JP3646540B2 - ローパスフィルタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は各種電子機器に利用されるコイル部とコンデンサ部を有するローパスフイルタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から使用されている3端子ローパスフイルタは、一般的に図7に示すような等価回路で示され、コイル部Lとコンデンサ部Cをラダー回路として構成されている。T形の3端子ローパスフイルタの特性は図8に示すように高帯域で減衰極faを持つ特性として示される。この減衰極faは図7のLCによる
f=1/{2π(LC)1/2
ではなく、図9のコイル部のインダクタンスLとコイル部の浮遊容量Csで計算される
fa=1/{2π(LCs)1/2
である。
図7のLCによるf=1/{2π(LC)1/2}は減衰特性のうち減衰が始まるカットオフ周波数fcである。
【0003】
従来、周波数特性を改善するために図10に示すようなローパスフイルタ部のコイル部LとコンデンサCpを並列に接続するか、あるいは図11のようにローパスフイルタのコンデンサCとコイルLsを直列に接続する方法がとられている(例えば特開昭60−148212号公報、特開昭61−4312号公報)。
図11の構成を実現するため、T型を構成するフイルタのコイル部に巻き線方向と同一方向に1ターン以上のアース線を巻き回しすることにより、減衰極faを制御するという方法が用いられてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のこの方法では、製造上の困難、性能が安定しないなどの問題があった。
コンデンサ部に直列インダクタンスLsを加えることにより、実際には、図12に示すように共振系の次数が増加するために新しい減衰極fdが発生し、この新しい減衰極をfaと異なる周波数に設定することにより周波数特性を改善できる。
fa>fdとなるように直列インダクタンスLsを設定した場合は減衰特性が更に急峻でなおかつfa〜fd間でより平坦な特性を得ることができる。
fa<fdに関してはfd以降の特性の平坦性が向上するというものである。
【0005】
しかし、アース巻き線をコイル部に巻くと図13に示すように相互インダクタンスが発生すること、コイル部の浮遊容量が変化するため、図14に示すようにカットオフ周波数fc、減衰極fa、新減衰極fdが変化し、希望する特性が得られにくく、かつ製造も困難であった。
【0006】
また、T型を構成するフイルタのコイル部に巻き線方向と同一方向に1ターン以上のアース線を巻き回しすることは巻き線の部品費用及び部品形状を大きくさせてしまう。そして、アース巻き線を使用した場合は製造時の特性のバラツキが多くなる、基本T形回路の特性変化を起こしやすくなる、あるいは電磁波などによる誘導性の雑音の影響を受けやすくなるなどの問題があった。
【0007】
本発明は、これらの従来技術の問題点を解決することを目的とするものである。すなわち、本発明は、周波数特性が優れ、製造時の特性のバラツキが少なく、特性の変化に対する安定度が高く、電磁波などの影響を受けにくく、小型に構成できるローパスフィルタを得ることを課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明(請求項1)は、入力端子、出力端子及びグランド端子を有し、入力端子と出力端子間にインダクタンス部が形成され、インダクタンス部の中間とグランド端子間にコンデンサ部が形成されたローパスフィルタを、プリント配線板上に設け、前記グランド端子と前記プリント配線板のグランドとの間に、プリント配線板に形成された複数の貫通ビアを直列に接続して成るインダクタンス部を設けたローパスフィルタである。
【0009】
又、本発明(請求項2)は、入力端子、出力端子及びグランド端子を有し、入力端子と出力端子間にインダクタンス部が形成され、インダクタンス部の中間とグランド端子間にコンデンサ部が形成されたローパスフィルタを、プリント配線板上に設け、前記グランド端子と前記プリント配線板のグランドとの間に、配線パターンと貫通ビアとにより形成されるインダクタンス部を設けたローパスフィルタである。
【0010】
【作用】
本発明(請求項1)は、プリント配線板に部品を実装する際において、ローパスフィルタのコンデンサ部を直接グランドに接続するのではなく、インダクタンス部を介してグランドに接続するようにしたので、新たな共振点として減衰極fdを生成でき、これを制御して周波数特性を改善することができる。本発明によれば、インダクタンス部品はプリント配線板に形成された複数の貫通ビアを直列に接続して成るインダクタンス部を設けたものなので、従来のアース線を巻きつけてインダクタンスを形成するのに比べ、小形で、特性のバラツキが少なく、電磁波の影響も受けにくい。
【0011】
本発明(請求項2)は、プリント配線板に部品を実装する際において、3端子ローパスフィルタのコンデンサ部を直接グランドに接続するのではなく、プリント配線板上の配線パターンと貫通ビアとにより所定のインダクタンスを発生させ、コンデンサの容量と発生したインダクタンスによる共振点として減衰極fdを生成できるので、これを制御して周波数特性を改善することができる。
又、本発明によれば、プリント配線板上の配線パターンと貫通ビアとにより所定のインダクタンスを発生させるので、従来のアース線を巻きつけてインダクタンスを形成するのに比べ、小形で、特性のバラツキが少なく、電磁波の影響も受けにくい。
