等には）副作用が生じたり、また養毛・育毛効果も必ずしも十分ではなく、より効果的な養毛・育毛剤の開発が望まれている。
【００１０】
そこで本発明者らは、上記背景に基づき一般的に安全とされている各種天然物から、レダクターゼ阻害効果に優れ、脱毛防止、養毛、育毛効果に有効でかつ安全な物質を検索、試験した結果、前記植物、生薬、海藻の水または／および有機溶剤により抽出された物質が、この課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【００１１】
【課題を解決するための手段】
このような現状に鑑み本発明者らは、鋭意検討の結果、ツバキ科のサザンカ [Camellia sasanqua]（以下単に「サザンカ」という）、カンツバキ [Camellia sasanqua]（以下単に「カンツバキ」という）、ツバキ [Camellia japonica]（以下単に「ツバキ」という）、モクレン科のコブシ [Magnolia kobus] （以下単に「コブシ」という）、ハクモクレン [Magnolia denudata]（以下単に「ハクモクレン」という）、ゴマノハグサ科のキンギョソウ [Antirrhinum majus Linn.]（以下単に「キンギョソウ」という）、オオイヌフグリ [Veronica persica Poir.] （以下単に「オオイヌフグリ」という）、カエデ科のシシガシラ [cv. Shishigashira]（以下単に「シシガシラ」という）、トウゴクシダ、クスノキ科のクスノキ [Cinnamomum Camphora]（以下単に「クスノキ」という）、マツ科のアカマツ [Pinus densiflora] （以下単に「アカマツ」という）、ブナ科のアラカシ [Quercus glauca] （以下単に「アラカシ」という）、ウバメガシ [Quercus phillyraeoides] （以下単に「ウバメガシ」という）、トウダイグサ科のアカメガシワ [Mallotus japonicus] （以下単に「アカメガシワ」という）、オトギリソウ科のキンシバイ [Hypericum patulum]（以下単に「キンシバイ」という）の各植物、あるいはKhamin Chan [Curcuma Longa] （以下単に「Khamin Chan 」という）、Chum Het Thet [Cassia alata Linn.]（以下単に「Chum Het Thet」という）、Henna [Lawsonia inermis Linn.]（以下単に「Henna 」という）、Curculigo Orchioides [Curculigo orchioides] （以下単に「Curculigo Orchioides」という）、Ranoolifia [Rauvolfia Serpentina] （以下単に「Ranoolifia」という）の各生薬、あるいはこんぶ科カジメ属のカジメ [Ecklonia cava]（以下単に「カジメ」という）、あおさ科アオノリ属のアナアオサ [Ulra pertusa] （以下単に「アナアオサ」という）、ひばまた科ホンダワラ属のオオバモク [Sargassum ringgoldianum]（以下単に「オオバモク」という）、はばもどき科ハバモドキ属のイワヒゲ [Myelophycus caespitosus]（以下単に「イワヒゲ」という）、いしげ科イシゲ属のイシゲ [Ishige okamurai]（以下単に「イシゲ」という）、、アミモヨウ [Miccrodictyon japonicum]（以下単に「アミモヨウ」という）の各海藻の水または／および有機溶剤により抽出される抽出物に、テストステロン−５α−レダクターゼ阻害にすぐれた効果を示すとの知見を得ることができた。
【００１２】
この発明の抽出物とは、前記植物及び生薬の花、皮、果実、葉、茎、根、種子あるいは海藻のいずれから抽出されたものであってもよいが、実使用にあたっては、より効果的な原料選択が望ましい。
【００１３】
また、この抽出物は溶剤を除去した後の乾燥物の状態で使用することもでき、又溶剤に溶解した状態で使用することもできる。
