JP3649888B2 - 化粧料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化珪素にて被覆処理することで、光触媒活性が抑制され、感触、耐皮脂性、紫外線防御効果に優れた酸化亜鉛粉体、および光触媒活性の抑制効果と耐水性に優れたアルキルシラン処理酸化チタン粉体と、場合により有機系紫外線吸収剤をさらに配合した化粧料に関する。
【0002】
さらに詳しくは、酸化亜鉛粉末の表面をオルガノシロキサン類、シリコーン樹脂の1種以上で被覆した後、高温で加熱し、酸化亜鉛粉末の表面に酸化珪素を生成させることで、光触媒活性を抑制した活性抑制型酸化亜鉛粉体と、緻密な膜を形成することで光触媒活性抑制効果に優れ、強い耐水性を有するアルキルシラン処理酸化チタン粉体と、場合により有機系紫外線吸収剤をさらに配合することで、ラジカルの発生を抑制し、感触、化粧持ち、紫外線防御効果に優れた化粧料に関する。
【0003】
【従来の技術】
近年、サンスクリーン剤の主要構成素材である酸化チタンや酸化亜鉛の光触媒活性に注目が集まっている。これらの素材は紫外線を浴びたときに、そのエネルギーの一部をラジカル生成として放出することが知られており、この影響が人体にあるのか否かというと特に問題はないと考えられている。実際、光触媒活性によって変質しやすい原料を使用した場合以外は、製品レベルでは顔料由来のラジカルにはほとんど問題が無いとされているが、ラジカルの放出をより抑制することができれば、使用できる原料の選択が容易となり、製品の安全性はより高くなることが予想される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これに対して、本発明者らは、特願平9−17414号などで酸化亜鉛粉末の光触媒活性の抑制方法を提案してきた。しかしながら、一般的なサンスクリーン剤はUVA対策素材である酸化亜鉛粉末以外に、UVB対策用素材として酸化チタンや有機系の紫外線吸収剤を併用することが多い。製品全体の光触媒活性を抑制しようとした場合では、酸化チタンの触媒活性も抑制する必要があり、より効果的な光触媒活性の抑制方法が求められていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、これらの問題に鑑み、各素材の光触媒活性の抑制方法について鋭意検討した結果、酸化亜鉛粉末の表面をオルガノシロキサン類、シリコーン樹脂の1種以上で非気相状態で被覆した後、600〜950℃の温度にて加熱することで光触媒活性を効果的に抑制した活性抑制型酸化亜鉛粉体と、アルキルシランで表面処理した酸化チタン粉体と、場合によって有機系紫外線吸収剤を組み合わせた製剤が、低い光触媒活性を有することを見いだした。
【0006】
さらに、この活性抑制型酸化亜鉛粉体、好ましくはさらに撥水化処理した活性抑制型酸化亜鉛粉体と、シリコーン処理などと比べてもさらに強い撥水性を有するアルキルシラン処理酸化チタン粉体とを組み合わせることで、より耐水性、耐皮脂性に優れた化粧料が得られることを見いだした。さらにまた、シリコーンエラストマー球状粉体とを組み合わせることで、より化粧が崩れにくく、耐摩擦性にも優れた化粧料が得られることを見いだした。
【0007】
すなわち、第1の本発明は、酸化亜鉛粉末を、オルガノシロキサン類、シリコーン樹脂の1種以上にて非気相状態で被覆した後、酸素含有雰囲気中で600〜950℃の温度にて加熱することで、酸化珪素で被覆処理された活性抑制型酸化亜鉛粉体と、アルキルシラン処理酸化チタン粉体とを配合することを特徴とする化粧料にある。
【0008】
第2の本発明は、酸化亜鉛粉末を、オルガノシロキサン類、シリコーン樹脂の1種以上にて非気相状態で被覆した後、酸素含有雰囲気中で600〜950℃の温度にて加熱することで、酸化珪素で被覆処理された活性抑制型酸化亜鉛粉体と、アルキルシラン処理酸化チタンと、有機系紫外線吸収剤とを配合することを特徴とする化粧料にある。
【0009】
第3の本発明は、酸化亜鉛粉末を、オルガノシロキサン類、シリコーン樹脂の1種以上にて非気相状態で被覆した後、酸素含有雰囲気中で600〜950℃の温度にて加熱することで、酸化珪素で被覆処理された活性抑制型酸化亜鉛粉体と、アルキルシラン処理酸化チタン粉体と、シリコーンエラストマー球状粉体とを配合することを特徴とする化粧料にある。
【0010】
第4の本発明は、用いる酸化亜鉛粉末の平均一次粒子径が10nm〜300nmの範囲にあることを特徴とする上記の化粧料にある。
