JP3650485B2 - 酵素処理小麦粉の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、小麦粉に酵素溶液を添加して酵素処理した後、乾燥、粉砕する酵素処理小麦粉の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、小麦粉の物性や、小麦粉を適用する具材の食感を改良するため、小麦粉に酵素を添加したり、小麦粉を加水処理した後、乾燥することなどが行われている。
【0003】
例えば、特開平6−237722号には、プロテアーゼと共に、リパーゼ及びα−アミラーゼの少なくとも一方を含有することを特徴とするカラ揚げ粉が開示されている。このカラ揚げ粉は、肉等の具材にまぶして室温で5分間程度放置した後、油で揚げると、食味が良好で柔らかい衣と、柔らかでジューシー感に富みばさつきのない具部分とからなるカラ揚げが得られるとされている。
【0004】
また、特開平1−165332号には、小麦リポキシゲナーゼを小麦粉1g当たり50〜500 ユニット添加したことを特徴とする改良小麦粉が開示されている。この小麦粉は、製パン時に生地をしめ、パンのボリュームを大きくし、パンの内相の白度を向上させ、しかも異臭がしないという利点を有するとされている。
【0005】
更に、特開昭62−107742号には、原料小麦粉に40〜500 重量%の加水を行い、均一に混合した後、小麦粉中の蛋白質及び澱粉が変性しない温度で乾燥することを特徴とする菓子用小麦粉の製造法が開示されている。こうして得られた小麦粉は、加工適性が優れており、この小麦粉を用いることにより、体積が大きく、しかも内相、食感の優れたケーキ、カステラ等の菓子類が得られるとされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開平6−237722号及び特開平1−165332号に開示された技術では、小麦粉に酵素を乾燥状態で添加するだけであるから、その小麦粉に水を添加して生地やバッター液にしたり、その小麦粉を具材にまぶして具材の水分と接触したときに、酵素が作用し始めることになる。
【0007】
しかしながら、業務用に用いる場合、例えば生地やバッター液を作ってから一度に使用することなく、長い時間をかけて少しずつ使用することが多く、そのような場合、時間が経過するにつれて酵素反応が進行して、生地やバッター液の粘度等の物性が変化してしまうという不都合があった。
【0008】
また、特開昭62−107742号に開示された改良小麦粉の製造法では、原料小麦粉に40〜500 重量%の加水を行うため、後に乾燥する工程において、時間がかかり、エネルギーも多量に必要になり、製造コストが高くなるという問題があった。更に、この方法では、酵素を用いていないため、酵素処理による特別な効果は期待できなかった。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、少ない加水量で小麦粉を酵素処理できるようにして、乾燥、粉砕等の工程を容易に、短時間で行えるようにし、しかも、使用に際して経時変化しない、一定の物性の小麦粉を得ることができる酵素処理小麦粉の製造法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、小麦粉に、この小麦粉100重量部に対してプロテアーゼ及び/又はリポキシダーゼを含む酵素溶液を3〜10重量部噴霧して均一に混合し、酵素反応させた後、小麦粉温度75〜150℃で10〜60分加熱して酵素反応を停止させると共に小麦粉を乾燥させ、次いで粉砕処理することを特徴とする酵素処理小麦粉の製造法を提供するものである。
【0011】
本発明の第2は、上記発明において、0.001〜1.0重量%の酵素を含む酵素溶液を用い、前記酵素反応を小麦粉温度30〜70℃で、10〜100分間行う酵素処理小麦粉の製造法を提供するものである。
【0013】
本発明の第3は、上記各発明において、前記小麦粉を、薄い層状にするか、流動状態にするか、又は飛散状態にして、前記酵素溶液を噴霧する酵素処理小麦粉の製造法を提供するものである。
【0014】
本発明の第4は、上記各発明において、前記酵素溶液の添加量を、小麦粉100重量部に対して5〜10重量部とする酵素処理小麦粉の製造法を提供するものである。
【0015】