【００１４】
そして、この抽出物を少なくとも１種を含有させることにより育毛・養毛剤を調製することができる。
【００１５】
前記各種植物、生薬、海藻は人体に対して毒性を有しないから、育毛・養毛剤への配合量は特に限定されず広範囲で選択することができるが、抽出物の量（乾燥物換算）で全量に対して０．００１〜１０重量％の範囲内での使用が適当であり、望ましくは０．０１〜２重量％の範囲内である。これは０．０１重量％以下であると、育毛効果が弱く、また一方、２％以上にしても効果面においてあまり顕著な差異は認め難く効果的ではないためである。
【００１６】
この発明で利用される原料は、前記各種植物、生薬、海藻の生の物、又は乾燥物が利用できるが、前記各種植物、生薬、海藻を陰干しで約２〜５日間乾燥し、腐敗を防止した状態の物を用いるのが好適である。そして、この前記各種植物、生薬、海藻を水または／および有機溶剤により、各種有効成分を抽出する。
【００１７】
前記各種植物、生薬、海藻から、有効成分を抽出するために使用される溶剤としては、水、低級１価アルコール類（例えばメタノール、エタノール、ｎ−ブタノール等）、低級多価アルコール（例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、１，３−ブチレングリコール、グリセリン等）、エーテル類（例えばジエチルエーテル等）、ケトン類（例えばアセトン、エチルメチルケトン等）、エステル類（例えば酢酸エチル）、ハロゲン化アルカン類（例えばジクロロメタン、クロロホルム等）、その他ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等からなる群から選ばれる溶剤を用いて行われる。
【００１８】
これら溶剤は単独に利用することができるが、上記２種以上の混合液（例えば２０〜８０％水性エタノール、ベンゼン：酢酸エチル（４：１混合液）、１，３−ブチレングリコール水溶液）を利用することができる。
【００１９】
またこの発明の育毛、養毛剤は、前記植物、生薬、海藻から水または／および有機溶剤により抽出される有効物質を少なくとも１種以上を常法により公知の各種化粧料基剤などに配合して、ヘヤートニック、ヘヤークリーム、ヘヤーリキッド、ヘヤーローション、ポマード、ヘヤーシャンプー、ヘヤーリンス、乳液その他の化粧料に適用できる。また、前記化粧料の形状は、溶液、ゾルゲル、エマルジョン、軟膏、オイル、ワックス、スプレー（エアゾール）等の各種形状で適用することができる。
【００２０】
さらに、この発明の育毛、養毛剤は他の公知の育毛、養毛剤とともに併用できるのは勿論であり、優れた相乗効果も期待できる。また、この発明の育毛、養毛剤は、各種界面活性剤、溶剤、色素、香料、防腐剤、抗酸化剤、保湿剤等その他の各種添加剤に対して安定なことを確認のうえ、これらの各種添加剤等ともに併用適用することも可能である。
【００２１】
なお、この発明の抽出物は多種多様であるために、５α−レダクターゼ阻害活性を有するだけではなく、保湿作用という副次的な効果も期待できるものである。
【００２２】
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【００２３】
【実施例】
（実施例１）
【００２４】
植物、海藻からの各種抽出物の調製：
前記各種植物、海藻いずれかの細片物または粉砕末１部に、水または／および有機溶剤１０部を加え、沸騰水浴上で約１時間還流加熱抽出する。得られた抽出液を濾過し、各植物および海藻からの各種溶剤による抽出物を得る。
【００２５】
生薬からの各種抽出物の調製：
前記各種生薬の細片物または粉砕末１部に、水または／および有機溶剤１００部を加え、沸騰水浴上で約１時間還流加熱抽出する。得られた抽出液を減圧下で濃縮乾固し、各生薬からの各種溶剤による抽出物を得る。
【００２６】
（実施例２）
処方例（含量はすべて重量％）：
【００２７】
【００２８】
【００２９】
【００３０】
【００３１】
【００３２】
【００３３】
（実施例３）
テストステロン−５α−レダクターゼ阻害効果試験法：
