JP3643606B2 - 紫外線変色レンズの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、紫外線受光量の変化に応じて色が変化する紫外線変色レンズの製造方法に関する。この発明は、サングラス用レンズ、カメラ用レンズ、ゴーグル用レンズ、コンタクトレンズなどのレンズ類に主として利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来、日差しの強いときにはレンズの色が濃くなり、日差しが弱いときにはレンズの色が薄くなるサングラスがある。これは、レンズが、紫外線受光量の変化に応じて色が変化するように構成されているからである。また、このようなレンズを、カメラ用レンズとして用い、レンズに絞りの機能を持たせることも考えられる。
【0003】
このような紫外線変色レンズの製造方法としては、従来、次のような方法があった。
【0004】
1.レンズを成形する際に、レンズ材料中に紫外線変色物質を含有させて成形するいわゆる練り込み法。
【0005】
2.レンズを成形した後に、レンズの表面に紫外線変色物質を塗布するいわゆる塗布法。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の方法は、次のような欠点を有している。
【0007】
練り込み法は、紫外線変色レンズ全体に紫外線変色物質を含有させることによって着色することになるため、紫外線変色レンズの厚みが厚い部分は、色濃度は高くなるが変色感度が鈍くなる。また、逆に紫外線変色レンズの厚みが薄い部分は、変色感度は鋭いが色濃度が薄くなる。したがって、紫外線変色レンズの厚みや形状によって変色機能にバラツキが生じる。
【0008】
また、塗布法で得られる紫外線変色レンズは、レンズ表面である曲面に紫外線変色物質を塗布するために塗布膜の厚みにバラツキがでやすく、レンズカーブが一定となりにくく、紫外線変色レンズの光学的機能が損なわれることがある。とくに、色濃度を高くするために、紫外線変色物質を厚く塗布した場合に問題が大きくなる。
【0009】
したがって、この発明は、上記のような問題を解決することにあり、工程が簡単で、紫外線変色レンズの光学的機能を低下させず、しかも濃度が濃くて感度のよい着色ができ、また紫外線変色レンズの厚みや形状に関係なく色濃度を設定することができる紫外線変色レンズの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、以上の目的を達成するために、紫外線変色レンズの製造方法を、基体シート上に少なくとも紫外線変色層を一構成層とする転写層が設けられた紫外線変色転写シートをレンズ形状の内壁を有する雌型上に配置し、熱を加えながら金型と合致する形状をしたピンで紫外線変色転写シートを押し込んで紫外線変色転写シートの基体シート側を雌型の形状に沿わせた後、紫外線変色転写シート上にレンズ材料を注入してレンズ材料を重合させながら雌型を回転してレンズ材料を雌型の形状に沿って均一に薄く伸ばして成形し、雌型から成形物を取り出し、紫外線変色転写シートの基体シートを剥離するように構成した。
【0011】
図面を参照しながらこの発明をさらに詳しく説明する。
【0012】
図1〜図3は、この発明の紫外線変色レンズの製造方法の一実施例を示す断面図、図4は、紫外線変色転写シートを金型に沿わせる工程の他の実施例を示す断面図、図5〜図7は、この発明に用いることができる紫外線変色転写シートの実施例を示す断面図である。図8は、この発明によって得ることができる紫外線変色レンズの一実施例を示す斜視図である。図9は、この発明によって得ることができる紫外線変色レンズの一実施例を示す断面図である。
【0013】
1は紫外線変色転写シート、2は基体シート、3は紫外線変色層、4は転写層、5は雌型、6は雄型、7はレンズ材料、8は添加物、9は紫外線変色レンズ、10は真空吸引口、11は射出口、12はピン、13は凹部、14は剥離層、15は接着層、16は紫外線変色物質保護層、17は紫外線変色パターン、18は離型層、19は成形物である。
【0014】
まず、この発明の紫外線変色レンズの製造方法に用いる紫外線変色転写シート1について説明する。
【0015】
紫外線変色転写シート1は、基体シート2上に、少なくとも紫外線変色層3を一構成層とする転写層4が設けられている(図5〜図7参照)。
【0016】
基体シート2は、転写層4を支持し、転写後には紫外線変色レンズより剥離除去されるものである。基体シート2の材質としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレンなどの加工のしやすいプラスチックフィルムが好ましい。また、合成紙、パール紙などを用いることもできる。
【0017】
また、基体シート2に剥離性を付与するために、転写後に基体シート2とともに剥離される離型層18を基体シート2上に形成してもよい。離型層18の材質としては、メラミン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、セルロース樹脂、ウレア樹脂、オレフィン樹脂、パラフィン樹脂などを用いることができる。また、転写層4の一構成層として、転写後に基体シート2から剥離し、紫外線変色レンズ9側に残る剥離層14を基体シート2上に形成してもよい。剥離層14の材質としては、アクリル、ポリエステル、アルキッド、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの樹脂を用いることができる。離型層18と剥離層14の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷方法や、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法がある。
