JP3651627B2 - Vベルト自動変速機のプーリ構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動二輪車等に採用されているVベルト自動変速機におけるプーリ構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
Vベルト自動変速機は、駆動プーリと従動プーリ間に断面がV字状をした無端状Vベルトが架渡され、両プーリの有効半径を機関回転数に応じて自動的に加減して動力を伝達するものであり、各プーリとも固定プーリ半体と軸方向に摺動可能な可動プーリ半体との間にVベルトを挟持し、固定プーリ半体に対する可動プーリ半体の軸方向の相対位置により有効半径を変えるようにしている。
【0003】
従来、プーリは、一般に鉄製であり、かかる従動プーリの例を図12に示す。
図12は、内燃機関を前部に搭載し後部に軸支された後輪を一体に支持するパワーユニット01の後部を示しており、後車軸04を出力軸とする減速機02の減速機入力軸03に回動自在にインナスリーブ06が軸支され、同インナスリーブ06の外周にアウタースリーブ07がインナスリーブ06に対して摺動自在に軸支されている。
【0004】
インナスリーブ06とアウタスリーブ07の右端に従動プーリ08が設けられていて、同従動プーリ08は、インナスリーブ06の右端部に嵌着された固定プーリ半体09と、アウタスリーブ07の右端部に嵌着された可動プーリ半体010 とからなり、右側の固定プーリ半体09と左側の可動プーリ半体010 とが対向して、その間にVベルト011 が挟持される。
【0005】
減速機入力軸03およびスリーブ06の左端部には、クラッチ012 が設けられており、スリーブ06の左端部に嵌着されたドライブプレート013 の外周を減速機入力軸03の左端部に嵌着されたクラッチアウター014 が覆っている。
前記アウタスリーブ07の周りに周設されたスプリング015 がドライブプレート013 と可動プーリ半体010 間に介装されて、同スプリング015 によって可動プーリ半体010 が固定プーリ半体09側に付勢されてVベルト011 を挟持するようにしている。
【0006】
アウタスリーブ07の外周とスプリング015 の内周の間には、可動プーリ半体010 側のスプリングガイド016 とドライブプレート013 側のスプリングガイド017 が部分的にラップして設けられている。
【0007】
可動プーリ半体010 が鉄製の場合、別体のアウタスリーブ07と一体に固着し、アウタスリーブ07のインナスリーブ06に対する摺動を円滑に行うため潤滑油の導通路018 を備え、かつアウタスリーブ07の両端部に潤滑油の漏れ防止のオイルシール019 等を必要とする。
【0008】
このように従動プーリ08の部品点数が多く構造が複雑であるので、従動プーリをアウミニウムの鋳造品とする例が既に提案されており、かかる特開平4−224345号公報等に記載された例を図13に示す。
【0009】
本従動プーリ020 の固定プーリ半体021 は、円筒状のインナスリーブ部021aと一体にアルミダイキャストにより鋳造成形されており、減速機入力軸030 に回動自在に軸支されいる。
一方可動プーリ半体022 もアウタスリーブ部022aと一体にアルミダイキャストにより鋳造成形されており、前記インナスリーブ部021aの外周に摺動自在にアウタスリーブ部022aが軸支されている。
【0010】
アウタスリーブ部022aの周りに周設されたスプリング025 が、インナスリーブ部021aの左端に嵌着されたクラッチ025 のドライブプレート026 と可動プーリ半体022 間に介装されて、可動プーリ半体022 を固定プーリ半体021 側に付勢してVベルト023 を挟持するようになっている。
以上のように従動プーリ020 をアウミニウム製の鋳造品とすることで、部品点数を少なくし構造を簡素化することができ、低コストとすることが可能である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしスプリング025 はバネ鋼製であり、その一端は固定プーリ半体021 と一体のドライブプーリ026 に当接し、他端はアルミニウム製の可動プーリ半体022 に当接する。
【0012】