本発明の第1によれば、小麦粉にプロテアーゼ及び/又はリポキシダーゼを含む酵素溶液を噴霧して均一に混合し、酵素反応させるようにしたので、小麦粉100重量部に対して酵素溶液3〜10重量部という少ない加水量でも、酵素反応を効果的に進行させて、改良された小麦粉を作ることができる。そして、加水量が少ないので、酵素処理後の乾燥工程を容易に短時間で行うことができ、また、ドウが形成されにくく固まりにくいので、粉砕工程も容易に短時間で行うことができる。
【0016】
本発明の第2によれば、0.001〜1.0重量%の酵素を含む酵素溶液を用い、酵素反応を小麦粉温度30〜70℃で、10〜100分間行うようにしたので、酵素反応を適切に進行さることができる。
【0018】
本発明の第3によれば、小麦粉を、薄い層状にするか、流動状態にするか、又は飛散状態にして、酵素溶液を噴霧することにより、少ない加水量でも、小麦粉に酵素を均一に混合することができる。
【0019】
本発明の第4によれば、酵素溶液の添加量を、小麦粉100重量部に対して5〜10重量部とすることにより、酵素反応後の乾燥、粉砕処理を更に容易に短時間で行うことが可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明において、小麦粉の種類、等級等は限定されず、例えば、強力粉、中力粉、薄力粉等のいずれであってもよい。ただし、揚げ物の衣、菓子などの用途に用いる小麦粉の改良の場合には、薄力粉を用いることが好ましい。
【0021】
また酵素の種類は、プロテアーゼ、及びリポキシダーゼが好ましい。
【0022】
酵素として、例えばプロテアーゼを用いた場合には、小麦粉中のグルテンを加水分解することにより、粘性の低い生地又はスラリーを得ることができる。それによって、天ぷらなどの揚げ物に使用することにより、衣のサクサク感を向上させ、揚げた後に時間が経っても、衣の食感を良好に維持することができ、ホワイトソースなどのソース基材に用いた場合には、サラッとした食感になり、ケーキ、クッキーなどの菓子に用いた場合には、サク味がでて、口どけがよくなるという効果が得られる。
【0023】
また、酵素としてリポキシダーゼを用いた場合には、小麦粉中の脂質、特に不飽和脂肪酸が酸化されるので、生地が白くなり、生地感(生地のしまり)が改良され、生地のミキシング耐性も向上し、内相の白い、膜延びのよいベーカリー製品を製造できるという効果が得られる。
【0024】
上記の各酵素は、いずれも市販されており、当業者が容易に入手することができる。例えば、プロテアーゼとしては、「プロチン」(商品名、大和化成製)、「ヌクレイシン」(商品名、阪急バイオインダストリー社製)、「ニュートラーゼ」(商品名、ノボノルディスクバイオインダストリー社製)、「オリエンターゼ22BF」(商品名、阪急バイオインダストリー社製)「VERON P」(商品名、レーム社製)、「VERON W」(商品名、レーム社製)等の細菌プロテアーゼ、「アクチナーゼAS」(商品名、科研製薬製)等の放線菌プロテアーゼ、「プロテアーゼ アマノ」(商品名、天野製薬製)、「コクラーゼSS」(商品名、三共製)、「スミチーム LPL」(商品名、新日本化学工業製)、「XP−415」(商品名、ナガセ生化学工業製)、「VERON PS/PS10」(商品名、レーム社製)等のかびプロテアーゼ、「精製パパイン」(商品名、朝日ビール食品製)、「パパインW−40」(商品名、天野製薬製)、「食品用精製パパイン」(商品名、ナガセ生化学工業製)、「COROLASE P」(商品名、レーム社製)等のパパイン、「プロメライン」(商品名、バイオコン社製)等のプロメラインなどを用いることができる。
【0025】
また、リパーゼとしては、例えば、「タリパーゼ」(商品名、田辺製薬製)、「リパーゼ アマノ」(商品名、天野製薬製)、「リパーゼOF、MY」(商品名、名糖産業製)、「ホスホリパーゼ」(商品名、名糖産業製)等を用いることができる。更に、リポキシダーゼとしては、「DOSOY」(商品名、日本バイオコン製)等、トランスグルタミナーゼとしては、「アクティバ」(商品名、味の素株式会社製)等、アミラーゼとしては、「コクラーゼ」(商品名、三共製)等、ヘミセルラーゼとしては、「スミチームX」(商品名、新日本化学工業製)等、アスコルビン酸オキシダーゼとしては、「ASOナガセ」(商品名、長瀬産業製)等、グルコースオキシダーゼとしては「ハイデラーゼ」(商品名、天野製薬製)等を用いることができる。
【0026】
酵素溶液の濃度は、それぞれの酵素の力価に応じて、目的とする酵素処理効果が得られるように適宜設定すればよいが、通常、0.001 〜1.0 重量%とすることが好ましい。
【0027】
