JP3646773B2 - 圧電体素子、インクジェット式記録ヘッドおよびそれらの製造方法 - Google Patents

圧電体素子、インクジェット式記録ヘッドおよびそれらの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット式記録ヘッド等に用いられる圧電体素子に係り、特に、金属アルコキシド溶液からなるゾルを出発原料とし、この出発原料から成膜される圧電体薄膜における結晶の特徴を明らかにし圧電特性のよい圧電体素子を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
圧電体素子は、電気機械変換機能を呈する素子であり、強誘電性あるいは常誘電性の結晶化した圧電性セラミックスにより構成されている。特開平3−69512号公報や米国特許第4,830,996号等には、圧電性セラミックス材料を溶媒に溶解させて金属アルコキシド溶液を製造し、ゾル・ゲル法によりこの溶液を塗布し熱処理を加えることによって圧電体素子を製造する技術が開示されている。金属アルコキシド溶液が結晶化するとペロブスカイト結晶構造が形成されるが、その結晶面の配向性によって圧電体素子の特性が変わる。結晶面の配向性は様々な要因によって決定される。
【0003】
全体的な結晶の成長としては、結晶時に下部電極にある核から結晶が成長し、成長した結晶粒同士が接すると粒界を形成しその後はその厚み方向に柱状に成長していくことになる。このため、従来品の圧電体素子は、ペロブスカイト結晶で構成された柱状結晶の束からなる均一な結晶構造をしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来品の圧電体素子の製造方法では、厚みを厚くしすぎると、製造時の応力により圧電体薄膜にクラックが容易に発生するという問題があった。
【0005】
本願発明者は上記事情に鑑み、金属アルコキシド溶液における溶媒の条件について実験を繰り返したところ、特定の溶媒を使用し特定の条件で結晶化させると、応力によるクラックが発生しにくいことを発見した。
【0006】
そこで、本発明は、厚膜化が可能な結晶構造を備えた圧電体素子を提供することを第1の課題とする。
【0007】
本発明は、厚膜化が可能な結晶構造を備えた圧電体素子を利用したインクジェット式記録ヘッドを提供することを第2の課題とする。
【0008】
本発明は、製造時にクラックが発生しにくい圧電体素子の製造方法を提供することを第3の課題とする。
【0009】
本発明は、製造時に圧電体素子にクラックを発生させないインクジェット式記録ヘッドの製造方法を提供することを第4の課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記第1の課題を解決する発明は、下部電極および上部電極に挟持された圧電体薄膜を備える圧電体素子において、圧電体薄膜は、微結晶粒を包含する柱状結晶により構成されていることを特徴とする圧電体素子である。なお圧電体素子は圧電アクチュエータともいう。
【0011】
ここで例えば柱状結晶の径は、0.1乃至0.5μmの範囲である。さらに微結晶粒の平均粒径は、50nm以下の範囲である。また微結晶粒と微結晶粒以外の部分とは同一の組成である。
【0012】
また例えば圧電体薄膜を構成する金属は、ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O3:PZT)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La)TiO3)、ジルコニウム酸鉛ランタン((Pb,La)ZrO3)、ジルコニウム酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3:PLZT)またはマグネシウムニオブ酸ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Mg、Nb)(Zr、Ti)O3:PMN−PZT)により構成される群から選ばれる一種の圧電性セラミックスを含む。
【0013】
その結果圧電体薄膜は、薄膜全体が1.0μm以上の厚みで形成されている。
【0014】
上記第2の課題を解決する発明は、本発明の圧電体素子を備えたインクジェット式記録ヘッドにおいて、圧力室が形成された圧力室基板と、圧力室の一方の面を閉鎖する振動板と、振動板の圧力室に対応する位置に設けられ、当該圧力室に体積変化を及ぼすことが可能に構成された圧電体素子と、を備えたことを特徴とするインクジェット式記録ヘッドである。
【0015】
上記第3の課題を解決する発明は、下部電極および上部電極の間に、電気機械変換作用を示す圧電体薄膜を挟持させた圧電体素子の製造方法において、下部電極上に、金属アルコキシド溶液に、キレート剤としてモノエタノールアミンを含むゾルを使用して圧電体薄膜を形成することを特徴とする圧電体素子の製造方法である。圧電体薄膜の形成方法としては、ゾルゲル(sol-gel)法やMOD(Metal-Organic Deposition)法が使用可能である。
