JP3647597B2 - ボールねじのシール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールねじのシールの改良に関し、ボールねじの防塵と付着異物の掻き取りとを兼用するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のボールねじのシールとしては、図9に示すような標準型のプラスチックシールSS の他に図10,図11に示すようないわゆるワイパシールSW が知られている。
【0003】
標準型のプラスチックシールSS はプラスチック製のリング状円筒体で、その内周面に突出してねじ軸1のねじ溝1aに嵌合するシール山yを有しており、ボールねじのナット2の端部に設けられた凹部3に嵌合し止めねじ4で固定して装着される。このタイプのシールSS は、ねじ溝1aに摺接するシール山yと、ランド部1bに摺接するシール内周面とでシール機能を果たし、外部の異物Wがナット2の内部へ侵入することを防止している。基本的にはねじ軸1の表面に付着した異物を掻き取るスクレーパ機能はないが、大きな付着異物Wはシールの先端面tでせき止められて堆積する。
【0004】
一方、ワイパシールSW は軸方向に長いプラスチック製の円筒体で、その内周面に突出してねじ軸1のねじ溝1aに嵌合するシール山を有するとともに、シール先端面tから軸方向の途中までの部分を切欠き(すり割り)kにより周方向の6箇所で分割され、そのうち一カ所のすり割りはリングの幅を横断して円筒体を切断するスリットoとし、シール外周にガータスプリングgを取り付けたものである。このワイパシールSW も標準型のプラスチックシールSS と同じくボールねじナットの端部に装着され、分割された部分をガータスプリングgでねじ軸に対して弾圧することにより、シール内周面をねじ軸に密着させてボールねじナットを外部の塵埃,異物等に対し密封すると同時に、すり割りkのエッジ部分で、回転するねじ軸に付着した異物を掻き取るスクレーパ作用を発揮する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の標準型のプラスチックシールSS も、またすり割りkのスクレーパ機能をもつワイパシールSW も、その先端面tはねじ軸1に対し直角な面であって基本的にスクレーパ機能はないため、ねじ軸1に付着した大きな異物がシール先端面tにせき止められて堆積し溜まり易い。そして、この溜まった異物がねじ軸1上を往復移動するボールねじナット2のストロークに伴いナット内に侵入しようとするという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような従来のボールねじのシールの問題点に着目してなされたものであり、シール先端面を改良してスクレーパ機能をもたせ異物が溜まりにくい構造とすることにより、ボールねじナット内への異物の侵入をより効果的に防止できるボールねじのシールを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係るボールねじのシールは、円筒体の内周面に、ボールねじのねじ軸のねじ溝と係合するシール山を有してボールねじナットの端部に装着されるボールねじのシールにおいて、前記円筒体の先端面に、円筒体外周から前記ねじ軸の外径面に及んで前記ねじ軸の外径面に接触する鋭角の傾斜面を形成したことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、このようにボールねじのシールの先端面を鋭角に面取りした形状にしたため、シール先端がスクレーパとして作用し、ねじ軸面の異物をかき取るとともにシール外周方向にかきあげる。かきあげた異物は自然に落下するから従来のようにシール先端面には堆積しにくく、その結果ボールねじナット内への異物の侵入を阻止するシール性能が向上する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1ないし図4は、本発明の第1の実施形態を示したもので、図1はシール装着部分を半断面で表したボールねじの正面図、図2はシール装着部分の断面図、図3はシールの側面図、図4は作用説明図である。
【0010】
先ず構成を説明すると、ボールねじは、図1に示すように、螺旋状のねじ溝1aを外周面に有するねじ軸1に、そのねじ軸1のねじ溝1aに対応する図示されないねじ溝を内周面に有するボールねじナット2が図示されない多数のボールを介して螺合されている。ねじ軸1が回転すると、ボールは両ねじ溝によって形成された螺旋状空間内を転動しつつねじ軸1の回転方向に移動するとともにボールねじナット2の胴部に設けられたボール循環路(一点鎖線で略示)3を経由して循環する。これにより、ねじ軸1の回転方向に応じてボールねじナット2がねじ軸1に沿い往復直線運動する構成である。
【0011】