酵素溶液の添加量(すなわち加水量)は、小麦粉100重量部に対して3〜10重量部、好ましくは5〜10重量部とする。酵素溶液の添加量が3重量部未満では、酵素溶液が小麦粉全体にいきわたらないので、酵素反応を効果的に行わせることが困難であり、10重量部を超えると、酵素処理後の乾燥に時間がかかり、また、ドウができて固まるため、粉砕が困難になるので好ましくない。
【0028】
小麦粉への酵素溶液の添加、混合方法としては、少ない加水量で酵素をできるだけ均一に混合するため、小麦粉を、薄い層状にするか、流動状態にするか、又は飛散状態にして、酵素溶液を噴霧することが好ましい。このような混合方法を工業的に実施するには、例えば「ターピュライザー」(商品名、ホソカワミクロン製)、「マッハミキサー」(商品名、イソベ麺機製)、「フロージェッター」(商品名、ニップン機工製)等の瞬間混合器を用いることが好ましい。
【0029】
上記のようにして小麦粉に酵素溶液を混合した後、好ましくは小麦粉温度30〜70℃で、10〜100 分間保持して酵素反応させる。上記温度が30℃未満の場合には、酵素が短時間で十分に作用しにくく、70℃を超える場合には、酵素が失活し始めるので好ましくない。また、上記時間が10分間未満の場合には、酵素が十分に作用せず、100 分間を超えると、生産性が低下するので好ましくない。
【0030】
こうして酵素処理した後、好ましくは小麦粉温度75〜150 ℃で、10〜60分間保持して酵素反応を停止させると共に、小麦粉を乾燥させる。上記温度が75℃未 満では、酵素反応が確実に停止しないことがあり、150 ℃を超えると、小麦粉が焙焼されて着色することがあるので好ましくない。また、上記時間が10分間未満の場合には、酵素反応が確実に停止しないことがあり、60分間を超えると、熱エネルギーの浪費となり、小麦粉が焙焼されて着色することがあるので好ましくない。なお、乾燥は、通常の小麦粉と同様の水分含量、すなわち、水分量14〜15重量%前後まで行うことが好ましい。
【0031】
酵素反応処理と、酵素反応停止及び乾燥処理とは、別々の装置に入れてそれぞれ行うこともできるが、工業的には、例えば、パドルドライヤー(奈良機械製作所製)、流動層乾燥機(大河原製作所製)、気流乾燥機(大河原製作所製)等の温度コントロールが可能な装置を用いて連続して行うことが好ましい。
【0032】
上記のようにして酵素処理を終了し、乾燥した小麦粉は、多少固まり(ダマ)ができているので、粉砕処理して、通常の小麦粉と同様な粉状とする。粉砕処理は、小麦粉の固まりを粉砕又は解砕して粉状にできるものであればよく、例えばピンミル(マキノ産業製)、アトマイザー(東京アトマイザー製)、パルペライザー(ホソカワミクロン製)等を用いて行うことができる。
【0033】
本発明の酵素処理小麦粉の製造法により得られた酵素処理小麦粉は、例えば、天ぷら粉、唐揚粉等の揚げ物用粉、ホワイトソース等のソース基材、スポンジケーキ、クッキー等の菓子原料等、小麦粉を原料とする各種の用途に用いることができる。なお、使用した酵素の種類に応じて、改良効果が異なるので、それぞれに適した用途に用いることが好ましい。
【0034】
【実施例】
実施例1
プロテアーゼ(商品名「パパインW−40」、天野製薬株式会社製)1gを、蒸留水50gに溶解させて酵素溶液を得た。
【0035】
薄力粉を、厚さ1〜2cmで、なるべく均一になるように広げた後、薄力粉(商品名「ホワイトフェザー」、日東製粉製)100 重量部に対して5重量部の酵素溶液を、噴霧器を用いて均一に噴霧し、均一に混合した。
【0036】
こうして酵素溶液を混合した薄力粉700 gをビニール袋に入れて密閉し、60℃にセットした電気乾燥機(商品名「DN−60」、ヤマト科学株式会社製)に入れて、90分間保持して、酵素反応させた。この時、粉温は、50〜55℃となった。
【0037】
その後、この薄力粉をビニール袋から取り出し、蓋を開けた容器に入れ替えて再び電気乾燥機に入れ、90℃にセットして、45分間保持した。電気乾燥機を90℃にセットして、25分後に粉温が75℃に到達し、それから更に20分後に80〜85℃となった。
【0038】
加熱処理終了後、電気乾燥機から取り出して放冷し、粉砕機(商品名「サイクロテック」、ティケーター社製)で粉砕して、通常の薄力粉と同粒度の粉状として、プロテアーゼ処理薄力粉(酵素処理薄力粉)を得た。
【0039】
試験例1
実施例1で得られたプロテアーゼ処理薄力粉について、ゲル濾過クロマトグラフィーを行い、小麦蛋白がどの程度酵素処理されているかをみた。なお、比較のため、実施例1で得られたプロテアーゼ処理薄力粉以外についても、同様な試験を行った。試験したサンプルは以下の通りである。