【0011】
第5の本発明は、配合する活性抑制型酸化亜鉛粉体が、さらに撥水化処理されていることを特徴とする上記の化粧料にある。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳説する。
本発明で用いる酸化亜鉛粉末は、その平均一次粒子径が5nm〜100μmの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは10〜100nmである。5nm未満では、粒子径が小さすぎるため工業的に得ることが難しく、また100μmを超えると、粒子径が大きすぎるために官能特性に劣る場合がある。特に、平均一次粒子径が10〜100nmの範囲にある微粒子酸化亜鉛の場合、粉体自体の活性が強く、本発明の表面処理による活性低下のメリットが最も強く得られる特徴がある。なお、平均一次粒子径の測定方法としては、電子顕微鏡観察によるものが好ましい。
【0013】
本発明で用いる酸化亜鉛粉末の形状としては、例えば球状、板状、紡錘状、不定形状、棒状などの形状が挙げられるが、特に限定されない。
【0014】
本発明で用いる酸化亜鉛粉末としては、純粋にZnOの化学式で表される化合物以外にも、例えば、酸化亜鉛処理酸化チタン、酸化亜鉛被覆雲母など、粉体の表面が酸化亜鉛で被覆されている粉末も該当する。
【0015】
本発明で用いられるオルガノシロキサン類、シリコーン樹脂の例としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ビフェニルポリシロキサン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、アクリルシリコーン、シリコーンレジンなどが挙げられる。また、これらのオルガノシロキサン類、シリコーン樹脂とシランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤などを同時に用いることも可能である。上記のオルガノシロキサン類、シリコーン樹脂は、常温で液状及び/又は固体状態を示すものであり、固体状態であるシリコーン樹脂は溶剤に溶解して使用することが好ましい。好ましいオルガノシロキサン類、シリコーン樹脂としては、メチルハイドロジェンポリシロキサンやジメチルポリシロキサンである。さらに、これらの化合物としては、珪素原子数が8〜100の範囲にあるものが、均一処理に優れるために特に好ましい。
【0016】
本発明で用いる、被覆処理の方法は、酸化亜鉛粉末の光触媒活性を抑制するための充分な被覆処理量を得るため、非気相状態で実施する。非気相状態とは、固体/液体、固体/固体の状態で、酸化亜鉛粉末と、オルガノシロキサン類、シリコーン樹脂の1種以上を接触させ被覆処理することを言う。被覆方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
▲1▼湿式法:アルコール、トルエン、水、揮発性シリコーン等の溶媒を用いて、酸化亜鉛粉末とオルガノシロキサン類、シリコーン樹脂の1種以上を混合し、よく撹拌・分散した後、溶媒を除去して被覆処理する方法。
▲2▼乾式法:酸化亜鉛粉末とオルガノシロキサン類、シリコーン樹脂の1種以上をミキサーなどの混合装置を用いて被覆処理する方法。
▲3▼メカノケミカル法:ボールミル等の装置を用いて、酸化亜鉛粉末にオルガノシロキサン類、シリコーン樹脂の1種以上を機械的に被覆する方法。
【0017】
また、これらの方法では、ビーズミル等を使用して微粉砕を行ったり、処理中または後に200℃位までの予備加熱処理を行うことも可能である。予備加熱処理を行った場合、その後の加熱処理工程で低沸点成分の蒸発による引火の問題が避けられるため好ましい。さらに、ポリシロキサン化合物等は2種以上を併用することも可能である。但し、被覆処理を行う化合物としてフッ素や塩素を含む場合は、次の加熱工程でフッ素ガスや塩素ガスが発生し、加熱装置を痛めるため好ましくない。
【0018】
本発明における酸化亜鉛粉末に対するオルガノシロキサン類、シリコーン樹脂の1種以上の被覆量としては、酸化亜鉛粉末、ポリシロキサン類、シリコーン樹脂の総量に対し、2〜80重量%が好ましく、さらに好ましくは2〜9重量%である。この範囲では、光触媒活性の抑制効果、感触、耐皮脂性、紫外線防御効果に優れる。特に、2〜9重量%の範囲では焼成処理による凝集が殆ど生じない領域にあり、後粉砕を行わずとも、光触媒活性の抑制効果、感触、耐皮脂性、紫外線防御効果が充分に発揮できる。また、9〜80重量%の領域では、独特のなめらかな感触を粉体に付与することができ、この感触は同量のシリカを湿式処理したり、気相状態で表面処理した場合の酸化亜鉛粉体には認められない特徴がある。但し、紫外線防御効果を最大にすることを目的とするならば、より酸化亜鉛含有量の多くなる2〜9重量%が好ましい。