【0018】
紫外線変色層3は、インキバインダー中に紫外線変色物質を含有させたものであり、インキバインダーと紫外線変色物質の比率と印刷膜厚によって色濃度を設定することができる。紫外線変色物質としては、スピロピラン系化合物、ジヒドロインドリジン系化合物、フルギド系化合物、テトロベンゾペロピレン誘導体、ジヒドリピレン系化合物、チオインジゴ系化合物、アントラセノファン誘導体、ビオローゲン系化合物、ジフェニルチオカルバゾン金属化合物などのフォトクロミック色材を用いることができる。インキバインダーの材質としては、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑ウレタン系樹脂、メタアクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ポリエチレン系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。紫外線変色層3の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法などがある。印刷法により任意のパターンの紫外線変色層3を紫外線変色レンズ9に形成できるため、図8に示すように、任意の部分に任意の濃度、任意の色で紫外線変色パターン17を形成することができる。また、紫外線変色レンズ9の全面に紫外線変色パターン17を形成することもできる。
【0019】
また、接着層15を、転写層4の一構成層として紫外線変色層3上に形成し、紫外線変色レンズ9に対する接着性を向上させてもよい(図6参照)。接着層15の材質としては、アクリル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂などを用いることができる。接着層15の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷方法や、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法がある。
【0020】
また、紫外線変色物質保護層16を、転写層4の一構成層として基体シート2と紫外線変色層3との間に形成してもよい(図7参照)。紫外線変色物質保護層16は、紫外線変色レンズ9を洗浄などした際に、紫外線変色層3中の紫外線変色物質が、直接に、あるいは剥離層14を通って紫外線変色レンズ9外に溶出していくのを防ぐものである。また、紫外線変色物質保護層16は、紫外線変色層3が傷つくのを防ぐ作用もある。紫外線変色物質保護層16の材質としては、ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルピロドリン、シリコン共重合体などのレンズ材料と同じものを用いるとよい。紫外線変色物質保護層16の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷方法や、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法がある。
【0021】
以上のような構成の紫外線変色転写シート1を用いて、サングラス用レンズ、カメラ用レンズ、ゴーグル用レンズ、コンタクトレンズなどに使用することのできる紫外線変色レンズを得ることができる。また、紫外線変色転写シート1を用いると、サンバイザー、化粧品容器、スキーブーツ、筆記具の軸など、紫外線が当たってもまぶしくないようにするものや、単に色の変化を楽しむものなど、さまざまな物品に応用することができる。次に示す1〜3の方法で紫外線変色レンズ9の成形と同時に、紫外線変色レンズ9表面に紫外線変色パターン17の形成を行なうことができる。
【0022】
1.紫外線変色転写シート1を、レンズ形状の内壁を有する雌型5上に配置する(図1a参照)。次に、真空吸引口10から空気を吸引して紫外線変色転写シート1の基体シート2側を雌型5の形状に沿わせる(図1b参照)。この場合、必要があれば、紫外線変色転写シート1に熱をかけながら行う。
【0023】
次に、紫外線変色転写シート1上にレンズ材料7を注入し(図1c参照)、レンズ材料7を重合させるとともに、雌型を、その中心を通る垂直線を軸にして回転させることにより雌型5の形状に沿って均一に薄く伸ばす。このとき、重合を助けるために触媒や硬化剤などの添加物8をレンズ材料7の注入前または注入後に加えてもよい。また、加熱をせずに添加物8の作用のみでレンズ材料7を重合させてもよい。レンズ材料7としては、ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルピロドリン、シリコン共重合体などを用いることができる。
【0024】
重合が完了して成形物19が成形された(図1d参照)後に、紫外線変色転写シート1の基体シート2を成形物19から剥離し、紫外線変色レンズ9を得る(図1e参照)。なお、金型を設計する際に、紫外線変色転写シート1の基体シート2の厚みを考慮し、紫外線変色レンズ9のカーブに基材シート2の厚みが影響しないようにする必要がある。
【0025】
2.紫外線変色転写シート1を、レンズ形状の内壁を有する雌型5と雄型6とからなる一対の金型間に配置する(図2a参照)。次に、1の方法と同様にして紫外線変色転写シート1を雌型5の形状に沿わせる(図2b参照)。
【0026】