配線パターンと貫通ビアとによる所定のインダクタンスの発生手段には、例えば、▲1▼多層プリント配線板で通常使用している貫通Viaを直列接続することにるもの、▲2▼多層プリント配線板での配線を渦巻き状にすることによりインダクタンスを発生させるもの、▲3▼多層プリント配線板で表面相と裏面相を貫通しないブラインドビアや、ビアの径を小さくし、実装密度を向上させるビルドアップ工法の基板において、配線との併用によりほぼ完全なスパイラル構造を実現することによりインダクタンスを発生させるもの、▲4▼配線の幅を狭くし、配線をジグザグ状に行うことによりインダクタンスを発生させるものなどがある。
【0012】
【発明の実施の形態】
(第1の実施例)
図1は、第1の実施例によるローパスフィルタの構成を示す図で、多相プリント配線板の部品面側から視た図である。図1の(a)において、11は3端子ローパスフィルタ、111は3端子ローパスフィルタの信号入力電極、112は3端子ローパスフイルタのグランド(GND)接続電極、113は3端子ローパスフイルタの信号出力電極、12はプリント板信号配線、13はインダクタンス部品、14はプリント配線板のGND面接続用ビア(Via)、15はプリント基板をそれぞれ示すものである。信号入力電極111と信号出力電極113の間には図1(b)の概略図に示すように、コイル部16が形成され、その中間に容量形成用の電極17がコイル部に対向して配置され、電極17はグランド接続電極112に接続されている。コイル部16と電極17との間にキャパシタンスが形成されコンデンサ部18となっている。図1(c)は図1(a)(b)のローパスフィルタの等価回路を示すものである。なお、3端子ローパスフィルタは図1(a)の11の構造のものに限られるものではなく、同図(c)の等価回路の11’あるいは図7の等価回路を基本構成として含む3端子ローパスフィルタであれば、どのような形態であってもよい。
【0013】
T形の3端子ローパスフイルタのグランド接続端子をGNDに直接接続した場合には、図8のような減衰特性を示す。既に説明したが、部品の減衰の特徴を表す減衰極faはインダクタンス部に並列に形成される浮遊容量Csとの間で形成される並列共振周波数を示す。すなわち、fa=1/{2π(LCs)1/2}となる。
コンデンサ部に直列にインダクタンスLsを挿入すると容量Cとの直列共振が加わるため第2の減衰極fdが発生する。
この第2の減衰極は、fd=1/{2π(L’C)1/2}となる。この第2の減衰極fdと第1の減衰極faの間は新たに形成されたfdを与える直列共振回路が誘導性の領域になってもfaを与える並列共振回路が容量性を示しているため、合成のインピーダンスが支配し、新たな反共振点などを発生させない。この結果、図12の実線で示すような減衰特性となり、周波数特性が改善できる。
従来技術ではアース巻き線を利用していたが、本発明はアースを巻いた巻き線ではなく、通常のインダクタンス部品を利用するので、製造による特性のバラツキが少なく、又、外部からの電磁波の誘導による妨害を受けにくい。
【0014】
(第2の実施例)
本発明の第2の実施例を図2に示す。本実施例は第1の実施例において、インダクタンス部品15を取り付ける代わりとしてプリント配線板の貫通ビアによりインダクタンスを形成するように構成したものである。図2において、21は3端子ローパスフィルタ、22はインダクタンスを形成するための貫通ビア、23は第1層配線層、24は第2層配線層、25は第3層GND層、26は第4層配線層、27はコネクタ、28は基板上の配線である。
3端子ローパスフィルタ21のGND接続電極212をプリント基板上でGND層25に接続する際、プリント基板に貫通ビア(Via)22を複数設置し、これらの複数の貫通ビア22を直列に接続されるように第1層配線層23及び第4層配線層26に配線を施す。このことによりプリント配線板製造時にインダクタンスが形成され、部品費用を増加させることなく減衰極faを制御することができる。
通常一般的に用いられている多層プリント配線板において誘電率がεr=4.7の時のインダクタンスの計算値を図3に示す。
図3の表から厚さ1.6mmの基板において通常一般的に使用される内径0.6のビア(Via)で約4.29nHである。このためプリント基板で形成されるインダクタンスは4層基板の場合においては下記のように表される。
【0015】
L=4.29×N+4.29×(A/1.6)+B×C
L:インダクタンスの総和
N:貫通ビア(Via)の個数
A:表面配線層もしくは裏面配線層から内層グランド面迄の距離。
B:配線長
C:単位長あたりのインダクタンス
従って貫通ビア(Via)を4個使用した場合は約20nH程度発生し、これは高帯域での減衰極を得るのに必要充分なインダクタンス値である。
【0016】
本実施例によれば、多層プリント配線板で通常使用している貫通ビアを直列接続することによりインダクタンスを発生させ、多層プリント配線板のパターンで減衰極fdを制御することができる。
【0017】
(第3の実施例)
第3の実施例を図4に示す。
PCカード(PCMCIA−CARD)のような薄型プリント配線板45においては、貫通ビアを利用してもインダクタンスが充分に希望する値になりにくい。このためプリント基板の配線パターンで渦巻き状のパターン42を形成し、中心に貫通ビア43を配置するようにしてインダクタンスを増加させるようにしたものである。この構造とすることにより、薄形のプリント配線板においても特性改善の実行が可能となる。