可動プーリ半体022 は、固定プーリ半体021 に対して軸方向の摺動とともに周方向の摺動も許容しており、固定プーリ半体021 と相対的な回動があり、そのために鋼製のスプリング025 の端部とアルミニウム製の可動プーリ半体022 との摺接により可動プーリ半体022 の当接部に磨耗が生じやすい。
【0013】
また可動プーリ半体022 のアウタスリーブ部022aもスプリング025 との間で摩擦による磨耗が生じる可能性があるので、アウタスリーブ部022aとスプリング025 との間隔を大きくとることが考えられるが、プーリ構造を大型化せずに同間隔を大きくするとなると、アウタスリーブ部022aの肉厚が薄くなって強度が低下する。
【0014】
そこで前記図12に図示した例のようにスプリングガイドをアウタスリーブ部022aとスプリング025 との間に配設することが考えられるが、今度は鉄製のスプリングガイドとアルミニウム製のアウタスリーブ部022a間の摩擦で、アウタスリーブ部022aの磨耗が問題となる。
そのためアウタスリーブ部022aとスプリングガイドとの間の間隔を大きくとろうとすると、プーリ構造が大型化するか、またはアウタスリーブ部022aの肉厚が薄くなり、十分な強度が得られなくなる。
【0015】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、可動プーリ半体をアウミニウム製としてプーリ構造を軽量簡素化し、かつ小型化すると同時に、十分な強度を確保することができるVベルト自動変速機のプーリ構造を供する点にある。
【0016】
【課題を解決するための手段および作用】
上記目的を達成するために、本発明は、回転軸に軸支された固定プーリ半体と、該固定プーリ半体と対向してVベルトを挟持すべく固定プーリ円筒軸に摺動自在に軸支された可動プーリ半体とを備えたVベルト自動変速機において、前記可動プーリ半体をアルミニウムによる鋳造等による成形品とし、前記可動プーリ半体を前記固定プーリ半体側に付勢するバネ鋼製のスプリングを前記可動プーリ円筒軸の外周に近接して設け、前記スプリングの内周と前記可動プーリ円筒軸の外周との間隙に樹脂製のスプリングガイドを設け、前記スプリングの一端は前記スプリングガイドの端部に形成されたフランジに当接され、前記スプリングの他端は前記可動プーリ半体との間に介装された鉄製のスプリングシートに当接されたVベルト自動変速機のプーリ構造とした。
【0017】
可動プーリ半体が可動プーリ円筒軸とともにアルミニウムによる成形品であるので、軽量化とともに部品点数が少なくプーリ構造を簡素化することができる。スプリングを可動プーリ円筒軸の外周に近接して設け、スプリングの内周と可動プーリ円筒軸の外周との間隙に樹脂製のスプリングガイドを設けたので、スプリングと可動プーリ円筒軸との間を小さくしてプーリ構造の小型化を図っても、樹脂製のスプリングガイドによりアルミニウム製の可動プーリ円筒軸の磨耗が防止でき、十分な強度を維持することができる。
【0019】
バネ鋼製のスプリングの端部が鉄製のスプリングシートに当接するので、該両者間が滑り易く、固定プーリ半体に対する可動プーリ半体の相対的回動においてスプリングはスプリングシート間で容易に滑り、他の部分での滑りを生じさせず磨耗することもなく常に良好な変速特性を得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下本発明に係る一実施の形態について図1ないし図11に図示し説明する。
図1は、本Vベルト自動変速機を適用したスクータ型自動二輪車1の全体側面図である。
【0021】
車体前部2と車体後部3とが、低いフロア部4を介して連結されており、車体前部2から下方に延出したのちフロア部4を後方へ水平に延びた車体フレーム5は、フロア部後端から立上がり、さらに後方へ斜め上向きに傾斜して後端まで延出している。
【0022】
該車体フレーム5の前部には、上端に操向ハンドル6を備え、下端に前輪7を軸支するフロントフォーク8が枢支されている。
車体フレーム5の立上がり部には、後端に後輪9を軸支したスイング式のパワーユニット20の前端下部がリンク10を介して上下に揺動自在に枢支され、そのパワーユニット20の後部上面とその上方の車体フレーム5との間にリヤクッション11が介装されている。
【0023】
車体前部2はレッグシールド15で覆われ、フロア部4はステップフロア16が張設され、車体後部3はボデイカバー17で覆われており、ボデイカバー17の上部にシート18が設けられている。
【0024】