【００３４】
テストステロン３．０μｍｏｌをプロピレングリコール１０滴に溶解し、Ｔｒｉｓ−ＨＣｌ緩衝液（ｐＨ７．２）５ｍｌを加え、順にＮＡＤＰＨを５ｍｇ、酵素液（５α−レダクターゼ）を１ｍｌ、検体（実施例１で得られた物質）を加え、３７℃で１時間インキュベートした後、ジクロロメタン５０ｍｌを加えて反応を止め、ジクロロメタン層を分取し、減圧乾燥した後に、ガスクロマトグラフィー（カラムＯＶ−１７、カラム長さ２ｍ、カラム温度２５０℃、ＦＩＤ）で反応生成物を確認した。
【００３５】
なお、酵素液はＳＤラットの肝臓ホモジネートの上清分画であるＳ−９（オリエンタル酵母社製）を用いた。
【００３６】
阻害率：
各抽出物からなる阻害剤を添加しない対象の反応率を１００％（阻害率０％）とみなし、阻害物質を加えた反応量を算出して、阻害率を求める。算出は以下に示すごとくである。
【数１】
【００３７】
ａは対象のテストステロンのピーク面積。ｂは対象のデヒドロテストステロン、アンドロスタンジオールのピーク面積。ａ’は検体添加による、テストステロンのピーク面積。ｂ’は検体添加による、デヒドロテストステロン、アンドロスタンジオールのピーク面積。
【表１】
【００３８】
前記第１表において、５α−レダクターゼ阻害に対し、各種植物、生薬及び海藻抽出エキスにはレダクターゼ阻害効果が明らかに認められた。
【００３９】
（実施例４）
育毛効果試験法：
実施例（２）−１、（２）−２、（２）−３で調製したヘヤートニックを男性型脱毛症患者（年齢２５〜５５歳）それぞれ各１０名づつを被験者として、１日２回、１回に２ｍｌを頭部にまんべんなく塗布する方法を用いた。評価は、試験開始後３ケ月目と６ケ月目に行い、塗布部位の発毛状態を観察した。
【００４０】
非常に効果がある ──── ＋＋
効果がある ──── ＋
少し効果がある ──── ±
効果が無い ──── −
【表２】
【００４１】
前記第２表において、植物、生薬及び海藻の各抽出物に明かな育毛効果が認められた。
【００４２】
【発明の効果】
本発明の前記各種植物、生薬及び海藻の水または／および有機溶剤により抽出される抽出物は、すぐれたテストステロン−５α−レダクターゼ阻害効果を有する。
【００４３】
また、前記テストステロン−５α−レダクターゼ阻害剤は、一般に安全とされている天然物より抽出された物であり、生体に対する安全面において全く問題のないものであり、育毛・養毛剤に用いた場合、その育毛・養毛剤は養毛効果に非常に優れるものである。
【産業上の利用分野】
本発明は、テストステロン−５α−レダクターゼ阻害剤に関し、更に詳しくは、サザンカ [Camellia sasanqua]、カンツバキ [Camellia sasanqua]、ツバキ [Camellia japonica]、コブシ [Magnolia kobus] 、ハクモクレン [Magnolia denudata]、キンギョソウ [Antirrhinum majus Linn.]、オオイヌフグリ [Veronica persica Poir.] 、シシガシラ [cv. Shishigashira]、トウゴクシダ 、クスノキ [Cinnamomum Camphora]、アカマツ [Pinus densiflora] 、アラカシ [Quercus glauca] 、ウバメガシ [Quercus phillyraeoides] 、アカメガシワ [Mallotus japonicus] 、キンシバイ [Hypericum patulum]の各植物、あるいはKhamin Chan [Curcuma Longa] 、Chum Het Thet [Cassia alata Linn.]、Henna [Lawsonia inermis Linn.]、Curculigo orchioides [Curculigo orchioides] 、Ranoolifia [Rauvolfia Serpentina] の各生薬、あるいはカジメ [Ecklonia cava]、アナアオサ [Ulra pertusa] 、オオバモク [Sargassum ringgoldianum]、イワヒゲ [Myelophycus caespitosus]、イシゲ [Ishige okamurai]、アミモヨウ [Miccrodictyon japonicum]の各海藻それぞれの水または／および有機溶剤により抽出される抽出物を含有するテストステロン−５α−レダクターゼ阻害剤及び育毛効果に優れる養毛・育毛剤に関する。