【0040】
A:実施例1において、酵素溶液を水に代え、あとは実施例1と同様に処理したもの。
B:未処理薄力粉(商品名「ホワイトフェザー」、日東製粉製)。
C:実施例1で得られたプロテアーゼ処理薄力粉。
D:実施例1において、薄力粉に酵素溶液を噴霧、混合するのではなく、薄力粉1000gに、酵素粉末「パパインW−40」1gを混合した後、水50gを添加し、あとは実施例1と同様に処理したもの。
E:使用酵素「パパインW−40」自体。
【0041】
上記サンプルを5g採取して、pH7.0 のリン酸緩衝液25mlを加え、5℃下に、1時間撹拌して可溶化画分を抽出した後、8000rpm.で10分間遠心分離し、上清をゲル濾過カラムにチャージした。なお、ゲル濾過クロマトグラフィーは、「Superdex 75 Hi-load 16/60」 (商品名、Pharmacia 製)を用い、0.15M NaCl+50mMリン酸緩衝液(pH7.0 )で溶出することにより行った。この結果を図1に示す。なお、図1中のA〜Eは、上記サンプルA〜Eに対応する。
【0042】
図1の結果から、ゲル濾過クロマトグラフィーにおいて、Cの実施例1で得られたプロテアーゼ処理薄力粉のみピークが出現し、小麦蛋白が分解されていることがわかる。また、Dの薄力粉に酵素粉末「パパインW−40」を混合した後、水を加えて処理したものにはピークがなく、小麦蛋白は分解されていないことがわかる。
【0043】
試験例2
実施例1で得られたプロテアーゼ処理薄力粉と、未処理薄力粉とを用いた天ぷら用バッターで、エビの天ぷらを製造した。
【0044】
天ぷら用バッターは、プロテアーゼ処理薄力粉又は未処理薄力粉90重量部、コーンスターチ10重量部、ベーキングパウダー1.5 重量部とを混合した粉ミックス100 gに対して、冷水130 〜150 gを加え、ホイッパーを用いて撹拌して調製した。
【0045】
これらのバッターについて、バッター調製した後、0分後、15分後、30分後、45分後、 及び60分後に、B型粘度計(芝浦システム社製)のロータ No.2を用いて、6rpm 、12rpm の条件で粘度を測定したところ、いずれのバッターも粘度の経時的変化は起こらなかった。
【0046】
これらの天ぷら用バッターを用いて、エビの天ぷらを調製し、製造直後のもの、製造後、6時間放置したもの、製造後、冷凍し、再フライしたものについて、6人のパネラーに試食させて食感を評価させた。
【0047】
その結果、プロテアーゼ処理薄力粉を用いた天ぷらの衣は、未処理薄力粉を用いた天ぷらの衣より、サク味のある食感であり、口どけがよいという評価を得た。また、プロテアーゼ処理薄力粉を用いた天ぷらの衣は、製造後、6時間放置したもの、及び製造後、冷凍し、再フライしたものについても、サク味のある良好な食感が得られたが、未処理薄力粉を用いた天ぷらの衣では、食感がべたつき、サク味が著しく低下していた。
【0048】
試験例3
通常の未処理薄力粉に、実施例1で得られたプロテアーゼ処理薄力粉を10重量%、20重量%、30重量%配合した薄力粉を用いてスポンジケーキを製造した。なお、比較のため、未処理薄力粉のみを用いたもの(対照)も製造した。
【0049】
上白糖100 重量部と、全卵100 重量部とを混合して、比重0.28〜0.29のクリームマスを製造し、次いで、上記各種の薄力粉100 重量を静かに混合し、水40重量部を加えた後、型に入れ、180 ℃で、30分間焼成して、各種のスポンジケーキを得た。
【0050】
得られたスポンジケーキを、6人のパネラーに試食させて、外観、食感を評価させた。その結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1の結果から、未処理薄力粉に、実施例1で得られたプロテアーゼ処理薄力粉を10重量%、20重量%、30重量%配合した薄力粉を用いて製造したスポンジケーキは、いずれも、外観は未処理薄力粉のみを用いて製造したスポンジケーキ(対照)と変わらないが、食感は、対照より口どけがよく、サクみがあることがわかる。
【0053】
実施例2
リポキシダーゼ(Feinbiochemica GmbH & Co製)200mg を、蒸留水100ml に溶解させて酵素溶液を得た。
【0054】
薄力粉(商品名「ホワイトフェザー」、日東製粉製)2000gを、厚さ約2cmで、なるべく均一になるように広げた後、上記で得られた酵素溶液を、噴霧器を用いて均一に噴霧し、均一に混合した。
【0055】