パワーユニット20は、前部に配置された単気筒2サイクルの内燃機関21と、後部に備えられた歯車減速機22と、内燃機関21と歯車減速機22間に配設された本Vベルト自動変速機23とが、ユニット化されてユニットケース25に収容されている。
【0025】
パワーユニット20の構造を図2に示す。
ユニットケース25は、Vベルト自動変速機23と歯車減速機22とを収容するとともに内燃機関21のクランクケースの左半部を兼ねる前後に長尺の左側ケース26と、この左側ケース26の前部に接合されてクランクケースの右半部を構成する右側ケース27と、前記左側ケース26の左側方を覆う伝動ケースカバー28と、歯車減速機22を左側から覆うギヤケース29とから構成されている。
【0026】
左側ケース26と右側ケース27により形成されるクランクケースには、左右一対の主軸受30,30によりクランクシャフト31が回転自在に支持され、内燃機関21の同クランクケースからシリンダブロック21aおよびシリンダヘッド21bが接合されて、上方に若干後傾して立設されている。
シリンダブロック21a内を摺動するピストン32は、コネクティングロッド33を介してクランクシャフト31に連結されている。
【0027】
クランクシャフト31の右端にはACジェネレータ34と冷却ファン35が設けられ、内燃機関21,ACジェネレータ34,冷却ファン35の外周をエンジンカバー36が覆っている。
【0028】
クランクシャフト31の左端には、Vベルト自動変速機23の駆動プーリ40が設けられており、駆動プーリ40は、クランクシャフト31の左端に固着された固定プーリ半体41とクランクシャフト31に軸方向に摺動自在に支持された可動プーリ半体42とが相対向してしており、可動プーリ半体42とクランクシャフト31に固着したランププレート43との間に遠心ウエイト44が半径方向に移動自在に収容されている。
【0029】
遠心ウエイト44の遠心方向の移動で可動プーリ半体42は、固定プーリ半体41に接近するようになり、両プーリ半体41,42間に挟持されるVベルト55の有効半径を大きくすることができる。
【0030】
一方左側ケース26の後部とギヤケース29内に配設される歯車減速機22は、図3に示すように減速機入力軸45と減速機出力軸である後車軸47との間に中間軸46が設けられ、減速機入力軸45に嵌着された入力ギヤ48に中間軸46に嵌着された大径の中間ギヤ49が噛合し、同じ中間軸46に嵌着された小径の中間ギヤ50に後車軸47に嵌着された出力ギヤ51が噛合して減速機構が構成されている。
【0031】
図3に示すように、この歯車減速機22の減速機入力軸45のギヤケース29を貫通した左半部に従動プーリ60とクラッチ70が設けられている。
従動プーリ60は、共にアルミニウム製である相対向する一対の固定プーリ半体61と可動プーリ半体62とからなる。
【0032】
図6に図示するように固定プーリ半体61は、本体の内周部が軸方向に延出して円筒状のインナスリーブ部61aが形成され、同インナスリーブ部61aの端部は若干縮径して外周にセレーションが刻設された取付部61bが形成され、同固定プーリ半体61は本体から取付部61bまでアルミダイキャストにより一体に鋳造されている。
【0033】
一方可動プーリ半体62は、図4および図5に図示するように本体の内周部が軸方向に延出して前記固定プーリ半体61のインナスリーブ部61aより内径が若干大きい円筒状のアウタスリーブ部62aが形成され、同アウタスリーブ部62aの端縁に周方向等間隔に3か所断面が円弧状の突起62bが軸方向に突出して形成され、同突起62bの先端部が図4で時計回り方向に屈曲して可動側カム部62cが形成されている。
可動側カム部62cは、周方向の前後端面が傾斜した外向きカム面62coと内向きカム面62ciを形成している。
【0034】
本例では、3つの可動側カム部62cにそれぞれ回転反対方向に三角形状の膨出部を設け内向きカム面62ciを形成しているが、同内向きカム面62ciは後記する固定側カム部75との相対的な回転を規制するものであり大きな負荷が加わらないので、3つのうち1つの可動側カム部62cにのみ膨出部を設けて内向きカム面を形成するようにしても足りる。
なお可動プーリ半体62の本体におけるアウタスリーブ部62aの付け根の外周部に環状に溝条62dが形成されている。
上記可動プーリ半体62は、本体から可動側カム部62cに至るまでアルミダイキャストにより一体に鋳造されている。
【0035】