【0019】
本発明では、上記の被覆処理を行った後、酸素含有雰囲気下である、空気中、酸素中、または酸素と他の気体の混合系の中で、600〜950℃の温度範囲、さらに好ましくは600〜900℃にて加熱処理を行う。600℃未満では、酸化珪素の皮膜が得られにくいため光触媒活性の抑制が充分でない問題があり、また950℃を超えると、酸化亜鉛粉体の融着が生じる場合があり、紫外線防御効果の低下や感触の悪化を生じる問題がある。さらに、1700℃以上の温度では、酸化亜鉛が昇華し、このガスが有毒である問題もある。そして、600〜950℃の温度範囲で加熱処理した場合には、酸化亜鉛の昇華ガスの発生、コスト、安定性、活性封鎖等の問題が解決できる。また、この加熱処理の時間は、加熱温度、使用した化合物によって異なり、例えば1分間〜2日間が挙げられるがこれに限定されるものではない。一般的には、工業的に有利な0.5〜12時間の範囲が好ましく、特に設定温度での加熱時間(昇温、下温時間を含めない)が2〜6時間が好ましい。本発明の方法では、加熱処理時にオルガノシロキサン類、シリコーン樹脂由来の種々の分解生成物が発生するため、加熱装置には排気ガスの処理設備を設けることが好ましい。
【0020】
また、加熱温度が低く、かつ一次粒子径が小さい場合には、酸化珪素以外に若干量の珪素の水酸化物が粉体表面に生成される場合もあるが、この場合も本発明の活性抑制の目的に合うため問題はない
【0021】
本発明の活性抑制型酸化亜鉛粉体は、結晶構造および光触媒活性に特徴を持つ。本発明の活性抑制型酸化亜鉛は結晶構造上、酸化亜鉛の結晶子が相対的に小さくなっていることが好ましい。すなわち、酸化亜鉛が形成するウルツ鉱型結晶構造(六方晶系に属する)において、オルガノシロキサン類、シリコーン樹脂で表面処理した酸化亜鉛を焼成した場合、本ウルツ鉱型結晶より得られるX線回折の(100)(010)面固有のピークの半値幅、及び(101)(011)面固有のピークの半値幅が、未表面処理の酸化亜鉛を同じ温度で加熱処理したものよりも大きい値をとり、かつ、密度法により得られる酸化亜鉛の結晶化度により、以下の値をとることが好ましい。この範囲であれば、光触媒活性の抑制に優れた活性抑制型酸化亜鉛粉体が得られる。
【0022】
▲1▼結晶化度が0.7以上の場合、(100)(010)面、及び(101)(011)面ピークの半値幅がそれぞれ0.25±0.10の範囲にあり、かつそれぞれのピークの半値幅の差が0.02以下であるもの。
▲2▼結晶化度が0.7未満の場合、(100)(010)面、及び(101)(011)面ピークの半値幅がそれぞれ0.50±0.10の範囲にあり、かつそれぞれのピークの半値幅の差が0.02以下であるもの。
【0023】
なお、上記のX線解析の測定方法は次の通りである。
測定装置:リガク製RINT−1100型
X線管球:Cuチューブ
管電圧:30kV
管電流:10mA
X線入射角:2θ=2〜60゜
測定試料:20×18mmのアルミニウム板に試料を均一に充填
測定ピーク:2θ=31.8゜および2θ=36.3゜の半値幅を使用
面間隔:Braggの式 λ=2dsinθ (但し、d:格子面間隔、θ:Bragg角、λ:使用したX線の波長)より、
2θ=31.8゜はd=2.808オングストロームと算出され、ウルツ型鉱の結晶格子の逆格子面間隔から、(100)(010)面の面間隔に相当し、
2θ=36.3゜は同様に(101)(011)面の面間隔に相当することが判る。
結晶化度の測定方法:結晶化度は密度法により求めた。測定式は以下の通り。
S=Sc X+Sam(1−X) (式1)
[但し、X:結晶化度、S:比重、Sc :結晶の比重(酸化亜鉛では5.47)、Sam:非晶の比重(酸化亜鉛では5.78)]
式1より、結晶化度は比重が判れば求められることがわかる。そこで、比重は下記式より求めた。
S(t/4℃) =〔( W2 −W1)( S1 −Sa ) 〕/〔( W4 −W1)−( W3 −W 2) 〕+Sa
但し、W1 :空気中で比重びんを秤量して得た数値
W2 :空気中で試料が入った比重びんを秤量して得た数値
W3 :空気中で試料とt℃の液体が入った比重びんを秤量して得た数値