【0016】
ここで上記金属アルコキシド溶液を構成する金属の種類単位にその金属のモル数にその金属の電荷数を乗じた値をゾルを形成する総ての金属について加算した総和に対し、モノエタノールアミンのモル数を、50%以上100%以下となるように調整してゾルを形成することが好ましい。すなわち、モノエタノールアミンのモル数を[MEA]とし、アルコキシド金属をMeとし、nをこのアルコキシド金属に配位する基の数(電荷数)とし、iをアルコキシド金属を特定する序数とすると、以下の式が成り立つことを意味する。
【0017】
0.5 ≦ [MEA]/Σ[Me(OR)n]i×ni ≦ 1
また脱脂温度を400℃以上で500℃以下の温度に設定して圧電体薄膜の脱脂を行うことが好ましい。
【0018】
また金属アルコキシド溶液として、ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O3:PZT)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La)TiO3)、ジルコニウム酸鉛ランタン((Pb,La)ZrO3)、ジルコニウム酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3:PLZT)またはマグネシウムニオブ酸ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Mg、Nb)(Zr、Ti)O3:PMN−PZT)により構成される群から選ばれる一種の圧電性セラミックスの出発原料となる有機金属を含む溶液を用いる。
【0019】
上記第4の課題を解決する発明は、本発明の圧電体素子の製造方法で製造した圧電体素子を備えるインクジェット式記録ヘッドの製造方法であって、基板の一面に振動板を形成する工程と、振動板に圧電体素子を製造する工程と、圧電体素子が設けられた振動板が圧力室の一面を形成するような配置で基板をエッチングし圧力室を形成する工程と、を備えたインクジェット式記録ヘッドの製造方法である。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。本実施形態は本発明の製造方法を使用して圧電体素子およびインクジェット式記録ヘッドを製造するものである。
(インクジェット式記録ヘッドおよび圧電体素子の構造)
まず、インクジェット式記録ヘッドの構造を説明する。図2に本形態のインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図を示す。図3にインクジェット式記録ヘッドの主要部一部断面図を示す。本インクジェット式記録ヘッド1は、図2に示すようにノズル板10、圧力室基板20、振動板30および筐体25を備えて構成されている。本発明に係る圧電体素子は、図2において振動板30の裏側に設けられている。
【0021】
圧力室基板20は、図2および図3に示すようにキャビティ21、側壁(隔壁)22、リザーバ23および供給口24を備えている。キャビティ21は、圧力室であってシリコン等の基板をエッチングすることにより形成されたインクなどを吐出するために貯蔵する空間となっている。側壁22はキャビティ21間を仕切るよう形成されている。リザーバ23は、インクを共通して各キャビティ21に充たすための流路となっている。供給口24は、リザーバ23から各キャビティ21にインクを導入可能に形成されている。
【0022】
ノズル板10は、圧力室基板20に設けられたキャビティ21の各々に対応する位置にそのノズル穴11が配置されるよう、圧力室基板20の一方の面に貼り合わせられている。ノズル板10を貼り合わせた圧力室基板20は、さらに図2に示すように筐体25に填められて、インクジェット式記録ヘッド1を構成している。
【0023】
振動板30は圧力室基板20の他方の面に形成されている。振動板30には本発明の圧電体素子40が設けられている。圧電体素子40は、ペロブスカイト構造を持つ圧電性セラミックスの結晶であり、振動板30上に所定の形状で形成されて構成されている。
【0024】
図1に、本発明の圧電体素子40の層構造を説明する断面図を示す。圧電体素子40は、図1において下部電極32、圧電体薄膜層41および上部電極42により構成され、当該圧電体素子のみを独立して製造し使用することが可能である。本実施形態ではインクジェット式記録ヘッドのアクチュエータとして使用するために、インクジェット式記録ヘッド1の振動板30上に圧電体素子40が設けられている。
【0025】
