JP2001237468A - 圧電体素子及びその製造方法 - Google Patents
圧電体素子及びその製造方法Info
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Abstract
体膜を備えた圧電体素子を提供し、このような圧電体膜
の製造方法、特に厚膜化を可能とする製造方法を提供す
る。 【解決手段】 圧電体膜41と、下部電極32および上
部電極とを備えた圧電体素子であって、前記圧電体膜
は、複数の結晶層41a、41bを膜厚方向に積層して
なり、各結晶層内には、結晶粒間の結合の弱い境界面が
膜厚方向に延在し、ある結晶層内における前記結合の弱
い境界面とこれに隣接する結晶層内における前記結合の
弱い境界面とが不連続に形成されたものである。この圧
電体素子は、前記下部電極32上に有機金属化合物を含
む圧電体前駆体膜を成膜し、これに水熱処理を行う工程
を複数回実行し、これによって形成された複数層の圧電
体膜上に前記上部電極を積層させることによって得られ
る。
Description
記録ヘッド等に用いられる圧電体素子に係り、特に、電
流リークが発生しにくく耐電圧性が良好な圧電体膜を備
えた圧電体素子、及びそのような圧電体膜の製造方法で
あって厚膜化の可能な方法に関する。
る圧電体膜を2つの電極で挟んだ素子であり、圧電体膜
は結晶化した圧電性セラミックスにより構成されてい
る。この圧電体素子の製造方法としては、有機金属のゾ
ルを下部電極上に塗布して乾燥脱脂の後、高熱処理を行
って結晶化させるという、いわゆるゾルゲル法を用い、
最後に高熱を加えて一気に結晶化させる方法が知られて
いる。この方法によって圧電体素子を製造すると、結晶
化に伴って内部応力が作用し、圧電体薄膜に容易にクラ
ックが生じやすいという問題があった。
して乾燥脱脂の後、所定のアルカリ溶液中に入れて一定
温度及び一定圧力下で結晶化させる方法も知られてい
る。このようにアルカリ水溶液中で結晶化させる方法を
水熱法という。この水熱法によればゾルゲル法に比べ比
較的低い温度で結晶化が可能であるため、数々の利点が
存在する。例えば、低温製造であれば結晶化の過程で発
生する膜の内部応力が少ないので、従来品よりも大きな
面積の、クラックのない圧電体薄膜を形成可能であると
考えられる。
熱法によって製造した圧電体素子においても、膜厚方向
に微小な隙間または結晶粒間の結合の弱い部分が生じて
いることがある。このような隙間または結合の弱い部分
は電流パスになり易く、耐電圧特性が必ずしも十分に得
られない。
ク材を形成しようとする場合には、結晶化の過程で発生
する膜の内部応力が大きくなるため、厚膜化が困難であ
る。
たな構造を有する圧電体膜を備えた圧電体素子を提供す
ることを目的とする。そして、この圧電体素子を備えた
インクジェット式記録ヘッド及びこのインクジェット式
記録ヘッドを備えたプリンタを提供することを目的とす
る。また、上記のような圧電体膜の製造方法、特に厚膜
化を可能とする製造方法を提供することを目的とする。
め、本発明は、圧電体膜と、この圧電体膜を挟んで配置
される下部電極および上部電極とを備えた圧電体素子で
あって、前記圧電体膜は、複数の結晶層を膜厚方向に積
層してなり、各結晶層は、複数の結晶粒を備え、各結晶
層内には、結晶粒間の結合の弱い境界面が膜厚方向に延
在し、ある結晶層内における前記結合の弱い境界面とこ
れに隣接する結晶層内における前記結合の弱い境界面と
が不連続に形成されたことを特徴とする。
層ごとに異なっているため、結合の弱い面が1層の厚さ
分以上に連続することが無いので、上部電極と下部電極
を結ぶ電流パスを生じにくく、耐電圧性の良好な圧電体
素子となる。
膜を挟んで配置される下部電極および上部電極とを備え