【０００２】
【従来の技術】
脱毛、発毛に関する医学的な知見は未知の面が多く、これらに用いられる育毛成分の生理的な作用機序は不明な点が多い。現在、脱毛の原因と考えられているものには、内分泌異常、ヘヤサイクルの異常、自律神経の失調、血液循環の不良、栄養障害、その他（遺伝性、老化等）が挙げられる。従来の育毛成分には、たとえば卵胞ホルモン（特開昭６０−３８３１３号）等のホルモン類、ビタミンＥ、Ｂ2 、Ｂ6 、ビオチン、パントテン酸等のビタミン類、その他アミノ酸類（ペプチドサブスタンス：特開昭６１−７２０９号）、センブリエキス等の生薬エキス、塩酸ジフェンヒドラミン等の消炎剤、グリセリン等の湿潤剤、感光素３０１号等の頭皮刺激剤、ヒノキチオール等の殺菌剤、エタノール等の清涼剤等がある。
【０００３】
そして、育毛・養毛剤は、前記養毛成分を単独または複数組み合わせて局所での効果を期待して使用されており、育毛、発毛促進、ふけ、かゆみ、炎症の防止、薄毛・脱毛予防をはかり、これにより総合的な養毛・育毛効果をねらっている。
【０００４】
最近、物質が有する特性たとえばテストステロン−５α−レダクターゼ阻害作用や毛母細胞賦活作用、血行促進作用に着目して、その物質を養毛・育毛剤として利用される傾向がある。
【０００５】
前記テストステロン−５α−レダクターゼ阻害剤が養毛・育毛剤として利用される理由は、代謝系における男性ホルモン（テストステロン）が、テストステロン−５α−レダクターゼの作用を受けて５α−ジヒドロテストステロンが生成・蓄積され、その結果毛根が萎縮し、抜毛、禿等を誘引すると考えられているからである。
【０００６】
たとえば、テストステロン−５α−レダクターゼ阻害物性を有する物質例として、高級脂肪酸のカルボン酸（特開昭５９−１５２３０８号、特開昭５９−１７２４１０号、特開昭５９−１７２４１１号、特開昭６１−５００７号、特開昭６１−５０１４号、特開昭６１−７２０５号等）、芳香族アルコール、芳香族カルボン酸（特開昭５７−５３４０１号）、その他天然抽出物および化合物（特開昭６０−１４６８２９号、特開昭５９−５９６０６号、特開昭５９−５９６０７号等）、二環式テルペン類の二環式縮合環化合物などがある。
【０００７】
二環式テルペン類の二環式縮合環化合物としては、５，６−ジメチル−８−イソプロペニル−ビシクロ〔４，４，０〕デセン−１−オン−３（特開昭５９−５３４１７号）、４，８−ジメチル−２−イソプロピリデン−１，２，３ａ，４，５，６−ヘキサヒドロ−アズレノン（６）または３，６，８−テトラメチル−１，２，４，７，８，８ａ−ヘキサヒドロ−アズレノン（特開昭５９−５３４１８号、特開昭５９−５５８１３号）、４−メチル−１−イソプロピル−ビシクロ〔３，１，０〕ヘキセン−３−オン２および４，６，６−トリメチル−ビシクロ〔３，１，１〕ヘプテン−３−オン−２（特開昭５９−５３４１９号、特開昭５９−５５８１２号）等がある。
【０００８】
このように、前記テストステロン−５α−レダクターゼ阻害特性または／および養毛・育毛効果を有するとされる物質が、広範囲で且つ多種多用である理由は、前記テストステロン−５α−レダクターゼの酵素活性及び養毛・育毛等に関する生理活性が、それら化学物質の分子構造と特異的に相関関係を有することに起因すると考えられるからである。同類または同族の化学的類似化合物であっても、その異性体（構造異性体、互変異性体、光学異性体、幾何異性体等）により、前記酵素活性及び生理活性の有無および力価は大きく異なる。各種物質の養毛・育毛の生理活性効果は、その差異が著しく、各物質の養毛・育毛効果をひとつひとつ直接測定し検索しなければ判別できないのが現状である。
【０００９】
【発明が解決しようとする問題点】