振動板30は、図1に示すように絶縁膜31および下部電極32を積層して構成されている。下部電極32が絶縁膜31と同じく全面に形成される形態の他、圧電体素子の領域にのみ下部電極が形成されている形態も採用可能である。絶縁膜31は、導電性のない材料、例えばシリコン基板を熱酸化等して形成された二酸化珪素により構成され、圧電体層のひずみにより変形し、キャビティ21の内部の圧力を瞬間的に高めることが可能に構成されている。下部電極32は、圧電体層に電圧を印加するための上部電極42と対になる電極であり、導電性を有する材料、例えば白金(Pt)で構成されている。また圧電体素子の密着性を高めるために複数積層構造、例えば、チタン(Ti)層、白金(Pt)層、チタン(Ti)層の積層構造で下部電極を形成してもよい。上部電極膜42は、圧電体層に電圧を印加するための他方の電極となり、導電性を有する材料、例えば膜厚0.1μmの白金(Pt)で構成されている。
【0026】
圧電体薄膜層41は、電気機械変換作用を示す誘電性セラミックスの結晶であり、具体的には、微結晶粒44を包含する柱状結晶43の束により構成されている。柱状結晶43の径は、例えば0.1μm〜0.5μmの範囲である。微結晶粒44の平均粒径は、50nm以下の範囲にある。微結晶粒44の密度(圧電体薄膜の断面をSEMやTEM等で観察した場合に観察される微結晶粒の単位面積当たりの個数)は、1×108個/cm2以上である。圧電体薄膜層41において、微結晶粒44と微結晶粒以外の部分とは同一の組成である。すなわち、圧電体薄膜層は、金属アルコキシド溶液を結晶化することにより形成される。その組成は、ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O3:PZT)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La)TiO3)、ジルコニウム酸鉛ランタン((Pb,La)ZrO3)、ジルコニウム酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3:PLZT)またはマグネシウムニオブ酸ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Mg、Nb)(Zr、Ti)O3:PMN−PZT)により構成される群から選ばれる一種の圧電性セラミックスの出発原料となる有機金属を含む。
【0027】
本発明の圧電体薄膜が微結晶粒を含む点は重要である。微結晶粒が存在するために結晶に生ずる応力が随所で分断され、全体として発生する応力が一部に集中しにくい構造になっている。このために圧電体薄膜層を熱処理により金属アルコキシド溶液が結晶化する際に生ずる応力が緩和され、クラックを生ずることなく厚い圧電体薄膜層が形成されるのである。その結果として圧電体薄膜を1.0μm以上の厚みで形成することが可能である。
【0028】
なお圧電体薄膜層の具体的な組成として代表的なものは、
0.8PbZr0.5Ti0.53−0.2Pb(Mg1/3Nb2/3)O3…(1)
という組成比からなるPMN−PZTである。
【0029】
上記インクジェット式記録ヘッドの構成におけるインク滴吐出の原理を説明する。圧電体素子40の下部電極32と上部電極42との間に電圧が印加されていない場合、圧電体薄膜層41にはひずみを生じない。この電圧が印加されていない圧電体素子40が設けられているキャビティ21には、圧力変化が生じず、そのノズル穴11からインク滴は吐出されない。
【0030】
一方、圧電体素子40の下部電極32と上部電極42との間に一定電圧が印加された場合、圧電体薄膜層41に電界の強さに応じたひずみを生じる。電圧が印加された圧電体素子40が設けられているキャビティ21ではその振動板30が大きくたわむ。このためキャビティ21内の圧力が瞬間的に高まり、ノズル穴11からインク滴が吐出される。
【0031】
(製造方法の説明)
次に本発明のインクジェット式記録ヘッドの製造方法を、圧電体素子の製造方法と併せて説明する。まず圧電体薄膜層の原料となる圧電性セラミックスのゾルを製造する。
(ステップ1):圧電体薄膜層の溶質の基本溶媒として、2−n−ブトキシエタノール中に、チタニウムテトライソプロポキシド(Ti(OC374)、ペンタエトキシニオブ(Nb(OC255)を加えて攪拌しこれらを溶解させる。
【0032】
(ステップ2):次いでモノエタノールアミンをこの溶液に加えて攪拌する。モノエタノールアミンの作用としては、これら金属アルコキシドが加水分解を起さない様に前記2種の金属アルコキシドを化学的に安定させるキレート剤としての作用である。加えるモノエタノールアミンのモル数は以下のように調整する。
【0033】
すなわち、上記金属アルコキシド溶液を構成する金属の種類単位にその金属のモル数にその金属の電荷数を乗じた値をゾルを形成する総ての金属について加算した総和をN1とし、モノエタノールアミンのモル数をN2とおくと、
N2=α・N1 …(2)
0.5 ≦ α ≦ 1.0 …(3)
が成り立つように調整する。ここでN1は、
N1 = [Ti(OC374]×4 + [Nb(OC255]×5