た圧電体素子であって、前記圧電体膜は、複数の結晶層
を膜厚方向に積層してなり、各結晶層には、複数の結晶
粒を備えた結晶粒集団が複数形成されており、各結晶層
内における結晶粒集団の間の境界面は膜厚方向に延在
し、ある結晶層内における境界面とこれに隣接する結晶
層内における境界面とが不連続に形成されたものであ
る。
ば、微小クラック、結合の弱い部分として圧電体膜内に
表れる)の形成位置が、各層ごとに異なっているので、
圧電体膜に微小クラック又は結合の弱い部分が生じたと
しても、複数層の圧電体膜のうち1層の厚さ分以上に連
続することが無いので、電流パスが生じにくく、耐電圧
性の良好な圧電体素子となる。
インクジェット式記録ヘッドにおいて、圧力室が形成さ
れた圧力室基板と、前記圧力室の一方の面に設けられた
振動板と、前記振動板の前記圧力室に対応する位置に設
けられ、当該圧力室に体積変化を及ぼすことが可能に構
成された前記圧電体素子と、を備えたことを特徴とする
ものである。
録ヘッドを備えたプリンタにおいて、記録媒体を供給お
よび搬出が可能に構成された記録媒体搬送機構と、前記
記録媒体搬送機構により供給された記録媒体上の任意の
位置に前記インクジェット式記録ヘッドにより印刷させ
るヘッド制御回路と、を備えたものである。
膜を挟んで配置される下部電極及び上部電極を備える圧
電体素子の製造方法であって、前記下部電極上に有機金
属化合物を含む圧電体前駆体膜を成膜し、これに水熱処
理を行う工程を複数回実行し、これによって形成された
複数層の圧電体膜上に前記上部電極を積層させることを
特徴とする方法である。
繰り返し実行するので、圧電体に微小クラック又は結合
の弱い部分が生じたとしても、かかる微小クラック又は
結合の弱い部分が複数層にまたがることがない。そのた
め、電流パスが生じにくい圧電体素子を製造することが
できる。また、この方法によって圧電体を多層に積層す
ることにより、厚膜化が容易であり、圧電体の厚膜やバ
ルク体を製造しても電流パスが生じにくい圧電体素子を
製造することができる。
法であって、前記複数回実行される各工程において、各
層の圧電体前駆体膜を成膜する前に、それぞれ圧電体結
晶生成のための種層を積層することとしてもよい。
で、結晶成長が促進される。しかも、種層は下層に生じ
た微小クラック内に堆積しやすいので、当該部分から結
晶が成長することとなり、当該部分が結晶粒の境界にな
る可能性が低くなる。
法であって、前記圧電体前駆体膜を成膜し結晶化させる
工程はn(nは2以上)回実行してn層の圧電体膜を形
成するものであって、このn回実行される工程のうち、
1回目からn−1回目の工程において成膜された圧電体
前駆体膜は、当該工程においては結晶化が完全に行われ
る前に結晶化を終了させ、次の回の工程において更に結
晶化させるようにしてもよい。
回の工程で、上下層を同時に結晶化させることにより、
圧電体膜の各層の間における結合力が強くなる。また、
結晶化のための加熱時間が全体として短くて済む。
た圧電体素子を備えるインクジェット式記録ヘッドの製
造方法であって、基板の一面に振動板を形成する工程
と、前記振動板に前記圧電体素子を形成する工程と、前
記基板をエッチングし圧力室を形成する工程と、を備え
た方法である。
の実施の形態を説明する。
圧電体素子を有するインクジェット式記録ヘッドが使用
されるプリンタの構造の説明図である。このプリンタに
は、本体2に、トレイ3、排出口4および操作ボタン9
が設けられている。さらに本体2の内部には、インクジ
ェット式記録ヘッド1、供給機構6、制御回路8が備え
られている。
の製造方法で製造された圧電体素子を備えている。イン
クジェット式記録ヘッド1は、制御回路8から供給され