W4 :空気中でt℃の液体が入った比重びんを秤量して得た数値
S1 :t℃の液体の比重
Sa :空気の比重で0.0012とする。但し、比重の必要精度が2ケタの場合は無視して良い。
【0024】
本発明では酸化亜鉛粉末の光触媒活性を下記の評価方法を用いて評価を行った場合に、ラジカル発生強度角度が4゜以下であることが好ましい。ラジカル発生強度角度が4゜以下であれば、光触媒活性は抑制されていると考えられる。なお、市販の未処理酸化亜鉛粉末のラジカル発生強度角度を測定したところ、12〜60゜の範囲にあることが判った。
【0025】
光触媒活性の評価方法
試料を90重量%エタノール水溶液に超音波を用いて分散させ、0.05重量%の試料溶液を作製する。これにラジカルトラップ剤を加え、超音波を用いて混合する。紫外線照射源として、キセノンランプ、D2ランプ、高圧水銀灯などを用い、フィルターを用いて可視光、赤外光、UVC領域の紫外線をカットし、UVA、UVB領域の紫外線のみを照射できるように調整する。紫外光を光ファイバーを用いてESRに設置した試料容器に照射する。スーパーオキサイドアニオンラジカルをターゲットとして、照射0〜750秒までの時間範囲でラジカルの発生量をESRにより測定する(ラジカル種としてはOH・ラジカル、メチルラジカルなどもあるが、酸化亜鉛粉末自体の光触媒活性を評価する意味ではスーパーオキサイドアニオンラジカルが好ましい。)。試料ごとの測定値の比較は、同時に測定したマンガンの値を100とした相対値を用いることにより、試料間の誤差を修正した。なお、製品自体の光触媒活性を見る場合では、0.1重量%の試料溶液を用いることが好ましい。
【0026】
また、活性の評価としては、現在明確な学説が無いため以下の(A)(B)2通りのいずれかが用いられているが、ここでは、ラジカル発生強度角度を用いて評価した。なお、ラジカル発生量の最大値を用いることも可能であり、表面処理によりラジカル発生量が低下することも確認できるが、最大値と光触媒活性の関係がまだ明確でない問題がある。
(A)照射0秒からのピークの立ち上がりの角度(ラジカル発生強度角度)を比較する。
(B)照射0〜750秒までの時間範囲で、ラジカル発生量の最大値を比較する。
分散液の安定性が悪く、急速に沈降してしまう試料の測定は、定量性が無いものとして評価から除外した。
【0027】
ラジカル発生強度角度の測定方法
光照射直後(0〜数分)のラジカル発生量のグラフからラジカル発生初期のグラフの傾き(接線の傾き)を求める。傾きをkとすると、
k=ラジカル発生量(マンガン相対値)/時間(単位:秒)
として表される。ラジカル発生強度角度をrとすると、rとkは以下の関係になり、角度を求めることができる。
r(単位:度)=tan-1(k)
例えば、原点と(37秒,マンガン相対値10)の場所を接線が通過しているとすると、r=tan-1(10/37)=15°となる。
【0028】
本発明では、得られた活性抑制型酸化亜鉛粉体をさらに、シリコーン処理、シラン処理、フッ素化合物処理、油剤処理、金属石鹸処理、ワックス処理、N−アシル化リジン処理、金属酸化物処理、メタクリル酸メチルなどの樹脂処理、粘剤処理、プラズマ処理、メカノケミカル処理などの従来公知の方法で表面処理して用いることが好ましい。特に、シリコーン処理、フッ素化合物処理、金属石鹸処理などの撥水化処理を行ってあることが、化粧料の持続性を向上できるため好ましい。
【0029】
本発明で感触、化粧持ち、紫外線防御効果の向上のために用いるアルキルシラン処理酸化チタン粉体は、平均一次粒子径として、5〜300nmの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは10〜100nmである。この範囲であれば、紫外線防御効果に優れる特徴がある。平均一次粒子径の評価方法としては、電子顕微鏡観察によるものが好ましい。
【0030】
本発明で用いるアルキルシランの例としては、アルキルアルコキシシランやアルキルクロロシランが挙げられる。アルキル鎖の長さとしては、炭素数で1〜18の範囲が挙げられるが、特に撥水性と光触媒活性抑制の両立が効果的に図れる炭素数4〜10の範囲がより好ましい。アルキル鎖長が長くなりすぎると、立体障害によりシランの密度が低くなる結果、光触媒活性の抑制を行うために、より多くの処理剤が必要となる場合がある。これらの処理剤の具体例としては、例えば、オクチルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン等が挙げられるが、オクチルトリエトキシシランが処理の均一性に優れていることから最も好ましい。