と表される。[Ti(OC374]はチタニウムテトライソプロポキシド、[Nb(OC255]は ペンタエトキシニオブのモル数である。式(3)において、通常は、αが0.7程度となるように調整するとよい。
【0034】
(ステップ3):酢酸鉛3水和物と酢酸マグネシウム5水和物、ジルコニウムアセチルアセトナートとを加え、80℃に加温する。加温した状態で30分間〜60分間攪拌し、その後室温になるまで自然冷却する。
【0035】
(ステップ4):さらに高分子有機材料として、平均分子量400〜800のポリエチレングリコール(PEG)を加えてゾルを完成させる。ポリエチレングリコールの添加量は、鉛(Pb)1モルに対して0.1モルから0.5モル程度、好適には0.25モル程度加える。完成したゾルの溶質濃度(全金属のモル濃度)は、0.3〜1.0M(モル/リットル)とする。好適には0.5M(モル/リットル)となるように設定する。
【0036】
次に、上記製造方法によって製造されたゾルを用いた本実施形態の圧電体素子およびインクジェット式記録ヘッドの製造方法を、図4および図5の製造工程断面図に基づいて説明する。この中で圧電体素子の製造方法は下部電極形成工程、圧電体薄膜層形成工程および上部電極形成工程により構成されている。
【0037】
絶縁膜形成工程(図4(a)): 絶縁膜形成工程は、シリコン基板20に絶縁膜31を形成する工程である。シリコン基板20は、例えば200μm程度、絶縁膜31は1μm程度の厚みに形成する。絶縁膜の製造には、公知の熱酸化法等を用いる。
【0038】
下部電極形成工程(図4(b)): 下部電極形成工程では、絶縁膜31の上に下部電極32を形成する工程である。下部電極32は、例えば絶縁膜側から順にチタン層、白金層、チタン層を20nm、200nm、5nmの厚みで積層する。これら層の製造は公知の直流スパッタ法等を用いる。
【0039】
圧電体薄膜層形成工程(図4(c)、図4(d)): 圧電体薄膜層形成工程は、前記ゾルを使用してゾルゲル法により圧電体薄膜層41を形成する工程である。まず上記ゾルを下部電極32上に一定の厚みに塗布する。例えば公知のスピンコート法を用いる場合には、毎分500回転で30秒、毎分1500回転で30秒、最後に毎分500回転で10秒間塗布する。塗布した段階では、圧電体薄膜層を構成する各金属原子は有機金属錯体として分散している。塗布後、一定温度(例えば180度)で一定時間(例えば10分程度)乾燥させる。乾燥により溶媒であるブトキシエタノールが蒸発する。乾燥後、さらに大気雰囲気下において一定の脱脂温度で一定時間(30分間)脱脂する。この脱脂温度は、400℃以上で500℃以下の範囲がよく、好ましくは450℃程度にする。脱脂により金属に配位している有機物が金属から解離してから酸化燃焼反応を生じ、大気中に飛散する。
【0040】
上記したゾルの塗布→乾燥→脱脂の各工程を所定回数n、例えば12回繰り返して12層の薄膜層45nを積層する。薄い層を多層積層するのはクラックの発生を確実に防止しながら、厚みのある圧電体薄膜層を形成するためである。高速熱処理前の厚みで圧電体薄膜層の前駆体膜全体の厚みが1.6μmとなるようにする。
【0041】
圧電体薄膜層41の前駆体膜45を形成した後に、一定の温度下で高速熱処理(RTA)する。例えば酸素雰囲気下において、650度で5分間、さらに900度で1分間加熱する。この高速熱処理によりアモルファス状態のゲルからペロブスカイト結晶構造が形成される。モノエタノールアミンが金属アルコキシドの加水分解を生じ難く作用するために、結晶化の過程で多くの微結晶粒が柱状結晶中に残された状態で結晶する。高速熱処理を経た後、圧電体薄膜の厚みは、多少厚みが減るが、1.2μm以上の厚みにすることが可能である。圧電体薄膜層の前駆体膜45は結晶化して圧電体薄膜層41になる。
【0042】
上部電極形成工程(図4(e)): 圧電体薄膜層41の上に、さらに電子ビーム蒸着法、スパッタ法等の技術を用いて、上部電極42を形成する。上部電極の材料は、白金(Pt)等を用いる。厚みは100nm程度にする。
【0043】
エッチング工程(図5(a)): エッチング工程は、上記圧電体薄膜層41および上部電極42を各キャビティ21に合わせた形状になるようマスクし、その周囲をエッチングし圧電体素子40にする工程である。具体的には、まずスピンナー法、スプレー法等の方法を用いて均一な厚さのレジスト材料を塗布する。次いでマスクを圧電体素子の形状に形成してから露光し現像して、レジストパターンを上部電極42上に形成する。これに通常用いるイオンミリング、あるいはドライエッチング法等を適用して、上部電極42および圧電体薄膜層41以外の部分をエッチングし除去する。以上で圧電体素子40が形成できる。この圧電体素子を上部電極および下部電極間に電圧を印加可能に構成すれば、独立した電気機械変換素子として機能させることが可能である。本実施形態ではさらにインクジェット式記録ヘッドを製造する。
【0044】