る吐出信号に対応して、ノズルからインクを吐出可能に
構成されている。
5をトレイ3から供給可能な位置に供給機構6を配置
し、用紙5に印字可能なようにインクジェット式記録ヘ
ッド1を配置している。トレイ3は、印字前の用紙5を
供給機構6に供給可能に構成され、排出口4は、印刷が
終了した用紙5を排出する出口である。
1・602、その他の図示しない機械構造を備えてい
る。モータ600は、制御回路8から供給される駆動信
号に対応して回転可能になっている。機械構造は、モー
タ600の回転力をローラ601・602に伝達可能に
構成されている。ローラ601および602は、モータ
600の回転力が伝達されると回転するようになってお
り、回転によりトレイ3に載置された用紙5を引き込
み、ヘッド1によって印刷可能に供給するようになって
いる。
OM、RAM、インターフェース回路などを備え、図示
しないコネクタを介してコンピュータから供給される印
字情報に対応させて、駆動信号を供給機構6に供給した
り、吐出信号をインクジェット式記録ヘッド1に供給し
たりできるようになっている。また、制御回路8は操作
パネル9からの操作信号に対応させて動作モードの設
定、リセット処理などが行えるようになっている。
インクジェット式記録ヘッドの構造の説明図である。イ
ンクジェット式記録ヘッド1は、図に示すように、ノズ
ル板10、圧力室基板20および振動板30を備えて構
成されている。このヘッドは、オンデマンド形のピエゾ
ジェット式ヘッドを構成している。
21、側壁(隔壁)22、リザーバ23および供給口2
4を備えている。キャビティ21は、シリコン等の基板
をエッチングすることにより形成されたインクなどを吐
出するために貯蔵する空間となっている。側壁22はキ
ャビティ21間を仕切るよう形成されている。リザーバ
23は、インクを共通して各キャビティ21に充たすた
めの流路となっている。供給口24は、リザーバ23か
ら各キャビティ21にインクを導入可能に形成されてい
る。なおキャビティ21などの形状はインクジェット方
式によって種々に変形可能である。例えば平面的な形状
のカイザー(Kyser)形であっても円筒形のゾルタン(Z
oltan)形でもよい。またキャビティが1室形用に構成
されていても2室形に構成されていてもよい。
れたキャビティ21の各々に対応する位置にそのノズル
穴11が配置されるよう、圧力室基板20の一方の面に
貼り合わせられている。ノズル板10を貼り合わせた圧
力室基板20は、さらに筐体25に納められて、インク
ジェット式記録ヘッド1を構成している。
貼り合わせられている。振動板30には圧電体素子(図
示しない)が設けられている。振動板30には、インク
タンク口(図示せず)が設けられて、図示しないインク
タンクに貯蔵されているインクを圧力室基板20内部に
供給可能になっている。
ッドおよび圧電体素子のさらに具体的な構造を説明する
断面図を示す。この断面図は、一つの圧電体素子の断面
を拡大したものである。図に示すように、振動板30
は、絶縁膜31および下部電極32を積層して構成さ
れ、圧電体素子40は圧電体薄膜層41および上部電極
42を積層して構成されている。特にこのインクジェッ
ト式記録ヘッド1は、圧電体素子40、キャビティ21
およびノズル穴11が一定のピッチで連設されて構成さ
れている。このノズル間のピッチは、印刷精度に応じて
適時設計変更が可能である。例えば400dpi(dot
per inch)になるように配置される。
シリコン基板を熱酸化等して形成された二酸化珪素(S
iO2)により構成され、圧電体層の変形により変形
し、キャビティ21の内部の圧力を瞬間的に高めること
が可能に構成されている。
が、絶縁膜31と下部電極32との間に、20nm程度
のチタン又は酸化チタンの膜(密着層)を形成しても良