こうして酵素溶液を混合した薄力粉をビニール袋に入れて密閉し、60℃にセットした実施例1と同様の電気乾燥機に入れて、60分間保持して、酵素反応させた。この時、粉温は、50〜55℃となった。
【0056】
その後、この薄力粉をビニール袋から取り出し、蓋を開けた容器に入れ替えて再び電気乾燥機に入れ、90℃にセットして、45分間保持した。電気乾燥機を90℃にセットして、25分後に粉温が75℃に到達し、それから更に20分後に80〜85℃となった。
【0057】
加熱処理終了後、電気乾燥機から取り出して放冷し、実施例1と同様の粉砕機で粉砕して、通常の薄力粉と同粒度の粉状として、リポキシダーゼ処理薄力粉(酵素処理薄力粉)を得た。
【0058】
試験例4
薄力粉として、未処理薄力粉(商品名「ホワイトフェザー」、日東製粉製)だけのもの(対照)、未処理薄力粉50重量部に、実施例2で得られたリポキシダーゼ処理薄力粉を50重量部配合したもの、実施例2で得られたリポキシダーゼ処理薄力粉だけのものの三種類を用いて、表2の配合割合で、クッキーを製造した。なお、ミルク溶液は、脱脂粉乳を5重量倍の水に溶解させた溶液である。
【0059】
【表2】
【0060】
まず、食塩と、砂糖と、ショートニングと、重曹とを混合し、低速で3分間、1分毎にかきおとしながらミキシングし、次いで、水と、ミルク溶液とを加えて、低速で1分間、中速1分間、1分毎にかきおとしながらミキシングし、更に、薄力粉を加えて、低速で2分間、30秒毎にかきおとしながらミキシングしてクッキー生地を得た。
【0061】
得られたクッキー生地をほぼ6等分にして、それぞれアルミ板の上に載せ、掌で軽く抑えた後、6mm厚のガードを用い、ローラで伸ばして生地厚さ7mmとし、直径60mmの丸型を用いて型抜きし、抜き型の周りの余分な生地は取り除いた。
【0062】
型抜きした生地を、ロータリーオーブンに入れ、210 ℃で、10分間焼成してクッキーを得た。
【0063】
得られたクッキーを、「American association of cereal chemists approved method 」の「10-50D」の方法に準拠してクッキー試験を行い、生地の物性、クッキー表面のひび割れ、食味・食感を評価した。これらの結果を表3に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
表3の結果から、未処理小麦粉にリポキシダーゼ処理小麦粉を配合することにより、生地の物性、クッキーの表面のひび割れ、食味・食感のいずれもがよくなり、酵素処理小麦粉のみにすると更によくなることがわかる。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の酵素処理小麦粉の製造法によれば、小麦粉に酵素溶液を噴霧して均一に混合し、酵素反応させるようにしたので、小麦粉100重量部に対して酵素溶液3〜10重量部という少ない加水量でも、酵素反応を効果的に進行させて、改良された小麦粉を作ることができる。そして、加水量が少ないので、酵素処理後の乾燥、粉砕工程を、容易に、短時間で行うことができる。また、酵素処理した後、酵素反応を停止させ、乾燥、粉砕するので、使用に際して加水した状態で時間が経過しても、物性が変化することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酵素処理小麦粉の製造法の一実施例により得られた小麦粉と、比較のための試験標品とをゲル濾過クロマトグラフィーにかけたときの流出パターンを示す図表である。
Claims (4)
- 小麦粉に、この小麦粉100重量部に対してプロテアーゼ及び/又はリポキシダーゼを含む酵素溶液を3〜10重量部噴霧して均一に混合し、酵素反応させた後、小麦粉温度75〜150℃で10〜60分加熱して酵素反応を停止させると共に小麦粉を乾燥させ、次いで粉砕処理することを特徴とする酵素処理小麦粉の製造法。
- 0.001〜1.0重量%の酵素を含む酵素溶液を用い、前記酵素反応を小麦粉温度30〜70℃で、10〜100分間行う請求項1記載の酵素処理小麦粉の製造法。
- 前記小麦粉を、薄い層状にするか、流動状態にするか、又は飛散状態にして、前記酵素溶液を噴霧する請求項1又は2に記載の酵素処理小麦粉の製造法。
- 前記酵素溶液の添加量を、小麦粉100重量部に対して5〜10重量部とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の酵素処理小麦粉の製造法。
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