JP3536184B2 - テストステロン−５α−レダクターゼ阻害剤 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、テストステロン−５α
−レダクターゼ阻害剤に関し、更に詳しくは、ヒイロタ
ケ〔Trametes sanguinea〕、シュタケ〔Trametes cinna
barina〕、ニンギョウタケ〔Polyporus confluens 〕、
オシロイタケ〔Tyromyces lacteus 〕、キコブタケ〔Ph
ellinus igniarius 〕、タモギタケ〔Pheurotus citrin
opileatus 〕、ナメコ〔Pholiota nameko 〕、エノキタ
ケ〔Flammulina velutipes〕、オウギタケ〔Gomphidius
roseus 〕の各子実体の水または／および有機溶剤によ
り抽出される抽出物を含有するテストステロン−５α−
レダクターゼ阻害剤及び育毛効果に優れる育毛・養毛剤
に関する。

【０００２】

【従来の技術】脱毛、発毛に関する医学な知見は未知の
面が多く、これらに用いられる育毛成分の生理的な作用
機序は不明な点が多い。現在、脱毛の原因と考えられて
いるものには、内分泌異常、ヘヤサイクルの異常、自律
神経の失調、血液循環の不良、栄養障害、その他（遺伝
性、老化等）が挙げられる。従来の育毛成分には、たと
えば卵胞ホルモン（特開昭６０−３８３１３号）等のホ
ルモン類、ビタミンＥ、Ｂ₂ 、Ｂ₆ 、ビオチン、パント
テン酸等のビタミン類、その他アミノ酸類（ペプチドサ
ブスタンス：特開昭６１−７２０９号）、センブリエキ
ス等の生薬エキス、塩酸ジフェンヒドラミン等の消炎
剤、グリセリン等の湿潤剤、感光素３０１号等の頭皮刺
激剤、ヒノキチオール等の殺菌剤、エタノール等の清涼
剤等がある。

【０００３】そして、育毛・養毛剤は、前記養毛成分を
単独または複数組み合わせて局所での効果を期待して使
用されており、育毛、発毛促進、ふけ、かゆみ、炎症の
防止、薄毛・脱毛予防をはかり、これにより総合的な養
毛・育毛効果をねらっている。

【０００４】最近、物質が有する特性たとえばテストス
テロン−５α−レダクターゼ阻害作用や毛母細胞賦活作
用、血行促進作用に着目して、その物質を養毛、育毛剤
として利用される傾向がある。

【０００５】前記テストステロン−５α−レダクターゼ
阻害剤が養毛・育毛剤として利用される理由は、代謝系
における男性ホルモン（テストステロン）が、テストス
テロン−５α−レダクターゼの作用を受けて５α−ジヒ
ドロテストステロンが生成・蓄積され、その結果毛根が
萎縮し、抜毛・禿等を誘引すると考えられているからで
ある。

【０００６】たとえば、テストステロン−５α−レダク
ターゼ阻害物性を有する物質例として、高級脂肪酸等の
カルボン酸（特開昭５９−１５２３０８号、特開昭５９
−１７２４１０号、特開昭５９−１７２４１１号、特開
昭６１−５００７号、特開昭６１−５０１４号、特開昭
６１−７２０５号等）、芳香族アルコール、芳香族カル
ボン酸（特開昭５７−５３４０１号）、その他天然抽出
物および化合物（特開昭６０−１４６８２９号、特開昭
５９−５９６０６号、特開昭５９−５９６０７号等）、
二環式テルペン類の二環式縮合環化合物などがある。

【０００７】二環式テルペン類の二環式縮合環化合物と
しては、５，６−ジメチル−８−イソプロペニル−ビシ
クロ〔４，４，０〕デセン−１−オン−３（特開昭５９
−５３４１７号）、４，８−ジメチル−２−イソプロピ
リデン−１，２，３ａ，４，５，６−ヘキサヒドロ−ア
ズレノン（６）または３，６，８−テトラメチル−１，
２，４，７，８，８ａ−ヘキサヒドロ−アズレノン（特
開昭５９−５３４１８号、特開昭５９−５５８１３
号）、４−メチル−１−イソプロピル−ビシクロ〔３，
１，０〕ヘキセン−３−オン２および４，６，６−トリ
メチル−ビシクロ〔３，１，１〕ヘプテン−３−オン−
２（特開昭５９−５３４１９号、特開昭５９−５５８１
２号）等がある。