い。
るための一方の電極であり、導電性を有する材料、例え
ば、白金(Pt)などにより構成されている。なお、下
部電極32はこれに限らず、白金と同じFCC構造を有
する金属であるイリジウム(Ir)で構成しても良い。
下部電極32は、圧力室基板20上に形成される複数の
圧電体素子に共通な電極として機能するように絶縁膜3
1と同じ領域に形成される。ただし、圧電体薄膜層41
と同様の大きさに、すなわち上部電極と同じ形状に形成
することも可能である。
るための他方の電極となり、導電性を有する材料、例え
ば膜厚0.1μmの白金(Pt)で構成されている。
製造された例えばペロブスカイト構造を持つ圧電性セラ
ミックスの結晶であり、振動板30上に所定の形状で形
成されて構成されている。
ニウム酸チタン酸鉛(Pb(Zr0 .56、T
i0.44)O3:PZT)等の圧電性セラミックスを
用いる。その他、チタン酸鉛ランタン((Pb,La)
TiO3)、ジルコニウム酸鉛ランタン((Pb,L
a)ZrO3)またはマグネシウムニオブ酸ジルコニウ
ム酸チタン酸鉛(Pb(Mg、Nb)(Zr、Ti)O
3:PMN−PZT)、ジルコニウム酸チタン酸バリウ
ム(Ba(Zr、Ti)O3:BZT)などでもよい。
において、印刷動作を説明する。制御回路8から駆動信
号が出力されると、供給機構6が動作し用紙5がヘッド
1によって印刷可能な位置まで搬送される。制御回路8
から吐出信号が供給されず圧電体素子40の下部電極3
2と上部電極42との間に電圧が印加されていない場
合、圧電体薄膜層41には変形を生じない。吐出信号が
供給されていない圧電体素子40が設けられているキャ
ビティ21には、圧力変化が生じず、そのノズル穴11
からインク滴は吐出されない。
圧電体素子40の下部電極32と上部電極42との間に
一定電圧が印加された場合、圧電体薄膜層41に変形を
生じる。吐出信号が供給された圧電体素子40が設けら
れているキャビティ21ではその振動板30が大きくた
わむ。このためキャビティ21内の圧力が瞬間的に高ま
り、ノズル穴11からインク滴が吐出される。ヘッド中
で印刷させたい位置の圧電体素子に吐出信号を個別に供
給することで、任意の文字や図形を印刷させることがで
きる。
による圧電体素子の断面SEM写真であり、図5はその
模写図である。これらの図に示されるように、圧電体薄
膜(図5の符号41)は、膜厚方向に4層積層され、下
部電極32と上部電極42に挟まれている。
晶粒を備えた結晶粒集団が複数形成され、各集団の間は
膜厚方向に形成された境界面で区切られている。ここ
で、この境界面は他の層における境界面と連続しないよ
うになっており、互いに隣接する層の間で、異なる位置
に形成されている。これにより、上記境界面に沿って電
流リークが発生する可能性が極めて低くなる。従って、
仮に水熱法による結晶化の過程で微小クラックが発生し
ても、その微小クラックは上部電極から下部電極に直線
的に繋がっていないので、電流リークが発生しにくく、
耐電圧特性の良好な圧電体素子を作成することができ
る。
っているが、これに限らず、膜厚方向に延びる柱状であ
ってもよく、柱状の結晶粒と非柱状の結晶粒との混在で
あっても良い。例えば、圧電体薄膜の結晶方位を、膜厚
方向に[110]優先配向とすると柱状の結晶粒とな
り、膜厚方向に[111]優先配向とすると、非柱状の
結晶粒となる。そして一般には、柱状の結晶粒の方が良
好な圧電特性を得ることができる。
電体素子の製造方法を、インクジェット式記録ヘッドの
製造方法と併せて説明する。
ゾルを製造する。例えば、2−n−ブトキシエタノール
中にチタニウムテトライソプロポキシド、ペンタエトキ
シニオブおよびテトラ−n−プロポキシジルコニウムを