かくのごとく、養毛・育毛効果を有する物質は多種多様のものが提案されているが、これらの従来の育毛・養毛剤は（特にホルモン類等には）副作用が生じたり、また養毛・育毛効果も必ずしも十分ではなく、より効果的な養毛・育毛剤の開発が望まれている。
【００１０】
そこで本発明者らは、上記背景に基づき一般的に安全とされている各種天然物から、レダクターゼ阻害効果に優れ、脱毛防止、養毛、育毛効果に有効でかつ安全な物質を検索、試験した結果、前記植物、生薬、海藻の水または／および有機溶剤により抽出された物質が、この課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【００１１】
【課題を解決するための手段】
このような現状に鑑み本発明者らは、鋭意検討の結果、ツバキ科のサザンカ [Camellia sasanqua]（以下単に「サザンカ」という）、カンツバキ [Camellia sasanqua]（以下単に「カンツバキ」という）、ツバキ [Camellia japonica]（以下単に「ツバキ」という）、モクレン科のコブシ [Magnolia kobus] （以下単に「コブシ」という）、ハクモクレン [Magnolia denudata]（以下単に「ハクモクレン」という）、ゴマノハグサ科のキンギョソウ [Antirrhinum majus Linn.]（以下単に「キンギョソウ」という）、オオイヌフグリ [Veronica persica Poir.] （以下単に「オオイヌフグリ」という）、カエデ科のシシガシラ [cv. Shishigashira]（以下単に「シシガシラ」という）、トウゴクシダ、クスノキ科のクスノキ [Cinnamomum Camphora]（以下単に「クスノキ」という）、マツ科のアカマツ [Pinus densiflora] （以下単に「アカマツ」という）、ブナ科のアラカシ [Quercus glauca] （以下単に「アラカシ」という）、ウバメガシ [Quercus phillyraeoides] （以下単に「ウバメガシ」という）、トウダイグサ科のアカメガシワ [Mallotus japonicus] （以下単に「アカメガシワ」という）、オトギリソウ科のキンシバイ [Hypericum patulum]（以下単に「キンシバイ」という）の各植物、あるいはKhamin Chan [Curcuma Longa] （以下単に「Khamin Chan 」という）、Chum Het Thet [Cassia alata Linn.]（以下単に「Chum Het Thet」という）、Henna [Lawsonia inermis Linn.]（以下単に「Henna 」という）、Curculigo Orchioides [Curculigo orchioides] （以下単に「Curculigo Orchioides」という）、Ranoolifia [Rauvolfia Serpentina] （以下単に「Ranoolifia」という）の各生薬、あるいはこんぶ科カジメ属のカジメ [Ecklonia cava]（以下単に「カジメ」という）、あおさ科アオノリ属のアナアオサ [Ulra pertusa] （以下単に「アナアオサ」という）、ひばまた科ホンダワラ属のオオバモク [Sargassum ringgoldianum]（以下単に「オオバモク」という）、はばもどき科ハバモドキ属のイワヒゲ [Myelophycus caespitosus]（以下単に「イワヒゲ」という）、いしげ科イシゲ属のイシゲ [Ishige okamurai]（以下単に「イシゲ」という）、、アミモヨウ [Miccrodictyon japonicum]（以下単に「アミモヨウ」という）の各海藻の水または／および有機溶剤により抽出される抽出物に、テストステロン−５α−レダクターゼ阻害にすぐれた効果を示すとの知見を得ることができた。
【００１２】
この発明の抽出物とは、前記植物及び生薬の花、皮、果実、葉、茎、根、種子あるいは海藻のいずれから抽出されたものであってもよいが、実使用にあたっては、より効果的な原料選択が望ましい。