【０００８】このように、前記テストステロン−５α−
レダクターゼ阻害特性または／および養毛・育毛効果を
有するとされる物質が、広範囲で且つ多種多用である理
由は、前記テストステロン−５α−レダクターゼの酸素
活性及び養毛・育毛等に関する生理活性が、それら化学
物質の分子構造と特異的に相関関係を有することに起因
すると考えられるからである。同類または同族の化学的
類似化合物であっても、その異性体（構造異性体、互変
異性体、光学異性体、幾何異性体等）により、前記酸素
活性及び生理活性の有無および力価は大きく異なる。各
種物質の養毛・育毛の生理活性効果は、その差異が著し
く、各物質の養毛・育毛効果をひとつひとつ直接測定し
検索しなければ判別できないのが現状である。

【０００９】

【発明が解決しようとする問題点】かくのごとく、養毛
・育毛効果を有する物質として多種多様のものが提案さ
れているが、これらの従来の育毛・養毛剤は（特にホル
モン類等には）副作用が生じたり、また養毛・育毛効果
も必ずしも十分ではなく、より効果的な養毛・育毛剤の
開発が望まれている。

【００１０】そこで本発明者らは、上記背景に基づき一
般的に安全とされている各種天然物から、レダクターゼ
阻害効果に優れ、脱毛防止、養毛、育毛効果に有効でか
つ安全な物質を検索、試験した結果、前記各種キノコ
（子実体）の水または／および有機溶剤により抽出され
た物質が、この課題を解決しうることを見出し、本発明
を完成するに至った。

【００１１】

【課題を解決するための手段】このような現状に鑑み本
発明者らは、鋭意検討の結果、さるのこしかけ科ホウロ
クタケ属のヒイロタケ〔Trametes sanguinea〕（以下単
に「ヒイロタケ」という）、シュタケ〔Trametes cinna
barina〕（以下単に「シュタケ」という）、タマチョレ
イ属のニンギョウタケ〔Polyporus confluens 〕（以下
単に「ニンギョウタケ」という）、オシロイタケ属のオ
シロイタケ〔Tyromyces lacteus 〕（以下単に「オシロ
イタケ」という）、きこぶたけ科キコブタケ属のキコブ
タケ〔Phellinus igniarius 〕（以下単に「キコブタ
ケ」という）、ひらたけ科ヒラタケ属のタモギタケ〔Ph
eurotus citrinopileatus 〕（以下単に「ヒラタケ」と
いう）、もえぎたけ科スギタケ属のナメコ〔Pholiota n
ameko 〕（以下単に「ナメコ」という）きしめじ科エノ
キタケ属のエノキタケ〔Flammulina velutipes〕（以下
単に「エノキタケ」という）、くぎたけ科オウギタケ属
のオウギタケ〔Gomphidius roseus 〕（以下単に「オウ
ギタケ」という）の各子実体から水または／および有機
溶剤により抽出される抽出物群が、テストステロン−５
α−レダクターゼ阻害にすぐれた効果を示すとの知見を
得ることができた。

【００１２】この発明の抽出物は、溶剤を除去した後の
乾燥物の状態で使用することもでき、又溶剤に溶解した
状態で使用することもできる。そして、この抽出物の少
なくとも１種を含有させることにより養毛・育毛剤を調
製することができる。

【００１３】前記各種キノコ（子実体）は人体に対して
毒性を有しないから、育毛・養毛剤への配合量は特に限
定されず広範囲で選択することができるが、抽出物の量
（乾燥物換算）で全量に対して０・０１〜１０重量％の
範囲内での使用が適当であり、望ましくは０．１〜２重
量％の範囲内である。これは０．１重量％以下である
と、育毛効果が弱く、また一方、２％以上にしても効果
面においてあまり顕著な差異は認め難く効率的ではな
い。

【００１４】この発明で利用される原料は、前記各種キ
ノコ（子実体）の生の物、又は乾燥物が利用できるが、
前記各種子実体を陰干しで約２〜５日間乾燥し、腐敗を
防止した状態の物を用いるのが好適である。そして、こ
の前記各種キノコ（子実体）を水または／および有機溶
剤により、各種有効成分を抽出する。