混入し、室温下で20分間攪拌する。次いでジエタノー
ルアミンを加えて室温下でさらに20分間攪拌する。酢
酸鉛と酢酸マグネシウムを加え80℃に加温する。加温
した状態で20分間攪拌し、その後室温になるまで自然
冷却する。以上の工程で製造された金属アルコキシド溶
液を前駆体として用いる。ただし、ゾルの製造方法は上
記に限定されるものではない。
ルを用いて圧電体素子、さらにインクジェット式記録ヘ
ッドを製造する。図6及び図7は、本実施形態による圧
電体素子の製造工程断面図である。
成する工程である。シリコン基板20の厚みは、側壁の
高さが高くなりすぎないように、例えば200μm程度
のものを使用する。絶縁膜31は例えば1μm程度の厚
みに形成する。絶縁膜の製造には公知の熱酸化法等を用
い、二酸化珪素の膜を形成する。なお、絶縁膜31の上
に、好ましくは厚さ5nm〜40nm、更に好ましくは
20nm程度のチタン膜又は酸化チタン膜(密着層3
3)を更に形成しても良い。この密着層33は、下部電
極32との密着性を向上させる。
上に下部電極32を形成する工程である。下部電極32
は、例えば白金層を200nmの厚みで積層する。これ
らの層の製造は公知の電子ビーム蒸着法、スパッタ法等
を用いる。
を好ましくは3nm〜25nm、更に好ましくは5nm
の厚みで形成する。このチタン種層の形成には、例えば
公知の直流スパッタ法等を用いる。この種層は一様の厚
みで形成するが、場合によって島状となっても構わな
い。
脂とを実行することにより、複数層からなる圧電体膜4
1のうちの1層となる圧電体前駆体薄膜第1層411を
形成する工程である。まず上記のようにして製造した金
属アルコキシド溶液を、下部電極32上に一定の厚み
(例えば0.2μm)に塗布する。例えば公知のスピン
コート法を用いる場合には、毎分500回転で30秒、
毎分1500回転で30秒、最後に毎分500回転で1
0秒間塗布する。塗布した段階では、PZTを構成する
各金属原子は有機金属錯体として分散している。塗布
後、一定温度で一定時間乾燥させる。例えば、乾燥温度
は例えば150℃以上200℃以下に設定する。好まし
くは、180℃で乾燥させる。乾燥時間は例えば5分以
上15分以下にする。好ましくは10分程度乾燥させ
る。
の脱脂温度で一定時間脱脂する。脱脂温度は、300℃
以上500℃以下の範囲が好ましい。この範囲より高い
温度では結晶化が始まってしまい、この範囲より低い温
度では、十分な脱脂が行えないからである。好ましくは
350℃程度に設定する。脱脂時間は、例えば5分以上
90分以下にする。この範囲より長い時間では結晶化が
始まってしまい、この範囲より短い時間では十分に脱脂
されないからである。好ましくは10分程度脱脂させ
る。脱脂により金属に配位している有機物が金属から解
離し酸化燃焼反応を生じ、大気中に飛散する。
力を加えることが可能に構成されている水槽100に満
たす。そして上記の工程で積層された圧電体前駆体薄膜
第1層411を基板ごと水槽100に浸し、オートクレ
ーブ(autoclave)中で一定条件で結晶化を促進させ
る。
は、溶質として、ここでは例えばBa(OH)2を用い
る。また、KOH、Pb(OH)2、Ba(OH)2と
Pb(OH)2の混合液またはKOHとPb(OH)2
の混合液でもよい。これらのアルカリ性溶液で圧電性セ
ラミックスが結晶化することが確認されている。アルカ
リ溶液の濃度としては、0.05M[mol/l]以上
0.5M[mol/l]以下の濃度に調整する。これ以
下の濃度であると結晶化が促進されず、これ以上の濃度
であると、アルカリが強く、圧電体薄膜および基板など
を侵食するおそれがあるからである。例えば、0.1M
[mol/l]の濃度に調整する。
以下に設定する。この範囲より低い温度では結晶化が促