次に、金型間にレンズ材料7を注入し(図2c参照)、型閉め後にレンズ材料7の加熱を行なうことにより金型内でレンズ材料7を重合させる(図2d参照)。このとき、重合を助けるために触媒や硬化剤などの添加物8をレンズ材料7の注入前または注入後に加えてもよい。また、加熱をせずに添加物8の作用のみでレンズ材料7を重合させてもよい。なお、添加物8の添加はレンズ材料7の注入前または注入後に行うが、成形前に重合が完了しないように注意する必要がある。
【0027】
重合が完了して成形物19が成形された後に、紫外線変色転写シート1の基体シート2を成形物19より剥離し、紫外線変色レンズ9を得る(図2e参照)。
【0028】
3.紫外線変色転写シート1を、レンズ形状の内壁を有しレンズのエッジに対応する部分に射出口11を有する雌型5と雄型6とからなる一対の金型間に配置する(図3a参照)。次に、1の方法と同様にして紫外線変色転写シート1を雌型5の形状に沿わせる。型閉め後(図3b参照)、レンズ材料を射出口11より金型内に射出して成形する(図3c参照)。次に、金型を開き、成形物19から紫外線変色転写シート1の基体シート2を剥離し、紫外線変色レンズ9を得る(図3d参照)。
【0029】
なお、上記1〜3の方法の紫外線変色転写シート1を金型に沿わせる工程において、図1〜図3に示したように熱を加えながら基体シート2側より真空吸引口10を通して空気を吸引して沿わせる方法以外に、熱を加えながら金型と合致する形状をしたピン12で紫外線変色転写シート1を押し込んで金型に沿わせる方法もある(図4参照)。また、吸引する方法とピンを押圧する方法を併用してもよい。
【0030】
上記の方法で得られたこの発明の紫外線変色レンズは、紫外線変色レンズ9上に凹部13が設けられ、凹部13内に前記転写層4が設けられ、転写層4の表面と紫外線変色レンズ表面とが段差なく、同一面になる(図8〜図9参照)。
【0031】
なお、紫外線変色転写シート1の上記各層は、印刷法、コート法などで形成するため、各層の厚さの合計は20μm以内が一般的である。また、従来の練り込み法による紫外線変色レンズでは紫外線変色物質がレンズ中に均一に分布するのに対し、この発明の紫外線変色レンズではレンズ表面のみに紫外線変色物質が存在することになる。したがって、従来の練り込み法による紫外線変色レンズに比べて紫外線に対する感度が高くなる。
【0032】
【作用】
この発明の紫外線変色レンズの製造方法は、上記のように構成したので、次の作用を有する。
【0033】
この発明の紫外線変色レンズの製造方法は、紫外線変色転写シートの基体シート側を金型に密着させて、紫外線変色転写シートの基体シートと反対側からレンズ材料を接触させてレンズ形状に成形し、成形された成形物から基体シートを剥離するように構成されているので、成形と同時に任意の場所に紫外線変色層が形成され、転写層の表面とレンズ表面とが段差のない同一面に形成される。
【0034】
【発明の効果】
この発明の紫外線変色レンズの製造方法は、以上のような構成および作用からなるので、次の効果を有する。
【0035】
この発明の紫外線変色レンズの製造方法は、紫外線変色レンズの成形と同時に紫外線変色層を設けることができるので、容易に紫外線変色レンズを得ることができる。また、紫外線変色転写シートを替えるだけで多種多様の紫外線変色層を設けることができる。しかも、紫外線変色レンズ表面と転写層表面とが同一面に形成されるので、凹凸がなく、紫外線変色レンズの曲面カーブが変わらない紫外線変色レンズを得ることができる。そのため、紫外線変色パターンを形成しない場合と同様の光学的機能を有する紫外線変色レンズを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の紫外線変色レンズの製造方法の一実施例を示す断面図である。
【図2】 この発明の紫外線変色レンズの製造方法の一実施例を示す断面図である。
【図3】 この発明の紫外線変色レンズの製造方法の一実施例を示す断面図である。
【図4】 紫外線変色転写シートを金型に沿わせる工程の実施例を示す断面図である。
【図5】 この発明に用いることができる紫外線変色転写シートの実施例を示す断面図である。
【図6】 この発明に用いることができる紫外線変色転写シートの他の実施例を示す断面図である。
【図7】 この発明に用いることができる紫外線変色転写シートの他の実施例を示す断面図である。
【図8】 この発明によって得ることができる紫外線変色レンズの一実施例を示す斜視図である。
【図9】 この発明によって得ることができる紫外線変色レンズの一実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 紫外線変色転写シート
2 基体シート
3 紫外線変色層
4 転写層
5 雌型
6 雄型
7 レンズ材料
8 添加物
9 紫外線変色レンズ
10 真空吸引口
11 射出口
12 ピン
13 凹部
14 剥離層
15 接着層
16 紫外線変色物質保護層
17 紫外線変色層印刷パターン
18 離型層
19 成形物

Claims (1)

  1. 基体シート上に少なくとも紫外線変色層を一構成層とする転写層が設けられた紫外線変色転写シートをレンズ形状の内壁を有する雌型上に配置し、熱を加えながら金型と合致する形状をしたピンで紫外線変色転写シートを押し込んで紫外線変色転写シートの基体シート側を雌型の形状に沿わせた後、紫外線変色転写シート上にレンズ材料を注入してレンズ材料を重合させながら雌型を回転してレンズ材料を雌型の形状に沿って均一に薄く伸ばして成形し、雌型から成形物を取り出し、紫外線変色転写シートの基体シートを剥離することを特徴とする紫外線変色レンズの製造方法。
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