【００１５】前記各種子実体から、有効成分を抽出する
ために使用される溶剤としては、水、低級１価アルコー
ル類（例えばメタノール、エタノール、ｎ−ブタノール
等）、低級多価アルコール類（例えばエチレングリコー
ル、プロピレングリコール、１，３−ブチレングリコー
ル、グリセリン等）、エーテル類（例えばジエチルエー
テル等）、ケトン類（例えばアセトン、エチルメチルケ
トン等）、エステル類（例えば酢酸エチル）、ハロゲン
化アルカン類（例えばジクロロメタン、クロロホルム
等）、その他ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等
からなる群から選ばれる溶剤を用いて行われる。

【００１６】これら溶剤は単独に使用することができる
が、２種以上の混合液（例えば２０〜８０％水性エタノ
ール、ベンゼン：酢酸エチル（４：１混合液）、１，３
−ブチレングリコール水溶液）として利用することもで
きる。

【００１７】またこの発明の育毛、養毛剤は、前記子実
体から水または／および有機溶剤により抽出される有効
物質の少なくとも１種以上を常法により公知の各種化粧
料基剤などに配合して、ヘヤートニック、ヘヤークリー
ム、ヘヤーリキッド、ヘヤーローション、ポマード、ヘ
ヤーシャンプー、ヘヤーリンス、乳液その他の化粧料に
適用できる。また、前記化粧料の形状は、溶液、ゾルゲ
ル、エマルジョン、軟膏、オイル、ワックス、スプレー
（エアゾール）等の各種形状で適用することができる。

【００１８】さらに、この発明の育毛、養毛剤は他の公
知の育毛、養毛剤とともに併用できるのは勿論であり、
優れた相乗作用も期待できる。また、この発明の育毛、
養毛剤は、各種界面活性剤、溶剤、色素、香料、防腐
剤、抗酸化剤、保湿剤等その他の各種添加剤に対して安
定なことを確認のうえ、これらの各種添加剤等ともに併
用適用することも可能である。

【００１９】なお、この発明の抽出物は多種多様である
ために、５α−レダクターゼ阻害活性を有するだけでは
なく、保湿作用という副次的な効果も期待できるもので
ある。

【００２０】以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細
に説明するが、本発明はこれに限定されるものではな
い。

【００２１】

【実施例】

子実体からの各種抽出物の調製：前記各種子実体それぞ
れ１部に抽出溶剤５０部を加え、沸騰水浴上で約１時間
還流加熱抽出する。冷却後、遠心分離（３０００ｒｐ
ｍ、１０分）等により第１回固液分離する。上澄み液を
とり、この上澄み液はさらに濾紙を用いて濾過して第１
抽出液とする。一方、第１回固液分離後の残渣は同様に
抽出溶剤２５部で前回と同様沸騰水浴上で約１時間還流
加熱抽出および固液分離、濾過等の操作を２回おこな
い、第１回ないし第３回の各抽出液（濾液）をすべて合
わせ、減圧下において水または／および有機溶剤を留去
し、各子実体からの各種溶剤による抽出物を得る。

【００２２】（実施例１） 処方例（含量はすべて重量％）：

【００２３】 （１）ヘヤートニック 〔成分〕 エタノール ６０ ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 （Ｅ．Ｏ ６０モル） ０．５ グリセリン ３ メントール ０．２ ニンギョウタケ抽出物（乾燥物） ０．２ 香料及び色素 適量 イオン交換水 全体量を１００とする

【００２４】 （２）シャンプー 〔成分〕 ポリオキシエチレンアルキル エーテル硫酸ナトリウム （Ｅ．Ｏ ２モル） １５ ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド ５ グリセリン ３ ニンギョウタケ抽出物（乾燥物） ０．２ エタノール ５ 香料及び防腐剤 適量 イオン交換水 全体を１００とする

【００２５】 （３）ヘヤークリーム 〔成分〕 流動パラフィン ２０ 固形パラフィン ３ ポリオキシエチレンセチルエーテル （Ｅ．Ｏ １５モル） ２ ソルビタンセスキオレート １ エノキタケ抽出物（乾燥物） ０．５ カルボキシビニルポリマー ０．１ エタノール １０ 水酸化カリウム ０．１ グリセリン ３ 香料及び防腐剤 適量 イオン交換水 全体を１００とする