進されず、この範囲より高い温度では、圧電体薄膜層お
よびシリコン基板がエッチングされるからである。例え
ば処理温度を150℃程度にする。水熱処理の圧力は、
2気圧以上20気圧以下に設定する。この範囲からはず
れる圧力では、良好な結晶が得られないからである。例
えば圧力を6気圧程度にする。水熱処理の時間は、例え
ば60分に設定する。
11を結晶化させた場合、圧電体膜第1層41aには、
内部応力によって微小なクラック又は結晶粒間の結合の
弱い部分が膜厚方向に生じることがある。このような部
分は電流パスとなるおそれもあるが、そのようなおそれ
は、以下の工程を経ることによって大幅に軽減される。
ゾルの塗布とその乾燥・脱脂とを実行することにより、
複数層からなる圧電体膜41のうちの第2層となる圧電
体前駆体薄膜第2層412を形成する工程である。塗布
方法、乾燥及び脱脂方法は、上記圧電体前駆体薄膜層形
成工程と同様であるので、説明を省略する。
に形成したと同様に、前駆体膜第2層412の下層に
も、チタン(Ti)の種層を形成しても良い。
化が完全に行われる前に水熱処理を中止させ、下記の第
2水熱処理工程において、前駆体膜第2層を結晶化させ
ると同時に前駆体膜第1層を更に結晶化させるようにし
てもよい。これにより、圧電体第1層と第2層の密着性
が向上する。また、一層あたりの加熱時間が短くて済む
ため、結晶化のための加熱時間が全体として短くて済
む。
用する。水熱処理条件は、上記水熱処理工程と同様であ
る。
1bにも、上記第1層41aと同様に、微小なクラック
又は結晶粒間の結合の弱い部分が生じることがある。し
かしこの実施形態の工程によれば、第1層と第2層は別
々に結晶化されるので、たとえ1つの層で微小クラック
が発生しても、他の層ではそれと無関係の箇所に発生す
る。従って、上部電極42から下部電極32まで通じる
ようなクラックが発生する事態は回避することができ
る。
場合には、その上の層においては、その場所では内部応
力が吸収されるので、下層のクラックと同じ場所でクラ
ックが発生する可能性は低くなると考えられる。また、
圧電体膜第1層と圧電体前駆体膜第2層との間に種層を
形成した場合、種層はクラック部分に特に堆積され易い
ので、そこから圧電体膜第2層の結晶がエピタキシャル
成長することが期待できる。そうすると、圧電体膜第1
層に発生した微小クラックの上に圧電体膜第2層の結晶
粒が生じるので、当該部分にクラックが発生する恐れは
少ない。
駆体薄膜層の形成工程と、水熱処理工程とを繰り返し実
行することにより、圧電体膜が複数層にわたって形成さ
れ、厚膜化が可能である。例えば、1層あたり0.2μ
mの厚みの圧電体膜を10層にわたって積層すると、計
2μmの圧電体膜を得ることができる。更にそれ以上の
厚み(例えば厚さ15μm程度のバルク体)に形成する
こともできる。
とにこれを結晶化させることにより、本実施形態の圧電
体素子に使用される圧電体膜が完成する。次に、この圧
電体膜を利用した圧電体素子、およびこれを備えた圧電
アクチュエータの一例であるインクジェットヘッドにつ
いて、その製造方法を説明する。図8は、圧電体膜に上
部電極を形成する圧電体素子の形成工程、更には、これ
を備えたインクジェットヘッドの製造工程を説明する断
面図である。
パッタ法等の技術を用いて、上部電極42を形成する。
上部電極の材料は、白金(Pt)等を用いる。厚みは1
00nm程度にする。
る。この層構造を、圧電体素子を適用するインクジェッ
ト式記録ヘッドに適合した形状にエッチング等で成形す
ればよい。
る。まず、上記圧電体素子の積層構造41および42を
圧力室基板20に形成するキャビティに合わせた形状と
なるようマスクする。そしてその周囲をエッチングし圧