【0031】
本発明で用いるアルキルシラン処理酸化チタン粉体の母材である酸化チタンは、事前にアルミナ、シリカ、ジルコニア等の無機酸化物や、アルミニウムカップリング剤、有機チタネート等で表面処理が行われていても構わない。例えば、アルミナ・シリカ処理微粒子酸化チタンなどが挙げられる。また、その形状としては、球状、棒状、紡錘状、針状、ヒトデ状、板状などが挙げられるが特に限定されない。
【0032】
本発明で用いるアルキルシラン処理酸化チタンの製造方法としては、例えば、酸化チタン粉末に気相でアルキルシランと場合により水蒸気などの水分を投入し、加熱下または非加熱下に反応させる方法や、酸化チタン粉末の有機溶媒スラリーにアルキルシランを投入し、溶媒を除去する方法等が挙げられる。また、スラリーを用いる湿式法で製造する場合には、より均一な表面処理状態を形成させる目的で、スラリーをビーズミル等で粉砕したものを用いることが好ましい。粉砕時にアルキルシランは投入されていてもいなくても構わない。また、被覆処理時に加熱工程が入っていてもいなくても構わないが、アルキルシラン由来のにおい等に対応できるので、100〜220℃の加熱工程を入れることが好ましい。
【0033】
本発明で用いるアルキルシラン処理酸化チタン粉体は前記の光触媒活性の評価方法を用いて評価を行った場合に、ラジカル発生強度角度が0〜4゜になるものが好ましい。
【0034】
本発明の化粧料では活性抑制型酸化亜鉛粉体と、アルキルシラン処理酸化チタン粉体と、さらに有機系紫外線吸収剤とを併用することが、光触媒活性をさらに低下させることができるので好ましい。有機系紫外線吸収剤の例としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、p−メトキシハイドロケイ皮酸 ジエタノールアミン塩、パラアミノ安息香酸(以後、PABAと略す)、サリチル酸ホモメンチル、メチル−O−アミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、オクチルジメチルPABA、メトキシケイ皮酸オクチル、サリチル酸オクチル、2−フェニル−ベンズイミダゾール−5−硫酸、サリチル酸トリエタノールアミン、3−(4−メチルベンジリデン)カンフル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェニン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−N−オクトキシベンゾフェノン、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、4−(3,4−ジメトキシフェニルメチレン)−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、およびこれらの高分子誘導体、シリコーン誘導体などの誘導体が挙げられる。
【0035】
本発明の化粧料では、活性抑制型酸化亜鉛粉体と、アルキルシラン処理酸化チタン粉体と、さらにシリコーンエラストマー球状粉体とを併用することが、化粧が崩れにくく、耐摩耗性に優れるため好ましい。本発明で言うシリコーンエラストマー球状粉体とは、一次粒子径が0.1〜30μmの大きさを持ち、弾性を有する球状シリコーン粉末の集合体を指し、例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン社のトレフィルE−505C、トレフィルE−506、トレフィルE−507等を挙げることが出来る。シリコーンエラストマー球状粉体は前記同様に化粧品に用いられる各種の表面処理が行われていてもいなくても構わない。さらに、ビーズミル、エクストルーダーやローラー等を用いて、事前に粉砕が行われていてもいなくても構わないが、事前に粉砕が行われているものを用いることが好ましい。この場合には、シリコーン油、エステル油、多価アルコールなどの各種油剤や溶媒と共に粉砕を行うことが好ましく、特に粉砕を行ったペースト中のシリコーンエラストマー球状粉体の割合が20〜75重量%の範囲にあるものが、感触的に優れ、容易に製品中での配合濃度を上げることが出来るため好ましい。また、シリコーンエラストマー球状粉体を用いる場合には、シリコーン樹脂などの樹脂原料を併用すると、製剤の化粧持続性が感触をあまり犠牲にせずに得られるメリットがある。
