JP3636925B2 - 基礎構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は基礎構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に軟弱地盤上に構築される鉄筋コンクリート造などの建物は、図12に示すように、コンクリート杭や鋼管杭などの杭26で支持されている。この杭26は軟弱地盤27の下方の支持地盤28にまで打ち込まれて建物29の鉛直荷重を支持している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような杭は鉛直荷重を支持しながら、地震などによる水平力にも十分に耐えられるような大断面になるため、非経済的であった。
【0004】
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、軟弱地盤上に構築される建物の鉛直荷重と水平力とをそれぞれ別々の杭で支持するようにすることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明が、軟弱地盤中に打設された鋼管杭に滑り支承を介して建物の基礎スラブが設置され、前記鋼管杭の内側には支持地盤に打設した支持杭の頭部が挿入され、該支持杭と鋼管杭内面との間には緩衝材が充填され、前記滑り支承は上面に回転自在な鋼球を備えた支承盤であり、該支承盤下面の湾曲部が支持杭上面の湾曲部に設置されたことを特徴とする。
【0006】
請求項1の発明によれば、地震等の水平力を受けて支持杭の頭部が支承盤の湾曲部に沿って揺れると、これに鋼管杭が追従して自然の減衰材である軟弱地盤中を水平移動することにより発生する地盤反力と地盤減衰とによって水平力を減衰させ、この減衰効果が支持杭と鋼管杭内面との間の緩衝材によってさらに高められる。
【0007】
また請求項2の発明が、軟弱地盤中に打設された鋼管杭に免震装置を介して建物の基礎スラブが設置され、前記鋼管杭の内側には支持地盤に打設した支持杭の頭部が挿入され、該支持杭と鋼管杭内面との間には緩衝材が充填され、前記免震装置は台座を介して鋼管杭に設置され、該台座下面の湾曲部が支持杭上面の湾曲部に設置されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明によれば、地震等の水平力を受けて支持杭の頭部が支承盤の湾曲部に沿って揺れると、これに鋼管杭が追従して自然の減衰材である軟弱地盤中を水平移動することと、免震ダンパーとによって水平力が減衰されて杭頭部の曲げモーメントを小さくし、この減衰効果は自然の減衰材としての軟弱地盤と緩衝材とによりさらに高められる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明における基礎構造の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は第1の実施の形態の基礎構造の断面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は要部の拡大断面図、図4の(1)は杭頭部の拡大断面図、(2)は(1)のB−B線断面図である。
【0024】
図1は第1の実施の形態の基礎構造を示し、地盤改良をしていない軟弱地盤1上に構築された建物2の基礎構造3であり、フーチング4と基礎梁5とからなる基礎スラブ6を水平抵抗杭8と支持杭9とで支持し、これらの杭8、9が支持地盤7にまで打設されている。前記水平抵抗杭8は建物2の周囲に配置されたフーチング4に緊結して設けられて鉛直荷重と水平力を負担する。一方、支持杭9は建物2の内側に配置されたフーチング4に設けて鉛直荷重を負担する。
【0025】
水平抵抗杭8と支持杭9とは現場打ち鉄筋コンクリート杭、または既製コンクリート杭で構築されるが、支持杭9は水平抵抗杭8よりも小径である。また支持杭9とフーチング4とは、図3に示すように、滑り支承10により縁切りされている。この滑り支承10は、図4に示すように、上面に回転自在な鋼球11を備えた支承盤12であり、前記鋼球11にフーチング4が設置された状態となっている。したがって、支持杭9は地震などの水平力を受けると、図5に示すように、フーチング4の下面を任意の方向に滑走して、杭頭部13に発生する曲げモーメントを小さくする。
【0026】
これは軟弱地盤1を利用して水平力を減衰しようとするものである。すなわち、自然の減衰材としての軟弱地盤1中を支持杭9が水平移動することによって発生する地盤反力と地盤減衰とを利用して水平力を減衰させるものである。これにより杭頭部13の曲げモーメントが小さくなるので、支持杭9の径を鉛直荷重だけが支持できる大きさにまで縮小できる。また、この曲げモーメントが小さくなると、フーチング4に発生する曲げモーメントおよびせん断力も小さくなるので、フーチング4自体を小さくすることもできる。
【0027】
図6〜図8は第2の実施の形態の基礎構造14を示し、支承盤15によりフーチング4と縁切りされた鋼管杭16内に支持杭9が打設されたものであり、これらを除く他の構成は第1の実施の形態の基礎構造3と同じである。この支持杭9も建物2の内側に配置されたフーチング4に設けられて鉛直荷重を負担する。また支持杭9と鋼管杭16内面との間にはオイル、砂、ゴム等の緩衝材17が充填されるとともに、支承盤15下面の湾曲部18には支持杭9の上面が当接している。したがって、水平力を受けて杭頭部13が湾曲部18に沿って揺れると、鋼管杭16が追従して軟弱地盤1中を水平移動することにより、該軟弱地盤1が自然の減衰材となって水平力を減衰させる。この減衰効果は支持杭9内面と鋼管杭16との間の緩衝材17によりさらに高められる。