電体素子40にする。具体的には、まずスピンナー法、
スプレー法等の方法を用いて均一な厚さのレジスト材料
を塗布する。次いでマスクを圧電体素子の形状に形成し
てから露光し現像して、レジストパターンを上部電極4
2上に形成する。マスクはレジスト材料がポジ型かネガ
型かに合わせて形成する。そして通常用いるイオンミリ
ング、あるいはドライエッチング法等を適用して、上部
電極42および圧電体薄膜層41をエッチングし除去す
る。以上でインクジェット式記録ヘッドに適合した圧電
体素子40が形成できる。
基板20の他方の面をエッチングしてキャビティ21を
形成する工程である。圧電体素子40を形成した面と反
対側から、例えば異方性エッチング、平行平板型反応性
イオンエッチング等の活性気体を用いた異方性エッチン
グを用いて、キャビティ21空間のエッチングを行う。
エッチングされずに残された部分が側壁22になる。
板20にノズル板10を接着剤で貼り合わせる工程であ
る。貼り合わせのときに各ノズル穴11がキャビティ2
1各々の空間に配置されるよう位置合せする。最後に、
ノズル板10が貼り合わせられた圧力室基板20を筐体
に取り付け、インクジェット式記録ヘッド1を完成させ
る。
ッチングして形成する場合には、ノズル板の貼り合わせ
工程は不要である。すなわち、ノズル板と圧力室基板と
を併せたような形状に圧力室基板をエッチングし、最後
にキャビティに相当する位置にノズル穴を設ければよい
からである。
ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr0.56Ti
0.44)O3)を圧電体薄膜層とする圧電体素子を製
造した。特に、圧電体前駆体膜を塗布して結晶化させる
工程を2回繰り返し実行し、圧電体結晶を2層に形成し
た。
て製造した圧電体薄膜を挙げる。比較例の圧電体薄膜
は、チタン(Ti)で構成された下部電極上にPZT前
駆体膜を形成して、水熱処理により結晶化させて製造し
た。両者とも、圧電体薄膜を直径2mmとし、膜厚は
0.5μmとした。
圧電体素子に直流電圧をかけた場合の、電圧−電流特性
を示すグラフである。図中、白抜きのドットは本実施例
による圧電体素子における特性、黒塗りのドットは比較
例による圧電体素子における特性である。この図に示さ
れるように、本実施例による圧電体素子は、電圧の印加
に対するリーク電流が比較例による圧電体素子における
リーク電流より大幅に小さいことがわかる。
多層にすれば、結晶粒集団の境界に沿って形成される電
流路がより長くなるので、印加電圧に対するリーク電流
の値が更に小さくなると考えられる。
態に限らず種々に変形して適用することが可能である。
例えば、上記実施例はPZTであったが、他の圧電体素
子用の圧電性セラミックス(PMN−PZTなど)につ
いても同様に水熱法による結晶化が可能である。
インクジェット式記録ヘッドの圧力発生源のみならず、
圧電ファン、超音波モータ、超音波振動子のような圧電
体素子装置及びこの様な装置の製造に適応することがで
きる。すなわち、本発明の圧電体素子は大面積化が可能
でコストダウンを図れるため、従来品にない用途を提供
したり、従来の機能をさらに安く提供したりできる。
応力が低いため機械的強度が向上したことによって信頼
性の高い圧電体素子を提供することができる。また、圧
電性および強誘電性に優れた圧電体を備えた圧電体素子
を提供することができる。
を備えた圧電体素子を製造する方法を提供することがで
き、しかも厚膜化が可能な製造方法を提供することがで
きる。
ト式記録ヘッドが使用されるプリンタの構造を説明する
斜視図である。
ト式記録ヘッドの構造の説明図である。
電体素子の具体的な構造を説明する断面図である。
EM写真である。
である。
である。