【００１３】
また、この抽出物は溶剤を除去した後の乾燥物の状態で使用することもでき、又溶剤に溶解した状態で使用することもできる。
【００１４】
そして、この抽出物を少なくとも１種を含有させることにより育毛・養毛剤を調製することができる。
【００１５】
前記各種植物、生薬、海藻は人体に対して毒性を有しないから、育毛・養毛剤への配合量は特に限定されず広範囲で選択することができるが、抽出物の量（乾燥物換算）で全量に対して０．００１〜１０重量％の範囲内での使用が適当であり、望ましくは０．０１〜２重量％の範囲内である。これは０．０１重量％以下であると、育毛効果が弱く、また一方、２％以上にしても効果面においてあまり顕著な差異は認め難く効果的ではないためである。
【００１６】
この発明で利用される原料は、前記各種植物、生薬、海藻の生の物、又は乾燥物が利用できるが、前記各種植物、生薬、海藻を陰干しで約２〜５日間乾燥し、腐敗を防止した状態の物を用いるのが好適である。そして、この前記各種植物、生薬、海藻を水または／および有機溶剤により、各種有効成分を抽出する。
【００１７】
前記各種植物、生薬、海藻から、有効成分を抽出するために使用される溶剤としては、水、低級１価アルコール類（例えばメタノール、エタノール、ｎ−ブタノール等）、低級多価アルコール（例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、１，３−ブチレングリコール、グリセリン等）、エーテル類（例えばジエチルエーテル等）、ケトン類（例えばアセトン、エチルメチルケトン等）、エステル類（例えば酢酸エチル）、ハロゲン化アルカン類（例えばジクロロメタン、クロロホルム等）、その他ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等からなる群から選ばれる溶剤を用いて行われる。
【００１８】
これら溶剤は単独に利用することができるが、上記２種以上の混合液（例えば２０〜８０％水性エタノール、ベンゼン：酢酸エチル（４：１混合液）、１，３−ブチレングリコール水溶液）を利用することができる。
【００１９】
またこの発明の育毛、養毛剤は、前記植物、生薬、海藻から水または／および有機溶剤により抽出される有効物質を少なくとも１種以上を常法により公知の各種化粧料基剤などに配合して、ヘヤートニック、ヘヤークリーム、ヘヤーリキッド、ヘヤーローション、ポマード、ヘヤーシャンプー、ヘヤーリンス、乳液その他の化粧料に適用できる。また、前記化粧料の形状は、溶液、ゾルゲル、エマルジョン、軟膏、オイル、ワックス、スプレー（エアゾール）等の各種形状で適用することができる。
【００２０】
さらに、この発明の育毛、養毛剤は他の公知の育毛、養毛剤とともに併用できるのは勿論であり、優れた相乗効果も期待できる。また、この発明の育毛、養毛剤は、各種界面活性剤、溶剤、色素、香料、防腐剤、抗酸化剤、保湿剤等その他の各種添加剤に対して安定なことを確認のうえ、これらの各種添加剤等ともに併用適用することも可能である。
【００２１】
なお、この発明の抽出物は多種多様であるために、５α−レダクターゼ阻害活性を有するだけではなく、保湿作用という副次的な効果も期待できるものである。
【００２２】
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【００２３】
【実施例】
（実施例１）
【００２４】
植物、海藻からの各種抽出物の調製：
前記各種植物、海藻いずれかの細片物または粉砕末１部に、水または／および有機溶剤１０部を加え、沸騰水浴上で約１時間還流加熱抽出する。得られた抽出液を濾過し、各植物および海藻からの各種溶剤による抽出物を得る。
【００２５】
生薬からの各種抽出物の調製：
前記各種生薬の細片物または粉砕末１部に、水または／および有機溶剤１００部を加え、沸騰水浴上で約１時間還流加熱抽出する。得られた抽出液を減圧下で濃縮乾固し、各生薬からの各種溶剤による抽出物を得る。
【００２６】
（実施例２）
処方例（含量はすべて重量％）：
【００２７】
（実施例３）