圧力室形成工程(図5(b)): 圧力室形成工程は、圧電体素子40が形成された圧力室基板20の他方の面をエッチングしてキャビティ21を形成する工程である。圧電体素子40を形成した面と反対側から、例えば異方性エッチング、平行平板型反応性イオンエッチング等の活性気体を用いた異方性エッチングを用いて、キャビティ21空間のエッチングを行う。エッチングされずに残された部分が側壁22になる。
【0045】
ノズル板貼り合わせ工程(図5(c)): ノズル板貼り合わせ工程は、エッチング後のシリコン基板20にノズル板10を接着剤で貼り合わせる工程である。貼り合わせのときに各ノズル穴11がキャビティ21各々の空間に配置されるよう位置合せする。ノズル板10が貼り合わせられた圧力室基板20を筐体25に取り付け(図3参照)、インクジェット式記録ヘッド1を完成させる。なおノズル板と圧力室基板を一体的にエッチングして形成する場合には、ノズル板の貼り合わせ工程は不要である。すなわち、ノズル板と圧力室基板とを併せたような形状に圧力室基板をエッチングし、最後にキャビティに相当する位置にノズル穴を設ける場合である。
【0046】
(実施例)
上記実施形態の実施例を以下に説明する。表1にモノエタノールアミンをキレート剤として使用した実施例と、アミンを使用しない従来の方法で結晶化して製造された比較例との特性を示す。
【0047】
【表1】
Figure 0003646773
【0048】
前駆体の限界膜厚とは、結晶化するための高速熱処理直前においてクラックが発生せずに積層可能であった最大の膜厚である。結晶化膜の限界膜厚とは、高速熱処理後にもクラックが発生せずに結晶化できた場合の最大膜厚である。
【0049】
図6に、モノエタノールアミンを用いた実施例の結晶化後の圧電体薄膜層を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した様子を示す。図6(a)はそのTEM写真、図6(b)は写真の模写図である。この図から判るように、圧電体薄膜層中にははっきりと微結晶粒が存在していることが確認できる。このようにモノエタノールアミンを用いることで微結晶粒が生じ、応力を緩和し、クラックが発生しにくくなっていることが確認された。
【0050】
なおアミンには、モノエタノールアミンの他に、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンなど各種存在するが、実験の結果モノエタノールアミンが最も厚膜化に貢献することが確認された。
【0051】
(その他の変形例)
本発明は、上記各実施形態によらず種々に変形して適応することが可能である。例えば、上記実施形態ではPMN−PZTについて説明していたが、他の強誘電性の圧電性セラミックスについても同様に考えることができる。
【0052】
また上記製造方法では、ゾルゲル法により結晶化を行っていたが、他の方法、例えばMOD法などによって圧電体セラミックスの結晶化を行ってもよい。モノエタノールアミンを使用する限り、熱処理過程における加水分解が抑制され微結晶粒が発生し、応力を緩和することが期待される。
【0053】
また本発明で製造した圧電体素子は上記インクジェット式記録ヘッドの圧電体素子のみならず、不揮発性半導体記憶装置、薄膜コンデンサ、パイロ電気検出器、センサ、表面弾性波光学導波管、光学記憶装置、空間光変調器、ダイオードレーザ用周波数二倍器等のような強誘電体装置、誘電体装置、パイロ電気装置、圧電装置、および電気光学装置の製造に適応することができる。すなわち、本発明の圧電体素子は厚膜化が可能であり良好な圧電特性を備えるために、あらゆる用途に適する。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、モノエタノールアミンをキレート剤として使用したことにより、微結晶粒が生じ、応力によるクラックが発生しにくい構造の圧電体素子を形成することが可能である。したがって、本発明により、厚膜化が可能な結晶構造を備えた圧電体素子を提供することができる。また厚膜化が可能な結晶構造を備えた圧電体素子を利用したインクジェット式記録ヘッドを提供することができる。
【0055】
また本発明によれば、モノエタノールアミンをキレート剤とするゾルを形成することにより、製造時にクラックが発生しにくい圧電体素子の製造方法を提供することができる。また製造時に圧電体素子にクラックを発生させないインクジェット式記録ヘッドの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電体素子の層構造を説明する断面図である。
【図2】本発明のインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図である。
【図3】本発明のインクジェット式記録ヘッドの斜視図一部断面図である。
【図4】本発明のインクジェット式記録ヘッドの製造方法を説明する製造工程断面図である(その1)。