【００２６】 （４）ヘヤーローション 〔成分〕 エタノール ２０ グリセリン ３ モノラウリン酸ポリオキシエチレン ソルビタン （Ｅ．Ｏ ２０モル） １ オシロイタケ抽出物（乾燥物） ０．５ 香料及び防腐剤 適量 イオン交換水 全体を１００とする

【００２７】 （５）軟膏剤 〔成分〕 サラシミツロウ ５．０ 精製ラノリン ５．０ オウギタケ抽出物（乾燥物） １ ワセリン ８９．０

【００２８】（実施例２） テストステロン−５α−レダクターゼ阻害効果試験法：
テストステロン３．０μｍｏｌをプロピレングリコール
１０滴に溶解し、Ｔｒｉｓ−ＨＣｌ緩衝液（ｐＨ７．
２）５ｍｌを加え、順にＮＡＤＰＨを５ｍｇ、酵素液
（５α−レダクターゼ）を１ｍｌ，検体（実施例１で得
られた物質）を加え、３７℃で１時間インキュベートし
た後、ジクロロメタン５０ｍｌを加え反応を止め、ジク
ロロメタン層を分取し、減圧乾燥した後に、ガスクロマ
トグラフィー（カラムＯＶ−１７、カラム長さ２ｍ、カ
ラム温度２５０℃、ＦＩＤ）で反応生成物を確認した。

【００２９】なお、酵素液はＳＤラットの肝臓ホモジネ
ートの上清分画であるＳ−９（オリエンタル酵母社製）
を用いた。

【００３０】阻害率：キノコ子実体抽出液からなる阻害
剤を添加しない対象の反応率を１００％（阻害率０％）
とみなし、阻害物質を加えた反応量を算出して、阻害率
を求める。算出は以下に示すごとくである。

【数１】

【００３１】ａは対象のテストステロンのピーク面積。
ｂは対象のデヒドロテストステロン、アンドロスタンジ
オールのピーク面積。ａ’は検体添加による、テストス
テロンのピーク面積。ｂ’は検体添加による、デヒドロ
テストステロン、アンドロスタンジオールのピーク面
積。

【表１】

【００３２】前記第１表において、５α−レダクターゼ
阻害に対し、各種子実体抽出エキスにはレダクターゼ阻
害効果が明らかに認められた。

【００３３】（実施例３） 育毛効果試験法：男性型脱毛症患者１０名（年齢２５〜
５５歳）を被験者として、実施例（１）−１で調製した
ヘアートニックを１日２回、１回に２ｍｌを頭部にまん
べんなく塗布する方法を用いた。評価は、試験開始後３
カ月目と６カ月目に行い、塗布部位の発毛状態を観察し
た。

【００３４】 非常に効果がある ──── ＋＋ 効果がある ──── ＋ 少し効果がある ──── ± 効果が無い ──── −

【表２】

【００３５】前記第２表において、子実体抽出物に明か
な育毛効果が認められた。

【００３６】

【発明の効果】本発明の前記各種キノコ（子実体）の水
または／および有機溶剤により抽出される抽出物は、す
ぐれたテストステロン−５α−レダクターゼ阻害効果を
有する。

【００３７】また、前記テストステロン−５α−レダク
ターゼ阻害剤は、一般に安全とされている天然物より抽
出された物であり、生体に対する安全面において全く問
題のないものであり、育毛・養毛剤に用いた場合、その
育毛・養毛剤は育毛効果に非常に優れるものである。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁷ 識別記号 ＦＩ Ｃ１２Ｎ 9/99 Ｃ１２Ｎ 9/99 (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) A61K 35/84 A61K 7/06

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ヒロタケ〔Trametes sanguinea〕、シュタ
   ケ〔Trametescinnabarina〕、ニンギョウタケ〔Polypor
   us confluens〕、オシロイタケ〔Tyromyces lacteu
   s〕、キコブタケ〔Phellinusigniarius〕、ナメコ〔Pho
   liota nameko〕、オウギタケ〔Gomphidius roseus〕の
   各子実体からなる群から選んだ子実体抽出物を少なくと
   も１種以上含有しているテストステロン−５α−レダク
   ターゼ阻害剤。
2. 【請求項２】 請求項１記載のキノコ（子実体）を水ま
   たは／および有機溶剤により抽出される抽出物を含有す
   ることを特徴とする育毛・養毛剤。