【0036】
本発明の化粧料に於いて、活性抑制型酸化亜鉛粉体と、アルキルシラン処理酸化チタン粉体と、有機系紫外線吸収剤と、シリコーンエラストマー球状粉体との配合割合としては、例えば、化粧料100重量部に対して、それぞれ0.1〜30重量部:0.1〜30重量部:0〜20重量部:0〜50重量部が挙げられる。活性抑制型酸化亜鉛粉体と、アルキルシラン処理酸化チタン粉体と、有機系紫外線吸収剤との配合量を増やした場合では、高い紫外線防御性能を有する製品が得られ、また、活性抑制型酸化亜鉛粉体の配合量を減らした場合には、サンタンなどの製品が得られ、さらにシリコーンエラストマー球状粉体の量を増やした場合には、製剤の粘性が増加する特性がある。
【0037】
また、本発明の化粧料では抗酸化剤を併用することが好ましい。抗酸化剤の例としては、例えば、トコフェロール類、SOD、フェノール類、テルペン類、ブチルヒドロキシトルエン、ビタミンC、ビタミンE、カテキン類、グルコース、ヒアルロン酸、β−カロチン、テトラヒドロクルクミン、茶抽出物、ゴマ抽出物、アントシアニン、配糖体などの植物系等の抗酸化剤など従来公知の物質を用いることができる。
【0038】
本発明の化粧料では、上記の各素材以外に、通常化粧料に用いられる油剤、粉体(顔料、色素、樹脂)、フッ素化合物、樹脂、界面活性剤、粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、生理活性成分、塩類、溶媒、キレート剤、中和剤、pH調整剤などの成分を同時に配合することができる。
【0039】
粉体としては、例えば、赤色104号、赤色201号、黄色4号、青色1号、黒色401号等の色素、黄色4号Alレーキ、黄色203号Baレーキなどのレーキ色素、ナイロンパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、テフロンパウダー、シリコーンパウダー、セルロースパウダー、シリコーンエラストマーなどの高分子、黄酸化鉄、赤色酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、微粒子酸化鉄、群青、紺青などの有色顔料、酸化チタン、酸化セリウムなどの白色顔料、タルク、マイカ、セリサイト、カオリンなどの体質顔料、雲母チタンなどのパール顔料、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウムなどの金属塩、シリカ、アルミナなどの無機粉体、ベントナイト、スメクタイトなどが挙げられる。これらの粉体の形状、大きさに特に制限はない。
【0040】
油剤の例としては、セチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノールなどの高級アルコール、イソステアリン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸などの脂肪酸、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、モノステアリン酸グリセリン、フタル酸ジエチル、モノステアリン酸エチレングリコール、オキシステアリン酸オクチルなどのエステル類、流動パラフィン、ワセリン、スクワランなどの炭化水素、ラノリン、還元ラノリン、カルナバロウなどのロウ、ミンク油、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油、ツバキ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリーブ油などの油脂、エチレン・α−オレフィン・コオリゴマーなどが挙げられる。
【0041】
また、別の形態の油剤の例としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、フルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、末端変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン、アモジメチコーン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、シリコーンゲル、アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーンRTVゴムなどのシリコーン化合物、パーフルオロポリエーテル、フッ化ピッチ、フルオロカーボン、フルオロアルコール、フッ素化シリコーンレジンなどのフッ素化合物が挙げられる。