【図5】本発明のインクジェット式記録ヘッドの製造方法を説明する製造工程断面図である(その2)。
【図6】モノエタノールアミンを使用した実施例の圧電体薄膜層の透過型電子顕微鏡(TEM)写真と模写図である。
【符号の説明】
10…ノズル板
20…圧力室基板
30…振動板
31…絶縁膜
32…下部電極
40…圧電体素子
41…圧電体薄膜層
42…上部電極
43…柱状結晶
44…結晶粒
45…圧電体薄膜層の前駆体膜
21…キャビティ

Claims (11)

  1. 下部電極および上部電極に挟持された圧電体薄膜を備える圧電体素子において、
    前記圧電体薄膜は、微結晶粒を包含する柱状結晶により構成されていることを特徴とする圧電体素子。
  2. 前記柱状結晶の径は、0.1乃至0.5μmの範囲である請求項1に記載の圧電体素子。
  3. 前記微結晶粒の平均粒径は、50nm以下の範囲である請求項1に記載の圧電体素子。
  4. 前記微結晶粒と微結晶粒以外の部分とは同一の組成である請求項1に記載の圧電体素子。
  5. 前記圧電体薄膜を構成する金属は、ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O3:PZT)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La)TiO3)、ジルコニウム酸鉛ランタン((Pb,La)ZrO3)、ジルコニウム酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3:PLZT)またはマグネシウムニオブ酸ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Mg、Nb)(Zr、Ti)O3:PMN−PZT)により構成される群から選ばれる一種の圧電性セラミックスを含む請求項1に記載の圧電体素子。
  6. 前記圧電体薄膜は、薄膜全体が1.0μm以上の厚みで形成されている請求項1に記載の圧電体素子。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の圧電体素子を備えたインクジェット式記録ヘッドにおいて、
    圧力室が形成された圧力室基板と、
    前記圧力室の一方の面を閉鎖する振動板と、
    前記振動板の前記圧力室に対応する位置に設けられ、当該圧力室に体積変化を及ぼすことが可能に構成された前記圧電体素子と、を備えたことを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
  8. 下部電極および上部電極の間に、電気機械変換作用を示す圧電体薄膜を挟持させた圧電体素子の製造方法において、
    金属アルコキシド溶液を構成する金属の種類単位にその金属のモル数にその金属の電荷数を乗じた値を、ゾルを形成する総ての金属について加算した総和に対し、モノエタノールアミンのモル数を、50%以上100%以下となるように調整してゾルを形成する工程と、
    前記下部電極上に、前記ゾルを使用して、微結晶粒を包含する柱状結晶により構成されるように前記圧電体薄膜を形成する工程と、を備えたことを特徴とする圧電体素子の製造方法。
  9. 脱脂温度を400℃以上で500℃以下の温度に設定して前記圧電体薄膜の脱脂を行う請求項8に記載の圧電体素子の製造方法。
  10. 前記金属アルコキシド溶液として、ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O3:PZT)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La)TiO3)、ジルコニウム酸鉛ランタン((Pb,La)ZrO3)、ジルコニウム酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3:PLZT)またはマグネシウムニオブ酸ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Mg、Nb)(Zr、Ti)O3:PMN−PZT)により構成される群から選ばれる一種の圧電性セラミックスの出発原料となる有機金属を含む溶液を用いることを特徴とする請求項8に記載の圧電体素子の製造方法。
  11. 請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の製造方法で製造した圧電体素子を備えるインクジェット式記録ヘッドの製造方法であって、
    基板の一面に振動板を形成する工程と、
    前記振動板に前記圧電体素子を製造する工程と、
    前記圧電体素子が設けられた振動板が前記圧力室の一面を形成するような配置で前記基板をエッチングし前記圧力室を形成する工程と、を備えたインクジェット式記録ヘッドの製造方法。
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