前記ボールねじナット2の両端面には環状の凹部5が形成されており、この凹部5に、例えば高分子量ポリエチレン樹脂からなる円筒体のワイパシール6Aが取り付けられている。当該ワイパシール6Aは、その後端側に形成してあるフランジ状の取付け部7を前記凹部5に嵌合するとともに止めねじ8を締めつけることにより固定されている。
【0012】
ワイパシール6Aの円筒体の先端部には、円筒体外周からねじ軸1の外径面であるランド部1bに及び鋭角の傾斜面9が形成してある(図2参照)。この傾斜面9の根元の円筒体外周はつば部10とされ、そのつば部10から前記取付け部7までの間のシール胴部11は、つば部10より外径を小さくして肉厚が薄くなっている。そのシール胴部11の外周面には、つば部10の根元位置及びシール胴部11の軸方向のほぼ中間位置に環状のガータスプリング溝12,12が形成されている。一方、シール6Aの内周面には、ねじ軸1のねじ溝1aに嵌合する凸部(シール山)13が、ワイパシール6Aの先端から後端に及び螺旋状に形成されている。
【0013】
円筒体のワイパシール6Aには、前記傾斜面9を有する先端から円筒体軸方向に延びるすり割り15が、円周等分に6ヵ所設けられている。その6ヵ所のすり割り15はいずれも、図3に示すようにシール肉厚を斜めに横断するとともに、シール中心軸に平行に延びている。そのうちの5ヵ所のすり割り15は、その長さがフランジ状の取付け部7の根元近くまでとされているのに対し、他の一カ所のすり割りは、円筒体の先端面から後端面にいたるワイパシール6Aの全長に及んでおり、円筒体を切断するスリット17として形成されている。
【0014】
次に、作用を説明する。
このワイパシール6Aは、スリット17を開いて円筒体を拡開させた状態でねじ軸1に嵌め合わせた後、ボールねじナット2の端面の凹部5にシール後端の取付部7を嵌入し、ボールねじナット2の側面からねじ込んだ止めねじ8の先端を取付部7に係合させることにより固定して、ボールねじナット2の両端に取り付けられる。続いて、このようにスリット17を拡開して取り付けたシール6Aの先端部分に設けられているガータスプリング溝12に、ガータスプリング14を取り付け、その緊迫力でワイパシール6Aを弾性的に締めつける。
【0015】
このワイパシール6Aの場合、すり割り15の長さが長く、且つシール胴部11が肉薄に設定されているため、すり割り15及びスリット17で円周等分に6分割されたシール胴部11の6個の分割部分が柔らかい弾性をもち、ガータスプリング14に弾圧されるとねじ軸1の外面に容易になじんで、シール山13はねじ溝1aに、その他の内周面はねじ軸の外径面であるランド部1bにそれぞれ密着するから、シール全体としての良好なシール性が確保される。
【0016】
また、ねじ軸1とボールねじナット2との相対回転に応じてボールねじナット2が往復直線移動するとき、ワイパシール6Aの各分割部分がねじ軸外面に密着したまま相対摺動運動を行う。これにより、各分割部分のエッジ(すり割り15とスリット17の各エッジ部分)がねじ軸1外面の付着異物を掻き取り払拭するから(スクレーパ作用)、ボールねじナット2内への異物侵入を効果的に防止し、シール性能を向上させることができる。
【0017】
特に、図4に示すように、ワイパシール6Aの先端面のエッジ18で掻き取られたねじ軸1の外面の付着異物Wは、あたかもかんな屑のように削られて鋭角の傾斜面9にすくいあげられ自然落下する。シール肉厚を斜めに横断するすり割り15,スリット17の各エッジ部分で削られた異物も、同様に斜面にすくいあげられてシール胴部11の表面から自然落下する。
【0018】
このために、ワイパシール6Aには異物が堆積しにくく、ボールねじナット2内への異物の侵入が効果的に阻止されてシール性能がより一層向上する。
図5は、上記第1の実施形態のワイパシール6Aの変形例である。このワイパシール6A’にあっては、傾斜面9の最先端をねじ軸1のランド部1bから更に延長してねじ溝1aの底部に達するようにしている。これにより、ねじ溝1a内に堆積する異物のスクレーパ機能がより向上する利点がある。
【0019】
図6に本発明の第2の実施形態を示す。
なお、上記第1の実施形態と同一部分には同一の符号を付して、詳細な説明は省く(以下、同様)。
【0020】
この実施形態のボールねじのワイパシール6Bは、シール先端の鋭角の傾斜面9の 内径部に、円周状の逃げ溝20を設けたことにより、ねじ軸1の外径面であるランド部1bと接する部分21をリップ形状とした点が上記第1の実施形態とは異なっている。このようにシール6Bの先端をリップ形状にすると、ねじ軸1のランド部1bに付着した異物のスクレーパ機能がより向上する利点がある。
【0021】
その他の構成及び作用・効果は上記第1の実施形態のものと同様である。
図7に本発明の第3の実施形態を示す。