【0042】
界面活性剤としては、例えば、アニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤、ノニオン型界面活性剤、ベタイン型界面活性剤を用いることができる。特に、シリコーン系界面活性剤が安全性に優れることから好ましい。
【0043】
溶媒としては、精製水、エタノール、軽質流動イソパラフィン、低級アルコール、エーテル類、LPG、フルオロカーボン、N−メチルピロリドン、フルオロアルコール、パーフルオロポリエーテル、代替フロン、次世代フロン、揮発性シリコーンなどが挙げられる。
【0044】
本発明の化粧料としては、ファンデーション、白粉、アイシャドウ、アイライナー、チーク、口紅などのメイクアップ化粧料、サンスクリーン剤、サンタン剤、化粧下地料などが挙げられるが、特にサンスクリーン剤などの紫外線対策化粧料に適用することが好ましい。
【0045】
本発明の化粧料の剤型としては、二層状、油中水型エマルション、水中油型エマルション、ジェル状、スプレー、ムース状、油性、固型状など従来公知の剤型を使用することができる。特に、サンスクリーン剤の用途には、二層状、油中水型エマルション、ジェル状が好ましく、また、ファンデーション用途としては、固型状、固型エマルション状、ジェル状、油中水型エマルション、水中油型エマルション、油性、ムースなどが好ましい。
【0046】
本発明の化粧料では、各成分は事前に他の成分と粉砕したものを使用することが好ましい。例えば、活性抑制型酸化亜鉛粉体を他の油剤と共に事前にビーズミルなどで粉砕したものを用いたり、アルキルシラン処理酸化チタン粉体を同様にしたり、さらにできあがった製剤そのものをビーズミルやディスパーなどで粉砕することも可能である。
【0047】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、酸化亜鉛粉末の表面に酸化珪素等が生成されていることの確認は、電子顕微鏡写真と比色分析法等の通常の方法によって実施した。
【0048】
(1)光触媒活性評価(製品)
前記の評価方法に基づき、ESRとして、日本電子製JEF−FE2XGを用い、ラジカルトラップ剤として5,5−ジメチル−1−ピロリン−1−オキシド(DMPO)を濃度1.5重量%で用い、測定ラジカル種としてスーパーオキサイドアニオンラジカルに焦点を当てて評価を行った。また、紫外線源としては、ウシオ電機製SPOT CURE−UIS25102を用い、20mW/cm-2の照射エネルギーで紫外線照射を行った。紫外線量の測定は、Melles Griot社製Broad Band Power/Energy Meter 13PE001型を使用して測定した。
なお、試料の濃度は0.1重量%にて評価を行った。比較例に対する実施例のラジカル発生強度角度の相対値を求め、その値を四捨五入した。値が大きいほどラジカルの発生量が多いことを示している。
【0049】
(2)官能特性評価
専門パネラー20名を用いて、試作品(化粧料)の官能特性を一週間の連用試験で評価した。評価項目としては、「感触に優れるか」、「化粧持ちに優れるか」の2項目で行った。感触に優れる、化粧持ちが良いを+5点、感触が悪い、化粧持ちが悪いを0点とし、その間を計4段階で評価し、全員の点数の合計を以て評価結果とした。従って、点数が高いほど、評価が高いことを示す。なお、試験は試作品を使用した上に、市販のラスティングタイプのファンデーションを塗布する条件で試験を行った。
【0050】
(3)紫外線防御効果
専門パネラー6名を用いて、試作品(化粧料)の紫外線防御効果を評価した。日中、屋外でテニスを行い、日焼け(即時黒化)の状態から表1に示す評価基準に従って評価した。パネラー全員の点数の合計を以て評価結果とした。従って、点数が高いほど、紫外線防御効果が高いことを示す。
【0051】
【表1】
【0052】
製造例1
平均一次粒子径が30nmの微粒子酸化亜鉛92重量部、メチルハイドロジェンポリシロキサン(KF−99P、信越化学工業社製)8重量部、イソプロピルアルコールからなるスラリーを形成し、よく撹拌した後、溶媒を除去し、高温焼成炉を用いて空気中で800℃で2時間加熱処理を行った。次いで、5重量%メチルハイドロジェンポリシロキサン(KF−9901、信越化学工業社製)を被覆し、130℃にて5時間加熱処理を行った。得られた粉体をアトマイザーにて粉砕し、目的とするシリコーン処理活性抑制型微粒子酸化亜鉛粉体を得た。