以上のような従動プーリ60のうち固定プーリ半体61は、図3に示すようにインナスリーブ部61aが減速機入力軸45に貫通されてニードルベアリング63とボールベアリング64を介して回転自在に軸支され、同固定プーリ半体61のインナスリーブ部61aの外周にアウタスリーブ部62aを摺動自在に支持させて可動プーリ半体62が軸支される。
可動プーリ半体62は、固定プーリ半体61に対して本体どうしが相対向し、相対的に軸方向の摺動とともに周方向の回動が可能に支持されている。
【0036】
減衰機入力軸45の左端および固定プーリ半体61のインナスリーブ部61aの左端取付部61bにクラッチ70が設けられている。
クラッチ70の偏平な有底円筒状をしたクラッチアウター71は、その底壁71aの中心孔が減速機入力軸45の左端ねじ部にカラー73を介して嵌合し、ナット74により螺合緊締され、その周側壁71bを右方に向け開口している。
【0037】
同クラッチアウター71の内部において固定プーリ半体61のインナスリーブ部61aの左端取付部61bにクラッチインナーであるドライブプレート72がセレーション嵌合して取り付けられている。
【0038】
図8ないし図10に図示するようにドライブプレート72は、内周縁に偏平円筒状のセレーション嵌合部72aが形成され、同セレーション嵌合部72aの外周面から放射方向に芯部72bが延出し、同芯部72bにより若干段差を有して外周プレート部72cが連結された形状をしている。
【0039】
外周プレート部72cの等間隔に3か所ピン73が植設され、同ピン73にクラッチシュー74が軸支される。
前記芯部72bには、自己潤滑性を有する樹脂製の固定側カム部75が一体にモールドされて等間隔に3か所設けられている。
【0040】
各固定側カム部75,75の互いの間は空隙72dが形成されており、この3つの空隙72dに前記可動プーリ半体62の3つの可動側カム部62cが臨んで、樹脂製の固定側カム部75と可動側カム部62cが噛み合うようにして係合する。
樹脂製の固定側カム部75は、図10に図示するように歪曲した芯部72bに固着され、断面が概ね台形をしていて、周方向の前後端面が傾斜した平面である内向きカム面75iと湾曲した曲面である外向きカム面75oを形成している。
【0041】
かかるドライブプレート72は、クラッチアウター71内に配設され、ピン73に軸支されたクラッチシュー74が遠心力によりクラッチスプリング76に抗して半径外方向に揺動し、クラッチシュー74の外周に設けられた摩擦部材74aがクラッチアウター71の周側壁71bの内周面に当接し、係合するようになっている。
【0042】
ドライブプレート72は、固定プーリ半体61のインナスリーブ61aの左端取付部61bにセレーション嵌合されて一体に取り付けられるので、ドライブプレート72は、固定プーリ半体61と一体に回転する。
【0043】
図3に示すようにこのドライブプレート72と固定プーリ半体61の本体との間に摺動自在に支持される可動プーリ半体62は、そのアウタスリーブ部62aの外周に近接してバネ鋼製のスプリング80が周設され、同スプリング80はドライブプレート72と可動プーリ半体62間に介装されて可動プーリ半体62を固定プーリ半体61に接近させる方向に付勢する。
【0044】
このスプリング80の内周とアウタスリーブ部62aの外周との間隙に、樹脂製のスプリングガイド81が介装される。
スプリングガイド81は、図7に図示するように円筒状をしており、一端にフランジ81aが形成されており、その内径はアウタスリーブ部62aの外径より僅かに大きく、フランジ81a側の内径は若干拡径している。
【0045】
同スプリングガイド81をアウタスリーブ部62aの外周に配設し、ドライブプレート72をインナスリーブ61aの左端取付部61bに取り付けると、樹脂製の固定側カム部75がスプリングガイド81の拡径した内径部に嵌入してスプリングガイド81を支持し、スプリングガイド81のフランジ81aは、ドライブプレート72の外周プレート部72cの内周の段差部に当接する。
【0046】
一方可動プーリ半体62のアウタスリーブ部62aの付け根の外周部に設けられた環状に溝条62dに、鉄製の環状鉄板であるスプリングシート82が嵌装され、このスプリングシート82と前記スプリングガイド81のフランジ81aとに両端を当接してスプリング80が介装される。
【0047】