【0018】
(第4の実施例)
第4の実施例を図5に示す。この実施例では、多層の配線層51、52、53、54を有する基板に3端子ローパスフィルタ59を搭載し、その中点は、ビア55を介して、第2層52に施された配線57と、第3層に施された配線58と、配線57及び58を接続する内層ブラインドビア56により形成されたスパイラルコイルに接続されている。インダクタンスの値はスパイラルのパターンによって調節でき、減衰極fdを正確に制御することができるので、製造の仕方による特性のばらつきがきわめて少なく、又、周波数特性の優れたフィルタを得ることができる。
【0019】
(第5の実施例)
第5の実施例を図6に示す。この例は3端子フェライトフィルタ61の中点に幅を狭くした細線をジグザグに配線した細線化ジグザグ配線部65の一端を接続し、他端をGND面接続ビアに接続した構成を有する。細線化ジグザグ配線部65によりインダクタンスを発生させるので、スペースに余裕のない小型機器の配線基板でも、搭載可能となる。
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、プリント配線板に部品を実装する際において、インダクタンス部とコンデンサ部からなる3端子ローパスフィルタのコンデンサ部を直接アースに接続するのではなく、インダクタンス部品を介してグランドに接続するようにし、あるいはプリント配線板上の配線パターンと貫通ビアとにより所定のインダクタンスを発生させるようにしたので、コンデンサ部の容量とインダクタンス部品のインダクタンスあるいは前記発生したインダクタンスによる共振点として減衰極fdを生成できるので、これを制御して周波数特性を改善することができる。又、本発明によれば、プリント配線板上の配線パターンと貫通ビアとにより所定のインダクタンスを発生させるので、従来のアース線を巻きつけてインダクタンスを形成するのに比べ、小形で、特性のバラツキが少なく、電磁波の影響も受けにくいローパスフィルタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)〜(c)は本発明の第1の実施例を示す図、
【図2】 (a)〜(b)は本発明の第2の実施例を示す図、
【図3】 多層プリント配線板に用いられるビアのインダクタンスの値を示す図、
【図4】 本発明の第3の実施例を示す図、
【図5】 本発明の第4の実施例を示す図、
【図6】 本発明の第5の実施例を示す図、
【図7】 一般的な3端子ローパスフィルタの等価回路を示す図、
【図8】 3端子ローパスフィルタの特性例を示す図、
【図9】 コイルの浮遊容量をも考慮した3端子ローパスフィルタの等価回路を示す図、
【図10】 周波数改善のために並列容量CPを用いる従来例の等価回路、
【図11】 周波数改善のために直列インダクタンスを用いる従来例の等価回路、
【図12】 直列インダクタンスによる特性改善を説明するための特性図、
【図13】 従来例の問題点を説明するための等価回路図、
【図14】 従来例の問題点を説明するための特性図。
【符号の説明】
L…インダクタンス部、C…コンデンサ部、fa…減衰極、fc…カットオフ周波数、Cs…浮遊容量部、Cp…並列容量部、Ls…直列インダクタンス部、fa…減衰極、fc…カットオフ周波数、fd…新減衰極、M…相互インダクタンス部、Cm…相互コンダクタンス、
11…3端子ローパスフィルタ、111…信号入力電極、112…GND接続電極、113…信号出力電極、12…プリント板信号配線、13…インダクタンス部品、14…プリント配線板GND面接続用ビア、15…プリント基板、
21…3端子ローパスフイルタ、211…信号入力電極、212…GND接続電極、213…信号出力電極、22…貫通ビア、23…第1層配線層、24…第2層電源層、25…第3層GND層、26…第4層配線層、27…接続コネクタ、28…配線、
41…3端子ローパスフイルタ、42…渦巻き状配線、43…貫通ビア、44…部品からの配線、45…PCカード基板
51…第1層、52…第2層、53…第3層、54…第4層GND層、55…ビア、56…内層ブラインドビア、57…第2層配線、58…第3層配線、59…3端子ローパスフイルタ、
61…3端子ローパスフイルタ、62…プリント基板配線、63…細線化ジグザグ配線部、64…GND面接続ビア。

Claims (2)

  1. 入力端子、出力端子及びグランド端子を有し、入力端子と出力端子間にインダクタンス部が形成され、インダクタンス部の中間とグランド端子間にコンデンサ部が形成された3端子ローパスフィルタを、プリント配線板上に設け、前記グランド端子と前記プリント配線板のグランドとの間に、プリント配線板に形成された複数の貫通ビアを直列に接続して成るインダクタンス部を設けたことを特徴とするローパスフィルタ。
  2. 入力端子、出力端子及びグランド端子を有し、入力端子と出力端子間にインダクタンス部が形成され、インダクタンス部の中間とグランド端子間にコンデンサ部が形成された3端子ローパスフィルタを、プリント配線板上に設け、前記グランド端子と前記プリント配線板のグランドとの間に、配線パターンと貫通ビアとにより形成されるインダクタンス部を設けたことを特徴とするローパスフィルタ。
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