法を説明する製造工程断面図である。
直流電圧をかけた場合の、電圧−電流特性を示すグラフ
である。
板、 31…絶縁膜、32…下部電極、 40…圧電体
素子、 41…圧電体薄膜層、 42…上部電極、 2
1…キャビティ
Claims (8)
- 【請求項1】 圧電体膜と、この圧電体膜を挟んで配置
される下部電極および上部電極とを備えた圧電体素子で
あって、 前記圧電体膜は、複数の結晶層を膜厚方向に積層してな
り、各結晶層は、複数の結晶粒を備え、各結晶層内に
は、結晶粒間の結合の弱い境界面が膜厚方向に延在し、
ある結晶層内における前記結合の弱い境界面とこれに隣
接する結晶層内における前記結合の弱い境界面とが不連
続に形成された、圧電体素子。 - 【請求項2】 圧電体膜と、この圧電体膜を挟んで配置
される下部電極および上部電極とを備えた圧電体素子で
あって、 前記圧電体膜は、複数の結晶層を膜厚方向に積層してな
り、各結晶層には、複数の結晶粒を備えた結晶粒集団が
複数形成されており、各結晶層内における結晶粒集団の
間の境界面は膜厚方向に延在し、ある結晶層内における
境界面とこれに隣接する結晶層内における境界面とが不
連続に形成された、圧電体素子。 - 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の圧電体素
子を備えたインクジェット式記録ヘッドにおいて、 圧力室が形成された圧力室基板と、 前記圧力室の一方の面に設けられた振動板と、 前記振動板の前記圧力室に対応する位置に設けられ、当
該圧力室に体積変化を及ぼすことが可能に構成された前
記圧電体素子と、を備えたことを特徴とするインクジェ
ット式記録ヘッド。 - 【請求項4】 請求項3に記載のインクジェット式記録
ヘッドを備えたプリンタにおいて、 記録媒体を供給および搬出が可能に構成された記録媒体
搬送機構と、 前記記録媒体搬送機構により供給された記録媒体上の任
意の位置に前記インクジェット式記録ヘッドにより印刷
させるヘッド制御回路と、を備えるプリンタ。 - 【請求項5】 圧電体膜と、この圧電体膜を挟んで配置
される下部電極及び上部電極を備える圧電体素子の製造
方法であって、 前記下部電極上に有機金属化合物を含む圧電体前駆体膜
を成膜し、これに水熱処理を行う工程を複数回実行し、
これによって形成された複数層の圧電体膜上に前記上部
電極を積層させることを特徴とする圧電体素子の製造方
法。 - 【請求項6】 請求項5に記載の圧電体素子の製造方法
であって、 前記複数回実行される各工程において、各層の圧電体前
駆体膜を成膜する前に、それぞれ圧電体結晶生成のため
の種層を積層する、圧電体素子の製造方法。 - 【請求項7】 請求項5又は請求項6に記載の圧電体素
子の製造方法であって、 前記圧電体前駆体膜を成膜し結晶化させる工程はn(n
は2以上)回実行してn層の圧電体膜を形成するもので
あって、 このn回実行される工程のうち、1回目からn−1回目
の工程において成膜された圧電体前駆体膜は、当該工程
においては結晶化が完全に行われる前に結晶化を終了さ
せ、次の回の工程において更に結晶化させる、圧電体素
子の製造方法。 - 【請求項8】 請求項5乃至請求項7のいずれか一項に
記載の製造方法で製造した圧電体素子を備えるインクジ
ェット式記録ヘッドの製造方法であって、 基板の一面に振動板を形成する工程と、 前記振動板に前記圧電体素子を形成する工程と、 前記基板をエッチングし圧力室を形成する工程と、を備
えたインクジェット式記録ヘッドの製造方法。
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-
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