こうしてスプリング80により付勢される可動プーリ半体62と固定プーリ半体61との間に、前部を駆動プーリ40に巻き掛けたVベルト55の後部が挟持され、スプリング80により可動プーリ半体62が固定プーリ半体61側に付勢され、巻き掛けられたVベルト55の有効半径を大きくするように作用し、そのためVベルト55を緊張させることができる。
【0048】
また可動プーリ半体62のアウタスリーブ62aの左端可動側カム部62cは、固定プーリ半体61と一体に回転するドライブプレート72の空隙72dに臨んで樹脂製の固定側カム部75と噛み合うように係合しており、この3つの可動側カム部62cと3つの固定側カム部75の係合状態を展開して示した図が図11である。
【0049】
固定側カム部75の内向きカム面75iと外向きカム面75oが、可動側カム部62cの内向きカム面62ciと外向きカム面62coにそれぞれ若干のクリアランスを存して対向している。
したがって固定側カム部75に対する可動側カム部62cの回転方向のガタは小さい。
【0050】
本Vベルト自動変速機23は、以上のような構造をしており、以下動作について説明する。
内燃機関21の回転速度が小さいときは、図2に実線で示すように駆動プーリ40側のランププレート43に沿って移動する遠心ウエイト44は中心側にあって可動プーリ半体42が固定プーリ半体41から離れVベルト55の巻き掛けの有効半径が小さく、よって従動プーリ60側ではスプリング80により可動プーリ半体62が付勢されて固定プーリ半体61に接近し、Vベルト55の巻き掛けの有効半径は大きく維持され、大きな減速比で動力が伝達される。
【0051】
機関回転速度が増加すると、図2に2点鎖線で示すように、遠心ウエイト44が遠心方向に移動して、駆動プーリ40側の可動プーリ半体42が固定プーリ半体41に近づきVベルト55の巻き掛けの有効半径が大きくなり、よって従動プーリ60側ではスプリング80に抗して可動プーリ半体62が固定プーリ半体61から離れ、Vベルト55の巻き掛けの有効半径は小さくなり、減速比が次第に減少し、このときはクラッチ70も係合状態にあって後輪9の回転速度が増加される。
【0052】
なお機関回転速度が増加すると、上記したように可動プーリ半体62が固定プーリ半体61から離れる方向に移動するので、可動プーリ半体62と一体の可動側カム部62cは、図11に2点鎖線で示すように固定側カム部75間の空隙72dに入り込むことになる。
【0053】
そして急加速等によりVベルト55の張力が急増したような場合は、後輪9に接続されて大きな負荷を受ける固定プーリ半体61とVベルト55との間にスリップが生じ、一方固定プーリ半体61に対し相対的な回転が可能な可動プーリ半体62には後輪9の荷重が直接作用しないため、可動プーリ半体62はVベルト55と一体に回転しようとする。
【0054】
したがって固定プーリ半体61に対し可動プーリ半体62は、相対的な回転を生じ、そのため可動プーリ半体62と一体の可動側カム部62cは、固定プーリ半体61と一体のドライブプレート72に固着された固定側カム部75に対して先行して回転しようとし、図11に示すように可動側カム部62cは、固定側カム部75に対して矢印A方向に相対的に移動する。
【0055】
すると可動側カム部62cの外向きカム面62coが、固定側カム部75の外向きカム面75oに当接して、可動側カム部62cは反作用により矢印B方向の力を受け、よって可動プーリ半体62を固定プーリ半体61に近づけVベルト55の挟圧が増加してVベルト55のスリップが防止されることになる。
【0056】
以上のように固定プーリ半体61と可動プーリ半体62との間には、軸方向の相対的な移動のほかに回転方向の相対的な回転を生じるが、可動プーリ半体62のアウタスリーブ部62aの外周に近接して周設されるスプリング80は、樹脂製のスプリングガイド81によってアウタスリーブ部62aとの干渉が防止され、アルミニウム製のアウタスリーブ部62aが鋼製のスプリング80との干渉により磨耗を生じるおそれはない。
【0057】
樹脂製のスプリングガイド81の外周でスプリング80をガイドしているので、スプリングガイド81がアウタスリーブ部62aに干渉したとしても、鉄製のスプリングガイドに比べアウタスリーブ部62aの磨耗は極めて小さい。
したがってスプリングガイド81をアウタスリーブ部62aに接近させることができ、アウタスリーブ部62aの肉厚を減らして強度を低下させることなくプーリ構造の小型化を図ることができる。