なお、高温加熱炉は試料投入後、室温から連続的に昇温させ、目標加熱条件後に空冷する条件で加熱処理を行った。
【0053】
製造例2
平均一次粒子径が15nmのアルミナ・シリカ処理酸化チタン90重量部とオクチルトリエトキシシラン10重量部とトルエンからなるスラリーを形成し、サンドミルを用いて全体を粉砕した。ついで、80℃にて減圧下に加熱してトルエンを除去した。得られた粉体をアトマイザーで粉砕した後、150℃にて4時間加熱処理を行い、目的とするアルキルシラン処理微粒子酸化チタン粉体を得た。
【0054】
実施例1
下記に示す処方に従ってサンスクリーン剤を得た。アルキルシラン処理微粒子酸化チタンは事前にデカメチルシクロペンタシロキサン(環状シリコーン)と共にサンドミルにて粉砕したものを使用した。フッ素化シリコーン樹脂は事前にデカメチルシクロペンタシロキサンにて、50重量%濃度に希釈したものを用いた。シリコーンエラストマー球状粉体/メチルフェニルポリシロキサンペーストは、シリコーンエラストマー球状粉体として東レ・ダウコーニング・シリコーン社製トレフィルE−507を用い、メチルフェニルポリシロキサンにて30重量%に希釈して、ローラーで混練りしたペーストである。なお、単位は重量%である。
【0055】
【表2】
【0056】
各成分を容器に投入しに投入し、ディスパーを用いて良く混合した後、容器にステンレスボールと共に充填して製品とした。
なお、本製品は使用前によく振って使用した。
【0057】
比較例1
実施例1のシリコーン処理活性抑制型微粒子酸化亜鉛粉体(製造例1)の代わりに、製造例1で使用した微粒子酸化亜鉛を製造例1と同一の条件でシリコーン処理した粉体を使用し、アルキルシラン処理微粒子酸化チタン(製造例2)の代わりに製造例2で使用した微粒子酸化チタンを使用した他は全て実施例1と同様にしてサンスクリーン剤を得た。
【0058】
以下、上記の実施例および比較例の評価結果を表3、表4に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
表3より、本発明の実施例1は比較例1と比べてスーパーオキサイドアニオンラジカルの発生を効果的に抑制していることが判る。また、表4より、本発明の実施例1は、比較例1と比べて感触と紫外線防御効果に問題がなく、かつ化粧持ちが向上していることが判る。さらに、本発明の実施例には化粧塗膜の転写防止効果があることも判った。そして、同実施例1を化粧下地として利用した場合にも効果的に化粧持ちを向上させることが判った。
【0062】
【発明の効果】
以上のことから、活性抑制型酸化亜鉛粉体と、アルキルシラン処理酸化チタンと、場合により有機系紫外線吸収剤と、シリコーンエラストマー球状粉体を化粧料に配合することにより、製品自体のラジカル発生を抑制し、かつ感触や化粧持ちに優れ、紫外線防御効果にも優れていることは明らかである。
Claims (5)
- 酸化亜鉛粉末を、オルガノシロキサン類、シリコーン樹脂の1種以上にて非気相状態で被覆した後、酸素含有雰囲気中で600〜950℃の温度にて加熱することで、酸化珪素で被覆処理された活性抑制型酸化亜鉛粉体と、アルキルシラン処理酸化チタン粉体を配合することを特徴とする化粧料。
- 酸化亜鉛粉末を、オルガノシロキサン類、シリコーン樹脂の1種以上にて非気相状態で被覆した後、酸素含有雰囲気中で600〜950℃の温度にて加熱することで、酸化珪素で被覆処理された活性抑制型酸化亜鉛粉体と、アルキルシラン処理酸化チタン粉体と、有機系紫外線吸収剤とを配合することを特徴とする化粧料。
- 酸化亜鉛粉末を、オルガノシロキサン類、シリコーン樹脂の1種以上にて非気相状態で被覆した後、酸素含有雰囲気中で600〜950℃の温度にて加熱することで、酸化珪素で被覆処理された活性抑制型酸化亜鉛粉体と、アルキルシラン処理酸化チタン粉体と、シリコーンエラストマー球状粉体とを配合することを特徴とする化粧料。
- 酸化亜鉛粉末の平均一次粒子径が10nm〜100nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の化粧料。
- 活性抑制型酸化亜鉛粉体がさらに撥水化処理されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の化粧料。
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