上記第1,第2の各実施形態のワイパシール6A,6Bにあっては、円筒体を分割するすり割り15が傾斜面9を有するシール先端からシール後端に向かって中心軸に平行に形成してあるものを示したが、その変形例として、図7に示すワイパシール6Cのように、すり割り15の延びる方向をシール中心軸に平行ではなく傾斜させてもよい。このように斜め方向に延びるすり割り15にすると、シール山13部分のすり割り15のエッジ部分がねじ溝1aに対して直角に近づくことになり、ねじ溝1a内のスクレーパ作用をより効果的に発揮させることができる利点がある。
【0022】
その他の構成及び作用・効果は上記第1,第2の実施形態のものと同様である。
図8に本発明の第4の実施形態を示す。
【0023】
この実施形態のボールねじのシール6Dは、標準型のプラスチックシールSS に対して本発明を適用した例である。すなわち、シール先端をボールねじナット2の端面から外方に突出させて、そのシール先端部にシール円筒体外周からねじ軸1の外径面であるランド部1bに及ぶ鋭角の傾斜面9が形成してある。
【0024】
ボールねじのシール6Dの鋭角の傾斜面9の先端のエッジ18で掻き取られたねじ軸1の外面の付着異物は、図4の場合と同じくあたかもかんな屑のように削られて鋭角の傾斜面9にすくいあげられ自然落下する。このために、ワイパシール6Dの先端部には異物が堆積しにくく、ボールねじナット2内への異物の侵入が効果的に阻止されてシール性能が向上する。
【0025】
なお、上記各実施形態のシールは、原料に高分子量ポリエチレン樹脂を用いたものとしたが、本発明のボールねじのシールは、弾性の得られる素材であれば特に限定する必要はない。また、潤滑剤含有ポリマを原料にしてもよく、これらの原料を用いた切削加工品又は射出成形品とすることができる。潤滑剤含有ポリマを原料とした場合の例を説明すると、たとえば、低分子量ポリエチレン(分子量1×103 〜5×105 )45重量%と超高分子量ポリエチレン(分子量1×106 〜5×106 )5重量%からなるポリエチレンに、潤滑剤としてパラフィン系鉱油50重量%を混合したものを原料として用い、その混合物を加熱溶融した後、所定の金型に注入して加圧しながら冷却固化させて成形される。成形法は圧縮成形もしくは射出成形等が可能である。
【0026】
また、上記図1ないし図7に示したワイパシール6A〜6Cでは、シール胴部11を肉薄にしているが、本発明のボールねじのシールはシール胴部が肉薄でないものにも適用できる。
【0027】
また、同じくワイパシール6A〜6Cでは、ガータスプリング14を二本装着したものを示したが、本発明のボールねじのシールはガータスプリングの本数には関係なくワイパシールに対して適用可能である。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のボールねじのシールによれば、シール先端に鋭角の傾斜面を形成してシール先端部にスクレーパ機能を付加したため、ボールねじのねじ軸の外径面に付着した異物の掻き取り能力が向上するとともに、掻き取とった異物を堆積させずに斜面に乗せてねじ軸から切り離すことができ、その結果ボールねじナット内への異物侵入の防止能力が向上するという効果を奏する。
【0029】
特に、大リード仕様のボールねじのように、ねじランド部が広いボールねじに対して有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態のシール装着部分を半断面で表したボールねじの正面図である。
【図2】図1のシール装着部分の拡大断面図である。
【図3】図1のシールの先端側からみた端面図である。
【図4】図1に示すシールの作用を説明する図である。
【図5】第1の実施形態のワイパシール6Aの変形例のシール部分の拡大断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態のシール装着部分の拡大断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態のシールの装着部分を半断面で表したボールねじの正面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態を示すシールの装着部分の正面図である。
【図9】従来の標準型のプラスチックシールの装着状態を表した断面図である。
【図10】従来のボールねじのワイパシール単体の正面図である。
【図11】図10に示すものの左側面図である。
【符号の説明】
1 ねじ軸
1a ねじ溝
2 ボールねじナット
6A ワイパシール
6A’ワイパシール
6B ワイパシール
6C ワイパシール
6D プラスチックシール
9 傾斜面
13 シール山
14 ガータスプリング
15 すり割り
17 スリット
Claims (1)
- 円筒体の内周面に、ボールねじのねじ軸のねじ溝と係合するシール山を有してボールねじナットの端部に装着されるボールねじのシールにおいて、
前記円筒体の先端面に、円筒体外周から前記ねじ軸の外径面に及んで前記ねじ軸の外径面に接触する鋭角の傾斜面を形成したことを特徴とするボールねじのシール。
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