【0028】
図9〜図11は第3の実施の形態の基礎構造19を示し、鋼板20とゴム板21とからなる免震ダンパ22などの免震装置を介して打設された鋼管杭16内に支持杭9が打設されたものであり、これらを除く他の構成は第1の実施の形態の基礎構造3と同じである。この支持杭9も建物2の内側に位置するフーチング4に設けられて鉛直荷重を負担する。また鋼管杭16と支持杭9との間にはオイル、砂、ゴム等の緩衝材17が充填されるとともに、台座23下面の湾曲部24には支持杭9の上面が当接している。したがって、水平力を受けて支持杭9が左右に揺れると鋼管杭16も追従して軟弱地盤1中を水平移動することと、免震ダンパ22とによって水平力が減衰されて杭頭部13の曲げモーメントを小さくする。この減衰効果は自然の減衰材としての軟弱地盤1と緩衝材17とによりさらに高められる。
【0029】
また水平力とともに引張荷重が作用した場合は、図11に示すように、鋼管杭16が緩衝材17によって支持杭9から緩やかに引き離されるとともに、支持杭9に緩やかに接地する。
【0030】
また、前記第1〜第3実施の形態においては、支持杭9が内側に位置し、水平抵抗杭が外側に位置する場合について説明したが、支持杭9を外側にして鉛直荷重と付加軸力を負担させるとともに、水平抵抗杭を内側して鉛直荷重と水平力を負担させるようにしてもよい。さらに前記第1〜第3実施の形態においては、フーチング4と基礎梁5とからなる基礎スラブ6に基づいて説明したが、この基礎スラブ6はマットスラブであってもよい。
【0031】
【発明の効果】
杭頭部が滑り支承により基礎スラブの下面を左右に滑って水平力を減衰させることにより、杭頭部に発生する曲げモーメントを小さくする。
【0032】
杭頭部が回転自在な鋼球によって基礎スラブの下面を任意の方向に滑走して水平力を減衰させることにより、杭頭部に発生する曲げモーメントを小さくする。
【0033】
杭頭部が軟弱地盤中を水平移動して水平力を減衰させることにより、杭頭部に発生する曲げモーメントが小さくなるので、杭の径を鉛直荷重だけが支持できる大きさにできる。
【0034】
杭頭部が鋼管杭内における緩衝材内を移動して水平力を減衰させることにより、杭頭部に発生する曲げモーメントを小さくする。
【0035】
鋼管杭が基礎スラブの下面を滑走するとともに、杭頭部が支承盤下面の湾曲部に沿って移動することにより水平力を減衰させて、杭頭部に発生する曲げモーメントを小さくする。また支承盤が引張荷重により杭上面から緩やかに離れるとともに、緩衝材によって杭上面に緩やかに接地する。
【0036】
軟弱地盤が水平力を効果的に減衰させる働きをする。
【0037】
杭頭部の鋼管杭内における緩衝材内の移動と、免震装置とによって水平力が減衰されることにより、杭頭部に発生する曲げモーメントを小さくする。
【0038】
杭頭部が台座の湾曲部に沿って鋼管杭内を移動して水平力を減衰することにより、杭頭部に発生する曲げモーメントを小さくする。
【図面の簡単な説明】
【図1】基礎構造の断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】基礎構造の要部の拡大断面図である。
【図4】(1)は杭頭部の拡大断面図、(2)は(1)のBーB線断面図である。
【図5】(1)および(2)は杭頭部の水平移動の断面図である。
【図6】第2の実施の形態の基礎構造の断面図である。
【図7】(1)は杭頭部の拡大断面図、(2)は(1)のCーC線断面図である。
【図8】(1)および(2)は杭頭部の水平移動の断面図である。
【図9】第3の実施の形態の基礎構造の断面図である。
【図10】(1)は杭頭部の拡大断面図、(2)は(1)のDーD線断面図である。
【図11】杭頭部の水平移動の断面図である。
【図12】従来の基礎構造の断面図である。
【符号の説明】
1、27 軟弱地盤
2、29 建物
3、14、19 基礎構造
4 フーチング
5 基礎梁
6 基礎スラブ
7、28 支持地盤
8 水平抵抗杭
9 支持杭
10 滑り支承
11 鋼球
12、15 支承盤
13 杭頭部
16 鋼管杭
17 緩衝材
18、24 湾曲部
20 鋼板
21 ゴム板
22 免震ダンパ
23 台座
26 杭
Claims (2)
- 軟弱地盤中に打設された鋼管杭に滑り支承を介して建物の基礎スラブが設置され、前記鋼管杭の内側には支持地盤に打設した支持杭の頭部が挿入され、該支持杭と鋼管杭内面との間には緩衝材が充填され、前記滑り支承は上面に回転自在な鋼球を備えた支承盤であり、該支承盤下面の湾曲部が支持杭上面の湾曲部に設置されたことを特徴とする基礎構造。
- 軟弱地盤中に打設された鋼管杭に免震装置を介して建物の基礎スラブが設置され、前記鋼管杭の内側には支持地盤に打設した支持杭の頭部が挿入され、該支持杭と鋼管杭内面との間には緩衝材が充填され、前記免震装置は台座を介して鋼管杭に設置され、該台座下面の湾曲部が支持杭上面の湾曲部に設置されたことを特徴とする基礎構造。
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