【0058】
なお固定プーリ半体61および可動プーリ半体62は、それぞれインナスリーブ部61a,アウタスリーブ部62aと一体にアルミニウム製の鋳造品であるので、部品点数が少なくプーリ構造が簡素化され、軽量化および低コスト化が図られている。
【0059】
また鋼製のスプリング80の一端は、樹脂製のスプリングガイド81のフランジ81aに圧接し、他端は可動プーリ半体62側に設けられた鉄製のスプリングシート82に圧接されるので、スプリング80とスプリングシート82との間で滑り易く、したがって固定プーリ半体61と可動プーリ半体62との間に相対的な回転を生じてもスプリング80は専らスプリングシート82との間で滑り、他の樹脂製のスプリングガイド81との間では滑りを生じさせず、磨耗の心配が極めて少ない。
したがってスプリング80は常に正常に作用してVベルト自動変速機23の変速特性は良好に維持される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るVベルト自動変速機を適用したスクータ型自動二輪車の全体側面図である。
【図2】図1におけるII−II線に沿って截断したパワーユニットの断面図である。
【図3】パワーユニット後部の要部断面図である。
【図4】可動プーリ半体の側面図である。
【図5】図4におけるV−V線に沿って截断した断面図である。
【図6】固定プーリ半体の断面図である。
【図7】スプリングガイドの断面図である。
【図8】ドライブプレートの側面図である。
【図9】図8におけるIX−IX線に沿って截断した断面図である。
【図10】図8におけるX−X線に沿って截断した断面図である。
【図11】固定側カム部と可動側カム部との係合状態を示した展開図である。
【図12】従来のプーリ構造を示す断面図である。
【図13】別の従来のプーリ構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1…スクータ型自動二輪車、2…車体前部、3…車体後部、4…フロア、5…車体フレーム、6…操向ハンドル、7…前輪、8…フロントフォーク、9…後輪、10…リンク、11…リヤクッション、
15…レッグシールド、16…ステップフロア、17…ボデイカバー、18…シート、 20…パワーユニット、21…内燃機関、22…歯車減速機、23…Vベルト自動変速機、
25…ユニットケース、26…左側ケース、27…右側ケース、28…伝動ケースカバー、29…ギヤケース、30…主軸受、31…クランクシャフト、32…ピストン、33…コネクティングロッド、34…ACジェネレータ、35…冷却ファン、36…エンジンカバー、
40…駆動プーリ、41…固定プーリ半体、42…可動プーリ半体、43…ランププレート、44…遠心ウエイト、45…減速機入力軸、46…中間軸、47…後車軸、48…入力ギヤ、49…中間ギヤ、50…中間ギヤ、51…出力ギヤ、
55…Vベルト、
60…従動プーリ、61…固定プーリ半体、62…可動プーリ半体、63…ニードルベアリング、64…ボールベアリング、
70…クラッチ、71…クラッチアウター、72…ドライブプレート、73…カラー、74…ナット、75…固定側カム部、76…クラッチスプリング、
80…スプリング、81…スプリングガイド、82…スプリングシート。
Claims (2)
- 回転軸に軸支された固定プーリ半体と、該固定プーリ半体と対向してVベルトを挟持すべく固定プーリ円筒軸に摺動自在に軸支された可動プーリ半体とを備えたVベルト自動変速機において、
前記可動プーリ半体をアルミニウムによる鋳造等による成形品とし、
前記可動プーリ半体を前記固定プーリ半体側に付勢するバネ鋼製のスプリングを前記可動プーリ円筒軸の外周に近接して設け、
前記スプリングの内周と前記可動プーリ円筒軸の外周との間隙に樹脂製のスプリングガイドを設け、
前記スプリングの一端は前記スプリングガイドの端部に形成されたフランジに当接され、
前記スプリングの他端は前記可動プーリ半体との間に介装された鉄製のスプリングシートに当接されたことを特徴とするVベルト自動変速機のプーリ構造。 - 前記可動プーリ円筒軸端部にクラッチのドライブプレートが固着され、
前記ドライブプレートの内周の段差部に前記スプリングガイドのフランジが当接されることを特徴とする請求項1記載のVベルト自動変速機のプーリ構造。
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