テストステロン−５α−レダクターゼ阻害効果試験法：
【００３４】
テストステロン３．０μｍｏｌをプロピレングリコール１０滴に溶解し、Ｔｒｉｓ−ＨＣｌ緩衝液（ｐＨ７．２）５ｍｌを加え、順にＮＡＤＰＨを５ｍｇ、酵素液（５α−レダクターゼ）を１ｍｌ、検体（実施例１で得られた物質）を加え、３７℃で１時間インキュベートした後、ジクロロメタン５０ｍｌを加えて反応を止め、ジクロロメタン層を分取し、減圧乾燥した後に、ガスクロマトグラフィー（カラムＯＶ−１７、カラム長さ２ｍ、カラム温度２５０℃、ＦＩＤ）で反応生成物を確認した。
【００３５】
なお、酵素液はＳＤラットの肝臓ホモジネートの上清分画であるＳ−９（オリエンタル酵母社製）を用いた。
【００３６】
阻害率：
各抽出物からなる阻害剤を添加しない対象の反応率を１００％（阻害率０％）とみなし、阻害物質を加えた反応量を算出して、阻害率を求める。算出は以下に示すごとくである。
【数１】
ａは対象のテストステロンのピーク面積。ｂは対象のデヒドロテストステロン、アンドロスタンジオールのピーク面積。ａ’は検体添加による、テストステロンのピーク面積。ｂ’は検体添加による、デヒドロテストステロン、アンドロスタンジオールのピーク面積。
【表１】
前記第１表において、５α−レダクターゼ阻害に対し、各種植物、生薬及び海藻抽出エキスにはレダクターゼ阻害効果が明らかに認められた。
【００３９】
（実施例４）
育毛効果試験法：
実施例（２）−１、（２）−２、（２）−３で調製したヘヤートニックを男性型脱毛症患者（年齢２５〜５５歳）それぞれ各１０名づつを被験者として、１日２回、１回に２ｍｌを頭部にまんべんなく塗布する方法を用いた。評価は、試験開始後３ケ月目と６ケ月目に行い、塗布部位の発毛状態を観察した。
【００４０】
非常に効果がある ──── ＋＋
効果がある ──── ＋
少し効果がある ──── ±
効果が無い ──── −
【表２】
前記第２表において、植物、生薬及び海藻の各抽出物に明かな育毛効果が認められた。
【００４２】
【発明の効果】
本発明の前記各種植物、生薬及び海藻の水または／および有機溶剤により抽出される抽出物は、すぐれたテストステロン−５α−レダクターゼ阻害効果を有する。
【００４３】
また、前記テストステロン−５α−レダクターゼ阻害剤は、一般に安全とされている天然物より抽出された物であり、生体に対する安全面において全く問題のないものであり、育毛・養毛剤に用いた場合、その育毛・養毛剤は養毛効果に非常に優れるものである。
Claims (2)
- サザンカ［Camellia sasanqua］、カンツバキ［Camelliasasanqua cv.Fujikoana］、ツバキ［Camelliajaponica］、キンギョソウ［Antirrhinummajus Linn.］、オオイヌフグリ［Veronicapersica Poir.］、シシガシラ［cv.Shishigashira］、トウゴクシダ、アカマツ［Pinus densiflora］、アラカシ［Quercus glauca］、ウバメガシ［Quercus phillyraeoides］、キンシバイ［Hypericum patulum］、Khamin Chan［Curcuma Longa］、Chum Het Thet［Cassiaalata Linn.］、Curculigo orchioides［Curculigo orchioides］の各植物、及びカジメ［Ecklonia cava］、アナアオサ［Ulva pertusa］、オオバモク［Sargassum ringgoldianum］、イワヒゲ［Myelophycus caespitosus］、イシゲ［Ishige okamurai］、アミモヨウ［Microdictyon japonicum］の各海藻を水または／および有機溶剤により抽出された抽出物を少なくとも１種以上を含有しているテストステロン−５α−レダクターゼ阻害剤。
- 請求項１記載の抽出物を含有することを特徴とする育毛・養毛剤。
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